学校卒業後における障害者の学びの推進に関する有識者会議(第2回) 議事録

1.日時

平成30年4月18日(水曜日) 10時00分~12時00分

2.場所

文部科学省東館15階15F特別会議室(東京都千代田区霞が関3‐2‐2)

3.議題

  1. 障害当事者のニーズ・課題について(ヒアリング)
    (1)綿貫愛子委員(「世田谷区受託事業みつけばルーム」の取組等)
    (2)町田市 とびたつ会
    (3)株式会社ミライロ
  2. その他

4.議事録

【宮﨑座長】
 皆さんおはようございます。
 定刻になりましたので、ただいまから、「学校卒業後における障害者の学びの推進に関する有識者会議」第2回を開催いたします。本日はお足元の悪い中、お忙しいところお集まりいただきまして、まことにありがとうございます。
 第1回の会議に引き続いて、宮川政務官にもお越しいただく予定になってございますが、まだのようですので、到着され次第、またお話を頂きたいと思います。
 それでは、まず、事務局より配布資料の確認をお願いいたします。

【高見障害者学習支援推進室長補佐】
 本日の配布資料ですが、議事次第にございますとおり、資料1-1から資料4、参考資料1-1から3になります。過不足等ございましたら、事務局までお申し付けください。

【宮﨑座長】
 資料等はありますでしょうか。
 それでは、今日から御出席をいただいております戸田達昭委員に御挨拶を頂きたいと存じます。戸田委員の資料は、机上配布されておりますので、御確認ください。
 それでは、戸田委員、どうぞよろしくお願いいたします。

【戸田委員】
 どうもおはようございます。戸田です。座ったままでしゃべらせていただきます。
 山梨からやってまいりました戸田です。僕の資料はこちらになって、この写真は、夏仕様の私でして、今は春なのでこんな感じなんですけれども、夏になったらこんな感じです。
 私自身は、いろいろ学びや生涯学習というところを通じて、いろいろな地域作りなどをやらせてもらっているんですけれども、メインは事業化なので、会社を幾つか経営させてもらっていて、いろいろなことをやっております。
 文部科学省さんとも御縁があって、ここにも書きましたけれども、第6期の中教審の生涯学習分科会の方で御厄介になりましたというところです。
 私が山梨で取り組んでいる取組というのは、どちらかというと経済原理といいますか、障害をもった方でも経済活動に取り組んでいただいて、納税する側に回っていただくというところですとか、テーマとしては、学びを推進するということであれば、なぜ学ぶのか、そういったところを明確にしながら学んでいく必要があると思うんですけれども、その方向性が生産性の向上や経済の仕組みに参画していただくということをテーマに取り組んでおります。
 あと、この資料にもありましたけれども、バリアフリーや、バリアになっているのは我々だということなので、社会が受け入れられる土壌をどう作れるのかというところなど、一緒にどうやって価値を作っていけるかということに対して、企業や社会福祉法人が核になっているんですけれども、そこと連携しながら、社会、出口になる企業とも対話を進めて、接続事案を作っていくということをやっています。
 どちらかというと、経済的な観点からの発言が多くなるかなと思っていますけれども、こういう場でいろいろな御意見を聞かせていただいて、僕は障害をもっていようが、いなかろうが、働くことに意味があると思っていますし、我々を含め、地域の宝、財産だと思っていますので、そういったことをどのように地域で完結した学びの仕組みと活躍する仕組みができるかということを取り組んでいます。その辺の観点をもってコメントさせていただきたいと思います。よろしくお願いします。

【宮﨑座長】
 ありがとうございました。
 それでは、本日の議題であります障害当事者のニーズ・課題についてのヒアリングということで、本日、御発表いただく方々、綿貫愛子委員が世田谷区の受託事業「みつけばルーム」の取組等についてお話を頂きます。
 それから、町田市の「とびたつ会」の皆さんにお話を頂きます。
 最後に、株式会社ミライロの皆さんにお話を頂くという予定になってございます。どうぞよろしくお願いします。
 御発表の皆様については、議事次第の次に別紙でお名前も記載されております。3組の皆様により、一組15分程度で御発表いただき、その後、15分間、御発表に関する質疑応答の時間を設けたいと思っております。
 3組とも終わったところで全体での審議を行いたいと思います。御発表の皆さんも是非御参加いただければと思います。
 それでは、最初に世田谷区の受託事業「みつけばルーム」の取組について、綿貫愛子委員より御発表を頂きます。
 綿貫委員、どうぞよろしくお願いいたします。

【綿貫委員】
 よろしくお願いします。
 今回配布させていただいた資料が、先ほどあった資料1-1と1-2になりまして、先ほど冊子になっている事業報告書というのもお配りさせていただいたので、こちらを御参照いただければと思います。15分なので、資料の数が多いんですが、必要なところをかいつまみながらお話しさせていただければと思います。
 本日の内容は、このような感じになっております。
 私たちはNPO法人の東京都自閉症協会では、発達障害や自閉症スペクトラム症などについて活動している団体ですが、学校から社会への移行期における発達障害者の学びに関するニーズというのをこの会議の視点で考えたときに、不登校、ひきこもりの状態にある発達障害者が今多いということと、就労や自立の前に必要なことがあるのではないかということを思っております。自立して生きる基盤となる力、人生を豊かにする活動というふうに本会議のところでも言葉が出ていますが、対人交流や社会参加へのモチベーションやQOLの向上というニーズがあるのではないかと思っております。
 発達障害者が、この社会に自らコミットしていくためには、どのような本人ニーズがあるのかということと、どのような支援アプローチがよいのかということを実証、検証する場として、世田谷区受託事業「みつけばルーム」の取組ということをやっております。
 こちらは、世田谷区から受託した公的な事業で、世田谷区民の方が登録制で利用するような形になっておりまして、運営を我々の東京都自閉症協会の職員が行っているという場所です。「発達凸凹のある若者が、多彩なワークショップを通じ、『ナニか』をみつける場所」ということをコンセプトにしております。
 世田谷区がどのような背景でこの取組を進めているかという資料が、資料1-2になります。こちらの資料は平成30年2月9日に行われた厚労省と文科省の合同会議で発表させていただいた資料になります。
 支援アプローチとして、「みつけばルーム」で取り組んでいるのは、ピアサポートの手法を使っているというところで、発達障害の成人当事者や、特にASD、自閉症スペクトラム症の小集団によるピアサポートというのを行っております。ASD者同士のところで社会性やコミュニケーションのデザインが共有できて共感が成立するということが医学的にも、人類学的研究からも示唆があります。
 それから、余暇支援として、余暇支援に関する研究は多くないんですが、余暇支援のプログラムを受ける経験が小集団以外での対人関係や就労自立にポジティブに寄与する可能性を示す報告もありまして、我々の場では、余暇支援ということをメインにやっております。
 具体的なコンセプトとしては、私を含めて職員の9割、ほぼ全員が発達障害の当事者ということで運営をしております。社会適応ということや自己認知ということが発達障害の中ではキーワードのように毎回出てくるんですが、自己認知よりも、まず、ありのままの自分を自己表現できる経験が必要なのではないかということや、社会適応ということが言われるけれども、社会適応を頑張り過ぎたために、過剰適応に陥ってドロップアウトしてしまう方も青年期、成人期では多いので、自分のペースでゆるサバイバルしていくのがいいのではないかということを考えておりまして、このコンセプトの詳細については、事業報告書でも説明しております。
 「みつけばルーム」の紹介として、先ほどワークショップをいろいろ行っていると言ったんですが、主に2通りありまして、外部講師。その分野のプロフェッショナルの方をお呼びして、その方のワークショップをお願いしているんですが、この意味というのは、こういった外部講師の方々というのは、その分野のスペシャリストとしていろいろなこだわりをもっていて、それを社会の中で職業として実現している方たちなので、1つの大人や社会のモデルとして子供たちにいい影響があるのではないかということで外部講師の方にワークショップをお願いしています。
 それから、職員が自分の趣味や遊び方などを利用者の若者たちと一緒にやるワークショップもありまして、うちの職場ではポケモンがすごく人気なんですが、ポケモンが共通言語のように役立っていたり、あとはコケのテラリウムを作ったり、メソポタミア文明の粘土文書といったものをやっているんですが、一見マニアックに思える活動でも、これをきっかけに外に出てみたいとか、交流が促進されたということがたくさんあります。
 ワークショップの構造としては、まず、我々の自閉症スペクトラムの感覚で興味がもてるテーマの提示というものが、参加のきっかけとしてすごく重要だなということを思っています。なので、少しマニアックなテーマが多いんですが、以前、普通のテーマもやってほしいと区から要請を受けて設定したことがあるんですが、全く参加者が集まらず、メソポタミア文明の方にすごく集まるみたいな、そういう状況が起きまして、やはりテーマのことを検討していく必要があるなと思っています。
 それから、訓練などではない自然な活動で自己表現をしていくということと、作品を通して他者を理解しやすいということであったり、我々の特性として、その人と話していても、その人の人格や、その人のことをなかなか捉えることが難しいんですが、作品やその人の趣味を見ていると、その人のことが理解しやすかったり、分かりやすいという認知があります。自分を知ることというのもとても大切で、特に今いろいろな訓練などを受けてきたりしている方々は、自分のアイデンティティーに混乱が生じている方も多くて、自分がどんなことが好きなのか、自分がどういうふうに何をやりたいのかということを見つけるきっかけの場として機能していると思っています。
 「みつけばルーム」のよいところというのを当事者の視点からいろいろ書いたんですが、音声言語以外に自分を表現できる方法や機会があったり、ピアサポートの観点から、感覚や思考や経験が似ているので、活動しやすいということがあります。
 現時点での利用者数については、試行事業なので、クローズドで紹介機関からの紹介ということでやっているので、人数はそんなに多くないです。
 「みつけばルーム」を始めるに当たって、世田谷区内で調査を行った結果、診断名を受けていない方が結構多くいまして、必ずしも診断名をもっていない方でも、傾向やニーズがある方も受け入れております。
 利用者の変化は、我々が想定していたよりも目まぐるしく変化がありまして、外出できたというQOLに関わることや好きなことが見つかったというところで、就労への意欲が出てきたり、「みつけばルーム」の中だけで本人の変化があったわけではなくて、その方のメインの活動というか、日常生活にも変化があったというのがいいところです。
 事業報告書に利用者の方が直接書いてくださった自由記述のアンケートの結果があるんですが、それによると、皆さん自分が何か見つけたり、よかったと思っていることがあって、それが生活や本人の中の変化、内面の変化につながっているようです。
 「みつけばルーム」を利用してよかったことを質問紙で聞いた結果、内容の言葉をコーディングしてみると、人に対する言及がすごく多かったというのが驚いたところです。やはり余暇支援で発達障害や自閉症だと、自分でひとり遊びをしたり、何かにこだわったりというのは得意なんですが、人と交流するということが大切なのではないかということが考えられています。
 これも、同じような感じです。安心・安全に感じられる空間の中で、自分らしく話したり、学び・遊んだりすることが、本人の社会参加のモチベーションやQOLの向上につながるということが少しずつ示され始めていると思っています。
 事例報告については、詳細があるんですが、時間の都合で飛ばします。
 利用についての課題も、関係機関からの紹介を現時点では原則としているので、紹介がなくてもよいシステムも、今検討しておりまして、今年度6月から徐々に始めようと思っているところです。
 あと、就労などの明確なゴールを設定していないために、成果を数値化して示すことが難しいという、本人変化を評価していくということの評価や分析の問題もあります。
 ピアサポーターというのも適性があるということを我々は事業の中で思っておりまして、経験も必要ですし、特に青年期の若者ということを考えたときには、若い世代の人材確保を考えていかなければならないんですが、これは、学生ボランティアを活用したり、そういうことも少しずつ始めています。
 発達障害者の支援における学び、余暇や遊ぶを含む学びの重要性を検証して、理解を広めていきたいということも思っておりまして、研究部会の設置や有効なプログラムの開発も今後やっていきたいと思っております。
 今回の会議における求められる方策というところで、我々の取組から幾つか書かせていただきました。学校から社会への移行期における発達障害者の学びに関するニーズについては、就労自立の基盤として自分のことや社会のことを知る経験ができるということが、まず大切なのではないかと思っています。
 今、拙速に就労や自立ということが求められるんですが、本人が、自分は何をもっていて、どうしたいのかとか、そういうことがあやふやなまま進行したためにドロップアウトしてしまう方はすごく多いと思っております。離職率に表れていると思います。自己表現が自分を知ることにつながると我々の事業では思っておりまして、自分らしさの獲得や心理学の言葉で言えばレジリエンスを育てるということが必要だと思っております。それから、本人がやってみたい、楽しいと思える機会の提供というのも必要で、それが対人交流や社会参加へのモチベーションにつながると思っております。
 今回は学校卒業後ということなんですけれども、学齢期や青年期前期から、こういった取組も必要だと思っております。特に学校から社会への移行期に必要な内容としては、まず自分を自己表現して、自分や社会のことを知ることができる機会の提供と思っております。よく「自己理解」という言葉が使われるんですが、障害特性の理解だけが自分を知ることではないと思っております。学校段階では制限されやすい経験を丁寧に保障するということも必要になってくると思います。
 それから、多様な就労や生活の選択肢を想定した内容や支援の提供も必要で、私たちのところでは、来ている外部講師の方はスペシャリストなんですが、スペシャリストというだけではなくて、やはり趣味を自分の生活の中で仕事と並行させていくことといった成人社会生活、社会体験といったいろいろな選択肢を想定していた方がいいなと思っております。
 対人交流や社会参加へのきっかけ、意欲につながる内容の提供というのも大切で、これは生涯を通じて必要な内容と思うんですが、仕掛けとして、我々はマニアックな知識や活動にすごく引かれやすいので、一般的なレクリエーション的な内容にとらわれない発想が必要であると思っております。いろいろな活動をやっていると脱線しまくるんですが、その脱線に本人たちの豊かさがあると思っています。
 ピアサポートのように類似する他者との交流も社会参加のきっかけとしてはすごく踏み出しやすいというか、役に立つと思います。もちろん合理的配慮やつながりやすさというところで、調査や事例集などでも発達障害に関する知見が少ないので、それについても検討していく必要があると思っております。
 すみません。駆け足でしたが、以上です。御静聴ありがとうございました。(拍手)

