高大接続システム改革会議(第8回) 議事録

1.日時

平成27年11月30日(月曜日)14時~16時

2.場所

文部科学省3階 3F1特別会議室

3.議題

  1. 多面的な評価検討ワーキンググループにおける審議の進捗状況について
  2. 「大学入学希望者学力評価テスト(仮称)」について
  3. その他

4.出席者

委員

(座長)安西祐一郎委員
(副座長)片峰茂委員 
(委員)荒瀬克己,五十嵐俊子,乾 健太郎,浦野光人, 岡本和夫,恩藏直人,金子元久,香山真一,河野真理子,五神 真,小林 浩,佐野元彦,鈴木典比古,関根郁夫,長崎榮三,長塚篤夫,南風原朝和,宮本久也,山本廣基の各委員

文部科学省

(文部科学省)河村生涯学習政策局長,小松初等中等教育局長,杉野私学部長, 常盤高等教育局長,伯井高等教育局審議官,大槻国立教育政策研究所長,瀧本総務課長,今井高校教育改革プロジェクトチームリーダー,新田高等教育局主任大学改革官,塩見大学振興課長,橋田大学入試室長,他

5.議事録

(1)多面的な評価検討ワーキンググループにおける審議の進捗状況について

資料1-1から資料3に基づき説明があり,質疑応答が行われた後,意見交換が行われた。

【安西座長】  時間でございますので,ただいまから第8回高大接続システム改革会議を開催させていただきます。

委員の皆様,御多用の中お集まりいただきまして,誠にありがとうございます。

今回は2件ございまして,第1点は,高大接続改革の大変重要な側面の一つでございます多面的な評価への改革につきまして,多面的な評価検討ワーキンググループでのこれまでの検討状況を御報告いただきます。そして,議論を行わせていただきたいと考えております。

もう一つは,今後の検討スケジュールでございますけれども,次回については新テストワーキンググループの検討を踏まえまして,「大学入学希望者学力評価テスト(仮称)」の作問に関する具体的な検討状況,また実施方法等に関する主な論点の案などにつきまして,これまで整理できているものをお示ししたいと,御議論いただきたいと考えております。

さらに,「高等学校基礎学力テスト(仮称)」につきましても,「大学入学希望者学力評価テスト(仮称)」の御議論の進捗を踏まえまして,次の次の会,次々回以降に同様に具体的な実施方針の案についてお示しいたしまして,御議論を頂きたいと考えております。

これらの点,全て今回の高大接続システム改革にとりまして,極めて重要な論点でございまして,「大学入学希望者学力評価テスト(仮称)」につきましても,本日文部科学省の方からもお話を頂いて,御議論いただければと思っております。この会議におきまして,丁寧な御議論を行っていただきますとともに,関係方面との調整も進めていきたいと考えております。

この会議におきましては,年内を目途としてまとめを出させていただくということでやってまいりました。今申し上げましたように,いろいろな事項がございまして,本年度中に,これは今までどおりといえば今までどおりでありますけれども,本年度中にまとめるということで,検討を進めさせていければと考えているところでございます。もちろん12月中に,先ほど申し上げました,特に「大学入学希望者学力評価テスト(仮称)」の作問に関する具体的な検討状況,実施方法等については御議論を行わせていただくということにしてございます。よろしく御理解のほど,お願いを申し上げます。

よろしゅうございますか。

それでは,事務局からまず配付資料について説明をお願いします。

【新田主任大学改革官】  配付資料を確認させていただきます。議事次第にございますとおりに,配付資料が1-1から1-2,2-1,2-2,3,参考資料までございます。机上の配付資料等はございません。落丁等がございましたら,事務局まで合図していただければと思います。以上でございます。

【安西座長】  よろしいでしょうか。

それでは,進行させていただきます。まず,多面的な評価検討ワーキンググループにおける審議の進捗状況につきまして,多面的な評価検討ワーキンググループの主査をお務めいただいております荒瀬委員,大谷大学の教授でいらっしゃいますけれども,荒瀬委員から御報告をお願いいたします。

【荒瀬委員】  多面的な評価検討ワーキンググループの主査の荒瀬でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

当ワーキンググループは,多様な学習活動や学習成果を適切に評価するための具体的な方策の在り方等について検討を行うため,本会議の下に設置されたものであります。本日は,当ワーキンググループの検討の状況を御報告し,今後の議論のまとめに向けて,委員の皆様方の御意見を頂戴したいと考えております。

当ワーキンググループの主な検討事項といたしましては,まず高等学校段階における評価の在り方として,学習評価の在り方や指導要録の改善など,学習改善の在り方,あわせて民間団体や公聴会等が実施いたします検定試験の活用,促進について検討することとしています。

次に,大学入学希望者選抜等における評価の在り方として,調査書等の出願時提出資料の在り方,また大学入学後の活用の在り方等について検討を行っております。そのほかに,就職等における評価活用の在り方や,書類の電子化など,評価の充実を支える基盤整備についても検討事項としております。

これまで3回の会合を開催いたしまして,高等学校関係者,大学関係者,企業関係者のヒアリング,そして委員間の議論を重ねてまいりました。先般,議論のまとめに向けての検討の方向性を整理し,さらに議論を進めていくことを確認したところであります。

本日は,この検討の方向性とともに,ワーキンググループで出された意見についても御紹介をし,これに対する皆様方からの御意見も踏まえながら,ワーキンググループでさらに議論を進め,改めて本会議に議論のまとめにて報告させていただきたいと考えております。

なお,当ワーキンググループの検討事項は,次期学習指導要領の改訂について検討を行っている中央教育審議会教育課程部会での議論と密接に関係しておりますことから,連携して検討を進めてまいりたいと考えております。

このため,教育課程部会総則評価特別部会に対しましては,当ワーキンググループの議論の状況を適宜情報提供していくことにつきまして,皆様の御了解を頂きたいと存じます。

それでは,詳細につきましては事務局から説明をお願いいたします。

【今井高校教育改革プロジェクトチームリーダー】  失礼いたします。それでは,事務局より資料に基づきまして,御報告の方をさせていただきたいと存じます。なお,お手元の資料,資料1-1と1-2,それから資料2-1,2-2に基づいて御説明させていただきたいと存じますが,このシステム改革会議で本件,多面的な評価の検討について御紹介するのが初めてということでございますので,資料の番号,大変逆になって恐縮ですが,資料2-1,2-2に基づきまして,まず現在の状況についてどうなっているのかを御紹介しながら,後ほど資料1-1,資料1-2を使いましてワーキンググループでの検討状況について御報告を申し上げたいと存じます。それでは,大変恐縮ですが,資料2-1と2-2を二つ並べながら御覧いただけたらと存じます。

まず,資料2-1でございますが,多面的な評価の検討に当たっての参考資料1として,現在の考え方について整理をした資料でございます。まず,1枚おめくりいただきまして,高等学校における学習評価について,まず私の方から御説明させていただきたいと存じます。

高等学校における学習評価につきまして,現在でございますが,学習評価の意義・目的は,上の資料,箱の中にございますように,主に三つの白丸の観点で整理されていますが,大事なポイントは二つ目の白丸にございますように,学習評価を通じて,学習指導の在り方を見直す,個に応じた指導の充実を図ること,そして学校における教育活動を組織として改善すること,この指導と評価の一体化を目指していくということが,大事なポイントだというふうにして整理がされているところであります。

このため,これ「新」となっていて恐縮ですが,現行の学習指導要領におきましても,きめ細やかな指導の充実,生徒一人一人の学習の確実な定着を図るため,ここからでありますが,学習指導要領に示す目標に照らしてその実施状況を評価する,目標に準拠した評価や観点別学習状況評価,これを引き続き実施するということとされているところでございます。

その際,ポイントとなりますのが,生徒指導要録におけます学習評価のポイントでございますが,この二つ目の大きな箱の中にございますように,現在各教科・科目の評定につきましては,指導要領に示す目標に基づきまして,その実施状況を総括的に評価するということとされているところでございます。

その評定に当たりましては,観点による評価といたしまして,四つの観点が現行の指導要領では整理されておりまして,「関心・意欲・態度」,「思考力・判断力・表現力」,「技能」,そして「知識・理解」を十分踏まえることとされております。なお,また後ほど御紹介いたしますが,米印の一つ目にございますように,こういった観点につきましては,高等学校の指導要録の中では,参考資料様式が示されておるところでありますが,観点別学習状況の記載欄というのは設けられていないという状況にございます。

なお,続きまして,総合所見,指導上の参考となる諸事項として示されておりますのは,こちらの丸1番から丸7番にございますように,学習に関する所見,それから行動,進路指導,そして資格取得の状況など,また丸6番あたりに出てまいりますが,社会奉仕体験活動,表彰,各種検定,検査こういったものの記録というものがなされるということにされているところでございます。

続きまして,2ページ目を御覧いただけたらと存じます。この観点による評価というものにつきましては,平成22年に出された通知の中でも,参考の様式が示されているところでございますが,そういったものに基づいて様々評価をしていくということとされております。その具体的なイメージが,2ページ目の中段から以下,破線の中に入っているものでございますが,指導要領を踏まえた観点の設定でございます。

こちら,まず一つ目の白丸でございますが,各教科の内容等に即しまして,思考・判断したことについて,その内容を言語活動を中心とする表現に係る活動と一体的に評価する観点として,現在の指導要領の改訂をした際に,この「思考・判断・表現」というものをきちんと設定させていただきました。

その流れから,従来の技能・表現という観点から表現との混同を避けるため,技能と改めた上,この赤い箱の中にありますように,現行指導要領の観点は四つ示されておりまして,「関心・意欲・態度」,「思考力・判断力・表現」,そして「技能」,さらに「知識・理解」とされているところでございます。

その内容につきましては,それぞれ下のところに書いておりますので,御覧を後ほどいただけたらと存じますが,この点は一番最後,下の箱,破線の箱の中にありますように,学校教育法の中にも示されている学力の3要素との関係では,それぞれ「知識・技能」につきましては「技能」及び「知識・理解」で評価していくということ,また「思考力・判断力・表現力等」につきましては,同じ表現でありますが,新たに今回設定されております「思考・判断・表現」で評価するということ,そして主体的に学習に取り組む態度につきましては,「関心・意欲・態度」で評価するということで,その関係を整理しているところでございます。

現在,こういった形で学習評価が行われておりますが,3ページ目を御覧いただけたらと存じます。現在,中央教育審議会で次期学習指導要領の改訂に向けた議論が行われておりますが,3ページは,本年8月に中央教育審議会の教育課程企画特別部会で示された資料でございますが,今後の観点別学習状況の評価について,その方向性が一つ示されているところでございます。

