専修学校の質の保証・向上に関する調査研究協力者会議(第22回) 議事録

1.日時

令和3年6月29日(火曜日)10時30分~12時30分

2.場所

WEB会議

3.議題

  1. 職業実践専門課程認定校による事例報告
  2. 職業実践専門課程における実質化の考え方等について
  3. 今後の具体的な論点について
  4. その他

4.出席者

委員

伊与 浩暁  東京都生活文化局私学部私学行政課長
植上 一希  福岡大学人文学部教授
浦部 ひとみ 東京都立葛飾総合高等学校進路指導部、東京都高等学校進路指導協議会事務局次長
多 忠貴   学校法人電子学園理事長、全国専修学校各種学校総連合会理事
川口 昭彦  大学改革支援・学位授与機構顧問、一般社団法人専門職高等教育質保証機構代表理事
小杉 礼子  独立行政法人労働政策研究・研修機構研究顧問
佐久間 一浩 全国中小企業団体中央会事務局次長、労働政策部長
千葉 茂  学校法人片柳学園理事長、全国専修学校各種学校総連合会副会長
寺田 盛紀  京都先端科学大学客員研究員、名古屋大学名誉教授・客員研究員
前田 早苗  千葉大学大学院国際学術研究院教授
松本 晴輝  株式会社進研アド専門学校事業部長
吉岡 知哉  独立行政法人日本学生支援機構理事長
吉本 圭一  滋慶医療科学大学教授

文部科学省

根本 幸枝  生涯学習推進課長
金城 太一  専修学校教育振興室長
船木 茂人  専修学校教育振興室専門官
濱野 怜   専修学校教育振興室専修学校第一係長

5.議事録

【吉岡座長】 おはようございます。吉岡です。
それでは、所定の時刻になりましたので、ただいまより専修学校の質の保証・向上に関する調査研究協力者会議第22回を開催いたします。皆様には、御多用の中お集まりくださいまして、どうもありがとうございます。
新型コロナウイルス感染症の拡大防止を図るため、今回もウェブ会議方式にて開催させていただきます。会議は、今、事務局から御連絡ありましたようにライブ配信されますので、委員の皆様、またヒアリングで発表される皆様におかれては、その旨御留意の上、御発言ください。
まず初めに、事務局に交代がありましたので、御紹介いたします。どうぞ。

【船木専修学校教育振興室専門官】 今年の4月から河村の後任として着任しました船木でございます。よろしくお願いいたします。

【吉岡座長】 続いて事務局より、本日の配付資料の確認をお願いいたします。

【金城専修学校教育振興室長】 本日の配付資料ですけれども、資料1-1及び1-2、資料2から資料7、参考資料といたしまして1から3を御用意しております。
以上でございます。

【吉岡座長】 ありがとうございます。
それでは、議事に移ります。本日は最初の議題として、職業実践専門課程の認定を受けている専門学校から、事例の報告をいただきます。
発表される専修学校関係者の皆様におかれては、御多用の中、御出席いただきまして、誠にありがとうございます。
それでは、まず最初に、北海道ハイテクノロジー専門学校事務局次長の藤井様、よろしくお願いいたします。

【北海道ハイテクノロジー専門学校(藤井)】 北海道ハイテクノロジー専門学校の事務局、藤井でございます。貴重な機会を与えていただいてありがとうございます。それでは本校の産学連携教育について御説明させていただきたいと思います。スライドのほうは出ておりますでしょうか。
まず、産学連携教育についてのお話なんですけれども、我々の産学連携の仕組みというのが、この学校の成り立ちと少し関係があるものですから、まず簡単に、本校の成り立ちについて触れさせていただきたいと思います。
本校、北海道ハイテクノロジー専門学校は、現在、約80校ほどの専門学校を運営しております滋慶学園グループの一員になります。グループ7校目の専門学校として、1988年に札幌近郊の恵庭市というところに開校した学校でございます。
開校の経緯なんですが、当時、グループ校であります東京医薬専門学校、そして大阪ハイテクノロジー専門学校というところで、主に薬業のテクニシャンを扱う、バイオテクノロジーの学科というものを展開しておりました。当時は非常に珍しい学科でございまして、これが新聞に取り上げられました。この新聞記事を当時の恵庭市長が御覧になりまして、それで恵庭市のまちおこしのためにも、こういった新薬の創薬というようなものを産業におきたい、そのために教育機関も誘致をしたほうがいいのではないかということで、大阪の本部までいらっしゃいまして、要請を受けて、その要請に応えて学校を設置したというような事情でございます。
そういう意味では、新薬を作っていく産業というのはまだまだ世の中にたくさんあるわけではありませんで、教育機関もほとんど、大学を除けばなかったわけですが、それを職業人教育として行うということでは、前例がない教育を組み上げる必要がありました。
次のスライドをお願いします。
教育を組み上げるのに、体系がまだ確立されていないということですので、企業から教わってつくるしかなかったんですね。そういう意味で、開校の当初から産学連携というのを大事につくってきたというような経緯でございます。
つまり、実践的な教育をしていくんだということは、もちろん意味としてはあるんですけれども、それ以上に、体系化されていない新しい分野の教育を、企業と一緒につくり上げていくという教育構築の方法論の枠組みとして、産学連携が学校の中に定着していったものでございます。
この学校、30年を既に超えているんですけれども、その中ではたくさんの新設学科を、それ以降もつくってきたんですが、近年、AIとテクノロジーが融合して、非常に大きな社会変化を生んでいます。そういう中で、産学連携の重要性というのはますます高まってはいるんですけれども、パートナーの企業を見つけることが非常に難しくなってきたということも、偽らざる実感の中にあります。
次のスライドをお願いします。
そのような状況の中で、大変力強い御助力をいただいている企業さんがございまして、こちらにありますNoMapsというところなんですが、これは札幌を中心にベンチャー支援、コンベンションなどを運営する会社です。そこで代表をしておられる廣瀬さんという方が、もともと(音声途切れ)関係の深い方でして、この方に御助力をたくさんいただいているところです。
テクノロジーの融合で新しい教育をつくろうとする時、やはりロボティクス、ロボット技術の学科が必要ではないだろうかと思いまして御相談をしてみましたら、NoMapsのコンベンションに廣瀬さんからお誘いをいただきまして、そのコンベンションの席で、今、北海道の大樹町というところで、インターステラテクノロジズという会社をつくって、堀江貴文さんが宇宙開発を進めておられるんですね。この方もコンベンションに参加をしておられまして、それで講演を開かれていたので、これを聞く機会を得ました。
その講演を聞いて非常に思うところがあったんですけれども、堀江さん、こんなふうにおっしゃっていたんですけれど。今、脱炭素社会というのを世界中で目指していく中で、本格的にガソリンエンジンから電気自動車に転換していくことになりますね。そういうことになると、今まで内燃機関の製造に携わってきた人はたくさんいるわけですけれど、この大量の労働力が必要なくなってしまう。非常に重要な技術なんですよね。その技術がなくなってしまうというのは非常にデメリットなんですけれど、この技術がこの先、生かせる分野というのが、もはやジェットエンジンとロケットエンジンしか残っていないだろうと。こんなふうにおっしゃっていたんですね。
なんですけれど、近年の技術の発展を考えていくと、恐らく40年か50年もしたら飛行機も電気で飛んでいるんじゃないかというようなことを考えて、北海道という地でロケットの開発をやっているんだということをおっしゃっていて、非常に心に残るものがありました。
次のスライドをお願いします。
この堀江さんのビジョンに非常に強い共感を覚えまして、もともとロボティクスの学科を予定していたんですけれども、この学科の中に、宇宙開発を接続するということを構想いたしまして、ここにあります宇宙・ロボット学科という3年生30名の学科を、今年度4月に開講いたしました。これは本当に誰もつくったことのない学科ですので、教育の方法論も、既存のものが存在しないということですので、もちろん堀江さんに教えていただけると一番ありがたかったんですけれども、なかなか残念ながら教育連携までは結びつかず。
そうなんですけど、北海道には、インターステラさん以外にも宇宙開発で有名な企業が一つございます。これは、もともとYouTubeなどで私も見て非常に感動していたんですけれども、植松努社長という方が、教育の世界から「どうせ無理」というのを無くそうじゃないかという、非常に感動的なプレゼンテーションをされていて。
この会社、植松電機株式会社というところなんですけれども、もともと、今もメインの事業は、産業廃棄物用のより分けをするマグネットの開発会社なんですけれど、このすばらしい技術を使って宇宙開発をやってみようじゃないかということで、社業として宇宙開発の方も取り組んでいらっしゃるという会社でした。
次のスライドをお願いします。
植松さんです。どうしてもこの人にお手伝いいただきたいなと思いまして、連絡を取りましたら、植松社長御自身で御対応いただきまして、私どものカリキュラムの考え方のようなものをお話しして、御意見を伺いましたら、植松さんは、こんなふうにお話をされたんです。大学で学ぶ流体力学というのが、ロケット開発では全然役に立たないんだと。植松社長御自身も工学系の大学を出られていまして、いろんな勉強をしたんだけれども、今の宇宙開発をやっていく中で、役に立つものは一つもないというようなことをおっしゃっていました。
実際、植松社長は現在も全国の工学系の大学で、特別な講義などを担当しておられるんですけれども、その際にこんなふうにおっしゃったんです。受験勉強に時間を費やしてきた学生さんたちというのは、いつも正解を探している。正解探しをしていると、今まで誰も作ったことのないロケットというのは作れないよというようなことを教えてくださいまして、非常にそのとおりだなと思いまして。我々のカリキュラムを、一から植松さんと一緒に考えさせていただいて、こういうコンセプトになったんですけど、失敗から学ぶことが非常に大事なんだということを体験できるような、産学連携の教育システムというのをつくっていこうじゃないかということになりました。
次のスライドをお願いいたします。
こちらが本日の本題になると思いますが、職業実践専門課程の中でも産業界と組んでいくことの一つの意味合いは、PDCAのサイクルで回していくというところだと思います。我々の教育システムも、今、たくさんの学科を持っておるんですけれども、ほとんどの学科でPDCAサイクルを軸にした教育というのを組み上げているんですね。
この宇宙・ロボット学科では特に、失敗というものにフォーカスしたPDCAサイクルを組んでいるんですけれど、このPDCAサイクルの中で失敗というものを軸に置くとすると、失敗自体の品質というんでしょうか、質のよい失敗というようなものがやっぱり重要になってくるということで、どうすれば質のよい失敗というものが、数多く学生さんに体験していただけるのかというようなことを考えているところでございます。
今、この4つのサイクルを見ていただいていると思うんですが、左下の課題・発案というところから始まってまいります。要するに課題を抽出していくということなんですけれども、この課題は、よくあるように学校から与えられた課題だと、先ほどの植松さんのお話にもありましたが、学生はあらかじめ用意された答えがあるものだと思ってしまうんですね。そうすると、せっかく失敗しても、それは正解を知らなかったからだと判断をして、誰かほかの人のせいでの失敗なんだというようなことになって、つまり、失敗の質が低くなってしまうんですね。
ですので、ここではどんな課題を提供するかというと、社会課題です。社会にあって、自分の身近にあって、これを解決すると人々の生活がもっとよくなる。そういうような社会課題をテーマにすることで、自分の生活をよくするための課題解決ですから、そこで失敗すると、どうしたら実現できるんだろうかという思いに到達するような、質のよい失敗ができるのではないかということで、これを発案しているわけです。
これを発案したきっかけがありまして、これは、開校以来から情報処理系の学科が私どもにありまして、今の名前はITメディア学科というふうに呼んでいるんですが、これはもちろん既に職業実践専門課程に御指定いただいている学科です。この学科でも社会課題というのを非常に大事にしておりまして、卒業研究に採用している社会課題というのが例として分かりやすいので、少し御披露したいと思うんですが。
昨年度の卒業研究で取り上げられたテーマは、緑内障、目の病気ですね、緑内障の患者さんは視野が狭くなるんですね。この狭い視野で自動車を運転すると非常に危ないということが、報道としては出ている情報なんですけれども、なかなか一般に実感として浸透していないということがありまして、こういう社会課題を解決できないだろうか。私どもの学校には、視能訓練士学科という眼科の補助員を扱う学科も持っておりまして、そこの学科が提供してくれた課題なんですね。
これを学生たちに投げましたところ、それでは、自動車の教習所へシミュレーターのようなものを作って設置してはどうだろうかというアイデアが出てきて、そのためのプログラムを開発するということを始めたんです。その際にパートナーはどういうところがいいか、みんなで話し合って、ゲームの開発会社がいいんじゃないかということで、昨年、ゲームの開発会社さんと一緒にこういうシミュレータープログラムというものを開発して、一つのゲームの形に仕立てて、これを卒業研究にしようじゃないかと。
非常にいい取組だなと思いましたし、社会課題を解決するというテーマが、学生たちの良質な失敗を生むということを非常に体感したところでありましたので、この新しい学科でもこのようなことをテーマにやっているところでございます。
そして、サイクルはその左上の設計・製作というところに行きます。
社会課題を解決するということは、まだ解決されていないということですから、そのための技術というのはまだ存在してないわけです。そういうための機械を製作するということになると、まだその機械を作るための計器というんでしょうか、いろいろなデータを取るための機械も存在していなかったりするんです。そういう意味で、計器の開発のところから始められる勉強をすることになっています。
こうなると、もはや教科書のようなもので学ぶということでは、到底その教育が成立しないので、実際に企業の方を学校にお呼びして、そういうときはこういうふうにつくるといいよというようなことを教えていただく、ゼミのような形態の授業が必要になっています。
現在は、植松電機さんはもちろんなんですけれども、もう1社、ロボティクスの会社からもお一人、社長さんなんですが、来ていただきまして、このお二人に毎週授業に来ていただいて、学生たちにアドバイスをしてくださっているというような状況でございます。
そして次のサイクルに行きますと、その横、右側の上に製造・実行とありますが、つまり、実機の製造を行うことと、その動作確認などを行っていくことになってまいります。学内にも3Dプリンターですとか切削機のようなものは、当然用意しているんですけれども、なかなか最後まで作るというのは、学校の設備だけでは追いつかなくなってくるような場合もございまして。先ほど来からお話が出ております植松電機という会社は、学校から車で1時間ちょっとかかる赤平というところに社屋があるんですけども、ここに何でも作れるような機械が山ほどありまして、この施設を活用させていただきまして、もうパンフレットには、会社がある土地は赤平というんですが、赤平キャンパスと言ってしまって、定期的に全員で訪問して、実機を製作するようなことをお手伝いいただいているということでございます。そうなりますと、向こうにいらっしゃる社員の方も先生になってくださるということで、現場の実感のようなものも学べる、非常に御貴重な学びになっているところでございます。
最後、その右下になります実験・検証ということですが、これは本当にその社会の課題が解決できるものなのかどうか、そしてまた次の学びに結びつけていくためにも、たくさんの検証データを取っていく必要があるんですけれど、このデータを取るための計器というのも、やはり高価であったり多数に及ぶものがありますので、これも赤平キャンパスの中で植松さんに御協力いただいてやっているわけですが。
特に宇宙開発ということになりますと、無重力環境というのをつくる設備が必要になってくるんですけれど、日本には実はここにしかないんですね。なので、全国の企業さんがここで実験をしているという場所なんですけれども。そういう意味では日本中の宇宙開発企業の皆さんと触れるような機会というのも、非常に秘密の多い業界ではありますので、何か教えてくれという訳にはいかないですけれども、実態としてやっているシーンというのは学生たちにも体感できるという、非常に貴重な機会になっているところです。
ここでたくさんのデータを得まして、そしてまた学校に戻ってきて、そして課題抽出と次のプランの発案というところに入って、このサイクルがぐるぐる回っていくというようなことが、今行われているPDCAサイクルでございます。
このPDCAサイクル、非常に有効な仕組みだなと思っておりまして、我々、実はスポーツ系統の学科もたくさん持っておるんですけど、アスレチックトレーナーとか、鍼灸師とか、柔道整復師というような医療とスポーツのはざまにある学科を、非常にたくさん養成しています。こういうところでも、実際に触れる、患者さんに触れて症例を集めていくというのが最初のところになるんですけれど、その症例をみんなで、僕はこんなふうに診断したんだけど君はどうかなというようなことで、検討していく場をつくっているんですね。この検討していく場に、実際のアスレチックトレーナーの方やプロの鍼灸師、柔道整復師のような方がいらっしゃるのと、いらっしゃらないのとでは、診断の質というものが大きく変わってきます。この業界の方にも一緒に入っていただいてPDCAを回していくということは、学校全体の中で、ほぼ全ての学科で取り組んでいるところでございます。
ところで、この実践性の高い教育は、とはいえ、先生方にとっては非常に負担も強いですし、業界の方に教えてもらうということになってしまうので、自分たちの仕事は何なんだろうかというような抵抗や混乱のようなものが、やはりあるんですね。それでもこの仕組みがいいなと思って、全面的に導入を決めた背景が一つございまして。これも御披露したいと思うんですけれども。
札幌に札幌新陽高校という私立の高校があるんですが、荒井優さんという若い校長先生が学校改革をして、近年V字回復をして話題に上った学校なんですが、荒井優さん、次の衆院選に出馬されるというようなことも報道で出ておりましたが。
この荒井さんという方、実は私は株式会社リクルートの出身なんですが、同じリクルートの出身でございまして、知人を通じて交流もあり、札幌でお話を伺う機会もありまして、その時にいろいろ教育のことを伺ったんですけれど。
新陽高校でやっているコアな取組というのは、探求コースという新しいコースをつくっているんですね。この教育構築が非常に野心的な取組で、このことに大きな刺激を受けたんですが。探求コースには、固定的なカリキュラムが存在しませんで、それぞれの生徒さんたちがやりたいことを挙げて、そのやりたいことを先生方が一生懸命、指導要領上の科目に当てはめていくんですね。と言っても、ちょっとイメージしにくいかと思いますので、一つ事例を申し上げたいんですけれども。
2019年だと思うんですが、SDGsクリエイティブアワードというイベントがありました。ここに探究コースの1年生が、「貧困をなくすために私たちができること」というテーマの映像を出品したんですね。この映像、札幌市長賞などを取った取組なんですけれど、スタート時点では、SDGsを英語で説明できるようになりたいという、生徒の自発的な取組なんです。この取組に先生が、この部分は英語、この部分の作業は数学、この部分は歴史、この部分は地理というふうに当てはめていって、このプロジェクト全体を教育の形に構築していくということにして、これを授業の中で活動して、作品を作り上げていったということなんです。

