高大接続システム改革会議(第10回) 議事録

1.日時

平成28年1月29日(金曜日)10時~12時

2.場所

文部科学省3階 3F1特別会議室

3.議題

  1. 「大学入学希望者学力評価テスト(仮称)」について
  2. 「高等学校基礎学力テスト(仮称)」について
  3. その他

4.出席者

委員

(座長)安西祐一郎委員
(副座長)片峰茂委員
(委員)五十嵐俊子,乾 健太郎,岡本和夫,恩藏直人,金子元久,香山真一,小林 浩,佐藤東洋士,佐野元彦,関根郁夫,長崎榮三,南風原 朝和,日比谷潤子,宮本久也,山極壽一,山本廣基の各委員

文部科学省

(文部科学省)土屋事務次官, 前川文部科学審議官, 有松生涯学習政策局長, 小松初等中等教育局長,常盤高等教育局長,義本高等教育局審議官,松尾高等教育局審議官,河村国立教育政策研究所長,瀧本総務課長,増子会計課長,今井高等教育改革プロジェクトチームリーダー,小林国際教育課長,新田高等教育局主任大学改革官,塩見大学振興課長,橋田大学入試室長,福澤専門官 他

5.議事録

1)パブリックコメントに寄せられた意見及び「大学入学希望者学力評価テスト(仮称)」について,文部科学省から資料1,2に基づき説明があり,その後,意見交換が行われた。

 

【安西座長】  時間でございますので,ただいまから第10回高大接続システム改革会議を開催させていただきます。

委員の皆様,御多用の中お集まりいただきまして,誠にありがとうございます。

まず,事務局に異動があったということでありますので,御紹介をお願いいたします。

【新田主任大学改革官】  1月付け,幹部人事の異動がございましたので,出席者について御紹介させていただきます。まず,生涯学習政策局長の有松でございます。

【有松生涯学習政策局長】  有松でございます。よろしくお願いいたします。

【新田主任大学改革官】  それから,国立教育政策研究所所長,河村でございます。

【河村国立教育政策研究所長】  河村でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

【新田主任大学改革官】  出席者は以上でございます。

【安西座長】  よろしくお願いいたします。

次に,事務局から配付資料について確認をお願いします。

【新田主任大学改革官】  議事次第にございますとおりに,配付資料,資料の1から4,それから資料2につきましてはクリップ留めで別紙の1から3まで,また,参考資料が付いてございます。それから資料の3では,クリップ留めでございますが,別紙の資料が1,2までついてございます。それと,あと机上配付資料といたしまして,1月29日付けで国立大学協会から「大学入学希望者学力評価テスト(仮称)」についてという意見を,裏表1枚物,それから,前回,12月に出させていただきましたイメージ例たたき台,これを机上資料として二つ置かせていただいておりますので,もし落丁等がございましたら,事務局まで合図していただければと思います。

【安西座長】  よろしいでしょうか。

それでは,議事に先立ちまして,この会議の中間まとめに対するパブリックコメントが行われておりましたけれども,パブリックコメントに寄せられた御意見について,事務局から御報告をお願いしたいと思います。

【新田主任大学改革官】  資料の1を御覧いただければと思います。昨年10月から2か月間にわたりまして行いました中間まとめに関するパブリックコメント,意見公募手続の結果でございます。

2にございますとおりに,意見提出数,総数217件ということでございます。多うございますので表題のみ御覧いただければと思いますが,(1)からが高大接続システム改革の具体的な内容,実施方法に関する意見ということで約28件,それが丸1で,新テストに関する課題,めくっていただきまして3ページからが丸2でその具体性について,丸3でCBT導入について,4ページからが高等学校教育改革に関する意見,ここが一番多く,156件でございますが,丸1で競争主義的な改革,丸2で学習指導要領,丸3で教育条件整備,5ページ,丸4でアクティブ・ラーニングについて,それから6ページ,丸5で学校の多様性について,丸6が多面的・総合的評価について,それから7ページで,ここからが「高等学校基礎学力テスト(仮称)」について,それぞれについてでございます。8ページの丸9が学校間競争について,丸10はテストの活用方法について,9ページでございますけれども,丸11がPDCAについて,それから丸12が受験料について,丸13が複数階実施について,次のページまでということでございます。11ページからが(3)大学教育改革に関する意見は25件ということで,丸1が一律な基準でありますとか,丸2学問の自由,大学の自治について,12ページですけれども,丸3が三つのポリシーについて,12ページ,(4)大学入学選抜に関する意見は68件ですけれども,入学者選抜改革と「大学入学希望者学力評価テスト(仮称)」について,12ページから始まりまして,12,13ページ,14ページです。14ページの丸2で「大学入学希望者学力評価テスト(仮称)」についての各論で,実施回数でありますとか,次のページの評価の共通性の確保,記述式等,そしてその他というところまででございます。以上でございます。

【安西座長】  ありがとうございました。大変貴重な御意見を頂いておりまして,有り難く存じております。

それでは,議事に沿って進行を進めさせていただきます。最初に「大学入学希望者学力評価テスト(仮称)」につきまして審議を行わせていただきます。新テストワーキンググループにおける「大学入学希望者学力評価テスト(仮称)」における審議の進捗状況につきまして,ワーキンググループの主査をお務めいただいております岡本委員から御報告を頂き,事務局から資料の説明を頂くようにしたいと思います。岡本委員,よろしくお願いいたします。

【岡本委員】  おはようございます。岡本でございます。新テストワーキンググループの方から,まず概略の報告をさせていただきます。

新テストワーキンググループにおきましては,主に「大学入学希望者学力テスト(仮称)」,ですが,この記述式問題の導入を始め今回の論点メモ案に示されている内容について鋭意検討しているところでございます。詳細は事務局から説明していただきますが,今後社会で活用する上で求められる総合的な思考力や表現力を評価するために記述式問題を導入する必要性や意義,さらには実施する上で検討すべき論点等を中心に議論を行っております。特に前回の高大接続システム改革会議において示されました評価すべき能力と記述式問題イメージでのたたき台を基に,記述式問題の採点に係る試算や効率化の工夫の例に関する資料も用意させていただいているところでございます。これらの試算につきましてはあくまでもイメージでございまして,難易度や科目の特性,今後のさらなる検証結果等を踏まえて数値は変動することを御理解いただければと思います。

これからの社会を生きていく上で必要な力を高等学校教育,大学教育を通じて進むために共通テストに記述式問題を導入することは極めて重要ということは考えているところでございまして,実施方法等においてどのような工夫をすればそれが実現できるのかという視点からも是非この場で御議論を進めていただきたいと思っておるところでございます。 なお,「大学入学希望者学力評価テスト(仮称)」の具体的な実施方法につきましては,引き続きワーキンググループにおいて検討を進めまして,順次この会議にてお示しできるようにしたいと思っているところでございます。以上でございます。

【安西座長】  ありがとうございました。

それでは,事務局,お願いいたします。

【橋田大学入試室長】  それでは,資料2の「大学入学希望者学力評価テスト(仮称)」の論点メモ(案)を基に御説明させていただきます。こちらの方,このテストの考え方ということで,次のような基本的方向に沿って今後検討を進めてはどうかということで整理させていただいております。

まず,今回の1ぽつにございますように,テストの基本的な構成といたしましては,記述式問題,当面は国語,数学,二つ目といたしましては英語の多技能を評価する問題,三つ目といたしましては多肢選択式を中心とする問題(各教科・科目)でございます。この大きく三つの問題から構成されるものという整理をさせていただいております。

その上で,2ぽつの記述式問題についてということで,今回記述式問題を導入する意義の部分をさらに丁寧に書かせていただいております。(1)にございますように,まずその背景といたしまして,高等学校教育において言語活動ですとか探究的な学習の充実が課題になっているということがございます。必ずしもこの高等学校教育で求められている取組,十分な指導改善が進んでいない状況にあるのではないかというところ,また,大学入学者選抜の改革においてこうした言語活動ですとか探究的な学習の成果を的確に評価するということで高等学校教育の改革・充実を大きく後押しするということが期待されるところでございます。

御参考でございますけれども,小中学校においてもこの点,言語活動,探究的な学習の充実が図られているということ,また,全国学力・学習状況調査は19年度から実施されておりますけれども,B問題,活用型の問題によって指導上の課題が明確化されているところでございます。

こうした中,学習指導要領の改訂を踏まえた指導改善が進んでおりまして,別紙1の参考資料にございますように,OECDのPISA調査では国際的に最高水準の結果を示すに至っているところでございます。

資料2の2ぽつの(2)でございますけれども,記述式導入の必要性ということで,こちらの方は先日の高大接続システム改革会議でも少し示させていただいておりますけれども,現行の大学入試センター試験については,知識の習得状況の評価にすぐれているということに加えまして,多肢選択方式という条件の中でも分析的な思考力の評価にはすぐれているのではないかというところ,また,複数の情報を統合し構造化して新しい考えをまとめる思考・判断の能力ですとかその過程や結果を表現する能力,いわば統合的な思考力・表現力の評価についてはさらなる改革が求められるといったような指摘があるところでございます。特にこういった統合的な思考力・表現力というものは今後の社会で活躍する上で求められるものでございます。こうした能力を高等学校教育,大学教育でよりよく育成していくということで,この「大学入学希望者学力評価テスト(仮称)」におきましては,多肢選択式の問題の改善に加えまして記述式を導入して,先ほど申し上げたような統合的な思考力・表現力を評価することが有効ではないかというところでございます。

裏側の2ページ目をお開きください。記述式を導入するメリットといたしましては,解答を選択肢の中から選ぶというものではなくて,自分の力で考え出すということで主体的な思考力・判断力の発揮が期待できるということ,また,文章の作成を通じて思考のプロセスが自覚的なものになるということで論理的な思考力・表現力の発揮が期待できるというところ,さらに,記述式に当たって目的に応じて適切な表現様式を用いるということで表現力の発揮が期待できるというところでございます。

こういった記述式を導入することで高等学校教育においても言語活動,探究的な学習の充実が促され,生徒の能動的な学習を重視した授業改善へと進んでいくことが期待できるのではないかというところでございます。こちらの方,参考の方に高等学校学習指導要領の言活の例,あるいは総合的な学習の時間に関する課題の設定,情報の収集,整理・分析,まとめ・表現といったようなところでの今の例を挙げさせていただいております。特にこの探究的な活動・学習の中の整理・分析の中では,比較,分類,序列化,類推,関連付けといった学習活動を適切に位置付けることが重要というような形になっているところでございます。

(3)でございますけれども,作問と評価の考え方についてでございますけれども,作問につきましては,一定の条件を設問で設定いたしまして,それを踏まえて結論や結論に至るプロセスなどを解答させる条件付記述式を中心に作問を行うということで,実際問うべき能力の評価と採点などのテスト実施に当たっての課題の解決の両立を目指していきたいというところでございます。また,こういった作問をより合理的に行うということで,過去の大学入試問題などにおいてこういった思考のプロセスがどのようなものとして問われているか,また,どのような事象間の関係性の理解・表現が求められているかといったことについて総合的に分析いたしまして,その難易度の設定も含めまして作問の考え方の構造化の検討を進める必要があるのではないかというところでございます。

解答につきましては,このような考え方に基づいて,作問において設定した条件への適合性を中心に評価してはどうかというところでございます。評価結果につきましては,段階別の表示としてはどうかというところでございます。

