新しい時代に対応した統計調査の推進に関する検討会(第1回) 議事要旨

新しい時代に対応した統計調査の推進に関する検討会(第1回)が、以下のとおり開催されました。

1.日時

平成21年2月4日(水曜日)10時30分~12時30分

2.場所

文部科学省生涯学習政策局会議室

3.議題

  1. 本検討会の役割について(他委員会・研究会等の動向に関することを含む)
  2. 検討課題についてのフリートーキング
  3. その他

4.出席者

委員

金子委員、馬場座長、廣松委員、吉谷委員(五十音順)

文部科学省

生涯学習政策局
清水局長、惣脇生涯学習総括官、神代調査企画課長 ほか

オブザーバー

国立教育政策研究所
笹井生涯学習政策研究部総括研究官、藤江研究企画開発部総括研究官、
深堀高等教育研究部総括研究官、本多正人教育政策・評価研究部総括研究官

5.議事要旨

 議事については以下の通り。

・冒頭、清水局長より挨拶。
・事務局から議事の取り扱い等について説明の後、委員紹介があった。また座長に馬場委員が指名された。
・神代課長から、配布資料について説明のあと意見交換が行われた。

<以下委員から>

○ 教育をめぐる色々な状況変化に伴い、文部科学省の4つの指定統計調査が、現状にあったものであるか、またはこれをどういうふうに変えるべきかについて真剣に検討すべき時期にきているのではないか。

○ もうひとつは、メディアにとりあげられた暴力行為、不登校、いじめあるいは携帯電話を持たせるか持たせないかなど、その時点で話題に取り上げられたことについて、文部科学省でそれをどこまで統計に活かすかということである。

○ 経済センサスという大変大きな調査で、文部科学省が関連するところはその一部であるが、ぜひ協力いただければと思う。

○ 今回の統計法改正の柱の一つが社会的情報基盤としての統計というのが基本的考え方である。そうすれば当然税金で集めたデータについては、なるべく有効に使っていただくような体制を作っていくべきということで挙げられるのが二次利用への対応である。
 ただ難しいのは、新しいサービスを提供するにあたって、人員の面でも、お金の面でも手当てがない中で、どのように提供していくかが大きな問題である。

○ 以前から申し上げているが、個人の行動が多様化している中で、学校単位で調べれば大体のことが分かるという時代ではなくなっていることが教育統計にとっては非常に重要な問題で、多様な行動や多様な側面を総合的に捕らえていくことが必要である。
 そのためには、悉皆かつ機関レベルで調査するという方法だけでなく、個人の行動について一定のサンプリングをする調査を組み合わせていく必要がある。政策的に総合的にどのような情報をどのような形で調査するかという一種の戦略性が重要である。

○ 国際統計について、主要国の中で日本だけが出ていない統計が多く、国際的なプレゼンスの面からも非常に問題である。
 今回の議論の対象で、日本の公財政教育支出のGDP比が3.5%という数字も、実はこのベースがあまりよくない。OECDに専門家がいて国民経済計算からどうやってもってくるかというところで、一応スタンダライズしているが、我が国は肝心なところで合理的な根拠がないということで出していないところがある。
 そのような観点からも、SNAとの連携は非常に重要で、産業連関表をベースにして、精密に組み上げていくことを考える必要があるが、そうなった場合、例えば、賃金構造基本統計調査に、カテゴリとして大学と大学院を別にしてもらうなど、他の府省が行っている調査についても要望していくことが必要である。
 例えば、学歴という項目が入っている調査というだけでも多くあり、他の府省が行う調査をうまく組み合わせれば色々なことができるはず。受身にならず教育に関係のありそうなキーワードについて、他府省などが行う調査を積極的にチェックしていくべきである。  

○ 教育費負担の問題であるが、文部科学省がやっている教育費の調査は教育費のみで所得が入っていないため、いくら平均で使っているかは分かるが、親の所得によってどう違うかわからない。一方、総務省の家計調査は家計の所得別に消費支出は分かるが、家計の定義自体に独立の家計を営んでいる人がすべて入っており、たとえば学生が一人で世帯になっているとそれがカウントされるなど、ここから所得別の教育支出を推計するのにかなり問題があり、教育費負担が重要な問題になっているのに、合理的な議論ができない。
 このように、かなり政策的なキーになっているところが抜けていて、重要な問題についてわからないところがいくつもある。 

