資料2 新たな学校種に関する主な議論の整理(骨子案)

1.検討の状況・背景等

  • 改正教育基本法においては、教育の目標として「職業及び生活との関連を重視し、勤労を重んずる態度を養うこと」(第2条第2号)を新たに規定し、職業教育の一層の充実は、重要な教育課題。
  • 今後の少子高齢化やグローバル化社会において、国家発展の礎は人的資源であり、国家存立のインフラとしての教育は益々重大な役割を果たすべき。特に、2030年には1千万人が減少という労働人口の推移予測の中にあって、労働力の確保と質の向上を図り、持続的経済成長の維持等のためには、生涯学習の高まりや若年者への技術・技能の継承など個人の多様なライフデザインに応じた職業教育ニーズへきめ細かく対応できるような教育機関・教育体系をどうするべきかの議論が必要。
  • 若年者が就職に当たって企業から求められる能力や、近年高度化・増大化する若年者への仕事の負荷等に照らして、現行の教育システムが十分に職業教育機能を果たしているか検証が必要。
  • 現在の専修学校制度は昭和50年当時の社会における新しい学校制度の必要性があったため創設され、多様に発達している現状にあるが、一定の規模を持ち、あるいは一群の高い教育を行っている専門学校について、新しい学校制度を作って振興する必要があるかどうかを検討すべき。

2.本検討会議における新たな学校種の提言(概要)

(詳細については、ご参照:本検討会議第2回ヒアリング資料、及び同第8回資料4)

  • 職業教育を専らの目的とする新たな学校種を創設し、学校教育法に位置付ける。
  • 本制度設計に当たっての前提方針としては、
    • (1)現行の専修学校制度はそのまま残すこと
    • (2)現行の他の学校種と棲み分けることのできる独自の目的を規定すること
    • (3)新しい学校種に係る設置基準については、教育の質の保証、国際的通用性等に留意しつつ、独自の基準・要件の具体化を検討すること。
  • なお、本提言に関連しては、現行の専修学校をそのまま学校教育法第1条に規定すべしとの「専修学校の1条校化」という問題設定の仕方は、もともと専修学校が大学等とは異なるものとして制度化された前提からは、議論の混乱を招くものであり、適切ではない旨の発言があったことに留意。

3.新たな学校種の提言に関する論点

  • 本提言に関しては、
    • 普通高校・大学・研究大学院という系列と、専門高校・専門学校・専門職大学院という系列があり、適格な学校を学校教育法第1条に新たに位置付けることが考えられること
    • 伝統的な高等教育の他に、実践的な職業教育に特化した高等教育機関が存在することは、国民に開かれた高等教育を保障することになるとともに、学術研究の中心としての伝統的な大学の質の維持にも資するものであること
    • 従来の学校制度の中では必ずしも成熟してこなかった職業教育について、職業教育の体系化の観点から複線型の制度にして再構築する議論が必要であること
    • 初等中等教育における職業教育・キャリア教育の充実と相俟って、生徒等の多様な職業選択ニーズに的確に応えることのできる新たな職業教育機関の制度的な位置付けは重要であること
    等積極的な立場からの発言があった。
  • 一方においては、
    • 新たな学校種の創設が必要なのであれば、これまでの学校体系での対応が不十分である根拠の明示が必要であること、即ち、現行の大学、短期大学、高等専門学校、高等学校といった学校体系では対応が困難であることについて、より説得力のある説明が求められること(新制度創設の必要性)
    • 現行制度の下においては、職業教育は各学校種において実施されているところであり、新たな学校種が職業教育をその目的とするのであれば、現行の学校種の行っている職業教育との相違の明確化が必要であること(現行制度との整合性)
    • 新たな学校種の設置基準について、その中核を占める1.校地・校舎の面積、2.校地・校舎・施設設備の内容、3.教員資格・教員数、4.教育方法等が明らかになっていないこと(設置基準の明確化)
    • 全ての教育機関を「1条校」という単線型ではなく、幅広い教育機関を作っていくことが我が国の活性化のために重要(教育制度全体からの議論)
      等制度上の様々な課題を指摘する立場からの発言もなされた。
  • また、新たな学校種を高等教育機関と位置付ける場合には、まず高等教育における職業教育のグランドデザインについて検討することが必要であるとの見解が示された。さらに、高等教育における職業教育の在り方の検討に当たっては、研究や創造性の涵養という要素を考慮すべきとの見解と、教育と研究をセットで行うことを必ずしも高等教育の要件と考える必要はないのではないかとの対照的な見解が示されたところである。なお、本提言の問題提起を踏まえ、「大学の専門学校化」と「専門学校の大学化」の進む現状において、大学と専門学校の棲み分け、特色を如何に考えるかも併せて検討すべきとの指摘もあった。
  • また、特に本提言の高等教育との関連での検討に当たっては、1.かつての専科大学や専門大学構想等、2.諸外国の制度も十分斟酌の上、議論を進めるべきとの指摘もなされた。

4.今後の検討の方向性等

  • 新たな学校種の提言に対しては、本検討会議の発足時から、
    • 日本の教育システム全体を俯瞰し、いかなる改革・改正が必要かを検討すべき
    • 18歳人口、15歳人口の減少期において、他の学校種に大きな影響を与えかねない問題であり、専修学校のみの問題ではなく、高等教育又は中等教育全体の議論の中で考えるべき
    • ここ数年で高等教育の在り方が大きく変わってきていることも含めて、近い将来、どこかの段階で中教審のレベルで本格的な日本の教育体系のグランドデザインを議論する必要
    等、我が国の学校教育制度全体のバランス等を視野に置いた議論を行う中で検討すべきとの意見が相次いでなされてきたところ。

5.その他関連事項

  • 専修学校と1条校との不合理な差別については、個別に全て洗い出し、関係府省との間で1つずつ解決していくという地道なことをまずしていくべき。
  • 新たな学校種の議論と併せて、柔軟かつ自由闊達な制度的特徴を活かし、企業の求める有為な人材を多数輩出してきたとの高い社会的評価の確立している専修学校の更なる振興方策についても、本検討会議で更に議論を進めるべき。

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総合教育政策局生涯学習推進課専修学校教育振興室

(総合教育政策局生涯学習推進課専修学校教育振興室)