高大接続システム改革会議(第2回) 議事録

1.日時

平成27年4月23日(木曜日)10時~12時

2.場所

文部科学省 3F1特別会議室

3.議題

  1. 中央教育審議会各部会における審議状況について
  2. 一貫した高大接続の在り方について
  3. 個別選抜の改革の推進方策について
  4. その他

4.出席者

委員

(座長)安西祐一郎委員
(副座長)片峰茂委員 
(委員)乾 健太郎,浦野光人,岡本和夫,恩藏直人,金子元久,香山真一,河野真理子,小林浩,佐藤東洋士,鈴木典比古,関根郁夫,長崎榮三,長塚篤夫,南風原朝和,濵口道成,日比谷潤子,宮本久也,山極壽一,山本廣基,吉田研作の各委員
(事例発表者)花輪公雄東北大学理事, 丸野俊一九州大学理事・副学長, 福島一政追手門学院大学副学長

文部科学省

(事務局)前川文部科学審議官,德久総括審議官,河村生涯学習政策局長,小松初等中等教育局長,中岡初等中等教育局審議官,伯井初等中等教育局審議官,吉田高等教育局長,藤原私学部長,義本高等教育局審議官,佐野高等教育局審議官,大槻国立教育政策研究所長,里見生涯学習政策課長,水田初等中等教育局主任視学官,今井教育制度改革室長,瀧本官房付,新田主任大学改革官,塩見大学振興課長,橋田大学入試室長,他

5.議事録

(1)中央教育審議会各部会における審議状況,一貫した高大接続の在り方について

  中央教育審議会の各部会における審議状況,一貫した高大接続の在り方について,事務局から資料1-1,1-2-1,1-2-2,1-3,資料2に基づき説明があり,その後,意見交換が行われた。

 

【安西座長】  おはようございます。時間でございますので,ただいまから「高大接続システム改革会議」第2回になりますが,始めさせていただきます。皆様方,御多用の中お集まりいただきまして,誠にありがとうございます。

 それでは,まず,事務局から配付資料について確認をお願いします。

【新田主任大学改革官】  失礼いたします。それでは,資料確認でございます。

 議事次第が1枚,資料1-1が1枚物でございます。それから資料1-2-1,資料1-2-2,資料1-3,資料2が2枚物の図でございます。ヒアリング資料として資料3-1,3-2,3-3,3-4,資料4は論点メモでございます。参考資料1は名簿,参考資料2は,アドミッション・ポリシーに関する資料を御用意しております。また,最後に,恩藏委員から頂いております早稲田大学のガイドブックを席上配付させていただいております。落丁等ございましたら,事務局の方へお申し出いただければと思います。

【安西座長】  よろしいでしょうか。それでは,議事に入らせていただきます。

 この高大接続改革につきましては,この会と並行いたしまして,中央教育審議会の各部会においても学習指導要領の改訂,アドミッション・ポリシーの策定の義務付け等々,審議が進められております。全体像ということもございますので,中央教育審議会の各部会の審議状況につきまして,事務局からまず説明をお願いしたいと思います。よろしくお願いします。

【新田主任大学改革官】  それでは,資料1-1から御覧いただければと思います。資料1-1,高大接続改革に関する体制についての図でございますが,この高大接続システム改革会議で中心に新テストの在り方と評価,それから個別選抜の改革等について御議論いただいておりますが,そのほかのところでも,一番左のところで高等学校教育の在り方に係る部分について,それから大学教育に係る部分について,中央教育審議会でも御議論が行われておりますので,審議状況についての御説明でございます。

 次の資料1-2-1を御覧いただければと思います。先ほどの高等教育の在り方に関する議論のうち,教育課程,学習指導要領に関する議論の部分でございます。「初等中等教育における教育課程の基準等の在り方について」ということで,昨年11月20日に中央教育審議会に対して諮問が行われております。

 趣旨の左の方を御覧いただいて,このような変化している中で,右の図でございます。「教育の在り方も一層進化させる必要」があり,特に,学ぶことと社会とのつながりを意識し,何を教えるかという知識の質・量の改善に加えて,どのように学ぶかという学びの質や深まりを重視することが必要であること,また,学びの成果としてどのような力が身に付いたかという視点が重要であるとの観点から,下の審議の柱に関する箱でございます。一つ目として,新しい時代に求められる資質・能力を踏まえた,初等中等教育を通じた改訂の基本方針,それから学習・指導方法の在り方(アクティブ・ラーニング)や評価方法の在り方等,二つ目として,新たな教科・科目等の在り方や既存の教科・科目等の目標・内容の見直し,三つ目として,各学校におけるカリキュラム・マネジメントや,学習・指導方法及び評価方法の改善支援の方策について,柱に基づいて議論されているということでございます。

 1枚めくっていただきまして,今回,特に問題として中心的に御議論いただいておりますのが,目標・内容の見直しということで,何を学ぶかについて,従来,学習指導要領において中心的に記述されていたわけですが,そのほか,上のところの何ができるようになるのか,どのような力が身に付くのか,身に付いたのかという観点,それから右の下,そのような力を身に付けるためにどのように学ぶのかという学びの質や深まりの点,このような中でアクティブ・ラーニングの充実・強化ということをいかに教育課程の中で受け止めて,また記述していくのかという教育課程の構造化についても議論が進められております。

 以上が教育課程でございます。

 次の資料1-2-2を御覧いただければと思います。これからの教育を担う教員やチームとしての学校の在り方について,これは昨年7月29日に既に中央教育審議会に諮問され,今,審議が行われているものでございます。

 一番上の左側を御覧いただきまして,社会の変化と求められる能力・人材という中で,右側に教員の果たす役割の重要性と課題ということで,このような時代に求められる学校教育の実現との観点で,教員の資質能力の向上が重要な課題ということでございます。

 その下,中央教育審議会への諮問事項という中で,これからの教育を担う教員に求められる資質能力で,一つ目のチェックの部分でございますが,子供たちが受け身の授業ではなく,ICT等も活用しつつ,主体的・協働的に学ぶ授業を通じて,これからの時代に求められる力を子供たちに確実に身に付けさせることが必要で,そのようなことができる教員の指導力をいかに高めていくのかということで,教員免許制度の見直し,あるいは採用・研修等,各段階における在り方について審議が行われております。

 以上が,教員の力量に関する部分でございます。

 最後,資料1-3の大学教育でございますが,今期の大学分科会での審議事項ということで,四角に囲われている部分でございますが,すみません,1という数字が切れておりますけれども,大学教育の在り方について,具体的な審議項目例といたしまして,大学教育の質的転換について,この中で一つ目,高大接続改革の実現に向けた大学教育の質的転換ということ,それから二つ目,大学教育の質保証の充実について,三つ目の学長補佐体制の強化についてということで,大学教育の在り方について,大学教育部会を中心として,大学分科会で審議が行われるということでございます。

 以上でございます。

【安西座長】  ありがとうございました。

 何か御質問等あれば,頂ければと思いますけれども,よろしいでしょうか。後ほどでも結構でございますので,資料等を御覧いただければと思います。

 それでは,次に,高大接続改革の全体イメージについて,事務局から説明をお願いしたいと思います。

【新田主任大学改革官】  それでは,資料2でございます。資料2は高等学校教育・大学教育を通じた一貫した教育理念・内容・方法の確立という資料でございます。前回に引き続き,今回から高大接続について御議論いただくわけですが,その全体図,見取図のイメージといたしまして資料を御用意させていただきました。

 1枚目でございますが,青いところの高等学校教育,それから大学教育というものが一貫しているわけですが,この高等学校教育の内容については学習指導要領等で定まっています。これに対して大学教育は,大学が自らそれを定め,示していくということで,入り口としてのアドミッション・ポリシー,真ん中としてのカリキュラム・ポリシー,出口方針としてのディプロマ・ポリシーというイメージがあります。このうちのアドミッション・ポリシーに基づいた選抜の実施ということでの大学入学者選抜という,この大きな三者の位置付けについてのイメージ図でございます。

 1枚めくっていただきまして,この世界地図の中に道具立て,論点を落とし込んだものが,次の全体イメージ(素案)でございます。一番左側,高等学校教育,そして右側に大学教育,間に大学入学者選抜あるわけですが,高等学校教育の質又は内容の在り方として,一番上にあります高等学校学習指導要領の改訂,二つ目の高等学校基礎学力テスト(仮称)の導入,三つ目の指導要録の改善,それから一番下の教員の指導力向上といったような道具立て,課題があるということでございます。

 右の方を御覧いただきますと,大学教育は,先ほど申し上げましたアドミッション・ポリシー,カリキュラム・ポリシー,ディプロマ・ポリシーとそれぞれあるわけですけれども,まずカリキュラム・ポリシーの方を御覧いただきますと,そのようなポリシーの明確化によって,カリキュラムの体系化につなげていく必要があるというものでございます。

 最後の一番右のディプロマ・ポリシーを明確化することによって,卒業に必要な要件の明確化と厳格な卒業認定ということにつなげていくというものでございます。

 アドミッション・ポリシーのところですけれども,以下の3要素について,一つ目の知識・技能,二つ目の思考力・判断力・表現力,三つ目の主体性・多様性・協働性,これらについて具体的にどのような能力をどのレベルで求めるのかをアドミッション・ポリシーにおいて明確化することになります。

 それを評価するために,大学入学者選抜のところでございますけれども,アの大学入学希望者学力評価テスト(仮称)から始まりまして,イ,ウ,エ,オと分類させていただきましたけれども,これらの方法を通じて,どのように入学者選抜で右側の3要素を評価しつなげていくという図でございます。

 一番下の方でございますけれども,このようなアドミッション,カリキュラム,ディプロマ,あるいは入学者選抜を形作っていく政策的な道具立てのところが,下の黒四角で記述させていただいています。このような形での全体のフィールドと政策的道具立て,課題が全体像としてあるという図でございます。

 以上でございます。

【安西座長】  ありがとうございました。何か御質問等ありますでしょうか。金子委員,お願いします。

【金子委員】  前の初等中等教育部会と関わりますが,今,お話がありましたように,この場は高大接続を議論する場ですけれども,その重要な一部としては,高等学校基礎学力テスト(仮称)があるわけです。ここに至るまで,一昨年,中央教育審議会の高等学校教育部会でかなりいろいろな議論が行われまして,そこで非常に大きな問題になりましたのは,1990年代から高等学校の多様化政策が非常に進んでいて,学力が非常に多様化したと一方では言えるわけですけれども,基礎的な学力について非常に問題があるのではないかという議論でした。

 同時に,そのとき問題になりましたのは,高等学校教育についてどこでどう議論しているのかというのが余り明確ではない。先ほどの初等中等教育部会の検討内容を見ましても,小学校・中学校についてはかなり内容があると思いますが,高等学校についてはほとんど議論がないわけです。しかも,今回の高大接続でも,高大接続の試験についてはいろいろな議論がありますが,しかし,それを教える高等学校がどのような体制で臨むかということについては,非常に重要だと思いますが,この場で直接話す問題であるかどうかはやはり問題だと思います。

 今,お話の高大接続改革のイメージを見ましても,指導要録の改善については,高大接続システム改革会議評価ワーキンググループで検討ということになっていますが,本来の議論としては少し違うのではないかと思います。もともと高等学校教育についてどのようにするかという問題があって,これはそれ自体として議論すべき問題ではないかと思いますが,伺いたいのは,文部科学省としては高等学校教育について本格的な検討というのはどういうふうな形でこれからされるおつもりなのか,これを伺いたいと思います。

