高大接続システム改革会議(第1回) 議事録

1.日時

平成27年3月5日(木曜日)11時~13時

2.場所

文部科学省第二講堂(旧文部省庁舎6階)

3.議題

  1. 高大接続システム改革会議の運営について
  2. 高大接続に関する当面の主な検討課題
  3. その他

4.出席者

委員

(座長)安西祐一郎委員
(副座長)片峰茂委員 
(委員)五十嵐俊子,岡本和夫,恩藏直人,金子元久,香山真一,河野真理子,五神真,佐藤東洋士,佐野元彦,関根郁夫,長崎榮三,長塚篤夫,南風原朝和,羽入佐和子,濵口道成,宮本久也,山極壽一,山本廣基の各委員

文部科学省

(事務局)山中伸一事務次官,河村潤子生涯学習政策局長,藤野生涯学習総括官,里見朋香生涯学習政策局政策課長,小松親次郎初等中等教育局長,中岡司初等中等教育局審議官,吉田大輔高等教育局長,義本博司高等教育局審議官,佐野太高等教育局審議官,水田主任視学官,今井教育制度改革室長,新田主任大学改革官,橋田大学入試室長,他

5.議事録

(1)高大接続システム改革会議の運営について

  副座長については,安西座長から片峰委員が指名された。
  事務局から,高大接続システム改革会議の公開ついて資料1,資料2の説明があり,原案のとおり決定された。また,公開に関する規則に基づき,この時点から会議が公開された。
 高大接続システム改革会議の開催に当たり,下村文部科学大臣から以下のとおり挨拶があった。

【安西座長】  開会に当たりまして,下村大臣から委員の皆様に御挨拶をお願いできればと思います。下村大臣,よろしくお願いいたします。
【下村大臣】  第1回高大接続システム改革会議の開催に当たりまして,委員の皆様方には,お忙しいところ委員を引き受けていただきましたこと,また,本日お集まりいただきましたこと,まず感謝お礼申し上げたいと思います。
 高大接続改革につきましては,昨年12月に中央教育審議会から答申を頂いたところでございます。文部科学省としましては,これを着実に推進するため,国として今後取り組むべき重点施策である,一つ目は各大学の個別選抜の改革,二つ目に「高等学校基礎学力テスト(仮称)」及び「大学入学希望者学力評価テスト(仮称)」の実施,三つ目に高等学校教育の改革,そして四つ目に大学教育の改革といったスケジュールを明示した高大接続改革実行プランを今年1月に策定し,公表したところでございます。
 今回の高大接続改革は,1979年の共通一次試験や1990年の大学入試センター試験の導入といった大学入試の改善にとどまるということではなくて,まさに明治から始まった学制以来の思い切った教育改革,ある意味では社会改革を目指すものでございます。
 先を見通すことの難しい時代におきまして,生涯を通じて不断に学び考え,予想外の事態を乗り越えながら,自らの人生を切り開き,より良い社会づくりに貢献していくことができる人材を育てることが必要であると考えております。
 このため,我が国に長らく続いてきた学力観そのものを転換し,成熟社会にふさわしい真の学ぶ力を育成・評価できるよう,抜本的な意識改革も含めた制度改革を早急に図ることが必要であると考えております。
 学校教育におきまして,答申にもありますように,高等学校教育と大学教育,これらをつなぐ大学入学者選抜の改革による新しい仕組みにより,若者たち一人一人が高等学校教育を通じて,様々な夢や目標を芽吹かせ,その実現に向けて学び,そして努力をし,その様々な積み重ねを大学入学者選抜においてもしっかりと受け止め,それを評価し,その上に大学教育や社会生活を通じて花開かせるようにする必要があると考えております。
 具体的には知識・技能だけでなく,更に思考力・判断力・表現力,そして主体性を持って多様な人々と協働する態度など,真の学ぶ力を育成する高等学校教育,また高等学校までに培った力を更に向上,発展させ,社会に送り出すための大学教育,そしてその両者を接続するものとして,単にこれまでの暗記中心,記憶中心の知識を,知識量だけではなく,真の学ぶ力を多面的に評価する大学入学者選抜へと一体的に改革する必要があると考えております。
 本会議では,「高等学校基礎学力テスト(仮称)」や「大学入学希望者学力評価テスト(仮称)」といった新しく創設されるテストの在り方,また各大学の個別選抜の改革,多様な学習活動・学習成果の評価の在り方などを,高大接続改革の実現に向けた具体的な方策について御議論をしていただければと思います。
 これらにつきましては,高大接続改革を着実に実行する観点から,委員の皆様方には大変恐縮でありますが,今年の夏頃までに中間的なまとめを,そして年内に最終報告を取りまとめていただければ大変有り難いと考えております。
 本会議は高大接続改革という,困難でありますが重要な教育改革を実現するために,各界において第一線で活躍をされている委員の皆様方の英知を結集していただきたいということで,人選もさせていただきました。
 もう20年前から,このようなことは言われていたのにもかかわらず,これまで絵に描いた餅で,なかなか実現が果たせておりませんでした。今回は我が国の世界で活躍する人材を育てるラストチャンスとして捉えて,新しい時代に沿った高大接続について,1年,2年後ではなくて,50年後,100年後を見据えた改革をしていく必要があるということの中で,これまで中央教育審議会の会長をしていただいた安西先生に,中央教育審議会任期が終わった中,引き続き,この本会議の座長に就任いただき,また,文部科学省の顧問をお願いさせていただくことにいたしました。
 文部科学省におきましても,現在,省内あらゆるところで,この改革に向けたPTあるいは編成チームを作り,総力を挙げて高大接続システム改革について取り組んでまいりたいと考えております。
 未来を生きる子供たちのために,皆様方には前向きで,そして闊達(かったつ)な御議論をしていただき,必ずこれを成し遂げるというムーブメントを教育関係の方々にも是非共有をしていただいて,そして今の小学校6年生が大学受験をする頃には,これが完結するためにどのようなことが必要なのかについて,是非積極的に御議論により御提言いただくことを重ねてお願いを申し上げまして,私からの冒頭のお願い,挨拶とさせていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。
【安西座長】  下村大臣ありがとうございました。下村大臣は公務の御都合で,ここで御退席されます。どうもありがとうございました。