一番中段から左側の方にございますように,学力の3要素と評価の観点との整理というもので,現行では先ほど御説明したように,学習への評価,4観点で評価をしていこうということでございますが,今後次期学習指導要領に向けましては,以下の3観点に沿った整理を検討していこうということで,現在その論点整理が示され,この具体化が検討されると,されていくということになっております。

その三つの要素につきましては,赤い箱の中にありますように,「知識及び技能」,それから「思考力・判断力・表現力等」,そして主体的に学習に取り組む態度ということであります。こういった形で評価の観点を整理した上で,右側にございますように,現在企画特別部会におきましても,この学習指導と学習評価のPDCAサイクルの構築というものをしっかりと打ち出していこうということで,先ほど申し上げました指導と評価の一体化をより強めていくという方向で議論がなされていくような状況に来ているというのが,現在の状況でございます。

なお,その指導要録の状況について,簡単に資料2-2で御紹介したいと存じます。資料2-2でございますが,表紙,参考資料の丸2となっております。小学校,中学校,高等学校で比較をしながら御覧いただけたらと思いますので,1枚おめくりいただきまして,2ページ目以降でございます。

まず,現在小学校の児童の指導要録の当方から示している参考の様式でございます。こういった様式に基づいて,各設置者,学校で,さらに評価,様式を整理しながら評価いただいておるのですが,この参考様式の段階でも,例えば3ページ目のところに具体的な様式が示されておりますが,例えば3ページ目の左側には,各教科の学習の記録として,この観点別の学習状況というものが,それぞれの教科ごとにその観点が示されているところでございます。高等学校におきましては,例えば五つの観点が示されるなどしているところでございます。

また,それ以外につきましても,評点がそれぞれの科目ごとで設けられている欄があるということ,また右側の方には外国語の活動の記録,これも三つの観点が示されております。また,総合的な学習の時間の記録など,また特別活動の記録などが行われるような形で示されているところでございます。

さらに4ページ目では,行動,総合所見,さらには指導上の参考となる諸事項,こういった欄を設けて,各小学校の段階での評価をお願いしているような状況であります。

また,5ページ目以降,中学校における指導要録の参考様式でございますが,例えば6ページ目以降を御覧いただけたらと存じますが,6ページ目にございますように,各教科の学習の記録では,観点別の学習評価のポイントが書いてあること,また個別の科目ごとに評定が書かれるような形になっております。また,総合的な学習の時間,特別な活動の記録といったものが,それぞれ欄が設けられているところであります。

また7ページ目でも,行動の記録,また総合所見,指導上の参考となる諸事項という欄が設けられて提示がされております。

そして,高等学校でございますが,8ページ目以降の参考様式でございます。8ページ,9ページ目に,高等学校の様式,書いてございますが,ポイントは10ページ目以降でございまして,10ページ目をお開きいただけたらと存じます。このところで,この各教科の科目等の学習の記録といたしまして,第1学年度からではございますが,高等学校におきましては,参考様式の中では,観点別評価というのは提示されず,評定それから習得単位数というものが記載されるような欄で,整理がされているところでございます。

また,11ページにございますように,総合的な学習の時間,特別活動の記録,そういったものがございますが,例えば行動等といったものはない状況になっております。また,総合所見,指導上の参考というものがまとめられているという状況でございますが,こういったこの例えば総合的にまとめられているものにつきまして,一つ参考になりますのは,20ページを少し御覧いただけたらと存じます。

今,御紹介させていただいた行動とか性格,また検定等々の関係は,実はこれまで平成5年の改訂前まではそういった欄が設けられていた,20ページの下段,左側の表でございますが,このような形で整理がされていたところであります。ただ,平成5年の改訂の段階で,こういった細分化されていた欄につきましては,高等学校の生徒の多様化,そういった実態が進んでいることに鑑みまして,全国五つの評価項目によって評価するよりも,自由に記載した方が生徒の特性が把握することが可能だろうと,適切だろうということで,右側のような様式になってきたという経緯があるところでございます。

一応,高等学校段階におけます評価の学習評価の状況について,私の方から御説明させていただきました。

【橋田大学入試室長】  続きまして,大学入学者選抜実施上の評価の取り扱いについて説明をさせていただきます。資料の2-1の5ページをお開きください。

大学入学者選抜の基本的な考え方といたしまして,実際大学がどのような選抜で,どのような入学者を受け入れるかという点につきましては,各大学・学部等の入学者受け入れ方針に基づきまして,入学志願者の能力・意欲・適性等を多面的・総合的に判定するということで,取組が進められているところでございます。

文部科学省といたしましても,大学入学者選抜を実施する上でのガイドラインといたしまして,この大学入学者選抜実施要項を毎年度大学に通知いたしまして,この入学者受け入れ方針の明確化,選抜方法の多様化等を推進してきているというところでございます。

今回の議論に関わりまして,特にこの要項の関連部分抜粋の第5,調査書のところについて,まず説明させていただければと思います。各大学におきましては,この入学者選抜の資料といたしまして,先ほど御説明がありました高等学校生徒指導要録に基づき,所定の様式により作成された調査書を提出させるという形になっております。

その調査書の様式につきましては,この資料2-2の12ページから13ページをお開きください。また,調査書の概要につきましては,この資料2-1の8ページ目をあわせてお開きいただければと思います。

こちらの方の調査書の記載内容の主なポイントでございますけれども,この高等学校指導要録との共通事項といたしまして,基本的な事項,例えば教科科目の評定ですとか,総合的な学習の時間,特別活動の記録等が記載されております。その中でも,指導上参考となる諸事項,13ページの中ほどのところでございますけれども,この点につきましては,指導要録の記載事項の中でも,平成23年度要項からその高等学校の多様な活動成果を記載するという観点で,そちらの方の五つの区分に整理しております。「学習における特徴」,「行動の特徴,特技」,「部活動,ボランティア」,「取得資格,検定等」の欄を設けまして,それぞれ記載できるような形にしております。

もう一点,調査書独自の記載事項といたしまして,先ほどの資料2-2の12ページの下段の方でございますけれども,一つには評定平均値ということで,各教科の評定平均値,こちらの方は当該教科の評定の全合計数からその教科の評定数を除した数でございます,それを記載する欄を設けているということ。また,この全体の評定平均値の欄でございますけれども,ここは全ての教科科目の評定の合計数から全ての評定数を除した数,それを記載する欄を設けているというところでございます。

また,その下の段でございますけれども,学習成績概評ということで,こちらの方は同一学年生徒全員のこの3か年における全体の評定平均値,これをこちらの先ほどの資料2-1の8ページの方でございますけれども,右の方にございますように,AからEの5段階に分けまして,その生徒の属する成績段階を記載するという欄がございます。

また,あわせてこの段階別,成績別の人数につきましては,各段階に属する人数と合計を記載するというような形になっております。これが,調査書の概要でございます。

続いて,資料2-1の先ほどの5ページにお戻りいただければと思います。そちらの方の第5の2にございますように,各大学はこの入学者選抜に当たって調査書を十分に活用するといったようなこと,あるいは各大学はこの資格検定試験等のほか,弁論大会,ボランティア活動の実績等の多様な経験を入学者選抜に用いる場合には,大学で評価する内容をどのように調査書に盛り込むのかといったような記載方法について,募集要項にできる限り具体的に記載する等の留意事項を示しているというところでございます。

資料の6ページにつきましては,第6の4にございますように,資格・検定試験等の成績の活用ということで四技能を,英語につきましては聞く,読む,話す,書くの四技能を測ることのできる資格・検定試験の結果の活用ですとか,国際科学オリンピック,国際バカロレアなどの資格,成績を活用するといったようなことが盛り込まれております。

さらに,第13の2の入試情報の取り扱いというところでございますけれども,この(3)にございますように,調査書等に記載された内容等の個人情報につきましては,入学者選抜並びに必要に応じて入学後の学籍管理,学習指導,学生支援業務に利用できるといったようなことが盛り込まれております。こちらの方は,平成26年の要項で追記された内容になっております。

続いて7ページのところでございますけれども,入試方法における取り扱いでございますけれども,(1)の一般入試につきましては,調査書の内容,学力検査,小論文,面接等,大学が適当と認める資料により,入学志願者の能力・意欲・適性等を多面的・総合的に評価する方法ということで示されております。

(2)のAO(アドミッション・オフィス)入試でございますけれども,こちらの方は,詳細な書類審査と時間を掛けた丁寧な面接等を組み合わせるということでの判定方法でございますけれども,丸3にございますように,基礎学力の状況を把握するため,以下のアからエのうちの少なくとも一つを行うということで,このエの部分で,高等学校の教科の平均値,評定平均値を出願要件や合否判定に用いるということが示されております。

(3)の推薦入試につきましては,出身高等学校長の推薦に基づき,原則として学力検査を免除し,調査書を主な資料として判定するということで,この場合には高等学校の教科の評定平均値を出願要件,あるいは合否判定に用いるといったようなことが示されているというところでございます。

以上,入学者選抜上の取り扱いについて説明させていただきました。

【今井高校教育改革プロジェクトチームリーダー】  失礼いたします。続きまして,資料1-1,1-2を御覧いただけたらと存じます。ただいま御説明したものが,現在その学習評価の実態,現状ということでございますが,ここから先はワーキンググループで議論されてきた,現段階におけます整理について,その途中経過を報告させていただきたいと存じます。

まず,資料1-1でございますが,多様な学習活動や学習成果を適切に評価する仕組みの構築に向けたイメージたたき台でございます。こちらございますように,日々の活動を通じて育成される幅広い資質・能力について多面的に評価する,そのためには高等学校段階の教育・評価の充実から,進学・就職時における多面的・総合的な評価の推進,その後の教育活動・人材育成までを視野に入れた評価の仕組みを構築していく必要があるだろうということで,議論が進められておりまして,全体的なその見取り図といったら変ではございますが,そのいわゆる一貫した教育課程の中で,どのポイントに改革を進めていくのかを記載させていただいているものであります。特に赤い字で丸1番から丸6番まで触れられているところについて,今後さらに議論を深め,改善方策等について検討していこうというところを確認させていただいております。

まず,下段から御覧いただけたらと存じますが,高等学校段階でございます。この下段の破線の中にありますように,高校生が取り組む様々な活動,授業の段階も義務教育段階から専門教科まで,そういったものを含めて多様な学習活動が行われていることを前提に,日常的な評価というものを充実させていくということでありますが,その際,多様な測定ツールといたしまして,民間検定,それから校長会等で実施いただいている検定に加えまして,「高校基礎学力テスト(仮称)」などの導入を含めて,そのツールを充実させていくということの中で,それを次の指導改善に生かしていく,こういった流れを作り込めないかということであります。

その際に,ワーキングでその改善すべきポイントとして挙がっておりますのが,丸1番の学習評価の日々の在り方をどのように改善していくのか,またその多様な活動の評価をどのように改善していくのかということが,今後の議論の方向性になろうということで整理がされております。

