教育安心社会の実現に関する懇談会~教育費の在り方を考える~(第1回) 議事要旨

1.日時

平成21年5月25日(月曜日) 9時半~10時半

2.場所

霞山会館「牡丹の間」
(東京都千代田区霞が関3-2-1 霞が関コモンゲート西館 37階)

3.議題

  1. 意見交換
  2. その他

4.議事要旨

<総論>

○日本の今までの教育費全体の在り方を根本的に変えていかなければならないが、当面、今の経済状況、特に家計負担の問題について焦点を合わせ、議論いただきたい。

○国民に対しては、教育が公的なインフラとして経済的な効果があることを強調して理解を得る必要があり、しっかりと訴えていかなければならない。

○日本は、世界各国に比べて国からの公財政支出が少なく、それが低所得の家庭を直撃している現状を何とか打破しなければいけない。教育は国の基盤であるということを皆が理解しなければならない。

○幼稚園、小学校・中学校、高等学校、大学・大学院について、それぞれの施策を具体的につみ上げていただきたい。

○(各学校段階での施策のつみ上げに加えて)横軸として、経済的に困窮している状況への緊急的な対応と、教育をソフトインフラと見たときに人づくりが国づくりの基本だということを念頭に置いて具体的な政策を立てるということも組み合わせて教育費の問題を考える必要がある。

○家庭の経済力による格差と志の格差の二つの格差が深刻。このため、お金のことを心配しなくても学べるセーフティネットを作ると同時に、学んで世のため人のために尽くそうという志を持った子供を育てていくことを両立することが必要。

○明治維新後、日本が急速に近代化に成功したのは、リーダーが優れていたのと同時に、江戸時代末の日本がすでに世界最高の識字率であったように、国民全体の学力が高く、かつ、勤勉であったからである。世の中のために、人のために尽くすリーダーを育てることと、同時に、幅広い国民が教育の機会を享受できるよう、経済力のない家庭を支援することの両方をきちんとする必要がある。

○一億総中流社会でなくなったことの効果が教育にあらわれており、所得の高い家庭に育った子供と貧困に育った子供の間で受ける教育の格差が非常に広がっているというのが問題として出ている。それは階層固定化社会につながる。是正策としては、公教育を充実させるとか、あるいは先生の所得を上げるとか、1学級の人数を減らすなど、公教育支出を増加するしかない。

○経済面の格差と志の格差を痛感する。子供の教育意欲に非常に格差があるため、子供に勉強意欲を与えるための政策というのも、教育費問題と同時に考える必要がある。

○世界各国の統計で見ると、教育費を支出している国のほうが経済効率が非常に高く、経済成長率も高いという事実が出ている。今までは教育を私的財とみなしたけれども、教育は公共財であるということを強く認識し、公教育支出を増やすと経済の活性化につながることを、国民に宣伝していく必要がある。

○ひとり親家庭の支援や奨学金の増額は大事なテーマであるが、養育費をきちんと調停も何もしないまま離婚するケースや奨学金を返さないケースもあるなど、その負担がすべて納税者にしわ寄せが来ているというモラルの低下の問題がある。

○今回の若年世代の財政投資を増やしていくのと同時に、道徳教育などを充実して規範意識を持った上で、頑張れば明るい未来が見えてくるという、夢のある制度にしていかなければならない。

○ これからの高付加価値産業に労働者をうまく移行させるためには、知識教育、生涯教育における知識教育のリカレントをどうしていくかということも重要なテーマである。 

<幼児教育・初等中等教育について>

○京都市の就学援助世帯は10年前以前はずっと10パーセントぐらいだったが、基準を変えたわけではないにもかかわらず、最近では21パーセントを超えた。小・中学生、高校生を抱えている親で世帯年収が200万円を超えるぐらいの人というのが非常に増えている。教育保障のためのセーフティーネットの拡充を国の制度としてお願いしたい。

○幼児教育の無償化については、少子化対策、また、生涯にわたっての学習のトレーナビリティを高める面でも極めて重要な施策だと思っている。

○高校教育の場においては、準要保護世帯の就学資金に関しての枠組みがなかなか充実していないという面も考えなければいけない。

<大学・大学院教育について>

○質の向上を目指していない大学というのは退場すべきであって、質の向上に努力している大学に対しては、国がきちんとしたサポートをしていくべき。

○博士課程への進学率は修士課程への進学率に比べて落ちてしまう。その理由は、26、27歳になって先がどうなるかわからず、給与の当てもない状況によるものである。そこで、日本国力増進のためにも、学生の半分近くに、例えば月十数万円サポートし、博士課程の学生の例えば3割、4割程度を支援すべき。

○この10年間ですべての分野で博士課程の進学者が減っているのは大変な問題。その理由として、アンケート調査によれば在学中の生活保障がないということ。このため、実際にアメリカがやっているように、ハーフタイム・リサーチ・アシスタント、つまり半日働いて、それに対するレーバーコストを払って、それで研究なり、授業が受けられるようなシステムを国のシステムの中に盛り込むことによって、アメリカの水準に若干は近づけるのではないか。

○大学に進学をする際、事実上、複数の大学に入学金を払って入ったり、新たな居住地のための投資など、入学に付随するさまざまなお金もあって、18歳時に極端に負担が大きくなるということが高等教育に関する進学を阻害しているのではないか。

○エリート教育、大学院教育をへの十分な投資をどう確保していくかということに関しても、議論が必要。

 (了)

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