(2)高大接続に関する当面の主な課題等について

事務局から資料3-1,資料3-2,資料4-1,資料4-2,資料4-3,資料5,資料6,に基づき説明があり,意見交換が行われた。

【安西座長】  それでは,議事に沿って進行を進めさせていただきます。
 まず,検討の前提となります答申及び高大接続改革実行プランについて,事務局から説明をお願いします。
【新田主任大学改革官】  それでは,資料3-1から4-3までを御説明させていただきます。
 まず資料3-1,3-2を御覧いただければと思います。昨年12月の答申についてでございます。
 まず答申でございますが,高大接続答申は平成24年8月の諮問以来,2年5か月の審議を経まして,昨年12月に答申されたものでございます。
 資料3-1の答申概要冒頭にございますとおり,今回の答申は,教育改革における最大の課題でありながら実現が困難でありました「高大接続」改革を初めて現実のものとするための方策として,高等学校教育,大学教育及び両者を接続する大学入学者選抜の抜本的な改革を提言するものでございます。
 まず資料3-1,2ページ目を御覧いただきますと,2ページ目冒頭,克服すべき課題といたしまして1行目最後のところに,現状の高等学校教育,大学教育,大学入学者選抜が知識の暗記・再生に偏りがちであり,思考力・判断力・表現力や主体性・多様性・協働性などまで含む「真の学力」が十分育成・評価されていないとの現状の下,具体的には高等学校教育,大学教育,大学入学者選抜の一体的改革の欄にありますとおりに,一つ目の四角,高等学校教育につきましては学習指導要領を抜本的に見直し,従来教える内容について記述していたものについて,育成すべき資質・能力の観点から構造の見直しを図るとともに,課題発見や解決に向けた主体的・協働的な学習・指導方法でありますアクティブ・ラーニングの飛躍的充実を図るということ,二つ目といたしまして,高等学校教育の質の向上を図るという観点から,「高等学校基礎学力テスト(仮称)」を導入すること,二つ目の四角,大学教育につきましては,各大学において,個々の授業科目を超えて,教育課程全体としてのカリキュラム・マネジメントを確立するとともに,アクティブ・ラーニングへと質的に転換をするということ。
 三つ目の大学入学者選抜につきましては,三つ目の四角にありますとおりに,現行の大学入試センター試験を廃止し,大学で学ぶための力のうち,特に「思考力・判断力・表現力」を中心に評価をする「大学入学希望者学力評価テスト(仮称)」を導入し,各大学の活用を促進するということ。
 次の3ページ目,一つ目の四角にございます,各大学における個別選抜については,学力の三要素を踏まえた多面的な選抜方法をとるものとすること,具体的な選抜方法等に関する事項を,各大学がその特色に応じてアドミッション・ポリシーにおいて明確化すること,そして,このため,同ポリシーの策定,公表を法令上位置付けるということ,その下の白丸,大学にとって改革のインセンティブとなるような財政措置等の支援を行うことなどが提言されております。
 次の(2),グローバル化に対応したコミュニケーション力の育成・評価におきましては,英語について「読む」「聞く」だけではなく「書く」「話す」も含めた四技能を総合的に育成・評価することが重要であることから,「大学入学希望者学力評価テスト(仮称)」においては,四技能を総合的に評価できる問題の出題や民間の資格・検定の活用を行うとともに,高等学校の英語教育の目標についても,四技能に係る一貫した指標の形で設定できるよう学習指導要領を改訂するということとしております。
 また(3)学習指導要領の改訂も含めた高等学校教育改革の実現におきましては,高等学校の学習指導要領は「何を教えるか」ではなく「どのような力を身に付けるか」の観点に立ち,指導内容に加えまして,学習方法や学習環境についても明確にしていく観点から抜本的に見直すこととし,また次ページにありますように,見直しの方向の具体例,例えば高度な思考力・判断力・表現力を育成・評価するための新たな教科・科目の検討等も挙げられております。
 4ページの(4)「公平性」をめぐる社会の意識改革におきましては,現在の大学入試をめぐる「公平」の意識を改革し,多様な力を多様な方法で「公正」に評価し選抜することが必要という意識の醸成を図るため,社会的な議論を深めることが重要であるということとしております。
 なお資料3-2,答申本体の別添資料2は後ろから6枚目ですが,「大学入学者選抜改革の全体像(イメージ)」を示した図がございます。ただいま説明いたしました改革の全体像をイメージ図としてまとめておりますので,全体像のイメージとして御覧いただければと思います。
 また,資料を4枚めくっていただきまして別添資料5,最後から2枚目の資料でございますが,「高等学校基礎学力テスト(仮称)」と,それから「大学入学希望者学力評価テスト(仮称)」の難易度と大学入学者選抜の活用方策のイメージにおきましては,今申し上げました二つのテスト及び各大学の個別選抜と評価する内容,学力の三要素との関係性についてイメージが示されておりますので,御参照いただければと思います。
 以上が答申の概要でございます。
 次に資料4-1,4-2,4-3,高大接続改革実行プランでございます。
 まず資料4-1,概要でございますけれども,本プランは,資料4-1,概要冒頭にございますとおり,答申内容を踏まえまして高大接続改革を着実に実行する観点から,文部科学省として今後取り組むべき重点施策とスケジュールを明示し,体系的,集中的な施策展開を図るためのものとして,1月16日に文部科学大臣決定として公表されたものでございます。
 本プランにおきましては,概要左側にありますとおり,1番に,各大学の個別選抜の改革,2番に,「高等学校基礎学力テスト(仮称)」及び「大学入学希望者学力評価テスト(仮称)」の実施,3番に,高等学校教育の改革,4番に,大学教育の改革の四つの柱ごとに具体的な施策と実施時期を明示するとともに,改革のスケジュールが一覧できますように,資料4-2で改革に向けた工程表も添付してございます。
 具体的には,まず一つ目の各大学における個別選抜の改革につきましては,多様な背景を持った学生の大学への受入れが促進されるよう,大学入学希望者の能力・意欲・適性等を多面的・総合的に評価する大学入学者選抜に改革するという基本的な考えの下,アドミッション・ポリシーの充実の観点からの関係法令の改正や,これについて更にディプロマ・ポリシー,カリキュラム・ポリシーとともに一体的な策定を義務付けるということ。
二つ目として,入学者選抜全体の多面的・総合的を評価への転換を促進するため,大学入学者選抜実施要項の見直し等。
二つ目の二つの新テストの実施につきましては,学力の三要素を始め,これからの時代に求められる力を育成・評価するための両テストの在り方についての一体的な検討の実施等。
 三つ目の高等学校教育の改革につきましては,課題の発見と解決に向けた主体的・協働的な学びの推進とともに,「何を教えるか」ではなく,「どのような力を身に付けるか」の観点に立って,それらを育むことができるような学習指導要領の見直し。
 四つ目の大学教育の改革につきましては,アクティブ・ラーニングなどの導入による大学教育の質的転換の断行等,一体的に進めることとしております。
 また,特に二つ目の新テストの実施につきましては,資料4-2の工程表の中で,一番左の欄,2段目の「大学入学希望者学力評価テスト(仮称)」,「高等学校基礎学力テスト(仮称)」の欄では,実施内容の段では,26,27年度の下に,「専門家会議における検討」とありますが,これが本会議となります。ここにありますとおり,二つのテストの対象教科・科目,「教科型」,「合教科・科目型」,「総合型」等の枠組み,それから問題蓄積,記述式導入の在り方,CBTの導入方法,成績表示の在り方等について,27年度中に基本的な在り方について御検討いただくこととされています。
 以上が答申と,それに基づく実行プランでございます。

