(資料4-1)子供の読書活動推進に関する有識者会議 論点まとめ(案)

子供の読書活動推進に関する有識者会議論点まとめ(案)

平成29年○月

子供の読書活動推進に関する有識者会議


―目次―


はじめに

第1章 子供の読書活動に係る現状と課題

第2章 課題の分析と取組の方向性

第3章 具体的な取組

  • 国,都道府県,市町村の役割
  • 発達段階に応じた取組について
  • 子供が本を紹介したり話合いや批評をしたりする活動について
  • 民間団体の活動に対する支援について
  • 普及啓発活動について

はじめに

 子供の読書活動は,言葉を学び,感性を磨き,表現力を高め,創造力を豊かなものにし,人生をより深く生きる力を身に付けていく上で欠くことのできないものであり,社会全体で積極的にそのための環境の整備を推進していくことは極めて重要である。
 「子どもの読書活動の推進に関する法律」(平成13年法律第154号。以下「推進法」という。)第8条第1項では,国は「子どもの読書活動の推進に関する基本的な計画」(以下「基本計画」という。)を策定することとされている。これに基づき政府は,平成14年8月に最初の基本計画を定め,その後,平成20年3月には第二次基本計画,平成25年5月には第三次基本計画を定めて子供の読書活動を推進してきた。
 平成29年度は第三次基本計画策定から5年目の年であり,次期基本計画の策定に向けて検討を行う時期を迎えていることを踏まえ,子供の読書活動推進に関する有識者会議(以下「本会議」という。)において子供の読書活動の推進について検討を行った。


第1章 子供の読書活動に係る現状と課題

  • 第三次基本計画においては,子供の不読率(1か月に1冊も本を読まない子供の割合であり,平成24年度には小学生4.5%,中学生は16.4%,高校生は53.2%であった。)をおおむね5年後に小学生3%以下,中学生12%以下,高校生40%以下とし,10年間で半減させる(平成34年度に小学生2%以下,中学生8%以下,高校生26%以下とする)ことを目標としていた。
  • 平成29年度に行われた公益社団法人全国学校図書館協議会及び株式会社毎日新聞社の学校読書調査によると,1か月間に1冊も本を読まなかった「不読者」の割合(不読率)は小学生5.6%,中学生15.0%,高校生50.4%であり,高校生の不読率については,改善傾向にあるものの,目標達成には遠い状況である。
  • 第四次基本計画の策定に当たっては,これまでの取組を見直し,とりわけ高校生の不読率を改善するために一層の取組を行うことが求められる。  

第2章 課題の分析と取組の方向性

  • 本を読まない高校生は,中学生までに読書習慣が形成されていない者と,高校生になって読書の優先順位が下がり本を読まなくなっている者に大別されると考えられる。
  • 前者には,発達段階に応じて読書し読書を好きになる,つまり読書習慣の形成を図る必要があり,後者には,読書の優先順位を上げてもらう工夫をする必要がある。
  • 前者については,子供が発達段階に応じて読書習慣を身に付けることができるよう,後述の発達段階ごとの特徴を考慮して,具体的な取組を実施することが重要である。
  • 後者については,高校生の多忙な生活において他の時間との関わりを考える必要があるが,高校生の放課後の時間については,学習やメディアの時間が大きな割合を占めている。このような高校生が読書をするきっかけを作り出す必要があり,これについては,友達等からの働き掛けが有効であることが分かっている。したがって,友達等の同年代の子供同士で本を紹介したり話合いや批評をしたりする活動が有効であることを認識して具体的な取組が行われることが重要である。
  • 市町村等においては,このような方向性を踏まえつつ,必要に応じて市町村推進計画等の見直しを行うとともに,必要な推進体制の整備が行われることが望まれる。加えて,これに資する民間団体の活動に対する支援が行われるとともに,好事例の普及啓発活動が行われることが重要である。
  • 第四次基本計画においても,第1章及び第3章1で述べる第三次基本計画における数値目標を引き続き設定し,その達成に向けた取組を行うことが重要である。