(4)の実施方法についてでございますけれども,こういった採点業務を効率的・安定的に行うということで,OCRという光学読み取り装置ということで手書き文字をテキスト化する技術がございます。そういった技術も活用し,答案を幾つかの観点別に分けてクラスタリングするといった技術も活用していきたいというところでございます。

別紙2に少しそのクラスタリングの例をお示しさせていただいております。実際の記述式問題の答案,デジタル化されたものでございますけれども,類似の解答を並び替えて,その分類したものをベースに採点を行っていくというような技術でございます。こういった技術を活用することで採点精度の向上も期待できるのではないかというところでございます。

さらに,資料2に戻っていただきまして,採点基準に基づく個々の条件への適合性の判定業務につきましては民間事業者等を活用して実施することも考えられるのではないかというところでございます。

続いて3ページをお開きください。こういった形で採点を行う場合の採点期間につきましては,なかなか厳密な試算というのは困難な状況ではございますけれども,例えば参考例ということで算出した結果を別紙3でお示しさせていただいております。こちらの方は条件設定や採点の技術的工夫等により変動する可能性を含むものということでお示しさせていただいております。高大接続システム改革会議の中間まとめにおきましては,平成32年度から短文記述式,36年度から,より文字数の多い記述式の問題を導入ということが盛り込まれております。そしてまた,去る12月22日の高大接続システム改革会議におきましては,「大学入学希望者学力評価テスト(仮称)」の記述式の問題2事例をお示しさせていただいているところでございます。こういったものを踏まえて試算を用意させていただいております。

まず短文記述式のところでございますけれども,例えば数式などを記述させるような問題,こちらについては,各設問の採点に掛かる日数ということで1日程度という試算も出させていただいております。この試算に当たっての前提のところでございますけれども,実働800人/日,1日当たり800人の採点者を確保した場合を想定しているところで,難易度や科目の特性等を踏まえて数値は変動するところでございますけれども,受験者数は最大53万人を想定いたしまして,各正答条件を2名で採点していくというイメージの例でございます。その上で,短文記述式の国語の例1の問1,これは先日の問題イメージでの番号でございますけれども,この中で40字,正答に当たっての条件を4条件と設定した場合には採点に掛かる日数としては3日程度になってくるところでございます。一方で,より文字数の多い記述式ということで,国語の例3にございますように,300字程度の問題を出したとしたときに,正当条件を10条件という形にセットした場合には大体7日程度掛かるという試算でございます。

こういった個々の問題を組み合わせたパターンがその下にございますパターンⅠからパターンⅣの部分でございます。パターンⅠにつきましては,数式などを記述させる問題を3問,また,短文記述式を2問ということで出題したときに大体10日程度掛かる試算でございます。ただ,これは実質的な採点期間でございますので,テスト実施後,採点の事前・事後に採点基準の確定ですとか研修,成績提供の準備に掛かる日数も必要になってまいります。この場合にはその部分がプラスして10日から15日程度掛かるのではないかというところでお示しさせていただいております。

その上で,パターンⅡ,パターンⅢ,その上でパターンⅣと示させていただいておりますけれども,これは,短文記述式を4問,より文字数の多い記述式を2問という組合せで出題させていただいた場合ということで,30日程度ということで試算させていただいております。ただ,この点につきましても事前・事後の日数としては20日から30日程度は掛かるのではないかということで,そういう意味で,パターンⅠの場合でいいますと,最少でいいますと20日程度というところが出てきますけれども,一方で,パターンⅣのようなスタイルをとるとすると60日程度というような形になってまいります。その中で記述式をどのような形で入れていくかというところをまた考えていく必要があろうかと思っております。

実際この採点期間,お示ししておりますけれども,この期間を短縮するための工夫といたしましては,出題形式の工夫による採点工程の工夫ということで,客観的な条件,キーワード,字数制限等を問題に設定したりですとか,例えば出題形式の工夫の一つとして,選択肢を答えさせてその理由を記述させる問題,この場合は選択肢で正答したものの答案のみを解答していくといったようなやり方も考えられるのではないかというところでございます。

また,採点の工夫を助ける技術の導入ということで,クラスタリングの改善で答案の分類・並び替えの精度を向上させて採点工程を工夫していくということも考えられるのではないか。また,OCR機能を向上させるための研究開発も行っていく必要があるのではないかということで示させていただいております。

資料の2の3ページにお戻りください。丸3の実施時期の部分でございますけれども,こういった観点を踏まえながら高等学校教育への影響ですとか大学入学者選抜の合否判定のタイミングという中で,関係者の意見も聞きながら実施時期を検討していく必要があろうかと思っております。参考資料の方にお示ししておりますように,現行スケジュールでございますけれども,この両者の影響等も踏まえながら考えていく必要があるところでございます。そういった観点で,日程につきましては,多肢選択を中心とする問題と記述式を同日に実施する案,多肢選択式とは別に実施する案ということでそれぞれ検討を行っていく必要があるのではないかというところでございます。

3ぽつの英語の多技能を評価する問題についてですけれども,こちらの方は四技能を評価の対象にしていくというところでございますけれども,話すことについては,例えば録音機能の付いた電子機器による音声吹き込み試験とすることが考えられますけれども,特に環境整備ですとか採点の観点から32年度当初からの実施可能性について十分検討していく必要があるのではないかというところでございます。

(2)でございますけれども,作問・実施・採点等に民間事業者のノウハウを効果的に活用していく必要があるのではないかというところ,また,受験者,大学の負担,採点期間の確保の観点から,多肢選択式とは別日程で実施することも検討していく必要があろうかと思います。この場合は,記述式問題と同日に同一会場で実施することも考えられるのではないかというところでございます。

4ぽつにつきましては,多肢選択式を中心とする問題の取組というところで,より思考力・判断力を重視した作問に改善を図っていくということ,また,解答方式については,例えば理科の場合におきましては,選択肢から選ばせるのではなくて,数値を直接マークさせるといった方策も考えられるのではないかといったこと,あわせて,例えば主として知識・技能を中心に評価する問題,また,主として思考力・判断力を中心に評価する問題に分けて設定いたしまして,各大学で得点基準を判断できる,そういった方策も検討する必要があるのではないかというところでございます。

(2)の評価結果の表示につきましては,現在よりもより多くの情報を提供するということで,例えば各科目の領域ごとの解答状況も併せて提供するといったことで豊富な情報を大学に提供するといった方策が考えられないかというところでございます。

実施時期につきましては,先ほどの記述式,英語の在り方と併せて検討していく必要があろうというところでございます。

続いて4ページ目でございます。上記以外の論点でございますけれども,まず(1)の実施回数のところで,複数回実施の取扱いでございます。マスコミ報道でも幾つか報道がなされておりますけれども,今の時点での論点ということでお示しさせていただいております。

複数回実施につきましては,これまで1回の共通テストで教科の知識を基盤とした学力を評価するという,これまでの枠組みの改善を図ることを狙いとして議論がなされてきておるところでございます。一方で,今回検討を進めておりますテストにおきましては,記述式問題ですとか英語の多技能試験の問題導入ということで,これまでの共通テストより以上に学力を多面的・総合的に評価する新たな枠組みを提供するということを狙いとしております。特に記述式問題につきましては,単に教科の知識量を問うものにはしないということで,別日程ということを含めて検討しているところでございます。こうした新たな枠組みが提供されるということを踏まえますと,複数回実施の狙いが相当程度実現されるということも考えられるところでございます。

こういうことを踏まえますと,こういった新たな枠組みの検討を第一義といたしまして,そのための各論点に関する検討・実施の状況をまず見極めていく必要があろうかと思っております。その状況を見極めながら,複数回実施につきましては,CBTの導入ですとか等化等による資格試験的な取扱いの可能性,そういったものを中心として引き続き検討することが適当ではないかというところでございます。

(2)の今後の検討体制でございますけれども,平成32年度からの実施に向けまして,本会議において最終報告をまとめていただいた後に,文部科学省において,関係団体の参画を得ながら,技術の動向,コストも踏まえつつ試行も行いながら作問,実施方法に関する実証的・専門的な検討を継続的に行っていきたいというところでございます。よろしくお願いします。

【安西座長】  ありがとうございました。

ただいまの岡本委員,また事務局からの御説明の内容を御議論いただければと思います。大体11時過ぎまでは時間がとれると思いますので,どなたでも結構です。頂いた御意見も踏まえまして「大学入学希望者学力評価テスト(仮称)」実施方法等の具体的な検討に入りつつありますけれども,新テストワーキンググループの方でさらに検討を深めていただいて最終報告に向けてということになるかと思います。よろしくお願い申し上げます。

それでは,南風原委員,お願いいたします。

【南風原委員】  幾つか意見がありますけれども,その前に少し質問をさせてください。資料2の2ページ,(3)の作問と評価の考え方のところで,作問については設問で一定の条件を設定する条件付記述式という表現があります。それから,三つ目の丸のところでは,解答については,作問において設定した条件への適合性を中心に評価するとあります。後者の方は正答条件というふうにも言われたと思いますけれども,出題の際の設定条件と評価の際の正答条件というのは同じものでしょうか。また,10条件という場合は具体的にどのようなものを指しているのでしょうか。

【橋田大学入試室長】  この点につきまして,まず先日も問題イメージで机上配付資料ということで用意させていただいておりますけれども,例えばこの10ページ目のところでは,これは300字の記述式問題のイメージ例でございますけれども,この場合においては,公立図書館の在るべき姿についてどのように考えるかということで条件に従って書きなさいというところをお示しさせていただいております。この条件1という部分につきましては文字数の取扱い,条件2につきましては段落構成ということ,また,第1段落ではあなたが重要と思うものについて書くといったようなこと,また,文中に示された今後の可能性のうちあなたが重要と考える事項を一つ取り上げて文章中の言葉を書いて書くといったこと,さらに,図書館職員だとしたらこの姿を実現するためにどのような企画を提案したいかといったことを示すということ,さらに企画の効果についても記すということ,さらに条件3といたしましてはかぎ括弧を付けるということ,これは一つには解答に当たっての条件でございますけれども,採点に当たりましても,一つにはこの観点をベースにしまして,ただ,これにプラスアルファして,付随して補足的に論理的な構成がとられているかといったところも含めて観点を設定いたしまして採点を行っていくということを考えていると。ですので,採点に当たっての観点はここの条件設定より少し増えることを想定しております。

【安西座長】  いかがでしょうか。

【南風原委員】  今のお話ですと,設定した条件を守っているかどうか,かぎ括弧を付けるとか,それは簡単に満たせることです。表現力とか関係ないです。思考力とも関係ないですけれども。だから,それとは全く別に正答条件という,要するに前から問題となっている採点基準は何なのかというところが大事で,記述式の問題というのは,問いで問題ができているわけではなくて,問いと採点基準,さらには採点マニュアルが合わさって初めて一つの問題のスコアが出るわけです。テストというのはそれがまた複数集まって初めてテストとなるわけで,最終的には全体のテストのスコアが測りたいものをどれだけ反映しているかということが問われるわけです。

そういう意味では,共通試験で幅広い層にわたって識別力を持たせるためにはたくさんの項目が必要だし,難易度も多様でないといけないわけです。そういった形で記述式がなされるわけなので,まず採点基準というのを見ないとまだ問題を見たことにならないし,全体のセットを見ないとまだテストを見たことにならないので,その辺はワーキングの方で早めに出していただければと思いますが,今言いましたように,結果としてテストが測りたいものをどれだけ反映しているかという妥当性を見るというときに,採点の仕方,基準によっては,場合によっては表現力についても多肢選択の方がより妥当性が高いということもあり得るわけです。採点がいいかげんだと全然だめですし,項目が少ないとだめですし,問題が偏っていたり採点マニュアルが機械的になっているとだめです。