【安西座長】  ありがとうございました。本日は,今説明のありました答申,それから高大接続改革実行プラン,またその基本的な考え方等々について自由に御討議をお願いしたいと考えておりますけれども,まず,その議論の前提といたしまして,主な論点等について事務局から説明をお願いしたいと思います。
【新田主任大学改革官】  では資料5,資料6でございます。
 まず資料5,高大接続改革の実現に向けた基本的な考え方と主な課題について,この会議も含めまして,全体として高大接続を進めていく上での論点について記させていただいております。
 まず1番,高大接続改革の実現に向けた基本的な考え方ということで,これからの時代に社会に出て,国の内外で仕事をし,人生を築いていくために,一人一人が十分な「知識・技能」に加えて「思考力・判断力・表現力等の能力」や「主体性を持ち,多様な人々と協働しつつ学習する態度」を身に付けることが必要であるという前提に立ちまして,そのために高等学校教育,大学教育,入学者選抜の一体的な改革が必要であり,その観点から,高等学校における学習・指導方法の充実や指導要領の見直し,大学教育の質的転換や認証評価制度の改革,個別選抜の改革の推進,多様な学習活動・学習成果の評価,「高等学校基礎学力テスト(仮称)」及び「大学入学希望者学力評価テスト(仮称)」の実施,「公平性」をめぐる意識改革等が連動する「システム改革」の実現に取り組むというのが基本的な考え方でございます。
 このような高大接続改革の実現に向けた主な課題として,まず1点目の高等学校教育改革については,主体的・協働的な学びの推進,そのような指導を行う高等学校教員の養成・採用・研修の在り方,それから多様な学習活動・学習成果の評価,学習指導要領の見直し,そして「高等学校基礎学力テスト(仮称)」の導入などが論点として挙げられてくるということでございます。
 2点目の大学教育改革につきましては,大学教育の質的転換と,その支援の在り方,アドミッション・ポリシー,カリキュラム・ポリシー,ディプロマ・ポリシーの一体的な策定の義務付け等を通じた大学教育の質の向上,認証評価制度における学修成果や内部質保証の評価の在り方といったことが論点になってきます。
 3点目の個別選抜の改革の推進方策という面につきましては,アドミッション・ポリシーの一層の明確化,それから「多面的・総合的な評価」として求められる選抜の在り方,個別選抜の試験問題の改善の促進方策,アドミッション・オフィスの整備・強化の在り方,個別選抜の改革を行う大学への財政措置等の在り方といった点でございます。
 次の4点目の多様な学習成果・学習活動の評価では,生徒の多様な学習成果や学習活動の評価を反映するための調査書や指導要録等の在り方。
 5点目といたしまして,二つの新テストですが,一つ目の新テストの「高等学校基礎学力テスト(仮称)」につきましては,対象教科・科目,それから作問の在り方等につきまして,出題範囲等の在り方,それから求められる作問のイメージの明確化,難易度設定の在り方。
 また,(2)のCBT導入の在り方やテストの実施回数等の設計の在り方では,複数回かつ広範囲の難易度を実現するためのCBTの導入方法や問題の蓄積方法,それから記述式導入の方策や効率的な採点方法の在り方, (3)の試験の実施方法,それから実施体制, (4)の成績表示等の在り方, (5)の評価の活用方策としての指導方策への改善方策や進学・就職等における活用方策の在り方, (6)といたしまして,高等学校卒業程度認定試験との関係についての整理を行うこと,
これらが論点,課題となってまいります。
 2つ目の新テストの「大学入学希望者学力評価テスト(仮称)」でございますけれども,(1)の対象教科・科目,作問等の在り方ということで,対象教科・科目,「教科型」のほか「合教科・科目型」,それから「総合型」に関する具体的な枠組みについてです。特に,英語については四技能を問う試験を目指すための方策,求められる作問のイメージの明確化,難易度の設定の在り方。
 また,(2)のCBT方式の導入の在り方,テストの実施回数,実施時期等の設計の在り方ということで,先ほどと同様,複数回かつ広範囲の難易度を実現するためのCBT方式の導入方法や問題の蓄積方法,それから記述式問題の導入方策や効率的な採点の方法。
 (3)については,成績表示等の在り方などが論点,課題ということになってまいります。
【橋田大学入試室長】  続きまして,資料6を基に補足説明させていただきます。こちらの資料は,昨年12月の中央教育審議会答申の別添資料として示されたものでございます。
 1枚目でございますけれども,こちらの方は,新テストの難易度と大学入学者選抜への活用方策のイメージを示した資料となっております。
 まず,この新テストで評価すべき能力についてでございますけれども,「高等学校基礎学力テスト(仮称)」については,思考力・判断力・表現力を評価する問題を含みつつも,特に知識・技能の確実な修得を重視しております。また,広範囲の難易度とすることが想定されているというところでございます。
 一方,「大学入学希望者学力評価テスト(仮称)」につきましては,知識・技能を基盤としつつ,思考力・判断力・表現力を中心に評価するもので,選抜性の高い大学が活用できる高難易度の出題も含むことが想定されております。
 各大学における個別選抜につきましては,これらの新テストに加えまして,小論文,面接,調査書,資格検定試験などをより積極的に活用することによりまして,主体性・多様性・協働性を含む学力の三要素を多面的・総合的に評価するという全体像が示されております。
 これらを踏まえまして,新テストの難易度,範囲の在り方等について一体的な検討が必要となります。
 続いて,お手元の資料の2枚目ですが,こちらの方は今回の会議用に準備させていただいたものです。特に「大学入学希望者学力評価テスト(仮称)」で評価すべき能力等のイメージのたたき台の一例ということで用意させていただいている資料でございます。
 この新テストの具体的な作問のイメージづくり,これから進めていくところでございますけれども,それに当たりましては,先行する調査等の事例も参考にいたしまして,この思考力・判断力・表現力,どういう能力を評価していくのか,その構造についてのイメージを共有していくことが必要と考えております。中央教育審議会答申の中でも,各種調査の問題に関する知見も生かしていくということが想定されております。
 この先行調査で評価しようとしている能力等の例といたしましては,文部科学省,国立教育政策研究所で実施しております全国学力・学習状況調査がございます。この調査の主として「活用」に関する問題の基本理念といたしましては,知識・技能等を実生活の様々な場面に活用する力ですとか,様々な課題解決のための構想を立て実践し評価・改善する力などに関わる内容が出題されております。
 OECDのPISA調査でございますけれども,こちらのついては読解力,数学的リテラシー,科学的リテラシーについて,それぞれプロセスですとか能力の枠組みが示されているというところでございます。
 右端のPISAの問題解決能力調査につきましては,そのプロセスの側面として,探求・理解,表現・定式化などの枠組みが示されておりまして,それに基づく出題がなされているというところでございます。
 ここでは特に,国立教育政策研究所で行っております「特定の課題に関する調査(論理的な思考)」の部分にスポットを当てたいと思っております。3ページ目をお開きください。
 こちらの調査でございますけれども,このグローバル化の進展を踏まえ,また学習指導要領の中で思考力・判断力・表現力を重視しているという中で,特定の教科によらず,高校生の論理的に思考する力の状況を把握・分析するという観点での調査になっております。
 具体的には,この論理的に思考する過程での活動につきまして,例えば規則等を理解し適用するとか,必要な情報を抽出,分析するという6つの区分を設けまして,各活動に係る出題を出しております。それぞれの活動におきましては,この思考の過程,結論を適切に表現するというような問題も併せて出題されております。
 この調査の設計に当たりましては,PISA調査ですとか,全国調査ですとか,プラスして法科大学院の適性試験といったようなものも参考にしつつ整理されております。
 4ページ目を御覧ください。これらの枠組みにつきましては,思考力・判断力・表現力等の部分を意識した調査との関連を踏まえて設定されておりまして,一定の妥当性を持つのではないかと思っております。例えば,①から⑥の過程に表現するプロセス,これを位置付けた上で,今後のたたき台の一つとしてはどうかということも考えているところでございます。
 この調査については,小・中・高等学校段階のものではございますけれども,思考力・判断力・表現力の評価の観点からは参考になるのではないかと思っております。
 もちろん留意すべき点といたしましては,このプロセスの前提として,各教科の知識・技能の修得が不可欠であるということ,また教科等によって異なるということで,教科の特性を踏まえる必要があるということ,また検討に当たって参考にしているのが,飽くまで小・中・高等学校段階の「調査」でございますので,大学入学者選抜段階の「選抜試験」という観点で,どういう能力を考えていくのかというところも更に検討していく必要があるかと思っております。
 こういう例も踏まえながら今後,過去の試験等の良問の抽出ですとか,問題のイメージの検討を行っていくことを考えております。
 以上でございます。
【安西座長】  ありがとうございました。
 それでは,ただいまの答申,また実行プラン,論点等々説明いただきましたけれども,本日は自由討議ということにさせていただければと思います。12時45分頃までは時間が取れると思いますので,どなたでも結構ですので,御意見,御質問等いただければと思います。よろしくお願いします。
【羽入委員】  質問でございます。恐らく,この会議では実行プランを作っていくということになりますと,理念を共有することやイメージを共有することはとても重要なことだと思いますが,実際に具体化する過程でどういう問題があるかということを,できれば身近に感じたいのですが。恐らく大きな大学,小さな大学それぞれで,このような理念で既に行っているケースがあるのではないかと思います。もし時間があるようでしたら,このスケジュールの中で,そういった具体的な事例を私たちが拝聴し,そして問題点を共有する機会があれば大変うれしく思います。
【安西座長】  ありがとうございました。これは,先ほど大臣も言われましたように,7月に中間取りまとめということに,そういうスケジュールにさせていただければと思っておりますけれども,そのときまでには問題の事例発表は,あり得るのではないか。どのぐらいの具体性か分かりませんが,そういうことをできれば出していければと考えています。
 事務局の方でも,いろいろ問題については収集をしていただいていると思います。事務局,何かありますか。
【新田主任大学改革官】  今の御質問は,入試の現状等についてのデータとか,そういうことでしょうか。
【羽入委員】  調査ということをおっしゃっていました。ただ,調査ということだけではなくて,実際の事例に少しでも触れることで,私たちにとって実感が得られるのではないかという意味での質問でございます。