【宮﨑座長】
 ありがとうございました。
 今の御発表に関して、事実確認、あるいは御質問がありましたら、どうぞお願いいたします。どなたからでもどうぞ。

【箕輪委員】
 いいですか。

【宮﨑座長】
 はい、どうぞ。箕輪委員、お願いします。

【箕輪委員】
 発表ありがとうございます。箕輪と申します。
 2つ質問があるんですけれども、昨日も当社に入社している発達障害の社員と面談をしたところだったんです。休日に何かしないといけないんじゃないかと思うんだけれども、自分はゆっくりしていたい。いろいろなところからこういう活動があるよ、こういう楽しいことがあるよと言われるんだけれども、その楽しい活動に参加しなければいけないのかと考えてしまうと、また眠れなくなることがあるみたいなことを言っている。ただ、いろいろな活動がお話の中にあるので、もしかしたら一般的に楽しいと思われる活動以外のマニアックと言われる部分のところで、今後出会いがあるかもしれないんですが、案内やチラシ、例えば市報などを見る限りでは、それが自分に合っているのか、楽しいのかというのが分からない。
 個人情報のことで、この資料も顔が丸く塗られてはいるんですけれども、例えば、その人はウエブでいろいろ調べるのが好きなので、そういうところで可能な範囲の活動中の動画が見られて、家の中にいて、まず様子をうかがえるという機会があれば、そういうもので一旦様子を見てからと。それで、次に行ったときに、とりあえずいればいいだけ。活動に参加しなくてもいればいいだけとか、何かそういうステップがあると少し安心ができるんだけれどもなということを言っていて、結局、今、入社以降、土日は仕事で疲れるのもあるかもしれないんですけれども、一般的に楽しいと言われる活動に参加できていないことがいけないことなのではないかと不安になってしまっている社員がいたんですね。
 なので、そういったところの気持ちが楽しい、興味があって資料を見たり、参加する気になった人はいいんですけれども、まだそういうふうになれないというか、その前段階の方へのアプローチがもし何かあれば教えていただきたいというのが1つです。
 あと、後半に出てきた障害の特性の理解。私は、第1回のときにも発言させていただいたんですけれども、例えば、こだわりが強いといったところが、今までの学生生活、子供の頃はマイナスみたいに見られていたけれども、入力の仕事をしたときに100%の正解率、組み立ての仕事をしたときには、とても正確な特性として、すごくプラスに重宝されるというか、戦力になる部分があるんです。そういったところの、マイナスがマイナスのままではなくて、すごく多角的ないろいろな活動をする中で、マイナスかなとずっと言われ続けたものがプラスに転じたというか、こちらの方から見たら、それはすごく必要な力だったという例があれば、少し教えていただきたいなと思いました。
 以上です。

【宮﨑座長】
 2点、綿貫委員、お願いします。

【綿貫委員】
 うまく答えられるか分からないんですけれども、まず、利用の方法として、1つ目の御質問のところなんですけれども、我々は基本的には、人と接し過ぎてしまったり、休み時間がすごく苦手で、それをタスクみたいに思ってしまうというのは、職員でも、運営している側でももっている感覚なので、段階というのをいろいろ設けております。
 まず、視覚的な情報が、イメージのしやすさや参加しやすいというところがあるので、ここの資料の中ではFacebookページというのを紹介しているんですが、これは登録していなくても閲覧できるページなので、こういったものであったり、毎月ワークショップのイメージや内容が分かりやすいようなプログラムカタログというものを発行しております。そのカタログの中で、毎回参加しなければいけないわけではなくて、1か月の中で、月1回でもいいし、ほぼ毎日来る方もいるんですが、自分のメインの活動や、自分の興味や、参加のしやすさなどで、段階的に選べるようになっているので、そこは本人の生活やステップなどを考慮しています。
 見学というのも設けておりまして、いきなり輪の中に入るというのが基本的に苦手な経験をしてきた人たちなので、少し活動を引いたところから見たり、ワークショップの前のところでサロンという時間をやっておりまして、少しオープンな時間なんですが、そこで場所や雰囲気に慣れてもらったり、そこで合う、合わないとか、今行けそうというタイミングを図っていただいたりもしています。
 今、紹介機関からの紹介というところで、もともと支援者の方がいて、その支援者の方が本人のニーズに合いそうかとか、段階は大丈夫そうかという面談を本人としてもらっていたりするので、そのあたりは丁寧に見られているかなと思います。
 なので、例えば、すごく頑張り過ぎてしまう方だと、そんなにたくさん申し込んだら、自分が多分苦しくなるから、最初は2つぐらいにしてみたらみたいなことも支援者の方との面談で相談してもらったりして、本人が行けそうというときに増えていったり、そういった段階を設けています。
 それから、2つ目の御質問のところで、代表的なものというか、我々の活動のワークショップの内容というのは、かなりこだわりを生かしているところがあるんです。そのこだわりというのが、固執的な行動であったり、限局的な興味というように語られたり、一見、問題があったり、生活に支障が出そうみたいに自閉症の中でこだわりという概念が使われることが多いんですが、我々の考えでは、こだわりは増やしていった方がいいと思っております。こだわりを辞めさせようとすると、ほかに支障が出てくるので、こだわりをどう活用していくかとか、こだわりを増やしていくことで行動や選択のバリエーションを得る。
 こだわっていくと、対人交流的な場面で、A君は自動車がすごく好き、B君はAKBがすごく好きという、その人を知るきっかけの1つのキャラクターというか、そういうところで役立ったりするので、自分を表現したり、知ってもらえるツールとしてこだわりが生きてきたりするなと思っています。

【宮﨑座長】
 よろしいですか、箕輪委員は。

【箕輪委員】
 ありがとうございます。
 こだわりを増やしていくというところに、今すごく興味をもちました。ありがとうございます。

【宮﨑座長】
 では、松矢さん。

【松矢副座長】
 松矢でございます。今日はどうもありがとうございました。
 大変興味深く思うんですが、当事者の団体でピアサポート。なるべく当事者で寄り添って、理解を深めていくというのは、とても大切だと思っているんですね。
 それと、世田谷区の事業ということで受託したんですけれども、きっかけはどういうふうに作ったかということです。僕は、自閉症協会は全国組織ですから、これをモデルにして若い当事者のリーダーが養成されれば、全国に広がっていって、いわゆる閉じこもりなどの解決に非常に役に立っていく。当事者でゆっくりと進めていくという、まずそこから自分が分かってくると、それがいろいろ就労や趣味に広がっていくということが非常に見えているので、今後、今はクローズでやっているけれども、オープンにしたいということもあるんですが、展望ですね。自治体から受託をしていくという仕組みを作っていくとか、いろいろな展望があるかと思うんですが、少し聞かせてください。

【宮﨑座長】
 少し難しいかもしれませんけれども、今考えていらっしゃる範囲でどうぞ。

【綿貫委員】
 まず、どうやって作ったかというか、我々の経緯としては、東京都自閉症協会の中で、定例会など、いろいろな方に来ていただいたり、我々が発信する機会をもっているんです。まず、世田谷区の資料の中にあるんですけれども、不登校やひきこもりといった対策の1つで、やはりそこに発達障害の方が多いというところで、何かできることがないかという御相談に世田谷区の方が来てくださったんですね。そこで、実際に、例えば若者サポートステーションなどでピアサポート的な、本人たちの目線でカウンセリングではないんですが、グループで茶話会みたいな感じで話すところから始まっています。そこに一定の効果があったというところで、ピアサポートの手法や、そういった不登校、ひきこもりの対策に、当事者が何か寄与できるのではないかと世田谷区側が考えてくださった。
 それで、その資料の中にもあるんですが、支援のはざまとして、療育を終えた年齢層で若者サポートステーションなどの対象になる年齢層の間に10代後半から20代というところで、支援のはざまみたいなことがあって、そこに対して早くアプローチができれば、深刻なひきこもりといった事態を予防できるのではないかということで、まず青年期をやってみようみたいなことになりまして、「みつけばルーム」という試行事業が始まったんです。
 それで、実際にやってみて、すごく不思議なんですけれども、いろいろな情報を発信するんですが、例えば動物土偶作りとか、少しマニアックな内容をチラシやメールマガジンなど、いろいろな方法でまいていった結果、小学校の低学年からどこにも通っていないという、学校にも行けていないし、外に出ていないという方がうちに来たいとなって、定期的に通うという方がうちの3分の1ぐらいいらっしゃいます。
 やはりそういう情報発信をしていって、その情報が一般的な支援とは違う情報でひっかかるというか、本人の中で何かのきっかけになるようなことがあるんだなと。それが何かということを、今後詳しく検討していかなければいけないなと思っているんですが、そういったひきこもりや閉じこもりといった対策として、こういった支援やアプローチも有効性があるということを思っております。
 実際、行動会議やいろいろな機会でお話しさせていただくと、うちの自治体でもやりたいということで、ほかの行政や都道府県からうちに見学に来る方がもう既に出ています。持ち帰って自分の地域でもやりたいと行政レベルで思っている方が増えてきているので、我々も試行事業の中で得たものをもう少し整理したり、検討していって、いろいろなアプローチが存在するのがすごくいいと思っていて、本当に企業就労をばりばりやりたいという人もいると思います。そういうことは全く否定しないし、うちの中にもそういう人がいるかもしれないんですけれども、選択肢やきっかけの1つとして、こういったアプローチが知られていって、広まっていったりするといいなという展望があります。