だから,たくさんのことを満たして初めて多肢選択よりもまさることができるわけなので,まさった問題や全体としてまさったテストができたかどうかというところがフィージビリティーの,要はコストとベネフィットの話で,コストについては国立大学協会からも,莫大なコストが掛かると。1科目の採点で,実際800人掛ける何十日,何十億円という話になると思うのですが,そのコストは別として,ベネフィットの方をきちんと確認しなくてはいけないと思います。今回の大学入試センター試験の中ではかなり工夫されて,英語の問題の中で,どのセンテンスを除くとよりロジカルになるか。ロジカルにする上でどのセンテンスが邪魔をしているか,これはまさに表現力です。表現力のある人はこれに正答できるわけです。

だから,与えられた選択肢から選ぶとかまぐれ当たりができるとかいうような形式的なことではなくて,最終的に出てくるスコアが見たい能力をどれだけ反映しているかという観点から,つまり妥当性の観点からこれまでのテストや新しく提案されるテストを評価していかなくてはいけない。そのためには採点マニュアル,採点基準が出て,試行テストをして,そのスコアの統計を基に判断していかなくてはいけないというところがあるので,作問のイメージ例一つ,二つ,しかも採点基準がないものだとまだ何も見たことにならないので,フィージビリティーのベネフィットの方の話はこれから詰めていくべきだろうと思います。

その観点で,これは前回も出たことなので,前回お話しすればよかったのですが,前回は,採点基準の問題は次回,フィージビリティーも次回ということで全部回されてしまったので発言しなかったですが,別紙3の2枚目にあります図ですけれども,この真ん中に大きな丸で条件付記述式ということがあって,ここが今テーマになって,それを300字で,とかいう話になっていると思いますけれども,これが上の方を見ますと共通テストになじむ問題と書いてありますが,これははっきり言ってなじまない問題です。もし,「条件付記述式は共通テストになじむ問題ですか,それとも個別選抜になじむ問題ですか」という問いがあって,「共通テストになじむ問題」と答えたらこれはばつです。なので,この図は間違えています。

そういうなじまないものをやろうとしているというところに,もともと無理があるわけで,その無理をどれだけコストを小さく,かつベネフィットを高めることができた,ならば,なじまないけども実現できたということになると思うので,どれだけなじむような,ベネフィットを高め,コストを削減していくかということをまだまだこれから検討すべきで,少し結論を急ぐようですが,私は,大分前から言っていることですが,何十万人の記述式は無理だと思います。

【安西座長】  ありがとうございました。

今の点についてでも結構でございますが,他にはいかがでしょうか。

それでは,山極委員,お願いいたします。

【山極委員】  ありがとうございます。

今の問題について少しだけ私も質問をさせていただきたいと思います。今回早々と記述式問題の例が示されまして,これは大変滑り出しとしては結構なことだと思いますけれども,これが果たしてどの程度の採点時間を要するものかということで随分議論が出たと思います。

そして,この内容,つまり解答をめぐってどの程度のばらつきが出てくるものかというので検討がなされました。我が校でも幾つか検討をさせていただきました。特に数学の問題に関しては,これは思考力・判断力・表現力,三つの能力を判定する基準になっているかどうかという点に関しては,基本的に表現力のテストにしかなっていないのではないかという意見が多々を占めました。

でも採点には随分時間が掛かると思います。例えば,解答の中で学生自らがアルファベットを用いて線を引かなくてはならないところがあるわけです。これはどういう形で学生がそれを表示するかというので随分大きなばらつきがある。それから,解答の中に等脚台形というのを理由として示さなくてはならないはずですが,それは解答例では書いていない。だからそういう有無をめぐって採点者の間で随分意見のばらつきが出てくる可能性があるわけです。しかもそれを読み取るときに非常に時間が掛かる。例えば京都大学では,せいぜい1万人の受験者に数学の専門家たちが1週間程度の採点時間を掛けて,そしてまた,その採点方法にばらつきがあれば,またゼロから戻って採点をし直して合議しているわけです。これが800人もの採点者がかかって,しかも会場をどういうふうに用意するか分かりませんけれども,何度も最初に戻ってその基準を決め直すということになると,この資料,別紙で示された日数というのが果たして可能かどうかということに大きな疑問が湧いてくると思います。

それから,採点者をどうするのか。例えば国立大学協会は,前向きにこれに参加するという意思表明はしておりますけれども,やはり大学の先生方あるいは高等学校の先生方がこれに関わらざるを得ない。受験産業の方々がここに入って,民間委託ということも十分考えられると思うのですが,実際に現実を見ますと,その民間企業の採点者は,主婦ですとか,あるいは大学院生のアルバイトに頼らざるを得ない状況です。それで社会の合意が,納得が得られるのかという問題があります。やはり大学や高等学校の負担が非常に大きくならざるを得ないと思います。それをどうしていくのかということがはっきりしないと思います。

もう一つは,最後にありました複数回の実施ということに関して,今回の記述式の問題を別日程として,そして多肢選択式ですとか今までの大学入試センター試験のようなものを別日程としてやることによって複数回という目的が達せられたのではないかというお話がございましたけれども,これは違うと思います。これまでの複数回試験実施というのは,それぞれ別の試験をして別の能力を評価するという話だったと思います。しかし,これは記述式の問題,それからほかの大学入試センター試験的な試験を併せて評価をするということでございまして,複数回受けなくてはならないということです。それではこれまでの多様な能力を判定して,そしてそれぞれで評価をして学生を希望の大学に入学させるという話とは少し違ってくるのではないか。つまり,複数回というのはそれを受験する学生にも相当な負担と準備というものを科すものではないかと思いますので,少しこれは違うのではないかと思いました。その2点について事務局の御意見をお伺いしたいと思います。

【安西座長】  ありがとうございました。

事務局はいかがですか。

【橋田大学入試室長】  まず1点目の数学の採点でございますけれども,特に先日の問題イメージ例の数学の問題,記述させる部分につきましては,かなりそれ用の検証も必要になってこようかと思っております。そういう意味では,別紙3の中では数学の記述の部分のシミュレーションを置いていないわけですけれども,その点につきましては,別途先日の問題イメージ例を別紙にいたしまして,フィージビリティー検証作業を現在進めているところでございますので,それを踏まえて実際どれぐらいの採点期間が掛かるのか,どういった課題があるのか,それをどうクリアしていくかというところを検証していきたいと思っております。

また,民間の事業者等の活用というところも,これも選択肢の一つではあるのですが,一定の採点の観点にのっとりまして,その部分の採点の観点ごとに採点者がある程度技術的に採点していくという観点に立つとすれば,大学の先生方に全部見ていただくより,民間事業者の知見・ノウハウも活用しながらやった方が効率的な面があろうかと思っております。この点については全国学力・学習状況調査の先行事例もございますので,その成果と課題も踏まえながら検討していきたいと思っております。

もう一点目の複数回実施の部分でございますけれども,私どもといたしましては,この複数回実施の本来趣旨のところで,山極委員御指摘のとおり,生徒の本来の能力を多面的・総合的に評価していくというところでは,当然その点では共有しているところだと思っておりますけれども,従来の1回のテストで,どちらかといえば教科の知識量を中心としたものから,今回記述式ということで,統合的な思考力や表現力といった生徒の本来の能力を見ていくということで,どちらかといえば,知識に偏った形での一発勝負型の評価ではなくて,生徒自身の本来の能力を多面的・総合的に評価するものということでこの転換は図るということでいえば,その理念の実現には資するものではないかと考えております。

【山極委員】  すみません,もう一点これに関連して,このテストの結果は各大学が自由に選択できるのかということの討論が抜けていると思います。これまで大学入試センター試験の結果についても,公立大学は大体5教科7科目全てを利用しておりますけれども,私立大学によっては全然利用しなかったり,あるいは1科目しか利用しなかったりというのがすごく多いです。この「大学入学希望者学力評価テスト(仮称)」をどう利用するかも,これは学校単位ですが,希望ということになっておりまして,これを文部科学省がどのように奨励していくか,そしてこの選択を,今事務局がおっしゃったように,記述式の問題だけを評価するということもあり得るのか,あるいは大学入試センター試験,あるいは多肢,技能選択テストというのを併せて利用するというふうな指導をするのか,このあたりのことが非常に不透明なものですから。しかも大学によってこれが勝手に利用できるということになってしまいますと本来の目的が損なわれてしまうような気もするのですが,その辺は今の時点でどうお考えなのでしょうかということをお聞きしたいと思います。

【橋田大学入試室長】  今回の記述式の導入の意義に即して考えますと,当然記述式問題についてもできるだけ活用いただくということで考えておりますけれども,実際に科目指定等に当たって大学の選択の判断の余地をどれぐらい残すのかどうかを含めて,そこの大学との関係での成績提供の在り方を含めて検討していきたいと考えております。

【安西座長】  ありがとうございました。

岡本委員,お願いいたします。

【岡本委員】  幾つか御意見が出たので,私がお答えするつもりはないですけれども,まず採点基準の話がありましたけれども,実は記述式というのをどこまで記述式と言うのかという問題も残っていると思います。議論をしていたときに,私自身は,要するにサイエンスなので,国語とかそういうものにおける記述式とサイエンス,数学,理科で想定する記述式というのは少しずれています。だから,その辺のところをもう少し,実際それは今密に議論しているところですけれども。だから,記述式は採点基準が難しいと言ってしまうと,少しそれは言い過ぎで,例えば理科や数学の場合は記述式というのを,マークシートで書くのか,手で答えを,積分の何とかイコール何とかと書くのかという,全然これは違いますけれども,要するに,さっき南風原委員がおっしゃったこととまた違うことです。それが一つ。

それから,採点基準というのは,多分個別入試なんかだと,個別入試というのは記述式,国立大学の場合は記述式というより私は論述式と言っていますけれども,もっと長い,自分の論理を組み立てて書くという部分です。この部分だと採点基準というのは,恐らく大学は,ある程度答案用紙を見て,実際満点は決まっているかもしれないけれども,かなりどういうふうにみんな考えているのかというのを見てから細かいところは決めていくというようなことがあろうと思います。したがいまして,記述式というのはどこまで記述式かということはかなりもう少し検討しないといけないと思います。

前回問題をお出ししたときに申し上げたことですけれども,あの問題はあくまでも例でありまして,例えばあの問題を基に,例えばこういうレベルで設定するならばどういう問題形式があり得るかというようなことを例えば大学や高等学校や,もちろん教育産業の方々はもうなさっていると思いますけれども,そういうような検討の土台にしていただきたいと思ったというのが前回申し上げたところです。

それから,山極委員の質問で,数学という話で,私も数学なので申し上げておきますと,少しそれも誤解を呼ぶので,恐らく京都大学が出す個別入試というのは完全論述式試験で,そこで聞いている思考力・判断力とここのレベルは違う。それは個別入試の範中にはいってしまう。私が申し上げたいのは,記述式ですけれども,このレベルだと,表現力を問うているのではないかとおっしゃいましたけれども,このぐらいの問題だと,表現力を問うということは,思考をせずして表現できないので,そういう意味では,京都大学の個別入試には至らないけれども,それなりの成果があったかというふうに御理解いただければと思います。

