教育安心社会の実現に関する懇談会~教育費の在り方を考える~(第2回) 議事要旨

1.日時

平成21年6月1日(月曜日) 13時~14時半

2.場所

霞山会館「霞山の間」
(東京都千代田区霞が関3-2-1 霞が関コモンゲート西館 37階)

3.議題

  1. 意見交換
  2. その他

4.出席者

委員

安西委員、門川委員、木村委員、橘木委員

文部科学省

塩谷文部科学大臣、松野文部科学副大臣、萩生田大臣政務官、銭谷事務次官、玉井文部科学審議官、森口官房長、清水生涯学習政策局長、金森初等中等教育局長、久保大臣官房審議官、合田総括審議官、河村私学部長 他

5.議事要旨

 <教育費負担に関する総論>

○ 教育安心社会の実現に向けて、教育費負担をどのように考えるのかということは、教育の質の向上と、国民の教育の関心を高めることとセットで考えなければならない。

○ 幼児教育の無償化、義務教育段階の就学援助の充実、高校段階の私立高校生の負担軽減の検討、大学・大学院段階の授業料減免と奨学金事業の充実と卒業後の授業料返還の特例、私立大学生の負担軽減といった支援策は最低限やらなければならないこと。これらに加えて、教育の質の向上のためには財政的な支援も必要である。ただし、個人への教育費の支援を行う上で、他の教育関係支出を削るようなことがあってはならない。

○ 各個人の能力を高めて、その人の生産性を高めることが経済の活性化に寄与するという「人的資本」の考え方においても、経済成長を高めることと、分配の公平性を期するという二つの大きな目的を達成するためには教育の充実しかなく、教育投資が必要であるという結論となる。

○ 英国では近年、厳格な評価による学校の質の向上と、教員の処遇改善の2つの柱で教育に力を入れており成果を上げている。

○ 国民に対して、日本の教育公財政支出が先進諸国の中で低いということをはじめ、教職員の厳しい待遇等の現状について十分に説明し、政治・行政が社会の宝である子どもたちの教育の充実について優先順位を上げ、教育費に対して国民に負担を求める合意形成が重要。

<個別の支援方策について>

○ 幼児教育の無償化は重要であるが、幼稚園の職員の低い労働条件も同時に考慮しなければならない。

○ 新たに財政支出する以上、国民に不信感を与えないよう、効果的に本来の目的に使われることを「見える化」しなければならない。例えば、就学援助を拡大した場合も、福祉事務所から給食費分を学校に直接振り込んでもらうなどの仕組みを工夫し、不払いなどを解決する必要がある。

○ 豊かな感性を育み、学ぶ意欲を高めるきっかけとなる芸術文化体験、自然体験学習、部活動の遠征など、就学援助でも対応できていない経費についても支援が必要。公立の学校は、経済的に困難な家庭への配慮から、そうした取組に消極的にならざるを得ない実態がある。現在の就学援助制度では、金額も対象者も対応できていない。積極的な対応が必要。

○ 高等学校段階において、経済的に困難な人に対する制度の充実が必要。

○ 大学については、もはや我が国の国公立大学の授業料は、世界の標準からみて安いものとは言えない。私学も大変な授業料負担である。このため、給付制の奨学金の導入や、従来の貸与制奨学金を充実させることが重要。キャリア教育に大きな役割を果たしている専門学校についても支援が必要。

○ 博士課程の支援については、他の学校段階と比べて、莫大な財源が必要なものではなく、多く見積もって数百億円と思われるので是非とも行うべき。 

<教育安心社会のための教育費負担以外の論点>

○ 学習者への経済的な支援は、安心の一番基本として最低限やらなければならないことであるが、それ以外に次の2点が重要。

 (1)施設の整備や教職員の給与面での支援

 (2)壊してしまっているような教育力が極めて低下している家庭のサポートや、自治体間の教育への支援のばらつ   きの解消などに向けた仕組みの構築

○ どのような家庭環境においても、経済的な支援により物理的に安心というだけではなく、精神的にも安心に学べるように、家庭へのサポートが重要である。

○ 学校教育は、子どもの成長の一部しか担っていないということを自覚する必要。基本は家庭、そして地域もあり、連携が重要である。さらに企業を含めて、社会総がかりの教育が重要。企業の側においても、教育問題に取り組もうという機運が生まれつつある。こうした機運をさらに高め、社会全体が「負担」を含めて教育に責任を持ち、一人一人の子どもに合った教育を実践できる仕組みの構築が必要。

○ 家庭への支援、地域の教育力の向上ということのためにボランティアの協力が必要であるが、そうした人材やコーディネートする専門家、さらにNPOの活用に際しての財政的な支援が不可欠。「放課後子どもプラン」においても、国の補助金が一桁小さい。ボランティアの善意だけに頼るのでは、限界がある。米国では企業等から寄付を受けたNPOがボランティアを組織化して活動しているが、日本も行政はもとより社会・企業が財政的な支援を考える必要。

(了)

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