このような日々の評価に加えまして,丸3番でございますが,学習履歴・成果というものをしっかり記録をしていく,その指導要録の在り方について,具体的にどのような改善が打てるのかというのをさらに詰めていこうということで,議論が進められているところであります。この指導要録に基づいて,それぞれ高校生が,大学,専門学校,就職と,次のキャリアパスを形成していくその流れの中で,進路実現のための個人の学習歴,成果の証明に活用していくため,選抜段階での活用の在り方について具体的にどのような改善方策があるのか,さらにこれから研究を深めていこうということであります。

すなわち,指導要録をきちんと作成していく中で,それぞれのところに調査書,またその他様々な提出書類,そういったものをお届けするような形の中で,また各大学,専門学校,就職をされる企業の方でそれぞれの選抜が行われていくというところでありますので,この際の多面的,総合的な評価に生かしていただくということを念頭に考えていってはどうかということであります。

特に,大学との関係におきましては,丸5番でございますが,進学後の活用についても,その具体的な方策がないかというのを検討していこうということでありまして,特に初年次教育の充実など,例えば高等学校段階から,その生徒の弱みなりその子の学習状況が詳細に知らされれば,初年次教育においても,例えばその支援なり個別の対応ができるのではないかといった議論も行っていくべきではないかという観点でございます。

一応,こういった資料1-1,具体的なイメージを持ちながら,現段階でございますが,資料1-2を御覧いただけたらと存じます。多面的な評価検討ワーキンググループでの検討状況の途中報告でございます。こういった全体的な構造をイメージしながら,今後の議論すべきポイント,検討の方向性として整理をさせていただいているところであります。

まず,1ページ目の一番上の白丸は,多様な学習活動や学習成果を適切に評価する仕組みの構築ということで,総論的な観点を整理していこうということであります。今後,具体的な議論がなされていけば,この総論とのセットで議論がされるわけでございますが,検討の方向性といたしましては,多様な学習活動・学習成果が継続的に行われ,それぞれの段階で適切に活用されるよう,高等学校から大学入学者選抜,そういうことについての評価について改善していくための具体的な方策が必要ではないかということで,その検討をさらに深めていこうということであります。

特に,その具体的なものにつきましては,次の高等学校段階における評価の在り方から御説明させていただきたいと存じます。高等学校段階における評価の在り方につきましては,先ほど資料1-1でありました丸1,丸2,丸3が,それぞれの観点に改革すべきポイントになってくるだろうということでありますが,検討の方向性といたしましては,その1ページの下の箱の中にありますように,一つ目の黒ぽつにありますように,指導と評価の一体化,目標に準拠した観点別の学習評価が現実に機能していくために,どのような方策が考えられるのかということをさらに深めていく点ではないかと。

また,二つ目の黒ぽつ,これ修正をお願いして大変恐縮ですが,1行目,これは生徒の課題でございます,少し変換ミスで恐縮でございますが,生徒の課題の発見・解決に向けて主体的・協働的に学習に取り組む場面を,学習の中で意識的に設定していくといった学習・指導方法の改善をしていくことが必要ではないかということで,その方向性が示されているところであります。

また,三つ目の黒ぽつにありますように,多様な評価ツール,先ほど御紹介したような既存のもの,又は今後導入される「高等学校基礎学力テスト(仮称)」などの特性を踏まえながら,積極的に活用していくための具体的な手立て,これを考えていく必要があるのではないかということでございます。

また,授業以外,学校活動以外の活動,これをどのように評価し,指導改善につなげていくかを整理していくべきではないかということ。

また,次の黒ぽつにございますように,既存の資格試験,検定試験の結果については,学校での学習内容とどのように結び付いているか,その点について見えるようにしていくべきではないかということも,御指摘を頂いているところであります。

また,次の2ページ目でございますけれども,今後その多面的な評価を推進するに当たりましては,各学校,教育委員会等への取組の促進,さらには指導要録の様式の見直し,記載事項の整理,これを行っていく必要があるのではないかということとともに,最後でございますが,評価の信頼性を高めていく意味で,信頼性・妥当性を高めるための手法の開発,これを行っていくべきではないかといったような指摘がされているところでございます。

なお,その下には,そのワーキングで出ました主な意見を整理させていただいておりますが,議論を進めていただく際の御参考にしていただけたらと存じます。なお,それぞれ丸1番,学習評価の在り方につきましては,例えば定期考査の評価を基に評価すればよいという意識を変えること,評価というのがランク付けをするものではないということ,また,四つ目の下の黒ぽつでございますが,観点別の評価の欄がある指導要録が示されることなどによりまして,大学入学選抜で観点別評価がどのように使われるかが見えてくることなどを含め,高等学校での普及がされるかどうかが鍵になるのではないかといったような御意見もあったところであります。

また,多様な活動評価の在り方,このあたりにつきましては,各種資格試験が高等学校の学習とどうつながっているか分からないので,使いにくいという声があるのではないかということと同時に,検定は実際,知識・技能を中心にするものが多くございまして,全国統一的な指標として活用されやすい面があるのではないかというような御指摘を頂いているところであります。

また,指導要録の在り方につきましては,指導要録が指導の改善に用いるものだという,ただの記録簿ではないという意識に改めて変えていく,それを確認していくという必要があるのではないかということ。また二つ目の黒ぽつにありますように,評定の数値だけでは少し見えてこないものもありますので,見てもらいたい点,表現したい生徒の姿,それを具体的に記載していける指導要録が必要であろうということであります。そういった意味で,定性的な部分を加えた指導要録ができてくれば,そういったものが次の大学等への提示の際に使っていただけるような形になるのではないかということでありました。

続きまして,大学入学者選抜における評価の在り方でございます。資料は3ページ目を御覧いただけたらと存じます。丸4番,先ほどの資料1-1でいきますと,丸4番と丸5番のそれぞれ選抜段階,それから進学後の活用の在り方についてであります。

検討の方向性といたしましては,一つ目の黒ぽつにございますように,大学入学者の選抜,また大学教育のために,その後の大学教育のために大学が何を求めているかという観点も踏まえながら,生徒の多様な学習活動・成果を適切に評価できるよう調査書の改善,また出願時提出書類の取り扱いを検討していくべきではないかということで,例えば具体的な検討の方向性としては,評定平均の在り方というものを見直していくべきではないか,また高等学校が提出する調査書とは別に,志願者本人が意欲的に取り組んだ活動,また課題研究等を記載する活動報告の取り扱いというものを,検討していってはどうかということであります。

また,次の黒ぽつにございますように,調査書につきましても,信頼性・妥当性を高めていくためにどのような工夫が考えられるかというのを,さらに検討していく必要があろうということで,指摘を頂いているところであります。

また,三つ目の黒ぽつにありますように,多面的な評価の観点から,これまで学力検査の対象となることが少なかった芸術や家庭科などの活動等につきまして,調査書等でそのすぐれた学習成果を上げたものについては,明示的に表示するなどの積極的な評価についても,検討していってはどうかという指摘を頂いているところであります。

また,最後の黒ぽつでございますが,高等学校におきましても,高等学校教育を通じてどのような資質・能力を育成しようとしているのかを明らかにして,それがどのように評価されてきたか,そういった点を対外的に示していくということが必要ではないかという御指摘を頂いているところでございます。

3ページ目の下段に,こういった議論をする際のポイントとして,例えば丸4番につきまして,調査書の改善ではワーキングの中では一つ目の黒ぽつにございますように,大学は何を求めているかという観点から,記載内容を変えていかないとその様式を変更しても結局使われないのではないかという御指摘,また評定平均として選抜で活用することには,矛盾が生じてくるのではないかといった御指摘もあったところであります。

また,最後の黒ぽつにありますように,指導上参考となる諸事項や,総合的な学習の時間に関しては,今よりも詳細に記載できるような工夫を行うべきではないかといった御意見もあったところであります。

続きまして4ページ目でございますが,例えば御意見の中では,上の黒ぽつにもございますように,特定の分野ですぐれた成果,学習成果を上げたものを評価することも重要ですが,あわせて共通に求められる基礎学力を担保するということも必要であろうという御指摘がございました。

また,出願時の提出資料につきましては,部活動,また資格検定など,本人から申告していただくことで情報量が増え,多面的な評価の促進に寄与するという側面があるだろうという御指摘。また,最後の黒ぽつですが,活動報告書,自己推薦書というのは非常によい材料になりますので,例えばあらかじめ評価の観点を示して,それが分かるようなものを出してもらうなど,大学側が求めている評価の観点,これを志願者に伝えていくということが重要ではないかというような御指摘を頂いたところであります。

また,進学後の活用の在り方につきましては,二つ目の黒ぽつに出てまいりますが,生徒の負の面が書かれておりませんと,進学先の大学での指導に生かしにくいのではないかと。この負の側面を書くと損だという意識を,高等学校側にも払拭していただけるようなことが必要ではないかという御指摘。また,高等学校での学習状況を踏まえ,大学における初年次教育を行うことなどについて,大学側で今後定めていただくことになろうカリキュラムポリシーで,あらかじめ確認していくことが重要だろうといったような御指摘を頂いたところでございます。

続きまして,就職時における評価活用の在り方でございますが,こちらにございますように,検討の方向性といたしましては,企業が採用時に求める情報,例えば主な御意見の中にも一つ目の黒ぽつにありますように,コミュニケーション能力,主体性,協調性,チャレンジ精神など,そういったものを求めているわけでございますので,高等学校における評価の方法,指導要録,また調査書の様式等を見直していく必要があるのではないかといったような方向で,さらに具体的な検討を進めていってはどうかということで,整理がなされているところでございます。

そして最後になりますが,5ページ目,評価充実のための基盤整備の方向でございまして,その検討の方向性といたしましては,多面的な評価を促進するためには,こちらございますように,書類の電子化の促進,また日々の教育活動の記録を蓄積していく中でのデータベースの構築,そういったことを検討していく必要があるのではないかということでございました。

一応,ワーキンググループで御議論を頂いてきたその途中報告でございます。御審議のほど,よろしくお願い申し上げます。

【安西座長】  ありがとうございました。

それでは,ただいま荒瀬主査,また事務局から御報告いただきました事項につきまして,御意見,御質問を頂ければと思います。大変大事なテーマだと認識しております。どなたからでも結構でございます。よろしくお願いいたします。

それでは浦野委員,お願いいたします。

【浦野委員】  御説明,ありがとうございました。私の方から1点だけ,質問,意見,兼ねて申し上げたいと思います。

学力の3要素の中に,主体的に学習に取り組む態度というのがあって,これをどういうふうに調査書等に掲げてくるかということですが,多分私ども企業はもちろんのことなのですが,大学におかれても,本人の主体的に学習に取り組む態度といいますか,あるいは大学を志望する理由,その企業を志望する理由というのは,非常に大事なところだと思います。そこがどういう形で見えるようにしていくのかというのは,私は大事なところだと思っていまして,資料の1-2の4ページの上の方に,例えば出願時の提出資料で,時間を掛けて大学志望理由を本人が考えると,あるいは活動報告書の中で,本人がきちんと書いてくるといったようなことです,この辺を私は非常に大事なことかと思っております。

