資料5.「国民の読書推進に関する協力者会議(第1回~第5回の主な意見)」(未定稿)

○読書の意義、推進の必要性に関すること

(読書の意義)

  • 人間関係を築き、自分で納得できる幸せな人生を切り拓いていくために必要なのは言葉であり、言葉の力を養うのは読書。
  • 小さい頃に絵本を読んでもらった幸せな記憶を次世代につなげていくような読書推進を図っていきたい。
  • 読むことがどんなに楽しいか、その喜びを知ることが人生の糧になる。
  • 高齢者のQOLを向上させる道具の一つが本。
  • 個の確立は民主主義の基本であり、自分の頭で考えて判断できる人間を育成するために読書が必要。
  • 読書を通じた「新しい公共」の創造を目指すべき。
  • 読書をめぐっては、1.読む、話す、聞く、理解するなどの人間のロジカルな能力に関する問題、2.感受性や創造力に関する問題、3.人間の能力や感受性などをつなぐ媒体(本、ウェブ、ネット、携帯、ツイッターなど)とその流通や法体系に関する問題など、いくつものレイヤーが存在する。こうした状況を理解した上で、総合的に考えてみることが必要。
  • 読書に関する「領域」の視点を持つべき。本にまつわるすべてのこと、ハードウェア、ソフトウェア、ヒューマンウェアなどをブックウェアと仮置きした上で、それらを新しい公共のソーシャルキャピタルとして捉えるべき。読書、本について、社会論、未来論、経済論として考えるべき。一人のユーザー、読者が本と付き合っているモデルも猛烈に変化しつつある。地域社会の大きな変化と読書は無縁ではない。本を取り巻く社会経済文化について相当大きな問題と捉えた方が良い。我が国の書店は沈没寸前だが、読書のビジネスモデルについて考えると、我が国の再販制度とか法的な環境についても考えなくてはならなくなる。読書については、そういう根本的な法環境、ビジネス環境まで含めて総合的に議論しなくてはならない。
  • 全国学力・学習状況調査では、国語の問題で正答率の高い児童生徒は読書が好きという相関関係が表れている。
  • 学校図書館を活用した学習を通して、課題を設定してその課題について自分が必要とする情報を探り、その情報を取り出してまとめ、アウトプットするという学習を通して、子どもたちは学び方を学び、学力を向上させていく。
  • 国語、算数、理科、社会の学習が、今までどんなことが研究されてきたのかの成果を通じて自分が今どこにいるのかを知るものであるならば、読書は自分がこれからどこへ向かって歩いていくのか、生き方を考えさせるもの。学習全体をつなぐものであり、もしかしたら一番大事なもの。そういう意識に変えていきたい。
  • 大脳は、情報を処理するごとに学習をして、その学習をすることによって自分自身の処理方法が変わっていくことを繰り返す。その際、初期の条件に大きな影響を与えられるというポリアの壺の考え方に従う。このため、幼児体験は大きな影響を持つ。
  • 答えを与えてそれに対応させるというパブロフ型の学習では小脳のみを用い、大脳機能は必要とされない。つまり、強制された読書では、字は読めるようになり、本の出だしを暗記することはできるかもしれないが、大脳を用いることにはならない。大脳の機能をきちんと使うことが大事だと仮定するのであれば、「適切な読書」を与えれば、個人は自分で想像しながらある情報を操作し、脳を進化させる、すなわち何かを獲得することになる。ただ、同じプロセスを踏んでもその読書の内容が社会的に重要なものでない場合には、その人間は反社会派になる可能性もある。

(どこまでを読書推進の対象にするのか)

  • 単純に読書という言葉で我々がイメージしているものにとどまらず、新聞を読むことや辞書を引くこと、拾い読みなども含め、もう少し広く文字、活字を対象に議論を行うことが必要。
  • 読書の中で、ストーリーや経験、知識を伝えるような本当の読書とそうでない読書をどう切り分けて考えていくか。そうでない読書をやっているうちに本当の読書に導かれるような在り方も考えるべきではないか。
  • 物語の中に入って想像力を広げることが読書だと考えれば、アニメやマンガにもその要素はある。
  • 子どもに人気のわかりやすい本から入って他の本に発展していく形があって良い。
  • 図書館で実用書の貸し出しが増えている背景には、もともとは親子や地域で伝承されていたことが今は本で伝えられていることがある。そうした生活を豊かにしたり自分を振り返ったりということと難しい本を読むと言うことはつながっているのではないか。

