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日本 |
フランス |
イギリス |
アメリカ |
韓国 |
博物館専門職員の名称 |
「学芸員」 |
「conservateur」
(コンセルヴァトゥール)
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博物館、文書館、図書館等で有形、無形文化財の調査研究、保存管理、普及等を行なう公務員。博物館では学芸分野の専門職。(注1) |
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「curator」 他
(キュレーター;以下「学芸員」と訳す) |
統一的な名称はなく、職務内容により多様な名称で呼ばれる。
例: |
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コレクション関係;curator, conservator |
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展示関係;Exhibit Developer |
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教育事業関係;Educator |
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マネジメント関係;Director |
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「学芸士」
※ |
1級正学芸士、2級正学芸士、3級学芸士、準学芸士があり資格要件が異なる。 |
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博物館職員の配置及び職務に関する定義・法的根拠等 |
「博物館に、専門的職員として学芸員を置く」(博物館法第4条)
「学芸員は、博物館資料の収集、保管、展示及び調査研究その他これと関連する事業についての専門的事項をつかさどる」(博物館法第4条) |
(注1) |
「文化財に関する学術研究の責任者として、また調査研究・分類・保存・維持・(コレクションの)充実化、付加価値を高めるための普及啓発に関する技術に関する責任者」として定義。 |
(1990年5月16日デクレ90-404号第3条)
「フランス博物館の学術的活動はコンセイユ・デタ(国務院)の議を経るデクレ(政令)により定める資格を有する専門家の責任において遂行するものとする」(フランス博物館法第6条)(国立文化財学院の設置政令1992年2月12日アレテに記載) |
<参考>
「博物館は専門的な訓練及び経験を積んだ学芸員を置くこと」
(博物館・美術館委員会(英国憲章に基づく公益団体)登録基準)
(最低条件)
「学芸員は以下の条件の一つは備えていることが望ましい」
- 博物館が扱う分野に関係する学位
- 博物館学のディプロマ又はそれに相当する資格
- 博物館運営と管理についての理論と実践に関する実質的経験
※ |
学芸員を置いていない小規模な博物館は、博物館の最高意思決定組織が任命した「Cutatorial Adviser(学芸アドバイザー)」の助言を受けられる体制を作るよう「博物館・美術館委員会登録基準」により義務付けられている。 |
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<参考>
「博物館に関する知識や経験が豊富な有給の専門職員が1人以上いること」が要件
(アメリカ博物館協会登録認定基準) |
「 |
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博物館及び美術館は大統領令に定めるところにより、第4条の規程による博物館・美術館事業を担当する博物館・美術館学芸士(以下、学芸士とする)を置くことができる。 |
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学芸士は1級正学芸士、2級学芸士、3級学芸士及び準学芸士に区分し、その資格制度の施行方法・手続きに必要な事項は大統領令で定める。 |
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学芸士は国際博物館協議会の倫理綱領と国際協約を遵守しなければならない。」(博物館及び美術館振興法第6条) |
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公的資格制度の有無 |
有 |
有
国立文化財学院の卒業生 |
イギリス博物館協会による資格認定制度 有
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「AMA(Associateship of Museums Association)」(称号付与制度) 他 |
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無 |
有 |
資格の認定主体 |
国又は大学 |
国 |
(団体(イギリス博物館協会)) |
− |
国 |
(文化観光部長官が有識者等に委員を委嘱する「博物館・美術館学芸士運営委員会」が審査) |
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資格要件(裏面へ続く) |
次のいずれかによる。
- 学士の学位
博物館に関する科目修了
(12単位:225時間相当)
- 大学2年以上の在学(62単位以上修得)
博物館に関する科目修了 3年以上学芸員補の実務経験
- 国家試験又は無試験認定審査合格
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国立文化財学院(ENPと略)の選抜試験(注2)合格後、18ヶ月間の研修を受講
(うち8ヶ月は講義とセミナー、9ヶ月間は実習(計3回、30週間相当)、他休暇)
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(注2) |
選抜試験は、公務員の現職者(勤務7年以上)向けの内部試験、学士号以上の学位取得者向けの外部試験有。試験合格者のほとんどは修士号、博士号取得者 |
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○ |
AMA取得の流れ |
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申請資格を取得:一定の実務経験又は博物館協会が認定した大学院での学習等 |
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申請資格取得後、3〜5年以上の実務 |
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実務終了後、職業能力開発教育受講(CPD:博物館協会認定の指導者の下、自身の計画案に沿って行う。受講期間は2年間で70時間以上、最低限10日) |