一つの質問は,現在高等学校が作成する書類と本人が作成する書類というようなものを,実際作っている高等学校がどのぐらいあるか。あるいは,大学の方で,面接する前あるいは面接がなくても,その本人に志望理由を書かせているようなところがあるかどうか,そこをお伺いしたいと思っています。

それで,基本的には,やはり学ぶ側の覚悟といいますか,あるいは就職であれば社会に出ることの覚悟であるといいますか,そういったようなことを,やはり本人がきちんと書くということが,非常に主体的なという意味では大事なことだと思いますので,その辺の現状の高等学校における実施状況等をお聞かせ願えればと思います。

【橋田大学入試室長】  御指摘の点でございますけれども,いわゆる志望理由書,活動報告書等の取り扱いにつきましては,今各大学の方で指定して,かなりAO入試ですとか推薦入試のようなものについて,この活動報告書,志望理由書をまとめているケースはございます。ただ,網羅的なデータは手元にはない状況でございますけれども,現状はAO入試,推薦入試でよく使われているというところでございます。

今回のこの多面的,総合的な評価に当たりましては,特に主体性を持って多様な人々と協働して学ぶ態度という観点から申しますと,調査書の見直しもそうでございますけれども,こういう本人の記載するような志望理由書,あるいは活動報告書の取り扱いもより検討すべきではないかという議論も出てきておりますので,今日の御意見も踏まえて,さらにどういった形の対応があり得るかというところを検討していきたいと思っております。

【安西座長】  よろしいでしょうか。今の件は,荒瀬主査のワーキンググループで検討いただくということでよろしいですか。

それでは,ほかにはいかがでしょうか。

長崎委員,お願いします。

【長崎委員】  2点ほど,基本的な質問があります。1点目は,資料2-1の観点別学習状況の評価の現行とこれからの検討というところについてです。そこのこれからの以下の3観点に沿った整理を検討というところには,「理解」という言葉がありません。学習指導要領の教科によっては,「何々を理解する」ということが入っている教科があります。そういう理解とか知識・技能とかは,新しい評価の観点ではどのように考えられているのでしょうか。

2点目は,高等学校の評価の観点の扱いについてです。現行の評価の観点は小,中,高のいずれの教科も四つありますが,高等学校だけは観点別の評価をしなくてよいということでした。高等学校は観点別の評価がないということで,評点だけの評価になってしまうのではないかと思い,どうして高等学校は観点別の評価をしなくてよくなったのかという経緯を御説明いただけないでしょうか。【今井高校教育改革プロジェクトチームリーダー】  失礼いたします。そういった二つについて,事務局より御説明したいと存じます。

まず理解,今回その4観点から3観点に変わっていくのは,実は資料2-2のページは23ページを御覧いただけたらと存じます。本年夏,中央教育審議会教育課程企画特別部会の論点整理の中で,その考え方が示されておるところでございまして,23ページ目の中段から下段にかけて,評価の三つの観点ということが整理されているところであります。

この評価の三つの観点の一つ目の白丸が,現在の状況について,従来の四つの観点を整理してきたという経緯が書かれているところでございますが,ポイントは二つ目の白丸にございますように,今回中央教育審議会の論点整理の中で特に議論されましたのは,そういった四つの観点をいろいろ議論しながら整理してきたのを踏まえつつ,特に学校教育法が規定する3要素との関係をさらに明確化するということ。そして,育成すべき資質・能力の三つの柱に沿って,各教科の指導・改善が図られるよう評価の観点について今御紹介させていただいた「知識・技能」,それから「思考力・判断力・表現力」,「主体的に学習に取り組む態度」の三つの観点に整理を検討していく必要があるということで,整理し直されたものということで,これは中央教育審議会の方で議論されて,整理がされてきたというのが前提になっているところでありますが,その理解という概念については,当然必要がないというような議論があったわけではなくて,特に学校教育法との3要素の観点も含めながら,御議論があったものと考えているところでございます。

また,高等学校のところでの観点別の取り扱いの経緯でございますが,これはすいません,資料がなくて大変恐縮ではございますが,これまでの経緯について,いろいろ過去のものを少し整理したところを御紹介させていただきますと,実は各観点の概念というものについては,昭和24年からいろいろと評価の議論を御提示するようになるのですが,昭和30年の改訂の段階で,各観点という概念は一応ございまして,生徒の特徴,丸,バツで記入していくというような評価が行われた経緯がございました。

ただ,現在のような形になってきたところというのは,昭和56年の改訂の段階で,その評定の中で各教科の観点を参考とし,一部の観点に偏して評価が行われることないよう十分に留意するというものが,新たに付け加えられてきたこと。また,先ほど少し御紹介した平成5年の改訂の中では,各教科の評価の観点を踏まえながら,それぞれの科目の狙いや特性を勘案して評価の在り方を工夫することというものが,新たに加えられてきたという経緯がございます。

これまた資料がなくて恐縮なのですが,そういった流れの中,例えば最新のものでいきますと,平成22年に初等中等教育局長の通知で,この評価,学習評価及び指導要録の改善等についてという通知が出ております。

この中に,すいません,口頭で説明していて本当に恐縮なのですが,実は別紙の資料が様々付いている中,別紙6の中に各教科の評価の観点及び趣旨というものが整理されています。現在示されているものは,大きくは二つありまして,一つは各学科に共通する各科目の学習の記録をする際の観点ということで,教科の大くくりとしては,国語,地理,歴史,公民,それから数学,理科,保健体育,そして芸術の各科目である音楽,美術,工芸,書道,それから外国語,家庭科,情報といったような観点でその教科が示された上,各観点,教科によって若干違いはありますが,先ほど御紹介した四つの観点,「関心・意欲・態度」,「思考・判断・表現」,「技能」,「知識・理解」というものがそれぞれその観点が示されて,趣旨が書かれているというものは,別途通知の中では示されているのですが,ポイントとしては,それぞれの指導要録に記載がないというのが今の状況ということでございます。

この点は,小学校,中学校までは,教科がある意味でかなり絞られた形で行われておりますが,高等学校になりますと極めて多様な教科が用意されているという中で,これまで議論がなされてきたというふうに理解しているところでございます。

【安西座長】  よろしいでしょうか。ほかにはいかがでしょうか。

金子委員,お願いします。

【金子委員】  今の御説明にも関わるのですが,この調査書を大学入学の選考の際に使う場合,まず基本的な問題の一つは,ここが非常に多様であるということでした。それで,それは学力面で非常に格差が広いということも一つはあるわけでありますけれども,しかし文部科学省の教育の政策の1990年代以降の一つの特徴は多様化でありましたから,様々な個性のある学校を作るというのは,非常に重要だということが強調されてきたわけです。

したがって,例えば職業高等学校等々の,学校種別の問題もありますが,高等学校によって強調する点はかなり違っているのではないかと思います。高等学校自体が,やはりかなり個性を持っているといったことが言えると思います。

それで,それは悪いことではないのですが,そういった高等学校による差というのが,この高校指導要録を参考にすることによって,消えてしまうというか見えなくなってしまうといいますか,その逆に言えば,高等学校の個性を考えた上でその指導要録を判断する,評価するといった方法があるのか,ないのか。もしないとすれば,どのようにすることが考えられるのか。どのように議論されているのか分かりませんが,もしされていないとすれば,議論していただければと思います。以上です。

【安西座長】  ありがとうございました。今の点はいかがですか。

荒瀬主査,お願いします。

【荒瀬委員】  ありがとうございます。今の点につきましても,議論の中では出ております。一くくりではくくれない様々な高等学校教育が行われている。それらについて,どうすれば,言葉は議論のままの正確な言葉ではありませんけれども,正当に評価ができるのかといったことを考えなければならないというのは,私たちも考えております。そういったことと,具体的に今後学習指導要領の改訂でそれぞれの教科科目,それも専門科目を含めますとまた非常に広くなるわけですけれども,それらをどのように見ていくのかというのを議論していこうということです。

それから,先ほど出ました観点別評価の話ですけれども,実は高等学校でもやっておりますが,なかなか定着しているとは言いにくいという評価もあります。高等学校からすると,観点別評価はやっているつもりだけれども,どうもそれが定期テストの結果ばかりを重視するのではないかというような,批判を受けているというのも事実でありますので,そういったことも含めて,今後の学習指導要領の改訂とも重ね合わせながら,どのようにすることが具体的に指導の改善に生かせるか,個々の生徒の成長に生かせるようなものになるのかということと,次に出す,先ほども説明がありましたような大学であるとか,専門学校であるとか,企業であるとかといったところに信頼性のある資料として提出できるのかという,その二つながらを備えるようなもの,どのようにしていくのかというのを考えているというところであります。

【安西座長】  よろしいですか。ほかにはいかがでしょうか。

恩藏委員,お願いします。

【恩藏委員】  コメントをさせていただきます。

この議論していただいて,大学として助かっています。特に資料の3ページの1-2で,大学入学選抜等における評価の在り方という点です。これから我々大学側としては,AO入試などの一般入試以外が増えていきますので,こういう指導要録というのは非常に重要性が増してくると思います。そうした中で,幾つかの問題点が挙げられます。やはり我々としては信頼性と妥当性というのが一番大事で,それをこれからどう担保していただけるか,もっとどう高めていただけるかという点が一つあります。

例えば評定平均の段階別でA,B,C,Dとあるのですが,高等学校によってはAとBだけで,ほとんど埋まっているところがあります。そうすると,ある学生が,その学校でどれぐらいのポジションに位置しているのかよく分からない。そういったときに,例えば上位10%に入っているとか,20%に入っているとか,何か少し表現を変えていただけると,大学としては使いやすいと思っています。

あともう一つですが,先ほど浦野委員の御指摘とも少し似ているのですが,今,大学生は企業就職するときに,エントリーシート,自己PRをしっかり書きます。それと同じように,我々はもちろん,現場の先生方も含めてでしょうけれども,通常だとなかなか知り得ないようなユニークな経験とか,独自の個性を生徒たちが訴えられるような,何かそういうPR的な部分があってもいいのではないか。これは,新しい入試に向けての動きと連動させて御検討いただけたらと思っております。以上です。

【安西座長】  ありがとうございました。ただいまの件についてはいかがでしょうか。

荒瀬主査,お願いします。

【荒瀬委員】  ありがとうございます。一つ目のことにつきましては,そもそも評定平均値のありようというのが,果たして意味のあるものであるのかどうかというような議論もしておりまして,今後また検討を重ねてまいりたいと思います。

