資料1 全国専修学校各種学校総連合会 1条校化推進本部(第1次報告)専修学校の1条校化運動の具体的方針-学校教育法第1条に定める新しい学校種の提案-

はじめに

  • 全専各連は、平成18年2月22日の第54回定例総会において、次の「専修学校の1条校化」にかかる重点目標の承認を受けて、この運動を推進してきた。
    平成18年度重点目標
    1. 職業教育体系の構築に向けた専修学校及び各種学校の根本的な法整備の実現
      1. 専修学校及び各種学校を中核とする職業教育体系を構築し、現行制度における他の学校種との格差を解消するために、専修学校を中心として学校教育法第1条に規定される「学校」とすることを求め、具体的な要望活動を展開する
  • この「専修学校の1条校化」は、上記の重点目標のとおり、
    • 専修学校が学校教育法第1条に規定されていないこと(学校としての位置づけがないこと)に起因する、専修学校やその学生生徒が受けている様々な格差を解消する必要があること。
    • 教育の基本的な理念として、「職業教育の重要性」が打ち出されていることに鑑み、学校教育制度に職業教育体系を構築し、職業教育の中核的機関としての専修学校の位置づけを明確にする必要があること。
    に関して、制度的改正を伴う解決策を提起したものである。
  • 全専各連は、この運動の推進組織として1条校化推進本部を立ち上げ、現行の学校教育法又は専修学校設置基準に定める基準・要件の基本は変えずに、学校教育法第1条に専修学校を追加規定する方向性について検討を行ってきた。
  • なお、「専修学校の1条校化」の検討にあたっては、第54回定例総会で了承された次の点を基本的な理念とした。
    • ア)各種学校は専修学校への移行を前提とすること。
      専修学校は、各種学校教育の適切な振興を図るために、一定の規模・水準を有するものを別に位置づけた制度であることから、専修学校に移行するように努めてもらう。
    • イ)設置主体は学校法人を前提とすること。
      専修学校では学校法人化要件の緩和が措置されていることから、学校法人立以外の専修学校は学校法人化を条件とする。
    • ウ)1条校化の体系は「設置基準見直しの方向性」を基本とすること。
      平成16年2月の第50回定例総会で承認された「設置基準の見直しの方向性」の課程別の体系化を、専修学校の1条校化の基本とする。
      • 専門学校(高度専門士の課程、専門士の課程、その他の課程)
      • 高等専修学校(大学入学資格付与の課程)
      • 専修学校(大学入学資格付与以外の高等課程、一般課程、各種学校)
  • 1条校化推進本部では、このような運動の趣旨や基本的な理念を踏まえて、制度的な論点となりうる事項を中心にして、検討を重ねてきた。
  • 平成18年12月、改正教育基本法が公布・施行されたことを受けて、学校の目的・目標の見直しや学校の組織運営体制の確立方策を定めるため、教育関連3法の1つとして学校教育法改正案が平成19年3月に国会に上程された。
  • 全専各連は、1条校化推進会議での審議を踏まえ、最短で平成20年度内の法制化を目指して検討を進めてきており、今回の学校教育法改正案に「専修学校の1条校化」にかかる規定は盛り込まれていない。
  • この点について、専修学校等振興議員連盟は、学校教育法改正案が国会に上程される前の3月7日に総会を開き、現段階での全専各連及び文部科学省での検討の結果や課題、今後の作業の日程などについて審議を行い、次の点を確認した。
    • 速やかに全専各連と文部科学省との間で具体的な制度設計の論点について検討を行い、検討結果を踏まえ、新たな制度の概要を設計すること。
    • 制度概要について、文部科学省と全専各連の共通理解が図られ次第、平成19年6月を目処に文部科学省内に協力者会議を開くこと。
    • 協力者会議において、新たな制度が必要である旨合意・報告が得られ次第、中教審に諮問し、議論、意見集約、答申を行うこと。
    • 中教審で新たな制度設計について合意・答申が得られ次第、平成20年の通常国会にも「専修学校の1条校化」にかかる学校教育法改正法案を上程すること。
  • 全専各連は、この議員連盟総会での確認事項を受け、特に具体的な制度設計の概要を取りまとめるため、1条校化推進本部に制度設計作業部会をおき、文部科学省を交えて集中的に検討を行うこととした。
  • 第1回制度設計作業部会では、「専修学校の1条校化」の制度設計を検討する上での基本的な考え方(次頁を参照)を審議・決定し、さらに制度設計作業部会で専門学校にかかる制度設計を、全国高等専修学校協会で高等専修学校にかかる制度設計を検討することを確認した。
  • この第1次報告は、制度設計作業部会で検討した「専修学校の1条校化」の基本的な考え方や専門学校の重要な論点の整理、全国高等専修学校協会で検討した高等専修学校の重要な論点の整理について、1条校化推進本部で最終的に審議、調整を行い、全専各連が文部科学省に提案する「専修学校の1条校化の具体的方針」として取りまとめたものである。
  • 今後、文部科学省に設置される協力者会議で、広く学校関係者や有識者の議論に付されることに対応して、引き続き1条校化推進本部は、制度設計作業部会等で検討された重要な論点その他について検討していく予定である。

