生涯学習に関するデータの集積の在り方に関する部会(第1回) 議事要旨
生涯学習に関するデータの集積の在り方に関する部会(第1回)が、以下のとおり開催されました。
1.日時
平成23年7月27日(水曜日)10時00分~13時00分
2.場所
国立教育政策研究所第4会議室
3.議題
- 生涯学習に関するデータの集積の在り方について
4.出席者
委員
小泉委員、笹井委員、澤野委員、田中委員、土屋委員
文部科学省
生涯学習政策局
伊藤審議官
西澤調査企画課長、上田調査企画課長補佐、土山調査企画課長補佐、村田生涯学習官、黄地政策課長補佐、平山生涯学習推進課長補佐、萬谷社会教育課企画官
オブザーバー
国立教育政策研究所
小桐間生涯学習政策研究部長
5.議事要旨
事務局より配付資料の確認及び資料の説明が行われた。
(1)生涯学習に関するデータの集積の在り方について
標記について、事務局から会議の検討事項や検討を進めるに当たっての考え方、議論の中心となる社会教育調査の概要・課題等に関する説明があった。生涯学習政策局各課からの意見を踏まえ、生涯学習に関するデータの集積の在り方について、委員による自由討論が行われた。
各委員からの主な意見等は以下のとおり。
1、生涯学習の範囲について
- 生涯学習に関する世論調査では、生涯学習の定義が広すぎる。調査で把握すべき生涯学習について、明確な定義を設けるべきである。
- 「生きる力」は初等中等教育段階だけで完結するのではなく、生涯にわたって考えるべきものであり、生涯学習については初等中等教育や社会教育をトータルで考えるべきである。
2、政策課題に対応した調査の在り方について
- 10、20年後も政策課題となりうる事項を見据えて調査の見直しを考えることが必要である。
- アウトカムや政策課題の観点から必要なデータをそろえるというのは基本的な考え方であるが、激しい時代変動の中で政策課題は短期で変わっていく可能性がある。基幹統計で集めるデータは基本的なものに絞り、政策課題に基づいたデータは一般統計で集めることもできるのではないか。
- 調査を政策にいかすためには、調査からどのようなエビデンス(効果)が得られるかが明確でなければならない。
- 調査を行った際は、子供のアウトカム(成果)に対する影響や、国の人材育成への影響・効果を分析するべきである。
3、調査対象の捉え方について
○調査の範囲・視点
- これまでは学校教育と社会教育と二元でやってきたが、生涯学習社会になって、両者が同じようなこと(学校教育が社会教育的な活動)をやっている場合があるので、どのように捉えるか。
- 新たな調査では、学校基本調査や社会教育調査でカバーできない範囲を調査対象とするべきである。
- 社会教育調査は社会教育施設の活動を捉えるものとし、国民の社会教育・生涯学習活動については別の調査で捉えるべきである。
- 施設調査だけでは国民の生涯学習の全体像が把握できないため、生涯学習の在り方を、「活動」、「人」ないし「学習者」の立場等から捉えてはどうか。
- 生涯学習に関する世論調査は単発調査で横断的だが、一人の「人」に着目して、横断的に(パネルで)捉えていく視点も必要ではないか。
○調査内容
- 生涯学習の時代になり組織的教育活動の姿が変化し、施設や団体に当てはまらない学習の場が出てきたため、これまで調査してきた内容では実態がとらえ切れなくなった。
- 家庭教育支援や子育て支援、青少年の居場所作り、学校地域の連携や学校支援ボランティアの普及等、インフォーマル学習、インシデンタル(偶発的な)学習に対して文科省の関心が高まっている。これらについて統計調査で補足する場合、どのような指標をもとにするか検討するべきである。
- 社会の情報化により、学ぶツールやインフラとしてのネットワークが変化し、教育のスタイルが変わってきた。20歳以下の子供たちはネットワーク環境が整った中で生きてきた世代であることも踏まえ、情報教育に関する調査では、施設やネットワーク環境に限らず、教師の資質や教授スキルなどにも焦点を当てたい。
- eラーニングなどプロバイダーは様々な学習手段を提供しており、サイバー空間における「学び」の実態を把握する必要がある。
- スウェーデンでは、公的な補助金をNPOなどの学習組織に交付するためのデータとして、団体の総学習活動時間数(学習者×学習時間)を測っている。
- 社会教育主事を設置していない自治体は多いが、有資格者は教育委員会や一般行政部局の中にもおり、社会教育主事の有資格者数を把握する必要がある。
- 公民館の運営の担い手は、正規職員や非常勤職員、社会教育指導員や市民など、公民館ごとで異なる。公民館のアピールや投資への参考とするために、公民館の経営構造を把握する必要がある。
- 学校・家庭・地域住民の連携、学校支援に関する基本的なデータを把握する必要がある。
- NPO法人においては、社会教育の分野で活動する団体が全体の5割程度あり、NPOは社会教育団体の側面が強いため、NPOにおける社会教育活動の実態を把握する必要がある。
○調査の対象期間について
- 生涯学習というからには、一人の人が生まれてから死ぬまでどのように学習をしていくかをとらえる調査を行う必要がある。EUの一部では、長期的に学習者個人をフォローする調査も行われている。
- 以前までEUでは、生涯学習については成人の教育・訓練の機会についてのデータがほとんどであったが、生涯学習政策のひとつとして就学前教育の振興に力を入れるようになり、就学前教育段階での年齢別の就園率等を、政策における数値目標の中に掲げている。
- EUでは就学前から、社会生活基本調査では10才以上、生涯学習に関する世論調査では20才以上であり、年令の捉え方も検討すべきである。
- 子供から大人までの年齢別、都道府県別の学習履歴(インフォーマルな学習を含む)や学習参加率に関するデータを集め、生涯学習活動に参加する層としない層の差異が分析できれば有意義である。
4、統計調査としての問題
- 社会教育調査が調査対象とする公民館、図書館、博物館については、それぞれ法律があり定義があるが、その他の施設についてきちんと定義できているかどうか。調査対象の明確な定義づけが必要である。
- 社会教育調査では、施設の種類が増えるたびに調査項目が増えており、スリム化が必要である。
- 新たな統計を実施する場合は、調査されるがわの負担を考慮し、既存の統計調査と連携を取るべきである。例えば、社会教育調査の結果との関連づけ、社会教育調査に中身、人の面から捉えた調査項目を追加、総務省の社会生活基本調査に社会教育に関する調査項目を追加、などが考えられる。
- 調査主体については、文科省だけでなく、国立教育政策研究所等も検討してはどうか。