それからもう一つ,この問題はあくまでも入試を想定して作った問題です。だから,恐らく今大学生を集めて,大学入試を,受けたい人を集めてこの数学の試験をやったら正答率は大体3割ぐらいだろうと思います。なぜかというと,入試問題というのは大体,一番いい問題というのは3割の人がよくできていて,残りの7割の人はもう少しという,これは選抜試験ですから,倍率3倍の試験で3倍を通ろうと思ったら。どうしても入試問題ってそういう性格を持っています。それを,だから先ほど申し上げたとおり,じゃもう少し幅広い層で見るためにはどうしたらいいか,どこまで聞いたらいいかということを,ワーキングでも考えるのですけれども,各大学や高等学校でもいろんなアイデアをお寄せいただきたいと思っています。ここは少し2点だけ,中身に関することなので発言させていただきました。

【安西座長】  ありがとうございました。

金子委員,お願いいたします。

【金子委員】  記述式,一般の問題ですけれども,南風原委員がおっしゃったように,記述式には非常に大きな問題があることは確かだと思います。一定の思考の枠のモデルを想定して,それにフィットしていてどのような解答が行われているのかということをテストすること自体が,かなり問題があって,その思考のモデル自体にどれくらい合意があるのかといったことも非常に大きな問題ではないかと思います。それから,もちろん採点者によってどの程度,どのような共通の理解ができるかということも問題です。そういったテクニカルな問題がいっぱいあると思います。アメリカでCLAといってクリティカル・シンキングの能力を大学生に測るという試験が3年くらいか4年前くらいにかなり評判になりまして,いろいろとやっていたのですけれども,それはOECDでそれを用いた国際比較調査をやるということになりまして,私はその中に,テクニカルバイザーに入っていたのですけれども,感じましたのは,そういった評価自体が大きな問題なのと,評価に至るプロセスといいますか,評価の基準自体はどの程度透明性があるのかということもやはりかなり大きな問題で,透明性がなければ妥当性をどのように主張するかということも大きな問題になってくるのだということもやはりあるだろうと思います。その意味で,全面的に記述というのはやはりかなりあり得ないということで,それをどの程度限定的な,全体の中でどの程度の限定されたものとして置くのかということも現実的には考えるべきだろうと思います。

ただ,考えてみますと,確かに記述式じゃない選択式は公平な採点はできますが,採点の対象となっている知識が本当に重要なのかとか意味があるのかということについては,実は余りそれはほとんど議論にならないわけで,そこまで含めて考えれば,別に記述式だけが曖昧なというか問題になるわけじゃなくて,問題になっているのは,相当いいかげんで,しかも正答は一つしかないという問題はいっぱい世の中には出ているわけです。そういう意味でやはり総体的な問題で,記述式,技術的な問題と別とはしても,やはり十分に検討に値する問題ではないかと思います。

それからメリットは,これは幾つも言われていることですが,私は,基本的なメリットは,一定の科目とか学科のコンテクストで位置付けられて,それについて何を知っているか,何を言えるかということをテストするのか,一般的な状況の中で自分が何を,どういう情報を得てどういうふうに判断するのかということをテストするのかという問題で,後者の方はやはりある程度入れなければいけないというのは,高大接続システム改革会議でずっとこれまで議論していたときの一つの議論ではなかったかと思います。これは非常にコストも掛かるかもしれませんし,ある意味では信頼性のリスクも一応ある程度作るわけでありますけれども,今の段階でこれはだめというふうに言うことは必ずしも言えないのではないかと思います。

それからもう一つは,非常に私申し上げたいのは,東京大学とか京都大学とかでは独自の後期,後期といいますか試験でかなりいい問題が出ていることは事実でありまして,ここでかなり思考力とかそういったものを試せる出題をしている。ただ,これは全大学の位置にとっては非常に限られた部分でありまして,日本の大学の入試は,今大学入試センター試験を受けて,独自試験のプラス,どちらか,両方を含めてやっているのが3割ぐらい,あとの3割は全く独自の大学の試験ですが,この試験を見ていますと,大体の部分は物すごい,新しい式を真面目に聞いているような試験がほとんどでありまして,こういう知見の在り方がやはり問題である。しかも中学高校に与える影響も非常に大きい。それから,あとの4割くらいはほとんど何も試験をしていない。これを含めて,ある程度大学教育に必要な考える力といいますか,現実において考える力みたいなものを測るということはやはり全体として必要だと。全体といいますか,この高大接続に至る会議の中で2年以上やってきたわけですけれども,そこの合意はやはりあるところではないかと思います。その中で,記述式というのはどの程度の割合を占めるのか,あるいはどれくらいのリスクが必要なのか,あるいはコストが必要なのかということは議論されることは必要ではないかと思います。以上です。

【安西座長】  ありがとうございました。

乾委員,お願いいたします。

【乾委員】  ありがとうございます。

私は情報科学の専門で,その観点から文部科学省のこうしたコストの試算等に関して少し協力させていただいている立場でございます。その立場からコストの面で,非常に重要なファクターだと思いますので,少しだけ補足させていただきたいと思います。

まずこの試算ですけれども,これは文部科学省の方で試算されたのですが,これまでの議論にもありましたように,問題の難しさ,複雑さ,それから,例えば国語の問題でいいますと解答の長さの制限によって本当にかなりの幅があると考えられます。そして,それが50万人規模で実際にまだテストはできていないわけです。実際の実験ができていない状況で,この見積りにはまずかなりの幅がある。それは,これから申しますけれども,恐らく数倍の幅がある。これを例えば5分の1ぐらいにできる可能性もあるということでございます。ただ,それは実験できちんと実証したようなものではまだないということであります。

一つ考えておりますのは,ここの本日の論点の2ページの一番下にありますような,4,実施方法について,採点方法・体制についてのところに,OCR技術の活用をし,答案を幾つかの観点別にクラスタリングするということで別紙2がついています。

ここでクラスタリングと呼んでおりますのは,答案の,これは国語の問題だと今一応仮定しまして,こういう文字列で生徒が解答してくるわけですけれども,この文字列あるいは単語の並びとしてよく似ているものをコンピュータで機械的に一つのグループにまとめていくということをここではクラスタリングと呼んでおります。ですので,先ほどの資料2の下に書いておられます,幾つかの観点でクラスタリングする,分類するというのは,解答の基準であたかも自動的に分類するような印象を与えてしまいますが,これは少しミスリーディングかというふうに感じます。

機械ができることは,まずは,そっくりなもの,よく似ている解答を一つのグループにして,そのグループごとに採点者にお渡しして,よく似ているグループの解答を一気に採点してもらうということであります。そうすると,玉石混交の様々な解答がランダムに来て,それを採点するよりは恐らくかなり効率的に採点できると。これは1万人規模ぐらいでしかまだ実験ができておりませんが,同じことを50万人にしたときには恐らくもっとよく似たものが出てくるだろうと。そうなりますと採点の効率はさらに上がってくる可能性もございます。完全に同じものはまとめて採点できるということもございます。

そのときに重要なことは,解答の長さによって,受験生の解答が非常に多様なものが出てくると,もちろんその効果はどんどん薄れてくるので,採点効率は上がっていかないということで,そうしたファクターがまだたくさんこの中に入っているということでございます。

もう一つ重要なことは,問題の難易度をどうするかだと思います。議論の途中から別日程も可能性があると。別日程だとすると,採点期間が少し長くとれるので,難しい問題,あるいは本当に思考力を深く問うような問題にまで踏み込めるのではないかということで,先日お示しされた問題もかなり複雑な,かなり難しい問題のような印象を受けました。しかし,もともとの記述式の問題を導入する経緯の一つは,先ほど金子委員がおっしゃったような,記述式を全く受けないで入ってくる学生が半分ぐらいいると。そうしたボリュームゾーンの学生たちに記述の機会をきちんと与えて,そしてそれをもって中学,高等学校の教育にもインパクトをもたらしたいということではなかったかと思います。

そうなりますと,それほど難しい問題にしなくても,先ほど岡本委員もおっしゃっておりましたけれども,非常に難しい問題は,それは個別学力テストでやればいいことでありまして,もう少し肩の力抜いて,簡単な,しかし,しっかり記述をしてもらうような問題に絞っていくということも選択肢としてあるのではないかと考えております。ありがとうございます。

【安西座長】  ありがとうございました。

それでは,宮本委員,お願いいたします。

【宮本委員】  ありがとうございます。

最初の事務局の御説明の中で,言語活動や探究的な活動の充実,学習の充実が高等学校教育の課題である,まさにこれはこのとおりだと思います。そして,そういうことを一層促進するために記述式の試験を導入する,この方向については,私は理解をしています。ただ,一方で,試験というのは様々な条件の中で行われるという性格だと思います。どのぐらいの問題をどの時期にやるか,それは実施方法や採点の在り方等を含めて考えていくということで,いい試験だから,いい問題だからということだけではなかなか導入できるわけではない。入試ですから,様々な条件の中で一番いいものを提供するということが必要だと思います。例えば,本日は別紙の3のところでいわゆる採点の日数というところが幾つか出されています。これはあくまでも試算ということですけれども,例えばパターンⅠですと10日プラス,また10日から15日,パターンⅠでも大体20日ぐらい掛かりますと。パターンに至っては60日ぐらい掛かるということで,少なくとも1か月あるいは2か月ぐらい採点に要しますという試算があります。もちろんこれは試算ですから,もっと短くなるかもしれません。今自分の学校の生徒を見ていても,この今の入試の追い込みの1月,2月で子供たちは劇的に学力が上がっていきます。ここで本当に一生懸命追い込んで,今まで約3年弱ためてきた様々な学力をまとめて今力を付けている時期です,特に現役生にとって今の時期は極めて重要です。ところが,そこのところがもっと早くなるというふうになっていきますと,非常にやはり厳しいものがあるのかとは思っています。

それともう一つ,この大学入試改革というのは,「大学入学希望者学力評価テスト(仮称)」だけではなくて,各大学が行う個別の選抜とセットで考えるべきだと私は思っています。今「大学入学希望者学力評価テスト(仮称)」の議論をずっとしてきていますけれども,つまりこれだけで力を測るわけではなくて,一方では各大学の個別選抜でどういう力をどういう方法で測るのかということとセットで論じていく必要があると思います。つまり,思考力とか表現力とかそういうものをこの「大学入学希望者評価テスト(仮称)」ではどの程度測るのか,また,個別テストでどう測るのかというところをセットで議論をしていかないと,なかなかここだけで全部の力を測るということはすごく難しいと思いますけれども,そちらの議論がほとんどされていないし,これは各大学が考えることなのでということなのかもしれませんけれども,そこを見ていかないとなかなかこの議論を詰めていくのは難しいのではないかと思います。以上です。

【安西座長】  ありがとうございました。

五十嵐委員,お願いいたします。

【五十嵐委員】  ありがとうございます。

小学生を指導している立場からです。決して蚊帳の外ではなくて,今の小学生がまさにこの試験を受けるわけですから,本当に真に迫った問題だと受けとめています。少し角度が違うのですが,今現在,小学校では少なくとも言語活動,探究的な学習にとても力を入れています。そして,授業の中で,その授業で終わらせない,教科で終わらせない,学校で終わらせない,それは生きて働く知識になるように,小学校段階でそれを開くように今努力をしています。