第3章 具体的な取組

 1.国,都道府県,市町村の役割

  • 第2章で述べたように,市町村における推進体制を整備することは重要である。
  • 第三次基本計画においては,「市町村子ども読書活動推進計画」(以下「市町村推進計画」という。)の策定率を第三次基本計画期間中に市100%,町村70%以上とすることを目標としていた。
  •  「平成28年度都道府県及び市町村における「子ども読書活動推進計画」の策定状況に関する調査」(文部科学省)によると,市町村推進計画の策定率(平成28年度末)は,市88.6%,町村63.6%であり,とりわけ町村の策定率が低いことから,この策定を促す必要がある。
  • 発達段階に応じて子供の読書活動を推進するに当たっては, 子供や保護者に最も近い立場にある市町村の役割が重要である。
  • 市町村推進計画未策定の市町村においては,この策定が行わ れることが重要であるが,市町村推進計画未策定の市町村にアンケートを行ったところ,未策定の理由として「人材が不足している」,「図書館を設置していない」という点を挙げるところが多い。
  • 市町村推進計画を既に策定している市町村においても,市町村推進計画に基づいて具体的な取組が一層推進されることが重要であるが,これに当たっては,教育委員会のみならず福祉部局等の他の部局や,学校,図書館,民間団体,民間企業といった関係者が一体となって行われる必要がある。
  • 都道府県は,市町村がこれらの課題に対処できるよう,他の市町村の取組事例の紹介や都道府県立図書館からの図書の貸出しといった支援を行うとともに,域内の市町村や民間団体が連携して読書活動を推進するための取組を行うべきである。
  • 国は,都道府県に対し,都道府県が市町村を支援するに当た って必要な情報(国の施策の方向性,読書に関する現状のデータ,市町村の取組のベストプラクティス等)の提供を行うべきである。

 2.発達段階に応じた取組について

  • 第2章で述べたように,発達段階に応じて子供が読書習慣を身に付けるための取組が行われることが重要である。

 (1)発達段階ごとの特徴

  • 子供が読書を好きになり,自主的に読書をするようになるためには,発達段階に応じた取組が行われることが重要である。
  • 家庭,地域,学校等で具体的な取組が行われるに当たっては,読書に関する発達段階ごとの特徴として例えば以下のような傾向があることを踏まえつつ,乳幼児,児童,生徒の一人一人の発達に留意し,取組が進められることが重要である。

1. 保育所・幼稚園等の時期(おおむね5歳頃まで)
 乳幼児期には,周りの大人から言葉をかけてもらったり乳幼児なりの言葉を聞いてもらったりしながら言葉を次第に獲得するとともに,絵本や物語を読んでもらうこと等を通じて絵本や物語に興味を示すようになる。さらに様々な体験を通じてイメージや言葉を豊かにしながら,絵本や物語の世界を楽しむようになる。
2. 小学生の時期(おおむね6歳から11歳まで)
 小学校低学年では,本の読み聞かせを聞くだけでなく,一人で本を読もうとするようになり,語彙の量が増え,文字で表された場面や情景をイメージするようになる。
 中学年になると,初歩の読書技術が身に付き,最後まで本を読み通すことができるようになり,自分の考え方と比較して読むことができるようになる。さらに,読む速度が上がり,多くの本を読むようになる。
 高学年では,本の選択ができ始め,そのよさを味わうことができるようになる。しかし,この段階で発達が止まったり,偏った面だけが発達する者が出てきたりするおそれがある。
3. 中学生の時期(おおむね12歳から14歳まで)
 中学生期には,読書技術が成熟を迎え,多読の傾向は減少し,共感したり感動したりできる本を選んで読むようになる。自己の将来について考え始めるようになり,読書を将来に役立てようとするようになる。
4. 高校生の時期(おおむね15歳から18歳まで)
 読書の目的,資料の種類に応じて,適切な読書技術によって読むことができる水準に達する時期である。

 (2)発達段階に留意した取組

1. 家庭における取組

  • 家庭における読書は,1冊の本を媒体にして親子が話し合う時間を持ち,絆(きずな)を深める手段として重要なものであり,学校,図書館等の連携により行われることが重要である。
  • 家庭における読書の推進に当たっては,図書館等がお薦め本のリーフレットを作成したり,それを学校に貸し出したりすることが重要である。
  • 図書館,市町村保健センター,ボランティア団体等の様々な機関が連携・協力して,家庭における子供の読書活動の推進を図るきっかけとして乳幼児への読み聞かせの方法等を説明しながら保護者に絵本を手渡す「ブックスタート」が実施されることが重要である。

2. 地域における取組

2-1 図書館

2-1-1 役割

  • 図書館は,地域における子供の読書活動を推進する上で重要な役割を果たしており,引き続き,図書館における取組を充実させていくことが重要である。

2-1-2 取組

  • 中学生や高校生が気軽に図書館に足を運ぶような工夫が重要である。
  • 図書館相互や学校図書館との連携・協力体制を強化し,団体貸出しや相互貸借を行うとともに,図書館職員が学校を訪問し読み聞かせを行うなどの取組を積極的に行うことが重要である。
  • 地域のボランティアの参画を得ながら,子供やその保護者を対象とする読み聞かせ会,書評合戦(ビブリオバトル),ブックトーク,ペア学習,読書会,アニマシオン等の取組が行われることが重要である。
  • 子供自身に専門の読書の知識を学んでもらい,地域や学校の読書推進力になってもらう「子ども司書制度」の取組や,「読書コンシェルジュ」の取組が行われることが重要である。
  • 図書館においては,障害のある子供のための諸条件の整備・充実が行われることが重要である。
  • 司書及び司書補は,児童・青少年用図書等をはじめとする図書館資料の選択・収集・提供,読み聞かせ等子供の読書活動の推進に資する取組の企画・実施,子供の読書に関する保護者の相談への対応等,子供の読書活動の推進における重要な役割を担っており,司書及び司書補の適切な配置が行われることが重要である。
  • 司書,司書補,絵本専門士等専門的な知識を有する人材の資質・能力の向上を図るため,継続的・計画的な研修が実施されることが重要である。