【松矢副座長】
 どうもありがとうございました。

【宮﨑座長】
 ほかにありますか。
 今のお話については、ここの課題でもあると思うので、是非、後ほど皆さんの御意見を頂戴できればと思います。
 どうぞ。山田委員、お願いします。

【山田委員】
 山田です。ありがとうございました。
 1つ御質問しますが、19と3と3ですから利用者は25人ということですか。

【綿貫委員】
 はい。

【山田委員】
 その25人に対して、どのくらいの期間事業をやられるのか。それともずっとここにいるのか。回転率はどうなのか。その辺が分かったら教えていただけますか。よろしくお願いします。

【綿貫委員】
 ありがとうございます。現時点で、卒業や終結みたいなことはうちでは設けていません。それは今後、継続していく中では、別のところに移行したり、もう一個作ったり、少し考えなければいけないと思っているんですが、現時点では卒業や終結は考えていません。
 それは、うちに来ている利用者さんたちを見ていて思ったんですが、今まで彼らに対する支援というか変化を求めるスピードが少し速過ぎたなと思っています。本人たちが、今どんどん変わっていってはいるんですが、そこに周りがこういうものもあるよ、ああいうものもあるよ、こういう就労をしてみようとやっていくと、せっかく元気になったり、育ってきている部分が、また窮屈になったり、プレッシャーになったりして引いていってしまうというのが想定されるというか、今までそういう支援を受けてきてうまくいかなかった方たちなので、現時点では仕事をしながらうちに通っている人もいるんですね。余暇としてうちだけが機能しているわけではなくて、その方は別の場所でも余暇をもっていたりもするんです。それは、最初からほかの場所で余暇をもてていたわけではなくて、うちでやって、こういうことができそうと思って、例えばコミケではないですけれども、少しオタクの場だったり、イベントだったり、そういう場所に行ってみたいと思ったり、行けそうと思ったきっかけが、うちで過ごしたことだったらしいので、そういう余暇の広がりだったり、仕事を頑張って、うちで少し休憩し、またエネルギーを回復して、メインの活動を頑張るなど、並行するような形で利用している方も多くなってきています。
 なので、現時点では卒業ということは考えていないんですが、その方たちは、我々が想定しているところでは、メインの活動や我々の余暇のところで培ったことで、本当に自分で余暇の場を見つけたりして、そちらに比重が移行していくのではないかと思っています。
 物理的に月30日しかないので、例えば最初、うちに10回来ていた方が5回になったり、3回になったりして、徐々にそちらに移行していったり、半年に1回来るとか、そういうふうに変化していくのではないかなと現時点では想定しています。

【山田委員】
 ありがとうございました。

【宮﨑座長】
 ありがとうございました。
 後の時間もありますので、綿貫委員の「みつけばルーム」の取組についてはこれで終わりにさせていただきます。
 それでは、続いて、町田市の「とびたつ会」の皆様から御発表を頂きます。町田市の生涯学習センター、岩田武様、「とびたつ会」の堀正明様、それから、稲村宏美様、藤原幸子様、松田泰幸様、宮城幸夫様、関水末子様でいらっしゃいます。
 それでは、御発表をお願いいたします。

【岩田氏】
 町田市の岩田と申します。「とびたつ会」の方たちの報告の前に、私、町田市の職員なんですが、なぜ説明をするのかというところを簡単に説明させていただきます。
 町田市では、障害者青年学級という取組を行っております。青年学級は、今年で44年目になるんですが、対象は知的障害の方たちです。その方たちが学校を卒業した後、社会に定着していくのが難しいだろうという時期、時代、今でももちろんそうだと思うんですが、そういった方の親の方から、何か集まれる場を作ってくれないかということで、青年学級を行うことになりました。
 これは、社会教育として行っていますので、皆さんが互いに教え、教わるという形で行うんですね。後で、また少しできればと思うんですが、いわゆる青年学級の活動以外にも、1988年の「若葉とそよ風のハーモニーコンサート」という形で、外部の方に発表する場を設けていたり、本日のポイントのところは2004年の本人活動の会、「とびたつ会」ができたりということがあります。
 ざっくりの人数では、学級生が166名で、ボランティアスタッフの方は60名ぐらいいるんですが、その方たち全体で活動するというよりは、3つの学級に分かれまして、50名ちょっとずつの活動で行っています。それで、50名の方たちがどう活動するかといいますと、自分の興味のあるコース、音楽コースやスポーツコース、演劇コースといったコースを作りまして、大体10名程度で1年間通して活動を行っています。
 一番下の「とびたつ会」の青年学級の体制と規模ですね。4学級目を作ることが難しいとか、施設の大きさの問題などから、新人の学級生が入れない時期がありました。自分たちが青年学級を卒業して、本人活動の会を始めようということで行ったのがきっかけです。
 その青年学級では、一体どういう活動をやっていたのかというのが、目的は「生きる力・働く力の獲得」ということで、40年前からこれをやっていこうということで話し合われています。
 実際、「生きる力・働く力」はどうやって獲得するんですかというところが、「自治」と「生活づくり」と「文化の創造」という柱を軸に活動しています。
 活動の流れなんですが、余暇活動ですので、日曜日や土曜日に行うんですが、1日じっくり行います。「朝のつどい」や「帰りのつどい」といったところは、50名の学級生全員が集まって、学級のオリジナルソングを歌ったり、全体に関わることを行っているんですが、10時半から「行うコース活動」が、原則、コースの中での活動になります。学級活動は、学校みたいに指導要領などがあるわけではなくて、自分たちが何をするのかというのは、自らの学級生自体が話し合う。何をやろうか。私はこういうことをやりたいという話し合いをしていった中で、何をやっていくかということが決まります。
 障害のある方が、自分で自分のことを決めるということがすごく大事なことなんだなと、活動に参加していて思うんですが、各コースの班長が活動の中だけではなく、学級全体に関わる話については班長会という場を作りまして、その中で自分たちがどうしようかということを話し合って決める。集団で活動することにより、自分たちで自分たちを管理する、運営する「自治」です。
 コース活動の中で、話し合いが基本と言ったんですが、どういったことを話し合うのかといいますと、やはり生活、家庭や仕事、勤務先といった場所から離れた第3の場所が青年学級として活動の場になっています。その第3の場から、生活や仕事を自分の仕事の話をしたり、仲間の仕事の話を聞いたり、家庭の話を聞いたり、その中で自分のこと、自分の暮らし、生活を振り返るきっかけや気付きを与える場になっています。これが「生活づくり」というところです。
 最後、先ほど言ってしまっていたんですけれども、「朝のつどい」や「帰りのつどい」の中で、よく歌われているオリジナルソングがどういったものかといいますと、障害をもっているという、ただそれだけで生活の中や社会の中で差別や偏見などをもたれて、そういう対応を受けることがあります。もちろん、それだけではなく、これが楽しかった、これがうれしいということもあるんですが、そういった仲間への思いといったことをそれぞれ歌詞に込めたものがオリジナルソングとして、何曲あるのか分からないぐらい、いっぱい創られていますね。

【堀氏】
 100。

【岩田氏】
 それを「文化の創造」と言っているんですが、この「文化の創造」で歌を創れたということが、本当に青年学級としてはすごく成果だと思っています。先ほど言いました「若葉とそよ風のハーモニーコンサート」では、やはりオリジナルソングががんがん歌われて、自分たちの気持ちを発信していこうということをやっております。それが「人生を切り拓く力」になっていけばいいなということです。
 先ほど言いました、社会教育として行っているというところなんですが、支援をする人たちが教える・学級生が教わるという関係ではなく、互いに学び合うというフラットな関係。支援者が上から、これはこうやってくださいという話ではなく、支援をしていただく方も、その活動の中で自分が学ぶことを大事にしているので、報償費、謝礼としての予算化なども行っています。
 実際、支援の方たちは、活動内容の2個目のところです。当日の活動以外に木曜日の夜間に、会議などを年間35回もやっていまして、本当にタフな方たちに支援していただいているので、青年学級が続けていけているんだなと思っています。青年学級の意義と成果というところではあるんですが、やはり学校卒業後における教育機会が保障できているというのは本当に大事なことだなと思っています。
 本人活動の支援は、当事者の人たちが自分の生活を豊かにしていくために何をやっていけばいいのかというのが、青年学級の活動に参加していく中で、何がしか自分なりのものを作っていっていただく。そういった場になっていると思います。
 3番もそうですね。職場や家庭ではない別の場所があることによって、当事者の仲間を作って思いを共有し合っていく。こういった場所があるのは、本当に大事な場所だなと思っています。
 それで、今日のところですね。卒業生団体「とびたつ会」ができたというのは、青年学級の大きな成果なんだなと思っています。
 あと、青年学級を40年間やってこられたとは思うんですが、逆に卒業の制度がないというのもありまして、学級生自身の保護者の方の高齢化や、先ほど言いました支援していただいている方たちの高齢化もあります。以前、支援していただいている方は学生の方が多かったようなんですが、最近はなかなか学生さんが来てくれないという状態で、活動の制限が出てきているという状況があります。
 今度、やりたくないんですが、新入生の募集の抽選も、申し込みが13名あったのに、4名ぐらいしか受け入れられないという悲しい抽選会をやります。
 今後の方向性というのは、今まで青年学級をやってきた活動があるので、どうやっていけば新しい方向があるのかとは思うんですが、なかなかこれという形が、正直浮かんでいないところがあります。
 卒業がないというのもありますので、全体としての年代は40代が一番多いんですね。20代の方もいれば、60代の方もいるので、それぞれの人にとっての生きる力は何なんだろうかと考えると、もう考えても考えてもというところです。
 こういったところが青年学級の町田市としての取組になります。
 この後、「とびたつ会」からの報告をしていただきます。

【堀氏】
 私たちは「とびたつ会」です。まず、最初に歌を歌います。「私ぬきにきめないで」を聞いてください。
 ワン・ツー・スリー・フォー。

【松田氏】
 もう一回いいですか。緊張しちゃった。

【堀氏】
 ギター、今日、調子悪いな。ワン・ツー・スリー・フォー。
(「私ぬきにきめないで」歌唱)
♪わたしのこと わたしぬきに きめないでほしい
 わたしの声 わたしのおもい 伝えたい あなたに
1はたらくこと 大変でも なかまたち がんばってる
 まかせられた 仕事がある 自信もって とりくんでる
 みとめられたい はたらきたい わたしにあった 仕事がしたい
 つらいことも あるけれど わたしにとって 大切なこと
 わたしのこと わたしぬきに きめないで ほしい
 わたしの声 わたしのおもい 伝えたい あなたに
2子どものころ 話せなくて 友だちから からかわれた
 練習して いまはちゃんと 話せるのに つづく差別
 みとめられたい 話がしたい きもちかよわす 仲間がほしい
 話すことは たいへんでも 伝えたい わたしのきもち
 わたしのこと わたしぬきに きめないで ほしい
 わたしの声 わたしのおもい つたえたい あなたに
(拍手)

