専修学校の質の保証・向上に関する調査研究協力者会議(第27回) 議事録

1.日時

令和4年12月15日(木曜日)10時00分~11時30分

2.場所

総務課会議室(WEB会議併用)

3.議題

  1. 大学設置基準等の改正を受けた専修学校設置基準の在り方
  2. 留学生の卒業後の定着促進に係る現状把握と意見交換
  3. 今後のスケジュール

4.出席者

委員

植上 一希  福岡大学人文学部教授
浦部 ひとみ 東京都立葛飾総合高等学校進路指導部、東京都高等学校進路指導協議会事務局次長
大谷 武士  全国中小企業団体中央会労働政策部長
多 忠貴   学校法人電子学園理事長
河原 成紀  学校法人河原学園理事長
小杉 礼子  独立行政法人労働政策研究・研修機構研究顧問
佐藤 由利子 東京工業大学環境・社会理工学院融合理工学系地球環境共創コース准教授
寺田 盛紀  京都先端科学大学客員研究員、名古屋大学名誉教授
冨田 伸一郎 株式会社ウチダ人材開発センタ代表取締役社長
野田 文香  独立行政法人大学改革支援・学位授与機構研究開発部准教授
長谷川 知子 静岡県スポーツ・文化観光部総合教育局私学振興課指導班主査
吉岡 知哉  独立行政法人日本学生支援機構理事長
吉本 圭一  滋慶医療科学大学教授

文部科学省

藤江 陽子  総合教育政策局長
里見 朋香  大臣官房審議官(総合教育政策局担当)
神山 弘   生涯学習推進課長
中安 史明  専修学校教育振興室長
船木 茂人  専修学校教育振興室室長補佐
木俣 佳鷹  専修学校教育振興室専修学校第一係長

5.議事録

【吉岡座長】  おはようございます。定刻になりましたので、ただいまから専修学校の質の保証・向上に関する調査研究協力者会議を開催いたします。
 本日は、御多忙の中、御出席いただき誠にありがとうございます。本日はオンライン併用開催ということで、半分ぐらいの委員の方は対面で、半分ぐらいの先生方がオンラインということになります。
 それでは、議事に移ります。本日は、最初の議題として、大学設置基準等の改正を受けた専修学校設置基準の在り方について、まず、事務局より資料の説明をお願いいたします。
 では、始めたいと思います。事務局、お願いします。

【木俣専修学校教育振興室係長】  文部科学省生涯学習推進課専修学校教育振興室の木俣でございます。
 まず、本日、専修学校設置基準につきまして、前半と後半に分けて説明させていただきます。まず、前半の部分につきましては、9月29日、前回の会議で御説明した内容になってございます。2040年に向けた高等教育のグランドデザイン及び今般のコロナ禍を受けて、本年3月18日に取りまとめられました新たな時代を見据えた質の保証システムの改善・充実について、審議まとめを受けまして、大学設置基準等の改正が本年10月1日に行われたところです。
 大学設置基準の改正を受けまして、専修学校設置基準に影響のあるものとしては、単位数の算定方法、教員に関する規定について、通信制の学科における授業の方法等についての3点でございます。こちら、その他というふうに示させていただいておるところにつきましては後半部分で御説明させていただきます。
 2ページをお願いします。まず、単位数の算定方法ですが、前回も御説明させていただいた内容と同一でございます。大学設置基準においては、単位数の計算方法を、これまで講義及び演習と実験、演習及び実技を分けて規定してございました。今回の改正を受けまして、講義、演習、実験、実習及び実技を全て区別せずに、おおむね15時間から45時間までの範囲で大学の定める時間の授業をもって1単位と計算する規定に改める改正が行われたところです。
 この改正を受けまして、前回も方針をお示しさせていただきましたけれども、専修学校は、実習・実技を重視した実践的な職業教育を行っているということ、それから指定規則、医療系の指定養成施設の指定を受けておるというようなことも踏まえまして、今回、大学設置基準の改正を受けては改正を行わず、現行規定を維持する方向でどうかと考えてございます。
 3ページは教員に関する規定でございます。こちらも、前回、御説明させていただいたところですけれども、大学設置基準において、これまで専任教員という規定でございましたけれども、基幹教員という規定に改めまして、また、基幹教員のうち4分の1の範囲で、一定の要件を満たした専任の教員については、複数の学校や学部で兼任している場合であっても基幹教員として算定する改正が行われたところであります。
 専修学校につきましては、現行規定においては、一の専修学校に限り専任の教員となるとされておりまして、大学設置基準と違うところは、大学の場合は必要な教員数のうち全てが専任教員であることが必要であるところ、専修学校の場合は、必要教員数のうち半数以上が専任の教員であることを求めているという違いがございます。今回、大学設置基準の改正を受けまして、専修学校も同じ高等教育機関ということでございますので、そこは専任の教員というものを改めまして基幹教員として定義してはどうかとに考えてございます。その定義は、本務として、当該専修学校における教育に従事する者か、年間8単位以上の授業科目を担当する者のどちらかの定義を満たす教員を基幹教員とする方向でどうかと考えております。
 それから、先ほど大学のほうでは、複数の大学や学部で兼任ができるという改正が行われておりますけれども、こちら、大学と同様に、必要な基幹教員のうち4分の1の範囲内で、一定の要件を満たした場合に兼任できるという改正をするのはどうかと考えております。また、どういう要件なのかというところにつきましては、大学設置基準においては、年間8単位以上の授業科目を担当する教員と規定してございますので、専修学校設置基準においても同様の規定にしてはどうかと考えております。
 4ページ目において図で説明しておりますけれども、改正前と改正後でどのように教員の算定が行われるかということを表してございます。現行規定であれば、他の専修学校で既に本務として従事する教員としてカウントをされておりますと、こちらのグレーの専任の教員以外の教員としてはカウントできるんですけれども、本務として従事する専任の教員としてはカウントできないということになっておりました。改正後は、年間8単位上授業科目を担当する場合においては、兼務として従事する基幹教員としてカウントが可能になります。こちらは4分の1の上限がございます。
 5ページ、お願いします。具体的な算定の方法につきましては、XとYの専修学校があるとして、4分の1の上限がございますので、一つの、Xの専修学校においては4分の3以上の本務として当該専修学校の教育に従事する教員としてカウントし、Yの専修学校においては、ピンク色の4分の1上限の基幹教員としてカウントするパターンがあると。それから、下に行っていただくと、XとYの両方の専修学校においても、ピンク色の4分の1上限の基幹教員としてカウントするパターンもございます。
 6ページは、一つの学校内で兼務する場合におけるカウントの方法でございます。大学のほうでも、同じような規定になっているわけでございますけれども、複数の学科で兼務する場合には、両方とも4分の1の範囲内の基幹教員としてカウントすることとさせていただきたいと考えてございます。というのも、丸がカウントの方法で、バツが算定不可の方法なんですけれども、バツのほうを見ていただくと、たすきがけで、一方では4分の3の基幹教員、一方では4分の1の基幹教員として算定すると、例えば上の例ですと2人ほど教員を削減できるという状況になってしまうため、専修学校教育の質の確保の観点を踏まえまして、大学設置基準と併せて、同一学校内で兼務する場合においては、必ず4分の1の範囲内でカウントするように、算定するように規定していこうと考えてございます。
 7ページ目、経過措置についてでございます。こちらも、前回、御説明させていただいたところですけれども、令和7年4月に開設する設置の審査から今回の改正を適用させていただきたいと考えてございます。ただし、下の1ポツにも書いてございますけれども、学則変更について専任の教員から基幹教員と改めることのみの学則変更は、届出が所轄の都道府県に殺到してしまうということから求めないということとさせていただきたいと思っております。それから、令和7年4月からの設置の審査から適用させますので、所轄庁の都道府県におかれては、設置基準、各都道府県の規定の改正並びに様式の変更をお願いする予定でございます。
 8ページがが最後ですけれども、冒頭に御説明させていただいた新たな時代を見据えた質保証システムの改善・充実についての審議まとめにおいて、大学通信教育設置基準の授業の方法について、紙中心での規定になってございましたので、デジタルに対応した規定に見直すよう提言を受けて改正が行われたところでございます。専修学校設置基準においても通信制の学科を設置することが可能でございまして、その授業の方法につきましても、大学通信教育設置基準の規定ぶりで、現行、規定されてございますので、今回、デジタルに対応した規定に見直すこととさせていただきたいと考えてございます。
 前半部分は以上でございます。