【安西座長】  文部科学省はいかがですか。

【水田初等中等教育局主任視学官】  

 先ほどの高大接続改革の全体イメージの素案の一番左側,高等学校についての改革が幾つか柱立てされているわけでございますが,まさに今,高等学校学習指導要領の改訂とありますが,初等中等教育分科会の教育課程部会におきまして,これは幼稚園から高等学校まで含めた学習指導要領の本格的な改訂の議論が始まっております。

 その中身につきましては,先ほどの説明で使いました資料1-2-1のところで,3枚目以降,現在の審議の状況,これはまだまとまったものではございませんが,これまでのまとめということで書いてございます。

 さらに,先ほどの資料1-2-1の1枚目のところでも,審議事項の柱のところで2ぽつの中に,新たな教科・科目等の在り方や既存の教科・科目等の目標・内容の見直しということでいろいろ書いてございます。高等学校の教育に関しましての教科ですとか内容についての大きな見直しは,今,議論が始まって,まさに行われているところでございます。

 さらに,先ほど資料1-2-2でも御説明ありましたように,併せまして,そういった教育をどのように行っていくのかといったことで,学校の体制の在り方ですとか,教員の養成・採用・研修の在り方,そういったものをセットで議論がなされているところでございます。

【金子委員】  そこで触れられているということは分かるのですが,初等中等教育と高等学校が非常に違うのは,第一に,高等学校は課程が分かれています。それから,その中での教科も非常に細分化されているのが現状でありまして,これを本格的に議論しないと,高大接続が立体的な議論にならないと私は思います。

 一昨年,高等学校教育部会で議論したときも,高等学校教育についてまとめて議論したのは十何年ぶりという話でしたし,中央教育審議会の体制の中でも高等学校というのはなかなか位置付いていない。指導要録の改善について議論されることは分かりますが,しかし,高等学校教育全体について,今までの非常に細分化された課程で,あるいは教育課程が非常に細分化されている,その体制自体をどのように考えるかということについての本格的な議論が必要ではないかと思います。

 これはこの場で余り議論申し上げることではないかもしれませんが,私はそこのところは,このような形で触れられているという問題ではなく,更にもっと本格的に議論すべきではないかと思います。

【安西座長】  ありがとうございました。今の論点は非常に大事でございまして,高等学校の多様化,それからいわゆる知識・技能の分布,いろいろなルートが高等学校にもできておりますので,そのことは一度是非しっかり取り上げていただけると有り難いと思っております。

 今のことに関連してでも結構でございますので,何か御質問等あれば山極委員,お願いします。

【山極委員】  

 直接今のことに関係しませんが,高等学校教育と大学入試,大学教育を三位一体で進めるということですけれども,これをどういう順番で,どういう優先性で進めるのか,ロードマップがまだ余りはっきりしていない。

 今の時点で言うのは難しいかもしれませんけれども,例えば,大学入試の問題というのは非常に重要だと思います。例えば,飛び級を許すとか,許さないとかになりますと,いわゆる高等学校基礎学力テスト(仮称),大学入学希望者学力評価テスト(仮称)を踏まえて入試選抜をやっていくという順番が決められてしまうと,実は非常にフレキシビリティーが下がってしまいます。

 ですから,多様な高校生の能力に応じた入試選抜を考えて,その内容に応じて,また高校生の学力を測る方法を考えるとか,少し相互のやり取りが必要ではないかという気がいたします。

 実際に学力テストの方の手順は日程もはっきりしていますけれども,そのほかの日程については,あるいは相互のやり取りについては余り見えていないような気がしますけれども,その辺り,どういう構想なのかお聞きしたいと思います。

【安西座長】  これもおっしゃるとおりだと思いますが,文部科学省はいかがですか。

【新田主任大学改革官】  資料1-1の図がまさにそのイメージを図にした部分でございますが,高大接続については御意見のとおり,高等学校教育の在り方と,それから大学教育の在り方と,それから間の部分である入試改革の在り方についてということで御議論いただき,昨年の答申がまとまっているというのが全体図としてございまして,その中で政策的に具体化するための道具立ての部分を更に議論して,具現化する必要があるということで,その具体案について御議論いただくため,今回,高大接続改革実行プランが策定をされ,それに基づいて,それの具現化のための改革会議が設置されているということでございます。

 基礎資料の方を御覧いただければと思いますけれども,資料の丸の3番,既に先ほどお話をいたしました高大接続改革実行プランに付けられた工程表でございます。この工程表が,先ほど申し上げました答申を具現化するために,要はそれぞれ具体化していくための詰めていく課題,道具立ての部分が縦軸にございますけれども,それぞれについて工程表として示されています。

 このうちの特に二つ目の段の二つのテストなどについては,更に具現化するための議論が必要であるということから,専門家会議における検討というのが26,27年度のところに書いてございますが,この会議で御議論いただきたいということで,この会議が設けられています。そのほかの部分につきましては,それぞれ上と下に展開してございますけれども,そのような段取り感でそれぞれのところで議論されるということでございます。

【片峰副座長】  今の件ですが,大学教育改革と高等学校教育改革,その間に入試改革,それぞれがインディペンデントに改革が進んでいって,お互いに影響しながらということで基本的にはいいことですけど,ベーシックには,やっぱり高等教育が変わって,ある新しい資質を身に付けた卒業生が新しい入試を受けて,それに対応した大学教育が大きく変わる。そこが恐らく完成形だろうと思います。

 そういった意味でこのスケジュール表を見ますと,新しい高等教育改革がスタートするのは平成34年です。卒業生が出るのは37年。恐らくそこら辺が最終的な今回の三位一体改革のゴールであるという考えでよろしいでしょうか。

 その間,大学等とも入試も含めまして,あるステップを踏みながら最終的な改革につなげていくという,そういう理解でよろしいですか。

【義本高等教育局審議官】  片峰委員がおっしゃったとおりでございまして,最終的には指導要領の改訂に連動した形で個別入試があったり,あるいは新テストの教科・内容が連動してくるという形になりますけれども,お話ありましたように,そこに向けてはいろいろな手順がございますので,この工程表も一応全体の形でなっていますけれども,そこに向けてどういう形で手順を踏んでやっていくのかについては,ここでの御議論を踏まえながら,また次回以降について,私どもとして整理した上でお示しさせていただくということになろうかと思っております。

【安西座長】  ほかにはいかがでしょうか。山極委員,お願いします。

【山極委員】  片峰委員がおっしゃったように,それぞれ三つのグループが独立して様々な議論を重ねていって,でも,入試改革とかはもう28年度から実施されるわけです。様々な試みを大学がやると思います。それが一方では,全く独立して高等学校の全国模試というのが計画されていくと,そういった試み自体が無効になってしまう可能性もあるわけです。

 例えば,高等学校1年,2年の段階である程度の能力を持つ者を大学としては採りたいというような希望があった場合,模試の高等学校3年までの結果を踏まえて学生選抜をしなさいということになってしまうと,それは非常に拘束性が高くなります。ですから,やはり相互の連絡が必要なのではないかということを申し上げているわけでございます。

【義本高等教育局審議官】  おっしゃるとおりでございまして,そこにつきましては完成形の答申が出たという中で,そこから始まるのではなく,途中経過も含めてこの会議にも情報提供させていただきながら,御議論いただこうと思っているところでございます。

 特に指導要領につきましては,教育課程企画特別部会で議論しており,夏ぐらいにおいては一定のまとめをしますので,それもこの場に提示させていただいて,それも視野に置きながらの個別入試改革とも連動していくような形で,私どもとしても御議論を工夫させていただきたいと存じます。

(2)個別選抜の改革の推進方策について

各事例発表者から資料3-1,3-2,3-3,3-4,事務局から資料4に基づき説明があり,その後,意見交換が行われた。

 

【安西座長】  よろしいでしょうか。ありがとうございます。ほかにはいかがでしょうか。

 それでは,また御意見,御質問あれば,後ほどでも結構でございますので,先へ進めさせていただきます。

 今日は個別選抜です。それぞれの大学,個別大学の入学者選抜改革に関する検討の参考とさせていただくという位置付けで,東北大学,九州大学,早稲田大学,追手門学院大学,4大学の理事,副学長の先生方にお忙しい中いらしていただいております。それぞれの大学における取組の状況等について,お話をお伺いすることにいたしております。これから4大学の先生方にお話しいただきますけれども,それぞれの大学の取組に対する御質問等につきましては,全ての説明が終わった後で自由討議と併せてお願いしたいと思います。

 よろしゅうございますでしょうか。それでは,まず,東北大学の取組につきまして,花輪公雄東北大学理事からお話を伺えればと思います。教育・学生支援・教育国際交流担当理事でいらっしゃいます。よろしくお願いします。

【花輪東北大学理事】  東北大学の花輪でございます。このような機会を設けていただきまして,有り難く存じております。

 それでは,お手元の資料3-1を御覧ください。本日のお話,主にAO入試について御紹介いたします。1枚めくっていただきます。目次があります。1から5までの順序でお話しさせていただきます。

 2枚目の表紙ですけれども,東北大学の概要,言うまでもなく,東北大学は東京大学,京都大学に次ぐ第3の帝国大学として明治40年に創立されております。現在,10の学部,16の大学院研究科,三つの専門職大学院,六つの附置研究所を有しております。

 学生数ですけれども,学部学生1万1,000名,大学院生7,000名,合計1万8,000名がおります。うち,留学生は1,500名です。教職員ですけれども,合わせて6,000名,教員が3,200名おります。本学,タコ足のキャンパスでありまして,五つ仙台市にキャンパスがあります。

 本学は創立以来,三つの理念の下に教育・研究を行ってまいりました。研究第一,門戸開放,実学尊重であります。

 学部の入学定員ですけれども,2,396名です。後で詳しくお話しいたしますけれども,うちAO入試で438名,約18%を入学させております。これは国立大学の中では断然に多い数字であるというふうに認識しております。前期日程10学部1,865名,割合にしますと78%。後期日程2学部,これは経済学部と理学部,合わせて93名,比率にしまして4%の学生を入学させております。

 2枚目の裏面にある学部入試の概要ですけれども,一般入試,前期日程,後期日程のほか,AO入試,1期から4期まで4種類ございますが,1期目は社会人入学で,工学部が行ってまいりました入試ですけれども,平成25年度に廃止いたしておりますので,現在,本学が行っているAO入試は2期,3期,4期ということになります。4期は帰国生徒のために工学部が行っている入試でありまして,主なものは2期と3期ということで,次の資料で詳しくお話しいたします。

 そのほか,本学特別入試ということで,いろいろな入試を行っております。科学オリンピック入試,帰国生徒入試,私費外国人留学生入試,これは全学部で行っております。それから,国際学士コース入試,これはグローバル30の授業の中で,学部に設けた英語コースの入試でありまして,理学部,工学部,農学部が行っております。そのほか,つい先月ですけれども,平成29年度からグローバル入試の1期,2期,及び国際バカロレア入試を導入することを決めており,公表いたしております。

 次のページを御覧ください。AO入試の実施概要と特徴ということであります。AO入試の2期,これはセンター試験を課さないAO入試でありまして,11月に行っております。文学部,理学部,工学部,農学部,4学部が行っております。募集人員はそこに書いてあるとおりです。

