資料1. 国民の読書推進に関する協力者会議(第3回)議事概要(案)

1.日時

平成22年11月30日(火曜日)
10時00分から12時00分

2.場所

文部科学省16階特別会議室

3.出席者

【委員】 福原座長、肥田副座長、秋田委員、磯崎委員、小田委員、織茂委員、鎌田委員
岸委員、きむら委員、新山委員、堀委員、松岡委員、溝口委員、山田委員、横田委員
【意見発表者】島根県教育庁義務教育課小中学校指導グループ指導主事 槇川亨氏
松江市立宍道小学校司書教諭 林良子氏

 

4.議事要旨

議事:意見発表「学校図書館の充実方策」

(1)磯谷児童生徒課長より「言語活動の充実と学校図書館」について説明

○全国で小中高等学校約4万校あり、学校図書館法に基づいて全ての学校には学校図書館が設置されている。

○平成18年の改正教育基本法に基づいて、学校教育法が平成19年に改正された。その中で、義務教育として行われる普通教育の目標の一つとして、「読書に親しませ、生活に必要な国語を正しく理解し、使用する基礎的な能力を養う」ことが定義された。それに基づいて平成20年に学習指導要領が改訂され、小中学校においては、児童生徒の発達の段階を考慮して、児童生徒の言語活動を充実することが定義された。

○読書活動と学力あるいは言語活動の重要性に関しては、いろいろなところで言われているが、全国学力・学習状況調査においても相関関係が見られ、読書が好きな児童生徒は国語の問題で正答率が高いという傾向が、小学校6年生と中学校3年生の両方でみられた。

○学校図書館の今後の活性化に関しては、「子どもの読書サポーターズ会議」(座長:片山前鳥取県知事(現総務大臣))が平成21年3月にまとめた報告書の中で、6つの視点を挙げている。このうち、視点①では「学校図書館が中心となり、学校の読書活動を多様に展開する」こと、視点③では「「学び方を学ぶ場」としての学校図書館の整備を進める」こと、視点④では「学校図書館の教員サポート機能を充実させる」ことを挙げており、こういった方向で政策を進めている。

○学校図書館に係る現状として、まず学校図書館を支える人の状況について、学校図書館法上では、12学級以上の学校において司書教諭の発令が義務づけられている。11学級以下については、当分の間義務が免除されていることもあり、発令の割合は低い。小学校の半分程度が11学級以下であり、司書教諭の発令は課題である。

○次に学校図書館の物的資源について、平成5年に文部省が定めた学校図書館図書標準の達成割合が、平成19年度末では小学校では約45%、中学校では約39%で低い。図書予算の措置額は、「新しい学校図書館図書整備5か年計画」に基づいて、平成19年度から23年度は毎年200億円で計1,000億円が地方交付税措置されている。内訳としては、新しく購入するいわゆる増加冊分が400億円、更新冊数分が約600億円である。ただし地方交付税であるため、自治体の判断で予算化するかどうか決めることになり、残念ながら21年度では、約200億円の地方交付税措置に対して、実績としては164億円ということで下回っている。東京都のようにかなり上回った措置をしている自治体もあれば、かなり予算措置が低い地域もある。我々としては、そういうことが無いように図書整備の重要性についてPRしている。

○学校における読書活動の推進は、「子どもの読書活動の推進に関する法律に基づく政府の基本的な計画」にも掲げられており、全国的に運動を盛り上げている。「朝読書」は、この7、8年間で小中学校の8割以上で実施されるようになった。

○最後に、今、教職員定数の改善計画の策定に向けて動いているところであり、平成23年度から30年度までの8年間計画で財務省に対して予算要求しているところ。平成22年7月に中教審で提言がなされ、新学習指導要領で重視されている言語活動の充実のためにも読書活動の推進が重要であり、学校図書館業務の充実に向けた教職員定数の改善が必要であると謳われている。これまで定数計画の中に司書教諭に関連する記述が全くなかったが、少なくとも言語活動の充実を図るという意味での教員の措置については明記されることになり、我々としては一歩前進と考えている。

 