【吉岡座長】 藤井様。申し訳ございません。ちょっと時間のこともございますので、少しまとめに入っていただければと思います。

【北海道ハイテクノロジー専門学校(藤井)】 長くなって申し訳ございません。
ここの部分がまとめといえばまとめなんですけれども、PDCAサイクルを企業とやっていくことに関して言うと、教育を科目として組み上げていくというよりも、企業さんのノウハウのようなものをPDCAサイクルの中に生かしていって、我々自身がその産業のサイクルを教育のサイクルに構築し直していくということが必要で、これが実態に効果を上げているというところでございます。
以上でございます。

【吉岡座長】 ありがとうございます。急がせてしまって申し訳ございませんでした。

【北海道ハイテクノロジー専門学校(藤井)】 いえ、すみませんでした。

【吉岡座長】 では、ちょっと質疑の時間を取りたいと思いますので、ただいまの説明について御質問があれば、どなたからでも、どうぞお願いいたします。手を挙げるボタンを押していただければと思います。
それでは、植上委員、お願いいたします。次に前田委員、お願いいたします。

【植上委員】 植上です。貴重なお話ありがとうございました。とても興味深かったんですけれども、最後に説明していただいた点で、補足でいただければと思うんですけれども。産業のサイクルを教育のサイクルに落としていく、その際に専門学校の先生たちがどのような主体性を持ってこれをしていくのかというところが、すごく大事かなと思います。先ほど先生から伺った話だと、自分たちの仕事は何なんだろうかというような、率直な疑問を挙げられる先生も多かったという話なんですけれども、その辺り、先生方がやられている工夫とか、もしくは学校の経営者の方とか、学科主任の先生方がどういうようなリーダーシップを発揮されているのかということをちょっと伺えればと思います。
よろしくお願いします。

【北海道ハイテクノロジー専門学校(藤井)】 実際に先生方は、自分が先生であるという立場が大事であると感じるケースが多いと思います。それでも、我々が養成しようとしているのは、次の時代に自分の足で生き続けていくような人材を養成しているんだよという経営からのメッセージを全職員に常日頃からお話ししていまして、そのためだったら、企業で今やっていることを僕たちも学んで、それを学生に身につけてもらう仕組みを、それを学生に理解させるところは我々の技術だよというようなところで、研修なども年に2回ほど行って、振り返りと教育のやり方、この学科はうまくやっているというようなやり方を学び合うことで、何とか実現をしているという感じです。
不十分なところはたくさんあると思いますけれども、そのような方針でやっております。

【植上委員】 ありがとうございます。経営者側からの積極的な働きかけと、また研修等の支援等が考えられているということなんですね。

【北海道ハイテクノロジー専門学校(藤井)】 はい。

【植上委員】 ありがとうございました。

【吉岡座長】 ありがとうございます。
それでは、前田委員、お願いいたします。

【前田副座長】 貴重な御発表、ありがとうございました。細かいことでお伺いしたい点があるんですけれども。今、各大学でも、グループでいろいろな活動をして、教育を主体的に動かそうとしているんですけれども、例えばフリーライダーというような、グループでやると積極的にできる人と、そうでない人といたりして、これだけのPDCAにつなげていくような活動の中で、学生がきちんと伸びているかというような、それぞれの学生の把握がうまくできているのかというのが1点目です。
もう1点は、大変すばらしい企業の方、企業との連携があったということなんですけれども、これが一般的に広がるためにもぜひ伺いたいのは、企業にとってのこの活動のメリットというのがどこにあるのかという点なんですね。
以上です。どうぞよろしくお願いいたします。

【北海道ハイテクノロジー専門学校(藤井)】 まず1点目でございますが、評価に関しては、通常どおりの学習成果の評価というのももちろん行うんですけれども、それより重要なのが、1時間の学生の満足度であろうというふうに思っておりまして。多くの学科で採用しているのが、グループでディスカッションを行うということを、学習の中心に置くということです。このグループは、やってみたところ4人ぐらいがちょうどよくて、4人になると、大体1人ぐらい、その中で中心人物が生まれてきて、はじかれる人がいないというか、全ての学生の満足感が維持された状態で授業が進んでいくということが幾つかの学科で報告されていまして、いい方法だなというふうに今は感じております。
とはいえ、最終的には学生自身の努力というものが、評価を最終的には決めますので、その件に関しては、中間で一度、君はちょっと危ないよというようなところがあれば、個別に指導していくという方法しかないのではないかなと、私のところでは思っているところでございます。
2つ目の企業のメリットというところなんですが、直接的なメリットが見いだせない企業というのは、やっぱり協力してくれないんですよ。今日御紹介した企業もそうなんですけれど、教育自体がこの産業に必要なんだと思っていらっしゃる方でないと、本当にすごい御負担をかけるんですよね、このやり方というのは。ですので、もう本当に企業が、自分たちの産業界の未来を危ぶんで優秀な人材が欲しいんだと思っているところでないと、やっぱり協力してもらえないということですね。そういう会社を根気よく探していくということしか、今のところないんじゃないかなと思っているところです。
以上です。