 主な選抜指標ということで,一番下に書いてありますように,出願書類は,調査書,志願理由書,活動報告書等でございます。2期ではそのほかに小論文の試験,一部小論文ですけれども,筆記試験という形で行っている学部が2学部あります。そのほか,面接試験は全ての学部で行っております。

 一方,選択試験を課しますAO入試の3期です。これは2月に行っておりまして,10学部中,文学部,理学部を除く8学部で行っています。募集人員はそこに書いてありますような人数を採っております。

 主な選抜指標ですけれども,センター試験が新たに加わりますとともに,口頭試験は全ての学部で導入しておりまして,後でも御説明申し上げますけれども,その内容は,各学部によって非常に多種多様な入試を行っているということであります。

 次のスライドを御覧ください。私たち,大分前から推薦入試を行っていまして,順次,AO入試に切り替えてきました。2年前には推薦入試が全ての学部でなくなりまして,AO入試に切り替わりましたけれども,その特徴をお話し申し上げます。

 まず,各学部の自主的判断を最大限尊重しているということです。導入の可否,選考方法,内容等も各部局の判断に依存しております。各学部は学部のアドミッション・ポリシーに基づく選考を展開しておりまして,各部局様々な入試を行っております。

 本学,アドミッション・センターをいち早く設けまして,活動してきましたけれども,現在,入試センターというふうに呼んでいますが,このセンターは各部局に対して助言あるいは情報提供をするということにしております。

 三つ目は,様々な入試を行っていると言いましたけれども,基礎学力を重視することは全部局を通して重視しております。研究大学としての入学後の学習に基礎学力は非常に大切であるということが前提になっております。

 一方で,高等学校の負担軽減のために,提出する書類等は簡素化に努めております。

 次の資料を御覧ください。評価の基本方針ということですけれども,本学,繰り返しですけれども,基礎学力のほかにプラスアルファといたしまして,意欲・適性・好奇心等を評価しております。

 基礎学力をどう見るかということですけれども,AO2期は入試センターを課しておりませんが,高等学校における学業成績を見ます。それから小論文,筆記試験,AO入試は推薦入試と違いまして,筆記試験を行うことができるという組立てになっておりますので,最大限そこを利用しております。当然のことながら,AO3期,2月に行う試験はセンター試験の成績も利用いたしております。

 次に,意欲・適性・好奇心等を見るところですけれども,これは出願書類の中にあります志願理由書,あるいは高等学校におけるボランティア,課外活動等の報告書,それから面接試験等々で判断いたしております。

 次の資料を御覧ください。AO入試の実施概要と特徴の(4)教育的意義ということです。本学のAO入試,特別な対策は不要であるというふうに高等学校側にはお伝えしております。最終的には一般入試ということで,前期日程,後期日程あるわけですけれども,その目標に向かって基礎学力を習得していってくださいと。その途中で11月AO2期,2月AO3期ですけれども,本学を第一志望で考えている受験者に対して,その機会を提供する試験というふうに位置付けております。

 アンケート調査ですけれども,AO入試合格者の第一志望率は95%,これ少し分かりにくいと思いますが,ここに入りたかった,一番入りたかったのはここだ,そういう意味であります。自分の学力が足らないからこの大学にした,そういうことではございません。東北大学に入りたかった,そういう第一志望を持っていた合格者が95%であるということであります。

 ここで「第一志望とは」ということで,下に説明が書いてありますけれども,自己の適性,将来展望などを十分思慮した上で決定すべきものである,こういうことですけれども,志願理由書,面接試験等への準備は,第一志望を確認するための高校生の自己省察に絶好の機会を与えているという考え方であります。

 次の資料を御覧ください。AO入試入学者への評価です。本学,多くの学生をAO入試で入れていますけれども,追跡調査を行っております。以下にお示しいたします追跡調査の結果は,平成12年度から21年度までの全ての学部で調査した結果をまとめて示してあります。

 まず,グラフの一番左側,修了年限,いわゆるストレートで卒業した学生の比率を書いてあります。全体,一番左側の棒ですけれども,全体では78.1%ですが,AO入試の2期,AO入試の3期は各々84.1,81.8%と高い割合であります。一方で,一般入試ですけれども,前期日程80.1%,後期日程71.1%。どうしても後期日程というのは,前期日程で落ちた学生ということもありまして,多少モチベーションが下がるということがあろうかと思いますが,このような形になります。

 今度は学習の成績のことです。右側の棒グラフを御覧ください。本学,教養教育を全学教育と呼んでいますけれども,真ん中の棒グラフは全学教育の偏差値を書いてあります。これはグレード・ポイント・アベレージ(GPA)という数値で成績を見ていますけれども,各学部で平均値を計算いたしまして,標準偏差で割って偏差値という値にいたします。それで整理したものであります。これも御覧になってお分かりのように,AO2期,AO3期,共に50%をはるかに超えています。

 さらに,専門教育,これは2年次後半あるいは3年時からの各学部における教育ですけれども,ここも同じように,AO入試で入ってきた学生は高い評価を得ているということが言えます。

 次の4の入試広報を御覧ください。本学,AO入試を入れていますけれども,入試広報が極めて重要であるということをお話しします。AO入試で優れた学生を確保するには,入試の設計と入試の広報,この組合せが非常に重要なのであるということで,説明会・相談会,出前授業などを通じて,本学の考え方,それから本学入試の情報を提供することをやっております。進学説明会,入試説明会,そこに書かれてあるような数字です。

 そのほかに,高等学校訪問を行っております。また,女子学生をサイエンスエンジェルというふうに任命いたしまして,母校等々に行って,サイエンスをやることの面白さをやるようなこともしております。また,高校生を対象とした科学者の卵養成講座,これ昨年度から新しいステージに入っていますけれども,これも行っており,高大連携授業も盛んに展開しているところであります。

 少し余談ですけれども,朝日新聞社『大学ランキング2016』,つい最近出ましたけれども,広報活動に熱心な大学として高等学校の先生方から全国1位の評価を頂いております。

 ここで繰り返しになりますけれども,本学のAO入試は奇をてらわないオーソドックスな選考をしております。AOでも学力を重視しますよ,こういうメッセージを常に発信しております。その結果として,高等学校や受験生の信頼をある程度獲得できているのではないかということを考えております。これが翻って更に優れた学生の受験機会を促進しているというふうに考えております。

 最後の資料ですけれども,とはいいましても,なお課題も抱えていることは確かです。課題の1ですけれども,非常にいい成績を収めているということで,可能な限り,こういう形での入試での学生をたくさん入れたいということで,現状では18%ですけれども,ここ数年かけて30%まで持っていけないかということで,現在検討しております。そうではありますが,ただ,実施主体である学部の教職員に負担が大きいということで,なるべく負担が過度にかからないような支援が必要ではないかということであります。

 具体的には,全学体制による学部への試験業務支援をこれから考えなければいけない。特に入試センターを強化していかなければいけないということを考えております。

 さらに,定員拡大に向けた入試広報,先ほど広報が非常に重要であるということをお話ししましたけれども,一層これを強化していかなければいけないというふうに考えております。

 課題の2,説明責任の向上であります。これは,どういうAO入試をやっているかということは公表をしていますが,必ずしも非常に微に入り細に入り情報を公開しているというわけではございません。そこで求める学生像や選考基準に対しては,ある程度は今,発信していますけれども,見えにくいAO入試解消のためということで,より一層,具体化,明確化した情報を発信する必要があるというふうに課題として認識しております。

 具体的に,アドミッション・ポリシー,本学すべてポリシー策定しておりますけれども,やや抽象的な面があります。これの具体化が課題です。さらには入試成績の情報公開も必要であろうと考えております。

 以上,早口でしたけれども,御説明させていただきました。御清聴ありがとうございました。

【安西座長】  どうもありがとうございました。

 次に,九州大学の取組につきまして,丸野俊一九州大学理事・副学長からお話を伺いたいと思います。よろしくお願いします。

【丸野九州大学理事】  それでは,早速ですが,資料を御覧ください。資料3-2に基づきまして説明いたします。

 まず,1ページめくっていただきまして,入学者選抜が現在どういう方法,どんなことに取り組んでいるかということですが,左側が一般入試,入学定員2,555人のところに前期で11学部2,000名ぐらい,後期で8学部318名。

 その一方,AO入試2,AO入試1としてセンター試験を課さないものがあり,それが教育学部と21世紀プログラムです。特にユニークということで,今日は21世紀プログラムを中心にお話しいたしますが,AO入試2はセンター試験を課しており,それが法,理,医学・保健,歯学部,芸工全学科,農学部ということで,大体160名。それ以外に,帰国子女入試,大体毎年50~60名の応募者があり,全部局の中でやっています。それから私費外国人入試,これが全部局で大体185名の志願者がいます。

 それから,グローバル30での外国人留学生国際コース,これは10月入学ですが,工学部と農学部でやっています。今年は工学部において17か国からの志願者があり,20名程度合格しています。農学部はこういう状況になっています。そのほか,国費,政府派遣等外国人留学生が,10名前後,毎年入っています。これが九州大学の全体的な入試方法です。

 3ページを御覧ください。この資料はその中でもAO入試について特化し,説明するものです。教育学部はセンター試験を課さないAO入試110名。法学部以下,農学部まではセンター試験を課すAO入試2です。その中で,多くの部局は面接と小論文ですが,芸術工学部のみは実技が入っております。大体3時間50分の実技プラス面接,小論文という形で芸術工学部では入試を行っています。

 それから教育学部,今日は資料を準備していませんが,1次選抜の段階では4種類の課題資料を提供いたします。日本語での1,500字ぐらいの文章,1,500字ぐらいの英文,それから数値データ,関連論文と4種類の資料を読み取り・理解し,自分なりに共通テーマをそこに設定して,小論文化するという形で実施していますが,その中での英語能力をも判断しています。この段階で2.5倍ぐらいに絞り込んで,第二次試験では,4種類ぐらいの資料を準備いたしますが,3時間かけて共通テーマを自分なりに設定して,それを4枚のパネルにまとめ,10分間で発表させ,そのパネルについて3人の面接官が質問するという形で実施しています。3時間かけてパネルを作り,10分の発表,10分の質疑という形の運営のやり方です。そこでは,着想力,創造性,論理性,批判的能力,それから表現力について,総合的に判断する入試を行っているということです。

 特に今日は21世紀を中心に説明してまいります。4ページを御覧ください。21世紀プログラムに入学してくる学生は,どこの部局にも属さないで,このプログラムに所属します。専門性の高いゼネラリストを育成するという理念の下に,外に開かれた知識,あるいは創造を引き出す知識と基礎的な知識を十分に兼ね備えた人材を育成する,学部横断的な教育プログラムです。求める学生像としては,右のような学生像を設定し,アドミッション・ポリシーを明確にしております。

 5ページですが,左側は各部局の中での学生の履修傾向,右側が21世紀プログラム。ここではオーダーメードで自分に適切なものを専攻しながら,自分の専門を作っていくというような形の学際的な視点が入っています。ここに描いてあるようなプロセスを辿(たど)っていくということで,時系列的に流れを書いています。