【堀氏】
 僕は、堀正明です。鶴川中学校を卒業してから、佐藤牧場で働いてきました。
 今は、結婚して、グループホームに住んでいます。ユカリさんと一緒に生活しています。
 今は、52歳です。仕事は、東京園芸で仕事をしています。
 20歳から青年学級に入りました。青年学級に参加しています。ちょうど青年学級のときに、ある工場で働いていましたけれども、ちょっといじめられた。ちょうどそのとき、僕はまだ青年学級の全体の学級リーダーをやっていて、工場で働いているとき、パートさんの主任にいじめられて、帰りの小田急線で自殺しようかと思って、かなり苦しかった。
 ちょうどその日が土曜日で、その次の日曜日が公民館学級の成果発表会があるということが頭に入っていたから、自殺はしなかったということ。あと、やはり僕がいないと成果発表会がどうなるか不安ということもあったし、みんな友達がいるということで、ここまで来たということですね。
 以上です。

【藤原氏】
 藤原幸子です。町田養護学校高等部を卒業して、福祉作業所「なないろ」で下請の仕事をしています。31年になります。
 2003年に滋賀で行われた「ピープル・ファースト」に参加して、みんなで本人活動の会を創ろうと話し合いました。そのとき、青年学級は人がいっぱいで、私たちが卒業して、新しい若い人に入ってもらおうと思いました。それで、「とびたつ会」を創りました。

【稲村氏】
 稲村宏美です。世田谷にある都立園芸高等学校を卒業しました。
 「私はあなたを障害者だと思っていないから」。仕事をする中で、この言葉を言われるたび、「あなたと私は対等だ」というのとは違うように感じる言い方に胸が苦しくなる。
 時々起こるてんかん発作、めったに起こることがないので、そのことを知らない人が多く、その後の周囲の反応が怖くて、びくびくしている自分がいる。
 障害者雇用という形で入ってはいる私ですが、決して特別扱いをしてほしいわけではありません。努力し、できることを増やすこと。目の前のことを一生懸命やることも大切にしていますが、しかし、100%ほかの人と同じように仕事をすることは難しいのも事実。認めることは認めてもらわなければ、お互いに煮詰まってしまう気がします。
 だけど、思っているだけでは分かってはもらえない。職場の人たちに理解してもらえるように、分かり合い、よい仕事ができるようにしっかりと自分という人、自分の気持ちを伝えていくことが大切なのではと考えるようになりました。
 障害をもった人という見方を切り離して、いろいろな人がいるけれども、みんながよい関係性を作り、ともに生きていける世の中につなげていきたい。
 言葉にすることで、「若そよ」のステージを通して、そういったことを伝えられたらと考えています。
 「とびたつ会」の発表は以上です。(拍手)

【宮﨑座長】
 ありがとうございました。
 なぜ「とびたつ会」ができたかということも含めて、青年学級から「とびたつ会」。今の各地区にある青年学級の課題も、この中で大分語られたような気がしているんですが、皆さんから御質問等があればどうぞ。
 それでは、まず、戸田委員。その次に松田委員、お願いします。

【戸田委員】
 すばらしい発表をありがとうございました。ここに全てが集約されているような気がして、すごく勉強になりました。
 興味があったのは、岩田さんに質問なんですけれども、僕も自分のときにほとんど説明しなかったんですが、この資料を見ていただければ分かると思うんですね。私も冒頭、申し上げたんですけれども、結構、生涯学習や社会教育の受け皿はいいなと思っています。
 この事業費についてなんですけれども、2つ質問がありまして、1つが事業費です。単独で教育委員会の予算のみでやっているのかというところと、それに近しい質問としては、社会教育、いわゆる教育委員会サイドのみでやられていて、いわゆる障害、福祉、そちら側も入れてくれるのではないかと思うんですけれども、その辺との関係性はどうなっているかというところを教えてください。

【岩田氏】
 御質問ありがとうございます。
 まず、事業費に関してなんですが、都からの補助金を頂いていまして、2分の1の補助金を頂いています。市の方の予算としては、600万円ぐらいになります。その600万円の使い道が、先ほど言いました、支援をしていただいているボランティアの方たちに、1回の活動で5,000円。大体20人ぐらいの方に来てもらっているので、5,000円掛ける20なので、10万円ぐらいの活動費が掛かっている。
 それで、木曜日のボランティアスタッフの担当者会議では、7時から10時までの3時間ぐらい、ざっくりやるんですが、2,000円。その担当者会議に参加していただいている方が、ざっくり10人ぐらいになっているというところです。その謝礼費だけで五百数十万円ぐらいで、あとはほんのちょっとした雑費というもので扱われています。
 庁内の福祉部門などとの関係性があるかといったところなんですが、そもそもやっている場所が生涯学習センター、公民館なんですが、公民館でやっているのと、3つの学級のうちの1つはひかり療育園という、うちの市の施設としてあるところで日曜日に活動を行っています。
 ただ、ひかり療育園で始めた当初は、ひかり療育園の職員なども関わってくれてはいたんですが、現時点では、もう場所貸しだけになってしまっているような状況ではあります。
 あと、福祉部門の職員なども、過去は応援であったり、一緒に関わってもらってはいたんですが、現時点ではなかなか関係性がちゃんと応援という形にはなっていないところがあります。
 以上です。

【松田氏】
 1点だけ補足していいですか。すみません、横からしゃしゃり出て申し訳ありません。
 私は「とびたつ会」の支援している松田と申します。障害者青年学級にも関わっていまして、最初の始まりのところだけはお伝えしたいと思います。
 青年学級の要望について、育成会のお母さんたちが福祉事務所に、まずは要望をもって持ってきました。ただ、その当時の福祉事務所としては、障害をもっているからといって、全部福祉行政が面倒見るのはどうなのかという考えをもっていて、その当時は健常者の青年学級も行われていましたので、やはり社会教育の方で取り組む価値があるのではないかということで、当初は福祉事務所と社会教育課が協働でこの事業に取り組み始めました。1991年のひかり学級ができるところまでは、職員も一緒に入ってやっていたということです。
 すみません。補足でした。

【宮﨑座長】
 それでは、松田委員、お願いします。

【松田委員】
 御発表ありがとうございました。
 私ども千葉県でも同様の試みはしているのですが、幾つか発表頂いた事例と共通の悩みといいましょうか、そういうものを抱えています。そこでお尋ねなのですが、先ほど御説明いただきました「とびたつ会」なんですが、こちらへの移行をどういう形で、例えば、参加される方の自主的なものなのか、若しくは何らかのサジェスチョンを行っていくのかということをお聞きしたいと思います。
 もう一つ、今ほどの御説明とも絡むのですが、恐らくこの有識者会議のかなり大きなテーマにもなっていくのだと思うのですけれども、何をもって障害者の学びと位置付けるのかという部分で、先ほど「文化の創造」と位置づけられているのをお聞きし、よいキーワードだなと考えたところです。
 先ほど、障害をもっているから全て福祉部門ではないだろうというお話があったと思うのですが、行政内部の動きとして、障害者の学びを、どういうふうに御説明をされていっているのかなということで、少し御確認をさせていただければと思うのですが。

【岩田氏】
 すみません。御質問ありがとうございます。
 まず、「とびたつ会」への移行の仕方なんですが、これはもう青年学級自体がそうなんですが、本人が活動に参加したいという気持ちをもつことになるので、青年学級ではなく「とびたつ会」で活動していきたいと本人の気持ちがなったところで「とびたつ会」への移行になっているという形です。
 ですので、行政側からという内面だけで見れば、「とびたつ会」はいい場所だよということで紹介はするんですが、青年学級は青年学級で楽しい場所でもあるので、思ったより移行はしてくれていないというのはあります。
 行政の面から見たときの障害者の学びをするところが福祉部門以外で行う必要があるのではないかというのは、おっしゃるとおりだと思います。まさしく学びという面で見れば、教育委員会、こちらの生涯学習センターの方で行うべきところではありますし、福祉に限らない部分といった場面でも、人が生きていく上ではどこにでも行政は何がしかの形で関わってはいるので、あらゆる部門の方が障害者の方の何がしかの対応を考えていく必要はあると思っているんです。
 では、「何をやっていますか」と言われると、障害者計画などに関しては、例えば「とびたつ会」の方も、その計画の策定には参加してもらっているので、そういった当事者の声をどこで拾っていけるかというのが大事なのかなと思っています。

【松矢副座長】
 松矢でございます。私は、青年学級については非常に関心があって、生涯学習の一番土台のところにあるのが青年学級や青年教室ではないかと思っているんですね。そういう意味で、卒業がありませんから、リピーターがどんどん広がっていくと、どこでもあるわけですけれども、そういうことを幾つか、例えば東京学芸大学で教員を30年もやっていましたから、隣の国分寺がとても活発に、3つの公民館に青年教室があるというところを見たり、支援をしたりという経験をした。最近は、いろいろ困難があるので、提言してほしいというので、杉並区の済美日曜教室に1年間、ほぼ毎回通うということをやって、提言にはならなかったんですけれども、やはり大変だなという思いをしました。ですから、そこで抱えている問題をどう解決するかというのは、この有識者会議の重要な課題であろうと思います。
 それで、一番土台にあるということは、10人ごとでコースを作っていますよね。午前と午後やるわけです。午前と午後が違ったコースを選んでいいのかというのも、少し質問したいところですね。
 僕は、コースがあって、必ず自分が好きな活動ができるところがあるというのが大切で、10人でたくさんあるというのがとても重要なんですね。支援者が必要ですけれども、この土台のところがとても大切。今日は体調が悪いから行けないということがあったとしても、次回は行こうという気持ちがいつもある。
 私は、その上でもう一つ、例えば町田市はたくさん大学がありますから、オープンカレッジというものがあって、そこから青年学級から卒業して、リピーターが今度はそちらの方に移動するということがあったらいいなというので、第2層のところでオープンカレッジみたいなものを構想したいなということで、自分で実践もしているんです。でも、オープンカレッジもリピーターがいますから、同じ問題が出てくるわけですよね。
 だから、僕は修了証を持って、いろいろな形のオープンカレッジが、例えば企業の協力もあり、テレビの放送もあり、そこに支援者が入ってそれを生かすというような重層の生涯学習の構想ができればいいなという気持ちをもっているわけです。ここに参加しているのは、そういう気持ちが非常に強いんですね。
 そういう重層型であるといいなという感想をおもちかどうか。そうすると、移行していくし、会員制というか修了証があるので、それをためていくと、何か価値をもつというようなことを構想すると、そこで大人になっていくし、人生経験を積んでいくという意味の1つの証明として、それがいろいろなふうに生かされていくといいなと思っているんです。
 今、底辺としての一番大切なところをやっていて、その次の段階があるといいなという考えをおもちでしょうか。

【岩田氏】
 はい。すみません。

【松矢副座長】
 まず、コースのこと。

【岩田氏】
 はい。まず、コースに関しては、午前・午後で変えるというのはできませんで、6月から3月までの活動ではあるんですが、最初にどのコースに入るかというのを話し合って、自分は今年1年これをやっていくということでコースが決まりますので、1年間、原則コースは一緒のものになります。ですので、例えば劇コースですと、最終的に成果発表会という最後の場があるんですが、何がしかの劇を発表するまでで1年の活動ということで行っています。
 あと、重層的な支援の場所といったもの。欲しいなというか、「とびたつ会」以外にも、青年学級に関わっていた人たちが、例えば調理をする会で「おなべの会」や、絵を描いたりする会などもあったりします。ただ、そういったものはサークル活動に近いものになってしまっているので、企業や大学といった場所の方たちに、私の方から声掛けをというところまではいっていないですし、すみません、考えていなかったというのはあります。
 以上です。