1.「専修学校の1条校化」の基本的な考え方

(1)基本的な考え方とその理由

  • 「専修学校の1条校化」は、学校法人立専修学校をそのまま学校教育法第1条に規定する考え方から始まっているが、次の理由により、3つの基本的な考え方のもとで制度設計を進めることとした。
    • 設置主体の問題にかかわらず、引き続き現行制度のなかで多様かつ個性的な教育機会を提供しようとする専修学校が出てくることから、現行制度は学校教育法第1条に規定せずに、そのまま残す必要があること。
    • 学校教育体系に位置づけられる学校は、すべて入学資格(学齢)によって学校種やその目的が区分、類型化されており、異なる入学資格を有する(教育段階が異なる)学校は存在しないこと。
    • 学校教育体系に位置づけられる学校は、独自の教育の目的を有し、国によって教育段階別に必要な基準・要件等を定められており、学校教育法第1条に規定されるためには、それら既存の学校種の基準・要件等との整合性を図る必要があること。

基本方針1

  • 専修学校制度の部分的改正ではなく、現行の専修学校制度はそのまま残しつつ、新しい学校種を創設し、学校教育法第1条に規定すること。

基本方針2

  • 新しい学校種は、入学資格を特定するとともに、学校体系において、適切と認められ、かつ他の学校種と棲み分けることができる独自の目的を規定すること。

基本方針3

  • 新しい学校種は、専修学校及び他の学校種の基準等とは異なる独自の基準により設置すること。

(2)基本的な考え方を踏まえた新しい学校種

  • 異なる教育段階が体系的かつ組織的に結合した機関として高等専門学校が存在するが、これは5年一貫の学校制度である。
  • 基本方針2の考え方、これまでの専門学校と高等専修学校の教育実績、5年一貫の学校制度に対する社会的要請の有無、異なる教育段階の目的をまとめることの難しさなどに鑑み、専門学校と高等専修学校は別の学校種として位置づけることが適切である。
  • 専修学校一般課程については、入学資格の弾力性、それに対応した多様かつ柔軟な教育内容などが保証され、補習教育、職業教育、生涯学習など様々な教育機会を提供することができる教育機関としての特徴を有している。
  • 新しい学校種として入学資格や教育の目的を特定することは、この教育の特徴が失われることにつながるため、引き続き現行の専修学校制度のなかで位置づけることが適切である。
  • さらに、文部科学省の今後の専修学校教育に関する調査研究協力者会議の報告「今後の専修学校教育の充実・振興について(平成17年3月)」で、『専修学校の一般課程の在り方等について検討する際には、各種学校制度も視野に入れつつ検討することが必要である』との指摘もあることから、多様な機会を提供する教育機関全体の振興を図る観点から、その制度の在り方や具体的な振興策を検討することが重要である。
  • 以上の結果から、基本方針1にのっとり、新しい学校種を創設して、学校教育法第1条への規定を求めていく対象は、現行の専修学校制度にあてはめると、専門学校及び高等専修学校となる。
  • 専修学校一般課程は、教育振興基本計画に「専修学校の振興」を盛り込むための運動を展開するなかで、次のような生涯学習社会の構築に必要な制度を整備する視点から、具体的な振興策を提起する。
    • 「学び」の機会を総合的に提供・支援するシステムの構築
    • 学習成果が適切に生かされ評価される方策
    • 個人の「学び直し」に対する支援
    • 若年者・女性・団塊世代・高齢者に対する支援(生涯学習を推進する人材の育成及び確保など含む)

