堂本暁子
経済社会への女性の参画が促進されない限り、我が国の経済発展と活力ある地域社会の構築は困難である。したがって、生涯にわたる女性の教育、男女共同参画政策についての専門的な調査研究を行なっている国立女性教育会館(NWEC)の事業が、今ほど求められているときはない。35年にわたる蓄積を生かしつつ、時代の要請に応える新規事業を開発し、唯一のナショナル・センターとしての役割・機能を拡充強化し、最大限に発揮しなければならない。
従来NWECが、大学、各地域の女性団体、男女共同参画センター、地方自治体の男女共同参画担当部署、NPO/NGOと築き上げてきたネットワークをさらに拡大し、また新たに企業とのネットワークも構築しながら、あらゆる事業に最大限活用することが求められている。
(1)文部科学省その他の機関との連携
「女性研究者活動支援事業(対象 大学・独立行政法人)女性研究者がその能力を最大限発揮できるようにするため、大学や公的研究機関を対象として、研究環境の整備や意識改革など、女性研究者が研究と出産・育児の両立や、その能力を十分に発揮しつつ研究活動を行える仕組み等を構築するモデルとなるすぐれた取り組みを支援する」
(2)研究・調査支援
(3)大学を含む地域連携事業の展開
大学・女性センター・研究機関・生涯学習機関等
(4)海外の大学との研究、事業連携
少子高齢化による労働力人口が減少する中で、女性の労働力を活用することが、日本の経済活性化のために必要なことである。女性がその能力を発揮して経済活動に参加するためには、女性一人ひとりのキャリアアップが重要である。そのためには企業との密な連携が求められている。
(1)キャリア教育
非正規雇用からの脱却を目指す職業能力の訓練、子育てのために退職した女性のための再教育など
(2)企業内男女共同参画の研究・調査・プログラム開発
(3)企業管理職向けの男女共同参画研修事業
管理職に対して女性の能力や労働力を最大限に活用するための研修と情報提供
(4)女性管理職を増やすための研修と情報提供
(5)企業むけ情報発信、ジェンダー統計の発信
(6)スポンサー 社会貢献部門との連携、アントレプレナリーの創出
女性の起業に対しての情報提供、非営利事業としてのNPO/NGOとは別に企業的な手法によって医療、福祉、教育、環境、文化、安全などの領域で、社会貢献を行う社会起業家の進出が期待されており、女性の活躍が期待される領域として注目を集めている。行政が行なってきた公共事業を民間が行う、新しい公共の概念とも重なる部分で、高齢社会における介護サービスや子育て領域での起業、農業分野での加工品生産などが挙げられるが、一方でIT産業による福祉サービスや、グラミン銀行のような小規模金融、シンクタンクなど活動の領域は広い。
(7)組合 (女性労働)運動への支援
女性の能力を最大限発揮できるように、出産・子育てまたは介護と仕事を両立すると同時に男女の労働環境整備を行う取り組みを支援する
生活に近い分野で、女性によるNGOINPO活動は活発さを増している。家事、育児と両立させながらの社会貢献活動は、新しい公共の一翼を担っている。
(1)組織運営についての能力や技術の習得、あるいは好事例の情報提供など
(2)NGOのネットワーキングの支援
NWECの35年間にわたって蓄積した男女共同参画および女性・家庭に関する専門資料は、わが国の貴重なコレクションである。ICTの技術を導入しながら、コレクションの継続収集と更なる活用が求められる。
(1)資料の収集・発信・活用
男女共同参画および女性・家庭に関する専門図書館として、基本的かつ全国的な資料を計画的に収集・整理、提供し、レファレンスサービスなど提供サービスを行う。非来館者サービス、及び多様な世代への遠隔地型サービスの展開をする。
(2)情報リテラシー教育
大学・女性関連施設、図書館、社会教育施設において、男女共同参画情報の利用・活用、ジェンダー統計などの情報リテラシー教育を行う。
(3)アーカイブ資料
「男女共同参画社会の推進には、現在の女性の地位・状況がどのように形成されたかを歴史的事実にもとついて検証し、次世代の女性に何を語り、引き継ぎ、今後さらに何を目指してゆくべきか、を検証する必要がある。 歴史を学び女性の地位向上の歩みをたどることが、男女共同参画の実現に不可欠であり、」*国内で初めての女性アーカイブセンターとしての役割を果たすことが求められる。
女性の学習・活動のアーカイブ、災害と女性アーカイブなど国内外の女性関連施設とも連携しつつ、全国、世界に「日本の男女共同参画意識の形成や女性教育の進展についての情報の発信と相互の情報共有を進めることが必要である。」*
また長期的な計画のもとに、女性教育情報センターで蓄積した資料もアーカイブ化する必要があり、ライブラリーとアーカイブセンター併設の特色を生かした資料の保存を図ることが可能であり、必要である。
*国立女性教育会館『女性アーカイブ機能に関する調査研究報告書』2007
(4)国際的な情報ネットワーク
世界の女性アーカイブセンター、女性情報ライブラリーとのネットワークにより、国連の課題、ミレニアム開発目標達成についての情報の起用裕と発振が求められる。
(1)女性研究者・技術者の支援に必要な情報資料の収集・分析・提供を行い、問題点と課題を明らかにする。
(2)国際的に通用する女性研究リーダーを「層」として育成するための国際的ネットワークづくりとワークショップを継続的に行う。
(3)女性研究者・技術者の更なる登用と定着を目指した、大学と企業トップ双方の「意識改革・啓発」のための「場とプログラム」を提供する。
生涯学習政策局男女共同参画学習課男女共同参画推進係