(2)塩見社会教育課長より「学校・家庭・地域の連携協力の推進」について説明

○近年、学校を地域全体で支援しようという動きが大変活発になってきており、文部科学省としても施策として支援している。資料では、学校支援地域本部事業と放課後子どもプランの推進(放課後子ども教室)という2つの施策を紹介しているが、いずれも地域のボランティアや保護者の方たちに学校の様々な教育活動や、子どもたちの放課後の活動を支援していただき、そのことによって子どもたち自身が様々な体験をしたり、教育の内容を充実させるということと、あわせてそれに参画する大人の方も学びの場を得ることができ、また地域のネットワークづくりにも役立つよう進めていただく事業として実施している。

○学校支援本部事業は、平成22年度時点で全国で2,540本部、小中学校数で言うと8,557校で進められている。放課後子ども教室は、放課後の子どもたちに豊かな体験の場や学習の場を提供しようということで、地域のボランティアの方たちの力を借りて実施しており、全国で9,280教室が実施されている。

○地域住民の参画により学校図書館を活用した読書推進の取組事例として、東京都北区なでしこ小学校では、地域の方々や保護者の方々がスクールボランティアとして学校図書館でボランティアをしている。図書の整理、本の補修、あるいは壁やコーナーへの装飾、あるいは休み時間の子どもたちへの読み聞かせなどを通じて、読書に対する意欲を高める活動を行っている。次に新潟県見附市立田井小学校では、学校図書館サポートということで、図書の受け入れ作業、地域の方への学校図書館開放での貸出作業、紙芝居や折り紙教室などのイベント、学校図書館のボランティアの募集などを中心にやっている。放課後子ども教室においても、学校図書館において、放課後や週末に子どもたちに読み聞かせなどの活動をしており、学校図書館を活用して地域の方々の力を借りて子どもたちの読書の意欲を高める活動が徐々に進んでいる。

 

<文科省からの説明に対する質疑応答>

委員:図書標準の達成率小学校45.2%、中学校39.4%というのは、冊数の割合か。

磯谷課長:この数値は、達成している学校数の割合である。

委員:達成していない学校にも、いろんな程度があるということか。

磯谷課長:そのとおりである。

委員:学習指導要領にある「言語活動」とは、どういうことか。

磯谷課長:自分で物事を調べて、それを分析し、発表するという一連の活動を言語活動とし、今回の学習指導要領の中で柱として位置づけている。

委員:理解するということを言語活動と捉えているということか。

磯谷課長:狭い意味での国語力とかあるいは言葉についての知識ということではなく、知識を理解し、そして自分の言葉で伝えられるという一連の活動を言語活動とし、学習指導要領の中での重要な1つの柱として位置づけている。

委員:有識者会議のメンバーとして、学習指導要領の国語の部分に関わっていた。言語力は、コミュニケーション能力の充実と、言語を通して思考を育てるというような両面がある。全ての教科を通して言葉の力をつけていくというのがねらいであり、狭い意味での読解力だけではなく、学校図書館であったり、本や辞書等、様々な文化的な道具の使用ということも書かれている。

委員:平成5年に学校図書館図書標準が策定されてから18年経つが、地方で達成できていないのにはどこに問題があるのか。もう一つ、新聞を扱う教育が学習指導要領に入っているが、新聞は教材としてどのように位置づけられているのか。

磯谷課長:学校図書館に新聞がどのぐらい配置されているかについては、2年に1回実施している調査の中で今回初めて調査した。その結果については来年報告する予定。地方財政計画の中では、新聞は特に対象としていないため、学校図書館で新聞を保持するかどうかは全く自治体なり学校の判断による。地方交付税措置をしても、それが100%必ずしも使われていないという問題については、これは自治体の判断であるが、司書教諭がまだ100%配置されていない状況であったり、校長先生にも意識の差があり、首長や議会の判断というマクロな面と、個々の学校の人の配置といったミクロの面の両方でばらつきがあるのが問題。どのように改善していくかについてこの会議でも教えていただきながら、着実に推進していきたい。

委員:学校地域支援本部では中学校での事例は無いのか。また、放課後子ども教室では、どのように読書の取組を促進していくのか。

塩見課長:今回お示しした事例は小学校が中心だが、中学校での事例もある。放課後子ども教室の事例は、体験活動など様々な活動の中で読書の事例もあるというもの。両事業とも、地域の創意工夫を活かして、地域の実態に応じた形で実施しており、学校図書館以外にも様々な活動がある。文科省として、特に学校図書館での活動を依頼するものではないが、放課後の活動の場として学校図書館は非常に適したところだと思うので、成功事例を紹介することにより活動の広がりを支援できればと考えている。