それから,エントリーシートのお話ですけれども,こちらの方も議論をしております。このことにつきましては,たとえ書き方を練習するような,たとえば学校外の教育機関からの指導が入ったとしても,それでもやはり,その大学でこんなことを学びたいということを真剣に考えることには,大変意味があるという御意見も聞いておりますので,そういったことも踏まえて,今後また考えていきたいと思っております。ありがとうございました。

【安西座長】  ありがとうございました。ほかにはいかがでしょうか。

小林委員,お願いします。

【小林委員】  この資料の1-2の高等学校段階の評価の在り方の三つ目のぽつの中に,「高等学校基礎学力テスト(仮称)」は,多様な評価ツールの一つだというふうに書かれています。しかし,全国の講演等に高等学校に回っていると,やはり基礎学力テストを選抜に過度に使われるのではないか,割とこう少し危機感みたいなものがあるように思います。その際は,これは多様な評価ツールの一つであって,それを多様に評価していくのが大きな方向性だ,ということをお話しすると,先生方非常に安心するというところがありますので,これはきちんと明記してあり,きちんと位置付けるというのが重要かと思っております。

それから,この資料1-2の5ページ目のところで,評価充実のための基盤整備というのがありまして,書類の電子化ということが書かれております。これについて私は,高大接続特別部会の頃から,これ電子化した方がいいのではないかというふうに申し上げていたのですが,二つの観点がありまして,一つはこれは高等学校だけの問題ではなくて,大学に行ってからもこの評価をきちんと,この活動履歴をきちんと引き継ぐということで,これから10年後を見据えたときに電子化は重要になってくるのではないかというのが1点。

もう一つが,ある意味,志願者の非常に多い大学です,私立の大学でいうと,なかなかこの紙の調査書を処理するだけでも,かなり大変なパワーがかかっているということをお聞きしていますので,そういった効率化の観点からも,将来的には多分オンラインを使った出願というのが主流になってきたときに,こういった調査書もそれに付けて出願する,あるいは高等学校までの活動履歴をeポートフォリオという形で提出するという形で,大学側の選抜に掛かるコストという点でも非常に有効なのではないかと思います。ある意味こう選抜にかかる大学側の一つの憂慮というところも,電子化によって解決できる部分があるのではないかというふうに感じております。以上でございます。

【安西座長】  ありがとうございました。この件はいかがですか,電子化等も含めまして。

荒瀬主査,お願いします。

【荒瀬委員】  ありがとうございます。電子化につきまして,様々な形で懸念も当然あるわけでありまして,調査書は当然指導要録を基にしているわけですけれども,そこに書く際に,何かこう決まったパターンの文章でもって,生徒の活動を評価するといったようなことが行われている面もあるという指摘もございます。ですから,電子化する際の様々な検討すべき課題ということも,当然のことながら考えた上で,しかし電子化は基本的には進めていこうという方向での議論をしているところです。

それから,「高等学校基礎学力テスト(仮称)」に関しましては,全員受けるべきだという考えもあれば,そうでないという考えもありますので,そして今は全員受けるということが前提ではございませんので,このことを評価の1本の柱とするということにはなかなかなりにくい,現行ではなりにくいという面はあろうかと思います。ただ,生徒の基礎学力の状態がきちんと大学に伝わるということは,非常に重要でありまして,それをどのようにしていくのかということも,今後また考えを進めてまいりたいと思っております。

【小林委員】  ありがとうございます。これは高等学校までの活動履歴なり,このテストの結果なりがきちんと選抜でということではなくて,大学に引き継がれるとか,その教育をするに当たってのベースになるという観点で,うまく使っていただけるといいかと考えております。

あと電子化についても,今ではなかなか難しい懸念はあると思いますが,5年後,10年後活用できるような形で御検討いただけるといいかと思っております。ありがとうございました。

【安西座長】  ありがとうございました。

宮本委員,お願いします。

【宮本委員】  先ほどから話題になっているエントリーシートの件ですけれども,今東京都の都立高校入試では,数年前から自己PRカードという形で,自分が中学時代何をやってきたのか,高等学校でどういうことをやりたいのかということを,全志願者が提出するという形をとっています。それをそのまま選抜の際の資料として使うということは,今はしていないわけですけれども,それを書くことによって,かなり受験者が志望校に対する志望意識が明確になるということと,それから入学後の指導に非常にやはり役立つ,またいわゆる合格後の辞退率も随分,その影響かどうか分かりませんけれども,下がっているというようなことですので,もちろん規模が違うからなかなか難しいのかもしれませんけれども,効果があるのではないかと私も思っております。以上です。

【安西座長】  ありがとうございました。大変参考になることだと思います。

それでは関根委員,それから鈴木委員,それから片峰副座長にお願いします。

どうぞ,関根委員,お願いします。

【関根委員】  この評価を見ていますと,大変だと思います。特に私が感じているのは,この評価が高等学校までにやってきたことの評価なのか,ということ。それと,その子のいいところを伸ばしていく,という視点があるのか,ということです。子供達は,今後大学に行ったり就職するにしても,社会で最終的にいいところで勝負していくしかありません。そういった意味で,この評価というのはもう少し目標に準拠して,どこまでやってきましたか,できましたかという評価と,それからその子のここが長所で,今後そういう長所を活かして頑張っていくことができますという評価が考えられるのではないでしょうか。難しいのかもしれませんけれども。

つまり,ここまでやってきましたということ。ある意味で,目標に準拠するということは,型にはめることです。型にはめて,その中でここまでできましたという部分と,もう少し高等学校の場合多様化していて,いろいろなことをやって広がっていくという意味でのその子の特徴か,よさとか,それを見ていく評価というのを少しこの中できちんと分けていただけるとよいかと思います。現場では,ここまではまず皆でやっていきましょうという面があり,その次に,こういう部分は自分のよさとして自覚してアピールしていきましょう,それが大事ですという面がある,ということになるのではないかと思います。

やはり,最終的に教育をやっていく上で,基礎学力としては全ての子供が身に付ける必要があるのですけれども,いいところを伸ばしていくことで社会に貢献していくということが大事なので,その観点を少しうまく分けていただけるとあり難いと思いました。

【安西座長】  これも大変大事なポイントだと。これまでの御意見,皆それぞれ貴重だと思いますが,この点は荒瀬主査,お願いします。

【荒瀬委員】  おっしゃるとおりだと思います。ただ,そうなったときに,具体的に指導要録の形式というのも当然変えなければならなくなるわけですが,その指導要録をどのように変えていって,明示的に各学校の先生方に,具体的にどのような評価が必要なのかというのをお見せするということも形の上では必要ですし,その手前の議論として,ではどのように評価ができるのかということを考えるということも必要になってこようかと思いますので,そういったことについても議論はしてまいりたいと思います。

一方で具体的には,中央教育審議会の教育課程部会の総則評価部会での評価の議論とも非常に深く関わりますので,そちらの方との連携をとりながら十分に考えてまいりたいと思っております。ありがとうございました。

【安西座長】  ありがとうございました。

鈴木委員,お願いします。

【鈴木委員】  ありがとうございます。この志願者本人が意欲的に取り組んだ活動等の活動報告書についても記述がございますけれども,実は私のおります国際教養大学では,ギャップイヤーという入学制度を持っておりまして,これは4月に入学してくるのですが,直接学校には来ずに,9月まで6か月間の間,いろいろな活動をするということをやっております。それのとにかく入学の試験といいますか,これは11月,前年度の11月に行われますが,ここにおいて,自分はこういう活動をしますということを非常に詳細に活動の予定を提出する。それに基づいて活動していくということを,本学の教員の相談のもとに実行していくという。いわば,志願者本人が意欲的に取り組んだというよりも,意欲的にこれから取り組みますというふうな報告書,類いの報告書です。

恐らく,私はギャップイヤーの制度というのも,これからよく考えていかなきゃいけないと思うのですけれども,これの制度における志願者本人の取組というものを,お考えいただければと思っております。

【安西座長】  ありがとうございました。

【荒瀬委員】  ありがとうございました。今みたいなお話は,是非いろいろな大学でお考えいただければと思います。我々の検討では,そういったことも話題の中には出てまいりますけれども,具体的に各大学がどのような力を求めていらっしゃるのかというのが,やはり非常に重要であると思います。そもそも,この会議の基本的な考え方というのは,高等学校までにどのような力を付けるのか,そして大学でどのようにそれをさらに発展させて,社会で一人一人が輝くような人材として羽ばたかせていくのかという,釈迦に説法で申し訳ございませんけれども,そういったことを考えていくときに,大学入試の主体である各大学がどのような力を求められるのか,どのような方法をおとりになるのかというのは,非常に大切になってこようかと思います。そういうことをお考えいただくことのできる基礎になる評価の方法,形式というようなことをまた考えてまいりたいと思います。ありがとうございました。

【安西座長】  ありがとうございました。

それでは,片峰副座長にお願いします。それから,五十嵐委員,香山委員,それから佐野委員,お願いします。

【片峰副座長】  今の議論とも関係すると思いますけれども,大学がアドミッション・ポリシーに基づいて非常に多様な能力を評価する,そのときの重要な資料として指導要録であったり,調査書というのがあるというのは,それはそれでいいと思うのですけれども,もう一つ,高大接続,現在の非常に大きな問題点は,受験生の多様性,あるいは高等学校の多様性が広がっている中で,例えば科目の履修に関しましても,必須履修科目というのがどんどん減っているわけです。

日本の子供たちのもう九十数%は高等学校を卒業するわけですから,最後の日本人の日本の若者の教育機会という観点もあるわけで,高等学校の教育の質をどう保証するのかと,高等学校卒業というのは,どの程度の能力はクリアされているのかというところが,やはり一つのポイントだと思います。それがきちんとやはり評価できるような指導要録であって,それにプラスして,特別な多様な能力も見られるというのが非常にいいのではないかと思いますけれども。質の保証をどう図るかと,そこら辺を一つ御議論いただければと思います。

【安西座長】  ありがとうございました。もともと学力の3要素といいましょうか,基礎的な知識・技能をきちんと身に付けるということ,それからいわゆるコンピテンシーです,思考力のところ,そして今いろいろ出ておりましたように,生徒自身の自分が何をしてきたか,何をしたいかということも含めて,そういった幾つかの軸があると思いますが,それをやはりバランスよく組み立てた調査書,あるいは活動,入学志願書,あるいは活動報告書等々の設計が必要になるのではないかというふうに,多少途中でまとめさせていただくと,そういうことかと思います。まだ議論中でございますので,大変貴重な御意見を頂いておりまして,是非さらに御意見頂ければと思います。