【吉岡座長】 ありがとうございます。
では、千葉委員、お願いいたします。

【千葉委員】 ありがとうございます。藤井さん、どうも久しぶりですね。

【北海道ハイテクノロジー専門学校(藤井)】 どうも、御無沙汰しております。

【千葉委員】 大変お久しぶりでございます。御活躍で、大変うれしく思っております。
私の質問は、プレゼンテーションをお聞きして、学生さんたちは大変高い意欲を持って勉強されているんじゃないのかなと、楽しく毎日通学されているんじゃないのかなと思うんですけれども。この30名の学科で、宇宙、そしてロケットということになると、その基礎の範囲がものすごく広いということと、北海道の恵庭という場所でやる場合、そういう基礎科目を教える先生方というのをどういうふうに調達されるのか、その辺は全国の学校にも大変参考になるお話じゃないのかなと思いますので、少しその辺についてお話を伺えればと思って質問させていただきます。

【北海道ハイテクノロジー専門学校(藤井)】 ありがとうございます。
そういう意味では基礎科目という考え方を、植松さん御自身も持っておられないんですよね。先に作るものがあって、そのために必要なものを全部僕が教えるよというような形でやっていますので、そういう意味では大学と非常に違っていまして、数学ですとか物理学の基礎みたいなものをすっ飛ばして、物づくりをスタートしちゃっているんですよね。
恐らく進んでいくと、物理のこの方程式が分からないとやっぱり進まないみたいなとこが出てくるんですね。それで今日は御紹介しなかったんですけれど、Udemyという動画の学習ソフトウエアを契約しておりまして、ここは教員の出番なんですけれど、おまえ、ちょっとそこ分かってないとできないぞというときに、これを見とけということで、これは正課の授業の中でなく、家でやってこいと。言わば、ある種ちょっと変形した、反転授業のようなものを、テクノロジー系の学科では取り入れています。
スポーツ系のものは、そういう感じの教材があまりないんですよね。それで、教員が補習のような形でそこを補っていくというようなスタイルになっています。
お答えになっておりますでしょうか。

【千葉委員】 ありがとうございます。その辺での学習の質というものが、学生たちの自主性にある程度任せるということになると、少しばらつきが出る可能性もあるなと思ってお聞きしたんですけれど、併せてお答えいただければと思います。

【北海道ハイテクノロジー専門学校(藤井)】 ばらつきの補正に関しては、教員の腕次第みたいなところに今はなっちゃっておりまして、そういう意味では、そこが今の一番の課題かもしれないです。

【吉岡座長】 ありがとうございます。
それでは、小杉委員、お願いいたします。

【小杉委員】 ありがとうございます。前田委員の2番目の質問と重なるんですけれども、やっぱり実践性を担保するためには、企業との深い関係が非常に重要だと思うんですけれども、制度上というか、行政の後押しでそういうものをやり易くするような工夫みたいなものって、何かこういうものがあればよかったのにとか、何かあったら教えていただきたいのですが。

【北海道ハイテクノロジー専門学校(藤井)】 今、特に企業との関係の中で、特にお手伝いいただけている企業に関しては、困っているところはないんですけれども、そういう意味では手伝ってもらえなかったところは、私どもが講師料としてお支払いできる金額というのが、やはりそれほど潤沢には用意できないんですよね。
それで、これは東京のコンサルティング企業でしたけれども、我々としてはびっくりするような講師料を請求されたことがございまして、これ、お支払いできないですと言ったら、補助金はないんですかと言われまして、いろいろ探してみたんですけど、なかなか発見できなくて、それで実現できなかったという経緯があります。後押しということで言えば、講師料を補填するような補助金の制度などが分かりやすい形でありますと、我々としては、助かったなというふうに思うところはあります。

【小杉委員】 ありがとうございました。

【吉岡座長】 どうもありがとうございました。藤井様、失礼いたしました。途中で話を切ってしまいまして。でも、今の質疑で随分いろいろなことが分かったと思います。大変興味深い御発表で、ありがとうございました。
もしも付け加えたようなことがありましたら、この後、東京テクニカルカレッジのお話がございますので、その後の時間にでもまた、必要な補足があればと思っております。