 6ページは,これまでどういうふうに21世紀の学生諸君が自分なりに交換留学へ出掛け,あるいは語学研修等をやってきたかを書いてありますが,右側を御覧ください。それぞれの部局の学生に比べて,主体的に交換留学に出掛ける,あるいは外国に語学研修に出掛けるという割合が非常に多い。両方合わせますと,約半分以上が外へ出掛けていって自分を磨くという姿勢を持っている学生が入ってきていることがわかると思います。

 7ページにはどのように選抜しているのかということが書いてあります。まず願書ですが,調査書,志望理由書,活動歴報告書などを出させます。25名の募集定員ですが,第1次選抜で3倍ぐらいに絞り込みます。11月頃に第2選抜を行いますが,ここでは講義をきいてレポートを作成する。講義では必ず人文系,社会系,自然系の3テーマについて,教員が50分の講義をいたします。その講義した内容について,70分の間でレポートを書き上げるというようなものを三つ繰り返します。

 2日目は,大体2時間半のグループ討論をやります。それから小論文,個人面接ということで,小論文作成については,前日で聴いた講義テーマから,その日に渡される三つの講義の中から自分が選んだテーマに基づいて,約4時間半かけて作成いたします。かなり長い時間かけて,理解力,自己表現力,洞察力など,多様な視点からの思考・判断力を捉えるような入試のやり方をしております。

 それから,合格者を11月に発表いたしますが,11月に合格してから入学までの間には,自分たちでこういうような課題をしっかりと学びなさいという形で,幾つかの入学までの課題を提起しています。

 8ページでは,具体的に進め方を説明いたします。出願資料としては,志望理由書,自己の適性や抱負,それから活動歴報告書,中学からの活動を記載,各種活動,表彰等をしっかり書き込んでもらい,それらを参考にしてアドミッション・ポリシーや求める学生像との合致度を評価します。大体4段階で評価いたします。面接との関係を考慮し,3倍程度に絞り込みます。今年度の例では73名,約2.8倍に絞り込みました。

 第2次選抜は,講義としては人文系,社会系,自然系の3テーマを約50分受講し,その後,70分でレポートをまとめる。レポート審査員は1講義を3人で審査します。ここで特徴的なのは,論文審査,レポートについては3名で審査するので3名の教員は必ずこの講義を聴くということです。それから,2日目に集団討議に関わる15名の教員も必ずこの講師の授業内容を学生とは違う教室から聞くという,制度を取っております。

 2日目が,グループ討議150分。5グループに分かれまして,1グループ15名程度。三つの講義からまず自分なりに二つのテーマを選んで討論します。そのとき,まず1回目の発言は2分と制限させています。その後,自由討議させるというような形で進めています。それから,小論文が270分。この小論文作成の間に個人面接を行いますが,1人15分程度呼出し個人面接を行うという形で進めています。

 論題は,予習をさせないために,また自分なりの構想案をこの4時間半の中で書き上げさせるという意図のもとに,当日の朝,渡すようにしています。

 どういうテーマで講義をしてきたかということですが,例が書いてあります。受験生は4時間半の中で論文を作成しますが,「楽しく受験することができた」とか,「大学の講義を聴けただけでも非常にかいがあった」と受験生は受け止めているようです。

 さて,21世紀プログラムの学生はオーダーメードだということですが,どれぐらいの部局を渡って,自分なりに幅広く学んでいるかというと,12期生までを整理いたしましたが,大体,3ないし5学部にわたって学んでいます。平均3.5を超えているかと思います。

 次には参考までにですが,12ページには,21世紀プログラムの卒業論文テーマを掲げていますが,既存の学部テーマでは見られないようなユニークな卒論テーマになっているかと思います。最終的にはこういう先生方が関わっていますということで,各部局の指導教員の名を挙げています。

 私たちが一番この21世紀プログラムで危惧しているところは,6割~7割が結果的に女性だということです。男性が最終的に優秀でないのかというと,そうではなく集団討議においては女性の方が非常に元気がありまして,その辺りが高く評価されているのかなと感じています。その一方で,しっかりとした問題意識を持って入ってきている学生は女性の方が多いような感じもいたします。それを今後どういうふうに改善展開していくかというのが一つの課題になっています。

 13ページには,卒業生の進路状況が書いてありますが,いろいろと多様なところへ出かけています。アドミッション・ポリシーとか理念にマッチした人材が育っていると私たちは自負しております。

【安西座長】  どうもありがとうございました。

 次に参りますが,早稲田大学の取組につきまして,恩藏直人早稲田大学理事,この会合の委員でもいらっしゃいますけれども,恩藏委員からお話をお伺いしたいと思います。

【恩藏委員】  お手元の資料3-3を御覧ください。また,大学の入試のガイドブックがありますので,これも併せてお目通しいただければと思います。

 まず,3-3の1ページですけれども,早稲田大学における入試の現状について全体像をまとめさせていただいております。一般入試と大学入試センター利用と,それ以外のところにつきましては黒い枠で囲ってあります。

 下のグラフとの比較をしていただくと分かりやすいのですが,一般入試が55.4%,そして大学入試センター利用が3.7%,この二つで約6割の学生を受け入れております。それ以外が自己推薦,AO,指定校推薦等々でございます。例えば自己推薦,一つの例として,社会科学部を御覧いただきます。ガイドブックの172ページです。

 大変字が小さくて恐縮ですけれども,172ページの一番下の方に社会科学部の自己推薦入学試験のポイントが説明されております。「高等学校生活での様々な活動記録を基に,出身学校の推薦によらず自己推薦できます」とあります。できれば,こうした入試を利用して,都道府県から1人以上受け入れていきたいと大学としては考えています。

 その下に,どういう学生を我々が受け入れたいかということで,1,2,3,4とあります。一つは評定平均が4.0ということで,学力での保証をしております。また,(4)のところに学芸系ないしはスポーツ系,生徒会活動,あるいは資格とか,様々な特徴を持った学生を受け入れたいということです。

 そして,もう一つ,AO入試ですけれども,これにつきましては173ページの政治経済学部を見ていただくと分かりますように,かなり総合的に評価をして受け入れております。例えば,理解力・分析力・思考力・表現力を身に付けようとする積極的な人を,書類・TOEFL・論文・面接で丁寧に評価して受け入れるということを行っております。

 いずれにしても,大学としては多様な学生を受け入れたいということで,現在4割ですけれども,これを今後どうしていくかについて検討しております。

 次のページを御覧ください。多様な入試に対する評価です。入学後の成績について,先ほどの他の大学の御発表にありましたように我々も追跡して評価を行っております。GPAという評価ですけれども,最も高い入試区分がAO入試です。特に国際教養学部のAO入試で入った学生は極めて成績が高い。当該学部の先生方がこぞって彼らは優秀であるという高い評価をしております。次が指定校推薦です。いわゆる一般入試とか大学センター入試ではない,その他の入試で入学した学生たちが高い評価を得ていることが分かるかと思います。

 次に,入試による学生層の違いについてポイントだけを書かせていただきました。AO入試は受験学部を第一志望ということを要件としておりますので,やはり目的意識とか意欲の高い人たちが出願しております。特に政経学部におけるAO入試の場合ですけれども,途中で辞めてしまう中退率が際立って低い,逆に言うと,ほとんど辞める人はいません。

 指定校推薦では,全国の高等学校を対象としており,必然的に地方出身者が多い。また大学入試センター試験においても一部,受験のときに早稲田に来なくてもいいような制度もありますので,地方出身の学生の割合が高いです。自己推薦は,先ほど申し上げましたように,いわゆる評定平均プラスアルファです。何か特色を持った,あるいは個性を持った学生が出願してきております。

 そして,附属・系属ですけれども,大学の建学の精神とか,理念といったものを中高の段階から教育を受けて,受験勉強では得られないほかの部分での特色を出しています。特に下に書きましたけれども,高等学院では第二外国語,あと本庄高等学院では卒業論文などを課しております。特に英語教育に力を入れている附属・系附属校もあったりして,入学段階でTOEICが800点を超えるような学生がかなりいるという,そういう実績もございます。

 その下ですが,(3)多様な入試制度を運営する上での課題です。まず一つは教員の負担というのが大きな課題であり,出題・採点・面接などを年間複数回行う場合には,どうしても特定分野の教員への負担が集中するということがあります。

 また,AO入試や自己推薦入試などを行うと,書類が多様で,評価に手間が掛かったりして,その整理だとか手続によって職員の負担も当然増えていきます。

 客観的な評価も無視できない課題になると考えています。1点刻みではありませんので,どこで線を引くかという点が課題かと思います。特に,その下との関連で,受験生・保護者が合否の判定結果に納得しないなんていうことも考えられるかもしれません。例えば,面接で落とされた場合,なぜ我々は落ちたのですかという,そうしたことですね。幸い早稲田大学は,長い経験,歴史があって,大きな問題には直面しておりませんが,急きょこういう入試を導入すると,もしかしたら課題として浮上するかもしれません。

 あと,今後の方向性についてです。Waseda Vision 150というのを2012年に我々は打ち出しております。150というのは大学が150周年を迎える2032年ですが,そのときの姿をイメージして長期的な政策を打ち出して,動き出しております。その中で,やはり多様化をもっともっと進めたいと考えています。具体的には,約20%の学生を海外から採ってきたい。例えば,シンガポールナショナルというアジアの有力大学の一つは,大体20%が海外からの留学生です。そういったところをイメージして,我々は今,取り組んでいます。

 Waseda Vision 150には,13の核心戦略というのがあります。一つ一つ説明しませんけれども,13の中の1番に入試制度の抜本的改革というのが位置付けられています。ですので,大学としていかに入試改革に取り組みたいかといった意気込みを御理解いただけるかと思います。

 そうした中,既に動き始めておりまして,資料1を御覧ください。平成25年,入試開発オフィスを立ち上げております。これはいわゆる入試に関する調査だとか,方法だとか,あるいは広報も含めてなんですけれども,そういったものを司令塔として考えていく部署です。

 その下の入学者選抜オフィスというのは平成26年4月に発足しておりまして,実際にオール早稲田で,学部ではなくて早稲田全体の入試をここで動かしていこうというオフィスでございます。

 あともう一つ,右の方に平成25年の6月発足とあります,入試開発検討会です。これはいわゆる各箇所,いわゆる学部から数名メンバーとして出ていただいて,コメントをもらったり,アドバイスをもらったりする,そういう検討会です。早稲田大学では,こういったものを既に動かしています。

 お手元の資料2ですけれども,これは外国学生の推移です。既に増えておりまして,5,000人に近いですけれども,これを先ほど申し上げたVision 150では約1万人に持っていきたいと考えています。早稲田の学生,学部・大学院全部で大体5万人ですが,そのうち1万人を外国学生にしたいという計画を持っております。

 資料3は,これは日本語プログラム,外国学生の受入れプログラムがどうなっているかということです。その下は,渡日前の入試ではどうなっているかということです。御覧いただければと思います。

 そして,英語による学位プログラムですけれども,現在六つの学部と,お手元のページがないですけど,2のところです。六つの学部,政治経済学部,社会科学部,国際教養学部,あと三つの理工学部ですけれども,ここで実施しております。英語だけで学んで,そして卒業できるというプログラムです。また,大学院につきましては,13の研究科でそういうプログラムが用意されています。

