【資料4】安西祐一郎委員提出資料

教育安心社会の実現に向けて

                            2009.6.1
安西祐一郎

 教育は国家の基盤である。すべての国民が安心して教育を受けられる社会の実現には、家庭教育、幼児教育から大学院博士課程教育、また特別支援教育、社会人教育等のすべてにわたり、「教育の質の向上」、「教育に対する国民の関心の増大」、「教育への公的支援の拡充」の三位一体改革が必要である。

1.教育の質の向上

 家庭教育・幼児教育については、児童相談所の相談件数がうなぎ昇りに増えていること等を念頭に置いた、家庭崩壊のセーフティネット再構築が必要である。小中高、特別支援教育については、専科教員(特に小学校)(理科、外国語等)と支援スタッフ(コーディネータ、体験教育、キャリア教育、地域連携等)の増員、経済困難な家庭に対する就学援助のセーフティネット構築、閉鎖社会でなく開かれた社会で生きるための教育の向上(外国との交流等)が必要である。専門学校、専修学校、高専、短大、大学等については、例えば情報公開義務化の拡大、分野別認証評価の促進、機構改革の推進、その他質の向上が当該大学の競争力向上をもたらす仕組みの充実、開かれた精神を持つ人間を育む教育の充実(質の高い留学生を増やす、外国に行く学生数を増やす等)、大学院博士課程の教育内容充実等が必要である。

2.教育に対する国民の関心の増大

 家庭教育、幼児教育、小中高校、特別支援教育等については、保護者、親族、隣近所、コミュニティの意識改革を促進する仕組み(難しいが)、地方自治体における教育の責任体制の再構築(首長、教育長、教委等の関係、その他)、養育費を払わない若年離婚者、学費を払わない保護者、奨学金を払わない生徒等に対する社会的公正の面からの明快な対応等が必要である。大学等については、教育による成果の大部分が公共財であり、学生を私的な受益者と見立てる受益者負担の原則は国公私立学校を問わず成り立たないことを明確にすること、奨学金を返済しない学生・卒業生等への明快な対応、経済界等との真剣な話し合い、大学院(特に博士課程)とは何か、どうあるべきかの理解を増進する手立てを講じること等が必要である。全体として、教育が個人の成長に資するだけでなく国や地方自治体の発展の基盤であることを国民が理解するよう、抜本的なアピールを行うべきである。

3.教育への公的支援の拡充

 教育安心社会の実現には、教育の質の向上と教育への国民の関心の増大が重要であるが、特に、教育への公財政支出が世界各国の中でも群を抜いて少ないこと(多くの指標があり、特に就学前教育、高等教育における私費負担が大きいことはよく知られた事実)が、我が国の教育をあらゆる意味で劣化させる最大の原因となっている。教育への公財政支出を抜本的に拡大することは、教育安心社会の実現にとって必須であるばかりでなく、我が国の国力を上げるために最も重要な事項の一つである。

 具体的に考えられる施策を挙げれば、すべての教育段階等における施設設備の充実強化はもちろんであるが、他にも例えば、家庭教育のセーフティネット構築と運用の支援、幼児教育無償化の早期実現に向けた幼稚園就園奨励費の拡充、小中学校児童・生徒への就学援助費用支援、専科教員、支援スタッフ等の拡充、都道府県の間に見られる教育施設設備支援のばらつき是正措置、高校における学費減免の拡充、経済困難生徒への奨学金拡充、大学等における経済困難学生への奨学金拡充、大学院生(特に博士課程学生)の生活支援、教員・職員という人事制度を拡充して「専門職」をすべての教育段階に導入し、支援体制を抜本的に強化すること、その他たくさんの公的支援拡充策をお互いに関係づけて措置することがきわめて重要である。

以上

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