【北海道ハイテクノロジー専門学校(藤井)】 いえ、大丈夫です。

【吉岡座長】 ありがとうございます。
それでは次に、東京テクニカルカレッジ校長の白井様、よろしくお願いいたします。

【東京テクニカルカレッジ(白井)】 皆様おはようございます。東京テクニカルカレッジ、校長の白井と申します。どうぞよろしくお願いします。
本日は貴重な機会をいただきまして、どうもありがとうございます。短い時間ではありますが、当校の教学マネジメントと企業連携に関して、御説明をさせていただきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
それでは、表紙をめくっていただいて、2ページをお願いします。
まず、お話を進める前に、職業教育における質保証のフェーズ合わせをちょっとしたいということで、まず1番目のレイヤーとして、教学マネジメントという大きな一般的な捉え方があるのかなと。その下に2番目として、職業実践専門課程における質保証というレイヤーがあって、最後に各校独自の、それぞれの教育マネジメントがあるのかなと思っております。
私どもは、ここに0から10までの教学マネジメントの手法を提示させていただいているのですが、これらを通して今マネジメントしておりますが、前半はこの教学マネジメントについてお話しさせていただきますので、3番と1番を行ったり来たり、そんなレイヤーの行き来があるかなと思います。後半の発表は企業連携のお話をさせていただきますので、2番と1番の間を行ったり来たりということになろうかと思いますので、御承知おきください。
それでは、3ページ目をお願いいたします。
まず、初めに学校紹介させていただきますが、学校法人小山学園と申します。その中の1校、専門学校東京テクニカルカレッジと申しまして、建築、IT、バイオ環境の3分野に11学科を擁する工業系の専門学校でございます。新学科を除いて、職業実践専門課程に認定していただいております。
学園理念は、左の中段にありますが、「技術者を目指す全ての人の夢を受け止め、高い技術力と豊かな人間性を備えたプロフェッショナルを育成し、社会に貢献します」と、これを掲げて、日々職業教育に邁進しております。
この中で、高い技術力、豊かな人間性とうたわせていただいておりますが、高い技術力のほうは職業実践専門課程、そして、今私たちがつくり上げてきているステップクリア授業という教学マネジメントによって、技術力を身につけさせたいというところです。それから、社会性、豊かな人間性のところで、エンジニアとしてクリエーターとして、やはり仕事がやれる力を身につけさせたいということで、私ども独自のリアルジョブプロジェクトというPBLを使っております。この手法を使いながら、高い技術力と豊かな人間性を備えた人材を、社会に向かって輩出していきたいというのが、私たちの学びの概要でございます。
左側の下段ですが、日々の授業は、常勤教員、ほぼ全員が実務家教員でございます、それから企業からも非常勤講師に来ていただいて、ほぼ半々の割合で事業を担当しております。
それから、今日は、右側のインデックスになりますが、まず最初に独自の学びのステップクリア授業のお話をさせていただくのと、2番から5番までは企業連携のお話になります。PBLの話、それから企業連携の正規の授業のお話、eポートフォリオ、専門人材未来会議という教員研修のお話をさせていただいて、6番目として、今、新学科をつくっておりますが、これは企業連携と1番の教学マネジメントをミックスさせてつくっていこうというお話をさせていただきたいと思います。最後にまとめということで、3つのPDCAと企業連携というところを結びにさせていただきたいと思います。
それでは、次の4ページをお願いいたします。
まず、教学マネジメントのほうのスタートですが、1の0)と書いてありますが、大前提として、私どもは2000年から5期制を採用しております。短い学習期間で学習成果を確認しようということで、学習の積み上げを確かなものにしたいということでございます。また、科目を単元ごとに細分化することで、科目相互の関連づけも容易にしていきたいということで、期ごとに学習のテーマを設けて、極力それに関連するものを同時に学ばせていきたいということで、学生の相互理解を促すということを考えております。
例えば表中に赤枠がありますけれども、建築科の1年3学期は、住宅の設計をテーマに授業を進めますので、建築計画、建築法規、構造、施工等、そこも同時に住宅のことを中心に勉強させていくということで、総合的な理解を促していこうと。ここでマンションの話をしても、なかなか腑に落ちてきませんので、関連科目をなるべく集中して学んでいくことで相互理解を促すという努力はしております。
それと、一番下の赤い文字ですが、期首に履修ガイダンスをやりまして、そこで各科目の「わかる目標・できる目標」を提示して、学習に目標を持って進むようにということで学生指導をしております。それから、7週間ごとに履修判定試験を実施して、短い期間で学習成果を確認すると。そんな取組をしております。
では、5ページをお願いいたします。
教学マネジメントの一番源流、出発点になります、ディプロマポリシーをつくろうということで、卒業時の到達目標をつくるというところであります。
これはバイオテクノロジー科のディプロマポリシーですが、オレンジの文字で、1.生物分析、中段に2.物質分析、下段に3.実験研究計画とありますが、このように、それぞれの分野を3つから4つの技術カテゴリーに分けて、その中に通しで丸1から丸10までの到達目標を書いております。ここで重要なのは、全ての明文化された文章の文末、末尾は、「何々ができる」と表現させていただいております。何を教わるか、何を教えるかというアウトプットではなくて、学習者が何ができるようになるか、ラーニングアウトカムズ、学習成果を重視して記載しようということで、職業教育の場合はこういう表現が特に重要だと、私どもは考えております。
それでは、6ページをお願いします。
ディプロマポリシーが完成すると、次は履修科目表に入ってまいりまして、ディプロマポリシー実現に向けて、必要科目を過不足なく準備して、それぞれの各科目とDPとの関係を精査しようということで、表の右側にDP項目という欄がありますが、丸1から丸10までの技術目標が掲げられていて、それぞれどの科目がどのDPを下支えするのか、そのことを明らかにしております。
それでは、7ページをお願いします。
ディプロマポリシーができて履修科目表ができた後は、カリキュラムフローをつくって科目相互の関係性を確認し、体系化しようという取組をしております。学習効果を高めるために、各科目をどの期に実施するのが一番効果的か、他の科目の理解も踏まえて一番いいタイミングで教えていきたいということで、科目の関係性を精査するようにしております。
そして、このカリキュラムフローは、教育課程編成委員会でも非常に分かりやすいということで、協議においても非常に有効かなと思っております。そのためにも抽象的なカリキュラムマップではなくて、具体的な科目の配置をフローにまとめることが、私たちは重要かなと思っております。
これは建築科のカリキュラムフローですが、4年前ですか、講義と実習の間にちょっと隔たりがあるということで、演習科目を入れたらいいのではないかということで、講義と実習の間に演習を差し込んだときの一つの提案のカリキュラムフローになります。こうやって結構動かしながら、改善が見えてくるという意味では、カリキュラムフローが一番分かりやすいのかなと私どもは思っております。
それでは、次、8ページをお願いします。
ディプロマから履修表、カリキュラムフローができたところで、各科目のシラバスになりますが、私どものシラバスは、「わかる目標・できる目標」というものを提示させていただいています。ディプロマポリシー同様シラバスにおいても、その科目で何を教わるかではなくて、学習者が何ができるようになるか、ラーニングアウトカムズで書こうということで、それが我が校では「わかる目標・できる目標」ということになります。
表中、ブルーのところがシラバス、概要になりまして、アウトプットが書かれておりますが、その下に、アウトプットを越えてラーニングアウトカムズを書こうということで、「わかる目標・できる目標」を掲げております。期首の履修ガイダンスにおいて、一生懸命学べば7週間でこういうことができるようになるんだよということを学生には周知しておりますので、目的を持って学習に臨む学生が多くなってきております。そういった意味でも、「わかる目標・できる目標」というのは結構、学生にとっても分かりやすいのかなと思っております。
7週間後は、この「わかる目標・できる目標」が達成できたかどうか、履修判定をするということでございます。
それでは、9ページをお願いいたします。
「わかる目標・できる目標」ができたところで、それを達成するためにどうプロセスを設計するのかということで、コマシラバスを書いております。どのコマで何をどこまで教えるのか、設計を行っていくということで、これを学生にも、教員にも公開しております。学生は、「わかる目標・できる目標」、そしてそのプロセスをもって目的を持って学べる、モチベーションも上がってくる、場合によっては予習も可能だというところでございます。
教員間も、学科長は当然、全コマシラバスを読んで管理しておりますが、教員間同士は、お互いに何をやっているのか見えないところがありますので、不要な重複などないかどうか、関連科目をお互いに見て、自分の科目と精査するということでも、有効かなと思っております。
そして、このコマシラバスを基に、シートカルテという各授業の設計に入ってまいります。
それでは、10ページ目お願いいたします。
私どもの授業は90分授業ですが、全ての授業、全ての学科、この授業シートと授業カルテというものを使って授業をやっております。90分授業の最初、冒頭の10分に、授業シートを使って今日の学習はどういう目標の下にやるのかということで、10項目の学習目標を、授業の最初に提示させていただいております。授業の中身はほぼ60分ほどなんですが、最後の残り20分で学習目標の達成度の確認をしようということで、授業カルテというミニテストを実施しております。3番の問題が目標3番とリンクしておりまして、例えば3番を間違えたら3番の理解ができてないんだということで、授業を終えて、自分は何が分かって何が分からないのか、つまびらかにしようということで、この授業シートと授業カルテを使って行っております。
重要なのは、欄外右側のフローの丸3のところに、「学生が誤答箇所をデータベースに入力」と書かせていただいておりますが、授業終わった段階で、「カルテの点数、データベースに入れといて」と担当教官が言いますので、全ての学生が端末からデータベースに、自分の間違ったところを入れてくれています。そうすると、理解不足の学生の特定、そしてそれの補習につなげることができますし、例えば40人に講義して3人しか分かってない問題があれば、それは責められるのは圧倒的に先生だろうと思います。授業時間が短かったのか、教材が悪かったのか、何らかこちらに問題があるわけですから、それは授業改善に向かわせたいということで、データベースにデータを取り込むということを行っております。
それでは、11ページをお願いします。
これはちょっと生々しいんですが、私たちが使っている出席簿そのものの実例でございます。ここでは2つのことをやっておりまして、一つは、赤い文字でAと書きましたが、理解不足の学生を特定してコマ補習をするという流れです。学生をフォローアップするというのが一つ。Bは、青文字で書かせてもらいましたが、授業評価をしようということで、90分ごとの授業がどれぐらいの精度だったのかというのを、7段階で評価しようという取組をしております。
まず、Aの赤いほう、理解不足の特定とコマ補習のお話をします。こちらは出席簿の実例ですが、A丸1、カルテ点数確認という赤い枠があります。ここで出欠席を、例えば8番の方は欠席です、12番の方は就職でおりません、あと点数が書いてありますが、これがカルテの点数になります。これを書き入れたところで、下段の表にA丸2という赤枠がありますが、ここに理解不足者の名前が実名で出るように、システムが設計されております。例えば、未提出者という欄がありますが、欠席や就職活動でいなかったら、ここにお名前が入ってきますし、カルテの点数が60点未満になると、不合格点数者という欄にお名前が出てきます。例えば40人に話して4人の方が分からないということであれば、その授業は10%の課題発生が出たというふうに、私たちは認識するようにしております。
A丸3、上段の表に小さい赤枠がありますが、1と0で表記があります。0が違ったところでございますから、13番の学生は3番目を間違えて90点だということが分かりますし、60点未満の者にはなるべく時間を空けずに補習をするということで、A丸4、理解不足者へ補習をして補習記録を書くと、課題残率が減るという仕組みをつくっております。例えば、40人に話して4人が分からなければ10%の課題が出て、3人に補講をすれば7.5%補講が終わって、残っている補講、課題の残率が2.5%だということで、授業の進捗を図る取組をしております。
青い枠のところは、7段階で授業を評価しようということで、一人一人の先生を評価するのではなくて、90分ごとの授業を評価しようということです。授業が上手な先生も、時に難しい授業内容であれば、理解不足者をたくさん出すこともあり得るわけですから、先生を評価するのではなくて、90分ごとの授業がちゃんと理解を促しているのかどうかを確認しようということで、90分ごとにチェックをしております。
これは平たく言えば、私たちの学校で教壇に登壇するとき、7点持って登壇しまして、欠席率とか合格者の数で減点されていく。それを講義回数で割れば平均点が出てまいりますので、それが自身の授業のアベレージということで、7段階の整数で授業を評価して、それをトータルで見ていこうということで、非常にシンプルな、たわいもない評価の仕方ですけれど、これでもかなりいろいろなことが見えてくるかなと感じております。
12ページをお願いします。
今の授業評価が、毎週システム室より教員の掲示板に張られまして、全教職員が共有し、それから金曜日の夕刻に全学科長が集まる経営会議がありますので、そこでも共有が図られます。例えば、丸1、一番上の赤枠のところですが、これはちょうど夏休み明け、3学期の2週目の数字なんですが、春から授業を始めて通年で、建築科1年生は出席率が97.7%、課題発生、理解不足の発生者が6.8%いて、今課題が1.8%残っているということで、通年で5%のフォローアップをしているというような数字が見えてきます。
例えばバイオテクノロジー科1年と2年、丸2のところですが、期が始まって2週間たって、課題発生したけれども課題残率がそのまま残っているということで、多分これはフォローアップが全く効いてないんだろうということが推測されます。
それから、丸3の赤枠は環境テクノロジー科ですが、通年に比べて当期のほうが出席率が99.1%と上がってきているにもかかわらず、課題発生が多く出ております。多分授業の内容が難しくなってきて、理解不足者が増えてきているのかなというところで、これは対策が必要なのかどうかという協議が、こういった数字を基に行われます。
では、次をお願いいたします。13ページです。
そして、期ごとに履修判定試験をやって、「わかる目標・できる目標」が達成できているか確認をするということでございます。下に一応出題の要領が書いてありますが、細かいことですので、後で読んでいただければと思います。
それでは、14ページ目お願いいたします。
昨年から、この履修判定試験、授業カルテの点数から、授業の問題点を発見しようという課題に取り組んでおりまして、期ごとに各先生には自分の科目の総括のレポートを出していただいているんですが、その中で、なるべく試験の結果から問題を発見してくれないかということを申し上げておりまして、若い先生方から、S-P表分析がいいんじゃないかということで、まだ実装はしていませんけれども、今、検証している最中です。
S-P表の中で、課題の発見、問題学生、問題設問の発見ができれば、これをチェックバックに戻していきたいということで、できれば1年以内に実装していきたいということで、こんな取組をしております。
では、次をお願いします。
教学マネジメントを離れまして、ここから2番目の企業連携のお話になりますが、リアルジョブプロジェクトというPBLを今、準備しております。企業の方からは、問題発見ができない、解決ができない、コミュニケーション力がない、それから文部科学省様からは、学力には3つあって、知識・技術だけじゃなくて、自分で考え判断して表現する、また主体性を持ってみんなと働ける、それも学力と呼ぼうという時代になってきて、専門学校も、専門知識、技術だけ教えていればいいのかというと、そうではないだろうというところで、ちょっと早いんですけれど8年前、2014年から、学生の主体性や仲間と協働する力を使おうということで、リアルジョブプロジェクトというPBLを、開設しております。
金曜日の午後は全学科、ほぼこれをやっているんですが、グループディスカッション、科内プレゼンテーション、時に全校生徒の前で発表ということで、2学期が問題発見、3学期は問題の解決に向かう方法を探す、4期は実際に行動する、5期に発表していくということで、これで1年間をつくっております。
次の16ページをお願いします。
これは、最初にPBLを始めたとき、いきなりやってもなかなかできないだろう、問題発見できないだろうということで、2014年、2015年の2年間、こんな課題を出しました。自分たちの専門性を生かして、学校にカフェを造って営業しなさいという課題を全学生に出しまして、まず、各科の代表からコンセプトメーキングをしてもらって、それに基づいて各科いろいろな提案をしてくださいました。
建築・インテリア科の学生はお店を造る、インテリア科は家具を作る、情報処理科はデジタルサイネージ、レジシステム、ゲームプログラミング科はタブレットゲーム、ウェブ動画クリエーター科はグラフィックが強いので、ロゴデザインからホームページ、メニュー、パッケージ、フリーペーパーなどを発行してくれています。あと、バイオテクノロジー科は食品関係に就職する子が非常に多いので、食品で貢献したいということで、UCCフーズさんとコラボレーションしまして、東京テクニカルカレッジオリジナルブランドをつくろうということで、商品開発をしております。環境テクノロジー科は、やはり地球を守る、ごみを減らすというのも一つのミッションですので、コーヒー豆がごみになりますが、その残渣から活性炭を作ろうと、そんな取組もしてくれております。
それでは、次をお願いいたします。

