資料3 文部科学省「専修学校の振興に関する検討会議」(第四回)資料高等学校から見た専修学校(専門課程を主として)

平成20年1月23日
東京都立向丘高等学校 戸谷賢司

1 高等学校の現状と課題

(1)学校数、生徒数の状況(平成19年度学校基本調査より)

※「 」(かぎかっこ)は平成9年度

学校数

国立 公立 私立 合計
15校 3,976校 1,322校 5,313校(本校+分校)
「17校」 「4,164校」 「1,315校」 「5,496校」

生徒数(本科のみ)

全日制 定時制 合計
3,289,302人 108,216人 3,397,520人
「4,262,159人」 「101,982人」 「4,363,614人」

学科別生徒数(本科のみ)

普通科 2,455,082人 72.3パーセント
工業科 278,827人 8.2パーセント
商業科 234,818人 6.9パーセント
総合学科 153,583人 4.5パーセント
農業科 90,203人 2.7パーセント
家庭科 47,735人 1.4パーセント
看護科 13,020人 0.4パーセント
福祉科 10,756人 0.3パーセント
水産科 9,824人 0.3パーセント
情報科 2,374人 0.1パーセント
その他 101,298人 3.0パーセント

(2)高等学校進学率の向上と生徒の多様化

 高等学校への進学率が97.7パーセント「義務教育ではないものの国民的な教育機関(中央教育審議会初等中等教育分科会教育課程部会における審議のまとめ)」がもたらしたもの

  • 生徒の興味・関心、能力・適性、進路等の多様化
     (高校生の中には義務教育段階での学習事項の定着を必要とする者が少なからず存在する)
  • 生徒の多様化に対応して新たなタイプの高等学校の創設や学校の個性化・特色化

(3)普通科志向

 (平成19年度東京都中学校長会進路対策委員会による志望予定調査から:都立高校全日制志望者:49,054人)

普通科 39,784人 81.1パーセント
工業科 2,819人 5.7パーセント
総合学科 2,107人 4.3パーセント
商業科 1,840人 3.8パーセント
農業科 774人 1.6パーセント
その他 1,730人 3.5パーセント
  • 普通科志向は専門高校における不本意入学者を増加させた。また、普通科に限らず専門高校においても大学、短大、専門学校への進学者を増加させた。

(4)学習指導要領の変遷

  • 必履修教科・科目の単位数減少{現指導要領により最低限度で単位数を示した場合}
     「普通教科」
     国語(2)地歴(4)公民(2)数学(2)理科(4)保体(9)芸術(2)外国語(2)家庭(2)情報(2)総合的な学習の時間(3)
     「専門学科」
     上記の加え専門教育に関する教科・科目25単位をくだらないこと・卒業までに修得させる単位数の下限74単位以上
  • 教科・科目の幅の拡大(選択履修の趣旨を活かした教育課程)

2 高等学校教育の質に係る課題

 大学等への進学率は50パーセントを超え、さらに高等教育機関への進学率は75パーセント以上となったが、学ぶ目的、学習意欲に乏しく、学力や学習習慣が身に付いていない。
 「平成17年度高等学校教育課程実施状況調査」の学習に対する意識から抜粋
 (実施主体:国立教育政策研究所教育課程センター)

  1 2 3 4
勉強は好き 5.0パーセント 17.1パーセント 30.3パーセント 42.0パーセント
勉強は大切 43.1パーセント 41.1パーセント 7.1パーセント 5.1パーセント
勉強は入試は就職試験に役立つ 53.7パーセント 31.2パーセント 6.4パーセント 4.6パーセント
勉強は日常生活・社会生活に役立つ 24.8パーセント 28.7パーセント 10.8パーセント 8.9パーセント
学校の授業のわかる程度 良く
 4.3パーセント
大体
 37.0パーセント
半々
 39.9パーセント
わからない
 14.2パーセント
1日の勉強時間 0に近い
 39.3パーセント
30分以下
 8.2パーセント
30分~60分
 7.6パーセント
3時間以上
 23.9パーセント

{1:そう思う 2:どちらかというとそう思う 3:どちらかと言えばそう思わない 4:そう思わない}

3 高等学校と大学、短大、専門学校との接続

(1)高等教育機関への進学率の向上

平成19年度学校基本調査による高等学校卒業者の進学率等

大学、短大 51.2パーセント
専修学校(専門課程) 16.8パーセント
各種学校 6.2パーセント
就職 18.5パーセント
その他 7.3パーセント

(2)高等学校における専門学校への進学

  • 平成19年度高等学校卒業者が専門課程への入学者全体に占める割合は約7割をとなっている。(入学者:282,045人 前年度より約1万9千人減少)
新規高等学校及び中等教育学校後期課程卒業者 199,826人 70.8パーセント
大学から 15,580人 5.5パーセント
短大から 4,852人 1.7パーセント
高等専門学校から 796人 0.3パーセント
  • 高等学校卒業生の専門学校進学者は昨年度よりやや減少傾向にあるが、大学に引き続く進学先となっている。
  • 都立高等学校における専門学校への進学状況(各学校の卒業者に占める割合)
     専門学校への進学者が10パーセント未満の都立高等学校は約30校で、そのうち進学指導重点校はほぼ1パーセント未満である。しかし、その他の高等学校は約10パーセントから約45パーセントまで幅はあるが、専門学校への進学者がある。

(3)大学等や専門学校進学に関する生徒の意識

  • 進学実績が高い学校を除き、いわゆる普通科中堅校においては大学等への進学希望は高いがその実現向けて努力することが苦手である。そのため、センター試験等を回避し、指定校推薦、公募推薦、AO入試などに流れる傾向がある。
  • 専門学校を選択する生徒には、看護士、保育士などのように将来の職業を見据えている者、大学には入れそうもないので変更する者、モラトリアムの延長としか思えない者がいる。

(4)高大接続における学力担保のための「新たな仕組み」の検討

  • 推薦入試やAO入試入学者に対する学力保証のための「新たな仕組み」の導入を高校としても許容せざるを得ない。
  • 新たな仕組みが導入された場合、専門学校でも選考方法等で何らかの対応が必要か。

4 高等学校の現状を踏まえ、専門学校に期待すること

(1)高等教育機関としての信頼性の確保

  • 授業内容と資格取得や技能習得の明確化
  • 就業現場で活かせる資格・技能や知識技術の質の向上
  • 第三者評価等の実施と情報公開
  • キャリア形成教育の重要な一端を担う位置づけ

(2)学校経営の透明性

  • 健全な経営(経営破たんは生徒に多大な被害)財務状況の公開
  • 入学辞退者への授業料の返還システム

(3)教育力向上・質の保証のため専任教員の確保

5 まとめ

 高等学校卒業者の約2割弱が専門学校に進学する状況が続いており、専門学校は後期中等教育以後の高等教育機関としての役割を果たしてきている。また、高等学校における専門学科への入学志願者が陰りを見せるなかで、職業教育の充実のため専門学校の重要性は増しているのではないか。
 一方、21世紀の知識基盤社会を支える技術力育成のため、戦後からこれまで続いてきた6・3・3・4制という単線型主流から、複線型の系統的な職業人育成教育システムの構築にと、発想を転換する必要があるかもしれない。

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