【松矢副座長】
 ありがとうございます。

【宮﨑座長】
 はい、どうぞ。

【松田氏】
 何度もすみません。
 1点目のベースのところは、そもそも青年学級が始まった当時は、午前中は公民館の職員やスタッフで決めたグループ分けをしていて、午後からは自分の趣味に合った手芸をやるとか、勉強するというコースに分かれていたんですね。
 ところが、午前と午後で別の人たちに関わると、なかなかゆっくり落ち着いて活動できないという反省点が出始めて、それで1日通しての活動にしたということです。
 それから、一応、音楽や劇、ものづくりというテーマはありますけれども、基本はそこに参加している皆さんが年度当初にこういったことをやりたいですと決めますので、どこのコースでも、例えば歌を創ってみたり、どこのコースでも絵を描いてみたり、その中にいる人たちが決めるというのを原則にしています。自己決定の部分ですね。
 それから、2層構造、3層構造というところで言えば、実は、1997年に土曜学級という3つ目の学級ができた後に、公民館運営審議会の方に青年学級をどうしたらいいのかという答申を出しているんですね。その答申の結果としては、やはりそういった卒業の場というか、次のステップとして、当時公民館ではなかったんですが、社会教育事業で市民大学というのを行っていまして、その市民大学の中に、こういう言葉を使うと非常に不謹慎なんですが、「軽度の障害の人たちは、市民大学で学ぶ場を作っていったらいいのではないか」という議論がされていて、答申が出されました。
 それを受けて、なかなか行政の予算的なもの、人的な問題があってできないということで、自主的な「とびたつ会」が生まれてきたという経緯があります。

【松矢副座長】
 よく分かりました。ありがとうございます。

【宮﨑座長】
 では、是松委員。

【是松委員】
 ありがとうございました。国立市でございます。
 障害者青年学級、今は大分、全国的にも増えつつありますけれども、まだまだない自治体もある中で、障害者の青年学級の活動というのは非常に大切だなと思っております。
 ただ、どうしても行政主導的なところがあって、行政が提供するプログラムに参加してもらうという青年学級が多いのと、それから、古くからやっている私どももそうなんですけれども、やはりどうしても内容がマンネリ化してしまうという中で、町田市さんの場合は、自主運営的な青年学級にしているということで、自主運営にするがゆえに障害者の方々のそれぞれの学びのニーズ、あるいは学び方、こういう学びをしたいんだ、こういう活動をしたいんだというニーズが多く生まれてきて、実はそれが恐らくこの学級の人気というか、今見させていただいて、非常に参加者が多いのでびっくりしているんです。町田市さんは30万人ぐらいの都市ですかね。そうした中で、これだけの方が集まってこられるというのはすごいなと思います。
 また一方で、余り集まり過ぎて抽選になるという、これはうれしい悲鳴というか、何とかしなければいけない状況なんだろうなと思います。しかし、これはそれだけの活動の成果なんだろうなと思います。
 最終的に自主運営活動が自主グループ化まで、今「とびたつ会」でいっているというのも、これはすばらしいことだなと思いました。いわゆる全国で展開している障害者青年学級の新たなマンネリ化からの脱却、進展というところの1つの道筋が町田市さんの中にあるのではないかなと感じたところです。
 そうした中で、改めまして、参加者がこれだけ多いという、抽選にまでなるという理由をどう分析されているか。参加希望者が多いということです。
 それから、「とびたつ会」は、いわゆる完全卒業ということでいいんでしょうか。要するに、新しく入ってくる方のために籍を空けているという形を、先ほどおっしゃっていた方もいらっしゃいますけれども、「とびたつ会」に入ると、もう青年学級には、ひとまず籍は置いていないんだという状況になっているのかどうかということを確認したい。
 それから、「とびたつ会」の運営のサポートスタッフは、先ほど言った各青年学級でのボランティアが登録者52名で、1回20名ぐらいということだったんですけれども、このボランティアスタッフの中には、「とびたつ会」に携わっている方がいらっしゃるのかどうか。青年学級の現状と目標の表を見させていただくと、職員は公民館学級、ひかり学級、土曜学級には2人ずつ付いていますが、「とびたつ会」には付いていない。だけど、担当者という数が書いてあるんですけれども、この担当者がどういう意味だかよく分からないんですが、これは先ほどのボランティアスタッフという意味でいいのかどうか。その3点、少しお聞かせ願いたい。

【宮﨑座長】
 では、お願いします。

【岩田氏】
 すみません。いろいろと割愛してしまっていたので、どんどん飛ばして申し訳ないです。
 まず、「とびたつ会」に移籍というか卒業すると、青年学級の活動には参加できないのかといった点についてなんですが、原則そういった形です。もちろん「とびたつ会」に入りました。でも、思った活動ではなかった。それで、青年学級に戻りたいということがあって、両方に入るというのは、「とびたつ会」の卒業団体という趣旨が損なわれてしまうので、基本なしという形になっています。
 すみません。資料の説明のところなんですが、「ボランティアスタッフ」と言葉では言ってはいるんですが、青年学級の中では、ボランティアスタッフのことを「担当者」と言っています。ですので、「担当者」というところはボランティアスタッフの方たちだという認識で結構です。
 青年学級を支援していただいているボランティアの方と、「とびたつ会」を支援していただいている方たち、両方に参加していただいている方はおります。今日来ていただいている方も、それぞれの学級の担当者、ボランティアの方たちです。
 ごめんなさい。これで……。

【是松委員】
 参加者がこれだけ多いという理由と、抽選にまでなっていくということについて、今後どういうふうに対応していこうと考えていらっしゃるか。

【岩田氏】
 参加者が多い理由は、やはりおっしゃっていただいたとおりで、青年学級が、当たり前なんですが、口コミで広まるんですよね。それで、募集を年に1回しかできないんですが、それでも多くの方からの申し込みをいただいて、先日、「もう10年待っているんです」というお母さんからの連絡を聞いたりすると、胸が痛くてしょうがないんですが、多い理由は、やはり青年学級の活動がすばらしいものを行っているというのは事実なんだと思っています。
 ただ、スペースの問題とボランティアの方たちの人数の問題から、受け入れることができないので、やむを得ず抽選になっている。受け入れられない時期が一時期あったんですが、それはよくないだろうということで、少しでも新たな人に新年度に向けて入ってもらおうということで募集をしているという状況です。
 すみません。答えにならないかもしれないんですが。

【宮﨑座長】
 すみません。時間が大分押しておりまして、もう一組お話をしていただく都合があるので、後でまたお願いします。
 先ほど、宮川政務官にいらしていただきました。一言、何か。

【宮川文部科学大臣政務官】
 いえ、もうお時間がありますので、進めていただければと思います。よろしくお願いいたします。

【宮﨑座長】
 すみません。
 それでは、本日の最後に、株式会社ミライロの岸田ひろ実様、岸田奈美様より御発表を頂きます。
 岸田様、どうぞよろしくお願いいたします。