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受講後協会の審査を受け、合格後AMAを取得 |
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− |
<準学芸士>
- 学士の学位を取得し、国家試験合格、経歴認定対象機関(注3)での1年以上の実務経験。 他
<3級学芸士>
- 博物館関連分野の博士学位取得者で経歴認定対象機関での実務経験1年以上
- 準学芸士取得後、経歴認定対象機関での実務経験7年以上 他
<2級学芸士>
- 3級制学芸士取得後、経歴認定対象機関での実務経験5年以上。
<1級学芸士>
- 2級学芸士取得後、経歴認定対象機関での実務経験7年以上。
(注3) |
経歴認定対象機関 |
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国公立博物館のほか、「博物館・美術館学芸士運営委員会」に登録された私立・大学博物館等のうち、施設や活動実績により専門家の実査を経て認定された機関 |
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博物館専門職員養成の特色 |
学部レベルの学芸員養成課程の修了又は国家試験の合格により資格取得後、博物館に就職。(博物館の7割は資格を採用要件)
資格取得者は年間1万人前後と見られるが、このうち学芸員として採用される者は数パーセントとされる。
(公募48パーセント、特別採用24パーセントのほか、公立博物館は行政職の公務員試験等による採用32パーセントもある)。 |
上記の国立文化財学院修了後、国立、地方の博物館で公務員として勤務(卒業生 コンセルバトゥール)。逆に言えばENPを卒業しなければコンセルバトゥールにはなれない。
このほか、大学や専門学校、研究機関(エコールドルーブルでは美術史を中心とした美術館学)においても博物館学講座が開講され、専門職養成が行なわれている。 |
前述のAMAのような博物館協会による職員養成のほか、大学の博物館専門職員養成課程において養成されている。
博物館学部は、大学の専攻に関係なく入学可能な1年生大学院。(養成は61施設・機関で実施。うち39大学・大学院) |
養成はマスターレベルが一般的で、学部で歴史学、美術史、人類学など専門分野の基礎的な学習をした上で、(ときには博物館勤務後)大学院で博物館の職務に必要な学問を深めるケースが一般的。職務分化に応じた養成コース等もある。 |
− |
専門職員数 |
学芸員 |
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3,827人(登録・相当) |
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2,401人(類似)(2005年現在) |
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(コンセルヴァトワール人数)
635人(1993年)
(参考:ENP2005年度合格者数38名) |
(常勤・非常勤博物館職員数)
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− |
− |
(参考; |
3級正学芸士資格取得者307人、準学芸士20人) |
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職務の特色等 |
専門的職員として規定されている。博物館における職務分化は、欧米に比較して明確でないことが多く、1人の学芸員が多面的な業務に携わっている。
(公立博物館の場合)
行政職(79.4パーセント)、研究職(6.6パーセント)、教育職(2.7パーセント)、技術職(3.6パーセント) |
社会的身分が高い公務員であり、文化財に関する研究、分類、保存、維持、活用の業務に係る企画立案、予算立案・執行を担当する。
(職級により)2級、1級、統括(conservateur du patrimoine)と分けられている |
(欧米)近年は、博物館専門職の分化が進められている。例えば、資料の登録・管理はレジストラー、資料の保存・修復はコンサベーターやレストアラー、博物館における教育はエデュケーターがそれぞれを担当している。 |
(欧米)近年は、博物館専門職の分化が進められている。例えば、資料の登録・管理はレジストラー、資料の保存・修復はコンサベーターやレストアラー、博物館における教育はエデュケーターがそれぞれを担当している。 |
(国公立博物館勤務の場合は、研究職公務員とされ、職類により「学芸一般」、「美術」、「国楽」、「国語」等に分けられる。ただし、現状では行政職が7割以上を占めている) |
最終学歴 |
学士(92.7パーセント)、修士(32.0パーセント)、博士(3.7パーセント) |
ENPはグランゼコールのひとつで、いわゆる高等行政官養成学校であり、最終学歴としては修士・博士号を取得する大学とは別系統の職業・専門家養成学校の修了となる。 |
修士以上が一般的。 |
最低修士以上、博士が望ましいとされる |
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<参考文献> |
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株式会社 丹青研究所『博物館制度の実態に関する調査研究報告書』平成18年3月 |
・ |
Jean CHATELAIN ‘Droit et Administration des Musées’ |
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博物館基準研究会編『博物館基準に関する基礎研究―イギリスにおける博物館登録制度』平成11年3月 |
・ |
對馬 由美「博物館教育普及活動から見た学芸員の資質に関する研究」(平成15年度文教大学大学院修士論文) |
・ |
石森秀三『博物館概論』平成18年2月、財団法人放送大学教育振興会 |
・ |
吉武弘喜「アメリカにおける博物館専門職員の養成と研修」『博物館研究』Vol.33 10、平成10年10月25日、財団法人日本博物館協会 |
・ |
濱田人浄「博物館専門職の養成・研修の現状について」『博物館研究』Vol.33 11、平成10年11月25日、財団法人日本博物館協会 |
・ |
財団法人 日本博物館協会『学芸員の資質向上の方策に関する研究』平成11年3月 |
・ |
European Group on Museum Statistics,“A Guide to European Museum Statistics,”2004.11 |
・ |
文部科学省『平成17年度社会教育調査報告書』 |
・ |
アートドキュメンテーション研究会『シンポジウム:フランスにおける美術情報の普及と専門教育』平成10年3月 |