【吉岡座長】  ありがとうございます。
 一つは単位数の算定方法についてで、これは基本的には変えないということ。それから、2番目が、これが、多分、一番分かりにくくて頭の体操みたいなところですけれども、教員に関する規定の変更をどうするかということで、3番目は、通信制でCD-ROMとか書籍が必要とされていたものをオンラインでやれるようにしようという、かなり技術的な変更でございます。
 以上、何か御質問等あればと思いますが、いかがでしょうか。よろしいですか。どうぞ。

【吉本委員】  吉本です。
 教員に関する規定のところ、もう趣旨は私はこれでよいと考えているんですが、趣旨というか、実際に行うことはです。趣旨等の説明がよくありますよね。前のリード文で、成長分野で教員の養成がなってないとか等々という、そこの文章は必ずしも大学とは事情が違うということを前提にすれば、ちょっと検討いただいておけばよいかなと。つまり、基幹教員に相当する教員というのは、短大も含めて短期の高等教育機関というのは、兼務教員が1対2なんです。専任と兼務。大学は1対1で、もともと兼務教員がたくさんいるから、ここの基幹教員になる候補の分野の人、たくさんいるんです。いろんな展開をするときに、こういう基幹教員という認め方はあると。
 特に、例えば短大なんかが多いんですけれども、こういう成長分野等でないところに基幹教員的な仕事をしっかりやっていただいている教員がいると。それはそれで認めるとすると、ちょっと説明の文章は、大学でこういうことをやったから専門学校も成長分野等においてというふうなただし書を入れる必要はないというふうに思うんですが、若干のコメントです。ここに書いてないことで言ったんです。

【吉岡座長】  ありがとうございます。確かに大学のほうの説明としては、成長分野で人が足りなくなるからというような説明ですけれども、規定としてはそれが特に生きるわけではないので、考え方の問題として、実際におっしゃるとおりで、必ずしもそういうところで動くとは限らないので、その辺のところはちょっと調整をいたしたいと思います。
 ほかにいかがでしょうか。よろしいでしょうか。
 若干、すぐ分かる話では、特に基幹教員のクロスしていくようなところというのはちょっとじっくり考えないと分かりにくいかもしれません。実際にはそれほど複雑なことではありません。よろしいでしょうか。
 では、続いて、事務局から資料の説明をお願いします。後ほど、もし戻って御質問、御意見があればと思います。
 では、事務局、お願いいたします。

【中安専修学校教育振興室長】  専各室の中安でございます。
 それでは、続きまして、同じタイミングで設置基準改正を図りたいと考えております、専門学校におけるデジタル人材の育成の促進について御説明をさせていただきます。資料としては、9ページを御覧ください。
 現在、専門学校においては、必要教員数等は学科の属する分野ごとに算定されています。少し一般の感覚とずれるところがあると思いますし、大学とも少し違う形になっておりますけれども、学科ごとにやっているのではなくて、学科が複数あった場合は、学科の属する分野ごとに算定ということをしておりまして、同一分野内に学科が複数設置されている場合、複数学科の総定員を合算して必要教員数等を算定すると、そういう形を取らせていただいています。
 問題の所在、特に情報関係というところでございますけども、情報関係の学科は、ある意味、分野が決められてしまっているというところがあります。教育内容をつぶさに見ていけば、商業実務なんだろうか、工業なんだろうかということなんですけども、工業に属してもおかしくないようなところが商業実務に属している場合もあるということでございます。
 そこで図のほうに行かせていただきますけども、現状というところで、例で申し上げますと、ビジネス学科、情報経理学科、情報ITメディア学科という3つの学科を有する学校様がいらっしゃったとして、教員の算定等は、これが全部、設置認可上は商業実務というところに割り振られていますので、全部、商業実務ですねということでやると。そうすると、定員がそれぞれ35人だとすると、定員が全部で105人。この設置基準のほうに見にいくと、必要教員数4人ですねということになりますし、校舎面積は363平方メートルが必要になると、そういう状況になっています。ただし、実際には情報ITメディア学科というのは工学に近いことをやっている、あるいは、今後は工学に近いことをやっていこうということをお考えのケースがあると思います。
 他方、今、政府で、先ほどの吉本先生のお話にもございましたけども、デジタル人材を中心に人への投資が進んでいくというような状況があって、例えば修学支援制度の中間層への拡大ということについては、工学系や農学系の分野の方には修学支援制度、授業料減免と給付型奨学金を拡大していこうと、そういうお話がございますが、今の例の現状の左上だと、情報ITメディア学科は商業実務なのでその対象にならないということがあります。なので、少し実態に応じた対応を学校のほうでも考えていこうという状況が生じてくるというふうに思っています。
 その実態に応じて、工業関係ということで、実態に応じて情報ITメディア学科をその分野に位置づけを変えるかということになると、現状の図の右側のようなことが起こってくるんですけども、商業実務関係に2学科が残って工業関係に1学科が残ると。定員から設置基準を見ていくと、それぞれの必要教員数が3人、3人で、足して6人必要になると。また、校舎面積が455平方メートルになると。学校様からしてみれば、やっていることは、実態、そんなに変わってないのになかなかの対応を迫られるという状況が想定されます。
 こういう状況を踏まえまして、対応案の方向性ですけれども、学科の教育内容における、この絵で言うと商業実務分野と工業分野の関連性がある程度あれば、特例的な算定をする方法をつくっていけないかと考えています。具体的には図の下側ですけれども、工業関係の学科と商業関係の学科に一定程度、目安を3割ということにしていますけれども、あえて言うと3割以上5割未満ということなるんだと思いますが、3割程度以上の関連性を求めた上で、設置認可において加重平均的な対応をお認めするというようなことでございます。
 加重平均的なというのは、図の算定の特例の下方右側ですけれども、例えば先生の数で申し上げますと、ビジネス学科、情報経理学、ITメディア学科35人で、商業実務で105人だとすると4人ですし、この場合は工業でも105人だと4人と。そうすると、どっちでも、全部、工業とみなして、全部、商業とみなしたときは4人だねという前提の下で、定員数に応じて、この場合、きれいな数字になりますけど、4掛ける3分の2足す4掛ける3分の1で結果として4人という形にしたらどうかと。校舎面積も同様の考え方に基づいてやっていくということになると、必要教員数、面積は少し増えてしまうんですけれども、この例だと必要教員数とか面積についても、ある程度、実態に応じた対応ができてくるのではないかと考えています。この場合、様々な統計や行政情報上は、情報ITメディア学科は工業分野に、ビジネス学科と情報経理学科は引き続き商業実務の部に属するということでございます。
 もともとの問題意識としては、東専各の構想委員会で多先生や、全専各の総務委員会で関口先生、それで吉本先生たちが、もとは評価だったと思うんですけども、分野・分類ということをかなり緻密に進めていただいている中で、やっぱり商業実務の中にも、実態、1工業あるよねと。この図の下のほうに書いているんですけども、文化・教養でも、デザインなんかにはコンピューターグラフィックとかアニメとか、そういう学科があって、でも、結局、文化・教養に入ってしまっているというようなケースがあって、その辺りを実態として対応できないかということを考えています。
 また、先ほど木俣係長から説明させていただいたものは、直近の大学の設置基準を改正を受けてという意味では、大きな意味で高等教育全体の流れの中でということなんですけども、こちらについては、直近、こういう改正が大学のほうであったわけではありませんけれども、大学には既に融合分野的な考え方が認められておりますので、専門学校は職業目的がはっきりした人たちを育てるということから、あまりそういうところがなかったんですけども、ある程度、この時代に合った高等教育の全体の流れということで対応していけないかと考えております。
 御説明は以上になります。

【吉岡座長】  ありがとうございます。
 分野の考え方、大学ですと学位の分野というところで設置の審査等で判断していくわけですが、専修学校のほうはそういう仕組みではないので、この仕組みの考え方が違うので、実数をどう拾うかということだと思います。
 何か御意見ございますでしょうか。どうぞ。