○ 個人や世帯を対象とした調査では、学歴や年収・所得というものは一番嫌われる項目で、直接個人の世帯に聞いたときにかなりのブランクで帰ってきてしまう状況。そこをクリアするのは調査技術上非常に難しい。

○ 伝統的にとられてきたはずの統計でも、むしろ実態そのものをとらえてくれることで、実情が分かってくるし、やるべきことに政策上のインパクトが出てくるのではないかと思う。最近思っているのは、外国人児童生徒関係の問題である。例えば、集住都市会議で出された資料をみるとおもしろいが、日本語指導が必要な外国人児童生徒の受入れ状況等に関する調査において、各都市がどういう基準で回答したかがわかる。それによると、回答には文部科学省が指示しているものと異なる基準で記入しているものもあり、このように主要都市レベルでも誤差があるが、さらにこれが学校レベル・教育委員会レベルにいくとかなりブレが生じている。
 そうすると外国人児童生徒の存在と日本語指導が必要な子どもを取り巻く状況が非常にややこしくわからない。多く出ているのか少なめに出ているのかわからないが、私の感覚からいえばかなり少なく出ていて、ちゃんと手当てしないと学校教育が成り立たないような影響を与えているようなものがある。おそらくこれに近いものはいくつもあると思われるので、具体的な現場を見ている側から出てくる話についてもある程度つかんでおく必要がある。

○ 学校基本調査について、ホームページ上に結果が公表されているが、かなりの部分が欠落していて時系列による比較が非常にやりにくい。公開する以前に問い合わせ等に対応できるよう文部科学省内部でもデータベース化を図ったほうがいい。

○ アメリカでは教育統計に関する考え方が1990年代前半にかなり変わった。
 ひとつは個人ベースのサンプルサーベイをかなりやっていて、たとえば成人の学習に関するサーベイは電話を使って行っているが、担当者によるとかなり精度がいいという話。これは我が国でもぜひ考えるべきである。サンプルサーベイもお金をかけてきっちりやるという考えもあるが、ものによっては手軽にやるというのもひとつの考え方ではないか。もうひとつは、アメリカは高等教育を中心に、作表したもののほかに機関ベースで統計が出ることになっている。そこには財政的なデータも入っていて、つなげれば相当機関のプロフィールがわかるようになっている。それは一種の品質保証のひとつの手段。質保障をする時に、認定評価機関が評価するのもひとつの仕組みだが、それ以前に情報公開で細かいところまで出して、社会的にオープンであれば、評価のメカニズムに自ずとなってくる。また、これにより、たとえば自分の大学の退学率を他の大学と比較するというようなことができる。

○ 我が国の大学についても学校基本調査で作表したものだけを出すというだけでなく、一定部分については機関の個票を公表するということは、研究者としての意図だけでなく政策的にも大きな意味を持つと思う。

○ 文部科学省には、多くの数値はありそうであるが、データとして使えるものが外からは見えないというのが特徴。もう少しオープンになるような公表の仕方を工夫してほしい。

○ 電話調査は、日本の場合は調査方法としては根付かない。機関を対象としたものだとある程度対応してくれるかもしれないが、個人に対する調査だと、悪質なセールスではないかということに意識がいってしまい、まじめに答えてくれる状況にならない。

○ 学校をみていると、最近個人情報保護という問題が出た後、学校全体の調査ができなくなってきている。教育委員会自体も全体的に縛りをかけていて、これがどうにかならないかと思う。個人情報保護ですからの一言ですべてを拒否しているという感じが強くなってきていて、ますます実態がわからなくなっている。文部科学省が、統計により実態を明らかにする工夫をしてほしい。

○ 法律的に整理すると、行政機関が保有している個人情報については別途、行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律があって、そこで統計というのは除外規定になっている。しかし、そういう整理がされていることを皆さんが知らない、あるいはあまりに個人情報保護が拡大解釈されて、むしろ実情を知った方が適切な対応がとれるものに関してまで情報が取れない現状になっている。

○ PIAACの追加調査について、基本的に一番重要なのは社会人の教育需要だと思うが、どう聞くかは非常にクリティカルである。我々もかなり大規模な調査を行おうとしていて、ラフな結果は今年の後半に出ると思うので、それをみて項目を考える材料にしていただければと思う。

お問合せ先

生涯学習政策局政策課