【吉岡座長】 白井様、そろそろまとめに入っていただければと思います。

【東京テクニカルカレッジ(白井)】 はい、分かりました。
これが完成したカフェでございます。企業の声もあるので、ぜひ後でお読みになっていただければと思います。
それでは、次お願いします。
その後、今こんなことをやっていますよということで、インテリア科は、企業から課題をいただいて、グループで実際のモデルハウスを造ったりというような取組をしておりますので、ぜひ御覧になっていただければと思います。
あとしばらくだけですので、ちょっと流すように、申し訳ないんですが、お付き合いください。
19ページは、今のPBLを評価しようということで、3つのルーブリックを使って評価をしております。授業ごと、期ごと、年間通しての学生の成長を見ようということで、3つのルーブリックで評価をしているということでございます。
次、20ページをお願いします。
PBLのほかにも、学びを深めようということで正規の科目の中で、建築監督科は大手建設会社に来ていただいて、オムニバス授業をやったり、インテリア科は学んだことを翌週、企業のショールームで学び直そうということで、トイレの勉強をしたらリクシルさん、キッチンの勉強をしたらクリナップさんというようなことで、26の企業と提携して授業を進めております。バイオテクノロジー科は、理化学研究所から来ていただいて、うちの卒業生ですが、微生物研究のトップランナーの方から微生物を教わる。環境テクノロジー科も、水ingさんとか、ふるさとづくり大賞を取ったフュージョン長池さんなどに来ていただいて、生々しい授業をやっております。
次、21ページをお願いします。
学習成果の見える化ということで、eポートフォリオをつくっておりまして、これは企業に向かって匿名で公開することもできて、この取組で内定を取る学生も増えてきております。
次をお願いします。
22ページは、年度末にやる学習成果報告会ですが、教育課程編成委員会、学校関係者評価委員会の先生に来ていただいて、合同で年度3回目の委員会を開かせていただいて、その中で学習成果を評価いただいております。
それでは、次をお願いします。
教員研修なんですが、教授力、指導力の向上のために、いろいろなところへ研修に行ってくれていますし、専門性の向上にも努めておりますが、去年からDX社会を見ていこうということで、これからの時代、専門学校はどうしていかなきゃいけないのか、未来の勉強をしようということで、専門人材未来会議というのを学内に発足させて、いろいろな企業の方から御講義をいただいている。こんな取組も全教職員でやっております。
次をお願いします。
最後に、企業と連携して、今までつくってきた教学マネジメントも使って新学科をつくろうということで、社会ニーズに即した実践的な学科をつくりたいということで、セラク様という会社に御協力いただいて、カリキュラムの共同開発をしております。
企業ニーズ調査から、仕上がりレベルはデータサイエンティスト協会のスキルレベルシートなど使いまして、ディプロマポリシーをつくり、次の25ページ、履修表、カリキュラムフロー、そして、ここで教育課程編成委員会の方々に来ていただいて、いろいろ御指摘を受けて直していく。そして、またシラバスをつくっていく。ここで「わかる目標・できる目標」をつくって、これも教育課程編成委員会のほうでもんでいただいている。こんなことをしながら、実践的な学科になればということで、バランスよくつくっていくことを心がけております。
すみません。長くなりましたが、最後のまとめです。もう終わりますので。26ページです。
私どものやっているのは、先ほども御説明しましたが、5期制からS-P表に至る丸10番まで、こんな教育手法で3つのPDCAを回そうということで取り組んでおります。
次、お願いいたします。27ページです。
私どもの教育マネジメントのフローをつくりました。一番左の列、縦軸がPDCAになります。Pは2種類あって、まず、学習の提示が重要だろうと。Pの2は、それを到達するための道筋をつくるというプロセス設計です。それから授業をやって、達成度を確認して、アクションも2種類あると思います。学生のためのフォローアップと授業改善、この2つのアクションを起こしていきたいということです。
横軸は、年度ごと、7週間ごと、90分ごとのPDCAがあるということで、源流はプラン1の年度ごとのディプロマポリシーでございます。ディプロマポリシーをつくって、プラン2で履修科目表、カリキュラムフローをつくる。右の列の上にスライドして、「わかる目標・できる目標」を用意したシラバスをつくる。そのシラバスを到達するためにコマシラバスをつくる。右の列の上に行って、授業ごとの表を授業シートにまとめ、教材をつくり、DOのところ、授業シートの目標提示、授業をやって、カルテでの達成度、そしてそれをAG評価して、理解不足の学生の特定、理解不足項目の特定からコマ補習、それから改善へ向かうということです。また、このシラバスの下に履修判定試験とありますが、こちらも、S-P表分析等で理解不足項目の特定をして、改善に努めていく。
まだちょっと実装できてないところもありますが、こんなフローで、年度ごと、7週間ごと、90分ごとのPDCAを回しているというふうに御理解いただければと思います。
それでは、最後、28ページです。
長くなりましたが、企業連携は今お話しした、この丸1から丸6のようなことをやっているということで、御確認をいただければと思います。
一番下に参照動画ということで、ここ半年間ぐらいで出た動画等を御紹介させていただいておりますので、もしお時間があれば御視聴いただければと思います。
長くなりまして、恐縮です。申し訳ありませんでした。失礼いたします。

【吉岡座長】 ありがとうございました。大変刺激的なお話でした。
それでは、何か御質問等ございましたら、また、手を挙げるボタンをお願いいたします。
松本委員、お願いします。それから川口委員、お願いいたします。まず松本委員。

【松本委員】 白井先生、貴重な御発表ありがとうございました。いつも大変お世話になっております。
改めてなんですけど、日々これだけ学習の成果が可視化されていくような体制ですと、学生さんはもちろんですが、先生方も、日々自分たちの授業が評価されていくような状況ですので、大変な緊張感というのがあるんじゃないかなと思いました。この辺りについて、白井先生はじめ、マネジメントをされる方々は、どのような声掛けだったり仕組みで、先生方のモチベーションというのを高めていらっしゃるのでしょうか。よろしくお願いします。

【東京テクニカルカレッジ(白井)】 実をいいますと、2000年からもう22年間、これを積み上げてきておりまして、めちゃくちゃ緊張して評価されているという意識は皆、あまりないですね。学生のためにやろうというところでやっております。
それと、やはり一番負担をかけるのは、補習のところだと思うんですね。理解不足者を特定して、じゃあ、どのタイミングで補習するのかというところが、時間的にもなかなかしんどいところで、そこが負担をかけているなというのは非常に思います。
うちの学校は、1日の授業はほぼ3時間目で終わりますので、4時間目が余る学科が多いんですけど、帰さないんですね。4コマ目もいろよということを言っていまして、そこをスタジオとかスタディアワーとかと学科ごとに呼んでいるんですが、そこで重点的に補講をする。先生がいない場合も、友達同士で教え合っていきなよということで、そういう自習の時間を設けて少し先生の負担を減らそうというようなことは、みんなの工夫でしております。
すみません。あまりお答えになってないかと思いますが。

【松本委員】 いえいえ、ありがとうございました。

【吉岡座長】 では、川口委員、お願いいたします。

【川口委員】 川口でございます。ありがとうございます。後半の自動車大学校は、記憶が怪しいのですけど、実は数年前にたしか講演をお願いされまして、行ってお話ししたことがあり、その時、非常に積極的な取組みに感激いたしました。
先ほどから北海道の御意見にもあって、北海道の取組にも大変感動したのですけれども、これだけの取組をおやりになって、やっぱり教員あるいは学生の反応が非常に重要になるのではないかと考えます。すると、最後にありましたけれど、21ページのポートフォリオが重要でしょう。ここにあるのは学生さんだけですが、私は、いわゆるラーニングポートフォリオとティーチングポートフォリオ、両者がやっぱり非常に有効ではないかなと思います。もう時間がないのでコメントだけで失礼しますけれども、そう感じました。
どうもありがとうございました。

【東京テクニカルカレッジ(白井)】 ありがとうございます。

【吉岡座長】 ありがとうございます。
では、多委員、お願いいたします。

【多委員】 電子学園の多です。白井さん、いつもお世話になっています。どうもありがとうございます。貴学の体系的な教育活動につきまして御教授いただきまして、誠にありがとうございました。大変勉強になりました。
最後のほうで企業連携のお話があったと思うんですけれども、AI等の学科ということで、新設学科に係る企業連携というお話だったと思います。いわゆるAIであるとか、もしくは先ほど藤井先生のお話にあったロボットであるとか、もしくはブロックチェーン、5G、8K、こういった先端テクノロジーの教育というものを実施していくに当たりまして、連携する企業としては、上場企業もあればベンチャーやスタートアップというところもあると思うんですよね。それぞれの企業種によってカラーも全然違う。一方で、個別の企業のお話だけではなくて、業界全体の話も聞いていかなきゃいけないということがあろうかと思います。
そうしたことを踏まえて、この新しい学科において養成すべき人材像というものを確立するに当たって、どのようなことで御苦労があったかということについて、少しお話をいただければと思います。よろしくお願いします。

【東京テクニカルカレッジ(白井)】 ありがとうございます。
新学科をつくるに当たって一番気をつけたのは、職業実践専門課程でもありますので、やっぱり実践的な学科にしていきたいというところです。企業様と一緒につくっていきたいという気持ちが非常に強かったのは、これまで学科をつくるときというのは、正直言って、学科長の先生を招聘してきて「科をつくって」というつくり方で、かなり属人的なつくり方をしてきたんですね。例えばデータサイエンスの学科をつくろうとしたとき、その学科長先生がウェブマーケティングをやってこられた人なのか、メーカーで画像処理をやってこられた方なのか、小売業で分析をされてきたのか、そのバックグラウンドによってカリキュラムが非常に偏るんですよね。それが学生にとって本当にいいことなのか。
そこで偏らせた学科にするんだというコンセプトも一つあると思うんですが、今回はなるべく、データサイエンティストとしていろんな分野に行ける学生を育てたいということで、偏りを減らしたいところを思いましたので、上場企業のいろんな業界とつながっているセラク様と協力するということで、あえて、スタートアップの方のような少し偏ることがなく、バランスの取れたところで御指南いただきたいという選択でございました。
それと、始めるに当たって企業ニーズ調査をやりました。300社の求人情報から、今求められている求人、人物像はどうだ、今求められているスキルはどうだというところをしっかりと把握した上で、客観的につくっていこうというところで努力をしたつもりでおります。
お答えになっておりますでしょうか。

【多委員】 はい。ありがとうございました。

【吉岡座長】 それでは、小杉委員、お願いいたします。

【小杉委員】 ありがとうございます。お聞きしたいのは、大変いい取組ですごく感銘したんですが、半分が企業からの非常勤講師で授業が構成されていると。実践性を保つためには非常に大事なことだと思うのですが、この講師の方々というのは、これだけの教学マネジメントをどれだけ理解して参加しているのか。企業から派遣されている方というのは、企業の都合でいろいろ人が代わったりとか、突然来られないとか様々なことがあるんですけれど、その辺の調整、企業がどれだけこの仕組みを理解して、これに対して貢献してくれているのか。それを実現できたのは一体何か。そこがすごく疑問に思ったところです。教えていただければと思います。よろしくお願いします。

【東京テクニカルカレッジ(白井)】 すごく難しい質問ですが、今、企業から来ていただいている先生には、授業シートからカルテから、履修判定試験から全部作っていただいている先生がほとんどですので、かなりの御負担をかけているかなというふうに思いますが、うちの学校ではこの授業シートとカルテがないと登壇できませんので、必ず作っていただくということでお願いしております。
それと、先生方にはやっぱりすごく学校のやり方を理解していただいておりますので、その点は僕たちも、御負担はかけておりますけれども、あまり困ってはいないかなと思いますし、休講も全く、1年間ほぼありません。全ての企業の方がちゃんと時間割に沿って、登壇していただいているような状況です。
それは、一つは期が短いので、7週間ごとに時間割を組み立てられるので、割と直近でやり替えができるというようなところも調整がしやすいところかなと思っておりますが、うちの学校で休講になるということは、台風でも来ない限りではまずないかなと思っております。

【小杉委員】 ありがとうございます。

【吉岡座長】 よろしいですか。ありがとうございます。
それでは、時間もありますので、前田委員を最後にさせていただきます。よろしくお願いします。

【前田副座長】 ありがとうございます。前田です。貴重なお話、ありがとうございました。非常にきめ細かくシステマティックにもできていて、感銘を受けたんですけれども。
専修学校設置基準で、豊かな人間性の涵養にも配慮しなければいけないというようなことが一文入っているんですけれども、この辺はどんなところで培われるというお考えをお持ちなのか、どのような配慮があるのか、お伺いしたいと思いました。お願いいたします。

【東京テクニカルカレッジ(白井)】 非常に難しい質問なんですが。2000年からこの改革を始めてきまして、やっぱり授業シートとカルテで授業をやるというのは、ちょっと怖い部分もあるんですね。授業シートですよ、覚えた? カルテでチェックみたいなことをずっと繰り返しているわけで、この子たちは本当に自分で組み立てているのかなという危機感も、2010年ぐらいからありまして。やはり自分で考えて問題を発見するとか、行動するとか、仲間と一緒にやるとか、そういうことがやっぱり非常に重要だろうなということは、逆に専門知識、技術を教えるノウハウの中で、何か足りなくないかというような問題発見は、教員の中であったわけですね。
そこから少しずつつくり出しながら、学科で連携できるんじゃないかとか、企業の連携もできるんじゃないかということで、なるべく学生が主体的に動けるような場所をつくりたいということで、組み立ててきた次第ですが。お答えになっておりますでしょうか。

【前田副座長】 多分難しいだろうなと思いますけれども、いろいろ実態をお伺いして、非常に納得しましたといいますか、それぞれの教員の方の御努力というところもあるんだろうなというふうに拝察いたしました。ありがとうございました。