 最後のところは,ミャンマーでの大学院の入試です。始めたばかりですが,一応御参考までに載せさせていただきました。

【安西座長】  どうもありがとうございました。

 最後になりますけれども,追手門学院大学の取組につきまして,福島一政副学長にいらしていただいております。お話を伺えればと思います。よろしくお願いします。

【福島追手門学院大学副学長】  追手門学院大学の福島でございます。どうぞよろしくお願いいたします。本学のアサーティブプログラムとアサーティブ入試の取組について御説明をさせていただきます。

 まず,取組の概要でございますが,目的ですけれども,今,お話がございました三つの大学とは趣が異なりまして,本学はいわゆる分厚い中間層が数多く入学してくる大学でございます。いろいろな苦労もあるわけですけれども,そもそも学習意欲や,あるいは学力が不足している学生を入ってから前向きにするということはなかなか困難なことでもございますので,本学の教育理念であります「独立自彊,社会有為」(どくりつじきょう,しゃかいゆうい)というふうに言っておりますけれども,一言で言えば,主体性を持って自分の道は自分で切り開くことができる,そういう人材を育成したいという教育理念を持っているわけですが,そういうことにのっとりまして,入試の前から高校生一人一人と向き合って,大学で学ぶ意味だとか,本人の将来のことですとか,何を学ぶかというようなことについて話し合って,その生徒に合ったアドバイスをして,その生徒自身が主体的に自らの進路を考えて決定することを促すことができるようにしたいということで,こういう制度を開発いたしました。言ってみれば,選抜型入試から育成型入試への転換を図りたいということでございます。

 このアサーティブの取組については大きく二つございまして,一つはアサーティブプログラムです。アサーティブプログラムについては三つの要素で構成されています。

 まず第1が,ガイダンスと個別面談ということでございますが,ガイダンスについてはオープンキャンパスも含めて年十数回行いますけれども,その際に希望者には個別面談をいたします。面談は全て本学の専任の職員が担当いたします。ここでは,自分を知り,大学で何を学びたいかを問い,自ら気付くように促すというふうにしています。

 この面談では,本学へいらっしゃいということは一切言わない。本人の将来を一緒に考えるというスタンスで行っております。大学進学だけではなくて,短期大学あるいは専門学校あるいは就職あるいは海外へ行くというようなこともありますので,ここでは本学にいらっしゃいということはお話をしません。

 それから二つ目に,MANABOSSという本学独自に開発したシステムでございます。ここでは基礎学力の確認と向上,それから計画的学習を習慣付けるということと,追手門学院大学バカロレアというふうに命名しておりますけれども,ここで多様な観点から考察する力を育てて,自分の意見を述べる力,あるいは他者の意見を受容する姿勢を養おうというシステムでございます。

 基礎学力の確認と向上というところでは,大きく分けて言語能力問題と非言語能力問題の問題がございまして,数学的な問題と国語的な問題,分かりやすく言えば,SPI(Synthetic Personality Inventory適性検査)というふうに御理解いただければ結構ですけれども,今のところ,前年度は850問ほど問題を搭載しておりますけれども,例えば言語能力問題のところでは,熟語ですとか,あるいは二語関係ですとか反意語ですとか,12ほどのジャンルに分けて,大体5択で問題が出まして,それの回答をしますと,正解・不正解はもちろんですが,その問題についての解説も出まして,最終的にそれぞれの領域で自分がどの程度の正解だったのかということが分かります。逆に不正解という場合には,自分の不得意分野がどこなのかということが分かるような仕組みになっております。

 それから,追手門学院大学バカロレアというところでは,例えばこんな問題を出します。「あなたは今この瞬間,存在しますか。存在するとすれば,そのことについて証明しなさい」。ここでは,多様な意見,正解は一つだけではないという問題を出して,それについて次には,追手門学院大学バカロレアバトルというのをやっています。ここでは,これに登録している高校生たちが意見をその中で言い合える,ネット上で意見を言い合うことができるということになるわけですけれども,そういう中で,ああ,こんな意見もあるんだ,こういう意見もあるんだということで,更に自分の意見を言うようなことを養えるようにしたらということで,こういうシステムを設けました。

 それから三つ目に,アサーティブノートです。このプログラムでいろいろ体験したことを記録して,後で振り返って,自分で自己成長を促すということです。このノートの使い方は,自分を主語にして記述をしてくださいということだけを原則にしています。自分はこう考えるということをきちんと書いてくださいと。

 アサーティブプログラムを受けて,本学に来たいという場合にはアサーティブ入試を受けてもらいます。アサーティブ入試は1次試験と2次試験に分けられておりまして,1次試験はグループディスカッションを行います。1グループ5~6名で約30分議論してもらいます。ここでは主体性や協調性,論理性など6項目を4段階で評価しております。これで合否を判定しますけれども,第1次試験については全て専任職員で判定するということになっています。

 それから,2次試験につきましては,基礎学力適性検査と個人面接を行います。基礎学力適性検査は先ほど御説明しましたMANABOSSに搭載している問題と同様の形式で出題をしています。いわゆる国語と数学の問題で60分,40問で前年度は行いました。それから面接につきましては,教員と職員がペアとなって,志望理由,学問に対する意欲や知的関心など5項目を5段階で評価をしました。その上で,基礎学力問題と面接の得点を総合的に評価して合否判定をしております。

 この取組を支えている要素ですけれども,一つはアサーティブオフィサーという職員の存在です。この職員は企画開発から実際の運用まで一昨年からずっと携わっておりまして,この職員がいないと,この取組はできませんでした。

 それからもう一つは,アサーティブプログラムで個人面談を行いますけれども,このアサーティブ入試を受ける場合に,個人面談を受けるということを条件にしておりますので,相当な数の高校生と面談をしなければなりません。前年度は32名の専任職員で面談をしてもらいましたけれども,今年度は54名の専任職員,いろいろな部局にまたがっていますけれども,この職員で面談をし,入試合否判定にも参加をしてもらいます。入試合否判定に参加するのはそんなにたくさんではございませんけれども,十数名に参加をしてもらうというふうにしています。

 では,この取組は一体どうだったのかということですが,前年度初めてこの取組を行いましたけれども,そこにありますように,数字的にはそういうことになっていますが,このアサーティブ入試で入学をした者が52名でございました。もう一つは,面談者のうち,入学した者の数,すなわちアサーティブ入試で入学した者は52名ですが,それ以外の入試でも合格した者がおります。例えば,それはいわゆる一般入試だったり,推薦入試だったり,指定校入試であったり,そういうアサーティブの取組を受けながら,ほかの入試で合格した者もございます。それが48名,合わせてちょうど100名になりました。

 それから,私どもの取組は存外にいろいろなところで取り上げられまして,テレビ,新聞,雑誌,講演等で,そこにありますようなところに掲載をされたりいたしました。

 苦労話というほどのことではないのですが,一昨年この取組を開発したわけですけれども,教授会では異論は一切出ませんでした。五つの学部の教授会で議論していただきましたけれども,異論は一切出ませんでした。逆に職員のところでは,受験生はずっと減ってきて,志願者も減ってきていますけれども,定員はずっと確保していて定員割れをしていないのに,何でこんな面倒くさいことをやらなきゃいかんのだということで,私の目の前では反対はしませんでしたけれども,裏に回って面従腹背を地で行くようなことをやられまして,大分苦労いたしましたけれども,実は,この取組は昨年度,大学教育再生加速プログラムに御採択いただきまして,その瞬間に手のひらを返したように,面談をやりたいと言ってきている人もいます。

 そのこと自体は結構なことなのですが,もう一つは,大学教育再生加速プログラム,昨年度から始まりましたけれども,最初の3年間は2,000万,その後3分の1ずつ減らすと伺っていたのですが,実は今年度1,500万に減らされております。これは文部科学省の責任というよりは,私は財務省が何とかしてほしいと思っております。文部科学省は一生懸命努力していただいていると認識しておりますけれども,せっかく加速しかかったのに急に減速するというのもいかがなものかと思いますので,これは是非お願いしたいと思います。

 今後のことでございますけれども,こういう入試に取り組んで,あるいはプログラムに取り組んで,その入学した学生がどうであるかという追跡調査をきちんとしないといけない。本当の成果というのは多分4年後ないし5年後にしか出てこないだろうというふうに思いますので,今年から入った学生たち,この5月,6月にかけてこの学生たちのヒアリング,それから必要であればサポートをしようと思っています。

 それから二つ目にMANABOSS,先ほどMANABOSSに搭載している問題,昨年度850問ぐらいと申し上げましたけれども,現在新たな問題を作っておりまして,今年度は今のところ,当初の段階で1,400問ぐらいにはなるということで,既に作成しております。4年後には1万問ぐらいにはしたいと思っております。なお,今のところ国語の問題と数学の問題しか入っておりませんけれども,英語や地理,歴史などについても充実をしていきたいと思っております。

 それから,今年度から本学のAO入試は全部廃止をして,このアサーティブプログラムとアサーティブ入試に集中したい。昨年度は1回しかやっておりませんけど,今年度は年2回行いたいと思っています。

 それから,ここまでやってきますと,これまでは事務局ベースでこの取組を推進してまいりましたけれども,例えば教育学や,あるいは心理学やその他の学問領域から理論的な裏打ちをしながら進めていかないと,これ以上なかなか難しいと考えましたので,まだ仮称でございますけれども,アサーティブ研究センターというものを設置して,早ければ6月に立ち上げたいというふうに思っておりますけれども,更に内容的にもきちんとできるようにしていきたい。

 それから最後に,新たな高大接続システムの開発ということで,入試が高等学校と大学をつなぐということになりますけれども,それだけではなかなか難しい。このアサーティブの取組を通じて,多くの高等学校の先生方ともお話をしておりますけれども,何か一つのシステムだけで進むということではなくて,やはり高等学校と大学がもっといろいろなことをお話して,その高等学校に合ったような形のものをやっていかないといけない。高等学校と大学が生徒を挟んで,その成長を促すことができるような仕組みをする必要があるだろうというふうに思いますので,これから新たなそういう高大接続システムについても本学独自のものとして開発をしていきたいと思っております。

 以上でございます。

【安西座長】  どうもありがとうございました。

 4人の先生方にお話を伺いましたけれども,もう一つ,個別選抜の改革に関する論点につきまして,事務局の方から説明をお願いしたいと思います。その後で御意見,御質問を受けさせていただきます。

【塩見大学振興課長】  

 資料4の方を御覧いただければと思います。本日は個別選抜に関して御議論いただくということで,今,4大学の皆様にお話を承ったわけでございますけれども,各大学における個別選抜をより多面的・総合的な評価にしていくという観点から,今後御議論いただくに当たりましての主な論点の案ということで,何点かお示しした資料を作成してございます。

 まず,この資料,5点ほど論点を示させていただいておりますけれども,この論点につきましては,昨年12月の高大接続改革の答申でございますとか,これまでの中央教育審議会をはじめとする様々なところでの議論の中で指摘されていることを抜き出したものでございます。順を追って,簡単に御説明申し上げたいと思います。

 まず1点目でございますけれども,アドミッション・ポリシーの法令上の位置付け,各大学における内容の明確化という点についてでございます。アドミッション・ポリシーにつきましては,昨年12月の答申におきまして,カリキュラム・ポリシー,それからディプロマ・ポリシーと一体的なものとして策定することが必要であるということで,それは法令上も明確にしてはどうかという御提言を頂戴しているわけでございますけれども,こうした事柄につきましてどのように考えていくべきか,また具体的な方策あるいは留意点というものについてどうお考えいただくかということでございます。