【新田主任大学改革官】  参考資料1を御覧いただければと思います。参考資料1で大学入学者選抜の現状等についての資料を集めさせていただきました。
 1枚めくっていただきまして,2ページ目を御覧いただければと思います。2ページ目の上の方が平成26年度の入学者選抜の実施の状況でございます。上の左の方が平成26年度ですが,水色が一般入試,濃い青が推薦入試,白がアドミッション・オフィス(以下,「AO」という。)入試,黒がその他と,このようなボリューム感で現在行われているということがございます。下の欄が,それを国立大学,公立大学,私立大学の別に分けたデータでございます。
 今度,3ページ目でございます。右側には4と5というページが打ってございますが,3枚目,3ページ目でございます。AOなどの入試の実施状況では,このような数の割合で行われているということがございます。データは大学学部数でございます。
 下の欄が推薦入試の状況ということで,こちらも学部数としては,一番左の書類審査のところから,一番右にあります事前課題等について記載されてございます。
 更に1枚めくっていただきますと,4ページ目になります。これは国立大学でございますけれども,今申し上げました入試区分ごとの募集人数の割合で,一般,推薦,AOの割合ということでございます。
 下の欄からが,これは28年度からの入試で導入される予定ということでございますけれども,東京大学における推薦入試の例。
 次のページのところが8ページ,9ページと打ってございますけれども,それぞれ上の段,京都大学が28年度から導入予定の特色入試,下の欄がお茶の水大学が28年度から導入します新フンボルト入試ということでの導入の例でございます。
 このようなところが今回の御議論いただく際の参考になるかと思います。
 以上でございます。
【羽入委員】  ありがとうございます。文字にしたり一般化したりすると具体的な状況が見えないので,何か具体的な事例があると分かりやすい。いろいろな工夫をしていらっしゃるところでは,きっと問題点も具体的に把握していると思うので,そういう事例を伺えればと思って質問させていただきました。
【安西座長】  先ほど申し上げましたように,問題のイメージといいましょうか,それがあった方が,やはり多くの方に御理解いただけるのではないかと考えておりまして。ただ一方で,これがきっと出る問題ですと受け取られてしまいますと,やはり,そちらへ向かって受験勉強とかそういうことで走りがちな,そういうこともあり得ると思いますので,ある程度慎重にはやらせていただいておりますが,かなり各大学で既に,さっきから説明のありました方向への問題というのは出しておられまして,そういうものはかなり収集しております。やはり,そういうことを土台にして考えていくべきであるとも思っておりますので,御指摘の点は全くごもっともだと思いますので,これから7月に向けて,ある程度そういう議論をしていければと思います。ありがとうございます。
 参考資料2には,これは小学校,中学校の思考力・判断力・表現力等に関わる問題例でございますけれども,またお時間のあるときに御覧いただければと思います。
【山極委員】  この委員会で話をする内容なのですけれども,高等学校,大学の教育の内容と入試の在り方ということなのですが,実際,例えば今,公立学校でも中高一貫教育ですとか,あるいは大学では飛び級の入学を認めている。これからどんどん,それが進んでいくと思います。あるいは大学のカリキュラムとしても,教養教育を何年やるかとか,あるいは修士と専門の学部を一貫してやるとか,いろいろな案が出てきています。そういうことは,この委員会では話をしないのでしょうか。
 つまり,当然のことながら内容と入試の在り方というのは,構造的な在り方ですね。義務教育をどうするかとか。高等学校,大学だけの問題ではないと思いますし,それから専門教育,とりわけ大学院をどうするかというのは,これからすごく大きな問題になってくると思うのですけれども,それによって大きく,この教育内容等が影響を受ける可能性があると思います。そういうことについても,できれば少し関連付けてお話しいただきたいと思います。
【安西座長】  私がお答えすることではないかもしれませんが,この会議にシステム会議という名前が付けてありますのは,やはり,いろいろなことが関連してくる,かなり大きな課題だということでございまして,今,山極委員の言われたことも,更に広く捉えれば,いろいろなルートで育ってくる若い人たち一人一人が,これからの時代の教育の機会を均等に得られるようにしていきたいということにもつながるのではないかと思います。そういったことも含めて,後で申し上げますけれども,この下にワーキンググループを置き,特に問題の方向と大学のテストに関する詳細について扱った方がいいのではないかと考えております。そのことも後でお諮りできればと思いますが,この会議では,もっと大きく,今,山極委員の言われたことも含めて議論させていただければ有り難いと思います。
【五神委員】  冒頭に大臣から明治以来の学制改革,社会改革というところが狙いなのだという大きなスコープが提示されました。高等学校以下の学校段階における学習の在り方が受験,すなわち入試によって制御されているシステムが,日本には定着していることは事実です。しかし,大きな社会改革のために,全体のシステムをどう見直していくかかというところには踏み込まなくても良いのかと,先ほどからの御説明を聞いていて感じております。入試制度を変えることで,学制改革あるいは社会改革全体をやろうというのが,既に答申の中で行われてきた議論だと理解してよろしいのでしょうか。
 というのは,首都圏で言いますと,例えば小学生の場合,中学入試というのは大変過熱しています。入試問題は,大学入試の問題以上にバリエーションもあり,高度化された知識を要し,難しい問題が出ている状況にあります。それが中学校,高等学校,大学での勉強にどうつながっていくことになるのか。子供が一生の中で,どこでどれだけ有効に時間を使って勉強をするかという配分を,もっと全体を見通して,ダイナミックに変えることが不可欠ではないかと思います。その点については既に議論が済んでいて,それを前提にした上での議論をここでやろうということであれば,そういう理解で臨みたいと思います。
【安西座長】  私の理解もあるかと思いますけれども,答申では今,五神委員が言われたように,どうしても大学入試のところに目標が集中してしまって,子供あるいは家庭の,あるいは場合によっては学校の目標までも,そこに集中してしまう傾向がある。それを,やはり是正していきたい。ただ,入試だけの改革ではなく,特に高等学校教育と大学教育の転換が,それだということでございます。
 高等学校教育につきましては,学習指導要領の改訂に向けて,中央教育審議会で議論が始まっております。そういうところとも連携をとって,この議論を進めなければいけないと思います。また入試,それから高等学校教育の変わっていくことで,中学等々の教育の仕方,また学びの目標も変わっていってほしいと考えております。
【五神委員】  入試を選抜した人たちのほとんどを規定の年限内に卒業させるのが,日本の学制システムの特徴になっています。学生の流動性,定員の弾力性というところが,これからの議論の視野に入っているのか,入っていないのかということで,議論の方向性も随分違ってくると思います。
 いずれにしても,かなり資金,投資の必要な話なので,それをどういうやり方にするのかというバウンダリーコンディションについてお聞きしたいということです。
【安西座長】  これは文部科学省にお聞きできればと思いますが,例えば高等学校から大学に行くとか,いろいろなところでの柔軟性というのは大分,文部科学省の方で工夫をしてくださっているように思います。そういうこととも連動すると考えております。
 文部科学省からありますか。山中事務次官,お願いします。
【山中事務次官】  この中央教育審議会の答申の中でも一番初めにありますのは,初等中等教育から高等教育まで一貫した,これからの時代に求められる力の育成ということで,ここは高等学校教育,あるいは大学の教育との接続ということで,そこにポイントが置かれております。この前提に立つのは,五神委員御指摘のとおり,幼稚園から小・中・高等学校の教育,こういうものはトータルとして考えることであり,ここでは高等学校教育のところだけ触れられていますけれども,確かな学力とは,小・中・高等学校で学力の三要素をしっかりと教育していくことになります。その評価の在り方ということで今,全国学力・学習状況調査の中で基礎的な問題と,それから応用的な問題について学力を測り,評価するという形も行われております。
 そういう形で,小・中・高等学校と積み重ね,大学も同様の形で,同じ方向に向かっていこうというときに,中間になっている高等学校と大学教育の接続部分の大学入学者選抜で,この能力の評価,学力の評価というものの在り方について抜本的に御検討いただきその方向性を示したのが,この答申であると思っています。
 その先の大学教育につきましても,山極委員がおっしゃいましたように,これ自身も,今まで学習意欲をどうするのか,あるいは大学院教育の実質化という形で長く議論されていたところでございまして,こうしたものとつながる全体的な整合性を図ることを考えますと,ここの高等教育と大学教育の接続の部分について,やはり今まで初等中等教育の方向性,あるいは大学教育,大学院教育の方向性,これと整合性を図るという形での大学入試などの改革が求められており,その方向性を示したのが,この答申であると思っております。
 これはおっしゃるとおり,全体の構造システムとして整合性を持って推進していこうというのが今の方向でございます。
【五神委員】  お伺いしたかったのは,例えば学生が入学後,別の職業に就くあるいは専門的な大学に行くなど進路の変更を希望しても,日本では国による定員管理のもとでシステムが硬直化しているため,それは容易なものではありません。すなわち,一度入学させた学生は何としてでも卒業させるようにしており,それも歪(ゆが)みの原因です。そういうところまでも変える意欲を持った議論になるのかどうかということです。大体スタンスは分かりました。ありがとうございます。
【義本高等教育局審議官】  補足させていただきますと,五神委員がおっしゃるとおり,入試の問題あるいは接続,その中の大学教育を一体的に考えた場合,定員の問題ということに行き着く要素は多分にございます。ただ,この問題については,全体として非常に大きく教育の在り方を影響するわけでございますので,私どもとしては,関連する問題として扱っていただき,その中で議論としてはしっかり,この課題として受け止めるということも視野において議論いただければ有り難いと思っております。
【金子委員】  全体,様々な大学の制度との関係が重要だということはそのとおりだと思います。ただ全般の,五神委員がおっしゃった初等中等教育との関係ですけれども,五神委員がおっしゃいましたのは,かなり進学で熱心な中学校,高等学校があって,非常にゆがみが生じているという点だと思います。それはそのとおりですが,この入試問題と初等中等教育の関わるのは必ずしもそこだけではありません。
 私は,この接続改革に至る議論を行っていた初等中等教育分科会高等学校教育部会にも出ておりましたが,やはり,日本の小・中学生全体の問題としては,一部ですが,極端に勉強する人たちが出ていることも確かに問題ではありますけれども,全体としては,むしろ学習量が減っているというところが非常に大きな問題で,社会全体としては,それが大きな問題となっています。
