青少年の体験活動の推進方策に関する検討委員会(第3回) 議事要旨

1.日時

平成28年11月8日(火曜日)15時~17時

2.場所

文部科学省庁舎5階5F1会議室(東館5階)

3.出席者

委員

青山鉄兵、明石要一、齋藤芳尚、平岩国泰、松村純子、安田公一

文部科学省

有松生涯学習政策局長、神山大臣官房審議官(生涯学習政策局担当)、里見政策課長、土肥青少年教育課長、鴨志田青少年教育課課長補佐

4.議事要旨

  1. 事務局より、資料の確認。
  2. 明石主査より事例発表のスケジュールについて説明の上、2名の発表者
    (皇學館大學岸川教授、特定非営利法人日本冒険遊び場づくり協会入江理事)から事例発表。
  3. 事務局より、資料3について説明。
    また、全体の内容について、委員より事例紹介、意見交換などの全体討議を行う。

<岸川皇學館大学教授事例発表(資料1)>

(三重県多気町の「高校生レストラン」について)

  • 三重県多気町から、「高校生レストラン」の取組が始まった。これは、三重県多気町にある高校と、地域が協力して作ったレストランを、高校生がクラブ活動の一環として、土日祝日に運営するというもの。
    時には高校生には厳しい一面もあるが、高校生たちが自らの意志でいきいきと活動する取り組みは地域に高く評価され、ニュースやドラマとしても取り上げられた。
  • 「高校生レストラン」を経験し卒業していった生徒は、就職した後も離職しないということで、非常に就職先で重宝されていると聞いている。
  • コンセプトは、15歳で料理の道を目指す高校生たちの夢を、大人が応援していくこと。
    最初は地域の理解がなかなか得られなかったが、民間と連携することで資金を得て、まずは規模の小さい取り組みを行って、その取り組みが地域に理解され、また評価されていくことで実現した。


(SBPについて)

  • SBPとは、ソーシャル・ビジネス・プロジェクトの略で、地域の課題をビジネスにするという発想。
    高校生たちが、地域にある資源、人やモノ、歴史や文化、産業等、地域にあるものを勉強したり、触れたりすることで、それらを活用したまちづくりやビジネスを提案していくという取組を、民間や行政みんなで応援していく仕組みのことである。
  • SBPの最初の目的は学校を残すことだったが、その手段であったSBPが評価されるようになり、全国に取組が広がってきた。そこで、SBP交流フェアといった、全国でSBPを実現している高校生を集めての交流イベントを開催している。

(質疑応答)

(委員)SBPの好事例にはどのようなものがあるか。
(発表者)地場産業の三州瓦職人が持つ造形技術と自動車産業の下請会社が持つ金型製造技術を生かし、全国各地に「御当地焼き」を展開しようとする取組がある。
(委員)SBP交流フェア参加校の事例において、生徒の成長が変化として表れているものはあるか。
(発表者)廃校予定の高校の生徒も活動を通して評価され、元気になる。そのような生徒の成長により先生が変わり、地域自体が変わっていく。「勉強ができないから」と夢を諦めていた女子生徒がSBPの取組を通し、もう一度夢に挑戦することにしたという例もある。
(委員)事例に出てくる高校は職業高校が中心か。
(発表者)職業高校だけではなく、普通科でも行われている。
(委員)受験生が増えるという効果はあるか。
(発表者)中学から入る割合としては増えているが、そもそも人口が減っている。
  人口減少の町の高校でSBPの取組を行うことで、高校生が町の資源を活用してまちづくりやビジネスを行えるように学科再編し、高校を存続させることを目指している。
(委員)青少年の成長には宿泊体験や寮体験が大事だと考えるが、SBPにおいて全寮制などの構想はないのか。
(発表者)寮を作るのではなく、町の人に下宿代補助を出し、高校生に下宿をさせることによって町全体を寮にするような形を考えている。
(委員)SBPの仕掛けとなった生徒たちへのメッセージはどのような形で出されたものか。
(発表者)キャリア教育の講演を依頼されたのがきっかけだった。話を聞いた高校生が町の人向けの講演会を企画したり、ボランティアを始めたりといった変化が生じていく中で、この学校に何かを残したいという思いが生まれ、校長にSBPの話を持ち掛けた。


<特定非営利法人日本冒険遊び場づくり協会入江理事事例発表(資料2)>

  • 日本冒険遊び場づくり協会では、「自分の責任で自由に遊ぶ」をモットーとしたプレーパーク活動・冒険遊び場活動を行う日本全国400以上の様々な団体をつなぎ、情報交換や相談、研修を行っている。
  • プレーパークの運営においては、
    • 住民自身が運営し、子供の成長について話合いをしながら地域住民の理解を得ること
    • 場所の提供や資金援助において行政とのパートナーシップを持つこと
    • 子供の成長に資する専門知識を持ち、地域の人材をコーディネートできるプレーワーカーを置くこと
    を重視している。
  • 子供たちには、健康面だけでなく、大人とのコミュニケーションが自然にできるようになる、自分で判断してやってみる態度が身につく、発想力が広がる、自分の行動に自信がつく、といった成長や変化がみられる。
  • 冒険遊び場は子供たちだけでなく親にとっての体験の場にもなる。
  • 今後の課題は、行政の中で受皿となる部署がはっきりしない、プレーワーカーや運営する住民のスキルアップが必要、ボランティア住民の主に資金面における継続性といったものがある。
    これらはすべて大人の意識の問題である。
  • 身近な体験活動の機会を充実させていくためには、
    • 子供の小さな失敗などにおおらかになれる大人の関係性
    • 大人は子供を管理するのではなく、子供の興味・関心を支える存在である
    • 保護者自身も豊かな遊び環境を作っていく存在である
    という意識も重要である。
    今後は子供に関わる大人のための講座を充実させ、冒険遊び場の理念を伝えていくことが必要である。


