第2回「専修学校の振興に関する検討会議」意見発表 専修学校の具体的な振興方策の提案-当面する重要な課題の解決に向けて-

平成19年11月21日
全国専修学校各種学校総連合会

1.専修学校教育の今後の振興方策の在り方

(1)専修学校と過去の振興策との関係

1 各種学校教育の適切な振興を図るための専修学校

  • 専修学校は、多様な教育機会を提供する各種学校のうち、一定の規模・水準を有するものを新たな教育機関として位置づけ、適切な振興を図るために創設された制度である。
  • 高等教育段階の専門学校(専門課程)、後期中等教育段階の高等専修学校(高等課程)、幅広い年齢層を対象とする一般課程は、その特徴を十分に生かした教育機会を提供。950万人以上の卒業者を輩出し、中核的な職業教育機関として不可欠な存在となっている。

2 「位置づけ等の明確化」と「格差の是正」の両軸での振興策

  • 専修学校は1条校と同等の責任や義務に基づいて設置、教育を行うが、学校教育法第1条《学校の範囲》に含まれず、「第1条に掲げるもの以外の教育施設」である。位置づけが不明確な上、1条校と異なる様々な取扱いを受けている。
  • 専修学校の振興策は、「位置づけ等の明確化」と「格差の是正」の両軸で示すと、【図「専修学校に対する振興策の考え方」】のように考えられる。
  • いずれの振興策も、1条校の教育体系あるいは専修学校制度そのものの見直しではないため、「位置づけ等の明確化」は課題のままである。
 図 「専修学校に対する振興策の考え方」

図 「専修学校に対する振興策の考え方」

(2)当面する課題解決に向けた今後の振興方策の考え方

1.専修学校が築いてきた職業教育の体系化の必要性

  • 「職業教育の高度化」に始まり、現在の「職業意識啓発のための連携」に至るこれまでの国の施策は、職業教育への期待感の現れであり、専修学校の施策の推移は職業教育の進展そのものであると理解している。
  • 改正教育基本法は、教育の目標に職業教育の重要性『職業及び生活との関連を重視し、勤労を重んずる態度を養うこと』を規定した。
  • 専修学校が行う職業教育の性格や成果を踏まえ、各教育段階別に専修学校の在り方や関係についても議論されている。
    • 中教審答申「我が国の高等教育の将来像」(平成17年1月)…『職業教育をキーワードとした教育体系の中で、専門学校の中核的な役割や位置づけを明確にする必要があること』、『学士課程教育や短期大学教育との対比で、実践的な職業教育・専門技術教育機関としての専門学校の性格を明確化し、機能を充実すること』を提言。
    • 初等中等教育分科会「教育課程部会におけるこれまでの審議のまとめ」(平成19年11月)…高校教育の中長期的な課題として『専修学校や高等専門学校との相違を視野に入れて』検討する必要性を提言。
      1条校の学校制度の中で、大学を頂点とする普通教育の体系と複線となる職業教育の体系を構築し、職業教育体系における専修学校の位置づけ、使命・役割を明確にしていくことが重要である。

2.2つの方策の実現こそ専修学校の真の振興

  • 職業教育の体系化を目指し、「位置づけ等の明確化」と「格差の是正」の両軸に共通又は特有の課題等を一気に解決する振興策が1つの方向性であり、具体的な方策として『新しい学校種の創設』として提案する。
  • 現行制度のもとで職業教育を行う専修学校のために、引き続き、「位置づけ等の明確化」と「格差の是正」の軸に特有の課題等を解決しながら、職業教育力の向上を推進する方策がもう1つの方向性である。
  • 新しい学校種、専修学校共に、職業教育の中核的な機関として、国民から期待される使命、責任を果たすために、この2つを同時に実現することが最も重要である。

2.専修学校教育を踏まえた新しい学校種の創設

(1)新しい学校種の創設の基本的な考え方

1.文部科学省から提示された主要な論点

  • 専修学校のみを設置する学校法人を含め、多様な設置主体をどのように整理するのか。
  • 既存の学校種と重複しない目的をどのように規定するのか。
  • 専門課程(高卒)、高等課程(中卒)、一般課程(入学資格限定なし)を、既存の学校制度との関係で、どのように位置づけるのか。
  • 比較的緩やかな基準・要件を、他の学校種とどのように整合させるのか。