【長谷川委員】  静岡県私学振興課の長谷川です。
 この考えで言うと、また、算定の特例のほうで、すみません、確認なんですけれども、情報メディアのほう、工業として考えるという形になると、一応、分野が一つ増える形になるということでよろしいでしょうか。そうすると、学校の分野を新設になると、学校の目的のほうにもちょっと影響が出てくるなというところがあるのと、どうしても、今ですと学校の目的を変更するということになると認可事項になるものですから、ある程度、制度を考えるに当たっても、多分、各県で審議会にかけなきゃいけない案件となりますので、準備とかいろいろ、スケジュールとかも考えていかないといけないかなと思いました。
 以上です。

【中安専修学校教育振興室長】  長谷川委員、御質問ありがとうございます。
 こちら、そういう意味では分野の新設になりますので、目的変更になりますから認可事項になると技術的には考えてございます。デジタル人材の投資という話が令和6年度から大きく動くとすると、今から1年数か月という状況の中で、できるだけ我々のほうも早く県の皆様にこの状況を御説明していく機会を、例えばここでお認めいただければ、1月にも担当者の方々集まっていただいて説明させていただくというような機会をつくっていきたいと思っています。

【冨田委員】  よろしいでしょうか。

【吉岡座長】  お願いいたします。

【冨田委員】  それでは、意見でございます。述べさせていただきます。ウチダ人材開発センタ、冨田でございます。
 デジタル人材の育成というのは、国にとって非常に重要課題になっております。その中で、今回、御説明をいただきまして、専門学校におきましても、やはり商業実務分野ということで位置づけをしていた。それを、今度、分けるとなると工業関係ということで、教員のやっぱり数が多くなったり、校舎の面積が大きくなったりというところで、なかなか専門学校様がデジタルのほうに向かないということでの改正だというふうな理解でございます。
 非常にこれ、いいお考えだと思います。情報ITメディアのほうも、やはりもっと工業分野に変えていくということをやっぱりやっていかないといけないので、ただ、全体的には、これ、全部、デジタルが関係するので、やっぱりレベルによって、目指すものによって変えていく。それがやっぱり混在になってくるというのは、これはもうこれからの時代に即したものだと思いますので、私は賛成でございます。
 以上です。

【吉岡座長】  ありがとうございます。
 通信の具合がよくないということですので、オンラインで御参加の寺田委員の意見を読み上げます。寺田委員から、改正の意気込みとして、小さい印象ですが、問題は工業関係の教員の専門性です。商業系からのスライドでは不十分でしょう。ハードの電子工学等の教育を受けた方が3人中2人は必要だと思いますが、御検討くださいということです。
 事務局、何かあれば。

【中安専修学校教育振興室長】  寺田先生、吉岡先生、ありがとうございます。冨田先生も応援のコメントとして受け止めまして、ありがとうございます。
 寺田先生の仰っている、要するに単に看板をかけ替えるだけじゃ駄目で、もう少し実質の伴うものにしないといけないという御意見と受け止めました。全く仰るとおりだと思っていまして、子細はもう少し時間をかけて検討したいと思っている部分ではありますけども、この図のほうで申し上げますと、算定の特例という図の矢印の下側に、あくまでも必要教員数等の特例措置であり、各学科の教育の質が担保されていることを所轄庁が確認をいただくことが前提ということを書かせていただいていまして、例えば、先生が、今、具体的におっしゃっていただいているように、教員について、その質をどう求めるかというのは、ちょっとなかなか設置基準には書き切れないなと思っているんですけども、県の皆様の御判断の参考になるような、まさに仰っているのと同じようなことを我々も想定していますけども、少し、例えば通知等でお示しすることはできないかと考えてございます。ありがとうございます。

【吉岡座長】  ありがとうございます。
 寺田委員、よろしいでしょうか。何かありましたら、またチャットで送っていただければと思います。
 実質的に判断をするということと、それから、完全にバラバラでは困るので、ある程度の型みたいなものを考えるということが、多分、実質問題として必要だということだと思いますので、その辺、事務局でちょっと調整をお願いいたします。
 では、すみません、多先生、では、お願いいたします。

【多委員】  ありがとうございます。
 本件につきましては、修学支援新制度の見直しにおける工学系の学部への支援、専門学校で言えば工業分野ということになりますけれども、工業分野に入るべき学科を一つにまとめて広く支援される学校、あるいは学生が増えるという点も含めていいことだというふうに認識をしております。余談でございますけれども、先ほど中安室長のほうからも少し触れていただきましたが、現在、東京都専修学校各種学校協会のほうでは、職業教育の質保証や社会的評価の向上というものを念頭に置きまして、国際通用性の担保という観点から、NQFの確立に向けた検討を進める中で、職業分野ごとに共通した学習成果を可視化するという必要性があることから、職業教育における分野の分類を進めております。
 具体的には、職業実践専門課程の認定学科に特化をいたしまして、専門学校8分野の中における学科構成を精査しておりますが、一つの業種・職種が複数の分野にまたがっている事例が非常に多いということが明らかになっています。先ほどの事例の説明の中でもあったように、商業実務、もしくは文化・教養の分野にIT系の学科が存在しているということもその一例だというふうに思います。ですので、今回の措置が一つの契機になって、各分野において学科の設置が適切に進んでいくこと、そして、先ほど寺田先生のほうからもお話がありましたけれども、それが質の保証につながっていくことということに期待したいというふうに思います。
 それから、1点、これ、質問というか確認なんですが、既に工業専門課程を持っていて、商業実務専門課程から学科を移す際の手続というのはこれまでと同様という認識でよいか、その点だけちょっと確認をさせてください。
 以上です。よろしくお願いいたします。

【吉岡座長】  ありがとうございます。
 では、事務局。

【中安専修学校教育振興室長】  多先生、ありがとうございます。まさに、先ほども申し上げましたけれども、多先生、吉本先生、それから関口先生に整理いただいた御意見をかなり参考に、検討させていただきました。
 御質問いただいた件は、その部分については変わりないということで御回答させていければと存じます。

【吉岡座長】  ありがとうございます。
 では、吉本委員、お願いいたします。

【吉本委員】  吉本です。
 この紙の特例的な算定ということには賛成です。今、喫緊の政策課題、大きな政策課題があるという意味で大変いいことだと考えます。
 ただ、特例的な算定というのは、その後に、寺田委員もおっしゃっていた意気込みが、大きな意気込みが本来必要で、それが多委員がおっしゃったような国際的な通用性というところまで考えたときに、そこを視野に入れておくということをどこかにちゃんと、むしろ記録をしておいてほしい、確認していきたいと。
 それは、今、国際的に言えばISCED2013のFというのがあって、もうこれは、ICTというのはもう工業とも言えず、商業とはなかなか言わないですけど、独立にむしろしているんですよね。独立の分野分類をしている。それから、専門学校の場合は、今度、8分野といったときに、その他というものがないものですから、だから、大学のような学際的な分野を置く場所がないというような意味のこともあって、そういうところの検討をしていく。例えばここの図で、あまりほじくるようでいけないんですけども、ちゃんとビジネス分野から情報ITメディアまで、右下の図は斜めになっているので、ということは、実は、つついていきますけど、情報経理学科だっていろんな形の工業的なものをどんどん増やしているかもしれない。そういう意味で、明らかに工業、商業で分類できないものも持っていると。
 学校の分野の規定というのが、特に統計上の問題で言えば、もう全然ふさわしくなくなっているというところをそろそろ考えるべきところ、恐らく各種学校の8つの分野の規定からずっと引き継いでいる、そのままになっている。バスケット項目、バスケットと言ったら変ですけれども、学際的なようなものというのをどこに入れるか、全部、文化・教養に入ってしまっているということもあるので、そこはやはりそろそろ見直す時期だという、ちょっといいタイミングだと思います。
 以上、ちょっと伝えておきたいと思います。

【神山生涯学習推進課長】  生涯学習推進課長の神山でございます。
 御指摘、非常にありがとうございます。今回の改正に関しましては、昨今のデジタル人材育成の緊急性といいましょうか、必要性ということで特例的な算定を考えさせていただいたわけでございますけれども、今、御指摘のあったように、ほかの分野においても、非常にこの学際的と申しましょうか、分野横断的なことが進んでおるというのは承知はしておりまして、ただ、緊急なものというか、より急ぐものに関しては、今回、手当てをさせていただいて、御指摘のあった点については、中長期といいましょうか、これからの検討課題だというふうに認識をしてございます。
 御指摘、本当にありがとうございました。