【岸田(ひ)氏】
 では皆様、改めまして、こんにちは。株式会社ミライロの岸田ひろ実と申します。ここからは、私の方で、学校卒業後における障害者の学びの推進というところでお話をさせていただきたいと思います。
 そして、お伝えさせていただく私なんですけれども、今、車椅子に乗って生活をしております。10年前のある病気がきっかけで、ある日突然歩けなくなって、今は車椅子に乗って生活しているわけなんですが、実は、またもう一つ、私には知的障害のある息子がいます。息子にはダウン症があります。重度の知的障害もあります。今22歳なんですけれども、B型の作業所に毎日通って生活をしているということになります。
 ですので、今日、私の3つの視点、歩いていた頃の健常者の視点、そして、車椅子に乗る障害のある当事者の視点、また、障害のある息子をもつ母親の視点、この3つの視点から、「障害のある当事者のニーズと課題」ということで、「~環境・意識・情報のバリアから考える~」というテーマでお話をさせていただきます。
 では、早速なんですけれども、まず、バリアフリーとユニバーサルデザイン。もう皆さんもこの言葉の意味をよく御存じかと思うんですが、改めてここで、その考え方、意味の違いについてお話をさせていただきます。
 まずは、「バリアフリー」という言葉なんですが、これは皆さんもよく御存じのようにバリアをフリーにする、障害を取り除くという意味です。近年、高齢化が進んだ今の社会においては、障害者だけではなく、高齢者のためにもバリアフリーという使われ方をするわけなんですが、そもそも対象は障害者です。1970年頃、日本がこの「バリアフリー」という言葉を選んで使うようになったわけなんですが、そもそも対象は障害者。そして、また近年、対象が障害者だけでは、もう補い切れない、狭過ぎるということで、日本も世界共通の言葉、考え方、「ユニバーサルデザイン」という言葉を選んで使うようになりました。
 ユニバーサルデザインは、バリアフリーと何が違うのかといいますと、対象が違います。対象は、国籍、性別、年齢、障害の有無に関わらず、みんなが対象です。そして、みんなにとって使いやすいものは、サービスの在り方はと考えていくのがユニバーサルデザインという考え方です。
 そして、今日、皆さんに見ていただく前のスライドなんですけれども、このスライドも少しだけユニバーサルデザインの視点で作ってきました。といいますのも、このスライドは、背景が真っ暗な黒です。文字は明るい白です。なぜかといいますと、このような広い場所で大勢の皆さんにスライドを見ていただくときに、ぱっと見て分かりやすいように、そして、皆さんの目が疲れにくいようにといった配慮を込めて作ってきました。
 その違いを少し感じていただこうと思いますので、背景を白に変えてみました。白にすると、少しまぶしいなと感じられる方もいらっしゃるかもしれません。白は、この世で一番明るい色です。光を多く反射するので、ずっと見ているとどうしても目が疲れやすくなります。ですので、今日は皆さんの目が疲れにくく、そして、ぱっと見て分かりやすいように、そういった配慮を込めて、このようなスライドを作ってきました。
 実は、この背景を黒、文字を白という手法なんですが、弱視といって、眼鏡やコンタクトを付けても著しく見えにくい方のために作られた手法です。弱視の方は、このように真っ黒な画面のパソコンを操作しています。真っ黒な紙の本を読んでいます。そもそもは、弱視の方のために作られた手法なんですが、ひいては、このように私たちみんなにとって使いやすい手法となっています。
 このように特定の人のためにとってではなく、私たちみんなにとって使いやすいものは、デザインはと考えるのがユニバーサルデザインという考え方です。これからの社会はバリアフリーだけではなく、このみんなにとってというユニバーサルデザインの考え方が社会の根幹をなしてきますので、是非皆さんにもこの「ユニバーサルデザイン」という言葉、覚えておいていただければと思います。
 そして、ここで少し弊社の紹介をさせていただきたいと思うんですが、私が働いています株式会社ミライロという会社なんですが、ユニバーサルデザインのコンサルティングを行っている会社です。そして、ミライロの企業理念、みんなが大切にしている考え方は、バリアバリューという考え方です。これは、バリアをバリューに変えていく。障害を価値へ変えていこうという考え方です。
 弊社の従業員は、今51名です。そして、その中の11名は障害があったり、あるいは難病があったり、また、LGBTの当事者がいたりします。
 では、今ここで、現在、日本国内でユニバーサルデザインを求めている人はどれだけいるのかということを考えてみたいと思います。高齢者の方、27%です。今や4人に1人が高齢者だという時代です。また、障害者。国民全体の7%。そして、高齢者や障害者だけがユニバーサルデザインを求めているわけではなく、ベビーカーを押しているお父さん、お母さんにとっても同じような不安をもっています。不自由を感じています。ベビーカーに乗っている子供は3歳未満の子供を指します。3歳未満の子供は、人口の約2%です。ということは、27%足す7%足す2%、合わせると国民全体の3割以上もの方が、何らかの不安や不自由を感じているわけです。ユニバーサルデザインを求めているということになるわけです。
 また、高齢者や障害者、子供たちもみんな1人で生活しているわけではありません。家族がいます。友達がいます。仲間がいます。ですので、ユニバーサルデザインというのは、高齢者や障害者、その方1人のためだけではなく、今や大勢の人々が求めていることなんだということも合わせてここで知っていかなければいけないことです。
 では、そういった中で、今、日本はどういった現状にあるのかということなんですが、こういった現状にあります。無関心か過剰。この両極端な現状にあるということです。
 これは、どういったことかといいますと、例えば目の前に困っているなという障害者の方、高齢者の方を見掛けたときです。声を掛けたいけれども、いや、声を掛けない方がいいんじゃないかな、見守っておくだけにしておこうかなと迷っているうちに、結局、声すら掛けられない。何もできなかった。無関心という態度を取ってしまうのが、まず1つ。
 そして、もう一方で、いやいや、そこまでしなくてもいいよと、過剰な配慮までしてしまう。おせっかいになるようなことまでやってしまう。過剰という態度を取ってしまう。この無関心か過剰、惜しい現状にあるということになります。
 では、今、この日本の社会に存在するバリア、どういったことがあるのか、ここで改めて考えてみたいと思います。障害者が感じている壁、バリアというのは、今3つあると考えています。環境の壁、意識の壁、情報の壁、この3つです。では、この一つ一つについて、改めて皆さんと一緒に考えていきたいと思います。
 まず、環境のバリアについて説明をさせていただきます。生涯学習における環境のバリアは、このようなものがあります。例えば車椅子やつえをついたまま、校舎のエントランスに入れなかったり、階段を上れなかったり、トイレに入れなかったりということ。また、校舎にたどり着くまでの公共交通機関が利用できないということ。点字ブロックが敷設されておらず、視覚障害者が自力で施設にたどり着けないということ。また、万一、火災や地震が起こったときに、障害者が逃げるための設備が用意されておらず、不安を感じるということ。このように、施設や外出における物理的なバリアが環境のバリアです。
 環境のバリアを感じている人たちにとって有効な手段が、インターネットを使ったオンラインセミナーです。例えば私自身も車椅子に乗っています。体力が低下しているためもあり、長時間の外出は厳しいです。また、人通りが多い時間の外出はとても不安になります。オンラインセミナーであれば、自宅にいたまま、例えば寝たきりであったとしても、学習をする機会を提供することができるわけです。
 また、弊社では、障害者とのコミュニケーションにチャットツールを使用しています。このチャットを使って、まるで電話をしたり、隣にいるような感覚でコミュニケーションを取ることができています。これは、運営側がコストを掛けて施設を整えたり、あるいは対応する負担を軽減することにもつながります。
 続きましては、意識のバリアについての説明です。障害があることで理解をしてもらえず、講座への申し込みや参加を拒否されることもあります。環境のバリアのある校舎や教室に行く際、人の助けが必要な場合であっても、サポートしてもらえないこともあります。また、規則やルールの柔軟な対応を行ってもらえないことがあります。
 例えば私の場合は、車椅子で通勤ラッシュの時間帯に電車に乗ることはできません。参加の時間をずらすことや、また車での来場を認めてもらうことなどが必要になってきます。
 また、聴覚障害がある場合は、電話で問い合わせをしたくてもできなかったり、視覚障害がある場合は、ウエブサイトからの問い合わせができないこともあります。このように人や企業、社会にある心理的なバリアのことを意識のバリアといいます。
 そこで、私たちがお伝えしているのは、ユニバーサルマナーという考え方です。ユニバーサルマナー、このように定義付けています。自分とは違う誰かのことを思いやり、適切な理解の下、行動すること。これがユニバーサルマナーである。これだけ聞かれると、少し難しいなと思われるかもしれませんが、決してそんなことはありません。
 例えば私の車椅子に乗っている目線の高さは、ちょうど110センチです。立っている人の目線とは違います。かなり低いです。この110センチの目線では、私にしか見えないもの、届かないもの、使えないものがあります。また、私にしか分からない世界があります。ですので、今や歩けない私からすれば、歩ける人のことがよく分からない、知らない、どう接していいのか、どんなコミュニケーションを取ったらいいのか分からないといったこともたくさんあります。
 ですので、逆もあっても、これは当然のことです。歩ける皆さんが歩けない人のことが分からない、知らない、どう接していいのか分からない。これは、仕方がないことです。
 では、一体何が大切なのか。それは、自分とは違う誰かの視点に立って、一度考えてみることです。自分とは違う誰かのことを思いやることです。そして、行動に移すこと。これが何よりも大切だということです。
 従来、高齢者の方、障害のある方、また、自分とは違う誰かと接するとき、少し難しいな、自分には関係ない、他人事のようにとらわれがちでした。しかし、今私たちが住んでいる日本の社会は、世界に類を見ないスピードで高齢化が進んでいます。超高齢社会です。
 また、今では街中で障害のある方を見掛けること。もうそんなに珍しい時代ではなくなってきました。そういった中で、私たちが高齢者の方、障害のある方と触れ合うとき、接するとき、もう特別な知識や高度な技術は必要ではありません。誰もが身に付けていて当たり前の領域、心遣いの1つだと考えています。ですので、ユニバーサルマナー、「マナー」と名付けて皆さんにお伝えしています。
 では、私たちが今やらなければいけないこと、一人一人が取り組んでいかなければいけないことは何なのかということになるんですが、これはハードとソフト、2つの軸を同時に整えていくということです。
 ハードというのは環境や設備における障害を取り除くということなんですが、これだけを取り除けばいいかというと、それだけではありません。そして、また、このハードにおける障害は、いつでも簡単に取り除けるかというと、少し難しいことがあります。段差があってもスロープが付けられない。階段しかなくてもエレベーターが設置できない。そういったこともあるわけです。
 そういったときに大切になってくるのは、ソフトの部分、向き合い方、サービス、心のバリアフリーという部分です。たとえ段差があったとしても、階段しかなかったとしても、障害のある方との向き合い方、声の掛け方、そういったことを誰か1人が知っているだけでも十分に向き合える。目の前にある障害は取り除けるということになるわけです。
 ハードは変えられなくても、ハートは今からすぐに変えられる。常にこういった考え方も伝えていきたいと思っています。
 では、最後に情報のバリアについて説明していきたいと思います。情報のバリアということなんですが、例えば聴覚障害のある方は、講師の声が聞こえなかったり、グループワークの話が分からず孤立してしまったりします。手話通訳のほか、口の動きで伝える口話や紙に書いて伝える筆談などが求められてきます。
 また、目が見えない方、見えづらい人は、点訳であったり、あるいは拡大コピーの資料を必要としています。人によっては、パソコンでデータを送って、読み上げソフトを使う人もいらっしゃいます。音声認識ソフトやアプリケーションを使って会話ができる場合もありますが、そういったものが用意されていないこともしばしばあります。このように、障害のある人が障害のない人と同じように情報を受け取ることが難しいこともあります。
 そして、最後に、自分が通う校舎、施設がバリアフリーかどうかということを事前に分からないことも多くあります。参加の制約を生んでしまうこういった情報面のバリアが、こちらに当たります。
 弊社ミライロでは、聴覚障害がある方にできるだけリアルタイムにコミュニケーションが取れるように、手話通訳士を派遣したりしています。それだけではなく、電話リレーサービスや文字リレーサービスによって問い合わせ対応にも対応しています。できるだけリアルタイムで聴覚障害のある方も、そうでない方も、コミュニケーションが取れるようになることを目指しています。
 また、こちらは日本財団の支援を受けて、弊社が開発し、特定非営利活動法人CANPANセンターと共同運営する「Bmaps(ビーマップ)」というアプリです。こちらは、誰でも自由に、無料でお店あるいは施設のバリアフリー情報を投稿することができます。そして、誰でも自由にその情報を得ることができます。是非こういった誰でもバリアフリー情報を得ることができるアプリというのをたくさんの人に知ってもらって、広めていって、誰もが簡単に情報を得られる、そういった機会を作っていきたいと思っています。
 このように3つのバリアについてお話をしましたが、実は、お金や時間を掛ければいいかというと、そうではありません。今の現状はどうかといいますと、過剰になり過ぎてしまっているケースもたくさんあります。「なんちゃってユニバーサルデザイン」と私たちは呼んでいます。障害者のことがよく分からない、知らない、経験がないなどという理由から、どうしても何かを開発するときに、物作りを始めるときに過剰になり過ぎてしまい、誰も使わない、そして、使いづらいといったものを作ってしまいがちだということもたくさんあるわけです。分からない・知らない・経験がない、まずは、こういった「ない」から始まる不安の解消が必要となってきます。
 障害のある方のことを、まず知る。そして、障害のある方が、実際、どんなことを求めているのか、どんなニーズがあるのか、そういったことをしっかりと把握した上で、向き合い、物作りをする、サービスを提供する、そういった学びの場所を提供する、そういったことをしていかなければいけないと考えています。
 私たちに求められているのは、無関心でもありません。過剰でもありません。このちょうど間の部分のさりげない配慮というのが、私たちには求められています。これまでのユニバーサルデザインは、いいことだからやっておけばいい、やらなくてはいけない、そういった社会性を重視した考え方が主流でした。しかし、これからは経済性が必要です。教室にとって、負担ばかりではなく、受講者が増える、参加費が増える、負担が軽減される、そういったメリットがなければ、生涯学習は広がらないと考えています。
 日本は、ほかの国に類を見ないスピードで高齢化が進んでいます。高齢者や障害者が多い日本だからこそ、社会性と経済性を両立させるユニバーサルデザインの先進国を目指し、生涯学習を活性化させていきたいと考えています。
 では、私からの話は以上となります。御静聴ありがとうございました。(拍手)

【宮﨑座長】
 ありがとうございました。
 ただいまの御発表について、御質問、御意見等があればお願いいたします。
 それでは、戸田委員。

【戸田委員】
 プレゼン、ありがとうございました。

【岸田(ひ)氏】
 ありがとうございます。

【戸田委員】
 お話伺っていて、僕も無関心と過剰というところの定義が少し気になっていて、気になっているんだけれども、アクションできないのは無関心ではないよねと思っていたんですよ。
 なので、話を聞く中で、聞いていて思ったのは、リテラシーを高めていくというところなのかなと。それで、ユニバーサルマナーというのを浸透させることによって、一般のリテラシーを高めていくということが、御社の本当にやりたいことなのではないかと。僕は事業に投資する立場なので、そこかなと思って聞いていました。

【岸田(ひ)氏】
 ありがとうございます。

【戸田委員】
 なので、今これを見ていると、おっしゃっている理念と、今の位置付けというのが、少しちぐはぐになっているのではないかというのを感じていて、やはり通訳など、手法の提供をなさっているじゃないですか。

【岸田(ひ)氏】
 はい。

【戸田委員】
 だけど、最も解決しなければいけない課題は、こういった、どうしていいか分からない。向き合ったときにどうしていいか分からないという方たちが、今ここで定義されている無関心ということではなく、アクションできないことに課題があるのではないかと思っていて、どこまでやっていいのかとか、どこまではよくて、どこまではやり過ぎなのかというところを伝えていくことが極めて重要なのではないかなと思うんです。そこら辺に対して、確かにビジネス化はマネタイズしないといけないので、どこで、どうやって、このサービスで自立させていくのかというのはあると思うんですが、その理念の実現のために、話せる範囲でいいんですけれども、どういったステップワイズで考えているかというのを教えてください。