 特に日本の教育システムというのは,小学校,中学校で落第がありませんから,基本的な学力の保証が必ずしもできていない。その人たちが社会に出ていって,これからの日本の社会にどのような影響を与えるのかということは,やはり様々な意味で大きな問題になってくるだろうというのは非常に大きな関心でした。
 この委員会でも重要なのは,高大接続,特に入試問題と名前が付いてしまいますと,メディアとの関連もありますし,あるいはその背後には様々な受験産業もあります。様々な意味で,選抜性の高い大学への選抜というものに,どうしても話が焦点化し,集中してしまいます。私は,それはそれなりに重要だと思いますが,日本全体の子供がどういう過程で,どういう学力チェックを受けて,就職をしたり,あるいは大学へ行ったり,専門学校へ行ったりするのか。そういうシステムを全体として捉えようというのは非常に重要な観点として忘れるべきではないと思います。
 そういう意味では,「大学入学希望者学力評価テスト(仮称)」と,それから「高等学校基礎学力テスト(仮称)」を一体的に考えるということは非常に大きな意味があると私は思います。
 また,いわゆる入試問題として扱われているものも非常に重要でありますけれども,日本の子供全体の行動について,例えば10年前,20年前と比べて,どう対応していくかということは,考える際の基本的な枠組みとして捉えておくべきだと思います。
【安西座長】  今,委員の皆様がおっしゃっておられるように,とにかく入試だけを変えるという問題ではないと捉えておりますので,そのあたりは共通理解をしていただければ有り難いと思います。
【片峰副座長】  今までの御議論,そのとおりだと思います。長崎大学の場合,2年前から大学の教育,特に教養教育は大きく変え,ほとんどアクティブ・ラーニングに移行しています。それで様々な混乱もございますし,試行錯誤の最中というところですけれども,やはり分かってきましたのは,そういう新しいアクティブ・ラーニングみたいなことにきちんと対応できる学生と,なかなかそこに乗ってこられない学生は明確に分かれてきます。
 そういう意味では,先ほどから議論されていますけれども,大学だけがアクティブ・ラーニングで学習力の保証を行っても,それはなかなか難しい。そういう意味では是非,初等中等教育の改革と大学教育の改革がきちんと連動していく必要性を感じます。その一つの橋渡しのところに両システムがありますから,そこを今回みたいな形で考えるというのは非常にいいことだと,基本的には思います。
 文部科学省に対する御質問ですが,今,きちんと平成31年度には「高等学校基礎的学力テスト(仮称)」,それから平成32年度には次の導入がもう決まっているように書かれていますが,このスピード感の問題が,そのように行くのかということが一つと,それに対応して,大学としては個別学力テストの改革も進めていくことになりますが,これに関しましても,大学によっても規模も大きく違うことから,例えば一部から導入していくというやり方もありますし,一挙に全部変えていくことは,なかなか難しいでしょうし,それぞれの学部はアドミッション・ポリシー等も異なるものがあります。個別学力テストのスピード感のイメージで現時点での考え方がもしお聞きできたら議論がしやすいと思います。
【新田主任大学改革官】  資料4-2の工程表を御覧いただければと思います。資料4-2の高大接続改革に向けた工程表で,各個別大学の入学者選抜の改善の内容とスケジューリングということにつきましては,アドミッション・ポリシーに基づいて各大学において入試の改善を行っていくというスケジュール感は,アドミッション・ポリシーも含めて,ディプロマ・ポリシー,カリキュラム・ポリシーとともに規定を義務付けるのは平成27年度中の規定の整備ということになります。その後,各大学において,この三つのポリシーの策定及びそれに合った大学の入学者選抜の実施及び改善を行っていくという形に進んでまいります。
 それをサポートするために,二つ下がっていただきますと,アドミッション・ポリシーの明確化ということの支援の観点から,平成27年度中に同様にガイドラインの作成・提供も行っていくということでございます。
 それから,二つの新テストでございますけれども,こちらについては,プランの方では「高等学校基礎学力テスト(仮称)」については平成31年度から,「大学入学希望者学力評価テスト(仮称)」につきましては,平成32年度からの実施を目指して準備をしていくというところがプランで定められているということでございます。
 また,高等学校教育の改革ということで,今回と同様の学習指導要領,今御検討していただいております見直しにつきましては,平成26年度,既に諮問をして議論がスタートしておりますが,その流れにつきましては平成28年度中の答申,平成29年度の告示,その後の周知・徹底,教科書の作成・検定・供給というのを含めまして,こちらの新学習指導要領に基づく教育は平成34年度入学生からの段階実施ということになっています。
 少しつながっているところ,また早くから取り組まれるものと後から追い付いてくるものということで,それぞれこのようなスケジュール感で連動し,また動いていくということです。
【片峰副座長】  個別大学のところに大学入学者選抜実施要項に順次反映と書いてあります。その実施要項にある,AO,一般,推薦等の枠組み,全部取り払うということも書いてあります。その辺の実施要項の変更のスピード感はどうでしょうか。
【義本高等教育局審議官】  答申の趣旨としましては,やはり個別入試につきましてはアドミッション・ポリシーを明確にし,それに基づいて,どのような能力を求め,水準を求めるか,あるいはそれに連動した評価,あるいはその選抜の在り方を決めていくということになりますので,平成27年度中にアドミッション・ポリシー,ディプロマ・ポリシー,カリキュラム・ポリシー,三つのポリシーを義務化するという法令の位置付けを行い,ガイドラインを作っていただき,それに基づいて各大学で,具体的には,それを受けてアドミッション・ポリシーの明確化を図っていただく。その上で選抜につなげていくということになりますので,大学入学者選抜実施要項については毎年度改訂をしておりますが,来年からすぐに個別入試に反映してということには,なかなか時間的には難しいと思いますけれども,平成29年以降については,今のスケジュールに行えるかと思います。
 ただ,片峰委員御指摘のように,学部の状況が違いますし,また新テストの導入の時期,あるいはCBT(Computer Based Testing)方式を導入するかの問題の設定,あるいは範囲も変わってまいりますので,順々の手だてということに合わせて,大学入学者選抜要項あるいは個別入試の在り方も関連してくると理解しています。
【長塚委員】  大学の委員の先生方の御意見が続きましたので,高等学校の視点からお話します。
 大学の方の課題認識は,特に社会との関係で,これから大学教育も変えなくてはならないということは承知の上で,決して大学入試の入り口を変えることが今回の目的ではなくて,むしろ出口が変わっていくような,またそのプロセスとしてのカリキュラムを変えていくことが必要なので,入試も変えるということだと思います。高等学校側からしますと,入り口だけ変えて,入学したら今までと余り変わらないとか,出口も余り変わらないということでは困るわけで,本気になって高等学校側の生徒が,あるいは高等学校が,これは入学してから必要になるのだという意味で高等学校教育を変えていく,あるいは入試も変わるというような本気の覚悟を示していただくのは大学側の,まさにディプロマ・ポリシーなり,カリキュラム・ポリシーがよりしっかりして,そのためにアドミッション・ポリシーがあるのだということを明確にしていただく必要があります。入り口だけ変わることになりかねないおそれもあるわけです。その三つがそろって初めて社会の認識や覚悟も変わっていくと思いますので,よろしくお願いしたいと思います。
 また,文部科学省の方でスケジュールを示していただいているのですが,大事なことは,やはり手順をしっかりと踏むことだと思います。大学入試が変われば高等学校教育も必然的に変わります。でも,実はこれは,高等学校教育というのはその前の3年間なり,あるいは中等教育の前半なり小学校教育があって,その教育が変わって初めて入試に対応できるのであって,相当長い時間がかかると思います。もちろん,これは最短距離で行ける場合のスケジュールが示されていますけれども,それを目指すということは大事です。2020年を目指すとおっしゃっていましたから,手順が大切であり,やはり高等学校の特に教員が,自分たちも受けたことのないような教育の方法論にこれから転換しようとしているわけですから,これは相当に,現場の手探りが続くだろうと思います。入試問題が示されても,それに対応するような教育はどうするか,日頃の教育はどうするかということは,日々手探りの積み重ねがないと,これはたどり着けないと思います。
 手順をしっかりと踏んで,教員のスキルも上げていくようなことも踏まえて,入試改革のところまでたどり着けるようにしていただきたい。慌てないでやらないと,実はこの改革は現実化しない,実現しないのではないかと心配をしております。
 最後に,私も初等中等教育分科会高等学校教育部会の方にいた関係でいうと,何らかの教育改革をすると,どうしても教育をする側,学校とか,あるいは教員側の視線で改革が進むかのように思いますが,当事者は生徒ですので,生徒がどう認識を変えていくか,生徒の学び方がどう変わっていくかという生徒の立場を,やはり,しっかりと捉えていく必要があります。生徒は,先ほど話した手順の問題と絡むのですが,いきなり入試が変わって慌ててしまうのは今の小学6年生からということになりますので,生徒が本当に変わるような,生徒にとってそれが必要だと思えるような,我々の広報も大事だとありましたけれども,そういう進め方をしていく必要があり,また,生徒自身のこの変化が将来の日本の変化になるわけです。
 実は高等学校の者ですと,高等学校の立場で語ったり,教師の立場で語ったりしてしまうということがついついあるものですから,生徒の立場で,生徒が困らないような進め方を是非していきたいという思いで述べさせていただきました。
 以上でございます。
【安西座長】  ありがとうございました。大学の教育,出口,社会との関係等々から入らないといけないのではないかということもそのとおりでございまして,再三でございますが,入試のところだけ変える改革を志向しているわけでは全くないと考えております。そういう意味で大学には,その出口のところと,それから教育のカリキュラムの内容の組立て,あるいはそこから来たアドミッション・ポリシー,あるいは入学者選抜の在り方という方向で考えていただく必要があると思います。
 また小・中学校段階につきましては,例えば全国学力・学習状況調査で既に,いわゆるB問題が入っておりますけれども,むしろ高等学校進学率が98%という状況にあって,高等学校での学びの分布といいましょうか,そういうことをどう捉えるのかが非常に大きな課題になっている中で,今おっしゃったように初等中等教育と高等教育のそれをきちんと,全体の手順を踏んで見ながら進めなければいけないというのはそのとおりだと思います。また生徒の視点というのも全くおっしゃるとおりで,答申をまとめておりましたときには,やはり,そのことは多々ございました。