【吉岡座長】  ありがとうございます。
 では、御発言お願いいたします。

【浦部委員】  失礼します。葛飾総合高校の浦部です。
 今、お話を承っておりまして、私もいろいろなセミナーで、最近、デジタル人材の育成ということが非常に話題になっているというところも認識しております。先日大学でデジタル人材を育成している方からの御発言がありまして、どのような教育機関の卒業生を求めるかというお話になり、大学、専門職大学、高専で終わっていたんです。要するに、専門学校がその中に含まれていなかったところが気になり、専門学校の教育的立ち位置について考えさせられました。例えば高校の教員の立場からいたしますと、専門学校で学びたいと考える高校生に将来の方向性をどう示すか、という問題でもあります。したがってデジタル人材を初め、専門学校で育成する人材とはどういうものなのかを明確に示すことは、改めて重要な意味があると考えています。
 また先ほど来の複数分野にまたがるという視点についても、新学習指導要領に基づく本年度高校入学生からは、従来の学びよりもさらに教科横断型の様相が顕著になりつつあると言えます。こうした点からも包括的な育成すべき人材像を明確に示し、社会全体で共有して、その方向性、可能性を次世代を担う若者に伝えていく必要があると感じました。
 以上です。

【吉岡座長】  浦部委員、ありがとうございました。おっしゃるとおりで、既存の大学の場合の学位もですけれども、既存の分野というのも、それから、職業の質というのもどんどん変わってきている中で、どういうふうに分かりやすく、特に高校生であるとか、もっと下の世代でもいいですけれども、若い人たちが分かりやすくしていく、自分のキャリアパスが見えてくるようにしていくというのが一番重要だろうと思います。その意味でも、公開性といいますか、公表の仕組みというのを考えていくというのがとても大事だと思います。
 それから、これまでの委員の発言にもありました、この会議は質の保証というのがメインテーマですので、その隙間をどうするかという話ではなくて、全体として質をどうやって上げていくか、それを保証していくか、しかもそれを分かりやすく、関係者といいますか、特にこれから進学してこようという、そういう生徒、学生たちに分かりやすくするかということが非常に重要ですので、その点を忘れないように議論を進めていきたいと思います。
 ありがとうございます。ほかにいかがでしょうか。では、河原委員、お願いします。

【河原委員】  河原学園の河原です。
 実務的な話になるんですが、工業分野の中でも情報系については、情報産業関連企業の多くは東京に集中しています。例えば経済産業省の2021年情報通信業基本調査によると、情報産業関連企業については、電子通信業では27.8%、ソフトウエア業では51.8%、情報処理提供サービス業では54.1%、インターネット付随サービス業では63%の企業本社が東京に所在しております。
 こういう現状ですので、地方の専門学校で情報分野の実務経験のある教員を確保することは、決して容易ではありません。今日的には遠隔授業を駆使することで他県居住の教員を手配することも可能ではありますが、今度は、遠隔授業に特有の質保証、品質の担保の難しさに直面してしまうことになります。そういった意味で、教員数の要件が少しでも緩和されることは、教員体制の担保が前提とはいえ、地方の専門学校からすると、ある程度、工業分野促進の効果は見込めるのではないかなと思っております。他方で、今後、工業分野教育の推進を図る上では、理科系教育の困難さが深刻な問題になってくると思います。
 以上です。

【吉岡座長】  ありがとうございます。大変重要な指摘だと思います。確かに首都圏といいますか、大都市圏と、それから地方との関係というのは、これからやっぱり非常に大きな問題になっていくと思いますので、それも視野の中に入れていかなければならないというふうに思います。
 よろしいでしょうか。ほかに、今、特にという御意見がなければ、この件、一旦、ここでお開きといいますか、ちょっと締めさせていただいて、論点につきましては、事務局、それから発言なさった先生方と場合によっては調整して今後の議論につなげていきたいと思います。
 今後の取扱いにつきましては、座長に御一任いただくということでよろしいでしょうか。
(「異議なし」の声あり)

【吉岡座長】  ありがとうございます。それでは、そのような形で進めさせていただきます。
 それでは、次の議題に入りたいと思います。本日は、御報告いただくということで、まず留学生の卒業後の定着促進に係る現状把握について、佐藤委員からの御報告をお願いいたします。
 佐藤委員、よろしくお願いします。