【岸田(ひ)氏】
 はい。すみません、今、広報の方から。

【岸田(奈)氏】
 岸田奈美と申します。岸田ひろ実の娘です。株式会社ミライロという会社は、私が大学1年生のときに、大学の先輩と3人で創業した会社で、その3年後に母を雇用したという形になりまして、話は講師として活躍しているんですが、事業モデルの構築は私の方が担当しているので、私から回答させていただきます。
 おっしゃるとおりで、どこからどこまで、幾らお金を掛けてやらなければいけないのかというのが、企業さんにとって一番分からないという課題なんですね。ただ、そこに関しても、私たちのメリットとしては、障害のある当事者の立場からお話をするので、ここまではやらなくていいですよということをお伝えできるのが、1つ強みになっているんですね。
 その意味では、いきなりユニバーサルデザインの改修をしましょうよとか、ミライロ・コネクト、手話通訳のサービスを入れようよと言っても、それに幾らお金を掛けたらいいか分からないので、そこから始まるお仕事というのは多くないです。
 今は、まずユニバーサルマナー検定を受けていただいて、全社員や全幹部の方に受けていただいて、うちの会社であれば、ここまではできるよねとか、障害のあるお客様が何人増えれば、お金を掛けたコストに見合うよねとか、一番顕著なのが、大阪のテーマパークで、年間9万人の障害のある方が2年前までは来場されていたんですが、私たちがユニバーサルデザインのコンサルティングをやって、ユニバーサルマナー検定も受けていただいた後、2万人の障害のある方の来客が増えたというところで、2万人増えたのであれば、今後、アトラクションもこれぐらいお金を掛けてやっていこうよという判断ができてくるので、私たちができることというのは、まず、ユニバーサルマナー。お金を掛けずとも、心の面でできることをお伝えする。その上で、プラスアルファ、その会社にとって一番いいこと、どこにお金を掛けていくかということを一緒に考えていくということが主な話になります。

【宮﨑座長】
 よろしいですか。

【戸田委員】
 はい。

【岸田(ひ)氏】
 1つ、無関心か過剰で、無関心ではないかもしれないという御質問があったんですけれども、おっしゃるように無関心を装うというのが的確な表現かと思うんです。そういった気持ち、優しい気持ち、何かしたい気持ちはあるんだけれども、結果的に無関心という態度を取ってしまったということで、そのリテラシーを上げていくという方向性の1つとして、誰もがもっている優しさ、無関心だけれども思いやる、察するといった優しさを発揮できるため、リテラシーを発揮できるためにユニバーサルマナーというのを広げていって、本当の障害者のニーズを酌み取ろうという流れを考えています。ありがとうございます。

【戸田委員】
 はい。

【宮﨑座長】
 ほかにありますでしょうか。
 はい、どうぞ、朝日委員。

【朝日委員】
 朝日と申します。とてもすばらしい発表で感動しました。

【岸田(ひ)氏】
 ありがとうございます。

【朝日委員】
 私は、4月に聾学校の方に異動になりまして、聴覚障害の職員が何人もいるので、発言する人は必ず前に出て発言しなくてはいけないというルールがあることに、初めてこの年になって気が付きました。私も勉強しなくてはいけないと思います。
 私は、「バリア」という言葉が、すごく悪い意味で使われていることが気になっていて、バリアというのは、守る、障壁という意味もあるのかなと思いました。14枚目のスライドのところに、「命を守るための設備が保障されていない」ということがあって、例えばホームドアは、高齢者や視覚障害者や子供たちを守るための本当にバリアだと思っています。ある小説の中で、「僕が君のバリアになってあげるよ」ということがあったり、鬼ごっこのときに「バリア」と言えば守られるという意味があると思います。
 ただ、今、岸田様のおっしゃったバリア、障害を取り除くことはとても必要なことだし、そのためにこんなに活動されていることはすごくすばらしいし、学校に帰っても伝えたいと思うんですけれども、これから何かもう少しいい言葉で、命を守るための保障というものが足りなくて、それをもっと作っていくことも、このユニバーサルデザインの中に含まれるのかな。
 例えば親子でくたびれてしまったときに、どこかに逃げ込んで少し休むであるとか、何か障害者がフリー、フリーになって、みんなと同じようになるということももちろん大事だけれども、本当に困ったときにみんなで守る。それは、障害のある人、ない人に関わらず、疲れたときは守ってほしいという、そのレベルで、何かこれだけのすてきな会社の皆さんなので、そういうプラスの意味のバリアに代わる言葉を入れて、このコンセプトに入れられると格好いいなと思ったので、そういうお願いです。

【岸田(ひ)氏】
 ありがとうございます。
 そうですね。障害というのは、おっしゃっていただいたように誰かを守るための障壁になる、守るためのバリアになるといったプラスのイメージもあるかと私も思います。今すごく共感させていただいて、いい考え方だなと感じました。
 また一方で、障害というのは人にあるものではなく、環境にあるという社会の側にあるという考え方で、社会の側にある障害、例えば段差があったり、階段があったり、そういったことで制限されることが多いので、そういった社会にある障害を取り除いていくという意味でも、障害を考えていかなければいけないと思っています。
 また、命を守るユニバーサルデザインというところなんですが、実は、私たちも命を守るユニバーサルデザインということで、例えば災害があったときに、障害のある方が避難するときにどういった情報が必要なのか。どういった情報を伝達するときに、どういった手法が必要なのかというのをお伝えする。そういったところもマニュアルにして、皆さんにお伝えしているという事業もしております。
 また、私は今、防災のことを考える、いろいろな別の委員会に入ったりもしているんですけれども、やはりどうしても障害のある方というのは、災害の被害があったときや地震があったときには取り残されるという現実があります。
 先日の東日本大震災においても、東北のある宮城県などでは、障害者の死亡率というのは、一般の方の死亡率の2倍になったというデータも出ています。その理由はなぜかというと、やはり障害のある方がどこに住んでいるのか、地域が把握していなかったであるとか、手助けの方法が分からなかった、声の掛け方が分からなかったということが大きな理由に挙がっているんですね。そういった被害に遭ったときに、誰がどこにいるのか。障害のある方が、高齢者の方がどこに住んでいるかというのを、地域を挙げて取り組んでいかなければいけないことだと考えています。
 それは、地域の方も連携してやることも、また、国、行政がそこに参加して大きなイベントにしていくことであったり、企業がそこに入って、何かイベントとしてみんなでそういったことを考えるという機会を作っていくことも大切なことだと思っています。ありがとうございます。

【宮﨑座長】
 ほかにありますでしょうか。
 では、箕輪委員、それから、綿貫委員。

【箕輪委員】
 箕輪と申します。よろしくお願いいたします。
 私は会社で、多分全ての障害の手帳を持った人が働いているんです。最初に、ユニバーサルデザインとバリアフリーという話があったと思うんですが、私たちもよくこの話をするんです。ウォシュレット、ライター、口紅など、片手を失った方がライターを開発されたとか、お尻を拭くことが難しい人がウォシュレットやストロー、あと、オートマティックミッションもそうですよね。そのように、誰かのために開発されたものを、今みんなが便利に使っているという入り口から入っていくことが多くて、みんなのためというと、なかなかなんだけれども、誰か特定の困っている人というか、何かしたいことがある人、自分でしたい人のために考えたら、こんなに世の中が便利になりましたという話をすると、結構すっと入っていくなと思いました。そういったものの話は、多分もっともっとあるんだろうなと思いながら聞いていました。
 あと、ユニバーサルデザインではないんですが、この間、全盲の方のお話を聞いたときに、デジカメというのは、見える人のものだけではなくて、自分が旅行に行ったときに、とりあえず手当たり次第押していると。スマホなどで写真を撮っていて、次に見える人に会ったときに、自分はここに行ってきたんだと見せると、そこからコミュニケーションがすごく広がると。でも、世の中に、そういう写真を撮る道具があるということを教えてもらってこなかった。あと、コンサートや音を楽しむ活動に、聴覚障害の社員もいるんですけれども、そういったところに誘われることがないけれども、実は振動を楽しんだり、目で見て楽しむことがあると。
 多分、その人のために考えたことが偏っているというか、その人のためではないけれども、「自分が楽しいから、こういうことがあるんだけれどもやってみる?」と言ってもらえれば選択できるけれども、最初から、この人は見えないから、聞こえないから、読んでも理解できないからということで省かれていることが多い気がするというのがあったんですね。
 合わせて、街の中で白杖をついている方とか、私も最初は様子を見ていて、ぶつかったな、ぶつかりそうだなと思ったときに、初めて声を掛けたりするんです。最近、よくヘルプカードみたいなものをお持ちの方とか、妊婦の方もそうです。そういうサインが出てきているんですが、それを逆手に、逆にいじめられてしまうということとか、犯罪に巻き込まれるというのもあるので、どちらがいいのか分からないんですが、自分なりに、今は助けてほしくはないんだけれども、歩いている途中、たくさん何回も声を掛けられたら、それがかえって煩わしいという方もいらっしゃったり、そのあたりがお互いの歩み寄りなんだうなと思いながらも、今は難しいなと思ったところです。
 また社内の話に戻しますが、聴覚障害の人に、何か不自由に感じることがないか。例えば「放送が流れている」と言ったら、「放送が流れていることを知らないから、不自由さを感じない」と言われたんです。だから、見えている人や聞こえる人が途中から、歩けていて車椅子になったとか、聞こえていて聞こえなくなった人は、すごく不自由さを感じるんだけれども、ずっと生まれてからその状態で、その中で生きてこられて、生活できているので、言ってもらって初めて、そんな特典があったんだみたいなことに気付くというのを、よく社員からも言われたのです。
 合わせて、防災の緊急といったときに、私たちも車椅子の社員向けに、7階から降りるためのキャタピラみたいなものを用意したり、つえの人にどうしたらいいですかと今まで聞いていたんですけれども、最近、内部障害の人も、もしかしたら何かつらいことがあるかもしれないと、全ての手帳の人に聞いていったら、身体の人よりも、薬、透析をしている人の方が、7階から1階まで降りたら、そこから先、歩けなくなるぐらいつらいんだとか、1時間、外で立っていなければいけないなら、薬と水は絶対持っていきたいとか、そういう明らかに世の中で言う配慮が必要な人と見える人たちではない人の方が困っていることがすごく多かった。特に緊急のときというのを感じたので、そのあたり。あとは、文字など、こういうものもあるけれども、知的障害の社員もいるので、読めるけれども意味までは分からないといったものに対しては、どういったものが必要かなというので、すごく今考えているところなので、今日のお話は参考になるとともに、また改めて考えさせられたなと思うので、もし御助言いただけることがあればと思いました。