2.第1次報告における具体的な提案事項

(1)第1次報告における取扱いについて

  • 前述のとおり、新しい学校種を創設して、学校教育法第1条への規定を求めていく対象は、専門学校及び高等専修学校に相当する課程としたが、文部科学省に設置される協力者会議の議論に付すためには、新しい学校種を制度設計する上で重要度の高い論点について、具体的な方向性を提案しなければならない。
  • このため、1条校化推進本部は、制度設計作業部会で検討した専門学校の重要な論点の整理、全国高等専修学校協会で検討した高等専修学校の重要な論点の整理について、最終的な審議、調整を行った。
  • 専門学校の重要な論点の整理については、特に基準・要件等のうち具体的な指標が示されていない項目がある点が指摘された。ただし、最低限必要と認められる指標の設定にあたっては、専門学校関係者を含め広く学校関係者や有識者の間での議論が必要であるとの理由により、原則として検討された内容を第1次報告とともに文部科学省に提案することとした。
  • また、高等専修学校の重要な論点の整理については、基準・要件等のほか、教育の目的に関して、高等学校の目的との区分の仕方、後期中等教育機関の目的としての適切性について指摘が出された。教育の目的は、新しい学校種の理念となるものであるから、特に新しい学校種としての創設の可能性について、広く学校関係者や有識者の意見を聴くことを前提に、第1次報告とともに文部科学省に提案することとした。

(2)新しい学校種の制度設計の内容

  • 新しい専門学校及び高等専修学校の制度設計の検討結果は、参考資料のとおりである。このうち、考えられる教育の目的としては、次の内容を掲げている。

新専門学校

  • 社会が求める知識、技術及び技能を総合的に教授修練し、職業及び実際生活に必要な能力、又は専門性が求められる特定の職業を担うための能力を育成する。

新高等専修学校

  • 中学校における教育の基礎の上に、心身の発達及び進路に応じて、専門教育を施し、職業及び実際生活に必要な能力を育成する。

「新しい専門学校制度の在り方(専門学校の将来像)」(「専修学校の1条校化運動の具体的方針」第1次報告の参考資料)の概要版

1.教育の目的

  • 社会が求める知識、技術及び技能を総合的に教授修練し、職業及び実際生活に必要な能力、又は専門性が求められる特定の職業を担うための能力を育成する。

2.基準・要件等の概要

  • 入学資格は「高校卒業同等以上の者」とする。
  • 修業年限は「2年、3年又は4年」とし、修業年限ごとに卒業に必要な単位数を定める。また、夜間の学科、別科、専攻科及び通信課程も置くことができる。
  • 所轄庁は「文部科学大臣」とする。
  • 設置者の要件は「国、地方公共団体及び学校法人」とする(新専門学校を設置する学校法人の認可基準を新設)。
  • 校地及び校舎の面積校地・校舎・施設設備の内容教員資格及び教員数は、「教育の目的を達成するために最低限必要となる基準(他の高等教育機関の基準を基本)」を新たに定める。
  • 自己点検・評価及び第三者評価を行う。
  • 高等教育機関にふさわしい新たな学校名称を付し、修了者に新たな称号を付与する。
  • 上記の制度面での論点のほか、財政支援のあり方他府省庁所管法令との関係、その他所要の論点についても検討を行う。

「新しい高等専修学校制度の在り方(高等専修学校の将来像)」(「専修学校の1条校化運動の具体的方針」第1次報告の参考資料)の概要版

1.教育の目的

  • 中学校における教育の基礎の上に、心身の発達及び進路に応じて、専門教育を施し、職業及び実際生活に必要な能力を育成する。

2.基準・要件等の概要

  • 入学資格は「中学校卒業同等以上の者」とする。
  • 修業年限は「3年」とし、卒業に必要な単位数を定める。
  • 所轄庁は「都道府県知事」とする。
  • 設置者の要件は「国、地方公共団体及び学校法人」とする(新高等専修学校を設置する学校法人の認可基準を新設)。
  • 教育課程(学習指導要領)、教科用図書教員資格校地・校舎の面積及び校地・校舎・施設設備の内容は、「教育の目的を達成するために最低限必要となる基準(専修学校設置基準を基本)」を新たに定める。
  • 後期中等教育機関にふさわしい新たな学校名称を付し、修了者に大学入学資格を付与する。
  • 上記の制度面での論点のほか、財政支援のあり方他府省庁所管法令との関係、その他所要の論点についても検討を行う。

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総合教育政策局生涯学習推進課専修学校教育振興室

(総合教育政策局生涯学習推進課専修学校教育振興室)