 特に高等学校を卒業して大学に行く生徒だけではなく,むしろ高等学校を卒業して就職をする生徒さんも多いわけで,そういう生徒さんのことまで考えながら,全体の改革を進める必要があると思い,答申の方は進めてきました。
【恩藏委員】  早稲田大学の恩藏でございます。各委員のおっしゃることを私も聞いておりまして,ほとんど同じような思いを持っています。入試だけではないということです。
 多分,多くの大学がこの数年,変化に対応して教育内容を変えてきていると思います。早稲田大学も大変大きな改革に取り組んで,今進行中でございます。
 ただ,十分に手が着けられていないところが入試です。入試というのは一大学だけの努力では,やはり,なかなか大きな改革はできない。これは多分,幾つかのハードルがあるからだと思います。例えば学習指導要領の問題があったりとか,あるいは英語の問題があります。先ほどの羽入委員の御指摘にもありましたけれども,法律の問題があったりとか,大きい大学ですと大々的に英語を取り入れるのは,限界があったりします。
 そうした中で,今回の会議を通じて,是非日本全体の中学校,高等学校,そして入試の改革に結び付けていただきたい。早稲田大学では非常に期待をしております。
【山極委員】  この際なので,この改革の理念と,それからその成果をどう考えておられるのかというのを,文部科学省の方にもお聞きししたいと思います。今,大学改革も非常に強く推進案があって進行中です。
 日本の教育というのは,教育の機会均等と公平性が理念だと思っております。ただし,高等学校の入学率が98%であり,ほとんどの中学生が高等学校に行きます。しかし大学には50%ぐらいの入学率しかない。この改革は,例えば高等学校を一つの分岐点と考えて,大学に進学をする人,大学に進学せずに職に就く人ということをきちんと考え方として分けようというお考えなのか。
 それから,この改革が実行された後には大学の進学率が上がるのか。例えば大学改革の今一番根本的な理由としては,18歳人口の減少というのがあります。それがほとんど大学進学率が上がらないということで,今の大学はどう対処したらいいのかということを求められているわけで,この高大接続改革というのは,そういう問題に対して何かの大きな回答を与えるような仕組みになっているのか,それを見込んでいるのかというとことを少しお聞きしたい。
【安西座長】  山中事務次官,お願いします。
【山中事務次官】  一つは大学ですけれども,これは今,教育再生実行会議の方でも議論しておりますが,大学自身を若者中心の大学といいますか,高等学校を卒業したら大学に進学し大学教育が終わると,あとは社会に出るという流れについては,これだけ時代の変化が激しくなると変えなければならない時期にきています。大学というのは若者中心の大学ではなくて,社会人がまた更にスキルアップするために入学し,あるいは定年で退職する前にも,今後の人生をどう生きるかということで,また大学にも入学する。そういう形での大学の機能を大きく変えていこうというのが一つの方向としてございます。これは今までも言ってきましたが,実態的にもそういう大学を目指し,大学教育,あるいは大学院教育の質の転換を図っていくこととしています。
 こうした考え方は高大接続改革でも同様であり,高越学校までの教育で伸ばすべき力と大学での伸ばすべき力はつながり,18歳の時点でどちらの方向に行くかではなくて,その後の人生の中で,また更にもう一度大学に入るという場合もありましょうし,そういうものが同じ方向性であることを実現していきたい,そういう意味での大学入試の在り方であり,18歳時点,高等学校卒業の時点で決めるものではありません。同様に,年をとってから,この入試により不利になることはないようにしたいということが基本的にはあろうかと思います。
 また,今後18歳人口が減ってくる中で,この大学入学者選抜の改革,大学進学率というのは,ある意味で違う問題になってくるのではないかと思います。この他,入学定員をどうするのかとか,あるいは先ほど申し上げましたような若者中心でない大学になった場合には,またいろいろな入学の状況もあり得るかと思います。
 例えばスペインは,高等教育進学率が八十数%といった場合非常に広い世代の大学生が入ってきているという状況があります。日本の大学もそういう方向に向かうのかどうかによって違いますし,あるいはこうした大学,入学者選抜に向かう方向性を目指しているのではないかと思います。
【安西座長】  ありがとうございました。よろしいでしょうか。
【山極委員】  実際,今でも,高等学校が分岐点になっています。そこで人生の選択を決めるような決断が,実はいろいろな指導者によってなされており,どこの大学に行くかによって随分人生の進路が変わります。
 こうした状況を,今おっしゃったように学び直しということで,いろいろな選択肢が可能であるという改革に向かうのか。それを一つの選択肢として私たちは考えたいと思っています。
 高等学校というのが今,かなり大きな選択肢に,あるいは岐路になっているからこそ,入試が非常に重要なことになっています。その改革は,そういうことを解消しようとしているのか,あるいは,そこで何らかの大きな重大な決定を本人も,あるいは高等学校の先生方も,大学の教職員の方も求めているのかを,お聞きしたかったのですが,余り具体的な回答がないようですから,私は,これで結構です。
【安西座長】  これも私見を挟みますけれども,やはり今,高等学校で多様な生徒さんへの対応により,対応にも分布ができているように思われます。やはり高等学校自体の発達段階の中での役割を大事にしていかなければいけないのではないかというのが背景に一つはあるように思いますし,それからもう一つは,大学全体の今の学生数をどうするかということは,今のこの議論とは少し違うように感じられます。ありがとうございました。
【河野委員】  社会人教育というか人材育成を長くさせていただいております河野と申します。よろしくお願いします。
 私は大学入試については余り詳しくないので,四苦八苦しながら今ついていっている状態なのですが,社会からの話を少し感想としてさせてください。
 主に企業かもしれませんが,人材ビジョンを掲げると採用,育成,活躍,推進,評価という流れがありまして,10代後半から70歳ぐらいまでの社会人を組織の中で育てていくという使命がある企業が多いですけれども,まさに今回のこの資料3-1の目指す未来の姿というのは非常に大きな期待を持って,多分,私も含め,一国民は,みんな見ていくだろうと思うので,それを測ることができる入試というのに大変な興味,関心を寄せるだろうと思います。
 話を戻して,組織の中で思考,判断,表現力,これはずっと育てながら評価をしていくという仕方をしてきているので,今回これをどのように試験で評価するのかというのは非常に,社会人たちの目から見ると,とても厳しいというか,どのような問題なのかということは随分チェックがあると思います。
 もう一つ,各組織が入社というか,組織の採用試験等をするときに,ここを判断するものを独自性を持って作っていますが,各大学でも,いろいろなレベル感もありますが,レベルというよりも個性をもって人を採用,生徒さんを採用するということの中で,ここの思考力,判断力,表現力というところを温めてほしいと思います。
 それから私は女性ですけれども,本当に学び直しをしたいという短期大学卒の人,それから大卒でも大学院に行きたいという人がいます。その人たちが高校生と同じものを思考力,判断力,表現力の試験を受けるのかというのも,そこが微妙というか,少し理解できないところもあります。社会に出て,そこがもしかしたら飛び抜けていると,そこの評価が高くなるのか,そのあたりが,まだ私も試験問題とかよく分からないので,本当に一国民としての意見になってしまいますが,とにかく非常に興味,関心の深いところになるだろうと思いました。
 最後に私,ここでは書いていないのですが,公益財団法人の日本生産性本部というところでサービス産業の協議会の幹事と,あとダイバーシティ推進センターの顧問をしていますが,せんだって総理も大賞を出してくださいましたが,サービス産業に関わる人たちが非常に多いです。多分この中から育っていく人たちもサービス産業に出ていく。その中で今度ダイバーシティの組織ができていくということも踏まえて,何かその中での思考力,判断力,表現力に結び付くような問題ができればと感想を持ちました。
【安西座長】  ありがとうございました。思考力・判断力・表現力というのを厳密に定義したりしていくのはかなり難しいことだとは思いますけれども,少し間接的ですが,思考力・判断力・表現力だけを取り出して問題を作るということは,これはパズルみたいになってしまいます。やはり知識・技能がきちんとベースにあっての,そういう力だと捉えていただくべきではないかと思っております。よろしいでしょうか。
【五十嵐委員】  私は唯一,義務教育に関わる者として,この会に出席させていただいています。
 現実問題としまして,幼児教育を経て学校に来た子供たち,本当に天真爛漫(てんしんらんまん)で,本当に全身で,全力で頑張っています。その子たちを卒業して,ちょうど受験に苦しんでいたり,社会に出るという卒業生が遊びに来たりして話すときに,いつも感じますが,本当にこれでいいのかということです。やはり現実としては入試,受験があり,それに苦しんでいます。今までは生きていくための力ということで,いろいろな工夫をして育てていった子供たちも,でも,やはり受験があるからということが出てきます。
 特に,間もなく3月11日を迎えますけれども,あのような大きな災害があったときに,一つのマニュアルに添った答えが解決するものではない,そういうことは全員が気付いたはずなのですが,いまだに大人の勝手で,未来を生きるのは子供たちなのに,大人たちはやはり,私もそうなのですが,ペーパーテストで入試を経て,ペーパーテストでいろいろなことをやってきたものですから,世の中に出回っている教材も正解を求めるような教材であったり,どうしても,そういう学力観が抜け切れないと思います。
 このため,今,幾つかの大学で随分工夫をされていたり,いろいろなことをお聞きしますが,それでも,まだ世の中は入試があって,試験があって,ペーパーテストがあって,塾があってということが,まだまだあるのではないかと思います。でも,生きていくのは子供たちなので,大人の論理では駄目なのではないかということを常日頃思っています。
 そこで本校では,今,先ほどあったのですが,経験していないことを手探りで必死になって教育を変えようと頑張っています。本校はちょうど文部科学省の研究開発学校を頂いていますので,次期の学習指導要領を目指して,今,防災教育をテーマにカリキュラムを開発しています。まずカリキュラムを開発して思うのは,どんな力が一体これからの世の中に身に付けなければいけないのだろうということです。それと教科を関連していくと,それぞれの教科が独立していないのです。全部つながるということです。ですから,子供の頭は一つなので,そういう横断的なカリキュラムに今挑戦をしているところです。