2.制度設計における3つの基本方針と新しい学校種の対象

  • 専修学校を1条校として制度設計するための基本方針は次の3つ。
    • 《基本方針1》
       専修学校制度の部分的改正ではなく、現行の専修学校制度はそのまま残しつつ、新しい学校種を創設し、学校教育法第1条に規定すること。
    • 《基本方針2》
       新しい学校種は、入学資格を特定するとともに、学校体系において、適切と認められ、かつ他の学校種と棲み分けることができる独自の目的を規定すること。
    • 《基本方針3》
      新しい学校種は、専修学校及び他の学校種の基準等とは異なる独自の基準により設置すること。
  • 基本方針によって導き出される新しい学校種は、高等教育機関としての新専門学校、後期中等教育機関としての新高等専修学校の2つである。
  • 一般課程にあたる専修学校、新しい学校種の制度設計に該当しない又は新しい学校種での教育を希望しない専門学校と高等専修学校は、現行制度のもとで教育を行う。

(2)高等教育機関-新専門学校(仮称)-としての目的や論点の整理状況

1.教育の目的

 社会が求める知識、技術及び技能を総合的に教授修練し、職業及び実際生活に必要な能力、又は専門性が求められる特定の職業を担うための能力を育成する。

2.基準・要件等の概要

  • 入学資格は「高校卒業同等以上の者」とする。
  • 修業年限は「2年、3年又は4年」とし、修業年限ごとに卒業に必要な単位数を定める。また、夜間の学科、別科、専攻科及び通信課程も置くことができる。
  • 所轄庁は「文部科学大臣」とする。
  • 設置者の要件は「国、地方公共団体及び学校法人」とする(新専門学校を設置する学校法人の認可基準を新設)。
  • 校地及び校舎の面積、校地・校舎・施設設備の内容、教員資格及び教員数は、「教育の目的を達成するために最低限必要となる基準(他の高等教育機関の基準を基本)」を新たに定める。
  • 自己点検・評価及び第三者評価を行う。
  • 高等教育機関にふさわしい新たな学校名称を付し、修了者に新たな称号を付与する。
  • 上記の制度面での論点のほか、財政支援のあり方、他府省庁所管法令との関係、その他所要の論点についても検討を行う。

(3)後期中等教育機関-新高等専修学校(仮称)-としての目的や論点の整理状況

1.教育の目的

 中学校における教育の基礎の上に、心身の発達及び進路に応じて、専門教育を施し、職業及び実際生活に必要な能力を育成する。

2.基準・要件等の概要

  • 入学資格は「中学校卒業同等以上の者」とする。
  • 修業年限は「3年」とし、卒業に必要な単位数を定める。
  • 所轄庁は「都道府県知事」とする。
  • 設置者の要件は「国、地方公共団体及び学校法人」とする(新高等専修学校を設置する学校法人の認可基準を新設)。
  • 教育課程(学習指導要領)、教科用図書、教員資格、校地・校舎の面積及び校地・校舎・施設設備の内容は、「教育の目的を達成するために最低限必要となる基準(専修学校設置基準を基本)」を新たに定める。
  • 後期中等教育機関にふさわしい新たな学校名称を付し、修了者に大学入学資格を付与する。
  • 上記の制度面での論点のほか、財政支援のあり方、他府省庁所管法令との関係、その他所要の論点についても検討を行う。

3.現行制度における職業教育力の充実・向上等のための方策

(1)専修学校の使命や1条校との役割分担の明確化

1.分かりやすく実効性ある専修学校制度の設計

設置基準の課程別の分離
  • 専修学校制度の社会的理解を促進するため、専門学校、高等専修学校及び専修学校ごとに設置基準を課程別に分離して定める必要がある。
    • 協力者会議報告「今後の専修学校教育の充実・振興について」(平成17年3月)…『現行の専修学校設置基準を課程ごとに分離することについて今後引き続き検討する必要がある』と指摘。一般課程について、生涯学習機会の提供を促進する観点から、名称や基準の在り方のほか、『各種学校制度も視野に入れつつ検討する』必要性を提起。
教育活動の維持・向上のシステムの充実
  • 学校教育法で専修学校における評価のあり方が規定されたことから、他の学校種の有効な取組に関する情報の提供、専修学校における取組促進の支援など、専修学校全体の底上げに資する方策を講ずる必要がある。
通信教育課程の創設
  • 多様かつ高度な専修学校教育を広く国民に提供するための仕組みとして、特に複数の情報通信・配信を活用した新たな教育方法による通信教育課程を制度化する必要がある。
学習成果の評価の仕組みの構築、学習情報の積極的な提供
  • 専修学校及び各種学校の学修を内容や水準別に整理・区分し、個人の学習歴として客観的に評価できる仕組みを整備し、その制度や評価の取組が社会的に活用されるように支援を行う必要である。
  • 職業教育を推進する観点から、専修学校及び各種学校の教育情報を学習者が利活用しやすいように提供する仕組みを整備する必要がある。

