資料2 「専修学校の振興に関する検討会議」における意見発表!

平成20年2月18日

学校法人山内学園 理事長 山内 昭人
学校法人郡山開成学園 理事長 関口 修

はじめに

 平成十年に認められた「専門学校2年課程卒の大学3年次編入資格授与」は、短期大学に大きな影響を与えた。その僅か前まで、短期大学卒は、大学3年次編入ではなく、2年次編入しか認められていなかった。しかしながら、突然、大学でもない専門学校の2年課程卒に、設置基準等の変更もなく、大学3年次編入資格が与えられたのである。このことにより短期大学と専門学校は、設置基準等に著しい差異が存在するにもにもかかわらず、同等の教育機関であるというイメージが、受験生ならびに高等学校の進路指導部門に定着した。短期大学側が、いくら設置基準等の違いを訴えても、同じ大学3年次に編入できるではないかと一蹴され、両者は同等と解釈されるようになったのである。
 そして今また、専修学校の「一条校化」が俎上に上っている。もし設置基準等の抜本的な変更もなく「一条校化」が認められるとすれば、専修学校は、義務(設置基準)を果たすことなく恩恵だけは享受でき、反対に大きな義務を負う短期大学への影響は甚大となる。短期大学関係者としては、このことに無関心ではいられないし、この会議に強い緊張感を持って出席してきた。
 もとより専修学校の振興は望むところである。しかし平成19年11月21日開催の第2回検討会議で明らかにされた、「位置づけ等の明確化と格差の是正のために一条校化と新しい学校種の創設を」という全国専修学校各種学校総連合会(以下、全専各連という)のご意見には、以下の幾つかの理由により反対である。

  1. 今回、全専各連は、学校体系の複線化を主張しているが、「大学を頂点とする普通教育の体系」の『普通教育』とはどのような意味で使っているのか。通常、普通教育とは、小学校、中学校、高等学校までの教育をいうもの(学校教育法に、普通教育の義務〈第十六条〉、普通教育の目標〈第二十一条〉等についての規定がある)と考えるが、大学教育・短期大学教育を『普通教育』とされた理由をご説明頂きたい。
  2. また、『普通教育』との対比において、新専門学校・新高等専修学校の教育を『職業教育』と位置づけようとしているが、大学・短期大学、高等専門学校、高等学校においても、専門教育を通じての職業教育を行っており、大学・短期大学の職業教育と新しい学校種の職業教育(あるいは現行の専修学校の職業教育)との違いが明らかではなく、従って新しい学校種(あるいは現行の専修学校)のみに『職業教育』の冠をつけることには賛成できない。
    • 参考/現在の学校種に係る学校教育法上の目的規定
      • 【大学の目的】 第八十三条 大学は、学術の中心として、広く知識を授けるとともに、深く専門の学芸を教授研究し、知的、道徳的及び応用的能力を展開させることを目的とする。
      • 【短期大学の目的】 第百八条 大学は、第八十三条第一項に規定する目的に代えて、深く専門の学芸を教授研究し、職業又は実際生活に必要な能力を育成することを主な目的とすることができる。
        • 2.省略(二年又は三年の修業年限規定)
        • 3.前項の大学は、短期大学と称する。
      • 【高等専門学校の目的】 第百十五条 高等専門学校は、深く専門の学芸を教授し、職業に必要な能力を育成することを目的とする。
      • 【専修学校の目的】 第百二十四条 第一条に掲げるもの以外の教育施設で、職業若しくは実際生活に必要な能力を育成し、又は教養の向上を図ることを目的として次の各号に該当する組織的な教育を行うものは、専修学校とする。
        • 一、修業年限が一年以上であること。
        • 二、授業時数が文部科学大臣の定める授業時数以上であること。
        • 三、教育を受ける者が常時四十人以上であること。
      • 《新専門学校の目的》 社会が求める知識、技術及び技能を総合的に教授修練し、職業及び実際生活に必要な能力、又は専門性が求められる特定の職業を担うための能力を育成する。
  3. 現在の専修学校・各種学校を、更に二つに分けて、新専門学校・新高等専修学校のグループと、残る専修学校・各種学校のグループとに分ける理由をご説明頂きたい。位置づけ等の明確化と格差の是正のためにということだが、残りの専修学校・各種学校には依然として格差等は残る。極論すれば、残りの専修学校・各種学校の切り捨てではないか。
  4. どうしても理解できないのは、一条校化を目指すのであれば、一条校である大学・短期大学、高等専門学校、高等学校を目指せば済むことではないか。過去、多くの専修学校や各種学校が、一条化を目指して、数々の障害を乗り越えながら大学・短期大学、高等学校等を設置してきた。また現在においても、東京都の或る保育系の専門学校では、一条校化を獲得するために、短期大学の設置を検討中と仄聞している。それでも新しい学校種の創設を目指すのであれば、今までの学校体系では対応できないという根拠をお示しいただきたい。
  5. 現在、専修学校には緩やかな設置基準が課されており、緩やかな設置基準による柔軟な学校運営にこそ、専修学校の強さと特徴があったのではないか。何故、その強さと特徴を失うような一条校化を目指すのか。
  6. 「専修学校は一条校と同等の責任や義務を負っている」とあるが、年若い学生・生徒を預かり、教育を行っているのであるから、一条校であるなしに関わらず、当然、重い責任は負うべきではないか。
    また学校における義務とは、それぞれの学校が『設置基準』によってどの程度の義務を果しているか、と解釈されるべきである。我々は高等教育の一条校化は、現行の大学設置基準及び短期大学設置基準が最低の水準と考えており、高等教育の国際的な「質の保証」が問われる今、これらを下回るような新しい学校種の創設を行うべきではない。
  7. 新しい学校種の創設とともに、新しい設置基準の創設も考えているようだが、意見発表では、設置基準の中核である、(1)校地及び校舎の面積、(2)校地・校舎・施設設備の内容、(3)教員資格及び教員数は明らかになってはいない。設置基準の具体的な内容が明らかでない段階では、賛意を表すことはできない。
  8. 今回のご意見で、一条校化及び新しい学校種の創設、加えて学校体系の複線化を主張しているが、これらのことは我が国の教育にとって極めて重要なテーマであり、また18歳人口、15歳人口の減少期において、他の学校種に大きな影響を与えかねない問題でもある。新専門学校については高等教育全体、新高等専修学校については中等教育全体の議論のなかで考えるべきである。このことについて全専各連はどのように考えるのか。

以上

お問合せ先

総合教育政策局生涯学習推進課専修学校教育振興室

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(総合教育政策局生涯学習推進課専修学校教育振興室)