 もう一つは評価方法の開発なのですが,防災で今やっている身に付けた力は,ペーパーテストでは測れません。ちょうど文部科学省で全国学力・学習状況調査A問題,B問題があります。本校の児童の実態として,A問題よりB問題の方が正答率がいいのです。そういうこともあって,学力調査のB問題で全てが測れるかというと,それでも限界です。
 ですので,今工夫しているのは,ちょうどコンピューターによる状況設定問題というのを作っておりまして,動画であるとかイラストを明示して,こういう状況のときにどう行動するかという判断をさせて,その判断の根拠となる知識も解答させて,それで解答率を分析しているということを今手始めに行っていますが,こういう評価も,これからの子供たちの資質・能力を育てる一つの方法の可能性があるのではないかと,今手探りながら思っているところです。
 今まで行ってきた既存のものも大事にしながら,これからの子供たちの力を伸ばすために,その評価する方法はどうあるべきなのかということは,やはり,この大学入試がどうあるかということと,すごくつながりが出てくると思います。
 ですから,ここでの会議は間違いなく義務教育にも大きな影響を与えますので,上から下からと両方から,みんなで真剣に子供たちのことを考えて議論していきたいと期待をしているところです。よろしくお願いいたします。
【安西座長】  ありがとうございました。おっしゃるとおりだと思います。
【香山委員】  私は岡山県の和気閑谷高等学校の校長をしております。地方の公立高等学校の代表という感じがしておりますので,一言,御意見を申し上げます。
 個人的には,アメリカのデボラ・マイヤーの実践,イースト・ハーレムの貧困な黒人の子供たちにパフォーマンス課題を与えて,やる気を引き出して,才能を開花させていくと,そういう実践があるのですけれども,彼女のパフォーマンス評価を見て,ああ,これ,日本に欠けているな,いえ私自身に欠けているなと思い,パフォーマンス評価,あるいは協働学習,アクティブ・ラーニングについて,この7,8年,意欲的に取り組んできましたが,そういう点で今回の高大接続システム改革については,非常に興味,関心を持っております。
 ただ,地方の状況を少し委員の先生方に御理解いただこうと思って発言していますが,2003年にDeSeCoプロジェクトでキー・コンピテンシーが示されて以降,大きく世界,日本の学習指導の状況が変わってきているというのは,地方でも自覚はしております。コンテンツベースよりもコンピテンシーベースの授業をしていこうということです。この授業,あるいはこの単元は,どういう力を付けさせるための授業なのか,それを明示して,暗闇で指導者が評価するのではなくて,評価を学習者と共有していこうとする,そういった授業が地方でも徐々に広がってきているのは事実です。
 ただ,そうは言いましても,地方の教員の実態といいますのは,やはり塾が弱いですから,全てをやっています。例えば首都圏のお子さんの例ですと,先ほど五神委員が中学入試のお話をされましたけれども,私の知っている首都圏出身の大学院生に話を聞きますと,「高等学校で課題探究学習をやっていました。一方,受験学力については,数学はあの先生,英語はこの先生とちゃんと塾の先生が決まっていて,受験学力を伸ばすことを高等学校には過度に期待していなかった。」と言います。それだけの機能分化がされています。それに対して,田舎の地方の生徒は,全て高等学校の教員が何もかもやっています。そういう点で,パンクしそうな現実があるわけです。
 コミュニケーション能力を問題にするときに,よくキー・コンピテンシーに添ったコミュニケーション能力が求められていますが,現実の日本の社会ではあうんの呼吸とか,察するとか,そういう二重のコミュニケーション能力が日本人は要求されていると同じように,実は学力も,大学のAO・推薦入試対応の学力と,それから多くの大学で行われている,いわゆる知識量,知識の質を問う受験学力,この二つを満足させるために,地方の公立教員は本当に日夜頑張っているのですけれども,今回のコンピテンシーベースの入試,あるいは高等学校基礎学力テスト(仮称)になっていくときに,果たしてうまく対応できるのかというのは正直,心配はしております。
 そういう点で,地方の現状の声をしっかり受け止めていただいて,安心して教育機会の均等が図れるような方向性を出していただければ,地方の教員も元気が出ると思います。
 教員は,公正と卓越性ということを非常に意識しています。公正に関しては,やはり,全ての子供をこぼれ落とさない教育ということを非常に意識しています。一方で伸ばしたい子,意欲のある子を伸ばす卓越性も担保していく。この二つのバランスを,地方の学校でも自信を持ってやっていけるような,そういう仕組みになりますように,どうか委員の先生方,よろしくお願いいたします。
 以上です。
【安西座長】  ありがとうございました。
【佐野委員】  全国高等学校PTA連合会の会長を仰せつかっております佐野でございます。
 私,子供が4人おりまして,長男はもう28才ですが,間が大分開いて,次男が大学1年生,三男が高等学校3年生,四男が高等学校1年生です。大学1年生の次男が小学校の生活をスタートした頃に,生きる力だとか,真の学力というようなことがスタートして,相当試行錯誤をして,ようやく小学校,中学校教育の中にも定着をしていると思います。
 実は高等学校に子供たちが進学してみて,これはもう全員の保護者が思っているでしょうけれども,大きな落差を感じます。今度は知識・技能の修得というところに変わってしまって,小学校,中学校でやってきた生きる力に対する教育,そしてまたアクティブ・ラーニング的なものを取り入れた教育方法というものが,高等学校に入って,全くそれが断絶といいますか,切れてしまっています。そしてまた今度は大学に入りますと,それが復活してきています。そういう意味では,高等学校のこの3年間のところをつなぐ,埋めるというのは非常に重要なことだと思っています。
 ただ,そのときに,さっき香山委員がおっしゃったとおり,先生方がそのような指導方法ができる先生たちに変わるためには,さっきの小学校,中学校の例で言いましたとおり,10年以上の時間が掛かります。しかし,この工程表を拝見しますと,平成29年度,新しいテストを受ける子供たちが中学校3年のとき,ここから教員の養成・採用・研修の充実という線が伸びているわけです。そうしますと,高等学校1年生,2年生,3年生の30年,31年,32年といったときに,果たしてそういう指導体制がとれるのかということを,保護者としては非常に心配をしているところであります。
 それが,もしかすると,ある高等学校はいいけれども,ここの高等学校はそういう指導がなかなかできないようであるとか,例えば職業高等学校に関しては,教員養成が追い付いてから後になるみたいなことになると,これは保護者としても非常に心配でありますので,そういう意味での研修等は前倒しで是非お願いをしたいというのが1点です。
 それともう一つは,多分,高等学校の教育現場が一番社会とのつながりが薄いところだと思います。アクティブ・ラーニングのようなものとも関係するのかもしれませんが,そういう意味で,協働的な学びの推進だとか,あるいは多様な学習活動・学習成果の評価というところは学校の内部だけで完結するものではないと思いますので,そこに地域の人たち,社会の人たちが関わっていくことが必要だと思います。
 そういう意味で,私たちPTAは,そこのところを頭に入れながら,これから活動していかなくてはいけないと思っているところです。
【安西座長】  ありがとうございます。PTAも,よろしくお願い申し上げます。
【南風原委員】  新テストについてです。先ほど片峰副座長から,その準備のためのスピード感ということを言われましたけれども,もう一つ,現実的に考えると,ボリューム感といいますか,何個のテストをどれぐらい作っていくのかというボリュームも,やはり現実的な問題としてあると思います。先行例としてのPISAは,限られた科目で数年に一度,文部科学省の全国学力・学習状況調査も非常に限られた科目数となっています。
 今回の新テストをサステーナブルなシステムとしていくためには,また,それがクラッシュしないためには,そのボリューム感に応じた体制を作らなくてはいけないと思いますが,具体的に各テストが何科目掛ける年何回なのか,どのようなイメージなのかということを教えていただければと思います。
【安西座長】  これは文部科学省,お願いします。
【橋田大学入試室長】  実際,対象教科・科目ですとか,今回,教科型に加えまして合教科・科目型,総合型というところも言われております。また,実施回数をどうするのか,また,その点についてはCBTの導入とも関わって,どのように進むのか。これを,トータルに検討していかないといけないところでございますので,この改革会議等での議論,またこの後説明させていただきます具体的なワーキングでの作業等を通じて,そこのところを整理していきたいと考えております。
【安西座長】  ありがとうございました。
【宮本委員】  私は高等学校の校長をしており,高等学校の立場で発言させていただきます。
 今回のこの改革,基本的な大きな流れについては大賛成です。やはり大学,高等学校,この接続のところを核として大きく教育全体を見直していくという,その流れとしては非常にいいものだと私は思っています。
 その中で,いろいろな委員の中からもお話があったように,一つはスケジュール感の問題です。つまり,今示されている工程表は32年度まで出ておりますけれども,これだけの大きな改革というのは当然ここで終わるわけではなくて,実際にもっともっと先,時間が掛かるのが当然だと考えます。高等学校においては学習指導要領が変わって,今まだ2年生までがその対象となっている段階なのです。新しい学習指導要領の中で,今度の4月から初めて高等学校では,今の学習指導要領で3年間フルに学習が進んでいくという状況の中になります。
 そういう中で,更に新しいものをどんどん取り入れていくということで,既に次の学習指導要領が今まさに作られつつあるわけで,その過程の中で,どういう力を育てるのか,あるいはどういう力を育てて,それをどう評価していくのかという,今度新しい,また一つの基準ができてくるわけですから,そういったところまで見据えた上での改革という形を是非お願いをしていきたい。
 今,高等学校では理科と数学が先行実施で,今年卒業する生徒で,ようやく一回り終わるわけですけれども,ほかのものについては,まだ今,新しい学習指導要領に変わりつつあって,教員も今それに対応しつつ指導をしている状況の中で,その中でこの新たな改革が進んでいくということですから,高等学校が今置かれている状況を是非しっかりと念頭に置いていただきたい。実際には,この工程表のもっともっともっと先が,その改革のゴールだというぐらいのスパンで考えていくことが,この改革がしっかり根付いていくという意味で,すごく大切なことだと思います。
 それから,もう1点ですけれども,やはり高等学校は学力を付ける以外にも様々な力を子供たちに付けています。社会性だとか,あるいは,だから集団で学ぶ力ですとか,生きていく力ですとか,つまり,そういういろいろな力を付けるのが高等学校教育の役割だということもありますので,そのあたりのところも含めた形で評価をしていただけるような仕組みを是非作っていただければと思います。
【安西座長】  ありがとうございました。