 2-2 図書館以外

  • 放課後や休日に子供たちが集まる児童館,放課後子供教室,放課後児童クラブ等の地域の居場所についても,子供が読書に親しむ取組を行うことが重要である。

3. 学校等における子供の読書活動の推進

3-1 幼稚園・保育所等

  • 幼稚園,保育所等においては,幼稚園教育要領や保育所保育指針等に基づき乳幼児が絵本や物語に親しむ活動の充実を促すことが重要である。
  • 幼稚園,保育所等において,安心して図書に触れることができるようなコーナーを確保し,保護者,ボランティア等と連携・協力しながら,図書の整備を図ることが重要である。

3-2 小学校・中学校・高等学校等

3-2-1 役割

  • 全ての子供の読書活動を支援し,読書指導を充実することにより,読書の量を増やすことのみならず,読書の質をも高めていくことが学校に求められる役割であることを踏まえ,学習指導要領等を踏まえた積極的な読書活動の推進に取り組むことが求められる。
  • 平成29年に公示された学習指導要領においては,各学校において必要な言語環境を整えるとともに,国語科を要としつつ各教科等の特質に応じて言語活動を充実することとされている。あわせて,学校図書館を計画的に利用しその機能の活用を図り,児童生徒の自主的,自発的な読書活動を充実することが求められている。
  • 小学校・中学校・高等学校等の各学校段階において,児童生徒が生涯にわたる読書習慣を身に付け,読書の幅を広げるため,読書の機会の拡充や図書の紹介,読書経験の共有により,様々な図書に触れる機会を確保することが重要である。

3-2-2 全校一斉の読書活動

  • 現在多くの学校において朝の始業時間前に読書の時間を設ける「朝読」の活動が行われているが,不読率の改善という観点から,このような全校一斉の読書活動は効果的であり,高校においても行われることが重要である。

3-2-3 子供同士の取組

  • 子供が相互に図書を紹介し,様々な分野の図書に触れる活動,書評合戦(ビブリオバトル),ブックトーク,ペア学習,読書会,アニマシオン等,子供が自主的に自由な読書を楽しみながら学校や家庭における読書習慣を確立し,更に読書の幅を広げる取組の実施を促していくことが重要である。

3-2-4 障害のある子供の読書

  • 障害のある子供は,特別支援学校のみならず通常の学校にも在籍していることを踏まえ,障害のある子供もまた豊かな読書活動を体験できるよう,障害のある子供が在籍する全ての学校の学校図書館整備を図るなど,読書活動支援の推進を図ることが重要である。

3-2-5 学校図書館

  • 学校図書館については,学校教育において欠くことのできない基礎的な設備であり,1.児童生徒の想像力を培い,学習に対する興味・関心等を呼び起こし,豊かな心や人間性,教養,創造力等を育む自由な読書活動や読書指導の場である「読書センター」としての機能,2.児童生徒の自主的・自発的かつ協働的な学習活動を支援したり,授業の内容を豊かにしてその理解を深めたりする「学習センター」としての機能,3.児童生徒や教職員の情報ニーズに対応したり,児童生徒の情報の収集・選択・活用能力を育成したりする「情報センター」としての機能を有している。
  • 学校図書館については,学校図書館資料の整備充実,学校図書館施設の整備,学校図書館の情報化が図られることが重要である。
  • 学校図書館においては,図書館との連携・協力体制を強化し,相互貸借等を行うことが重要である。

3-2-6 人的体制

  • 学校司書や司書教諭の配置の充実やその資質・能力の向上が図られることが重要である。
  • 子供の読書活動の推進に当たっては,読書の楽しさや本のすばらしさ,本を使って調べ,学ぶことを教え,本の世界への案内役となる専門的な知識・技能を持った職員を確保することが重要である。
  • 学校司書や司書教諭のみならず全ての教職員が連携するとともに,保護者や地域のボランティアの協力も得ながら,児童生徒の学習活動・読書活動を推進していく体制を整備することも有効である。