実はすごく先ほどから違和感があるのですが,そうやって育てた小学生を中学校,高等学校に送り込みます。一生懸命学力の基礎を培っているつもりですが,受験になって短期間で大学入試の学力を養うのかというのは大変ショックを覚えます。私はそうではないと思っています。地道に,もっと言えば幼児教育からその基礎を培っているわけです。そして将来は,本当にいろいろな課題がある中で総合的な思考力・表現力を付ける,そういう日本人にしよう,そのための一環としての過程が入試で,でも,すごく再度入試でとても大事だから変えようとしているわけですから,やはりそれはもう当たり前で,記述当たり前だと私は思うのです。

現実にはとてもたくさん大変な問題がありますし,慎重にやらなければならないことはたくさんあるのですが,でも,もっと言えば,私は先ほど,なぜ国語と算数なのかと。数学なのかと思ってしまうぐらい,教科を本当に横断的な,現代の教育課程そのもののテーマであるべきではないか,教科にむしろとらわれてはいけないのではないかぐらいの思いを持って,違和感ある,でも専門的な議論の中で言い出しにくいと思いながら先ほどから聞いていた次第です。

その共通テスト以外にも個別の大学で大変な入試問題があるということを少しお聞きして,大変だと思ったのですが,全ての大学が,この議論がある中で,今年はできる限り少しは変えたのだろうかと問いたいです。少しでもいいから去年と今年どんなふうに変えているのですかと全ての大学に問いたいぐらいです。是非原点に戻って議論を進めていただきたいと。現実問題に離れていると言われるかもしれませんが,是非お願いしたいです。よろしくお願いいたします。

【安西座長】  ありがとうございました。

そろそろ次の課題に移らせていただければと思いますが,いかがでしょうか。

では,片峰副座長,お願いいたします。

【片峰副座長】  宮本委員の個別入試との関係,今,中央教育審議会大学教育部会で3ポリシーの見直しのガイドラインというのが恐らく最終段階を迎えていると思います。それに準じる,あるいはそれを待たずとも,今各大学,ポリシーの見直しに取り掛かっています。基本的にはやはりアドミッション・ポリシーをきちんと作って,それに基づく入試をやる,入学者選抜をやるということです。大学として今のスタンスは,この共通テストがどのようなものになるのかというのが極めて大きくて,要するにアドミッション・ポリシーで要求する能力の中のこの部分は共通テスト,この部分は要するに個別という話になるのだろうと思います。そういった意味ではバランスの問題になりますので,現段階で個別をどうするというのがなかなか各大学でも議論しづらいところにあるのではないかと思います。それが一つ。

それから,先回,新しい記述式のイメージを出していただきまして,これは非常に大きなインパクトがあったと思います。この改革の方向性はこういう方向なのだというのが明らかになったし,様々な問題ありますけれども,こういった入試が実施されると恐らく高等学校教育に与えるインパクト,メッセージというのは物すごく強いものがある,結果として日本の教育が変わっていくというイメージはみんな持ったと思います。ただ,このイメージが出て初めて,本日いろいろ御議論が出ていますけれども,課題も明確になったということだと思います。本日も論点整理できちんと出していただいていますし,それから国立大学協会としても,先回の問題イメージを受けて国立大学協会としての意見を本日机上配付の形で、入試委員会名にて出させていただいておりますけれども,これもイメージが出て初めてこういった具体的な克服すべき問題がありますという書き方になっていると思います。

しかしながら,大学では,今の段階で様々課題があるからここで後戻りしましょうという話には絶対ならないと思います。要は,大学というのは非常に大きなものがたくさんあるので,恐らくこの会議の後のステップになると思うのですけれども,今の高校生のフィージビリティーをいかに検討していくかと。その過程でいかに要するに改善をしていくかと,そこが最大の問題で,ここは物すごいエネルギーを使わなきゃいけないだろうと思うのですけれども,今回の最終報告,是非そこ,どうやっていくのだと。フィージビリティーの検討です。そこまで是非ある程度のものを書き込んでいただくのがいいのではないかと思います。その中で,変えるものは変える,改善するものは改善するということだろうと思うのです。以上です。

【安西座長】  ありがとうございました。

大変貴重な御意見を頂いてまいりまして,このあたりにさせていただいて,ワーキンググループの方で検討を続けていただければと思いますけれども,多くの子供たち,高校生も含めて,それぞれ本当に自分でもって考えて,それで実践をしていくような,そういう子供たちが報われていくような,そういう教育,高等学校教育,大学教育もそうですけれども,そういう中での入試の在り方というのを是非ここで考えていただければと思っております。最終報告に向けてフィージビリティーの問題はもちろん大事でございまして,いろいろなお立場等もあるかと思いますけれども,それを超えてこれからの時代の特に教育の在り方,それに対して入試がどういうふうに役立っていくかということを念頭に置いてお考えいただければと思っております。どうかよろしくお願い申し上げます。

 

(2)「高等学校基礎学力テスト(仮称)」について,文部科学省から資料3に基づき説明があり,その後,意見交換が行われた。

 

【安西座長】

それでは,続きまして「高等学校基礎学力テスト(仮称)」について審議を行わせていただければと思います。まず岡本委員から御報告を頂いて,事務局から資料の説明をお願いしたいと思います。

【岡本委員】  改めまして,岡本でございます。新テストワーキンググループにおける検討状況について報告いたします。

これは一応「高等学校基礎学力テスト(仮称)」ということになっておりますが,ワーキングの方でも,本当にこれ「大学入学希望者学力テスト(仮称)」と同じテストと呼んでいていいのかというようなことはみんな思っていて,それはこの場でも議論されたことですが,それは前提にはなっているのですが,この場では学力テストと言わせていただきます。

「高等学校基礎学力テスト(仮称)」につきましては,昨年9月に高大接続システム改革会議でまとめられた中間まとめに基づきまして,高等学校教育の質の向上に向けた学校現場のPDCAサイクルの構築とともに,「高等学校基礎学力テスト(仮称)」の基本的事項や具体的な仕組みを高等学校校長会,教育委員会,私立学校団体,高等学校PTA連合会,民間事業者など広く関係者に対して丁寧に説明した上で率直な意見交換を実施してまいりました。この意見交換の中では,「高等学校基礎学力テスト(仮称)」の導入趣旨に賛同する声や学力を把握するツールとして期待する声があった一方で,「高等学校基礎学力テスト(仮称)」の実施体制,あるいはCBT導入の仕方を始め,より具体的な仕組みの提示について求める意見というのも大きく出されているところです。

こういう現場から頂きました御指摘や御意見を踏まえまして,現在ワーキンググループにおいて,中間まとめで提示した「高等学校基礎学力テスト(仮称)」の枠組みをベースに,より分かりやすい具体的な提案ができるように検討を進められているところでございます。具体的には,一番大きな問題だと思いますが,「高等学校基礎学力テスト(仮称)」の目的等がより分かりやすくなるような考え方の整理,「高等学校基礎学力テスト(仮称)」の対象者,実施時期,回数など趣旨等の明確化などとともに,「高等学校基礎学力テスト(仮称)」の実施に係る全体イメージ,試験問題の作成,収集の仕組みやCBTの実施方向の在り方などについて検討を進めておりますけれども,新テストワーキンググループとして提言をまとめるためには,いましばらく議論を継続していく必要があり,また,この場でもいろいろな御意見を頂きたいと思っているところでございます。

繰り返しになりますが,本日は中間まとめで提示した事項に関しまして高等学校関係者等から寄せられた指摘や意見を事務局の方から御紹介させていただいて,来月以降開催されるこの会議におきまして議論いただける提案をしていきたいと思っております。それでは,事務局の方の御説明,よろしくお願いいたします。

【今井高校教育改革プロジェクトチームリーダー】  失礼いたします。それでは事務局の方より補足の御説明をさせていただきたいと存じます。資料は資料3,それから別紙1,2,これを別に御説明させていただきたいと存じます。

「高等学校基礎学力テスト(仮称)」につきましては,先ほど資料1で,パブリックコメントの中,217件中156件が基礎学力テストを含めた高校教育改革に対しての御意見ということもございますように大変多岐にわたる御意見をこれまでも頂いてきております。そういった中,先ほど主査より御紹介いただきましたが,昨年9月の高大接続システム改革会議中間まとめに基づきまして関係の団体との意見交換をしてまいりました。例えば,都道府県教育委員会との関係におきましては,全体的な説明というだけでなく,個別の都道府県に伺いまして,教育長,高等学校担当の次長,課長級との個別の意見交換を今実施しておりまして,まだ数か所残っておりますが,そういった活動をしてまいりました。また,高等学校校長会との関係では全国高等学校校長会と随時意見交換するとともに,例えば商・工・農といった専門高校の校長会とも個別に意見交換を行わせていただいております。加えて,全国定時制・通信制高等学校校長会とも行うなど,高等学校の中でも様々な校種がございますので,そういったところで丁寧な意見交換をさせていただきました。

また,PTAの関係者,また私学団体関係者との間でも公式・非公式の関係で意見交換を行っておりますし,また,中間まとめで御指摘を頂きました,「高等学校基礎学力テスト(仮称)」を構築する上での民間連携の検討について御指摘を頂いておりまして,この点につきましては,昨年12月に民間事業者を対象に,この会には92の民間事業者がお集まりいただきましたが,説明会を実施し,また,随時御意見,御指摘などを賜りながらその民間連携の在り方の検討も進めているところでございます。

そういった中,その取組を進めてきたわけでございますが,その際の説明資料は別紙1,これは中間まとめを御議論頂く際にまとめていただいた資料でございますが,高等学校の教育の質保証の在り方,全体像から「高等学校基礎学力テスト(仮称)」の概要まで,こういったものをベースに御説明してまいりました。

その際,岡本主査より今御指摘を頂きましたが,関係者から,賛同する意見とともに,さらにより具体的な仕組みを,提示を求める御意見がございました。この点について事務局より,別紙2,A3の資料に基づいて御説明をさせていただきたいと存じます。A3の資料別紙2でございますが,これは左側に中間まとめのポイントをそれぞれ目的以下整理をさせていただいた上で,関係者からの御意見を右側に整理をさせていただいた資料でございます。

例えば,中間まとめの目的から御説明いたしますが,こちら目的にございますように,教育委員会,高等学校関係者などからは,例えば教育委員会の欄で申しますと上から三つ目,四つ目の丸にありますように,PDCAサイクルのツールとして「高等学校基礎学力テスト(仮称)」が導入されることについては意義が見いだせる,また,基礎学力の確実な育成,高等学校教育の底上げが必要だという理念は理解できるというお答えを頂いております。また,高校生の学力を客観的に把握できるテストの必要性というものは,高等学校の欄にもございますように,十分理解できるといったようなお声もございますが,あわせて,その際には,教育委員会の欄の二つ目にございますように,現在お示しをしている目的がより分かりやすく示されないと,現在,ある意味テスト漬けになっている中で,多様な評価の一環としてこの「高等学校基礎学力テスト(仮称)」の導入をするということが学校では受け入れにくいのではないか,また,高等学校の欄の三つ目の丸にありますように,このテストの入れ方によっては自己肯定感,学習意欲が下がってしまうおそれがあるのではないか,また,関係団体の欄の二つ目の白丸にございますように,基本的には賛成でありますが,その結果として唯一のツールになるおそれがあるのではないかといった御懸念も示されているところでございました。