【東京テクニカルカレッジ(白井)】 すみません。少し言葉が足らないかもしれませんが、また御質問いただければと思いますが。

【吉岡座長】 ありがとうございました。大変刺激的なお話で、今後の議論の非常に核になるような事例も、あるいはそのシステムといいますか、制度上の問題も含まれていた、お二方の発表だったと思います。どうもありがとうございました。
以上で、職業実践専門課程認定校からの事例報告を終わります。藤井様、白井様、本当にありがとうございました。大変刺激的でございました。

【東京テクニカルカレッジ(白井)】 失礼いたします。長くなりまして、恐縮です。

【吉岡座長】 それでは、次の議題に移ります。
職業実践専門課程の都道府県補助等について、事務局より資料の説明をお願いいたします。

【金城専修学校教育振興室長】 資料2を御覧いただけましょうか。職業実践専門課程認定校への都道府県補助についてでございます。新しい動きがございますので、共有させていただければと思います。
各都道府県におきましては、専修学校に対しまして経常費等の支援を行っておりますけれども、職業実践専門課程認定校に対しまして、上乗せした独自の支援を行っている自治体もあると承知しております。以前行われました、この調査研究協力者会議でも、支援についての御意見も頂戴したところでありまして、今年3月に、職業実践専門課程認定校に対する自治体からの支援の状況を把握するために、専修学校教育振興室にて、各自治体宛てに調査を実施いたしました。その結果をまとめたものが、この資料2でございます。
職業実践専門課程認定校への補助制度を有する自治体につきましては、下段に表がございますけれども、平成26年度の制度創設以降、毎年度増加しておりまして、令和3年度現在、大都市圏中心でございますけれども、20の都府県で実施されていることが分かりました。
支援額については、自治体によって異なりますけれども、例えば、学生1人当たりの単価を定めて支援しているパターンですとか、1校当たりの単価を定めて一律で定額を支援しているパターンに大別されることが分かりました。
認定校ベースですと、中ほどの3ポツ目にありますけれども、約6割の学校が自治体からの補助対象となっておりますけれども、一方、支援が受けられてない学校もございます。
支援する自治体のリストにつきましては、2ページ目に掲載しておりますので、追って御覧いただければと思っております。
引き続きまして、資料3でございます。
こうした動きと歩調を合わせるように、全国知事会においても、職業実践専門課程に対する補助について、国に対して要望が出されたところでございます。この資料は令和3年6月10日に開催されました全国知事会にて示された資料のうち、令和4年度国の施策並びに予算に関する提案・要望を、抜粋したものでございます。
マーカーを引いてございますけれども、職業実践専門課程を有する専門学校に対する助成を実施している地方公共団体を支援するため、特別交付税などの地方財政措置を創設するなど、十分な財政支援措置を講ずることといった記載がございます。
こういった記載を受けまして、文科省といたしましても、これらの職業実践専門課程に対する支援が、より充実、拡大していくことが重要であると考えておりまして、その方策として、地方財政措置を要望することを検討してございます。
説明は以上でございます。

【吉岡座長】 よろしいでしょうか。この件につきまして、特に御質問はないかと思いますが、目を通していただければと思います。もし広い意味での御意見ございましたら、この後の議論の中に反映させていただければと思います。
よろしいでしょうか。
それでは、次の議題に移ります。職業実践専門課程における実質化の考え方等についてですけれども、事務局から説明をお願いいたします。

【金城専修学校教育振興室長】 ここからは、資料4と資料5に基づきまして説明をさせていただきます。今後の議論の肝になる内容と思います。
今年2月に行われました第20回の調査研究協力者会議でもお示ししましたけれども、職業実践専門課程の充実を行うため、専修学校における職業教育のマネジメントの視点として、今年度末から来年の初頭あたりを念頭に、レポートを取りまとめることにしております。今回から、レポート取りまとめに向けた集中的な御議論をいただきたいと考えております。
資料4の骨子案を図示したものが、資料5のイメージ図でございます。必要に応じまして、両資料を並べて御覧いただければと思っております。
まず、資料5からでございますけれども、第20回の会議資料の中で、職業教育のマネジメント概念図案としてお示ししたところ、委員の先生方から御意見を頂戴いたしましたので、この職業実践専門課程が実質化した姿ということで、PDCAサイクルが機能している姿をイメージしやすいように、簡略化して図を作成いたしました。
この図にもありますように、PDCAは、学校レベル、学科レベル、授業レベルと、それぞれの階層での取組が考えられますので、そうした視点を矢印に表して、PDCAそれぞれをつないでございます。
先ほどの御説明の中でも、北海道ハイテクノロジー専門学校様では、学科レベル、授業レベルでの取組という御紹介をいただきました。また、東京テクニカルカレッジ様では、学校レベルから授業レベルまでのPDCAサイクルを回しておられるといった御説明がございました。そういったものをイメージしていただければと思っております。
また、PDCAサイクルのそれぞれの中には、過去にまとめられた委託事業の成果ですとか、大学における教育マネジメント指針も参考にしながら、該当すると考えられる項目を列挙しております。
また、各項目におきましては、企業等と連携した取組、学習者本位の取組、専門学校としての取組の3種類に、便宜的に色分けをしてカテゴライズしております。こういったこともまた、後ほど御意見をいただければと思っております。
その上で、こうしたサイクルを回すことで、前回の会議で植上委員からも、学生の成長が一番の目的だというコメントを頂戴いたしました。学習者本位の、教育の実現・強化に資することにつながるというふうに考えております。
また、PDCAサイクルを支える基盤といたしまして、企業と連携したFD、SDなどの研修、また、前回、多先生からも、法人部門と教育部門の距離が近いといった専門学校の特徴もございますので、経営基盤に基づく教育投資、また、データ収集分析、いわゆるIRなどについても、基盤として記載させていただいております。
さらには、情報公表を行うことで、課題となっておりました職業実践専門課程の認知度の向上につながるのではないかということで、図に表しております。
続きまして、資料4を御覧いただけますでしょうか。
資料5で先ほど御紹介しましたイメージ図を言語化して、最終的にレポートにまとめる文章の骨子案、骨格でございます。
タイトルとしては、「今後の専門学校における職業実践専門課程の実質化に向けて」というふうに、仮で書かせていただいております。この実質化というところにつきましては、前回寺田委員からも、職業実践専門課程の特徴であります、企業等と連携した実践的な教育を充実させるという意味合いで、実質化ということで書かせていただいております。
まず、全体構成としましては、1ポツは「はじめに」、2ポツで「職業実践専門課程の実質化に向けて」、3ポツで「職業実践専門課程の今後の展望」という3部構成をイメージしております。
まず、1ポツでございますけれども、はじめににつきましては、ここで記載するイメージとしては、これまでの委託事業の成果、課題を整理しまして、例えば認定学科ほど教育活動が改善し、生徒の満足度向上につながっているとか、学校運営の組織的な改善につながっていること、一方で、企業等と連携した教育課程の編成や、実習、演習等の取組が不十分であること、認知度の面で課題があること、そういったことを記載しまして、認定課程の実質化が必要なエビデンスを示しながら、提示したらどうかと考えております。
続きまして、2ポツ目でございますけれども、まず、1番目、学習目標の具体化につきましては、先ほどのPDCAサイクルのプランに相当するものでございます。資料5で記載しましたように、卒業認定の方針等を明確化するため、企業等との連携を行って企業のニーズを踏まえ、策定することですとか、この方針を踏まえた上で教育課程の実施方針等を策定するといったことを記載するイメージとして考えております。
2番目の教育課程の編成・実施についてでございます。これはPDCAサイクルのDOに相当するものでございます。職業実践専門課程の認定要件のうち、企業等と連携した教育課程の編成ですとか、演習、実習等の実施がここに該当すると考えられます。また、学習者本位の取組として、到達目標が達成されるような授業を実施することや、日々の授業の見直しが求められると考えられております。
3番目でございますが、学習成果の可視化でございます。これはPDCAサイクルにおけるチェック及びアクションに相当するものでございます。ここでは、企業等による卒業者評価ですとか、学習者本位の取組として、教員への授業改善を支援する方策なども考えられております。
4番目でございます。PDCAサイクルを効果的に回すための視点でございます。例えば、1から3で記載しましたPDCA、これらを点ではなくて線でつなぐために、どういった工夫、視点が必要かということを期待するイメージでございます。先ほどの2校からも事例紹介がございましたけれども、こういった具体例などを参考にしながら記載したいと考えております。
これまでの委託事業では、成果物におきましてもPDCAを個別に分解して、それぞれの視点や事例を紹介するものはございましたけれども、サイクルを回すための視点というのはやはり重要だと考えておりまして、この項目が基本になるのかなと考えております。
5番目のPDCAを支える基盤でございます。これは、PDCAサイクルとは別に検討すべき要素として設けたものでございます。企業と連携し、教員への授業改善支援ですとか、組織的な教員、職員研修の実施といった、職業実践専門課程の認定要件が予想として挙げられてございます。
6番目の情報公表でございます。1から5で記載しました項目が実現された状態、つまり、実質化された状態を公表することによって、学校や学科の認知度向上に資することが期待されております。
なお、職業実践専門課程の独自性という観点から、1から5までは、企業等と連携した取組に力点を置いた記載にすることが重要だと考えておりまして、企業等との連携という抽象度が高い要件になりますけれども、その連携の在り方を掘り下げて記載ができればと考えております。
また、資料5でも記載しましたように、学校レベル、学科レベル、授業レベルと各階層での取組が考えられますけれども、この辺りもレポートでどのように書き表わすのかということについても御意見を賜りたいと思っております。
最後に3ポツでございますけれども、今後の展望につきましては、実質化した理想の姿ですとか、今後に向けた課題などについて記載するイメージを持っております。
この骨子案につきまして、委員の先生方から御意見を頂戴し、項目の立て方、各項目をどのような事柄を記載すべきかについて、具体的な御意見を頂戴できればありがたいと思っております。
説明は以上でございます。

【吉岡座長】 ありがとうございます。資料4は、今後議論を進めていくときの幾つかの柱というところでもありますし、最終的には、やはり何らかの形でレポートをまとめていく場合の章立てのモデルというふうに考えて、事務局と相談したところです。
したがいまして、議論の方向によっては、もちろん、これは組み替えていくことも考えられるというか、むしろそれが前提ですので、これに縛られる必要はございませんけれども、やはり幾つか柱がないと議論が拡散してしまうということで、このような形で一応の、取りあえずといいますか、項目立てをしたということでございます。そういう意味で、今日は1番の議論というふうに必ずしもはっきりとしなくていいと思いますけれども、そのようなものというふうにお考えいただければと思います。
ということで、一応この資料4、資料5を念頭に置きながら、残りの時間の議論をさせていただきたいと思います。
御意見、御質問等ございましたら御発言ください。今、既に手を挙がっているのは、吉本委員と寺田委員ですね。
では、吉本委員、お願いいたします。