【山本委員】   これまでほとんどの委員の方から御発言がありまして,我が国の教育システム全体どうするのかという非常に大きなところから,個別,高等学校,初等中等教育,それから大学教育云々(うんぬん)という話がありましたが,こういうところは,既に中央教育審議会で安西座長の下で議論がされて,それに基づいた高大接続改革実行プランが出てきて,これに向けた工程表が本日示されているものと理解しています。
 この工程表を見ますと,上から二つ目の新テストのところですけれども,専門家会議による検討と書いてあります。答申の中にも,こういった新しいテストについて専門家の知恵を集めて,これを整備していこうとなっております。
 今日の資料1でありますけれども,この会議の2ぽつの検討事項も新テストの在り方,それから個別大学が行う選抜の改革の推進方策,そして学習活動の評価の在り方,この3点について議論するということになっています。
 冒頭,座長が言われたように,今日は自由討議だということで,このバックグラウンドを共通理解するためにということでいろいろな御発言があったと思いますし,この中身については座長も冒頭言われたようなワーキングを置いて,具体のところを少し整理していただいた上で,ここに持って上がってということだろうと思います。今回はこういうことだろうと思いますが,次回以降は,やはり,こういったことについて具体的に検討していかないと,7月に中間まとめ,年内にまとめを出すことまでにはなかなかいかないのではないかと感じました。
【安西座長】  ありがとうございました。
【濵口委員】  同じような意見なのですが,やっぱりスピード感が必要で,特に7月までは一つ大きな山場だと思われますので,この資料1の2ぽつに書かれているところ,それをこの会議がどこまで責任を持ってやるかということで,実際の作業は専門会議のワーキンググループがかなりやられる可能性が高いと思いますが,ワーキンググループでの,例えば対象教科・科目,教科型,合科目型,こういう総合型の試験のやり方が,ここで議論している表現力であるとか,説明力だとか,創造性をどう作るかという議論と乖離(かいり)しないように,しっかりとした議論が必要だと思います。
 特にスピード感が必要な現状で,そこが乖離(かいり)してしまうと,我々の期待とは違う結果にシステムがなってしまうリスクがありますので,是非お願いは,この専門家会議との議論を密にさせていただいて,何が課題なのか,特に試験の問題は何なのかということを十分,議論を早めにやらせていただきたいと希望しております。
【安西座長】  ありがとうございました。
【関根委員】  私も大枠の流れとして高等学校教育,大学教育を変えていこうというのは賛成です。そういう危機感を持っております。
 この資料3-1の「目指す未来の姿」というのですか,この辺のところは,共通理解を持ってやっていきたい。ただ,そうしたとき,「高等学校基礎学力テスト(仮称)」のことについては非常に心配しています。これは基礎,基本の方になりますから,知識・技能に偏りますので,知識の暗記・再生に偏りがちという課題があります。そこに間違いなく行く可能性があり,危ない感じがします。つまり,高等学校で,これを見たときに,基礎学力を重視する学校ですと,こちらに勢力を使い果たしてしまうという危険性があり,もともとの目指す未来の姿と逆行していく可能性があります。ですから,どういう形で,そうならないようにしていくかという,その制度設計が必要ではないかと思っています。
 また,金子委員が言われていたのですけれども,小・中も含めて学力保証の制度設計が難しいと思うのですが,現在,必履修科目を中心に考えていますが,高等学校で習うところを見るのはいいのですが,実は,高等学校以前の基礎学力が定着していない。つまり,子供から見たとき,子供にとっての学力保証ができていない。小中学校の学力保証も高等学校が担うのかというと厳しいですけれども,高等学校が担わざるを得なく,現実的には担っている。
 そういう点で,この「高等学校基礎学力テスト(仮称)」については是非深く研究していただきたい。つまり高等学校教育の質の保証を,簡単に言うと必履修の高等学校1年生で行う内容だけをもって見るものではなくて,小・中の中身も含めた形で学力保証を考えていかないとならない。そうなれば,全国学力・学習状況調査をこれに合わせて変えていく気持ちでやらなくてはならない。
 実は埼玉県で来年度から始めるテストが,そういう形でIRT(Item Response Theory(項目反応理論))を入れてやっていこうということで考えています。子供の学力保証をしていくという点で考えてほしいと思います。
 それからもう一つ,宮本委員も言われたのですけれども,高等学校が行っている教育内容を是非評価してほしい。つまり,これは個別の試験になるのかもしれませんが,大学の二次試験の方になるのかもしれませんけれども,高等学校がどういう教育を行っているかを評価して,その高等学校が行った教育に対して,どういうふうに学んでいたかの両方を見てほしい。つまり,高等学校教育の内容を見ずに子供たちの学力だけで見ていくと,なかなか入試改革にはならないのではないかと思っています。
 以上です。
【安西座長】  ありがとうございました。ほかにはよろしいでしょうか。
 急がせてしまいまして申し訳ございませんでしたけれども,委員の先生方,いろいろ御意見がおありになると思いますので,個人的にそれぞれ事務局の方へお寄せいただければと思います。
 いろいろ御意見を頂きましたけれども,特にスケジュール感の問題につきましては,この工程表に従っていければと考えているところでございますが,もちろん議論を尽くしていかなければいけませんので,そことの兼ね合いになるかとは思います。ただ,申し上げておければと思いますのは,平成11年に中央教育審議会答申で高大接続答申というのが出ておりまして,その中には入試改革のこともかなり書かれておりました。しかし,それから15年余り,15年ほどたちますけれども,その答申の内容はほとんど実現されることがなかったと思います。そういう意味では,議論を尽くすと申しましても,既に15年たっているというふうには是非御理解いただければと思います。
 子供たちは1年1年,年を取っていきますので,やはり,これからの時代に向けた教育の在り方は,一方では1日も早く実現しなければいけないということは,是非御理解いただければと思います。
 それから,そのスケジュールといいますか,新テスト云々(うんぬん)と,それからもっと大きな,本日いろいろ御意見いただきましたような非常に大きな教育の,本当に大きな転換期の課題との関係につきまして,やはり,これは文部科学省の事務局におかれましても,ワーキンググループとこの会議の間のコミュニケーション等はしっかりとっていただければと思います。委員の先生方,やはり逐次御理解いただきながら進めることが大事だと思います。
 また,知識・技能云々(うんぬん)について,さっき申しましたが,知識・技能と思考力・判断力・表現力等々は分かれてしまうようにとられがちなのですけれども,そういうことはないと思います。思考力等を測るには知識・技能がないと,それは測れませんので,そのことも,なかなか理解されにくいところではありますけれども,御理解いただければと思います。
 大変貴重な御意見を頂きまして,ありがとうございました。大臣もおっしゃいましたけれども,かなりといいますか,大変大きな改革でございまして,この会議に期待されるところは極めて大きいものがございます。是非,先生方,委員の皆様,今後ともよろしくお願い申し上げます。
 もう一つ,この会議の検討体制につきまして,事務局から資料の説明をお願いして,御了解いただきたい点がございます。よろしくお願いします。
【新田主任大学改革官】  それでは資料7,資料8でございます。
 まず資料7,高大接続改革に関する体制について(案)ということでございます。今後進めていく,一番上のところですが,高大接続改革実行プランの内容です。その内容の中には,論点メモにもありましたけれども,一番左の方,高等学校教育改革の関係では,学習指導要領の在り方について,それから,そのような指導を行っていく教員の在り方につきましては,中央教育審議会のそれぞれの部会で現在検討が行われております。
 また,大学教育改革の中での大学教育の在り方ということで,特にこちらとも具体的に連動いたしますアドミッション・ポリシー等の義務化,それから認証評価制度などにつきましては,中央教育審議会の大学教育部会で検討がなされているということでございます。
 それで,こちらの方は,そこを横に見ながら検討いただく,関連性の中で御議論いただくということになります。
 また一番右の方,広報の関係でございます。これらについてもプランの実行上必要でございますがという一方で,高大接続システム改革会議に課せられております議論のスコープとしての,まず一つ目の個別選抜の改革の在り方,それから右の方の新テスト,評価の在り方ということについて御議論いただくわけですが,このうちの新テストにつきまして,丸1にございます新テストワーキンググループを設置していただいてはどうかということでございます。
 それが資料8で,新テストワーキンググループについて(案)というところを御覧いただければと思います。
 2ぽつのところで,ここで検討事項ということで,新テストの具体的な制度設計や実施方法など,その導入に際し必要な事項について専門的,具体的に御議論いただくというワーキングでございます。
 そのワーキングで検討していただいた状況の報告を受けた上で,本会議がそれを基に御議論いただく体制ということでございます。
 以上でございます。
【安西座長】  ありがとうございました。
 本日は大変貴重な御意見を頂いておりますように,この改革は入試のところの改革だけではないということです。それは共通理解にしていただければと思いますが,一方で,最初にも御質問,御意見がありましたように,やはりテストについてのある程度具体的なイメージを持っていく必要があるとも考えておりまして,その意味で新テストワーキンググループを作らせていただければということであります。
 何か御質問,御意見ありますでしょうか。内容は資料8のとおりであります。よろしいでしょうか。
 新テストワーキンググループにつきましては,資料1の高大接続システム改革会議についての4ぽつのワーキンググループのところで「改革会議は,必要に応じてワーキンググループを置くことができる」と規定しておりますので,それにより,このワーキンググループを作らせていただければと思います。
 それでは,よろしければ新テストのワーキンググループを作らせていただくということで御了承いただいたことといたします。ありがとうございました。
 用意いたしました議題等は以上でございますけれども,皆様の方から何か,特にありますでしょうか。
 それでは,よろしければ,今後の予定等について事務局から説明をお願いします。
【新田主任大学改革官】  次回につきましては,調整の上,追って御連絡をさせていただきますので,よろしくお願いいたします。
【安西座長】  よろしいでしょうか。先ほど申し上げましたように,御意見がおありになりましたら,事務局の方へ御遠慮なくお寄せいただければと思います。よろしくお願い申し上げます。
 お忙しいところ貴重な御意見を頂きまして,ありがとうございました。これで終わらせていただきます。


―― 了 ――
 

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