五十嵐委員,お願いします。

【五十嵐委員】  ありがとうございます。私は,今安西座長がおっしゃったのと同じですけれども,私は義務教育に関連をしておりますので,子供たちが本当に高等学校までにどんな力を付けてきたかということ,それを見取るための今のこの指導要録の形では不十分だと思っています。といいますのは,小,中においても,初等中等教育においても,今この指導要録については,どんどんと記述をすることが増えています。例えば総合的な学習の時間であり,特別活動であり,もちろんペーパーテストで測れるような知識,技能もあるのですが,そうじゃないところで頑張ったこと,例えばこれからは協働的な問題解決活動が必要だと言われていますが,小学校なりにそういうことをしていますが,その頑張りを書くには数値で表せられないです。

そこで記述式になっていくのですが,そうなってくると,先ほど電子化の話もあったのですが,そのために書くには非常に時間がかかりますので,もう既に電子化が始まっている学校は,小学校においては大分あります。日常的に書き込んでいきます,子供の学びと一緒に。そして,書き込んでいったものを最終的にその様式に落とすということなので,そんなに手間ではないです。ですので,そういう電子化という整備も進むと,もっともっと子供たちの日常の学びの様子が,そのままこの指導要録の中に反映していくのかなと思うのです。このままだと,まだやはりペーパーテストで評定されて,それが中心になってしまって,せっかく学びを変えようというものが反映されないのではないかと,少し心配をしています。

先ほど,エントリーカードの話もあったのですけれども,都立高校は既にそういうことが始まっていますが,もっともっと授業レベルのことから,受験前になる以前から日々の学習においてこんなことを頑張っていて,こんな成果を出していってというようなものを積み上げていくようなものになればなるほど,もっと子供のよさ,それから可能性も分かっていくのではないかと思います。もう少し全面的に指導要録の形が変えられないかというのは,この部会だけの話ではないと思うのですけれども,その辺に期待したいと思っているところです。以上です。

【安西座長】  ありがとうございました。これも荒瀬主査に,お願いします。

高等学校の先生方の労働と電子化のこともございますけれども,いろいろな議論がワーキンググループでされているかと思いますが。

【荒瀬委員】  今,五十嵐委員のおっしゃった日常的に書き込んでいくというのは手間がかからないということを,光を見るような思いで承りました。具体的に考えていきたいと思っております。

ただ,今のお話は,逃げ口上ではありませんが,中央教育審議会の方の議論にも必ずや反映されなければならないお話かと思いますので,その点も踏まえてまた議論してまいりたいと思います。ありがとうございました。

【安西座長】  それでは,香山委員,お願いします。

【香山委員】  今,五十嵐委員がおっしゃったことと問題意識非常に似ていますので,屋上屋を重ねる心配はあるのですが,少し私の方から確認の意味でお尋ねします。資料1-2の2ページの主な意見の丸1番の上から三つのところ,世界の傾向としては活用の評価が中心になりつつあり,今後はさらに探求の評価に取り組むことが重要というような意見が出されているのですが,この高大接続システム改革会議の大きな柱としては,やはりイノベーションを起こす人材をどう作り出していくのかといったことが,目標の一つとしてあると思うのですけれども,そのためにはやはり探求心のある子供の育成ということ,それをどう評価し,それを履歴としてどう引き継いでいくかと,小,中,高,大と引き継いでいって,社会が評価してくれるという軸がはっきりと見えてくるような評価の体系が,非常に重要なのかと思います。

そのときに,授業の場面でどういう授業をして,それがどう評価に落とし込まれるのかというイメージがもっと具体に湧き上がってくると,現場の先生方の元気も出ますし,方向性が明確になるので,授業改善は一気に進むのではないかと思います。

そして,そこでは恐らく具体的に,例えばパフォーマンス評価等がなされないと,探求心は育たないと思いますので,そういったパフォーマンス評価が「大学入学希望者学力評価テスト(仮称)」等でも出てくるとか,あるいは国公立の入試でも出てくるとか,といったような形で従来のペーパーテストを乗り越えていくような評価も必要になってくると思いますけれども,そういった議論が,どの程度進んでいるのかということをお尋ねしたいと思っております。

【安西座長】  ありがとうございました。いかがでしょうか。

【荒瀬委員】  今,御指摘いただいた資料の2ページの部分につきましては,こういった御意見があったということです。冒頭申し上げましたように,3回の議論でヒアリングもしており,今の時点では様々な御意見が出てきていて,どのようにまとめていくかということを考えております。

ですから,今おっしゃいましたようなパフォーマンス評価の在り方も,イノベーションを起こすような人を育てないといけないということも,それらも含めて,今回の御意見を参考にさせていただきながら進めていくという状況であるということを,御理解いただければと思います。

【安西座長】  文部科学省,どうぞ。

【今井高校教育改革プロジェクトチームリーダー】  主査のお話の中にも,中央教育審議会との関係がございましたが,一つ議論のため御紹介させていただきたいと存じます。

資料2-2で,今香山委員から御指摘いただいたようなパフォーマンス評価も含めて指摘をされている箇所がございまして,ページは24ページを御覧ください。先ほど少し御紹介した,中央教育審議会教育企画特別部会の中でも論点整理が行われております。その中,24ページ下から数えて三つ目の白丸のところでございますけれども,特に評価に当たっての留意点が書いておりまして,特に方向のあたりが書いてございますが,「また」のところにございますように,これからその指導と評価の一体化を図る中での論述やレポート作成,発表,グループでの話し合い,作品制作といった多様な活動を取り組ませるパフォーマンス評価,これを取り入れていこうという方向は,既に中央教育審議会の方でも議論がなされているところであります。

また,総括的な評価以外でありましても,子供たちの一人一人の学びの多様性,また学習過程における形成的な評価を行って,どのように伸びているかというものを日々の記録,またポートフォリオなどを通じて,子供たち自身が把握できるようにしていくということも,今後中央教育審議会の方でも考えようというふうになっております。

で,加えて,こうした評価が行えるようになるためには,やはり教員の先生方の評価の充実という観点もあろうかということでありますので,こういった中央教育審議会での議論などもまた踏まえながら,是非またワーキングの方でも御議論いただけるよう,事務局の方もまた準備の方を進めさせていただきたいと存じます。

【安西座長】  それでは佐野委員,それから長塚委員,それから河野委員,お願いします。

【佐野委員】  ありがとうございます。少し理想論みたいになってしまうかもしれないのですけれども。

この指導要録で私は欠けていると思うのは,その生徒がどういう仕事に就きたいのか,どういうふうになりたいのか,どういう役割を担ってどういうことをしたいのかという,そこのところが多分抜けていると思います。これは,学校現場の中ではキャリア教育をやっていて,キャリアノートにそれは書いていますということかもしれませんけれども,基本的にやはり指導というのは,その子がどうなりたいかというところを実現させてあげるためにあるものだろうと思いますし,やはり学ぶという意欲は内発的なものですから,それをどういうふうに喚起させてあげるか,喚起するかというのが,まさしく教育の役割だと思うのです。

学ぶ目的が,その生徒一人一人がどのように設定しているのかというところをきちんと踏まえておかないと,非常にその評価だけにいって,いわゆる学びの意欲を喚起するところに役立つものにはならないと思います。そこが,例えばその評価にしても,そういう人生を歩みたい,あるいは仕事に就きたいということであれば,ここの基礎的な知識がもっと必要ではないかとか,あるいはもっと人と議論をするようなことをしてはいかがかとか,あるいはこういう学外での活動,社会課題を解決するような活動に取り組んでみたらどうかとか,そういういろんなサジェスチョンを与えることができるというのが,本来の目的ではないかと思うところです。以上です。

【安西座長】  ありがとうございました。

それでは長塚委員,お願いします。

【長塚委員】  観点の考え方について,あるいは観点の記載について少し意見を述べたいと思います。

現在,高等学校で行われているのはコンテンツベースというのでしょうか,知識・技能を中心とした評価,評定をするということになっている関係で,余りこの4観点のような,小中学校のような指標を持たないでやっているということは,確かに言えるだろうと思います,現状では。

しかし,そうはいっても,例えばレポートを出させて平常点として入れて,それを最終的な評定に結び付けているということは行われているわけです。今後この観点をしっかりと学力の3要素に関連させるという示し方で,整理をしていただいているようでございますので,これは大変分かりやすいと思います。知識・技能だけではない活用力という部分を含めて,コンピテンシーが恐らく大学や企業,社会に行って求められるということから,この学力の3要素の話が固まってきているとは思うのですけれども,この新観点が3要素に結び付けられているというのは,教育現場としても今後,その観点を意識した指導に結び付けやすいということを感じました。これが1点。

もう一つは,観点別の記載をどうするかということです。現状では踏み込んではいないというのは,先ほども少し言ったとおりですけれども,実は,観点別評価を小中学校のように調査書などにも書いたとして,それを大学が本当に見てくれるだろうか,企業が見るのだろうかということがあるだろうと思います。徒労に終わるのではないかと懸念しておるわけです。現に,知識・技能の部分での評定に対しても,いわゆる多様な学校の差を見ていると,なかなかそれをそのまま受け止められないというようなこともありますから,なおさら観点別にそれをしたところで,それを本当に,大学や企業が評価してくれるのか,どう受け止めるのかというところにかかってくるのではないか,返す返すそういう思いがするわけです。

その意味では,今度,新テストもこの3要素を意識した2通りのテストを構想されているわけですから,3要素を意識した指導に日頃からなっていくのは間違いないですし,その指導に基づいた評価もしなければならないということ,そしてそ本当に大学,企業がそれを評価してくれるということを期待したいと思います。以上です。

【安西座長】  ありがとうございました。

河野委員,お願いします。

【河野委員】  ありがとうございます。まず,多面的に評価がされるということに,非常に希望を感じております。民間でも,多面的な評価をするにはするのですけれども,何せその評価の中身も変わりますし,潜在的なものも読まなきゃいけないということで,非常に難しい分野だといつも思っています。さて,調査書等はまだ検討課題かもしれませんが,私は拝見した感想を3点,少し細かいことですけれども,述べさせていただこうと思います。

一つ目は,小学校,中学校と高等学校はやはり大きく差があるので,自己肯定感が続いて育まれるようになればと思います。形としてはこのようになるのかもしれないですけれども,運用面においては先生たちの御指導によるところが大きいと思いますので,ギャップの大きい部分をうまくつないでいただきたいと思うのが一つです。

二つ目は,先ほど佐野委員がおっしゃっていたことと非常に近いと思うのですけれども,高校生にビジョンを書いてもらうといいと思いました。そのビジョンというのも,遠い将来だけではなく,大学に入った後,何を研究したいか,勉強したいかでもいいですし,その先社会にでるところでもいいですし,そういうことを考える時期が人生の中には必要なので,そこを書かせるということで考えさせるということも,教育のポイントの一つではないかと考えました。