(質疑応答)

(委員)このように子供が主体的に遊べる場を意図的に作る活動は、やはり都市型が主体なのか。
  地方にはまだ自然環境が残っているということで意図的に自然体験活動の場を作ることへの理解が得られにくいが、実際はどの程度広がっているのか。
(発表者)地方だと「ほうっておけば遊べる」という感覚が強くこのような活動に理解が得られにくい、人口が少なく一生懸命になれる住民の輪が保ちにくい、といった問題がある。
(委員)活動の主体となる年齢層はどこを想定しているのか。
(発表者)小学生が最も多い。小学生のうちに冒険遊びを体験した中学生も、自分たちが行ってもいい場所だと認識し、遊びに来ている。
(委員)どのような人がプレーワーカーになっているのか。
  上記のような中学生がプレーワーカーになることがあるのか。
(発表者)常設型の団体の場合、20、30代で専門の仕事としてかかわれる人を募集しており、週1、2回など活動の頻度が少ない団体の場合、大学生や保護者でアウトドアが好きな人が有償・無償など様々な形でかかわっている。中学生がボランティアとしてかかわっている例もあるかもしれないが、少なくとも戸山プレーパークを運営する団体には条件があり、中学生や中学校を卒業してすぐの者がプレーワーカーになることはない。
(委員)新宿戸山プレーパークのツリーデッキのように、プレーパーク内に設置した建造物の中で活動がない時間帯にも設置したままになっているものはどのくらいあるのか。
(発表者)公園側との関係作りの中で認めていただいたものであり、どの場所でも設置してよいというものではない。
(委員)行政とのかかわりを持たずに運営できている事例はあるのか。
(発表者)私有地を借り、お金をかけずに運営している団体もあるだろうが、広報面・信頼面において、行政とのパートナーシップは必要と考える。
  行政とのパートナーシップ構築においては、協会として各自治体に理解を求める活動は行っているが、すべての自治体で同様に活動に取り組めているわけではない。
(委員)このような活動を継続していくに当たり、スタッフに対する対価の支払(有償・無償)はどのような方向性を検討しているか。
(発表者)世田谷区はNPO法人化し、スタッフにも対価を支払える方向で進んでいる。すべてのメンバーが有償化されるのは難しいが、責任をもって継続するためにも有償の部分を増やすことは必要である。
(委員)プレーワーカーの資格化の現状はどうなっているか。
  また、保険などリスク管理において統一の取組はなされているか。
  他の関連事業(子育て広場・児童館・放課後子供クラブ等)との連携のケースはあるかどうか。
(発表者)協会としては資格化を進めないことになったが、別団体で検討が行われている。
  保険や関連事業との連携については各団体で対応を行っているのが現状である。
(委員)行政ではどの部署が担当するのがよいと考えているか。
(発表者)どの部署が担当しても、関連部署が定期的に顔合わせをし、地域の活動として認められることが大事だと考える。


<全体討議>

  • 継続性が一つの大きな論点になる。社会的な支え(人・物・金)について、ボランタリーを極(きわ)めていく方向性には限界があり、法制面・資金面において国や行政で応援していくことが必要と考えられる。
  • 例えばPTA活動での継続性確保の取組としては、1年交代だと引継ぎが困難かつ前年踏襲の流れが 強くなってしまいがちなため、2年交代とし、人と人でつないでいくことをメーンに据えて進めている。
  • 指導員等のライセンス化について
    • 様々なライセンスがあってもよいが、それぞれに共通する部分があり、それが他でも生きる形になれば学ぶ方も取りやすいと考えられる。
    • 様々な団体に生かせるスタンダードな研修若しくは資格があるのが望ましい。その上で、ボランティア・常駐の職員・野外教育系の指導員等、役割によって細分化した部分もあるとよい。
    • 資格の中でスタンダードになる部分を共有できる、様々な体験活動間のネットワークを構築し、青少年教育体験活動業界を作っていくことが必要ではないか。
      限られた範囲ではたこつぼ化する恐れがある。
  • 国で資格を作るのは難しいかもしれないが、都道府県行政の中で認定されることが安心感につながる。
  • 2つの発表を聞いて、どこかに頼ったり、資金援助を得たりすることだけではなく、自ら出向き、ギブ・アンド・ギブの関係性を築くことが大事だと感じた。
  • 2つの発表を聞いて、幼少期に体験活動を繰り返し行うことが基礎となって、青年期の自発的な活動に発展していくのではないかと感じた。
  • 2つの発表を聞いて、子供たちになるべく任せ、周囲がそれを応援するという立場をとることが共通の成功要件であると感じた。
  • 2つの発表を聞いて、体験活動が地域づくりのプロセスにつながっていることが重要な共通点であると感じた。
  • 体験活動というキーワードだとその場面だけ切り取られるイメージになってしまうため、体験教育という呼び方にしてみてはどうか。

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総合教育政策局地域学習推進課青少年教育室

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