続きまして対象者の欄を御覧いただけたらと存じます。この点につきましても,例えば教育委員会の一つ目の丸にございますように,指導改善,また,各設置者の教育政策の改善に生かすということであれば,学校単位,教育委員会単位での参加を基本にするということはよいであろうと。また,希望する生徒が受けられるようにはしていただきたいという御指摘を頂いてきたところでありますが,一方で,教育委員会の二つ目の白丸にございますように,指導改善に生かすということであれば高校3年生での受験というのは少し遅いのではないかという御指摘,また,例えば高等学校関係者の二つ目の白丸にありますように,学校単位での受検となると,受検しなかったということ自体がデメリットになるのかどうかが気になってしまうという御指摘などもあったところでございます。

続きまして対象教科・科目でございますが,この点につきましても,例えば,教育委員会の二つ目の白丸にございますように,高等学校,様々な学校がございますが,専門高校といえども高校生に共通して求められる基礎学力というのはあるので,この「高等学校基礎学力テスト(仮称)」に対しての価値,意義を見出せるという御指摘もありますが,それは裏を返して,また別の意見といたしましては,普通科と同じような形で基礎学力が扱われてしまうと,専門高校においての専門教科の教え方,そういった取組が変わってしまうのではないかということ,また高等学校関係者の二つ目の白丸にございますように,現在示されている「高等学校基礎学力テスト(仮称)」の科目では専門科目などの多様な学びが評価されず,一面的な評価になる可能性があるのではないかという御懸念も示されているところでございました。

続きまして問題の内容でございますが,教育委員会,高等学校関係者の欄にございます一つ目,二つ目にございますように,例えば出題の内容が高等学校教育の質の確保・向上にとって有用だということが実感できるものであればよいのではないかということであります。また,基礎を確認する内容,そして特に生徒自身が目標設定できるということが大事ではないかというような御指摘を頂いておりますが,その際,例えば問題の内容によっては,学力面で相当困難な層というのもあったりします。また,特に上位層といったところの関係ではこの「高等学校基礎学力テスト(仮称)」を受けないということがあるけれども,それをどういうふうに捉えていくのか,懸念が示されているところであります。また,関係団体のところにもございますように,多様な地域,高等学校がある中で,画一的なものにならないようにしてもらえないかといった御指摘も頂いてきたところであります。

続きまして出題・解答・結果方式のところでございますが,この点につきましては,教育委員会の一つ目,二つ目,三つ目の丸にございますように,CBT導入に当たりましては,マンパワーの確保,それからハードの整備の両面から慎重に検討し,シミュレーションなども入念に行って十分な検討をしていただきたいという御指摘を頂いております。また,CBTにつきましては,パソコンに不慣れな高校生がいるということも実態としてはあるので,その留意が必要,また,IRTという議論がありますが,これが問題非公表というふうになったときにどのように指導改善に生かすのかという点について御議論,さらに具体的なイメージを示してほしいといった御指摘もあったところであります。

続きまして2ページ目を御覧いただけたらと存じます。実施回数・時期・場所についてでございます。中間まとめでお示しさせていただいたように,教育委員会の一つ目の丸にございますが,生徒や学校や参加しやすい実施時期,実施方法を検討していただくということについては評価を頂いております。ただ,あわせてその時期,再掲でございますが,3年生での指導改善というところについてはより考えていく必要があるのではないかという御指摘,また,関係団体のところにございますように,例えば高校1年生で履修した国語総合,数Ⅰ,コミュニケーション英語Ⅰなどを翌年度以降に受検するということが学習改善にどうつなげていくのかについて疑念が示されているところでもありました。

続きまして受検料でございますが,この点,低廉な価格でというのを中間まとめでお示しをしております。特に教育委員会からは,専ら指導改善に活用するテストについて,受検料を払ってまで生徒が受けるのか,また,保護者がそういったことを了解するのかというところについて説明が難しいのではないか,また,受検料に見合う出題内容,またその結果のフィードバックというのが具体的にどう行われるのかといったところについて御懸念なり御指摘を頂いているところでございました。

続きまして活用の在り方でございますが,この点,教育委員会からのところでございますが,例えば一つ目の白丸にございますように,テスト結果を大学進学,就職等に活用することへの慎重であるべきという御意見,また,その結果が活用されたときに,「高等学校基礎学力テスト(仮称)」の対策になるような形にならないよう,その本来の目的が達成されるようにしていくことが必要ではないかという御指摘,一方で,活用例を具体的に示すことで受検が広がる,モチベーションを持たせられるのではないかといった御指摘もあったところであります。

また,高等学校関係者のところからは,今回中間まとめで御整理を頂きましたが,31年度から34年度までを試行実施と位置づけて,その間,原則,入試,就職には用いないと。その上でしっかりとした実証的な取組,またデータ,そして関係者の意見を踏まえて検証するということについては評価を頂いているところでもございます。

また,続きまして民間の知見の活用でございますが,高等学校関係者から,一つ目の丸にございますように,民間テストでは,個々の生徒の状況の細やかな把握,また,教師に対しての丁寧な指導方法が示されているという中で,これら民間と全く同じものをやるということになると意味がないのではないかという御指摘もあったところであります。また,関係団体からは,作問について,民間業者に全てお渡しをしてしまうというのはいかがなものかといった御指摘も頂いているところであります。

また,その他中間まとめで示した点につきまして教育委員会からは,公表することに関して,例えば現在小中で行われている全国学力・学習状況調査のような予想外の使い方ということもある可能性がありますので,その辺に対しての御懸念,また,名称について,先ほど岡本主査からも御指摘ありましたが,目指すものによってそれが分かるような名称を早く決めて示してほしいということ,また,「高等学校基礎学力テスト(仮称)」を含め多面的な評価ということがありますが,それが学校,生徒がいわゆる過剰な負担,そういった過剰な忙しさにならないような配慮をしていただきたいということでありました。

ただ,教育委員会の二つ目の丸にありますように,これまで全県的な学力把握というのを行っていない県も多数ございます。そういった中,「高等学校基礎テスト(仮称)」のデータが県の施策立案によって非常に役に立つという可能性があるのではないかという御指摘も頂いているところでございました。

以上中間まとめに対しての関係各界からの御指摘,御意見でございます。こういったものを今新テストワーキングで御議論をしていただきながら,中間まとめで提示したものについて,修正すべき点には修正を,また,趣旨を明らかにするものについてはどういった形で趣旨を明らかにするか,今鋭意御検討を頂いているところでございます。

そういった意味で,この資料3の1枚おめくりいただきまして,通しページ3ページ目以降でありますが,次回に向けましてこういった観点で今現在検討を進めているというところの一例でございますが,こちら,「高等学校基礎学力テスト(仮称)」について,例えば3ページ目の青い破線は基礎テストの目的としてまとめで示されたものでございます。ここにありますように,3つの白丸ございますが,特に一つ目の白丸にあります,「高校基礎学力テスト(仮称)」が高等学校段階における生徒の基礎学力の定着度を把握及び提示できる仕組み,そして,それを設けることで生徒の学習意欲の喚起,学習改善を図る,その結果を指導改善等に生かすことにより高等学校教育の質の確保・向上を図ることを主たる目的とすると示したものに対して,この矢印の以下でございますが,新テストワーキングで現在,上記目的・位置付けがより明確になるような整理に向けた御議論,御検討を頂いております。そして,その整理に基づきまして,その目的・位置付けを踏まえた「高等学校基礎テスト(仮称)」の具体的な仕組みの検討が必要だろうということであります。

また,現場から様々な御懸念が示されている中,二つ目の黒ぽつにございますように,そういった目的が達成できる「高等学校基礎学力テスト(仮称)」の具体化に向けて議論する際には,特に実現可能性,それから費用対効果,また学校現場・実施主体への過重な負担の回避ということを常に念頭に置きながらその具体化を図っていくということで議論を進めさせていただいているところであります。

また,4ページ目でございますが,この「高等学校基礎学力テスト(仮称)」の対象についていろいろ御指摘を頂いているところもございました。また,この破線のところにございますように,ボリュームゾーンとなる平均的な学力層,また,底上げが必要な学力面で課題がある層ということで中間まとめでは,お示しをしておりますが,この点について,「高等学校基礎学力テスト(仮称)」がターゲットとしているところは明示しつつも,その趣旨若しくは留意点についてより明確にする必要があるだろうと。そしてさらなる理解の促進を図る必要があるだろうということで,現在ワーキングにおきましては,一つ目の黒ぽつにありますように,生徒の基礎学力面の課題をきめ細かく把握できるということでこのテストを作り,その結果を提示する,また出題をしていくということを考えていく。その上で,実際にこの対象となるものは学校又は設置者が適切に判断をして,基礎学力の確実な育成に効果的に取り組むことができるような仕組みとして考えていってはどうかということであります。

その際,二つ目の黒ぽつにございますように,現在でも「高等学校基礎学力テスト(仮称)」の定着に向けて取り組んでいる先行的な事例がございます。そういったものを参考にしながら,2行目以降でありますが,「高等学校基礎学力テスト(仮称)」を受検すること,また,その結果を否定的な評価として捉えられることのないよう,基礎学力の定着を目指す積極的な取組として社会的にも評価されるような普及啓発に向けた取組が必要だろうということも含めて議論していただいています。

これはあくまで一例でございますので,この後また新テストワーキングでの御議論を踏まえて,次回以降の高大接続システム改革会議におきましてその全体像なり詳細な検討結果について御紹介をし,御審議をいただけたらと考えているところでございます。事務局からの説明は以上でございます。

【安西座長】  ありがとうございました。

ただいま岡本委員,また事務局から御説明いただきましたけれども,12時までとれると思いますので,この「高等学校基礎学力テスト(仮称)」,これに狭めていただかなくても結構ですけれども,是非御意見を頂きたいと思います。どなたでも結構でございます。

小林委員,お願いいたします。

【小林委員】  御説明ありがとうございます。

ここにも1番のポイントで示されていますけれども,この「高等学校基礎学力テスト(仮称)」は,全国を回ってみますと,やはり目的のところが一番明確でないというふうな御指摘を受けるところだと思っております。特に,もともとの第一義的な目的とする生徒の学習意欲の喚起,学習改善,指導改善に生かして高等学校の質の保証・確保に生かしていくというのは皆さん御理解いただけるのですが,その活用のところで,大学入学者選抜や,また就職等に生かすというところの活用が入っているために目的が少し曖昧になっているのではないかということです。高等学校の質保証であれば早くから,これは高等学校で学ぶ,共通で学ぶコアの学力というところを提起していると思うのですが,これをきちんと測定していくのであれば,できるだけ早いうちに実施して改善に生かしたいと。

しかし,これが大学入学者選抜に活用するのであれば,先ほど宮本委員からもあったとおり,できるだけ遅くして,勉強を多くさせて受けさせたいというふうに目的と手段が少しごっちゃになってしまっているところがあります。これは先ほど名称のところもありましたけれども,きちんと目的をまず明確化して,さらに名称をきちんと分かりやすいものに決めていくというところが非常に重要なポイントだと思っております。

また,対象者のところにつきましても,例えば,ボリュームゾーンとなるところとありますけれども,中高一貫校とかで下からずっと上がってきている子の中には,例えばもう私立文系というふうに決めて数学を余りやっていないため,中学レベルで学力が止まってしまっている子とか,進学校の中でもそういった定着していない学力の子も見受けられるということで,できるだけ幅広い生徒に受けていただくのがいいのではないかと考えております。

