2009年6月1日
パナソニック株式会社
中村 邦夫
まず、第1回、第2回会合とも失礼をいたしますことをお詫び申し上げます。
この懇談会の趣旨であります、意欲と能力のある誰もが安心して教育を受けることができるように、家計での負担の軽減など、教育費の在り方の検討が必要であることは、私も日頃より考えていたことであります。
資源の乏しいわが国は「科学技術創造立国」でグローバル競争を勝ち抜いていかねばなりません。そのためには、人材育成こそが唯一の手段であり、安心して教育を受ける社会環境を等しく作ることの重要性は言うまでもありません。特に、少子化の進展とあいまって、理数科系人材の絶対的不足が懸念されており、わが国が「科学技術創造立国」として勝ち抜くためには、優秀な理数科系人材の育成は喫緊の課題であると認識しております。
このような視点から、以下に意見を述べさせていただきます。
幼児段階では、子どもは自らの意思と努力で教育を受けることはできず、親の収入や経済環境に左右されることになります。わが国における私費負担の割合の高さや欧米での無償化への流れも踏まえ、幼児教育を生涯最初の社会保障と位置づけ、早期に無償化を実現するとともに、将来的な義務教育化も検討していくべきと考えます。こうしたことは、少子化対策にもつながると思います。
「ものづくり立国」「科学技術創造立国」で存続すべきわが国にとって優秀な技術者や研究者は言わば国力であり、その育成は国家的課題です。したがって、将来の高度な技術系人材の育成に向けて、そういった人材を輩出する大学・大学院で学ぶ学生に対して、学費はもちろん、生活保障も含めたトータルな支援を国策として行うべきだと考えております。
また、人材は、日本国内にとどまらず、広く世界に求めることも必要ではないかと思います。たとえば、海外からの優秀な留学生に対する教育の機会を拡大し、かつわが国発展の一端を担う人材を育成していくことも重要な視点であると考えます。
優秀な人材が家庭の経済事情により進学を断念せざるを得なくなることは国家としての損失であり、親の経済力格差が子どもの教育格差につながることは避けなければなりません。教育の機会は平等であるべきと思いますが、一方で、学力差をあえて平等に扱うことも必ずしも適切ではなく、学力に応じた支援制度があってもよいのではないかと考えます。たとえば、各都道府県で特に優秀と認められながらも経済事情で進学が難しい数人の学生を選抜して国立大学の学費・生活費を無料とする、「学費無料制度」を創設し救済するなど、優秀な人材を育成するために国立大学でネットワークを構築することが必要だと考えます。こうした制度は、経済事情の厳しい中学・高校生のよい励みとなるものと思います。
この懇談会の趣旨とは多少異なりますが、独立行政法人科学技術振興機構では理科教育番組のインターネット放送化を検討していると聞きました。理科教育の「質の向上」に資するものとして期待しております。教育費を積めば良い教育を受けられるという環境と対極にあるとも言え、このような取り組みが増えていくことを望んでいます。
以上
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