 それから,その次の丸でございますけれども,アドミッション・ポリシーをより明確なものとし,また広く発信していくという観点から,ガイドラインをお示ししてはどうかということにつきまして,これも答申を踏まえまして高大接続改革実行プランの方で提言をしているところでございますけれども,こうしたガイドラインを策定する場合に,各大学のアドミッション・ポリシーに具体的に盛り込んでいただくよう,促すような内容についてどういったものが考えられるのかということでございます。

 ここには,例といたしまして,答申でも御指摘いただいておりますことを何点か並べてございますけれども,全般的なお話といたしまして,大学としてどのような力を持つ学生を受け入れたいのかでございますとか,あるいは答申の中で指摘されております学力の重要な三つの要素というもの,ここにございますような知識・技能,思考力・判断力・表現力等,主体性・多様性・協働性というものが御指摘いただいているわけでございますけれども,こうした三つの要素を適切に評価するために,どのような具体的な方法を取るべきかということ,またどのようなレベルを要求し,またどのような比重を置いて評価するかということをそれぞれアドミッション・ポリシーの中で明確にしていただいてはどうだろうかという点についてでございます。

 その際の評価の指標といたしまして,アからオまでございますけれども,共通テストとして新しく御検討いただく大学入学希望者学力評価テスト(仮称)でございますとか,あるいは記述式や論述式の問題,高等学校時代の学習活動歴に関する資料,その中には調査書において高等学校基礎学力テスト(仮称)の結果について明記するということも含めて検討いただくことになってまいりますけれども,こうした事柄。

 さらには,エッセーであるとか本人の大学入学希望理由書,学習計画書,また面接,集団討論,プレゼンテーション,こういった多様な指標が考えられるわけでございますけれども,こうした指標と実際に評価しようとしている力との関係についてお示しいただくということも一つあるということでお示ししてございます。

 次のページを御覧いただければと思いますが,2点目の論点といたしまして,答申の中でも指摘いただいております多様な背景を持つ人を受け入れるための多元的な尺度による評価の推進ということでございまして,例えば,以下にお示ししてございますような様々な背景,あるいは様々な得意分野,能力を持つ方々をより適切に評価するための多元的な選抜の仕組みについて,どう考えるかということでございます。

 ここには,科学や芸術など分野で卓越した才能を有する者,あるいは地域に貢献したいと意欲を有する者,専門高校からの進学を希望する方,あるいは高等学校中退者あるいは学び直しをしたい社会人など,再チャレンジを志す方,様々な方々を列挙してございますけれども,こうした多様な方々を大学に受け入れて,そこで教育をしていくという観点から,どのような個別選抜が必要なのかという論点についてでございます。

 それから,その次の丸でございますが,生徒の多様な学習成果,学習活動の評価を反映するための調査書等の改善の在り方ということでございまして,調査書の現在の様式につきましては,お手元に高大システム改革基礎資料集という,このブルーの冊子を机上にお配りしてございますけれども,この中で,少し見にくいところで恐縮でございますが,一番下に答申の冊子が付いておりまして,その次のピンク色の紙を何枚かめくっていただきますと,調査書の様式の例が掲載されております。現行,こうした調査書の様式をお示しして,記述いただいているわけでございますけれども,こうした調査書の様式につきましても,より生徒の多様な能力を評価する観点から改善を考えていく必要があるのではないかという事柄についてでございます。

 それから三つ目の論点でございますけれども,選抜手法の改善ということで,これまでよりもより深い思考力・判断力・表現力等を問う手法への転換等,これを促進していく方策についてでございます。例えば,記述式,論述式を重視した手法への改善を図るということ,あるいは,個別選抜の指標でございますとか,その意図をより明確に公表していくということを通じて,入学希望者あるいは社会に対して説明責任を果たしていくということでございます。

 それから四つ目でございますが,アドミッション・オフィスの整備・強化の在り方ということでございまして,アドミッション・オフィスにつきましては12月の答申でも御指摘いただいているところでございますけれども,多面的・総合的な評価を行うためのアドミッション・オフィスに求められる機能,さらにはアドミッション・オフィサーをはじめとする専門的な人材の育成方法,更に具体的な面接等の手法,あるいは評価方法の開発をどのように進めていくかという点でございます。

 最後,五つ目でございますけれども,こうした様々な個別選抜の改革を行って,より多面的・総合的な評価を実施しようとされる大学への支援の在り方ということでございまして,そうした取組へのインセンティブとなるような支援の在り方,これは制度改正あるいは財政支援を含めてでございますけれども,どういったことが考えられるかという点でございます。

 以上五つ挙げてございますが,もちろんこれ以外にも多様な論点かあると存じておりますので,これ以外の点も含めて,幅広い観点から御議論いただければと思ってございます。よろしくお願いいたします。

【安西座長】  ありがとうございました。それでは,皆様から御意見,御質問いただければと思います。日比谷委員,お願いします。

【日比谷委員】  ありがとうございます。九州大学と東北大学に,1回に二つ伺ってよろしいですか。

 まず,九州大学の21世紀プログラムについてでございますが,女子学生が多く合格していると御説明いただいたのですが,お差し支えのない範囲で少し教えていただきたいのは,先ほどの御説明だと,特にグループ討論などで女子学生が力を発揮するので合格するというふうに伺いましたが,そもそも志望者の段階で,このプログラムに男女に大きい違いがあるのかということが1点目,それから2点目は,これは東北大学への質問ですが,九州大学のような第1次選抜,第2次選抜のような2段階を学部によってなさっているのか,それとも,そうではないかということと,それから両方に伺いたいのは,出願書類,調査書がございますが,推薦書は課していらっしゃらないという理解でよろしいのか。もしそうであれば,推薦書をお求めにならない理由を教えていただければと思います。

【安西座長】  ありがとうございます。丸野先生,お願いします。

【丸野九州大学理事】  確かに御指摘のように,入学希望者の段階から女子学生の方が多いというのは事実です。募集者と合格者の比率を考えても,やはり女性の方が何点か高いです。

 推薦書については,初めは取っておりましたけれども,その推薦書自体が非常に過大に推薦されてきている感がありましたので,もう推薦書は採用しない,評価の対象にはしないというふうに私どもは考えています。

【安西座長】  花輪先生,お願いします。

【花輪東北大学理事】  東北大学です。2段階選抜があるか,ないかということですが,原則として応募した人には全て面接をしたいというのが一番の態度です。しかしながら,やはり受け持つ教員等々の人数の制限もございますので,全ての部局ではないですけれども,1段階選抜があるところもあります。ただ,原則は全ての応募者に対しては面接しましょうという態度です。

【日比谷委員】  それは部局にお任せということですか。

【花輪東北大学理事】  そうです。

 二つ目は,推薦書,やはり私たちも課してはいません。なかなかそれ用の対策等々もあろうかと思いますけれども,できるだけそこに依存しない選抜を行いたいと。

【安西座長】  ありがとうございました。では,浦野委員,その後,小林委員,お願いします。

【浦野委員】 今,4大学のお話を聞いて,ある意味大変安心したのは,単に高大接続,大学入試のところだけの問題ではなくて,それで受け入れた人材をいかに育てていくという視点が非常に強く感じられましたので,是非その方向で最後の出口というところまでフォローしていただければと思っています。

 そんな中で,私も民間企業でございますので,例えば,二十数年前にいわゆる年功序列型から成果を重視した形で社員の評価といいますか,それで成果を上げていこうというようなことが始まったときのことを思い出すと,幾つか関連したことがそこにあって,例えば,アドミッション・ポリシーの明確化はいいのですけれども,それをどのように先生方あるいは職員の方々,全学にどうそれを浸透させていくのか,そこが非常にポイントだと思います。

 そういう意味では,東北大学花輪先生のお話は,その比率を将来3割まで上げていこうという中では,かなりそのことの浸透が職員の方,先生方に行っていると思いますが,そういった浸透のさせ方という御苦労のところのお話,少しお聞きしたいと思いました。

 それから二つ目は,こういった面談等々いろいろやっていくと,いわゆる評価者訓練といいますか,これは企業でも人が人を評価するわけですから,一定の評価者訓練というものがないと駄目です。この辺をどのようにやっていくかということで,この部分では追手門学院大学の先生にお伺いしたいのですけれども,五十何名の方々が評価する立場に立つという場合に,そういう評価者訓練というものを日常的にどのようにやっておられるかということをお聞きしたいと思います。

 それから,アドミッション・オフィスの強化ということで,これも非常に大事なことで,早稲田大学さんの例では入学センターですか,これが今,数の問題も含めて内容も格段に変わってきているようですけれども,このアドミッション・オフィスの強化という部分で何か御苦労なり,お話しいただけることがあればと思います。

 それから最後に,多様な背景を持った学生ということが,今後の大学の活力を得るには非常に必要だということが今回の答申の中にもうたわれているわけですけれども,それが単純に多様なというのが,それは外国の人であったり,年齢であったり,あるいは学んできた高等学校の普通科とか商業科とか,いろいろなことがあるのでしょうけれども,そういう多様なという意味でいくと,早稲田大学さんの場合は海外直接入試みたいなことも含めてあったのですけれども,例えば九州大学さんの21世紀プログラムは大変優れた取組と思いますけれども,多様な学生を採るという観点からしたときに,必ずしも先ほどから言っているような多様ではなくて,学力という意味での多様なということではぴったりはまると思うのですが,そういう意味で,少し違った観点での多様な入試という意味ではどういうふうにお考えか,お聞かせ願えればと思います。

【安西座長】  ありがとうございました。花輪先生,お願いします。

【花輪東北大学理事】  東北大学のアドミッション・ポリシーをどうやって浸透させているのかということですけれども,アドミッション・ポリシーそもそもが,かなり前に本学は作って,うたっております。全学のアドミッション・ポリシー,プラス各部局のアドミッション・ポリシー,2段階になっています。後者の方のアドミッション・ポリシーはほぼ毎年見直しているというふうにお考えになってくださって結構です。我々の入学試験審議会,その下の委員会等々あります。入学選抜する各部局全員が入りまして,毎年これでいいのかという議論をする中から,各教員に浸透しているというふうに私は理解しております。

 もう1点だけ,アドミッション・オフィスの充実ですけれども,自分の部局に入ってくる学生は自分たちが責任を持って採るのだということでは,部局ごとにこういう人材像があって,こういう人材を採りたいということで力を入れるというのは,これは崩したくないなと思います。

 とはいいましても,多様な入試,労力を掛ける入試をやってきておりますと,そこにアドバイスするといいますか,そこのところを研究するといいましょうか,そういう人材がアドミッション・オフィスに絶対必要なのですね。今,本学,入試センターと名前が変わっていますけれども,専任教員は3名しかいないです。この人たちがしゃかりきになっていろいろなことをやっていますけれども,やはりそこに人を配置して,各部局の負担を軽減したい。実際に試験そのものをやるのは絶対部局ですけれども,そこにアドバイスできる専門家を入れたいと。

 よくURA(University Research Administrator)といいましょうか,研究の方ではそういう人たちの必要性が出てきていますけれども,教育に関しても同じような立場の人がいるべきであるというふうに私は考えています。

【安西座長】  恩藏先生,お願いします。

【恩藏委員】  早稲田大学の恩藏でございます。早稲田大学では入学センターという組織で既に十数年動かしてきていますけれども,この入試センターは一方で毎年の入試をしっかり実施しなければいけない,そうしたミッションを持っています。