2.専修学校の位置づけと他の学校との役割分担・連携協力

中核的な職業教育機関や生涯学習機関としての位置づけや役割の明確化
  • 教育振興基本計画の策定では、専修学校及び各種学校について、生涯学習、初等中等教育及び高等教育の段階ごとの位置づけや役割・機能を明確に整理した上で、具体的な振興策を総合的かつ計画的に推進する必要がある。
    • 「検討に当たっての基本的な考え方(案)」…『大学・短期大学、高等専門学校、専門学校が各学校種ごとにそれぞれの位置付けや期待される役割・機能を十分に踏まえた教育や研究を展開するとともに、競争的環境の中で、個々の学校がその個性・特色を発揮していくことが必要である。』
    • 「重点的に取り組むべき事項(案)」…『専修学校における社会的要請の高い課題に対応する教育の取組に対する支援を充実する。』
キャリア教育の成果を踏まえた中学校・高校での進路指導
  • キャリア教育等の進展を踏まえ、生徒の志望、能力や適性などに応じて適切な進路指導が行われるよう、現場の教職員や地方教育行政の担当者を対象に、専修学校の理解促進の取組や連携事業等をより一層推進する必要がある。
専修学校の積極的な活用による地域の教育力の向上
  • 地域の教育力、特に職業教育力の向上のため、国や地方公共団体は、学習活動への専修学校の人材や施設などの活用、専修学校を含めた学習活動支援人材の養成プログラムの構築など、具体的な連携・協力に向けた制度的、財政的な支援を行う必要がある。

(2)専修学校と他の学校との格差(学校及び学生生徒)の是正

学校教育法第1条《学校の範囲》は様々な社会システムで定着

  • 「学校の範囲」は様々な分野の法令で引用されているが、1条校と専修学校とを分けて定義するのは、学校教育法での専修学校の位置づけが明確でない(学校でない)ことが原因である。
    • 《例1》…学校は、学校教育法第1条に規定する学校、これに附設される同法第82条の2に規定する専修学校、同法第83条に規定する各種学校。
    • 《例2》…学校は、学校教育法第1条に規定する学校、同法第82条の2に規定する専修学校、同法第83条に規定する各種学校。
1.専修学校に対する格差
  • 災害支援(激甚災害に対処するための特別の財政援助等に関する法律)
    • 「激甚災害に対処するための特別の財政援助等に関する法律」に定める私立学校の施設の災害復旧事業に対する補助の対象に専修学校を加えるため、法律を改正する必要がある。
  • 日本スポーツ振興センターの災害共済給付
    • 日本スポーツ振興センターが行う災害共済給付の加入対象に高等専修学校を加えるため、法律を改正する必要がある。
  • 留学生関係(受入れの支援、留学要件、経済的負担軽減などの格差)
    • 専門学校の多様かつ高度な職業教育の成果を国際的にも活かすため、留学希望者への情報提供、日本語能力の要件、留学生への財政支援及び卒後の就労要件などで、専門学校と大学等の取扱いを同様に見直す必要がある。
  • 通学定期の指定学校の要件等
    • 専修学校の教育運営上の負担軽減を図り、夜間課程での職業教育の機会を確保するため、通学定期の指定における手続(指定期間)や要件(週の授授業時間数など)で、専修学校と1条校の取扱いを同様に見直す必要がある。
2.学生生徒に対する格差
  • 公的資格・試験の受験資格等
    • 1条校との比較で、高等専修学校及び専門学校の要件を厳格化(他の資格取得者に限定、実務経験年数の延長及び課程修了に限定など)しているものは、学校種、教育内容や修業年限を踏まえて見直す必要がある。
  • 授業料軽減の財政支援制度
    • 専修学校の学生生徒に対する授業料軽減の財政措置は一部の地方公共団体に限られているので、教育費負担の軽減を図るために、国よる授業料軽減の財政支援制度を創設する必要がある。

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総合教育政策局生涯学習推進課専修学校教育振興室

(総合教育政策局生涯学習推進課専修学校教育振興室)