委員:文科省として、11学級以下の学校の司書教諭の配置と、学校司書の充実といった課題にどう対処していくのか。

磯谷課長:2つある。司書教諭について、発令が進めば見かけ上は司書教諭の数は増えるが、定数改善されないと、業務量という意味では結局負担がかかってしまう。これまでの教職員定数改善では司書教諭について全く記述がなく、学校の努力によって負担軽減がなされているという現状だったが、今回の定数改善では、少なくとも言語活動の充実に関しての教職員の充実は盛り込まれた。学校司書については、これは事務職員としての専門職ということになるが、先程の「サポーターズ会議」の資料や報告書の中で初めて学校司書をとりあげ、各自治体での積極的な採用を促進している。また、司書教諭が学校司書と連携することにより事業の効果をあげている事例もあり、そういった事例を積極的にPRしている。例えば荒川区では、全小学校には学校司書を配置しており、中には司書有資格者もいるということで、少しずつ現場でも広がってきている。

座長:今年の高校の全国学力調査で、新聞の社説の問題が一問でていた。将来的には、新聞をどうやって配備するかという問題も出てくると思う。

 

(3)島根県教育庁義務教育課小中学校指導グループ指導主事 槇川亨氏より、「島根県の学校図書館活用教育」について、資料に基づいて意見発表

○島根県では、全国初の取組として、学校司書を配置する市町村に対して県が財政的な支援をしている。現知事の主導で開始した事業であり、逼迫した財政の中、単年度で2億円以上の予算がつけられた。

○学校教育の中で教員が目指しているものは「生きる力」を子どもたちに身に付けさせることであり、これが最大の目的である。「生きる力」を構成する3つの要素「確かな学力」「豊かな心」「健康体力」のうち、特に「確かな学力」と「豊かな心」の育成には様々なアプローチがあるが、学校図書館の機能の活用によってもここに迫れるのではないかと考えた。一つは、学校図書館の読書センターとしての機能を活用し、子どもたちが学校図書館で読書活動をする中で感性、想像力を高めながら、豊かな心に迫っていく。もう一つは、学習情報センターとしての機能を活用し、学校図書館を活用した学習を展開することによって、情報活用能力を子どもたちが高め、確かな学力に迫っていく。そういうことが出来るのではないかということが県の施策の原点であった。しかし、旧態依然の学校図書館、つまり普段は鍵がかかっていて会議室や物置同然の学校図書館では、到底無理である。

○島根県の施策の最も重要な視点は「人」である。司書教諭は、どちらかというと経営的指導的な役割を担う教諭であり、学校図書館の機能を活用しながら授業を展開していくことが最も大事な役割である。司書教諭になるには、学校図書館司書教諭講習で5教科10単位を取得する必要があり、全て取得するにはほぼ5週間かかる。島根大学では、毎年夏休みの時期に3教科6単位を開設しており、全て取得するには足掛け2年必要である。島根県では、11学級以下の学校も含めて、平成26年度当初までに全ての公立小中学校へ配置することを目指している。一方、学校司書は、どちらかというと技術的講師的な業務を担う方であり、具体的には、授業用の図書の準備や図書資料の受け入れ等をしている。学校司書と司書教諭が協働して子どもたちの読書活動あるいは学校図書館を活用した学習活動を展開している。

○学校図書館を活用した学習活動とは具体的にはどういうことか。大きく2つに分けてみた。一つは、単発的な、いわゆる調べ学習である。例えば、ある動物について書かれた単元の読み取りをし、その単元の終了後の発展的な学習として他の動物について図鑑などの図書資料を使って調べまとめるような学習である。二つ目は、設定したテーマについて図書資料を調べてまとめて発表する、いわゆる探求的な学習である。この学習は一つのプロセスをもった学習である。子どもたちが課題の設定をして、その課題を解決するために情報収集・整理分析し、最後にまとめて発表するというプロセスである。しかし、これは順序良く進んでいくわけではなくて、行きつ戻りつしながらそして最後にはこの過程の中で学び方を学んでいく、言語活動の充実を図りながら学び方を学んでいくといった学習である。