○我が国の読書環境の現状と今後の取組に関すること

 (就学前)

  • 人間の心は、生まれてからの経験に基づいた記憶の集合体として形成されるものであり、その過程は「ポリアの壺」に従う。このために、成長した人間の心の状態は初期の経験、すなわち幼児体験に強く依存している。
  • ブックスタートから小学校入学までの乳幼児期に絵本の読み聞かせが親子双方にとって大事。子育ての在り方が二極化している現状を踏まえ、図書館を中心に保育所、幼稚園、家庭が共通の認識をもってブックセカンドを推進すべき。
  • 読み聞かせは、読んでいる側の脳にも、読んでもらっている側の脳も活発に活動させるが、特に読んでもらっている側の情動や記憶を司る部分、つまり心に特に響いていることが最近の研究で明らかになっている。
  • 経済格差は、家庭の絵本の数に影響を与えるだけでなく、低所得世帯の多い地域は財政的にも厳しく、行政が図書館の本に資金を投入できないという問題にもつながっている。
  • 読み聞かせを行う幼稚園や保育所の教員には、そのやり方や本の選び方についての研修が必要。司書との連携も大事。
  • 幼児の親にとっては、幼稚園や保育園の園文庫など、行きやすいところに本があるのが大事であり、こうしたところと公立図書館との連携が必要。
  • 保育所や幼稚園の保護者がボランティアとして本に触れることが、将来にわたって読書活動を支援する活動につながることも多い。連携を重視すべき。
  • イギリスでは、学力を確実に育てていくスタートとしてブックスタートが位置付けられている。幼児期の読書体験は小学校以降の読書推進の基本になる。就学前、学校と分けて考えるのではなく、円滑な接続を考えるべき。

(学校)

  • 学校図書館に圧倒的に不足しているのは人。司書教諭の専任化が必要。本来は学校司書もセットでほしい。
  • 教員が図書館に行かない。教育課程での図書館の活用が必要。学校図書館の図書整備のために積算されている交付税が他に流用されているケースが多い。交付税措置された学校図書費の流用を禁じる手だてがほしい。
  • 新学習指導要領の目指す言語活動の充実を図るためには読書が重要。読書時間のカリキュラム化を進め、それに必要な教員を育てる研修や教員養成課程への「読書科」の導入を検討すべき。
  • 学校で読書の時間を週1回義務付けるようなことはできないものか。
  • 幼稚園や保育所の時代からボランティアをしていた保護者からは中学校になると活動の場がないとの声がある。
  • 4月23日の子ども読書の日に読書に関する講話やイベントをしたりしている。こうした取組を国民読書年以降も継続することが大事。

(図書館)

  • 読書の習慣や楽しみを伝える存在としては司書が重要。その配置の推進と資質向上を図るべき。
  • 公立図書館にも学校図書館にも、本を選ぶ目利きとして、本への橋渡し役として司書が必要。
  • 学校と図書館の連携が大事。
  • 図書購入費の充実が必要。
  • 図書館同士の連携による蔵書の管理なども必要。
  • 図書館の設置されていない町村もあり、公立図書館の拡充が必要。
  • 子どもの読書環境作りの観点からは、地域のたとえば中学校区程度の範囲に拠点が必要であり、ハード面の充実も提言すべき。
  • 全国的に公立図書館の格差は非常に大きく、ハード面の充実が必要であるが、ソフト面での取組も必要。
  • 市町村合併で広域化した行政区域でのサービスの充実をどのように図るかが課題。
  • 公立図書館の開館時間の延長や駅での返却など、使い勝手を工夫することが大事。
  • 図書館を集いやすい場にするためのIT環境の整備や、障害者、高齢者、学校不適応児童など社会とつながることが困難な者に対する支援の充実を図ることが必要。
  • 図書館には、長い時間継続する価値を生み出すような読書と、当面の課題を解決するために必要な情報の収集を両立させる機能が求められる。また、読書会をはじめ、幅広く個人の身近な学習につながるような活動にも対応し得るのが公立図書館であり、その整備・充実が必要。
  • 図書館をよく使う層とそうでない層の二極化が進んでいる。
  • 図書館が無料で本を貸していることを知らない親も現実にいる。PRが必要。
  • 親子で楽しんで図書館に来られるような工夫が必要。子どもの読書を切り口に親も図書館に足を向け、一緒に本を読む暮らしをしてほしい。