【吉本委員】 吉本です。まず、2点あるんですけれど、最初の「実質化」という言葉は、今回初めて公式にというか、タイトル的にこういうことが出たのは初めてだと思います。しかし、この実質化というのは、実質でないということを前提としている。実質でないということを前提として、特別交付税を求めるというのはおかしなことですし、これは「充実」という言葉に変えていただきたい。何か、実質化というと特別の用語のように思いますので、充実ということで。実質が何か伴っていないということが、議論の中では何回か出てきていましたけれども、見出しに「実質化」という、何か特別なことがあるような用語は使わないようにしたい。私はそう思います。
要件を満たしていないのならば、それは所轄の省が取り消せばいいことです。要件を満たしているが、実質が不明というようなことが資料6の職業実践専門課程の認定要件というところの6つ目ぐらいにありますけれども、実態調査すると、認定要件を形式的には満たしているが、実質化してないと考えられる。こんな難しいことを我々は議論しているのだろうか。
先ほどの2つの学校のエクセレンスの事例はありましたけれども、こういうエクセレンスの事例にみんなが向かうという方向の報告が、充実に向けてということだと思います。このどうやって向かうかというところは、やはり先ほどの報告の質疑応答にもありましたけれども、補助金等を出して検証していくということをやらない限り、そういうところに皆、向かいませんよね。メリットがない。
そういうふうに、メリットがないところへいろいろ向かわせるには、方法はいろいろあって、大学だとGPプログラムという形で補助金をやる。中高のキャリア教育なども、学校はやりたくないかもしれないけれども、文部科学省の研究開発学校とか、研究指定校という制度でもって進めていく、そして実質化していく、充実していくということじゃないですか。
就学支援制度というのは、もう既に7割ぐらいやっている。これは学校に言わせると、職業実践専門課程よりハードルが高いと。しかし、やはりメリットがきちんとあれば、そういうのを学校はやっていくということで、そういう制度を考えるのがこの会議だと思います。GP授業のように、これはどういうふうに工夫されていますかというような質疑応答で議論をしていても始まらないと思います。
職業実践専門課程の実質化ということができていないというならば、大学の場合には、研究という学校教育法で定める目的に沿ったものができてないということも、またあります。
例えば研究というのは、学術の中心として、専門の学芸を深く教授研究するというふうに言っているんですけれども、1年間に新規の採択が1件以下というところが380大学あるんです。3年間、1件も取ってないという大学は52大学、1割近くあります。こういうようなところをノーと言うかというと、ノーと言わないんです。定性的な基準ということは、あんまり議論していくと難しいことになっていく。ということが、第1点目です。少なくとも「実質化」という、何かコンセプトのあるような言葉は使わないで、「充実」ということでやっていただきたい。
2点目は、前も話をしていますけれども、これが、あと二、三回の調査協力者会議、今年度進めるとして、この実質化についての報告だけで終わるというのは、本来の調査研究協力者会議の趣旨から逸脱していると思います。前回、前々回も話をしましたけれども、想定される論点の専修学校制度というところの、少なくとも1年制課程の資格、称号については緊急にやらなきゃいけない。当面は職業専門課程に焦点を当てて議論を行うこととしてというようなまとめがありますけれども、私はこの「当面はこうする」というような文言は削っていただきたいと思いますし、後の文章のところの東京規約の発効で1年制課程を高等教育として認めているということをきちんと言わないと、今、まだ国勢調査においては専修学校、専門課程1年制を高等教育として認めてないということがありますので、そこのところの改善も必要なので、ぜひ専修学校制度の在り方も報告の中に、職業実践専門課程の充実に併せて、もう一つ大きな柱立てをしてほしいと思います。

【吉岡座長】 ありがとうございます。

【吉本委員】 特に2年制も同じことがあるんですね、その制度の話というのは。2年制以上のところで専門士を出してないところもあれば、職業実践専門課程をもちろん出してないところ、非常に複雑になって、目に見えない状態になっている。それは、専門士も職業実践専門課程も申請ベースであって、例えば2年制で大学編入学を認める学科数、課程数は幾つあるか、文部科学省振興室長は答えられるんでしょうか。私はどこを探しても見つからない。これは申告ベースで、官報告示を拾っていかないと数が分からない。こういうことになっていますので、2年制以上の中でも、大学編入学を認めるところと認めないところ、専門士を出しているところと出してないところ、職業実践専門課程を認定されているところと認定されてないところ、この辺の違いというのが、極めて分かりにくくなっている。
分かりにくくなっているがゆえに、外部の学校から、専門学校は見えにくい、職業実践専門課程だってよく分からない。よく分からないから、実質化しろ、実質化しろというような要求をしてよいんでしょうかというのが、私の問いです。
以上、2点申し上げました。

【吉岡座長】 ありがとうございます。今の、特に制度化の問題というのは、ここで言うと、もちろん議論の中で出てくることだと思いますけれども、3の今後の展望のところで、具体的に考えていければと思っております。

【吉本委員】 はい。お願いいたします。

【吉岡座長】 それでは、寺田委員、お願いいたします。

【寺田委員】 今、なかなか挑戦的な話が吉本さんからあって、そことのつながりから入っていきたいんですが。前半、遠慮しましたので、ここでちょっと長めの話をさせていただきます。
一つは、まず冒頭、この「実質化」という言葉の問題が出ましたけど、私の記憶では、前回も言いましたけれども、この実践課程をつくるときの局長、河村さんが、ちゃんと委員会で、そのとき文書も出たと思いますけれども、実質化という言葉は使われておりました。
当時の意味は、いろいろ、後でも言いますけれども、国としての認可要件8項目をつくって、認定作業を始めたんだけど、それが具体的に実施されるようにという、そういう意味であったとは思います。
ところで、私としては、実質化でも、充実でも、改善でも、質向上でも何でもいいんですけれども、そういうことを図ろうとすると、少なくとも現状維持で、実践課程を専門課程で解消するということでない限り、つまり、実践課程を維持存続するということである限り、やはり実質化向上、質向上ということが必要だろうと思います。その場合、やはり方向目標、目標というのがないと、何を改善し、向上させるのか、どの程度向上させるのかということがはっきりしないわけでして、この議論はやはり、ぜひ今後も続けてほしいと思います。
個人的意見を言いますと、実践過程に関しては、専門課程、一般大学、専門職大学に挟まれて、特に専門職大学、短期大学が発足して、言わば宙づり状態といいますか、そういう言葉を私は使っているんですが、どういう方向で発展させていけばいいのか、今挙げましたような学校種、課程とどう住み分けていくのか、そういうことが課題かなと思っています。
特に専門課程、専門職大学、短大との差別化といいますか、これを存続発展させるということであれば、考えざるを得ないだろうと思います。それは何なのか。一つの方向目標なり、モデルと言ってもいいんですけれども、やはりそういったものを暗に考え出していく必要があるだろうと。これが1点目です。
2点目は、問題の実質化、改善なんですけれども、3つ挙げておきたいと思います。
前提として、この間の三菱の調査などを見てみますと、認定要件が必ずしも全て実施されていないということですね。だから、認定取消しをしてしまえというところまで言いませんけれども、認定8要件に関してばらばら状態になっているということは、認めざるを得ないわけですよね。ということなので、これを実質化する。つまり、各要件をきちんと実施されるように具体化していくということが、まず必要だろうと思います。
問題は、認定8要件全てを満たすべきなのか、あるいは一定の項目だけは絶対外してはならないと必須項目を指定するのか、こういったことが、今後の改善の視点として必要なのかなと思っています。
もう1点は、実質的という言葉にこだわるんですけれども、8要件のうち第1要件の年限、それから関連して時間数を除きますと、全てゼロイチ式のやるか、やらないかの形式的条件なんですね。私は、やはり発展ということを考えれば、とくに本課程の核である連携や企業での授業・実習などの,ゼロイチのイチのほうの部分をもう少し定量的に表現できないのかなと思っています。そういう意味で実質化というふうに、私は使っております。
あともう1点だけ、関連してですが。骨子案の2、職業実戦専門課程の実質化の4番、5番あたりでPDCAの問題が出ているんですけれど、さっき三菱の調査の話をしましたけれど、実践課程に関しては、やはり効果検証の作業が引き続き必要で、そういう点からいうと、このPDCAに入らないのかもしれませんが、卒業生の評価。冒頭2つの報告では、企業が連携教育の評価のところで参加しているという話がありましたけれど、特に卒業生の評価をもっと入れていかないといけないんじゃないかなと思います。あるいは、年数を少し空けて継続的・追跡的にやるというような評価も考えていけばどうかなと思っております。
以上です。

【吉岡座長】 ありがとうございます。
それでは、多委員、お願いいたします。

【多委員】 ありがとうございます。私のほうからは、職業実践専門課程の実質化、先ほど吉本先生のほうから充実という言葉もありましたけれども、この実質化、充実に向けて、まずは総論として実態と理想について、そしてそれを踏まえた各論、いわゆる施策について少しお話をさせていただきたいと思います。
まず、職業実践専門課程の実質化というところにおきましては、認定基準の明確化を図るという観点におきまして、まさに職業実践専門課程における認定要件の趣旨である、企業との連携というものを前提とした学習成果の可視化が肝要であると考えております。皆様御存じのとおり、近年の技術革新、また産業構造の変化、これに伴う国際競争の激化などによりまして、私たちを取り巻く社会環境というものは、大きな変革期を迎えているわけです。また、これに関連して、求められる人材像も時事刻々と変化をしているわけであります。
そうした中で専門的な知識、また技能といったものを基軸とした、現場で実践する能力といったものや、社会生活に必要な人間力といったものを、各業界の実態、一企業ではなく各業界の実態に即して、企業とともに育み、輩出するということが、職業実践専門課程のトッププライオリティーでなければならないはずです。
一方で、こうした人材像、もしくは人材要件というものについて、各業界と協議をして標準化を図り、学習成果の目標に設定されているかと言えば、まだそれはスタンダードになっていないという実態があります。まずはこのことに着目を、しっかりとしなければならないと考えます。
しかしながら、職業実践専門課程における認定要件の要というものは、周知のとおり企業連携ということでございますので、企業との連携によって、当該の業界が求める人材を養成、輩出しているかということを、職業実践専門課程の学習成果として捉えることが肝要ではないかと思っております。そして、その具現化というものに向けては、各業界の要望に始まり、各業界の評価に終わるというルーチンが必要ではないかと考えます。
分野別の業界団体におきましては、養成すべき人材像といったものや人材要件を明確化し、その育成に熱心な団体というものもございますが、一方では必ずしもそこまで到達していない団体もあろうかと思います。しかしながら、第20回の協力者会議でも発言させていただいたとおり、分野ごとの業界が求める統一した人材像や要件というものが基となって、それをベースとして、個別の企業等と連携をして、教育課程の編成等に反映させることが肝要であるわけです。
一方で、全国中小企業団体中央会の佐久間委員からは、企業等との連携が非常に重要視されていることは分かるけれども、実態として専修学校から企業等へのアプローチについては待ちの姿勢が多く、まだまだ弱いという御指摘を、第20回の協力者会議でいただいたところです。こうした点を熟考いたしまして、可能であれば佐久間委員にも御協力を仰ぎながら、今後、あまねく分野ごとの業界が求める養成すべき人材像、要件の抽出というものを目指すべきではないかというふうに感じています。
こうしたことを前提としまして、各論になりますが、先ほど申し上げた各業界の要望に始まり、各業界の評価に終わるというルーチンの中で取り組むべき施策は、3点あると考えております。
1点目は、3つのポリシーの策定と運用でございます。3つのポリシーにつきましては、皆様も御存じのとおり、釈迦に説法にもなりますが、建学の精神や教育の理念の下で、当該業界が求める養成すべき人材像を掲げて、これを基に、専門学校では到達目標、教育目標、募集方針という3つのポリシーを明確にして、組織的に取り組むべきものであると考えています。この到達目標、教育目標、募集方針という3つのポリシーは、全国専修学校各種学校総連合会にて、機関決定をして、都道府県の専各協会に奨励しているところでございます。こうした体系的な取組に沿って、教育課程を編成、また実施し、当該業界のニーズを踏まえた到達目標をクリアしていくという観点において、職業実践専門課程の認定要件に加える意義は非常に大きいと考えています。
2点目は、卒業生及び就職先企業への実態調査です。これについては、先ほども少しお話がありました。これは、職業実践専門課程が卒業生や就職先企業にどのような影響を与えたかというものを、継続的に調査していくべきものであると考えています。具体的には、職業実践専門課程の卒業生が、当該業界でどのように活躍をしているか、就職先の企業はその卒業生をどのように評価しているか、また、これらを通じて卒業生や就職先の企業というものは、職業実践専門課程そのものをどう評価して、何を求めているのかということを聴取し、職業実践専門課程の有効性を把握するとともに、職業実践専門課程の精度を高めていくためのPDCAサイクルを確立していくという一助になると考えています。
最後、3点目です。こちらは学習成果の設定と評価というものに係る、要綱の策定と情報公開でございます。具体的には、教育課程編成の前提といたしまして、業界団体の要望を基に、企業と人材像や人材要件について協議をし、学習成果指標を定めるための具体的な方法、また手順について要綱に明示をする。これは、先ほど御提案した3つのポリシーの策定運用方法についても、要綱に記す必要があろうかと思います。また、そこで図られた協議内容、決定された成果の指標、そして最終的に得られた学習成果といったものの結果などを、自己評価報告書を通じて公開していくということが肝要であると考えております。
以上、総論にプラスして、それを具現化するための施策3点について提供させていただきました。以上でございます。ありがとうございました。