【岸田(ひ)氏】
 ありがとうございます。
 そうですね。おっしゃったように、まず最初におっしゃった、1人にとって使いやすいものはみんなにとってという考え方で、ライターもそうですし、シャンプー・リンスのシャンプーの横のぎざぎざも、実は全盲の方、目が見えない方のために作られたんですが、あれは、私たちもシャンプーをしていて、目が見えない間に触ったら、すぐにシャンプーと分かる。あれもとても便利なユニバーサルデザインの商品で、実はユニバーサルデザインの商品がたくさんあふれているというところを感じていただけると思うんです。
 やはり、今よく言われていることが、「障害者は高齢者の先駆者だ」という言葉を言われていて、高齢者の方も、結構今、何が困っているのか、どんな機器が欲しいのか、ICTが欲しいのかと、いろいろなヒアリングをする中で、高齢者の方は、今のこの状態で困り事がよく分からなくて、何が必要なのかよく分からないといったアンケート調査の結果があります。
 では、高齢者の方に使いやすいものは何だろうと考えたときに、障害者のニーズを酌み取っていくことで、それがイコール高齢者のニーズと合うことがたくさんあるといった事例もあるんですね。なので、やはり障害のある方の事例をたくさん知っている、障害のある方のことを知ることで、世の中に便利な商品やサービスというものはたくさん提供できるのではないかなと考えています。
 それと、おっしゃったように、障害者だから、目が見えないからこうしなければいけないだろうとか、こうやって声を掛けなければいけないだろうと思いがちなんですが、それが先ほどお伝えした無関心か過剰という考え方で、いや、声を掛けないでいいかなと無関心を装う。結局、何もできないということと、あとはやり過ぎてしまう。きっとこうしなければいけない、こうしなければいけないだろうと、逆にやらなければいけないハードルを上げていってしまったりということもある。それが結果、サポートにならなくて迷惑になってしまうということもあるので、やはりしっかりとコミュニケーションを取って、日常からどんなことをサポートしてほしくて、どんなことに困っていて、いや、こんなことはできるといったことを、しっかりとコミュニケーションを取りながら1つずつ書き出していくというか、チェックをしていかなければいけないと思っています。そういったことが防災に関しての避難することに当たっても役に立っていくのではないかなと考えます。
 ですので、常に日常からコミュニケーションを取って、その人のニーズを把握する、その人のできること、できないことをヒアリングして聞いていくといったことをやり続けることが必要ではないかなと考えています。ありがとうございます。

【宮﨑座長】
 綿貫委員、どうぞ。

【綿貫委員】
 すみません。2点なんですけれども、1つは、先ほど箕輪委員がおっしゃっていたみたいに、例えば知的障害やASDといった場合に、文字の形は分かったり、認識はできても、その意味が分からないという、特に私など発達障害のところでは、結構そういうことがあるので、視覚的な情報や、何か手段が提供された場合に、すごく認知的な内容の部分が大切になってくるんです。そういう物理的なものだけではなくて、合理的配慮の事例集などを見ると、視覚や身体の場合には、その具体的な物の提供だったり、代替的な手段の提供だったり、そういうことが事例では多く書かれているんです。しかし、発達障害などの場合だと、支援者に入ってもらうとか、代替的な手段の在り方が少し違っていたりして、本当に本人の部分で、こういう理解の仕方をしているから、こういうふうに伝えれば伝わることが多いとか、そういった事例が余りないなという印象を受けているんです。
 そういったところで、発達障害や知的障害といった場合に、何か物だけではないところの配慮などでうまくいくとか、そういう御経験やアイデアがあったらお伺いしたいです。
 あと、この会議などでも、共生社会ということがすごく言われていますが、やはり障害者を理解するということではなくて、障害を他人事と思わず、人間の中で、障害に程度はありますけれども、障害者にならない人は存在しないと私は教わってきましたし、思っているので、自分の中にある障害特性や自分の中にある可能性、リスクなど、そういうふうに認識を移行していかないと、社会の中で障害理解や推進ということは難しいと根本的に思っているんです。
 例えば、私も帰って勉強しようと思うんですけれども、日本ユニバーサルマナー協会などでされていることで、物や環境調整、合理的配慮はあると思うんですが、そのマナーのカリキュラムというか、そういうことの中に、本人が自分だったらどうするかとか、自分の家族のこととか、自分自身が将来的に高齢者になったときのこととか、何か意識変化に関わるようなカリキュラムやアプローチがあるのかということも少しお伺いできたら勉強になります。

【岸田(ひ)氏】
 ありがとうございます。
 まず最初に、知的障害、学習障害といった方々への認知できる内容についてというところなんですけれども、私たちもユニバーサルマナー検定研修で、身体障害者の4つと精神障害、知的障害の方への向き合い方で、まずはコミュニケーションの第一歩としてどういった声を掛けたらいいのか、どういったことを不自由に思われているのか、どんなことを不安に思われているのかということをお話しながら、コミュニケーションの第一歩の手法を皆さんにお伝えしているということをさせていただいています。
 また、おっしゃっていただいた共生社会の中で、障害のある方も多様性の中の1人として生活していくためにということを、私たちも非常に重く感じています。
 経験からというところで、1つお話をさせていただきたいんですけれども、これは私の息子の話なんですけれども、ダウン症がありまして、知的障害もあります。今22歳なんですが、自分の言葉でコミュニケーションを取ることはほぼ難しいです。発語は非常に困難だというところで、知的レベルも3歳、4歳ぐらいと判定を受けているんです。
 実は、保育園から中学校まで、一般の保育園、そして、地域の小学校、中学校で生活していたわけなんですけれども、何がよかったかといいますと、2歳から保育園に行っていたんですが、2歳から中学までずっと過ごしてきたお友達がたくさんいるんです。小さい頃から自分とは違うお友達が横にいる。話せない、みんなと一緒のようにじっと座って、誰かの話を聞くこともできない。なかなか言葉が通じない。そういったお友達が横にいて当たり前という状況が2歳からずっとあるんですね。
 そうすると、大人はいろいろと考えるんですね。例えば運動会のリレーのときに、うちはリョウタというんですが、リョウタが入ったときにどうしようかとか、文化発表会、音楽の発表会があったときにどうしようかと、大人はいろいろな頭で難しく考えるんですが、子供たちは至ってシンプルで、いろいろな解決策を子供たちが自分で考えて提示してくれるということがありました。言葉によるコミュニケーションは難しいんですが、なぜか息子と1か月、2か月も過ごすと、子供たちはみんな息子の通訳をしてくれるようになりました。
 ですので、まず、大人になってからいろいろと理解するということは難しいことがあるかもしれません。でも、子供の頃からそういった障害のある方と一緒に過ごす機会を増やすということで、いろいろなことが解決できる。大人の頭で考えるよりも、子供たちの頭で考えて、それを実践していくことで解決できることがたくさんあるのではないかと考えています。
 あと少し岸田の方から。

【岸田(奈)氏】
 発達障害や知的障害のある方々への対応のマナーというところで、私がユニバーサルマナーの講師を務めているんですが、もちろん周りの関わり方というところは、母がお伝えしたことと一緒なんですけれども、弟の経験と、私がいろいろな会社様にお伝えしている経験から分かったことが、障害のある方自身のマナーとコミュニケーション能力も高めていかなければ、双方の歩み寄りと理解はないなと思っています。
 自分にどういった障害があって、それをどう説明すればいいのかということが分からないと、やはり対応したことがない健常者の方も、正直、知的障害のある方は少し怖いなとか、発達障害のある方は言ってはだめなのかなとか、そういった不安が原因でコミュニケーションが取れないということもあるので、それは障害者自身のマナー、コミュニケーション能力、社会と一緒に生活していく能力を高めていかなければいけないなということは感じている次第です。
 ですので、私たちも企業で障害のある方自身にユニバーサルマナーをお伝えする機会や社会としてのマナー、どうやってみんなと溶け込んでいくのかといったことをお伝えすることがあります。
 最後に、ユニバーサルマナーの意識変化に関わるカリキュラムというところなんですが、どちらかというとユニバーサルマナーは、ハードに関するお話は講義の中ではほとんどなくて、意識のところ、自分だったらどうすればいいか。実際に車椅子に乗ってもらったり、高齢者体験をしてもらいながら、自分が高齢者になったときにどんなことに困るのか。まずは、自分事で捉えてもらうということを1つにしています。
 最後、こういったことが広がるというところ。私たち、ユニバーサルマナーが爆発的に受講者が6万人、7万人、今10万人に届こうとしているんですが、増えたきっかけが、実は嵐の櫻井翔さんが受講したというすごくシンプルな発想で、そのときに女子高生や主婦の方などが一斉に受講されたんですね。同時期にホテルの一流企業さんが導入されたということもあって、こういった障害者、高齢者のことを学ぶことが、ジャニーズもやっているとか、あのホテルも導入しているとか、格好いいということになったので、それはいろいろな考え方もあると思うんですけれども、私たちが企業としてやっていきたいことは、障害のある方、御高齢の方がかわいそうだからとか、いいことだから話をしていかなければいけないではなくて、そんなことができる人が格好いい。2020年東京オリンピック・パラリンピックで多様な方が来られたときに、第一線で車椅子を押してスマートに対応できる若い人が格好いいとか、そういった文化を創っていくということは、1つやっていきたいなということです。ありがとうございました。

【宮﨑座長】
 すみません。私の進行がまずくて、既に時間を超過してしまいました。
 本日、3組の方々から取組や御意見をお伺いしたわけですが、これに基づいた意見交換をしていきたいと思っていたんですが、もう時間切れになってしまいました。申し訳ありません。
 ただ、皆さんの御質問、御意見の中で出てきたもので大事な視点がたくさんあったと思います。綿貫委員の「みつけばルーム」の取組をどのように全国展開していくか。市町村で、そこを広げるための方法論ということで、今のところ見学者が、うちの自治体でもやりたいということが出てきているということだったんですが、ここの会議では、具体的にどういう提言をしたら広がっていくかというあたりを考えていかなければいけないんだろうと思うんですね。
 それから、町田市の青年教室から本人の対応に関していきますと、かなり「とびたつ会」へ移行する。その移行の在り方について、先ほど松矢委員から少しお話が出たところですが、これは非常に大事な視点として考えておかなければいけないことが出てくるので、次回も引き続き、様々な方々から御意見を頂戴するので、そういうことと合わせて、いろいろ考えていきたいところです。是非、それぞれ委員の方々に、今日の3組の取組について、少しメモを取っておいていただいて、次の会にまた調整をしていきたいと考えております。申し訳ありません。
 まず、今日、3組の方々の様々な取組について御意見を頂くことができたこと、本当にありがとうございました。心から感謝いたします。ありがとうございました。
 本日、ヒアリングをいたした内容については、先ほど申し上げたように御意見の取りまとめをしておいていただいて、また、もし何かあれば、事務局に御連絡を頂いて、事務局でも整理をしていただこうと考えております。
 会議内で十分な意見交換の場ができなかったこと、大変申し訳ございませんでした。
 時間になりましたので、本日の会議はこれで終わりますが、最後に事務局より連絡事項があればお願いします。

【高見障害者学習支援推進室長補佐】
 次回の会議ですけれども、4月27日金曜日の13時から15時半に開催することを予定してございます。会場は文部科学省旧庁舎6階第2講堂になります。追って、正式に御案内をさせていただきます。
 また、本日の配布資料につきましては、机上に置いていただけましたら、後日郵送いたします。
 以上でございます。

【宮﨑座長】
 それでは、本日の会議はこれにて閉会をいたします。
 政務官、どうもありがとうございました。

【宮川文部科学大臣政務官】
 ありがとうございました。

【宮﨑座長】
 時間がなくて申し訳ありませんでした。
 それでは、どうも皆さんありがとうございました。3組の皆さんに拍手でお礼を申し上げたいと思います。(拍手)
 では、ありがとうございました。

―了―

お問合せ先

総合教育政策局男女共同参画共生社会学習・安全課障害者学習支援推進室

電話番号:03‐5253‐4111(内線3460)
ファクシミリ番号:03‐6734‐3281
メールアドレス:sst@mext.go.jp

(総合教育政策局男女共同参画共生社会学習・安全課障害者学習支援推進室)