【佐藤委員】  専修学校で学ぶ留学生の状況と日本就職の課題について報告させていただきます。
 2ページは、日本で学ぶ外国人留学生の推移について図示しております。2008年に留学生30万人計画がスタートし、2011年に日本語教育機関で学ぶ学生が留学生にカウントされるようになり、2013年以降、日本語教育機関の留学生が増え始め、2014年以降、赤の三角のマーカーで示した専修学校の留学生が増え始めます。専修学校で学ぶ留学生は2008年には2万8,000人でしたが、2020年には約8万人と、3.1倍に増加しております。また、留学生全体に占める専修学校留学生の割合も、2011年の15.6%から、2020年には28.5%と、大きな存在になっております。
 3ページは、専修学校で学ぶ留学生の主な出身国を示したものですが、2007年と比べ、2018年にはベトナム、ネパール、スリランカなど、いわゆる非漢字圏の留学生が大きく増加していることが御覧いただけます。
 4ページは、なぜ非漢字圏出身の専修学校留学生が増えたかの背景を示しています。一つは、東日本大震災で、漢字圏出身の留学生が来日中止になったり、いる人が帰ってしまったりといったことが起こり、日本語教育機関の方々が非常に危機感を覚え、これまで留学生があまり来ていなかった非漢字圏からの留学生リクルートを強化した。その結果、ベトナムやネパールなどの非漢字圏出身の留学生が急増し、日本語教育機関を卒業した後の受皿として専修学校留学生が急増したという事情があります。こういった非漢字圏出身留学生というのは、漢字の学習にハンディがある。また、アジアの中で比較的所得レベルが低い国から来ており、彼らの年間平均所得と日本での年間授業料は5倍以上の開きがあるので、中流家庭の子でも、なかなか日本留学に手が届かないわけです。このため、アルバイトによって学費や生活費を稼ぐ形での留学が一般的になり、なかなか日本語学習に集中できない。こういう状況の中で、日本語教育機関(在留資格上、2年間しか在籍できない)の、卒業時点で、日本語で授業を受けるために必要な最低レベルの日本語力と言われる日本語能力試験N2レベルに到達できてない学生が多数出現し、彼らが、入学選別性が比較的緩やかな専修学校に入学したという事情があります。
 また、彼らに聞き取り調査をしてみると、単に日本語力が十分でなかったというだけではなく、専修学校専門課程は2年間で専門士の資格が取れて就職できる、学部(4年)よりも早く就職できるということで専修学校を積極的に選んでいるという面もあります。
 4ページの下に示しておりますのは、日本語教育振興協会が加盟227校に卒業生の進学先について尋ねた結果を、私の方で国別に表にしたものですが、ベトナムの学生は80%、ネパールの学生は86%が専修学校に進学している。それに比べて中国の場合は、大学院や大学に進学する者の割合が高いということで、くっきりと進学先の差が出ております。
 5ページは、東京都専修学校各種学校協会、(東専各)と東京都私学財団が、毎年、専門学校各種学校調査統計資料というのを出しておられて、その資料からの引用です。このグラフは、都内の専修学校の入学者の中で外国人留学生が、8分野の専門課程でどれぐらいの割合を占めているかを示しています。商業実務で43%、文化・教養で19%、次いで工業、服飾・家政、教育・福祉などで留学生の割合がかなり高くなっています。これは、東京の資料なので、全国の状況を代表していない可能性がありますが、特定の分野で留学生の割合が増えている傾向が窺えます。
 また、文科省の専修学校教育振興室の2018年の調査では、私立専門学校2,610校のうち、約3分の1の871校が留学生を受け入れており、学生の半数以上が留学生である学校が195校、9割以上留学生である学校が101校、全生徒が留学生である学校は45校という結果が示されており、先ほどお話しした日本語学校における非漢字圏出身留学生の急増を受け、商業実務、文化・教養などの分野において専修学校留学生が急増し、一部の専門課程ではほとんどが留学生というコースが出現したと考えられます。
 6ページは、留学生の日本語能力に関する資格について、日本学生支援機構の平成27年度の私費外国人留学生生活実態調査のデータに基づいて、学種・課程別、漢字圏と非漢字圏の出身者別に示したものです。J1~J5というのはビジネス日本語の資格で、N1~N5は日本語能力試験の資格になります。
 先ほど申し上げましたとおり、N2が日本語で授業を理解できる最低ラインになりますので、この赤枠で囲んだN3以下または試験結果なしという部分が、日本語力が不足しているグループと考えられます。どの学種、課程においても、非漢字圏学生の方がこの割合が高く、専修学校では、N3以下または試験結果なしの非漢字圏学生の割合が55%半数以上存在すに上っています。
 7ページは、東専各と東京都私学財団の平成30年度統計資料の、外国人留学生の受入れに関する問題点や課題に関する特別調査の記述式回答から、留学生の割合が高い商業実務と文化・教養分野の教職員の方のコメントを抜き出しています。「非漢字圏の学生が増え、修業年数2年内で就職可能なレベルの教育は困難であると感じる」「日本語学校卒業時の日本語レベルと学習マナーが低下しており、日本人との合同授業実施が難しいケースが増えてきている」「年々、留学生の日本語能力が低下している。留学生入学者が増加し続けることで、日本語を使わなくても何とかやっていけると感じている留学生がいると思われ、さらに日本語能力の低下が進んでいくのではないかと心配」「専門学校入学後の日本語教育支援は難しい。日本語学校の学習期間と内容では日本語の理解が不十分で、授業についてこれない、就職試験になかなか合格できないなどの弊害がある」といった意見が寄せられています。
 8ページは、東専各が2020年11月~12月に、都内の専修学校専門課程に在籍する留学生2,760人に対して行った実態調査報告書からの引用です。東専各の調査に回答した2,760人の出身国内訳が、55%が中国で、ベトナムは14%、ネパールは2.4%と低い割合でした。在留外国人統計などを見ると、中国人留学生は東京で学ぶ割合が高く、ベトナム人やネパール人は、東京以外の、例えば大阪、福岡、愛知などの地方の中核都市で学ぶ人が多いので、東専各の調査回答者もこの傾向を反映していると思いますが、調査結果を見るに当たっては、非漢字圏学生の割合が比較的低い学校の状況が反映されているということを念頭に置く必要があります。
 日本語能力については、入学時にN1が全体の20.5%だったのが、調査時点で33%に増加し、N2の割合も増え、かなりの学生がN2以上になっていることがわかります。ただし、ベトナム人、ネパール人の回答では読み書きに困難を感じるものが多いとも書かれています。また、日本語学習については、学校内で日本語授業受けている人が37%。インターネットなどで自習している人が37%でした。日本人と話す機会は学校やアルバイト先が多いものの、学内で交流がなく、あまり人と話さないという回答もありました。
 授業は、1年生の27.5%。2年の29%が時々分からないことがあると回答し、1年生の1.1%がよく分からないと回答していました。またアルバイトは、ベトナム人やネパール人はアルバイトの従事率が9割以上と高く、中国人の38%という回答と対照的でした。
 9ページは、留学生の日本就職希望者割合と実際に日本就職した者の割合を、日本学生支援機構の調査に基づき、学種・課程別に示しております。30万人計画が始まった2008年と、30万人という数値目標が達成された2019年を対比しますと、博士課程、修士課程では、就職希望者のうち、実際に就職できた者の割合はやや下がっているんですが、学部、短大、専修学校では上がっています。これは、留学生30万人計画で日本就職を促進してきた成果と考えられます。2019年の学部と専修学校を比べると、日本就職希望者の割合は専修学校のほうが高く、76%が日本就職を希望していますが、日本就職できた人の割合は39%と、学部より低いことがわかります。
 10ページは、コロナ禍が留学生の就職に与えた影響について、東専各と東京都私学財団の令和3年度統計資料の令和3年3月卒業の外国人留学生の日本での就職状況に関する教職員の方からの回答を抜粋しています。商業実務分野では「コロナ禍の影響でインバウンド系求人がほぼない状況で推移し、例年になく苦戦した」「ホテルをはじめとした観光サービス業の分野であるため、コロナ禍の影響をもろに受け、就職活動が非常に難航した。特定技能、外食、介護等に切り替えて就職した学生もいた」という回答が、文化・教養分野では、「コロナ禍が長引いて、応募しても内定が取れず不採用通知が続いたため、卒業までに決まっていない学生は、就職活動のための特定活動ビザで就職活動を継続している」「コロナの状況の見通しが悪いため、帰国する留学生が多かった」という回答が見られ、コロナ禍により、就職に大きな影響を受けている状況がうかがえます。
 11ページは、私が去年から今年にかけて専修学校で学ぶベトナム人留学生7名と、商業実務分野の専修学校のキャリアアドバイザーの方に行った聞き取り調査の結果の一部を示しています。留学生は、3名がビジネスコース、4名が日越通訳・翻訳コースで学んでいましたが、学校内で日本人学生と接する機会はほとんどないとのことでした。全員がアルバイトをしており、もちろん生活のためということもありますが、アルバイトが生きた日本語、日本人の考え方、働く文化、おもてなしについて学ぶ貴重な機会になっているということでした。
 日本語能力については、7人のうち2名は入学時にN2を取得していなかったのですが、その後、N2に合格しております。また、入学時にN2だった5名のうち2名はN1を取得しており、日本語能力に伸長が見られました。日本語能力の向上に伴い、アルバイトも、接客など日本語を使う仕事に、彼らの希望で変わっていくのですが、コンビニなどで日本語力不足のために顧客に怒られるといった経験もしています。また、新聞配達は安定した仕事で、学費も支援してもらえるんですが、日本語などの学びの機会が少ないという課題もあります。
 専修学校のキャリアアドバイザーの方には、昨年末から今年にかけてお話を伺いました。コロナ禍もあり、留学生、特に非漢字圏出身の留学生の就職支援に大変苦労しておられ、「在留資格(技術・人文知識・国際業務=技人国)の想定範囲が狭すぎる」と話されていました。例えば店舗管理(技人国の在留資格が認められる職種)で、コンビニやスーパーに就職させようとしても、この在留資格では店頭に出してはいけないことになっているそうです。普通、スーパーやコンビニの幹部職員というのは、店頭に出ながら店舗を管理するのですが、留学生を採ると店舗に出せない、だから採用できない、ということになるそうです。このように技人国では、外国人しかできない専門性を生かすといった縛りがあり、現場で働くことに強い規制がかかっていて、このために就職につながらない、採用してもらえないというケースが少なくないそうです。
 それから、求人側が必要以上に高いN1レベルの日本語力を要求することも就職の障害になっています。非漢字圏の留学生は、読み書きは不得意ですが、話す、聞くは結構達者な者が多いので、その辺、もう少し採用する企業側と学校側が歩み寄って、職場で本当に必要な日本語力はどの程度かについて協議できないか、また職場に入ってからも、彼らの日本語力を高めていける工夫ができないのかとこの方は言っていました。留学生は、日本語力は不十分でも、それ以外にいろんな能力、彼らが自国で培ってきた能力やネットワーク、自分の国に関する知識などがありますから、例えばベトナムに将来進出したいと思っているコンビニ、スーパー、レストラン、ホテルなどで、そういう点を評価する可能性もあるのではないか、。あるいは、日本人よりも英語ができる人もいる、そういう総合的能力について、採用側と学校側、さらに留学生との間でもう少し理解が深まれば、必要以上に高い日本語力を要求することにはならないのではないかと話されていました。
 この方の勤務校の専門課程は職業実践専門課程に認定されております。しかし、留学生の日本語能力が低い場合、企業側、学校側とも学生が専門力(職業実践能力)を高めて就職することをあまり期待しておらず、連携プログラムにあまり力が入っていないということでした。
 12ページはまとめです。専修学校は日本で学ぶ留学生の3割近くを受け入れ、留学生30万人計画を達成する原動力の一つとなってきました。しかし、非漢字圏出身の日本語力が不足した学生の増加は、学校現場において、教育や就職指導上の課題と受け止められています。非漢字圏出身者のアルバイト従事率は高いものの、アルバイトは、日本人と接し、生きた日本語や働く文化について学ぶ機会ともなっています。専修学校留学生は学部留学生に比べて就職希望者が多いものの、実際に就職できた者の割合は低く、特にコロナ禍によって就職が困難になった者が多くいました。職業実践専門課程を通じた専門力(実践的職業能力)の養成においても、日本語力不足が課題となっているケースがあります。
 13ページは出典です。こちらに先ほど引用していた図表などが掲載されたもとの記事が御覧いただけます。
 御清聴ありがとうございました。以上でございます。