3点目ですけれども,今回は多様な経験を尊重してくださるということで,これも非常に社会では重要なことですが,経験したことイコール能力になっているかどうかは,人によって全く異なります。例えば生徒の対策として,そう読んでくれるから経験しておこう,ということも,もちろん考えられるので,実際に経験から身に着けたことについて確認する作業というのが必要だと思います。それがこのペーパーだけでは難しく,通常民間だとそこで面接を2度も3度もやりますけれども,このあたりのこの経験したことが能力になっている信憑性というか,このあたりをどうやって今後読んでいくのか,もしその辺,今御意見等出ていたら教えていただければと思います。以上です。

【安西座長】  荒瀬主査,お願いします。

【荒瀬委員】  ありがとうございます。調査書という点で言いますと,小,中と高は形は相当違うわけでありますが,私の知る限りでは,先生方それぞれが児童,生徒の自己肯定感をどのようにしたら育めるのかということにつきましては,日夜,腐心しているところではないかと思います。とりわけ,自己肯定感が低い高校生が多いという指摘は様々な形で行われております。ただ,それが調査書の基になる指導要録においてどのような記述をして,それぞれ学年が進行するとか,あるいは違う担当者が見たときに,どのように連帯して生徒の指導に当たるのかというような資料にはなっていないという面はあろうかと思いますので,そういった工夫は考えなければならないと思います。

それから,ビジョンを書くようなものというのは,非常に重要なことでありまして,それが何らかの形で,指導要録ということになるのかどうかは別として,何らかの形で当然在学中もそうですし,大学を受けるときに出すといったような形でも活用できるようにできないかということは思います。

それと,最後におっしゃいました多様な経験がどのように能力に結び付いているかということは,これはもちろん高等学校段階でも,そのことについての評価というのはしていくわけですけれども,ただそれが,それぞれの大学に入学後,どのような大学での学びにつながっていくのかということにつきましては,アドミッション・ポリシーでもって,しっかりと大学に見ていただくことが必要ではないかと思います。そのための基礎資料を,高等学校段階としてはまとめる必要があると思っております。

【河野委員】  分かりました,ありがとうございます。

【安西座長】  ありがとうございました。この件,そろそろにさせていただければと思います。

今,ビジョンあるいは自己肯定感,あるいはやりたいこと,目標というのでしょうか,探求心とか,そういうことが非常にたくさん御意見として頂いておりまして,やはり多角的な,多面的な評価ということをここで検討させていただいているのは,やはりそういうことをしっかり入れていきたいということだと理解しております。

一方で,やはり高等学校を卒業するという,そういうことはやはり基礎的な知識・技能等をきちんと身に付けているということも,やはり担保されるべきことでありますので,そういうこと全体を総合したデザインといいましょうか,調査書のデザインが求められるということではないかと思います。今までよりも強く,今申し上げましたようなビジョン,その他,そういうことが,これからは求められるということはそのとおりだと思います。

一方で,高等学校の先生方の労働について,それから一方で調査書の信頼性,一方で大学が特に,大規模な大学において,この調査がどういうふうにしっかり使っていただけるのかどうかと,そういう問題もありますし,また日常的な活動等々を評価していただくには,むしろITを入れていった方がいいのではないかと,そういう御意見も,御経験も踏まえてだと思いますけれども,ございましたし,大変多くの貴重な御意見を頂きました。

中央教育審議会との関係がありますし,また学習指導要領の改訂との関係もあります。いろいろなことが錯そうする中での大変大事なテーマだというふうに捉えておりまして,委員の先生方の皆様の中には,もしかしたらこの指導要録のフォーマットを初めて見るという方もおられるかもしれません。この資料2-2に例が付いておりますので,御覧を改めていただきまして,またこの件について御意見があれば,是非事務局の方までお寄せいただければと思います。この会議の最終報告の中で,やはりもちろんこの件につきましては当然入れさせていただくつもりでおりますので,もちろんその後も議論は続いていくと思いますけれども,そのつもりでございますので,御意見おありの方は是非お寄せいただきますようにお願い申し上げます。大変貴重な御意見を頂きまして,ありがとうございました。

荒瀬主査にもよろしくお願いを申し上げます。ありがとうございました。

それでは,もう一つございますので,次へ進めさせていただきます。「大学入学希望者学力評価テスト(仮称)」につきまして,記述式を導入することについて検討を進めているところでございますけれども,これまでのこの会議の議論,ヒアリング等において,個別選抜等との関係について整理すべきではないか等の御意見も頂いております。このことも踏まえまして,今回共通テストへの記述式導入の考え方につきまして,事務局でたたき台の資料を用意してくれておりますので,事務局の方から説明を頂いて,これから時間の許す限り御意見,御質問を頂くということにさせていただきます。

それでは事務局,お願いします。

【橋田大学入試室長】  それでは,資料3に基づきまして,「大学入学希望者学力評価テスト(仮称)」に関しまして,共通テストへの記述式導入の考え方について(案)ということで,説明させていただきます。

今回の高大接続改革の中では,初等中等教育から高等教育まで,一貫して学力の3要素を育成するということが目指されておりますけれども,その中でもこの共通テストの中では,特に知識・技能を基盤といたしまして,思考力・判断力・表現力を重視するということが中間まとめでも盛り込まれております。

この思考力・判断力・表現力の育成,評価に当たりましては,現行の大学入試センター試験のマークシートには限界があるという点がございます。例えばでございますけれども,マークシートによる選択式では,思考力・判断力・表現力を構成する多様な要素,特に表現に関わるような要素を評価する上で限界があるということ,また選択肢自体がヒントとなって,必ず正答が一つ含まれるということで,選択肢を当てはめて逆算的に正答を見付けるといったような対応も,なされる場合があるといったような課題が挙げられようかと思っております。

この大学教育への円滑な接続に向けまして,高等学校教育で育てたい力を育てるためには,この共通テストにおいて,それらの要素をより的確に評価できる記述式の出題を行うことが効果的であると考えております。

ここの高等学校教育で育てたい力といたしましては,例えばこの場合は国語でございますけれども,中間まとめの別添資料で大学教育としてどういう力を評価するかという点で,例えばその情報を整理して概要や要点を把握したりですとか,自分の考えをまとめて,さらに効果的に伝えるといったような点,さらに現行学習指導要領でも書くことの指導事項では,自分の考えを文章にまとめて考えて書くといったようなことも盛り込まれております。こういった,これは国語の例示ではございますけれども,こういった要素をより的確に評価する上で記述式の導入が効果的と考えております。

資料の2ページ目でございますけれども,こちらの方は知識・技能と思考力・判断力・表現力とそれらを評価する方法のイメージ例ということで,縦軸は評価の対象となる能力,横軸は採点可能性ということで,マークシート,これからの新しいテスト,個別選抜との関係のイメージを少し整理させていただいております。

現行の大学入試センター試験でございますけれども,多肢選択式,穴埋め式の問題ということで,いわゆる答えが一つに特定される問題ということで,新しい「大学入学希望者学力評価テスト(仮称)」におきましては,この多肢選択式でもより深い思考力等を問うような問題ということで,これは改善に努めていくわけでございますけれども,新たに今回の記述式を入れるというときに,その射程の範囲がどの範囲になってくるかというところをこの赤囲み,特にこの点線の囲みの中に記述式部分を示させていただいております。

その中では,特にこの条件付き記述式,説明・要約・作図といったようなもの,また短答式ということで,穴埋め式といったような問題,こういったものはこの大学テストの記述式になじむのではないか。つまり,こういった問題については,一定の基準に基づきまして評価可能な記述式問題であるということで,共通テストになじむ問題になるのではないかと。一方で,この右側の方にございますように,解答の自由度の高い記述式ですとか小論文といったもの,こういった答えが多数あり得る問題というのは,創造性・独創性・芸術性等の評価を含む記述式問題ということで,各個別選抜の方になじむ問題ではないかというふうに捉えております。

こういった今回の共通テストを踏まえまして,各大学が必要とする場合にはこういったより解答の自由度の高い記述式,こういったものを各大学の個別選抜で出題していくことも考えられるのではないかということで,イメージの方を示させていただいております。

今回,この共通テストの部分に記述式問題を導入することによりまして,大学教育への円滑な接続に向けまして,この高等学校で育てたい力の要素をより適切に評価していく必要があろうかと思っております。この具体的な作問の検討状況ですとか,実施方法等に関する主な論点につきましては,冒頭座長からもお話がありましたけれども,次回に向けてお示しできるようまた整理を進めていきたいと思っております。よろしくお願いいたします。

【安西座長】  ありがとうございました。それでは,今の御説明につきまして,何か御質問,御意見があればお願いしたいと思います。どなたでも結構であります。

五神委員,お願いします。

【五神委員】  先ほどの議論にもありましたように,3要素を新しい形で明確化することを通じて,高等学校でも教育効果を上げていき,また,そういうメッセージが学生に伝わるように,大学入試センター試験のような大規模な試験の中にも,そういう要素を入れていくということは重要だということはよく理解できます。また,例えば思考力・判断力・表現力の育成や評価のために,現行のマークシート方式には限界があるという資料3の2番目の丸に書いてあることはそのとおりだとも思います。しかし,一方で50万人ぐらいの生徒が受ける試験における記述式の試験で,どのぐらいの自由度をもって問題を作成できるのかというところが,いま一つピンときません。

マークシートを使って解答する択一式の試験の場合に,深い思考力を問う試験ができないかというと,そういうことはありません。大学入試センター試験でも,共通一次試験以来の数十年の中で,そういう工夫の積み重ねが行われているのです。

ですから,その部分の評価をきちんと行い,それを真に補い得るものとしてどういうものが必要であるかということを,きちんと客観的なエビデンスをもとにして議論していくことが極めて重要です。そのためには既に過去に行った工夫の評価が必要です。例えば,表現力や思考力や判断力をより重視した問題について,どのような成果があったのか,例えば過去の試験の実施例などから分析するなどすべきではないでしょうか。そういう分析を踏まえなければ,補うという意味で,この赤でくくったものの効果を出すことは困難だと思います。

かつて私が受験をした頃の東京大学では一次試験に穴埋め式の問題を使っていました。それはもちろん一度に採点しなければならないという制約の中でやっており,非常に制約された問題ではありましたが,思考力を問う問題も工夫して出していたということを記憶しております。そういう工夫がこれまで大学入試センター試験の中でも相当積み上がってきているのではないかと思います。例えば,3要素のどの要素に重みを置くかで,点数の付け方が変わり,合計点も変わるわけです。従来の枠組みの中でそれを活用した場合に,それによってどういう多様な選択が可能なのかといったことも深く検討した上で,その限界を超える部分をより効果的に実施するための検討を行うべきです。それによって,指導要領が変わるところまでにどういう準備ができるのかという連続的なプロセスを意識して,この改革を合理的に進めるべきではないかと思います。

