「学校から社会・職業への移行」に係る縦断調査に関する検討会(第4回) 議事要旨

「学校から社会・職業への移行」に係る縦断調査に関する検討会(第4回)が、以下のとおり開催されました。

1.日時

平成25年3月27日(水曜日)16時00分~18時00分

2.場所

文部科学省国立教育政策研究所第一特別会議室

3.議題

  1. 縦断調査における「能力」の把握について
  2. 自由討議

4.出席者

委員

赤林委員,石田委員,妹尾委員,中村委員,樋口委員,深堀委員(五十音順)

文部科学省

生涯学習政策局
上月大臣官房審議官,西澤調査企画課長,亀岡主任社会教育官

国立教育政策研究所
尾﨑所長,杉野次長,萬谷研究企画開発部長,小桐間国際研究・協力部長,猿田教育課程研究センター総合研究官

オブザーバー

国立教育政策研究所
笹井生涯学習政策研究部長,藤田生徒指導・進路指導研究センター総括研究官,宮﨑教育政策・評価研究部主任研究官

5.議事要旨

事務局より配布資料の確認及び資料の説明が行われた。

(1)縦断調査における「能力」の把握について

国立教育政策研究所教育課程研究センターの猿田総合研究官より,現在の文部科学省における学力プロジェクトについて説明があった。

(2)自由討議

事務局より以下4点について各委員から意見を伺った。

 

1)高校在学中,高等教育機関(大学,短期大学,専門学校)の在学中,就労後の各段階,意識に関する項目,事実に関する項目のそれぞれにつき,どのような分析目的でどのようなことを調査すべきか。

  • 学校から社会・職業への円滑な移行がうまくいっている人とそうでない人で,何がどのように違っているのかを分析目的とする。社会へ出た後まで学生時代のいろいろなものがどのように影響しているのかを調べ,政策に生かせるということではないか。
  • インターンシップや職業意識についての授業等をやるべきと中教審は指摘しているが,学校のプログラムとしてどういうものを持っているか,本人がそれをどのように活用しているか,というようなこともある。また,学生時代のアルバイトがその後の職業選択にどのように影響しているのか。
  • 学校教育の効果とあるが,調査が高校に入ってから始まるとなると,高校,大学の効果のようなイメージでいいのか。
  • 学力がどのように伸びるかはかなり学校教育に関連してくると思う。どのようなところでどのような教育をしてその結果学力は伸びるのか伸びないのか。
  • すぐ就職できればよいアウトカムなのか,それとも転職を重ねて所得が上がっていくことがよいアウトカムなのか,どのようなアウトカムをとることがよいのかは少し設定して議論した方がいい。

 

2)少なくとも高校1年生を対象として能力の測定を行う場合,学力のような認知スキル,学力以外の非認知スキルそれぞれの能力について,どのような分析目的でどのようなことを調査すべきか。

  • 高校1年生の段階で,学習指導要領にある程度沿ったテストをしていれば,その目標値のようなものはその後どのような影響を与えているか。学校側に負担を与えないという点においては,全国学力テストのような問題を使えたらよいと思う。
  • 認知的能力,非認知的能力のようなものを2時点ぐらいで測り,学習指導要領的なものは最初に1回とるようにすると,いろいろなことが分かりそうな気がする。
  • スキルに焦点を当てた形で,学力も含め,能力を見て,それを問題化していくことが大事。活用力,社会との関連性における能力をどのように使っていくのかというスキルに焦点を当てた形の問題でアセスメントしていくことにならざるを得ないと思う。
  • アメリカの調査では,大学4年の間に活用力についてはほとんど変わらなかったことが実証的に示されている。その前提であれば,この活用力の問題を使って学力の伸びを本当に見ることができるのか。学力の伸びを見たければ,教えている内容に即した問題で見なければ目的に合った調査にならないのではないか。
  • 偏差値の高くないところに入っても,よい教育を受ければそれは伸びていくものなのかということについて,高校の段階でのスクリーニングが結局その後の就職まで影響を及ぼすのかどうかという点においては,学校教育とは何かという重要なテーマになってくると思っており,高校1年生からやることの意義はあると思う。
  • 確かに,非認知能力の方は学校が変化させにくいというのはほぼ合意事項。ただ,非認知能力と学力のどちらが将来本当に役立つのか。高校1年生については最初の時点なので,学校指導要領的なものに加え,非認知能力も多少測り,高校3年生ぐらいにより広い意味のスキルについて測れたらよいと思う。

 

3)少なくとも高校1年生の保護者を対象とした調査を行う場合,どのような分析目的でどのような意識や事実を調査すべきか。

  • 親の学歴や所得などによって就職がどのように違ってくるのか。

 

4)少なくとも高校1年生の在学する高校の特色について調査を行う場合,どのような分析目的でどのような事項について調査すべきか。(統計法上,学校基本調査はデータマッチング可)

  • 職業に役に立つようなものが学校生活の中にどのように形成されているかということも1つ理論的な枠組みに入ってくると思う。学校基本調査とのデータマッチングは行った方がよいと思う。ただ,アルバイトを認めていたなどの学校の特性がわからないと本当の効果はわからない。学校レベルの情報も収集する必要があるかもしれない。
  • 学校に来る求人数や求人の種類が,進路指導や生徒に求めるスキルに転化される可能性もある。できる範囲で比較的最初の段階から求人,進路指導に関する情報は把握したらよい。

 

○実施上の注意について

  • 能力の伸びを測るには,同じ若しくは同じような学力テストを最低2回実施する必要がある。ただし,学校で何かいろいろ学習活動した後,どのように変化するのかというのは,習っている内容が違うので学習指導要領に準拠したものは2回できない。
  • 地域特性は就職の実態を考える上では重要なポイントだと思う。どのようなサンプルを選ぶかというところで考慮に入れた方がよい。
  • 高校から職業社会への移行と大学から職業社会への移行のどちらに焦点を当てるのかで全く調査票の内容が変わってくる。多くて1万サンプルということで,追跡するとなったときにどこにエネルギーを注(そそ)いでいくのかを考えていく必要がある。

 

○調査対象について

  • 高校の特色として,退学者がどうしても出てくる。高校に協力を依頼しての調査となると,中退した生徒についてはそこから追いかけられないことが起こり得る。最初から多めにオーバーサンプリングすることをやらざるを得ないと思うが,何かそこが少し矛盾している気がする。
  • 試験的調査において,高校中退者が現実的に追いかけられるのかを実施してみるとよい。最初から除くのではなくて,本当にできる可能性があるのかを試験的に実施してみる価値はあると思う。
  • 高校中退者も昔に比べたらかなりは通信制や単位制のところに行っていると思う。技術的なことで,例えば,大学への進学率が2割以下を対象にするということを文科省としてアナウンスできるのか。

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生涯学習政策局政策課