【吉岡座長】  佐藤先生、どうもありがとうございました。大変分かりやすいリアルな御報告で、大変よく分かったと思います。
 何かこの時点で御質問があればと思いますけれども、この後、多委員からの御説明といいますか御報告がありますので、場合によってはその後にまた御質問いただいても結構です。
 では、大谷委員、どうぞ。

【大谷委員】  全国中央会、大谷と申します。
 御説明ありがとうございました。御説明の中で、触れられていなかったこととして、1点御質問です。外国人材と昨今の為替レートの関係で、特にベトナムなどは、最近、日本から離れていっているんじゃないかといったお話も聞いておるところなんですが、その辺、何か聞き取りされましたでしょうか。

【佐藤委員】  ベトナム人が日本から離れているというのは、最近の円安で、日本での収入が実質的に目減りしているために、日本に来ている人が困っている、あるいは送り出しのところで日本への人気がなくなっているという話だと思います。確かにそういう面はあると思うんですが、ベトナム以外でも、ミャンマーとか、スリランカとか、あるいは中央アジアのウズベキスタン、タジキスタンとか、やはり留学を通じて日本でのキャリアを築きたいと考えている非漢字圏の国々の学生というのは、依然として一定程度いるのではないかと考えています。もちろん円安で収入が目減りしているんですが、国の平均所得水準が年間1,000~2,000ドル(年間10数万円~20数万円)ぐらいのところもあるので、日本での収入が目減りしているとはいっても、まだ相当な価値はあるかと思います。また、他の留学先、特に英語圏の国で、留学から就労ビザに切り替えたり、永住権を申請する際の規制が厳しくなっている中で、留学生の日本就職を促進し、高度人材の定着を促している日本の魅力というのは、依然としてあるのではないかというのが私の考えです。よろしいでしょうか。

【大谷委員】  ありがとうございました。

【吉岡座長】  ありがとうございました。
 それでは、続いて、多委員にお願いいたしたいと思います。
 多委員、よろしくお願いいたします。

【多委員】  承知しました。すみません、座長はじめそちらの声がほとんど聞こえない状況ですので、こちらから話を一方的にさせていただくかもしれませんけれども御容赦いただきたいと思います。
 お時間いただきまして、ありがとうございます。先ほど佐藤委員のほうからお話があった点とかなり重複する点もあろうかと思いますが、しばしお時間をいただきたいと思います。私のほうからは、教育未来創造会議について第2次提言というものに向けた論点と、全国専修学校各種学校総連合会からの要望事項というものを資料に沿って御報告したいというふうに思います。
 まず、教育未来創造会議につきましては、お手元の資料の2ページを開いていただきますと書き記しておりますとおり、人材育成に資する教育の在り方について方向性を示すこと。それから、生涯学習の観点から、教育と社会の接続における多様化・柔軟化を推進することということを目的として、令和3年12月にその開催が閣議決定され、進められているところです。この会議では、資料3ページにございますとおり、我が国の未来を牽引する大学等と社会の在り方についてということの中で、既に第一次提言が取りまとめられておりまして、課題、理念、また目標といったものを掲げた上で、4ページから5ページにかけて施策が提示されておりますが、未来を支える人材を育む大学等の機能強化、新たな時代に対応する学びの支援の充実、そして、学び直しを促進するための環境整備などが施策として提示されているところです。
 そして、現在におきましては、教育未来創造会議の第2次提言に向けまして、今年の9月から取組が進んでおります。この会議は、資料6ページにございます教育未来創造会議名簿のとおり、岸田総理を議長として関係閣僚と有識者で構成されておりまして、私が全専各連を代表して、この第2次提言の検討から参加をさせていただいているところでございます。
 そして、第2次提言に向けてのテーマでございます。こちらは、資料7ページを御覧ください。コロナ後のグローバル社会を見据えた人への投資というものが、第2次提言に向けての主なテーマでございます。
 これにつきましては、去る9月の29日に総理官邸で開催された会議におきまして、岸田総理より、資料の8ページに記されております検討の趣旨というものについて詳細な説明がなされました。そして、あわせて、主な論点案といたしましては、資料9ページのとおり3点、1点目がコロナ後の新たな留学生受入れ・派遣計画、2点目が卒業後の留学生等の活躍に向けた環境整備、そして、3点目が教育の国際化の促進というこの3点が示されたわけでございます。
 以上の主なこの3つの論点案をもとに、これまで永岡文科大臣を中心に構成されたワーキンググループにおいて議論を進めてまいりました。その中で、全専各連からの要望を踏まえて私から発言した内容をまとめたものを10ページ以降に記させていただきましたので、これに沿って御報告したいと思います。
 まず、資料の10ページでございます。10月の27日に開かれた第5回ワーキンググループ会議での論点です。主たるテーマは、コロナ後の新たな留学生の受入れ・派遣計画で、具体的には外国人留学生の受入れ、それから、日本人学生の海外派遣、これらについて議論がなされました。
 これについて、私からは、外国人留学生受入れに係る要望を申し述べているところです。1点目は、日本語教育機関に在籍できる期間の改善要望というものでありました。資料11ページを御覧いただきますとお分かりになりますとおり、日本における外国人留学生につきましては、その大半がアジア出身者で占められております。その中で、近年、急速に増えておりますのが、先ほど佐藤委員のほうからもお話がありましたとおり、ベトナム、ネパールということでありまして、2021年の時点で留学生全体に対して占める割合が28.2%に達しています。まさに約3人に1人がこの2つの国の出身者ということになります。ベトナムやネパールは親日家が多いということでございますが、その一方で、非漢字圏であるということから日本語への適応力というものが漢字圏に比して総じて低いと言わざるを得ない状況であります。
 次に、資料12ページ、日本語教育機関修了後の進路というものを御覧いただきますと、修了後の進学率は75%と非常に高いことが分かります。その中で最も多いのが専門学校への進学ということになりますが、大学等を含めた高等教育機関へ進学する場合、日本語能力試験N2以上の日本語能力が求められるということも、彼らにとっては高いハードルになっています。
 続いて、資料13ページ、こちらは本会議の佐藤委員の分析を引用させていただきました。佐藤先生、ありがとうございます。この結果によれば、日本語能力試験N1の資格保有率というものは、漢字圏と非漢字圏との間でおおむね30%の開きがございまして、これは大学の学部正規課程、それから専門学校ともにほぼ同数という結果でございました。
 一方で、資料14ページにもございますとおり、採用時に企業が留学生に求める能力というところを見ますと、日本語力、もしくはコミュニケーション力、いわゆる日本語に係るところでございますが、こちらが経年で上位に挙げられております。社内の公用語というものを英語としている企業も一部ございますけれども、それはいまだ少数派であるということがこの結果から見ても明らかではないかというふうに捉えております。
 こうした実情から、資料15ページに記しましたとおり、日本語教育機関に在籍できる期間の改善というものを要望いたしております。現在、日本語教育機関に在籍できる機関というものは、通常、最長2年というふうに定められておりますが、ベトナム、ネパールといった国を中心に、非漢字圏からの留学生が増加しているということ、これらの留学生は日本語への適応力が総じて低いということ、そして、日本語能力を求める企業が多いことなどを踏まえまして、留学生における日本語レベルの質を保証するという観点から、日本語教育機関に在籍できる期間を、現行の2年から3年に延長してほしいということを要望した次第です。
 あわせて、資料16ページのとおり、留学生の受入れに際して、住生活環境の確保という観点から、留学生受入れ促進プログラムの拡充というもの、また、高校段階からの受入れ促進方策といたしまして、高等専修学校と高等学校等の上陸基準省令に係る格差を改善するということを目途といたしました、高等専修学校への留学要件の見直しを要望しております。
 次に、資料17ページが、11月の16日に開かれました第6回ワーキンググループ会議での論点です。主たるテーマといたしましては、卒業後の留学生等の活躍に向けた環境整備及び教育の国際化の促進というものでございました。
 これに対し、私からは3点要望を申し上げております。まず、在留資格の見直しについてです。資料18ページの留学生総数に占める学校種別割合というものを御覧いただきますと、留学生総数が31万2,214人になっております。これに対して、専門学校に在籍する留学生の割合は25%。数にして、約7万8,000人です。4人に1人が専門学校の留学生であるということになります。
 一方、資料19ページの専門学校を卒業した留学生のうち、日本で就職し、定着している割合というものを御覧いただきますと、日本で就職を希望する者の割合が69.9%、約70%ということであるのに対しまして、実際に日本で就職できた者は39.2%、約4割ということでございますから、約3割が日本での就職を希望しながらそれが果たせなかったということが分かります。
 その主たる要因として考えられるのが在留資格であります。資料20ページの在留資格の切替えの例を御覧いただきたいと思います。縦軸に在留資格である技術・人文知識・国際業務の原則運用と柔軟運用及び特定活動告示46号、また、横軸のほうには、専門学校の適用範囲と滞在資格の切替えというものを掲載させていただいております。これを基に、事例として、食品開発というものを学んだ留学生がどのような業務に従事することが認められているのかというものを見てみますと、専門学校卒で食品開発を学んだ留学生が従事できる仕事は食品開発のみです。他の関連業務、例えば食品の製作であったり、食品の販売であったり、また、食品を販売した後のマーケティングであったり、そういった他の関連業務には従事できません。
 そこには、専修学校は職業等に必要な能力を育成することなどが目的とされていることから、相当程度の関連性が必要ということで、こちら、在留資格技人国のガイドライン、出入国管理庁が出しているもののガイドラインの中にその理由として挙げられているという状況であります。
 しかしながら、資料21ページにも記しましたとおり、専門学校での学びというものは、特定の業種や職種に係る高度な知識、技能の習得というものを基軸としながらも、関連する業務であったり、もしくは社会人基礎力の涵養も含めまして教育課程を編成して、より広範な実践力を身につけるということを目的としているのが実態でございます。
 以上のことを踏まえまして、現在、大卒が認められております技術・人文知識・国際業務の柔軟運用枠に専門学校も加えるよう要望した次第でございます。
 加えて、特定活動告示46号というところにおきましては、現状では在留を大卒、または大学院修了でN1取得者に限定されているところ、同じ高等教育機関である専門学校を卒業して、かつN1を取得した学生も告示46号に加えてくださいということを教育未来創造会議の場では要望させていただきました。
 これにつきましては、資料22ページから25ページに記載をいたしましたとおり、経済団体や自治体からも、実際の職務内容が厳しく制限されており、職務の遂行が阻害されているといったことなど、在留資格の制限緩和に係る要望が出ております。これらを実現いたしまして、生産年齢人口の減少が進むこの日本において、専門学校を卒業した留学生が、各地域の実情やニーズに応じて、様々な業種、職種の原動力となること、そして、何よりも専門学校を卒業した留学生の夢や希望をかなえること、これを実現するよう、これから力を尽くしていきたいというふうに考えております。
 もう一つの論点でございます教育の国際化の促進に向けましては、資料26ページに記しましたとおり、高等教育レベルの職業教育における国際通用性の担保という観点から、NQFの確立について。また、日本で専門的な知識・技能を習得した留学生が、そのノウハウを技術移転という形を通じて母国へ授けていくという視点も、職業教育の国際化につながるものと捉えまして、技術移転を通じた国際貢献というものを計画的、継続的に進めるべきであるということを申し述べた次第でございます。
 以上が教育未来創造会議の第2次提言に向けた論点と、全国専修学校各種学校総連合会からの要望事項として、留学生の受入れ、それから卒業後の活躍に向けた環境整備を中心に説明をさせていただきました。今後も、年明け3月まで、ひと月に1回の割合でワーキンググループでの会議が開かれる中で、第2次提言に向けての議論が展開されまして、4月をめどに第2次提言が取りまとめられる予定でございます。この提言の中に、専修学校や日本語教育機関に係る要望が一つでも多く含まれるよう、今後のワーキングに尽力してまいりたいと思いますので、委員の皆様方はじめ学校関係者の方々にも注視していただければ幸いでございます。
 以上、私からの報告でございました。御清聴いただき、ありがとうございました。