3.子供が本を紹介したり話合いや批評をしたりする活動について

  • 第2章で述べたように,特に高校生に読書の優先順位を上げてもらうため,子供同士で本を紹介したり話合いや批評をしたりする活動が行われることが重要である。
  • 子供が本を紹介したり本についての話合いや批評をしたりする活動は,読書のきっかけになるとともに,本の理解を深めることにつながる重要なものである。
  • 本を紹介する活動については,周りの大人や友達等の働き掛けが重要であるが,発達段階に応じて子供が影響を受ける者が大人から同年代の者に移っていくことに留意が必要である。
  • なお,子供にとっての良い本は,読書経験や好みによるもの で一概には決まらないため,紹介する側が自身の好みや価値観で本を押し付けるのではなく,子供の興味や関心に寄り添いながら紹介することが重要である。例えば,マンガやアニメ・ゲームといった本以外のものの内容や作者に関連した本を薦めることも有効であると考えられる。
  • 本についての話合いや批評をすることは,読む本の幅を広げ るきっかけとなったり,他者の異なる考えを知り,それを受容したり改めて自分自身の考えを見つめ直す経験ができたりするといった点で重要である。
  • 具体的には例えば以下のような取組があるが,これらが推進されることが重要である。
  • 書評合戦(ビブリオバトル)
    基本的なルールは以下のとおりである。
    1.発表者が読んで面白いと思った本を持って集まる。2.順番に一人5分程度で本を紹介する。それぞれの発表後に参加者全員でその発表に関する意見交換を2~3分程度行う。3.全ての発表が終了した後に,どの本が一番読みたくなったかを参加者の多数決で決定する。
    書評合戦(ビブリオバトル)の効果としては,ゲーム感覚で楽しみながら本に関心を持つことができること,自ら本を選ぶ力,語る力が育つこと,読んでみたいと思える本に出会える機会が増えること等が挙げられる。
  • ブックトーク
    子供や大人の集団を対象に,あらすじや著者紹介等を交えて,本への興味が湧くような工夫を凝らしながら本の内容を紹介すること。
  • ペア学習
    二人で学習をすることであり,読書指導ではペア読書と呼ばれ,親子や他の学年,クラスなど様々な単位で1冊の本を読み,感想を共有したり意見を交わしたりする。
  • アニマシオン
    読書へのアニマシオンとは,子供たちとグループ参加型で行われる読書指導のことである。読書の楽しさを伝え自主的に読む力を引き出すもので,ゲームや著者訪問等,様々な形で行われる。
  • 「読書コンシェルジュ」の活動
    読書活動の推進役として同世代に働き掛ける者を育成する活動である。具体的には,参加者は,おすすめの本を選定し,紹介するリーフレットを作成したり,高校生を対象に読書をテーマにした交流会を開催したりするといった企画を行う。
  • 何冊かの本を読んで議論の上1冊を選ぶ活動
    参加者が複数の同じ本を読み,評価の基準も含めて議論を行った上で,1冊のおすすめ本を決める活動である。

4.民間団体の活動に対する支援について

  • 第2章で述べたように,市町村等における取組に加え,民間団体の活動も重要なものである。
  • 読書活動に関連するボランティアのより広範な活動を促すとともに,民間団体の取組を周知し,社会全体での取組を促すことが重要である。
  • 子供の読書活動の推進を図る民間団体の活動をより充実させるとともに,民間団体がネットワークを構築して実施する情報交流や合同研修等の促進を図るため「子どもゆめ基金」 をはじめとした助成等により,これら民間団体の活動を支援することが重要である。
  • 都道府県及び市町村においては,域内のボランティアグループや企業の社会貢献活動の取組等の状況を把握するとともに,子供の読書活動で公共性が高いと認められるものについては,活動の場の確保のため,域内の公民館等の公共施設の利用に便宜を図るなど,奨励方策を講ずることが期待される。

5.普及啓発活動について

  • 第2章で述べたように,子供の読書活動に関する好事例について普及啓発活動が行われることが重要である。
  •  「子ども読書の日」を中心とした全国的な普及啓発の推進を行うこと,優れた取組の奨励を行うこと,優良な図書の普及を行うことが重要である。
  • 子供の読書活動が学校,図書館,民間団体,民間企業等相互の連携により行われるよう,国,都道府県及び市町村が,例えば以下のような各種情報の収集,提供を行うことが重要である。
  • 子供の読書活動の実態
  • 都道府県,市町村,学校,図書館,民間団体における様々な取組
  • 「家読(うちどく)」のような家庭における読書を広める活動,書評合戦(ビブリオバトル),ブックトーク,「子ども司書」や「読書コンシェルジュ」の活動,何冊かの本を読んで議論の上1冊を選ぶ活動等の先駆的・モデル的な取組に関する情報

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総合教育政策局地域学習推進課

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