【安西座長】  ありがとうございました。

これはいかがですか。

【今井高校教育改革プロジェクトチームリーダー】  御指摘ありがとうございます。

関係各課からも今御指摘いただいたようなことを頂いておりまして,別紙1を御覧いただけたらと存じますが,今回,この高大接続システム改革会議で中間まとめをおまとめいただく際に,別紙1にございますように,「高等学校基礎学力テスト(仮称)」の位置付けを説明していくに当たりまして,高等学校教育質保証全体についての点とともに,特に,3ページ目にございますように,高等学校教育においてどのような形で「高等学校基礎学力テスト(仮称)」を活用しながら質保証を図っていくのかというところでPDCAサイクルの確立に向けた取組ということを御紹介し,意見交換を続けてまいりました。

こういったものを丁寧に御説明をしていく過程の中で,結局「高等学校基礎学力テスト(仮称)」の目的について,狙っているところはそこまで聞くとようやく分かるのだけれども,現在出ているメッセージについてはもう一つ工夫をして分かりやすくしていただきたいと。ですから,中間まとめでこれまで御議論いただいた線をベースにしながら,どういった点を分かりやすくしていったらいいかという検討を今進めていきたいと思います。

その際の一つのキーといたしましては,この別紙1はあくまで高等学校をある意味抽象度を高めた全体的取組という観点で見ておりますが,一方で専門高校とか普通科,それから総合高校という,ある意味入試を経た後入ってきた学校が様々な教育の提供の仕方により変わっているということ,加えて定時制,通信制といったものもあるという中で,この「高等学校基礎学力テスト(仮称)」がどういうふうに使われていく,その目的に基づいていくのかということも御指摘を頂いております。このあたりを多分丁寧に,高等学校の現状,また実態を踏まえた提示の仕方というものを考えていく中でその辺の議論がさらに深まるのではないかと考えておりまして,是非その辺の整理できましたら,またこの高大接続システム改革会議でも御紹介をし,御議論いただければと存じます。

【安西座長】  ありがとうございました。

高等学校が非常に多様化していて,それぞれ本当に一生懸命教育をやっておられる中でのこの議論でございますので,そのことは我々皆理解していなければいけないと思っております。

関根委員,お願いいたします。

【関根委員】  基本的に小林委員と同じ考えですが,ただ,私は,高等学校教育の質の保証というふうには言っていただきたくないと思っています。これは基礎学力,学力の保証だと思います。つまり高等学校教育でいうと,高校1年生までですから,高等学校教育全体の質の保証にはなりません。高等学校教育は,基礎をベースにして,それから社会に出ていく中での何を育てていくかが一番大事であって,基礎学力が高等学校教育の質の保証にはなりませんので,そういう意味で,高等学校教育の質の保証という言葉を余り声高に言うのはやめていただきたいと思います。これはあくまで学力の保証だと思います。

そういった意味で,きちんとした基礎学力を子供たちに保証するということが一番メインであって,そのために教員の資質向上等が手段として必要ですけれども,一番大事な目的というのは,私はあくまでも子供たち一人一人の学力保証という意味での基礎学力だと思っています。その辺を明確にしていただいてやっていただければと思っております。

【安西座長】  ありがとうございました。

山極委員にお願いいたします。

【山極委員】  目的のところですけれども,私の理解しているところでは,この「高等学校基礎学力テスト(仮称)」をする背景というのは,高等学校の多様化,個性化というところで,総合的な学力が落ちているということで,それを判定し,それを基に高等学校教育の改善を図っていくということだろうと思っています。

そこで目的ですけれども,これはまさに書かれているように学校ごとの教育目標の設定,教育課程の編成,指導計画の作成見直しなどに利する,供するための資料ということだと思うのですけれども,これは個人の能力の向上ということも視点にあると思います。これはどちらを重視するかによって,これは個人によって,これを受けてもいい,受けなくてもいいという希望によって取捨選択ができると書いてあるわけですけれども,そのメリット,実際に受ける高校生自身がこれを受けて自分の成績をフィードバックしてもらって,先生とともにどういうふうな点に注目して自分の学力を伸ばしていったらいいのかということに資するのか,あるいは高等学校全体の教育方法,カリキュラムの見直しだけに資するものなのか,その辺の焦点が曖昧だと,この使い方,学校ごとにこれを比較することにしないとかするとか,それから個人として受ける価値があるかないかとかいうことに関わってくると思いますので,その辺の比重をどう考えていらっしゃるのかということをお聞きしたいと思います。

【安西座長】  事務局,お願いいたします。

【今井高校教育改革プロジェクトチームリーダー】  御質問ありがとうございます。

この「高等学校基礎学力テスト(仮称)」につきましては,目的はまさにこの中間まとめで示させていただいた内容に基づいて今後さらに議論を深めていくべきだと考えておりますが,一方で,この「高等学校基礎学力テスト(仮称)」が個人の生徒が受けていくという側面がありますので,問題の出し方,結果の返し方,それから生徒に還元される側面もございます。実は関係者と御議論していく中には,今民間でもかなりきめ細やかなテストなり,そういった教材を提供して指導に充てているというお話も聞いております。

一方,そういった側面で,全く同じものではこの「高等学校基礎学力テスト(仮称)」,ないということでして,多分もう一つ加えて大事なのが,この「高等学校基礎学力テスト(仮称)」を通じて得られた実証的なデータに基づいて,設置者なり,それから学校なりがそれぞれの組織的な立場の中でシステムとして学力向上を図っていくという取組にも使っていただく,むしろそちらの側面も併せてそれを磨いていく必要があるのではないかと考えております。

そういったところをさらに国として,ではどういう形で設置者なり学校を支えていくのか,そういった政策とセットで考えていく必要があろうかと思いますので,基本的には,今ある既存の民間というところのテストと全く同じにするというよりは,むしろ,個人に対して回答ができるものはブラッシュアップするとしても,加えて我が国の高等学校教育の質の確保と。先ほど関根委員から学力だというふうに言われましたが,それは多分高等学校教育政策全体のパッケージの議論とこの「高等学校基礎学力テスト(仮称)」が狙っているところのイメージを分けて考えていくということだと思っておりますので,そのあたりも含めて整理をして,さらに御議論に供するよう案を提示したいと考えております。

【安西座長】  山極委員,お願いいたします。

【山極委員】  すみません,もう一つお聞きしたいのですけれども,この資料は学校間の比較ということに利用されるのかどうか。そうすると,例えば学校間の格差だとか,あるいは,今の学校教育法では卒業案件というのを校長に一任しているわけですけれども,そういった卒業に向かってどういうふうに教育を改善していってそれを卒業認定ということに結び付けるのかというプロセスの問題にも関わってくると思うのですけれども,そのあたりの今後の方針をどう考えていらっしゃるのかお聞きしたいのですけれども。

【今井高校教育改革プロジェクトチームリーダー】  御指摘ありがとうございます。

この学校間の比較の関係につきましては,私どもといたしましては,このテストが,学校単位で受ける,もしくは設置者が選んでいく,さらには個別で受けるということでありますので,ある意味悉皆の調査とは違うということでありまして,そういった悉皆で違うところを学校間の比較というものをどう考えるのかという議論があろうかと思います。また,そういったことも全部含めまして,我々としては,これはあくまで指導改善ということを念頭に置いた形で使っていくことを,今議論を頂いておりますので,こういった学校間での競争を,むやみに過重な競争を引き起こすようなことのないよう,例えば現在の全国学力・学習状況調査での議論なども踏まえながらさらに今後検討を進めていきたいというふうに考えているところでございます。

【安西座長】  ありがとうございました。

私の理解では,以前の中央教育審議会の高等学校教育特別部会でこの議論がずっと行われまして,高等学校単位あるいは悉皆調査,あるいは個人,いろいろな議論が行われた中で,結局,高校生であるからには一人一人の高校生にチャレンジしてもらいたいなという思いが前面に出た形で高等学校特別部会の提言というのでしょうか,そちらがでまして,それがベースになっていたのですけれども,高等学校側から見ると一つの高等学校全体としての指導の改善にも当てていきたい,そういう御意見が非常に強くありまして,それはごもっともなことだということもあり,両面が合わさっている形になっているかというふうに理解しております。そのあたりの経緯は是非委員の皆様には御理解いただいた上でどういうふうに明確に言っていくのかということを考えていければと思います。

佐野委員,お願いいたします。

【佐野委員】  ありがとうございます。

今の山極委員の御意見とよく似ていますけれども,結局目的の中に生徒の学習意欲の喚起,学習改善を図るとともにその結果を指導改善等に生かすということですけれども,生徒の学習意欲を喚起するということであれば,生徒を主人公,生徒から見て,どのような自分は評価をされることに変わっていくのかと。いわゆる知識・技能の定着だけではなくて,どういう評価をされていくのかとか,あるいは資料別紙の高等学校教育におけるPDCAサイクルの構築案というのも,生徒から見たときにどういうふうにPDCAが回るのかというのがないといけない,分かりづらいと思います。そういう意味では,現状しようがないのですけれども,サプライサイド,提供する側からの見方,資料でありますけれども,受ける側の視点から見たものが示されないと,生徒本人もそうですし,保護者もそれに向かっていこうというふうにはなっていかないだろうという不安がございます。

それともう一点,今の安西座長からのお話の中で,学習意欲の喚起とも関係しますけれども,結局,本日の御説明あるいは資料の中にもありましたけれども,否定的に使われてしまうと困る,捉えられてしまうと困るというのはまさしくそのとおりだと思うのですが,そこで想定されるのは,このテスト,これの名称にも関係するのかもしれませんけれども,受ける学校は基礎学力に不安のある学校だと。あるいは基礎学力までは保証するけれども,その先は生徒に任せる学校だというふうな逆のマイナス評価につながってしまうおそれもあるわけです。

ですから,どこかにもありましたけれども,「基礎学力,うちは大丈夫です」というところはあえてこのテストは受けずに,「自分の高等学校の教育の中で十分それはできます」と。「生徒の学習意欲の喚起も大丈夫です」と言うことができて,逆にこの,テストという言葉を使っていいのかどうか分かりませんけれども,これを受けるところが,そこまでは保証する学校だと。そういう教育をしている学校だ,そういうことを受けるところが限界なのだと思われてしまうという,そこは何か考えなくてはいけないだろうと思います。で,私どもの全国のPTAの団体では,小中学生の学習・学力状況調査と同じように悉皆で実施することが一番よろしいのではないかということを提案しているということであります。

【安西座長】  ありがとうございました。

いろいろ御意見があると思います。もともとの思いと経緯は,結局高校生が自分からチャレンジしていってもらいたいということでございます。複数回のテストをやれば自分があるレベルであることがわかってもう一回チャレンジできるのではないかとか,そういう議論が随分先ほど申し上げました部会で行われまして,私もおりましたけれども,先ほどありました小学校からのいろいろな積み上げがそういうところへ効いてきて,それで入試も変わっていくということを,そうした全体の流れを期待しながらの議論だったわけであります。これが,ある意味大人の思考枠でというのでしょうか,横で比較するのではないかとかいろいろなことが言われておりますけれども,経緯としては今申し上げたようなことがもともと強い議論としてあったということは申し上げておいてよろしいかと思います。

非常に多様な背景を持った高校生たち一人一人が報われていくように,少し机の上の議論だと思われるかもしれませんけれども,できるだけそういう方向に向けての議論にしていただければと思っております。