(読書環境全般)

  • 働いている大人は忙しくて読書時間がもてないことが多い。気持ちの余裕や時間の余裕をどのように作るかが課題。
  • 親子で本が読めるようなワーク・ライフ・バランスが大事。若い夫婦は非常に忙しい。環境が改善されないと、図書館にいくら本があっても解決にならない。
  • 大人の読書の仲介役となる人が必要。
  • 大人の読書啓発のため、時代輪切りのブックリスト集を作り、無料で配布するなども考えられる。
  • すべての世代に対する10カ年の読書推進計画を、数値目標を挙げて作りたい。
  • 読者の視点での検討が必要であり、その際、読者には、年齢、属性が様々な人、特に、障害者、高齢者、日本語の読み書きにハンディを負う人なども含まれるべき。
  • 「本を贈りあう社会」を育てるべき。
  • 読む喜びを取り戻せるような良い仕掛け、たとえば食事付きの読書会を全国で開催することを通じて、定年後の団塊の世代も含め、読書によって新しい人間関係を構築できるような仕組みも作っていけると良い。
  • 首長の姿勢が重要。研修の際も必ず自分の持ってきた本を紹介するなど、自治体を挙げて気運を作ることが大事。
  • 行政部内で読書推進のための組織を持つことが推進力になる。
  • 地方では書店の倒産が相次いでしており、優れた本に接する機会が減っている。
  • アメリカでも書店はどんどん潰れているが、このままではいけないと本屋の中にコーヒーショップを作るなど人が集まる場所を作りアクセスを増やす努力をした。日本ではまだそこまでの取組がないのではないか。
  • 地域で不要になった本を公民館に集めて、公民館で読み聞かせをやるような取組も考えるべき。
  • 読書することと同様に書くこと、表現することが重要。子どもにも大人にも読書推進とともに表現の機会を多く作ることを考えるべき。
  • ケータイ小説は、内容が薄いと批判もされたが、ここから読書の世界に進む子どももいる。デジタルネイティブの世代にとっては、ネットでものを発表することは当たり前。インターネットと読書との関わりについて検討すべき。
  • デジタル化の進展にあわせて、ケータイ小説や電子書籍などの読書の推進も考える必要がある。
  • 「魔法の図書館」にあるケータイ小説は現在200万タイトル。デジタルネイティブと言われる世代にとって、ネット上でものを書いて発信することは当たり前のことになっている。これまで読書する機会がなかった子どもたちが、携帯という身近なところで自分の書いたものを皆に読んでもらって喜びを感じたり、ケータイ小説を読むことでおもしろさを感じ、本を読むようになることも多い。
  • 日本の電子書籍はハードの技術は進んでいるが、コンテンツの量が少ない。
  • ケータイ小説の書き手、読み手が、「青空文庫」のような古典を読む層につながっていくようには見えない。ケータイ小説に魅力を感じた子どもにはいくら勧めても古典を読んでもらえないと言う司書もいる。大人としてどんな本を子どもに手渡すのかを考えるべき。
  • 携帯小説のような新しい形態の読書までまだ射程に入れる必要はないのではないか。
  • タブレット型端末での読書など、読書をめぐる環境が大幅に変わりつつあることを十分に認識すべき。
  • 子どもたちやインターネットをめぐる加速度的な変化を理解することが必要。読書をする環境が急激に変化していることを理解すべき。
  • 読書の大事さ、原点をじっくりと訴えていくことが必要。
  • 読書についての科学的な研究が不十分であり、その実現を提言すべき。
  • 脳科学や社会科学、心理学、教育学などをつないで読書に関する総合的な研究を推進すべき。
  • 読書と、たとえば幼稚園や経済、語学、犯罪はどういう関係にあるのか、ここの中の理論があまりに薄い。あれこれと読書がどう関係しているか、外に出していって研究してはどうか。読書という行為の中で、どういうことが起こっているかを考えなくてはならない。

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