エコミュージアムについて
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エコミュージアムとは
エコミュージアムとは「ある一定の文化圏を構成する地域の人びとの生活と、その自然、文化および社会環境の発展過程を史的に研究し、それらの遺産を現地において保存、育成、展示することによって、当該地域社会の発展に寄与することを目的とする野外博物館」と定義づけられている。そして、その運営は、住民参加を原則とし、普通の博物館と違って対象とする地域内にコアと呼ぶ中核施設(情報・調査研究センター)と、自然・文化・産業などの遺産を展示するサテライト(アンテナ)、新たな発見を見い出す小径(ディスカバリートレイル)などを配置し、来訪者が地域社会をより積極的に理解するシステムで行われている。
その歴史は意外に新しく、1960年代のフランスで地方文化の再確認と中央集権排除という思想の中でエコミュージアムは誕生している。その用語は生態学(Ecology)と博物館(Museum)からの造語で、人間と環境との関わりを扱う博物館として考案されたものである。
現在、フランス国内には50ケ所を超えるエコミュージアムが設置されているが、スウェーデンやカナダなどにも普及し、我が国では“地域おこし”事業の中で、その考え方を生かした施設の設置と整備が試みられてきている。
(出典「エコミュージアムについて」法政大学教授 馬場憲一)
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エコミュージアムの定義
1980年1月にが,ICOM(国際博物館会議)の元会長であるアンリ・リヴェールによって「エコミュージアムの発展的定義」が作成されている。内容は以下のとおり。
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この他に1980年にフランスにおいて策定された「エコミュージアムの組織原則」(エコミュージアム憲章)があり,フランス文化省によって承認されている。
日本におけるエコミュージアムの例
山形県朝日町での取組
山形県朝日町では,エコミュージアムを「新しい生活環境観」と意訳し,町の住民が町の文化や自然,生活に誇りを持ち,生かしながら,楽しく生き生きと暮らせる生活スタイルの確立を目指している。
キーワードは,「まちは大きな博物館」,「まち全体が博物館,町民すべてが学芸員」をであり,エコミュージアムを地域づくり計画の中に位置づけている。
平成12年には,エコミュージアムのコアセンター「創遊館」(中央公民館,図書館,エコミュージアムルーム(エコミュージアムの普及、研究、展示などを総合的に行う場所),展示コーナの複合施設)を設置し,産業(ワイン工場等),自然(山,ブナ原生林等),文化(遺跡,道等)をサテライトとして位置づけ活動している。
具体的な事業は,学習会,展示(地域産業の紹介),イベント等を実施
阿蘇たにびと博物館での取組
阿蘇たにびと博物館は、阿蘇全体を博物館とし、阿蘇に生きる人びとや暮らし、自然との関わりを展示して案内するエコミュージアムである。
他のエコミュージアムとの違いは,博物館という意識を強く持っており,学芸員が常駐し,「調査研究」「収集保存」「教育普及」の活動を行っている。
例えば,教育普及事業では、実際の現場を案内する常設展(阿蘇ガイドツアー)、特定のテーマを立てて展示する企画展、そして当該地域に生きる人々を実際にご紹介する特別展(谷人ツーリズム)の3つの展示活動を行なうほか、友の会の月例会などの講座イベントを開いたり、調査研究報告書兼友の会誌である『谷人』を発行して、谷人たちの暮らしや自然の普及に努めている。また、阿蘇を研究する学生たちの支援も行なっている。
これらの活動を通して、阿蘇を訪れる人も、訪れられる人も、互いに阿蘇で有意義に過ごせることを目的としている。
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