「学校から社会・職業への移行」に係る縦断調査に関する検討会(第1回) 議事要旨
「学校から社会・職業への移行」に係る縦断調査に関する検討会(第1回)が、以下のとおり開催されました。
1.日時
平成24年11月29日(木曜日)16時00分~18時00分
2.場所
文部科学省国立教育政策研究所第一特別会議室
3.議題
- 縦断調査の検討を行う経緯及び趣旨について
- 厚生労働省における縦断調査について
- 自由討議
4.出席者
委員
赤林委員、石田委員、妹尾委員、中村委員、樋口委員、深堀委員(五十音順)
文部科学省
生涯学習政策局
合田生涯学習政策局長、上月大臣官房審議官、西澤調査企画課長、亀岡主任社会教育官、土山調査企画課長補佐
国立教育政策研究所
尾﨑所長、笠井総務部長、萬谷研究企画開発部長、北風総括研究官
オブザーバー
国立教育政策研究所
笹井生涯学習政策研究部長、宮﨑教育政策・評価研究部主任研究官
統計数理研究所
土屋隆裕准教授
厚生労働省
人口動態・保健社会統計課世帯統計室 坂田室長補佐
5.議事要旨
事務局より出席者の紹介、配付資料の確認及び資料の説明が行われた。
(1)縦断調査の検討を行う経緯及び趣旨について
事務局より、会議の傍聴と議事概要の公開について確認が行われた後、縦断調査の検討を行う経緯及び趣旨について説明があった。
(2)厚生労働省における縦断調査について
厚生労働省人口動態・保健社会統計課世帯統計室の坂田室長補佐より、厚生労働省で実施している21世紀出生児縦断調査、21世紀成年者縦断調査、中高年者縦断調査の概要について説明があった。
(3)自由討議
統計法の対象となる公的統計とするかどうか
- 公的統計の方が回収率に期待が持てる、強制していくことも可能になるのではないか。
- 公的統計だけでなく、研究者という第三者の立場から行うことも考えられる。
- 公的統計の場合には回答者負担を考慮する必要があるため、何分以内で答えられるような質問、という感じで質問項目も制限されるのではないか。
調査対象について
- 高校1年生の15歳の人のみを調査対象者とすると、みんな同じ年に高校を卒業し、大学へ行く人たちも多くは4年後に卒業を迎えるため、卒業時の景気のよしあしなどが就職に与える影響を推定できなくなる。いろいろな年に卒業する人がいるように調査対象者を選ぶべきではないか。
- 仮に高校1年生から10年間追跡すると、多くの場合は学校の期間が7年間で、大学を卒業してから3年しか追えない。若年雇用の問題を分析したいのであれば、もう少し学校を卒業した後の期間を長くとることはできないか。
- 調査対象は義務教育段階まで落としてもよいのではないか。高校から始めるコーホート、義務教育のどこかの段階から始めるコーホートの二通り走らせてもよい。
抽出単位について
- 学校単位で抽出すれば回収率は高いが、卒業後や中退後の追跡が困難になるので、最初からある程度住所を押さえておく必要がある。追跡が難しい人、残っていく人のどちらにこだわるのかという問題でもある。
- 学校単位で抽出する場合、脱落サンプルのほとんどが中退者になるので、脱落サンプル分析が中退者の原因分析につながるというメリットもある。
- 中退者を追うことができたとしても、そもそも数が少なく分析に値しない可能性もある。
若者の回収率について
- 若者は移動が激しく、特に学校を出た後はほとんどの人が移動するためフォローアップが難しい。また、所在がわかっても家にいない場合が多く、把握するのが難しい。
調査結果の学校へのフィードバックについて
- 高校や大学も卒業生の動向について知りたいと思っているので、追跡調査結果に関する情報を学校へ提供するということを条件に、個人情報の保護を約束した上で卒業後の住所情報を学校から提供してもらうということはできないか。
調査結果の活用について
- パネル調査というのは集計した表を単に発表するだけではなく、パネル推計などを使うことで効果がより発揮されるが、見通しは立っているか。
担当職員の異動による継続性の問題
- 本省で実施する場合、担当職員が異動によって頻繁に変わるが、例えば10年ぐらい追跡する場合、引継ぎがうまくいく実施体制にする必要がある。
親調査について
- 本人の教育の問題だけではなく、家庭教育も含めて、親は非常に重要な役割を演じており、その影響を無視して分析することはできないので、親調査は必要ではないか。
試験調査について
縦断調査終了後の追跡について
- 大阪大学進路研究会の進路希望に関する調査では、縦断調査終了後、科研費を取って追跡調査を1回行ったが、調査対象が進路多様校だったこともあり回収率は悪かった。学校では卒業時に連絡先を把握しているので、大学で準備した調査票等のセットを学校に渡し、住所を張って郵送してもらうという方法をとった。学校ごとの抽出で、学校卒業後住所がわからず追跡が困難になるような場合は、初めから個人で抽出した方がよい場合もある。
- 東大社研の高卒パネル調査では、高3の調査のときに、卒業後も調査に協力したい人は住所を書いてくださいという形でお願いし、25%ぐらいから回答を得た。自発的な協力ということになると、回収率が落ちる可能性が高い。
教育の成果とその後の成果との結びつきについて
- 例えば算数や国語や英語が大事であるといった教育上のアウトカムについては、その教育の内部では議論されるが、それが社会に出た後にどういう影響を及ぼすのかについてよくわからないということが、真の学力は何かという論争が集中しない1つの理由だと思うので、学校教育の内容というだけではなくて、教育の成果がその後の成果にどう結びつくかということを盛り込んでほしい。
全国学力・学習状況調査やPISAとのリンクについて
- 高1から調査するのであれば、その前の年の中3の全国学力・学習状況調査の情報を抽出の母体としてサンプリングし、結果をリンクさせることはできないか。そうすれば、縦断調査で追加的に聞く項目も減り、1回目の調査負担も減る。今年から全国学力・学習状況調査で調査することになった家庭背景についても、その情報を使うことができれば有効利用になる。
- 教育の研究をしていても、学力の正確なデータを集めるのは大変で、社会に出てからや社会に出る前、出身家庭や階層の状況とを結びつけるのはなかなか難しい状況であるため、全国学力・学習状況調査やPISAの学力データと縦断調査をリンクできればよいと思う。
21世紀出生児縦断調査と全国学力・学習状況調査とのリンクについて
- 義務教育段階から開始するとすれば、例えば、コーホートが中学生になる21世紀出生児縦断調査と全国学力・学習状況調査をリンクさせていくという可能性はあるか。出生児調査で所得、両親の状況、健康状態などを聞いているので、それにプラスした調査票を追加で作成し、それに沿って追跡するということも考えられるのではないか。
国際比較の可能性について
- 海外でも様々なパネル調査が実施されているので、それらの項目と共通の項目を用いて、それぞれの国で若者が何を考えて、どういう経緯で進路選択をしているのかを比較可能な形で設計していく必要があるのではないか。
海外のパネル調査について
- 海外のパネル調査は相当しつこいと聞いているが、どのようにして高い回収率を得ているのか。日本だと調査会社に委託して、予算の範囲内で催促も2回ぐらいで終わらざるを得ないが、海外ではどうやっているのか。
- 10代から20代を対象に継続して調査すると、最初は親と契約して調査するが、20歳を超えると本人が嫌だと言えば嫌になる。あるいは、契約を書きかえることが必要となるのか。諸外国ではどういうふうに処理しているのか。