 その一方で,この資料の図を見ていただいて分かりますように,入試の改革もしなければならない。これは非常に難しくて,通常の入試をしっかりやるというのは,各学部,箇所と我々は呼んでいますが,そこと良好な関係を維持しないといけない。一方で,改革というのはいろいろな痛みが伴いますので,それを同じ組織で同時進行するのは非常に難しい。

 実は,ついこの間,大学の理事会の集中討議がありまして,非常に長い時間,入試について議論をしました。本格的に大学で新しい入試をもし導入しようといった場合には,これは入学センターだけにはもう任せられない,理事会主導で行かざるを得ないだろう,そういったような意見も出ています。

 現在,早稲田大学としては入学センターの中でうまく取り組んではいますが,もっと抜本的な話になったときには,次のステージがあるかもしれない我々は考えています。

【安西座長】  丸野先生,お願いします。

【丸野九州大学理事】  先ほどの3ポリシーの問題ですが,個々ばらばらに3ポリシーが各部局で設定されていましたが九州大学では基礎教育をスタートさせましたので,第二中期目標の中に基礎教育から専門教育に一貫した体系的なカリキュラムを構築しようとうたっていましたので,3ポリシー間の整合性をもう一度見直しましょうということで,教育企画委員会で1年かけて周知徹底し,一通り再編成しています。本当に実際にできているかどうかについては,教育担当理事が各部局を回りまして,どうなっているかチェックして,整えております。

 今後は国際化対応ということで,その3ポリシーについて,外国語で表記するようなことを,次のステップとして今年の課題に挙げております。

 それからもう一つは,御指摘のように,21世紀プログラムは確かに人材養成の点では多様化していますが,実は入試の在り方が,九大の21世紀プログラムはこういう内容で,こういうようなものと何となく知れ渡ってきており,多様性がだんだん薄れてきております。それが一番の課題ですので,どうやってそれを乗り越えていくかというのが今後の大きな課題として私たちも挙げているところです。

 それからもう一つは,アドミッション・センターですが,実は各部局のAO入試はそれぞれの部局の中で独自に行っていますが,21世紀プログラムだけはアドミッション・センターと多くの各部局からの協力体制の下に実施しています。今後,高大接続の観点から新しい入試方法を考えていくとすると,アドミッション・センターを充実させ,アドミッション・センターと部局のAO入試関係者が連携しながら,より充実させていく必要があります。アドミッション・センターの定員配置,そこを充実していきたいとの思いから総長にリーダーシップを発揮してほしいとお願いしているところです。

【安西座長】  ありがとうございました。評価者のトレーニングについて,福島先生,お願いします。

【福島追手門学院大学副学長】  先ほど54名の職員が面談をしているというふうに申し上げましたけれども,評価に実際携わっているのは十数名です。面談をするということ自体が,高校生の実態をよく知るということになりますので,この面談者に対する訓練は年2回,高校生の実態ですとか,どういう状況にあって,どういうふうにしたら彼らの意見を,考えを引き出すことができるかというようなことを研修で1日ないし半日かけてそういう訓練をやっております。

 率直に申し上げまして,評価をする場合の評価者をどういうふうに鍛え上げていくかということについては,まだ不十分だと思っています。その評価の方法についても,更にきちんとしていくのはどうしたらいいかというのは,先ほど御説明の中でも申し上げましたけれども,アサーティブ研究センターのような所で少し本学に合ったような形で,どういうことをしたらいいかということを,評価者の訓練の仕方も含めて,これから詰めていきたいというふうに思っています。

【安西座長】  ありがとうございました。

 それでは,小林委員,佐藤委員,濱口委員,山極委員にお願いします。

【小林委員】  今,いろいろな大学にお伺いしていると,アドミッション・オフィスの機能とか負荷というところが非常に大きくなるというところへの不安というものを非常に大きく感じております。

 その中で,どちらかというと,東北大学について,国立大学は皆わりとそういう傾向があると思うのですが,教員が中心になってやられていて,一生懸命広報もされていると思います。その中での入試センターの職員の役割というものが,何名ぐらいいらっしゃって,どのような役割をされているのかというのを,教えていただければと思います。

 もう一つ,追手門学院大学は多くの中堅の私立大学の参考になるような仕組みだとは思いますが,このアサーティブ・オフィサー,ある意味アドミッション・オフィサーだというふうには思いますが,この方々の育成についてお伺いしたいと思います。評価基準とか,どういう人を合格させて,どういう人を落とすのかという基準みたいなものというのは,MANABOSSの点数は分かるのですけど,面接とか,そこを含めて,何か基準を開示されているのかどうか教えていただければと思います。この2点について御回答をお願いします。

【安西座長】  東北大学の花輪理事,お願いします。

【花輪東北大学理事】  本学の入試センターですけれども,入試課という1課でありまして,1課長,1課長補佐,3係があります,3係長,3主任,それから非常勤ということで,合わせますと十二,三名だと思います。

 確かに具体的な入試問題作題等々,全部教員ですけれども,やはり一切は事務方におんぶに抱っこというところもありまして,他の都市での進学説明会,それから高校生に対する説明会等々の準備は全て事務職員が行っております。決して十分ではありません。

【安西座長】  追手門学院大学,福島先生はいかがですか。

【福島追手門学院大学副学長】  評価の基準については公表しておりませんけれども,先ほどお話の中でも申し上げましたけれども,例えば1次試験ですと,理解力・創造力・論理性・協調性・主体性というようなことを4段階で評価をしたりしています。これ公表しますと,それに沿って答えを準備してくるというのも困るというふうに思いまして,何らかの形で開示しないといかんのでしょうけど,先ほど申し上げたような幾つかについては説明会などでは申し上げていますので,全てについては今少し公表するのは差し控えているところです。

 それから,アサーティブ・オフィサーというのは,今のところオフィサーを名乗っているのは1人だけです。女性ですが,彼女の資質と,それから学んできたこれまでの実績というところから出ておりますので,これの育成というのも,次の世代の育成というのも併せてやっていく必要があると思いますので,先ほど申し上げたアサーティブ研究センターの中で,将来こういうことをやっていけそうな大学院生も将来研究員として入れるようにしたいというふうに考えております。以上です。

【安西座長】  ありがとうございました。佐藤委員,お願いします。

【佐藤委員】  浦野委員から大分質問が出ていますから,お答えいただいているのだと思いますけれども,私,私学として追手門学院大学の福島副学長に,今までアサーティブ・オフィサー,職員の問題だけれども,それについても職員の育成をどうするかというようなお話も伺ったわけですが,これはオフィサー,職員による面談の人たちというのは,これを本務とするというよりも,全体の職員の中からそういうオフィサーを選んでいくと思うのですけれども,なかなか私学として考えた場合,こういう制度を作る場合に財源というのが,捻出するのに苦労なさっていると思いますが,そこら辺のことをひとつ伺えたらと思っています。

 それで,いずれにせよ,第8期中央教育審議会大学分科会の審議では高度専門職の設置ということで,これを議論することになっているので,今までのように教員・職員という二つのカテゴリー以外のところでこういうオフィサーというのは育てていかないといけない問題ではないかと感じているものですから,そこら辺,まとめて少しお話しいただけたら有り難いです。

 また,できたら機会があれば,また日比谷委員が御出席されていますが,ICUの取組というのは常に先行しているので,一度お話を伺えたら有り難いと思っています。その点,お願いします。

【安西座長】  追手門学院大学,福島先生お願いします。

【福島追手門学院大学副学長】  おっしゃったとおり,このアサーティブ・オフィサーというものをこれから本格的な専門職として育てていく必要があるだろうというふうに考えておりますけれども,面談者が54名に及ぶわけですけれども,これは様々な課,十幾つかの課にまたがって面談についてはやってもらうということにしています。

 私,日頃から申し上げているのが,これからは大学の職員は事務職員ではなくて大学職員たれというふうに申し上げているのですが,今やっている目の前の自分の仕事は,それも本業だけれども,このように入試に手間が掛かるからお手伝いでやっているんじゃなくて,高校生や学生と直接向き合うということも本業だと。そのことが仕事の大半を占めるわけではありませんので,年に十数回,しかも仕事が忙しければそのことについては従事しなくてもいいとしておりますので,年に数回,そういう面談の機会にやってもらって,あとフォローをいろいろしてもらうということであれば,できないはずがない。

 高校生の実態を知ることによって,実際に自分の仕事はこのままではいけないのだということに気付き始めてきているわけです。そうしますと,いわゆるSD(スタッフ・ディベロップメント)ということにもつながるということで,これは意図的にやっているわけですけれども,最初は確かに少し抵抗がございました。でも,実際やってみると,これは大変面白い。面白いというのは,いろいろなことが分かる。高校生の実態が分かる。今いるうちの学生たちが,この子たちがうちの学生になる。そうすると,どういうことになるのかということを自分の頭で想像して,今の仕事をどういうふうに変えたらいいかというのが,教務の領域の職員だけではなくて,管理部局の職員たちも考え始めるということになりますので,今のところはうまくいっていると思っております。

 いずれにしても,アサーティブ・オフィサーを本格的な専門職として育成していくという仕組みはやっぱり必要だろうと思いますので,それについてもこれからまた検討していきたいと思っています。

【安西座長】  ICUの日比谷委員はいかがですか。

【日比谷委員】  新しい入試につきましては,今年の2月7日に行いました一般入試で新科目を導入いたしましたので,それについて機会があれば御説明するということで。

【安西座長】  ありがとうございました。濱口委員,お願いします。

【濱口委員】  質問多少重複すると思うのですけれども,東北大学の場合ですと,意欲・適性・好奇心をプラスアルファで測っておられると書いておられますし,九州大学の場合は,求められる学生像として自主性という評価を入れておられる。あるいは追手門学院大学の場合は,理解力であるとか創造性とか測っておられると思うのですが,そこを統一的な評価基準とかを作っておられるかどうか。評価者の主体に任せているのか,均質化しようという議論はしておられるかどうか。

 それから,評価のぶれを避ける工夫は何か具体的にございますか。この2点をお伺いしたいです。

【花輪東北大学理事】  東北大学では,全ての部局ではありませんけれども,ある部局の例を言いますと,評価のポイントを決めます。五つの観点から評価しましょう,何点満点にしましょうということで,かつ難しいのは,何チームも作らないと対応できないということがあります。そのために,必ず面接する前に各チームが集まって,ぶれないように,こういう観点からやりましょうということをやります。ある部局ではそれを入れ替えて,評価チームA,評価チームBが1人の学生に対して入れ替えてやるということもやっております。

 確かに,私たちの課題というところでも申し上げましたように,あるいは九州大学さんの方からもありましたように,なかなか情報開示になじまないような評価をしなければいけないというのは確かですので,そこはできるだけ,ぶれないような工夫というのはしているつもりであります。

【安西座長】  丸野先生,よろしいでしょうか。

【丸野九州大学理事】  濱口委員から御指摘いただいた主体性の問題ですが,3名でチームを組みながら,出題,いろいろな論文とか面接をやっていますが,その中で事前にこのような観点から,主体性を評価いたしましょうと大まかな基準は話し合っていますが,グループの中でやっていきますと当然ばらつきがあります。そのばらつきをどうするのかというのがあります。