【吉岡座長】  多委員、ありがとうございました。
 こちらからの声があまり聞こえていないということでちょっとやりにくいんですけれども、時間、あまりございませんけれども、ぜひという御質問あるいは御意見があればと思いますが。それでは、どうぞ。

【野田委員】  大学改革支援・学位授与機構の野田です。
 この留学生の就職問題はかなり複合的な要素が絡んでいると感じていまして、まず、学校への入り口管理・質保証の問題と、入った後の学校の支援、そして、両先生がお話しされた在留資格など、法務省マターの留学ビザとか就労ビザの問題と3点あると思っております。特に入り口の日本語能力に関しましては、専門学校で教育を受ける者に関して、法務省の省令で細かく規定されているところを見ますと、N1またはN2の日本語能力、あるいは、日本留学試験の日本語科目で200点以上、あるいは、日本の日本語教育機関で半年以上在籍した、出席率も良好のいずれかを満たした者というので、日本語能力試験を提示する場合と、半年在籍していて出席率も良好であればよいというのとでかなり開きがあるように見受けられますが、この規定についてどうお考えですかというのが1点目の御質問です。
 では入り口管理を厳しくすればいいのかというと、そういう問題でもないとは思っていまして、例えば、留学生が専門学校に入学する前の母国での最終学歴を見てみますと、漢字圏の中国では4割が大卒、台湾ですと6割近くが大卒の状態で専門学校に入学してきているようです。漢字という大変アドバンテージがある上に、日本語学校なりでまた日本語を修練して高度化し、能力を磨いていくと。一方で、ベトナム、ネパールなどの非漢字圏の方々は、多くが高校生であったり高卒段階で日本の専門学校に入ってきているということを考えた場合に、母国でいかに日本語能力を高めていくかというのが重要になっているという、海外現地での日本語能力育成というものが重要になっているとお聞きしています。
 過去に、特にベトナムで日本語教育機関と日本語教師が急速に増えていて、外務省のデータですと、過去2015から18年の3年間で現地での日本語学習者が10万人増えたという状況を確認しております。このように、中学、高校の段階から日本語教育に触れているという取組が策としては進んでいる中で、やはりそれでも日本に来て日本語能力を、専門学校なり高等教育機関で授業が受けられるレベルまで上げていくということが、そこの課題がまだどのようにあるのかというところをお聞きしたいなと思っています。
 長くなりましたが、以上です。

【吉岡座長】  メッセージを送っておりますので御覧いただければと思いますが、多委員、メッセージ御覧になれますか。

【佐藤委員】  聞き取れた範囲でお答えしてよろしいでしょうか。

【吉岡座長】  お願いいたします。では、佐藤委員からお願いいたします。

【佐藤委員】  
 御質問の2番目が、ベトナムの日本語ブームで日本語学習者や日本語教師が増えている状況と、留学前から日本語を学習する可能性との関連について述べておられたと思います。聞き取りにくい状況で、抜けているところがありましたら申し訳ありません。
 確かに、海外での日本語教育は非常に重要です。私は日本語教育機関における留学生受入れにも関心を持っておりまして、日本語教育機関の方に、オンラインで海外の日本語教育機関とつながって、来日前から日本語教育を行うということをもっと強化できないのかと伺ったことがございました。
 その方の正直なお答えは、海外にオンラインで日本語教育を行っても、授業料収入につながらないと。やはり留学生が日本に来て、アルバイトしながら学費を払う。あるいは、来る前に一括で、初年度について入学金と年間授業料を振り込んでもらう、そういう形で学校経営が成り立つのであって、オンライン教育というのは、その後、入学して授業料を払うということを前提で、コロナ禍でサービス的に行っていたけれども、オンラインで現地の日本語学校が徴収する授業料の一部を日本の日本語教育機関がもらっても、日本語教師の方の給与をカバーできない、学校の収益にはつながらない、だからあまりそのことについては乗り気ではない、という本音をおっしゃってくださって、残念な気がしました。ただ、文化庁では、オンライン日本語教育を強化するプログラムを実施しておられ、コロナ禍を契機にオンライン教育が急速に普及している中、来日前から非漢字圏の留学生に対して日本語教育を強化していくということは、非常に重要で、検討の価値があることだと思います。
 それと同時に、この会議においては、専修学校における質の向上を目指していますので、専修学校に在籍している留学生、特に非漢字圏の留学生に対する教育と就職支援をいかに強化するべきか、多委員が御提案くださった在留資格の認定基準の見直しや、日本語教育機関在籍期間の延長も非常に重要なことだと思うんですが、同時に、専修学校における教育プログラム、特に職業専門実践課程で、職業実践的能力を伸長していく際に、留学生が多い分野、そして、人手不足が深刻な業界など、幾つかのポイントのある業界業種を選んで、留学生の就職につながる教育・支援に特化したワーキンググループの設置が必要ではないかと思います。一つの学校では、教育支援の負担が重いので、東専各や各地の専修学校の協会が関与して、留学生の就職に係る教育支援の取組を強化することが必要だと思います。
 その際、先ほど御紹介したキャリアアドバイザーの方は、国別にサポーターを配置して、国別の留学生の要望や持っている能力をきちんと聞き出し、採用企業のニーズとすり合わせて、学校と企業が彼らの職業実践的能力を育て、また、彼らの日本語学習上の課題にも配慮しながら、コミュニケーション能力を伸ばし、就職につなげていく仕組みをつくるべきという提案をされていたので、その辺についても御検討いただければと希望いたします。
 あと、学歴のこともおっしゃられていたと思いますが、高校を卒業して、日本語学校に入って専修学校に入るという学生、非漢字圏で多いというのは確かですので、それだけに様々なサポート、若いだけにいろいろな判断が十分できないところもありますし、大卒の人に比べればジェネラルスキルが低いところもありますので、その辺も含め、教育や就職支援の中で補強することを検討することが重要ではないかなと思います。
 ちゃんと答えられていないかもしれませんが。以上です。