○学校図書館を活用した学習を登山に例えると、山の頂、つまり課題解決に向かって、子どもたちが歩いていく道筋は個々様々である。個々によって速さも道筋も様々であり、色んなところで壁にぶちあたる。一斉学習の中で教えこむタイプの学習と違い、40人の生徒に1人の教員がつくということではこの学習は成立しない。授業者の他に、例えば司書教諭や学校司書のサポートがつくことが理想だと考えている。

○ではそのために県としてどのような施策を進めてきたかということで、まず、人に関わる事業について、島根県では、全小中学校を「人のいる図書館」にというキャッチフレーズで、「学校司書等配置事業」を実施した。配置する人の区分には、「有償ボランティア」「学校司書A」「学校司書B」がある。「有償ボランティア」は、一日1時間程度、週5日以上で35週以上活動する。「学校司書A」は、一日5時間以上、週5日以上で年間35週以上、「学校司書B」は毎日6時間以上、週5日以上で年間52週(長期休暇中も含む)勤務する。この中から、どの区分の人を配置するかを各市町村が選ぶ。有償ボランティアは年間20万円で、県が全額助成する。学校司書A・Bについては、市に対しては半分助成しており、町村には3分の2を助成している。この結果、平成20年度(事業開始前)は、ボランティアも含め学校司書を配置する小中学校は96校(27%)だったが、平成21年度には、ボランティアが196校、学校司書が142校で配置された。さらに22年度には、ボランティアが165校、学校司書が172校で配置となり、21年度からボランティアは30人減少し、学校司書が30人増えた。市町村の財政負担があるにもかかわらず学校司書が増加したのは、学校司書の有用性が認識されたということだと思っている。県内21市町村のうち、10当村が昨年度補正を組み、合計4900万円の図書費を各学校につけており、市町村でも本気で取り組んできていると感じている。

(島根県の教育委員会が作成したDVDを再生。子どもたちに学校図書館の印象をインタビューし、生徒からは「生徒が自由に活動できる場所」、「調べものに役立ち楽しい」、「きれいで落ち着き、先生や図書委員にオススメの本を紹介してもらえる」などの発言がある。)

○学校司書を配置して何が変わったかについて学校にアンケートをとったところ、貸し出し冊数が増えた学校が80%であった。司書に本を探してもらったり紹介をしてもらうことで、学校図書館に通ってくる児童生徒が増えた。司書の一番大きな役割は、子どもたちと本を結ぶことだと思っている。このほか、利用する子どもが増えた学校が85%、学校図書館の整備が進んだ学校が98.5%であった。整備の度合いは様々であるが、親しみやすい学校図書館が増えてきたと言えるのではないか。

○人に関する2つめの事業として、司書教諭の数を増やすため、通信制大学の受講にかかる費用を59,000円を限度に補助するとともに、島根大学が行う司書教諭講習を受講する教諭の旅費を支給する事業を開始し、徐々に資格を取る人が増えてきている。

○司書教諭を配置(発令)しても、学校図書館の仕事をする時間がないという非常に大きな課題がある。教職員の打ち合わせの時間が取れず連携も取れない。時間の保証がない中で司書教諭が学校図書館を活かすのは非常に難しい。司書教諭には負担軽減が必須である。

○図書資料についても課題がある。県では、学校図書館図書標準を達成している割合は19年度末で小学校では20%、中学校では21%程度である。市町村ではお金が無くて困っており、学校に十分な予算が行かず、地方交付税措置されている学校図書費の島根県での措置率は47%である。しかし、昨年は補正で4900万円付いたので、今後の市町村の動きに期待している。県としても、市町村を支援するために、調べ学習用の図書500万円分2,000冊を市町村の公立図書館に寄託するという事業を始めた。22年度は10市町村に実施し、来年度は残りの11市町村分の予算化に向けて動いている。

○学校図書館整備については、全教職員が協働して学校図書館整備を進める学校に対して助成を行う「学校図書館パワーアップ事業」を実施している。学校図書館の整備を教員全員で行うことにより、教員が学校図書館を理解でき、学校図書館って使えるじゃないかと気づいてもらえる。学校司書のうち司書有資格者は60人しかいないため、高校の司書がアドバイザーとなり、実施校をまわっている。管理職には、校内の研修体制を必ず整えるという条件を出している。