それでは,香山委員,それから恩藏委員にお願いいたします。

【香山委員】  今,各委員のお話をお聞きしながら,問題意識は共通していると思いつつ,私の視点で1点御質問したいと思います。それは,「高等学校基礎学力テスト(仮称)」が基本的な知識・技能を尋ねるのが主であり,いわゆるA問題的な問題が多いといったイメージが今あるかと思うのですが,従来の知識を暗記再生するような文脈で語られる知識・技能を尋ねるのが多い問題というイメージが先行しますと,ボリュームゾーン以下の子供たちにとって受ける意欲が出てこないテストになるのではないかと思います。そういう意味でも,実生活で必要な基本的な知識・技能を育み,将来の自分を開発していく,そういう文脈の中で尋ねられる基礎知識・技能であるというような問題にしていかないと,恐らく佐野委員が心配されたように,このテストを受ける子たちの学校というのは学力が低い学校だとかいったような間違ったことになるのではないかと心配しています。

そういう点で,今水面下で検討されている「高等学校基礎学力テスト(仮称)」の方向性について,難易度は簡単であっても,きちんと必要とされるコンピテンシーとひも付いて,簡単な問題だけれども,この問題を通してしっかりとこういうコンピテンシーが身に付く,向上するといったような,従来のコンテンツベースのテストではないというところを鮮明にしたようなテストにするべきではないかと思っているのですけれども,その点はいかがでしょうか。

【安西座長】  事務局からお願いいたします。

【今井高校教育改革プロジェクトチームリーダー】  御質問ありがとうございます。

中間まとめにおきましても,まさに社会に結び付いた形で問題を検討していくということが既に御指摘を頂いておりますので,そういった観点,また,今,委員より御指摘を頂いたその文脈の中で位置づけていくということも念頭に置きながら,現在作問のイメージ作りについて検討しておりますので,このあたりの考え方が整理できましたら,また御紹介,御報告をさせていただいて御議論に供させていただけたらと考えております。

【安西座長】  ありがとうございました。

【香山委員】  もう一点だけ。申し訳ありません。これは「高等学校基礎学力テスト(仮称)」に限らないのですけれども,先ほどの「大学入学希望者学力評価テスト(仮称)」の議論も含めて,今は大学の入学時期を4月に設定して,そこから逆にいろんなことが議論されていますけれども,本当に今の議論が進んでいって「大学入学希望者学力評価テスト(仮称)」が前倒しになっていくと,高等学校の教育の質が本当に担保しづらいといいますか,現場が随分混乱するのではないかと心配しています。特に地方の高等学校の教員はいろいろなことをやっていますので,本当にタイトになり過ぎて,ブラック企業になってしまうおそれがある,そういうふうに感じます。そういう点でも,大学の入学時期が本当にそれでいいのか,特に長文の記述を考えるときまでにはそういう議論もしていただいたら有り難いというふうには感じております。

【安西座長】  ありがとうございます。

それでは,恩藏委員,お願いいたします。

【恩藏委員】  既に多くの委員が指摘されていますけれども,先ほどの高等学校関係者からのコメントを聞いていて,また,各委員の御発言を聞いていると,やはりそれぞれ思い描いているイメージが違うのだと思います。目的のところから議論が展開されていますけれども,私はできる限り目的を絞ってほしいと思います。でないと,結局もう一つの「大学入学希望者学力評価テスト(仮称)」とかなり類似してきて,受検生というか高校生にとっても混乱してしまうし,また世の中にとっても二つ似たような試験があると捉えられてしまう。それゆえ,将来的には就職だとか,あるいは進学だとかに使われていくのではないか,そんなイメージがするのです。

そこで,先ほど香山委員も言ったような問題の出し方というのも一つの案だと思いますし,高校1年生でも2年生でも3年生でも数回受けることができて,評価も,「パス」か「パスしていない」とかそのくらいにしてしまえば非常に分かりやすいと思います。

大分前ですけれども,私はやるなら悉皆でやってほしいと何回か申し上げました。本日,高等学校の卒業生の学力は本当に低くなっているので,それを最終的にはもっと底上げをしたいということだと思うのです。それが,ひいては日本の国際競争力だとか国力の引上げにつながるだろうと私は思っている。それを考えたならば,最終的に文部科学省,国が何をしたいのかということをもう一度考えて,是非,この目的とか使い方を絞り込み,そして「大学入学希望者学力評価テスト(仮称)」との混乱を避けていただきたいと思っています。以上です。

【安西座長】  ありがとうございました。

南風原委員,それから金子委員,お願いいたします。

【南風原委員】  今の目的と,それからもう一つのテストとの関係ということで,私も同じように疑問がありまして,まず,受検料を取るということだとすれば,それは個人のために,この受検料に見合うバックがなくてはいけないわけです。教育の改善のためになぜ子供がお金を払わなくてはいけないのか。やる気を喚起するためというのですが,やる気のある子は受けるかもしれないけれども,お金を払ってテストを受けて喚起されようとか,それにチャレンジするならもう喚起されているわけです。もともとのところから目的が全然はっきりしないというのは,これは夏頃から言っていることで,全く変わっていないという感じがします。

このテストを複数回やって,高3の夏ぐらいまでやっていくと,先ほどの記述式をもしもやるとしたら,やらない方がいいと思いますけれども,もしもやるとしたら,今度は記述式がやってくるわけです。同じ時期に二つかぶってくる。そしてその後,大学入試センター試験のようなものが来るということで,恐らくこの「高等学校基礎学力テスト(仮称)」と「大学入学希望者評価テスト(仮称)」の議論がそれぞれ別個にやられているからこんなことになるのではないかと。全体像はどうなっているのか,受検料はどうなっているのか,何回受検するのか,それから,先ほどの「大学入学希望者評価テスト(仮称)」の方も,記述式だけ国語,数学というふうに飛び出ていましたけれども,じゃその国語,数学の記述式じゃない部分はどうなるのか,全体の教科は要するにどうなっているのか。マトリックスです。国語,数学,理科,社会がどのような形で,いつそれを評価するのかということが「高等学校基礎学力テスト(仮称)」と併せて,要するに高等学校に入ったら順番にどんなことがあるのかということが全く全体像が見えない混乱状態になっているのではないかと思いますので,その辺の整理をまずしてほしいと思います。

【安西座長】  ありがとうございました。

それぞれの議題は別途のそれぞれのテーマになっておりますけれども,この会議自体システム改革会議と称しておりまして,常に全体像を委員の皆様が御自分でいろいろお考えになりながらお考えを進めていただければと,これは心から思っております。

金子委員,お願いいたします。

【金子委員】  私も今おっしゃったことと一緒で,これは物すごく多様なものが含まれていますので,常に全体が見えないのですが,しかし,個々のところで議論していくしかないと私は思います。

それから,先ほど,これも安西座長のお話になったことと同じになるかもしれませんが,私も高等学校教育の改革会議からずっとここの部分に関わっておりますけれども,高等学校教育の最大の問題は,高校生の学習意欲が低下しているということです。特にマス部分というのですか,真ん中の4分の3の部分の学習時間がここ20年くらいで劇的に減少している。これは,日本の高校生の学習が大学入試によって規定されていて,しかもその大学入試が今変化してきているためにそういう状況が起こっている,学習意欲が低下しているということがあると思います。

しかし同時に,そのために個々の高校生にとって達成目標が非常に曖昧になっているということも非常に大きな問題で,これに対してどのような対処をするのかというのが基本的な問題でありまして,そのときに,一定の基礎的な学力については保証するといいますか,これができているのかどうかを高校生自身が自覚してもらうと,これが一番重要なのではないか。初等・中等教育と一番大きく違いますのは,高校生というのは自分でやる気にならなければ勉強しないということです。高校生は,授業に出ているという意味では勉強しているのです。しかし,家では全く勉強していない。高等学校の3年生でも大体6割くらいは家で全く勉強していないです。そういう状況でいいのかという問題が非常に大きな問題,第1の問題としてあったのだと思います。そのために,高校生にとっても自分のメリットになるべきテストであると思います。それは結果として入試に使われたり,それから就職のときに使ったりということもあると思いますが,第1に,自分の力,基礎的な力があるのかないかということを確認してもらうということは高校生にとっても非常に重要ではないかと思います。

それから,優秀な選抜性の高い高等学校は必要ないのではないかというふうな御意見もありましたが,私は全くそんなことはないと思います。今は選抜性のかなり大学でも非常に個性化が進んでいまして,いわゆる有名高校でも,1年生のときから陸上ばかりやっているとか,そういう子が結構います。そういう子に対してもやはりきちんと一定の学力は確認してくれと。それはそれで私は非常にいい進路かもしれません,個性かもしれませんが,しかし,そういう子でもやはり一定の学力は確保してくれと,そういうことをこの改革はメッセージで出しているのではないかと思います。

【安西座長】  ありがとうございました。

そろそろ時間でございますけれども,他にはいかがでしょうか。今,金子委員が言われましたけれども,私も同様の思いは持っておりますが,高等学校における高校生の基礎的な学力と,高校生が自ら,自分から主体性を持ってというのでしょうか,学んでいきたいという思いというのでしょうか,そういうものと,それから,高校生は非常に多様な背景を持っていますので,それぞれの高校生が自ら前向きに捉えていきたいと思うようなテストをどうやったら設計できるかということになっていくかと思います。まとめているつもりはございませんが,高等学校の教育の問題は高大接続システム改革の中では極めて中心的な課題だと捉えております。

これから,本日頂いた御意見も踏まえて,これも新テストワーキンググループの方でテストについては御検討を頂くことになりますけれども,委員の皆様におかれましては,この改革の全体,あるいはこの改革を超えた日本の教育のこれからの在り方ということを,御自分の周りだけではなくて日本全体のことを是非お考えいただいて今後の議論が進められればと思いますので,最終報告に向けて是非議論を詰めていければと思っております。

よろしゅうございますか。

それでは,その他の事項につきまして事務局から説明をお願いします。

【新田主任大学改革官】  資料の4を御覧いただければと思います。資料の4,「高大接続改革の推進」ということで,昨年末,12月に閣議決定されました28年度予算案におきます高大接続改革の推進に関する予算について概略御説明させていただきます。

まず,紫のところがございますけれども,大学教育改革に関連しましては,「入り口から出口まで質保証を伴った大学教育の実現」ということで,大学教育再生加速プログラム「高大接続改革推進事業」ということで,三つのポリシーに基づき,入学から出口まで質保証を伴った大学教育を実現するための先導的なモデルとなる取組を支援するということ,真ん中,緑のところの入学者選抜改革として,まず一つ目の個別入学選抜の改革で,「先進的評価手法の共同開発」ということで,大学入学者選抜改革推進委託事業,それから「共通テスト改革」ということで,大学入学希望者学力評価テスト「フィージビリティー検証事業」として,モデル問題の開発,それから記述式,CBT導入等に向けた実証的な検討の支援,高等学校教育改革のうち「高等学校基礎学力テスト(仮称)」の導入検討のための高校生の基礎学力の定着に向けた学習改善のための研究開発事業と。

その他ということで,一番下にございますが,各大学の入学者選抜改革等の推進の支援ということで,国立大学の運営費交付金,それから私学助成でそれぞれ所定の額を確保し,右上でございますが,これらも含めまして総額として50.5億円ということで予算計上しているということでございます。予算については以上でございます。

以上,本日御審議ありがとうございました。次回,2月につきましては,また日程調整の上御連絡させていただきます。以上でございます。

【安西座長】  ありがとうございました。

よろしゅうございますか。28年度予算をこれだけ付けていただいておりまして,28年度がこの高大接続システム改革が本当に始まっていく,そういう時期に当たると思いますので,よろしく御指導のほどお願い申し上げます。

それでは,本日の議題はこれで終わらせていただきます。

大変貴重な御意見を頂きまして,誠にありがとうございました。

―― 了 ――

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