【吉岡座長】 ありがとうございました。
それでは、佐久間委員にお願いいたします。

【佐久間委員】 佐久間でございます。本日はありがとうございます。
今、電子学園の先生が言われました点は、本当にごもっともなことでございます。今のお話では、3点まとめていただきましたけれど、まさにこの方針というか、そちらの方向に進まれるのが適切なのではないかと思います。
そのうえで、私もお話を拝聴させていただきまして、最初に吉本先生が言われた、「実質化」というのが分かりにくい、という印象を受けました。この資料4では骨子案が掲示されておりますけれども、この「実質化」という言葉を使われるのであれば、再度、この会議体では、「実質化」についての意味合いとか、定義というか、それについて、触れていただいたほうがよいのではないかなと思います。
それから、資料5と資料4を対比しながら、述べたいと思いますが、このPDCAのサイクルをうまく回していくということで、職業実践専門課程に適合するために、学校も努力されることになるとは思うのですが、先ほど御説明を賜りました東京テクニカルカレッジの白井先生の取組というのは、学校自体、そして生徒のポートフォリオの関係とか、一連の成果として、すごく充実したものになっていると思います。職業実践専門課程の認定を受けようとする全部の専門学校ができるわけでは、多分ないのではないかと思います。ここまでのレベルまで行っている、先ほどのテクニカルカレッジさんのようなところまでシステム的なもの、また生徒さんのことを考えながらここまで見ておられるのは、やっぱり一部の上位校なのではないか、と思います。ほとんどの専門学校がこのレベルまで実施していればよいのですが、まだ難しいのではないかと思います。
このPDCAを回すとき、学習目標の具体化も、卒業認定の方針等の明確化、その卒業認定の方針等を踏まえたというところがPのところになるのですが、企業等との連携した取組というのは、企業と一緒につくるとか意見を聞くということに含まれていると思いますが、そこまで実際に実施しているところがあるのか疑問です。それから、幾つかの専門学校も、3つぐらいのパターンでここまではできるところと、専門学校の受け入れ人数、カリキュラムなどの規模感の問題も多分あると思うので、それを分けて少し考えていただき、パターン化をするというのも、必要なのではないかなと思います。どうしても、この専門課程をやって助成金を対象とする、またはそれを受けられなくても自分のところで取り組まなきゃいけないというところも触れないといけないのではないかなと感じたところでございます。
あと、企業の評価というのは、この章立て、骨子案の中にも、ぜひ事例を聴取したりして、どのように取り入れていくかということも留意していただきたいと思います。専門学校であっても、就職を目的とするもの、または大学とか大学院に進学することを目的とするというのは、生徒さんがそれぞれに考えるものであると思うのですが、就職ということになれば、その分野の企業連携であっても、例えば大手でないとその業界のことが分からないというところ、また、その就職先が地域の有力企業に行くとなると、やっぱりその地域の中核となっている企業、産地・地場の中核企業など、独自の技術を確保している企業などに進みたいのではないかと思います。やはり、カリキュラムなど専門学校が独自に有している養成プログラム、科目によって、企業との連携というのは当然異なってくると思いますので、大企業と連携をしていくのが、その地域社会における中核的な中堅企業や、ニッチな分野の技術を有している企業とか、そういう企業との連携に留意をしていただきながら、このカリキュラムや報告書の骨子の中に入れていただければと考えております。
すいません。長くなりました。以上でございます。

【吉岡座長】 ありがとうございました。
すみません。司会の不手際で時間が押しておりますが、千葉委員と小杉委員の手が挙がっております。千葉委員、お願いいたします。

【千葉委員】 ありがとうございます。私の意見をちょっと申し上げさせていただきますけれども、それは第1回の会議のときにも申し上げたんですけれども、やはり目標をどこに置くかということが、やっぱり重要ではないかと思っておりまして。今度のレポートの「はじめに」というところに、やはりそのことについて盛り込む必要があるのではないかと思っております。
それは、一つは高等教育の複線化ということになるのではないかと思うんですね。これは以前から話題になっている論点でありますけれども、そういう高等教育の複線化ということを、本格的にこの日本の教育制度の中に盛り込んでいくということを目標にする必要があるのではないかと思っています。
それは、やはりダイバーシティーと言われておりますけれども、大変多様な社会になってきた中で、高等学校時代に大学へ入るための準備をした人だけが将来につながっている、そして、教育研究の場で学んだ人たちだけがその社会をつくっていく、こういう社会では、やはりこれからは成り立たないのではないかと思うんですよね。
そういう意味では、入学前の状況、これはもうこれからは高卒だけということにはならないと思います、大変多様であるということですよね。そういう多様な人たちを受入れて、そして社会へつなげる、貢献活動をしていくということをやる一つのルートとして、専門学校、専修学校あるいは職業実践専門課程がそれを担うという視点が必要じゃないかと思います。
そして、その多様な入学前までの様々な学習履歴であるとか、あるいは考え方であるとか、そういうものが違う人たちを、しっかりと社会へつなげていくためには、大学とは違う、新しい仕組みが、方法が必要になってくるんじゃないかと思うんですよね。その方法というのは、先ほど2校の先生方から説明をいただきましたけれども、第2例目のほうが分かりやすいと思いますが、階段型で、そして補習を交えながら、そして産学連携した中で、大学に入る準備をしてこなかった人たち、そういう人たちが安心して学べるようなコースを一つつくることが重要じゃないのかなと、私は考えております。
そういうようなことを実現していくということが、まさに学習者本位の考え方でありますし、また、社会へ貢献する高等教育機関の在り方をもう少し広く捉えて、この社会を構成していく必要があるんじゃないのかなと思います。
そのためには、もう大分以前に、専門学校が大学に変わるときに付加するべき基準を定めて、専門学校を大学に変えたという歴史がございますけれども、今のこのダイバーシティーの世の中において、やはり今の専門学校あるいは職業実践専門課程に何を加えて、真の高等教育機関の一役を担っていただくのか。そういう方向に向けて、私は議論を進めていくべきじゃないかなと考えております。
以上です。ありがとうございます。

【吉岡座長】 ありがとうございます。
では、小杉委員、お願いいたします。

【小杉委員】 では、短く。私は、PDCAを支える基盤というところに業界団体との連携というのが入るのではないかと思います。この学校の特色である実践性というのは、産業界との連携なしではあり得ないので、その基盤を整備するというところに、ある意味では助成金をつけるなり何なりということで働きかけるところではないかと思います。
ただ、業界団体としてまとまったところがない、とがったところですと企業になるかと思いますが、企業を含めて、その産業界との連携というのは、基盤整備という上で必要ではないかと思います。
以上です。

【吉岡座長】 ありがとうございます。
よろしいでしょうか。時間がございますので。吉本委員、手を挙げていらっしゃいますか。よろしいでしょうか。

【吉本委員】 もう短く言います。寺田先生の定性的な要件というのは大切なんですけれど、定性的な要件というのは、この資料にあるように、産業、企業等との連携を持ち続ける姿勢を持ち続ける、その姿勢があれば丸、姿勢がないところはバツという定性的なものであって。ということは、これでもって要件に丸、バツをつけるというようなものではないというふうに思います。
それから、もう一つお願いですけれども、先ほど言いました2年制課程、その中で大学編入学が認定されている課程、そうでない課程、それから専門士が認定されている課程、そうでない課程、職業実践専門課程が認定されている課程、そうでない課程。2年制以上の中でも8パターンぐらいあるので、このそれぞれの数を教えていただきたい。次回で結構ですけれども、それがちゃんと公表されるようにお願いしたいと思っています。
以上です。

【吉岡座長】 その点は、事務局、お願いいたします。
よろしいでしょうか。時間を大幅に過ぎつつあります。
様々な御意見、ありがとうございました。私は今期から参入しておりますので、ようやく追いかけているようなところがございますけれども、ちょっと伺っていて思ったことが、一つは、実質化という言葉とちょっと関係するのかもしれませんが、この制度自体の理念という問題の確認ですね。それの進化という問題と、具体的に生徒全体を支えていくためにどのような方策を組み立てていくのかという、つまり制度全体の問題が一つ。
もう一つは、個々の学校と言ってもいいと思うんですけれども、個々の学校がどのような形で、自分たちの理念を立て、その理念に向かったカリキュラムポリシーやらを組み立てていって、学生のための教育をしていくのかという、その問題というのは多分、密接に連携、関連していますけれども、分けて考えることもできるかなというふうに思いました。その辺は、議論の中で少し整理していったほうがいいかと思います。
各学校の在り方ということになりますと、先ほど千葉委員の御発言にもありましたけれども、認定基準みたいなものを厳しくすることによって、せっかくの教育の多様性を妨げてしまうということになってしまっては逆なわけで、むしろそれぞれの学校が持っている理念とその実質のための方策、もちろんその背景に、先ほどございましたように業界のニーズといいますか、業界との連携の実質化ということがあると思いますけれど、その辺のところを明確にしていく。それが、どのような形で社会に向けて公表されていくのか、社会の側からの反応といいますか、反響というものを取り入れていくような仕組みをどのように組み立てていくのかということではないかと思います。
最初のときにも申し上げましたけれど、私はできるだけ柔軟性を持った制度にしておかないと、専門学校というものが持っている意味がなくなっていってしまうと思うので、その辺のところを少し考えていければと思っております。
それから、学校間、学校種間の移動というのは実質的にはいろいろ起こっているわけですので、先ほど吉本委員のお話にもありましたけれども、どのような形で学校種間の学生の自主的な移動を、それを保障していかないと意味がないので、リカレント教育の問題でもありますけれども、リカレントだけではなくて、個々の学生の自主的な学びを保障できるような、高等教育全体の中の位置づけということを、念頭に置いておく必要があるかと思いました。
すいません。まとめと言いながら、長くしゃべってしまいました。
今後の議論の中に、今日の御発言、それから今日の実例も生かしていければと思います。
よろしいでしょうか。
時間を過ぎておりますので、それでは、事務局のほうで何か追加はございますでしょうか。

【金城専修学校教育振興室長】 次回の会議の日程等につきましては、追って事務局より御連絡させていただきます。

【吉岡座長】 ありがとうございます。
すみません。10分ほど延びてしまいました。でも、非常に中身の濃い議論ができたというふうに思っております。
本日の会議はこれにて終了させていただきます。どうもありがとうございました。

―― 了 ――
 

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