○静岡大学が、島根県のある学校活用教育の先進校における全国学力学習状況調査の調査結果のデータをグラフ化した。この小学校は学校図書館教育を始めて今年で5年目である。学校図書館を週に何回利用するかを尋ねたところ、週に1回から4回利用すると答えた割合が、全国平均は約18%のところ、この学校は65%であった。この学校では、1年間に借りる1人あたりの平均冊数は、多く借りればよいということではないが参考までに示すと、135冊であり、3日に1冊読書しているということになる。文科省の「退職教員外部人材等活用事業」を活用して司書教諭の授業負担をぐんと軽くしてあり、全てのクラスに司書教諭が入ることもできている。その結果、この全国学力学習状況調査をみると、平成19年は国語Bの問題が全国平均を下回っていたが、21年度では上回った。算数でも同様の結果であった。これは1つのデータにすぎないが、こういった成果をあげている学校もある。学校図書館を活用した学習、つまり課題を設定して、その課題について自分が欲しい情報を探り、そしてその情報を取り出してまとめ、そしてアウトプットするという学習を通して、子どもたちは学び方を学んでいくのだと思う。島根県では、知識を子どもたちに一方的に与えるのではなく、知識の得方を教えるといった教育が重要と考えている。こういった学習を通して、生涯を通じて子どもたちが必要な生きる力を育むことができるのではないかと考えている。

 

(4)松江市立宍道小学校司書教諭 林良子氏より、「心を育み学びを豊かにする学校図書館」について、資料に基づいて意見発表

○司書教諭として、読む力や調べる力は子どもたちの学びを支え、生きる力を育む。そこで子ども同士、大人と子ども等のコミュニケーションを大切にしながら、子どもたちに読むこと、調べることの楽しさを充分に味あわせたい。それから日頃の読書活動や、学校図書館の活用を正確的に展開し、将来にわたって読む人、情報活用の出来る人を育てていきたいと考えている。

○「本と学びと人と図書館をつなぐ」ということで、実際に学校図書館活用をどうしていくかについてお話させていただく。学校図書館の活用を進める中心になるのは司書教諭であり、司書教諭が動かなければ、学校司書の配置も生きてこない。司書教諭の役割はつなぐこと、架け橋になることがキーワードだと考えている。

○まず、教育課程への位置づけについて説明する。4月に校長が学校経営方針を出すが、その中に学校図書館の活動や読書推進が盛り込まれるよう校長と話しあう。その後、4月の早い時期に、読書活動指導計画や学校図書館の年間運営計画等の計画類を職員会議に通して提出し、教職員の共通理解を図る。司書教諭は、週3時間授業を行う。授業内容は、ア読書指導、イ利用指導、ウ情報活用指導という3本の柱を立て、各クラス(特別支援学級4クラス、通常学級13クラス)でア・イ・ウそれぞれ各1~3時間、年間で3~5時間実施している。司書教諭が授業を行える時間枠を各担任に示し、各クラスでいつどういった授業をして欲しいかを記入してもらう。私は低学年を担任しているが、朝から夕方4時頃まで座る間がほとんどなく毎日忙しい。

○次に、「本とつなぐ」について説明する。宍道小学校では、ブックトーク、おはなし会、宍道小おすすめの本と読書記録、ファミリー読書、図書委員会の読書イベント、その他(朝読書、朝の読み聞かせなど)の読書活動を全校で行っている。

○ブックトークはテーマを決めて、本を複数冊関連付けながら紹介している。子どもたちからの色んな声を吸い上げ、言葉のキャッチボールをしながら本を紹介していく。じっくりと読む本、子どもたちが時間をかけて読んだあと満足感がもてる、そういう本を紹介するように心がけている。

○ストーリーテリングでは、主に昔話を語っていただいている。今の子どもたちは、お話を聞くということが暮らしの中にまずない。学校で意図的にこの時間を設けるとともに、公立図書館で行われているお話し会へ誘っている。

○おすすめの本については、是非子どもたちに出会わせたい本を選んでいる。本のリストは児童だけでなく保護者にも配っている。クラス担任が中心となって読書記録を学年毎に作り、全部読んだ児童の名前を学校図書館近くの掲示板に張り出すほか、学校司書から読書輝き賞という賞状を出してもらっている。