 3名の評価のばらつきが余りにも極端過ぎた場合は, そこで調整しますが,調整すると,また個々人の良さが消えてしまうという危険性があるので,そこをどうするかというのは本当に課題として残されております。今後詰めていかなければならない問題と感じ取っています。

【安西座長】  ありがとうございました。山極委員,その後,香山委員,お願いします。

【山極委員】  二つお伺いしたいのですが,一つは,九州大学のところで21世紀プログラム,大学院進学者を見ると,だんだん減っています。これは留学する学生が増えていくということと関係があるのか,そもそもこの21世紀プログラムに入ってくる学生たちは大学院進学ではないような方向性を持っているのかという点をお伺いしたい。

 それから二つ目は,特に早稲田大学にお聞きしたいですけれども,外国人留学生の枠を設けてAO入試をするということは,これから各大学もどんどん増やしていくと思います。今後,高大接続で高等学校教育改革を一体としてやっている今の形とは別枠に,これを進めていくおつもりなのか,あるいは,それに併せてAO入試というものを変革していくおつもりなのか,そのあたりの構想をお聞きしたいです。

 とりわけAO入試というのは,例えば大学院ですとスカイプなどを使って学力を判定することはできると思います。あるいは書類で論文審査することもできると思いますが,高校生レベルですと,実際に会って面接するということは東北大学も九州大学もやっています。それを例えば海外の学生に対して行うとなると,職員が海外に行って,学生と直接会ったり,あるいはリエゾン・オフィスを設けたりして,複数の大学が協力してそういうことをやらざるを得なくなると思いますが,その辺りの将来構想はどうお持ちなのか,その点をお聞きしたいと思います。

【丸野九州大学理事】  今,山極委員から御指摘いただいた件ですが,正直言いまして二つの側面があるかと思います。21世紀プログラムを立ち上げた初期の頃は6年一貫という理想形を考えていましたので,大学院に行って初めて専門性が発揮できるという観点から,幅広い視点を持った上で大学院に行きましょうと,大学院進学を進めていました。初期の頃はその理念に燃えた学生が正直たくさん入ってきておりましたが,最近はその理念に沿った学生が減少してきたのか,あるいは学生の質もだんだんと落ちてきたというのが事実です。

 一方では,学生の質が落ちてきたというだけでなくて,高い理念に基づいて入ってくる学生は確かに減ってきましたけど,外国へ行っていろいろな経験を積んでくると,多様な道があるという気づきが生まれることで,大学院へ行くだけが私の人生ではないというような形でいろいろなところへ就職するようになった。つまり多様な視点を持ったことで結果的に大学院進学が減ってきている。その両面があるかと思います。

【安西座長】  恩藏委員,お願いします。

【恩藏委員】  海外からの学生というのはこれからまだまだ増やさなければいけないと我々は考えています。しかし,今の仕組みを大きく変えなくても,着実に伸びているんです。ですので,抜本的に何か大きく変えようということは,今現時点では考えていません。

 あと,海外に行かなければいけないという面も確かにあるので,実際,幾つかの学部では海外に出ていって,直接,受験生と面接するということもあります。あと,ネット,スカイプだとか,そういったものを利用しながら面接をするという方法もあります。面接をしないで,書類とか周辺的な情報で合格させるという枠組みもあります。

 お手元のガイドブックを少し見てください。180ページ,そこに入学試験の数が載っておりまして,例えば,180ページの上から二つ目くらいに国際教養学部AO入学試験とありまして,国外選考ですけど,100名とか,かなり大きい数字で既に動いております。現時点での枠組みで,他の学部でもできるのではないか我々は考えています。以上です。

【安西座長】  ありがとうございました。香山委員,お願いします。

【香山委員】  高等学校側の視点で質問させていただこうと思います。3点あります。1点は多様な個別選抜について,2点目は追手門学院大学のアサーティブ入試のMANABOSSについて,それからAO入試と一般入試についてです。

 まず1点目,多様な個別選抜について,例えばハーバード大学がMOOC(Massive Open

Online Course)を使って,海外の僻地(へきち)にいる非常に優秀な才能を発見し,入学させるといったようなことが新聞紙上でも話題になっておりますけれども,日本の中で高校生と大学の先生が接触して,協働的にプロジェクトを推進しつつ,実際に肌でその子の能力を見て,そして入学をさせていくといったような入試もあるのではないかなと。

 実際,地域系の学部では,大学の先生が実際に高等学校に入って,一緒にPBL (Project-Based Learning 問題解決型学習)をやる中で才能を見付けるといったような事例もあるように聞いていますが,そういった実態が全国の大学でどの程度あるのかというのを御質問したいと思います。

 また,大学の先生が高等学校に入ってこないと,高等学校教員の職能の高度化というのはなかなか進まないのではないかなというふうに思っていますが,今,教職大学院等ができつつあって,平成28年度もたくさん増えると聞いているんですけれども,多くの教職大学院は現場の教員が初年次は必ずそこに行かなくてはいけない。現場を離れて行かなくてはいけないという問題があって,有能な教員ほど行けないでいるといった実態があります。

 そういう点で,いわゆる学校拠点方式というのでしょうか,そういったようなものが本当に広がって,全国の大学,国公私立の大学が意思のある高等学校とタッグを組んでいくといったことも併せて非常に有効なのではないかと思っているのですが,その辺りのことについても,実態,見通しがあれば加えて教えていただきたいのが1点目です。

 それから2点目のMANABOSSについてなんですが,前回,私は地方の公立高等学校の代表として,地方の教育環境が厳しいというお話をしました。高等学校基礎学力テスト(仮称)の導入につきましては,今,小中でやっているペーパーベースでの学力状況調査のようなものが複数回入ってくるというイメージを考えますと,非常に現場が大変になるのではないかというのを心配していましたが,追手門学院大学のMANABOSSのお話をお聞きしながら,ウエブ上で高校生が自分の好きなときにTOEICみたいに受けていけるといったようなものとして発展するならば,地方の先生方も負担は減りますし,状況に応じて受けられますので,いいのではないかと思うようになってきました。特にそのときに是非お考えいただきたいのが,実態として,高校生といえども小3,小4の辺りからつまずいている子も相当数いるということです。

 そこで,子供たちが一体自分はどこでつまずいたかを発見できる,そういう基礎学力テストにして,その基礎学力テストで発見したつまずきを克服,改善できる何らかのシステムがあるという,それが担保されているという状況の中で高等学校基礎学力テスト(仮称)が実施されるならば,恐らく民間の知恵も相当そこへ入ってきて,多くの地方の教育環境の貧困なところでもウエブ上とかでやっていけるのではないか,補強できるのではないかと思うんですが,MANABOSSと,そういった高等学校基礎学力テスト(仮称)の関係についてお聞きしたい。

 3点目については,AO入試と一般入試ですが,高等学校の現場では,一般入試,国公立大学ではセンター試験と2次試験という仕組みにおいてオールラウンドなゼネラリストとして入試に突入させるのは厳しい,しかし,この子はこういうスペシャルな力がある,そういうときに東北大学,九州大学をはじめとするAO入試に特化していくような,そういう指導をされている実態もあろうかと思います。

 ただ,今回の高大接続システム改革会議で狙っているのは,その特定の子たちだけのためのものではなくて,日本の全ての生徒たちがいわゆるPBLといいますか,そういったものを通して21世紀型能力を開発するというところに目的があるのではないかと思いますので,全体の構想とAO入試との関係について,どういうふうに考えていかれているのか,以上3点です。

【安西座長】  少し時間が切れてまいりまして,あと河野委員がいらっしゃいますので,今の御意見,御質問について,文部科学省も含め,第1に高校生と大学生が一緒にいろいろ協働の活動をやる中から入学者選抜ができるかどうか,そういうことの例があるかということでありますけど。

【塩見大学振興課長】  失礼します。御指摘ありましたように,今,高校生と大学生が協働して,例えば総合的な学習の時間を中心に様々な課題解決学習に取り組むというふうなことも出てきております。また,スーパーサイエンスハイスクールなどにおいても,大学生あるいは大学院生と高校生が共にという活動は増えてきているところでございます。

 総合的な学習の時間の成果などを大学の入試においても評価しようという動きも出てきているということは承知しておりますけれども,具体的にどこまでそれが進んでいるか,あるいはそれ以外にもどんな手法かあるかということについては,すみません,少し今,手元に資料がございませんので,また改めて調べてお答えさせていただきたいと思います。

【安西座長】  それから,MANABOSSのことが出ておりましたけれども,いつでも高校生が受けられるのであれば,高等学校現場ももしかしたら対応できるかもしれないということなのでありますが,追手門学院大学の福島先生,お願いします。

【福島追手門学院大学副学長】  もう時間がないので,もしよろしければネットワーク上で検索をかけていただきまして,大文字でMANABOSSというふうに入れていただきますと,それが出てきますので,そこにtest001というふうに入れていただきますと,テスト画面が出てまいりますので,それで見ていただくのが一番よろしいかなと。スマートフォンでもできますので。

【安西座長】  それから三つ目が,高大接続改革全体の中でAO入試はどういう位置付けになるのかという御意見,御質問だと思いますけれども,中央教育審議会の答申ではAO入試とか推薦入試とか,そういうことの方向性を答申としては出しておりまして,この問題は大きいので,また議論できればと思います。よろしゅうございますでしょうか。

 それでは,河野委員,時間が短く恐縮ですが,お願いします。

【河野委員】  分かりました。基本的には浦野委員と小林委員がおっしゃってくださったことに非常に共感しているので,先ほど御意見を頂きましたので。あと,今日頂いている資料の中で,いろいろな能力を判断するような資料の提出ですとか,試験をするとか,いろいろありますけど,全体で,例えばある学校はこういう能力を求めているので,そのためにこの資料を提出,この履歴を提出,そしてここでは面接では確認なのか,又は違う能力を読むのかとか,全体マトリックスになったようなものがあると,外に出さなくても一つ標準になって良いのかなと思うので,もしそういうものをお持ちの方がいらっしゃったら伺おうと思ったのですが,今日じゃなくても結構です。

 一つ,一般人として,今日,すばらしいなと思ったのと共感したのが,追手門学院大学さんの育成入試というキーワードと,それから東北大学さんの応援入試,特別なことをしなくて勉強もしていてというのはすごく,これから受験をする者,高校生を持つ者にはとても有り難いメッセージだと思いました。

 以上です。

【安西座長】  もう時間が来てしまって誠に申し訳ございませんけれども,委員の皆様,個別に御意見,御質問等多々おありになると思いますので,事務局の方へいつでも寄せていただければと思います。この審議に生かしていければと思いますので,事務局オープンですので,よろしくお願い申し上げます。

 それでは,本日はここまでにさせていただければと思います。事務局から今後の予定について説明をお願いします。

【新田主任大学改革官】  次回につきましては,調整の上,追って御連絡させていただきますので,よろしくお願いいたします。

【安西座長】  高大接続システム改革,システムと名前は入っておりまして,多々いろいろな要素が絡んでおります。その全体像をつかみながら進めていきたいと思いますので,今後ともよろしくお願い申し上げます。

 どうも貴重な御意見いただきまして,ありがとうございました。また4人の先生方にもプレゼンテーションしていただきまして,厚く御礼を申し上げます。

 ここまでにさせていただきます。どうもありがとうございました。

 

―― 了 ――

 

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