【吉岡座長】  ありがとうございます。
 では、河原委員、お願いいたします。

【河原委員】  よろしいでしょうか。専門学校入学前の日本語能力の向上が問題解決の一つではないかなと考えております。例えば20年前、私どもの日本語学科に入ってくる留学生はほぼ中国人でした。当初、やはり所得の格差が多分にありましたので、アルバイトを実施しないと学費等を稼げないということもありました。それで、バイトをしながら学んでいくという状況でしたが、やはり漢字圏なので1年もしくは2年でN2等を取得できていました。逆に、私たち日本人は漢字に慣れ親しんでいますので、日本人がベトナム語やネパール語を学ぶとすれば、中国語を習得するよりかなり時間を要すると思います。
 それと同じように、現在、漢字圏の留学生と比較しても、ベトナムやネパールの留学生は日本語を習得するのにやはり時間が1.5倍から2倍以上かかってしまう。だから、専門学校に入ってから抜本的な日本語能力の改善を図ることは容易ではありません。やはり専門学校では専門分野に即した授業、カリキュラムが決まっておりますので並行して日本語能力の向上というのは容易ではありません。
 情報教育の分野で言えば、入学時にN1レベル位の能力がないと、クラスで中位以上の成績を納めることはなかなか難しいかもしれません。本人が自国語で書かれたテキストで自習学習するのであれば、それなら話は別ですが、そうであれば専門学校で日本語による授業を受ける意味はちょっと薄れてしまうのではないかなと考えております。

【吉岡座長】  ありがとうございます。
 通信状態が悪いので、もしも必要でしたら、この後、事務局からまた両先生に質問と、それからそのお答えを調整させていただく、それを共有するというふうにさせていただきたいと思います。
 多委員、それから寺田委員のメッセージは共有させていただけますか。この際、何か御発言があればと思いますがいかがでしょうか。よろしいでしょうか。

【寺田委員】  (チャットにて発言)主として多先生の御報告、特に在留資格の適用基準に関して、国際的通用性の話も出ましたが、規準として、「高度な知識・技能」だけでは、国際的には20年ほど前の話。職業基礎力とか職業行動能力、いわゆるコンピテンシー等の観点の評価を加えるよう、要望されてはと思います。

【吉岡座長】  多委員、どうぞ。

【多委員】  まず、日本語能力のことについて幾つか御質問を、多分、されたというふうに思って、こちらからちょっとお答えさせていただきます。もちろん日本語学校を卒業して専門学校に入るときに必要な日本語能力、例えばJLPTのN2以上、もしくはEJU200点以上、もしくは告示校で1か年以上の課程を持ったところに6か月以上在籍をして出席率80%ということがあるわけですけれども、それを越えた上で留学生を受け入れるに当たって、専門学校側が責任を持って受け入れるための基準をきちっと持っているかということが非常に重要かなというふうに思っています。
 例えば日本語能力についてですが、私どもの学校の例で恐縮ですけれども、日本電子専門学校のほうでは全ての授業を日本語で行っておりまして、講義内容を十分に理解できるだけの日本語能力というものを求めるために、入学試験においては、書類審査、それから日本語筆記試験、作文試験、面接試験、これらを全て日本語で行って、あらゆる面から十分な日本語能力を有することということを確認した上で入学を許可しております。また、入学後のサポートといたしましては、日本語能力の習得のサポートというものを非常に重視しています。具体的には、やはり非漢字圏出身者を中心に日本語への苦手意識を持つ学生が多いということもございますので、こうした学生に対して出席を義務づけております特別日本語講座、こちらは11コマ22単位時間、それから、入学後において、日本語能力試験JLPTの合格を目指す留学生を対象といたしました日本語能力試験対策講座、こちら、自由選択科目でございますけれども、20コマ40単位時間を開設しているところです。こうした入学前から在学中に至るまで、留学生に寄り添って日本語に対する不安を取り除いた上で、併せて就労意欲を高めていくことが専門学校にとっての責務であるというふうに考えております。
 それから、寺田委員のほうからメッセージをいただいておりますところで、在留資格の適用基準に関して国際通用性の話もしていたけれども、コンピテンシーの観点での評価というものを加えることが必要だという御指摘をいただきました。おっしゃるとおりだと思いますので、今後の未来会議の中で、こうした点も踏まえて私のほうからも発言をさせていただくよう準備をしてまいりたいと思います。
 御指摘いただきまして、ありがとうございました。

【吉岡座長】  ありがとうございました。
 それでは、時間も大分過ぎてしまいましたので、すみません、司会の不手際もございます。本日のところでの質疑等、先ほど申し上げましたように、場合によっては事務局のほうで確認をさせていただきたいと思います。よろしいでしょうか。
 それでは、何か事務局から付け加えること等ありましたらと思いますが、いかがでしょうか。
【中安専修学校教育振興室長】  それでは、次回会議についてはまた改めて日程調整をさせていただきまして、多先生のお話にもありましたけれども、教育未来のほうも年度の明けるところぐらいをめどにまた議論が深まっていくということですから、こちらも年度内ぐらいに次の会議をさせていただければと考えてございます。

【吉岡座長】  ありがとうございました。
 吉本委員、一言。

【吉本委員】  教育未来創造会議は教育未来創造会議なんですけども、多先生が言われている在留資格見直し要望の根拠となるような、つまり柔軟運用をするに足る教育課程を我々が持っているのかということはやっぱりエビデンスで支えていかなきゃいけない。関連分野就職という言い方があって、それをスライドの20でも取り上げられていて、専門学校は相当程度の関連性がないといけないと言われる。我々は、だから、それを示さないといけないんだと思うんです。
 教育実践専門課程の何でしたっけ、様式4で、ちゃんとその実質化をしようというような、昔、議論をしていましたけれども、その関連分野ということがどの範囲まで関連させてちゃんと育てているかということは、実はエビデンスがないので、私は実質化の議論のときに、そこまで細かいことまでは書かないでおこうというふうに止めましたけれども、ずっと止めていちゃいけないんです。やっぱりどこかの段階でちゃんとエビデンスを出していかなきゃいけない。どの範囲までを関連分野と実は言っているので、実は食品開発だってちゃんと広い分野に、実際、仕事をしていると、ちゃんと活用できている、そういうエビデンスを出すこと、つまり質保証としてはそういう仕組みをどこかにちゃんとつくらなきゃいけない。卒業生調査をちゃんとやりましょうということでもあるんですけど、そういうふうに少し戻していくことも含めて、今後、議論していただければと思っております。

【吉岡座長】  ありがとうございます。大変重要な論点だと思います。
 よろしいでしょうか。
 大分時間が過ぎてしまいましたけれども、それでは、本日の会議、ここにて終了させていただきたいと思います。
 どうもありがとうございました。ちょっと通信状態も悪くて申し訳ございませんでした。失礼いたします。
 
―― 了 ――

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