○ファミリー読書は、家庭での読書の取組の様子を親子でカードに記入するもの。子どもは、読んだ本や家で話題にした新聞記事について記入し、お家の方は、読み聞かせをしたこと、同じ本を読んで対話をしたこと、本について話し合ったことなどについて子ども向けに記入する。カードは掲示板に掲示している。

○図書館イベントでは、図書委員の児童が劇を発表したり、高学年が低学年に絵本の読み聞かせ、辞書引き大会、図書館クイズなどを実施している。このほか、学年毎に次年度の同学年に是非読んでもらいたい本を1冊選んでカードに書き、新年度にその学年に回覧するとともにその本を学校図書館に置くようにしている。先生方からも1枚ずつ紹介のポスターを書いていただいている。

○次に「学びとつなぐ」取組を紹介する。図書館利用指導として、本の中から情報を取り出す力を高めることをねらいとする「図書館クイズ」を全学年で実施している。また、情報活用指導として、「図鑑を使おう」(2年生)では目次・索引の使い方を中心に学ぶほか、「百科事典を使おう」(4年生)、「年間を使おう」(5年生)など、調べるスキルを養う学習も授業として実施している。ただ、子どもたちに一人1冊本を渡して調べる喜びを満たしてあげたいが、学校には本が足りない。このため、松江市の市立図書館から本を借りて授業を行っている。

○次に「人をつなぐ」取組を紹介する。学校司書は学校図書館の一番重要なスタッフであり、学校司書は資料に関する専門家、司書教諭は授業に関する専門家と言われている。本校の学校司書は島根県の区分では学校司書Aに相当する。司書有資格者ではないが、県が行う研修を積極的に受け、どんどん力を付けている。勤務時間は10時から16時で朝夕は不在であるため、教員とすれ違いになってしまうこともある。このため、学校司書との連携・協働に心がけている。具体的には、協働分担表を作成し、学校図書館業務と具体的な取組内容について、司書教諭、学校司書、教諭、ボランティアの分担を明確にしている。また、先生方には、学校司書へ連絡・相談したい内容を記入できる相談カードを示している。先生と学校司書が共通理解を図り、協働することを重要視しており、管理職との相談、職員会議での提案・活動説明、資料提供・読書相談、校内研修会、図書館整備作業、職員室版の図書館だよりの発行などを行っている。校内研修会や職員と協働した図書館整備作業は、先生方の学校図書館への理解が進むチャンスである。図書館整備作業では、図書館のペンキ塗り、3桁での分類表示板入れ、分類表示の掲示などを行い、普段図書館に足を踏み入れない先生方が図書館に慣れてくださり、その後の指導にも役立っている。読書の取組は一人ではできないことがたくさんあり、保護者、ボランティア、地域の方々などみなさんのお力をお借りしながら活動をしている。

○松江市を含め全国的に、司書教諭の発令は行われたものの授業の時間を持っていない先生が大変多い。研修会で話す機会を得たときには、先生方にどうか諦めないでと話している。担任しているクラスでの取組(ブックフェア、テーマ別ブックリストの作成など)を紹介し、子ども達の姿を見ていただくことにより取組を広めている。

○先日、長く読み継がれている本「王様と九人のきょうだい」を翻訳した君島久子さんが講演で、「本をいくら書いても子どもには届きません。本と子どもを結ぶ人が必要です」とおっしゃった。本を書かれた方からこのような言葉を聞き感動した。本当にそうだと思う。司書教諭として、子どもと本を結ぶ架け橋となりたい。

○100年前に書かれた「ニルスのふしぎな旅」はぜひ子どもたちに出会わせたい1冊と考えている。このような本を子どもたちに紹介することは、とても手間隙のかかること。学力の向上はもちろんだが、子どもたちが何十年後かに幸せに暮らしているように、学校図書館を使える学習して良かった、あの本に出会えて良かったと思ってもらうように、これからも頑張っていきたい。

○終わりに、今願うのは、子どもたちに向き合える人の確保である。本がない、時間がないという様々な困難があるものの、子どもたちの育ちという手ごたえをバネにこれからも教職員との協働を通じて頑張っていきたい。

 

<意見発表に対する質疑応答>

委員:まず身分保証について聞きたい。学校司書の身分は継続的なものか。熊本市では5年更新となり、身分の保証がないためなかなか続かない。また、給料はどうなっているのか。学校司書AとBでどう違うのか。