【安西座長】  これは,後ほど私の方からの見解を申し上げておければと思います。第1点の大学入試センター試験も思考力等々を見る問題が,今までにも蓄積されてきているのではないかという点でありますけれども,これは五神委員御指摘のとおりで,思考力という言葉について,これがどういう内容を含んでいるのかということについての議論が,今までほとんど行われてきていないのではないか。ですから,この問題,思考力を見ているというふうにどなたかが言われたときに,それがどういう思考力を指しているのかということについての客観的といいましょうか,分析的な議論が余りされてきていないのではないかと思います。

これにつきましては,文部科学省の方でいろいろ検討は進めていただいている最中だというふうに理解しております。例えば,思考力と申しましても,演えき的な思考力と帰納的な思考力,帰納的な推論の能力というのは,やはり大きな違いがありまして,ある設問について,どういう思考力を見ているのかということは,それは問われるべきだと思うのですけれども,そういうことも含まれると思います。

また,やはり多肢選択式の問題の場合には,正解がその中にあるということは一応仮定されていると思われますので,その場合にはやはり仮説が一応その中のどこかにあるということは,初めから与えられているわけで。そういうことと,全く仮説が与えられていないというのでしょうか,選択的にも与えられていない,そういう設問の質的な違いということについて,やはりこれも,それではそういう設問の違いについて,どういう学習の違いというのでしょうか,そういうものが得られるのかということについてのそういう分析が,余りこれまで行われてきていないのではないかと思います。

そういう中でのこの高大接続改革の議論でございまして,ほかでもやはり短時間に多くの問題を解かなければいけない場合に,受験者が,先生が思っているような解き方を本当にしているのかどうかということについての分析もきちんと行われてきたかどうかということも問われるべきだと思います。これは,いいか,悪いかということよりも,そういう現状だということでありますが,それは文部科学省の方で大分いろいろ検討はしていただいていると思います。

その一方で,この高大接続改革,これは私の立場上もありますけれども,やはり1999年に初等中等教育と高等教育の接続に関する答申が中央教育審議会で出されたときから,既にやはり今般議論されているような議論というのは,答申の内容にもいろいろ書き込まれていた。もう既に15年がたっているわけで,今もこの議論を,もちろん着実にしなければいけないと思いますし,教育現場との着実な意見交換は必要だと思いますけれども,その上でやはりできるだけ早くこの新しい時代へ向けての,特に教育改革です,これはそれに入試も入ってきますけれども,それが行われていかなければいけないのではないか。そういうことで,この会議が行われているというふうに理解しているところであります。

【五神委員】  手短に補足します。記述式という表現をどう捉えるかということについては,安西座長の説明と私の指摘が,実は合流する部分があるのではないかと思うのです。私は記述式という表現には,答えが分かっているものから選ぶということではない方法,という意味が含まれていると捉えています。従来の大学入試センター試験が実施してきたマークシートの試験にも,これに整合するものがたくさんあると思います。そういう技術的な検討の中で,記述式というのを広めに捉えるということがもしできるのであれば,両方は矛盾しないと思います。

【安西座長】  ありがとうございました。今,この点線で囲んである部分は,余り裏付けなく出てきている面はあると思います。そういう意味で御意見いただくのはむしろ当然だと思いますが,五神委員の言われたポイントというのは,そこをある意味問題として出していくために,この点線部分を作っているのではないかと思います。

日頃から思っていることを申し上げたとおりでございますが,それほど違いがあるということではないと思います。

ありがとうございました。ほかにはいかがでしょうか。

金子委員,お願いします。

【金子委員】  こういった記述式の問題を入れるのが,新しく構想される接続テストの全ての学科とか教科ってどれになるのか分かりませんが,全てに導入されるべきなのか,あるいは記述式を重く取り入れた何らかの試験の区分というものを作るということも,原始的な選択としてはあり得るのではないかと。それで,それを受験者の側も選択できるし,あるいは大学側も選択できるという方法もあるのではないかと思います。

私はやはり,書いたものを評価するという態度はそれなりに必要なところがあって,いかにうまく設定しても,考え方を問うといいながら,結果として一定の選択肢を選択するというのは,やはり一定の幅の中にこれ乗っているかどうかということでするのであって,一定の条件に対してどのように判断するかとかいうことについて,どういう方向で判断したい,どういう方向で判断の基準を求めるかというようなことについては,やはり積極的に書いた方が分かりやすいということが,必要になってくる場合もあるのではないかとは思います。

ただ,それはその量的に実的に,非常に難しいということだとすれば,その一定の範囲を限定した上でこういったものを導入するということも,現実的な方向としてはあるのではないかと思います。

【安西座長】  ありがとうございました。五神委員,また金子委員のおっしゃることと同じですけれども,記述式といってもかなり自由度が,出し方,問題の設定の構造には大分自由度がありますので,この事務局からの説明のこの点線の部分というのはかなり絞った形で,それでも核といいましょうか,記述するということを入れていきながらできるだけ絞った形にしたいということだと理解しております。まだまだ自由度があると思いますので,是非御意見は頂ければと思います。

ほかにはいかがでしょうか。どうぞ。

【五神委員】  せっかく記述式の試験を何らかの形で導入するのであれば,記述した多様な解答に対して,試験における評価のアウトプットが点数1個というのはまずいようにも思うのです。効果を抑えることになるのではと思います。あるいは,その利用の仕方も大学によって多様であるべきであると思います。そういうことができれば,労力を払うに値するものになると思います。そういうことも,是非検討していただきたいと思います。

【安西座長】  私の個人的見解では,今五神委員の言われた各大学は,やはり大学それぞれに利用していただきたいということは,個人としてはかなり強く思っております。

事務局側,何かありますでしょうか。

【橋田大学入試室長】  今御指摘,金子委員,五神委員とございましたけれども,やはりこのテストの信頼性,妥当性,コスト面を含めて,この実際記述式の形でどういう能力を測るのか,またどういう範囲でやるのか,またどういう実施体制が考えられるのか,成績提供在り方を含めて,少しまた整理を進めていきたいと思っております。

【安西座長】  常盤高等教育局長,お願いします。

【常盤高等教育局長】  この別紙の方の図自体が,まだこれから,これ一つのここにたたき台と書いてありますけれども,まだこれ議論のある意味,整理するための資料と考えていただければと思います。

それで,これはまず左下というのは,知識・技能を例えば多肢選択で問う問題というのは,知識・技能ですから,ある意味答えは一つに特定できるわけですが,右上になると,今度は知識・技能を活用したり,新しい知識を生み出したりするような探求的なものが上の方にあると。右上は特にそういうものだと考えると,左下はその知識・技能を問う問題で,割と答えが一つに特定できる。

右上はある意味,今一番,前大臣がよくおっしゃっていましたけれども,答えがない問題について,答えをどう探すのかがこれから大切だと考えると,答えがある意味ないような,幾つもの答えが考えられるような問題というのは,探求的な問題としてあり得ると思うのですけれども,それが右上だとすると,その右上の問題というのは,やはり今度は採点可能性が非常に低くなるということになりますので,採点可能性の高いものから採点可能性の低いものの間にどこにその採点可能であって,かつ知識・技能ではないというジャンルを見出すかということが,今我々に問われている課題なものですから。

その枠組みをこの資料は一つ,枠組みとして御提示することによって,あと五神委員がおっしゃられたような,これまでの大学入試センター試験では,この赤の枠の中は本当に問うていなかったのか,それともこれまでのように,大学入試センター試験である程度の発展形の中で問える可能性があるのかとか,そういうこれまでの実績等を踏まえた分析的な検討というものをさらに深めていって,議論をさらに煮詰めていくためのいわば枠組みを共通して,共通に持っていただくための資料ということで,御理解いただければと思っております。

【安西座長】  ありがとうございました。なかなか問題のイメージ,問題例を早く出せと,こういう御意見も以前から承っているわけでありますけれども,先ほど最初に申し上げましたように,この大学のテストの作問に関する具体的な検討状況等については,次回に議論させていただく予定でございます。その前ぶれだというふうに,小出しにしているというわけではないと思いますけれども,そういうふうにお考えいただくのが一番いいかなと思います。

岡本委員,お願いします。新テストワーキンググループの主査をしていただいております。

【岡本委員】  今,皆様の意見を聞いていて,なぜか気がだんだん重くなってきて。

実は,五神委員がおっしゃった一定の調査等は大学入試センター試験等でも行っているのですが,実際に問題を作るときに,金子委員が指摘された教科の問題とか,それから採点の困難性の問題とか,いろいろなものが多種多様に入ってくると思います。高等学校の方で,例えば教育を改善するためにこういう観点で,例えば知識・技能ばかりじゃなくて,関心とか意欲とかそういうのを高めていくのだよというのを,実際に授業の中で展開していく分にはいいですけれども,1回の試験でこれをやろうとすると,どうしても具体的に私たちが考えなければいけないのは,試験というのは,これは選抜試験になってしまうわけです。

今,大学入試センター試験というのは,選抜試験と達成度試験がこういろいろ絡んでやっているわけですけれども,だから60点とかいろいろなことがあるわけですけれども,そういう性格付けも含めて,どこまでできるのかというのがかなり問題で,特に試験だから,いわゆる試験対策というのがあって,これは高度に発展した試験対策というのが,あと試験対策と戦うべきなのか,どうなのかというのも,少しこれ議論を要するところではありますけれども,そういうことをいろいろやりくりをしながら作っていけばいいのかとは考えています。

それで,結論としては,実は本当に五神委員がおっしゃってくださったとおり,やはりそういう意味ではいい問題というのは,随分蓄積はされているとは思っております。すいません。

【安西座長】  ありがとうございました。ほかによろしければ,そろそろ時間でございます。

先ほどの多面的な評価につきましては,本日大変貴重な御意見を多々頂きまして,引き続き荒瀬主査の下で,多面的な評価検討ワーキンググループにおいて,議論を進めていただければと思います。

また,「大学入学希望者学力評価テスト(仮称)」につきましては,頂いた御意見はごもっとも,もちろんでございまして,そういう中でいかに新しい時代に向けての採点方法から実施時期等々も含めて,総合的な提案をこの会議としてやっていくということになりますので,この点につきましても,皆様のさらに御意見が頂ければと思っております。このテストについては,新テストワーキンググループ,岡本主査の下で,具体的な方策についてさらに審議を深めていただければと思っております。よろしくお願い申し上げます。

それでは,よろしければここまでにさせていただきまして,今後の予定等について,事務局からお願いします。

【新田主任大学改革官】  本日はありがとうございました。次回日程につきましては,調整の上,追って御連絡させていただきますので,どうぞよろしくお願いいたします。

【安西座長】  それでは,これで閉会とさせていただきます。どうも貴重な御意見を頂きまして,ありがとうございました。

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