槇川氏:学校司書は市町村の職員なので市町村によって異なるが、全て非常勤職員である。この事業は5年を目途に実施しているが、5年後にある程度の見直しをするにしても、それ以降も継続して実施すると知事も教育長も明言している。1日5時間(学校司書A)と6時間(学校司書B)の違いについては、長期休業中に勤務する学校司書Bは、正規職員の勤務時間に近づけて一日6時間勤務とし、市町村職員の月給を基準に、勤務時間に見合った給料としておおよそ年間200万円で設定している。司書Aも同様に、長期休業中は勤務せず、1日5時間の勤務時間数に見合った給料として、年間100万円で設定した。ただ、この金額で生活ができるかというとそれは保証できないため、地域の中で家庭にいる方が学校司書となっていることが多い。

委員:熊本ではものすごく給料が安く、年間200万円というのは夢のような話である。

委員:学校図書館の本は、必ずしも質が良い物が揃っているとは言えない。少ない予算の中で、どのように選書しているのか教えていただきたい。

林氏:まず、4月から5月に、選書基準を職員会議で決める。前年度、どの学年が何月にどの単元で学校図書館を使ったかという実績表を作成・配布し、その資料をもとに、各学年で、今年はどの単元で重点的に学校図書館を使うかを話し合って決めてもらう。その後、本校ではこの単元に使える本がこれだけあるという単元別資料リストを作成しているので、それを示し、不足しているものを購入している。毎年1単元ずつは、自校の資料で調べ学習が体系的に行えるよう、図書を整えていきたいと考えている。楽しみとしての読書の本については、現状ではシリーズで購入しており、やや偏りがあると感じている。「この本に出会えて良かった」という本との出会いをさせたいと思っており、長く読み継がれてきた本を主に集めようとしている。この部分では、私がかなりイニシアティブをとらせていただいている。

委員:学校図書館はとにかく人が大事。人のいる学校図書館には子どもも来て、本がたくさん読まれて結果的に学力向上につながる。また、先生方が学校図書館を使いこなせることが重要で、神奈川県の子ども読書活動推進計画にも記述している。本日、参考資料として、第2次神奈川県子ども読書活動推進計画と、県が作成した学校図書館ボランティア向けのハンドブックを配布した。横浜市では、学校図書館の予算が100万円あり、司書教諭の発令率も高いが、内容は必ずしも十分ではなく、島根県の事例を参考に、是非活かしていきたい。

委員:5~10年後の変化という観点から意見を聞きたい。情報化に関連して、職員間で情報の共有化を図るため、教材として使った資料のデータベース化など実施しているか。また、伝えるメディアとして例えば電子黒板やAV機器、デジタル化された教材等と学校図書館の関係についてどう考えるか。新聞や本の電子化が進むこれからの時代において、コミュニケーションツールが電子化されたときの姿をどう考えるか。何か良い事例や、注意すべき点等についてご意見を伺いたい。

林氏:指導案はパソコンに入力し、教職員はパスワードを入力すれば誰でも見られるようになっている。教材は手作りの資料が中心だが、どの授業で使ったかわかるように整理して全て保存してある。

槇川氏:今年から、全小中学校の司書教諭と学校図書館担当者を対象に研修を実施しており、その中で、各校の良い取組を紹介している。また、「子ども読書県しまね」というホームページを県立図書館と合同で平成21年11月に開設し、県の施策や各学校の取組を掲載している。資料の電子化についてはあまり想像できないが、紙の本の、書き込みをしたり付箋を貼ったりできるという良さは捨てがたいと思っている。

委員:大学の教員養成課程において、司書教諭の科目では読書指導をきちんとやれるが、それ以外では一斉授業をモデルにした講義内容が中心になってしまう。そういったことを中長期的に改善するよう報告書に盛り込むことも必要ではないか。

委員:県の教育長の読書推進への関心の有無が、予算面でも人事面でも大きく影響する。地方交付税措置は強く訴えないと負けてしまう。地域での読書推進の事業は、学校教育担当課と生涯学習担当課が連携して進めないとなかなか広がらないと思う。

座長:今の話は報告でも是非強調していきたい。また、意見だが、小中学校で読書教育を受けた子どもたちが、高校生や大学生になった時にどうなるのかというフォローアップを県として実施するとよいのではないか。

以上

 

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