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資料4−(1)

博物館関係者等からの意見聴取結果の概要(平成17年度実施)

 文部科学省では、平成17年5月〜12月に関係団体(2名)、美術館関係者(4名)、歴史博物館関係者(4名)、自然博物館関係者(7名)、博物館学会関係者(8名)、動物園・水族館関係者(3名)及び学識経験者(9名)の計37名から、1学芸員資格制度の在り方、2博物館登録制度の在り方、3博物館の事業の在り方、4博物館の評価の在り方について意見聴取を実施した。その意見聴取の主な意見は以下のとおりである。

博物館関係者等からの意見聴取結果(登録制度関係)

項目 法改正を検討するもの その他の参考意見
定義
 科学館の扱いをどうするか。資料収集・保管を博物館の要件とするのか、展示教育活動をしていれば博物館とするのかによる。

 最初に資料の「収集」とあるが、これは戦後の資料が散逸していた時代の考え方であり、今の実態に即していないのではないか。「収集し、調査研究」という文言ではなく資料の調査研究が最初にくるべき。

 「科学の振興」、「自然保護」、「環境保護」に関して自然史博物館は貢献しているので、そういった物事に関しても博物館法の定義に読み込める内容がよいのではないか。

 設置主体を限定したり、公私立や登録・相当の区分は不要

 設置主体別に登録要件を分ける必要はない。

 登録は株式会社でも認められるように対象を広げた方がいい。

 株式会社を対象にすることは、税制上の優遇はないので登録の必要はないと思うが、人材の養成の観点では受け入れ先として考えてはどうか。
 ここ10年で知事部局側で設置博物館が増加している。県立博物館では先発で設置された教育委員会所管の博物館は登録博物館だが、後発でできたところは登録博物館に登録しないままのところもある。

 教育委員会所管だけとするのはやめたほうがいい。

 ICOMの定款では、博物館の定義を幅広くとらえ、博物館学を研究するところも博物館であるとしている。

 ICOMか英国の博物館法の定義が妥当なのではないか。
登録制度
 私立から見ると銭金の優遇措置の基準でしかなく、メリットがない。

 税制の優遇措置とは切り離した第3者機関による質の保証を行うような制度がよいのではないか。(英国のMA、MLA)

 公立の場合、優遇措置がないため登録博物館である意義に対して、意識が薄い。

 国立博物館や美術館が博物館法上の(登録)博物館に含まれないことが懸念

 登録制度基準を明確にすべき。

 現行法の登録要件4つ。(ハードルが低い、書類審査のみ)

 形式的な審査をなくすため、博物館業界で登録業務を行う方がよい。

 審査基準は日本博物館協会の「博物館の望ましい姿」で審査することが妥当。ただしどこが審査するかが問題

 登録と税制優遇措置などをリンクさせるのであれば、審査主体は国。(アメリカ、イギリスの基準認定では博物館協会)

 諸外国の例からも登録制度より認定制度の方が現実的である。

 公的性格をもった組織を作り、日本の実情に即した登録基準を制定し、そのための研修会などを学協会などが支援することが必要

 国立の館が登録に入るべき

 相当施設も何年か実績をつむことによって、ステップアップして登録博物館になれると励みになる。

 登録基準を満たさない博物館は、法律で定めるところの博物館とすべきではない。「博物館」の名称独占

 審査するのであれば、書類審査のみの従前の形式ではなく、現場に行って入念な調査が必要。
 一般の人からは登録博物館や所管の別は認識されていない。

 登録博物館でも、年代の新旧によって、設備に落差があるので、登録制度の再調査が必要

 1館ごとでなく複数の館で、ネットワークを組んで認定される形があってもいい。

 認定制度にパスした場合のメリットの付与を検討すべき。

 重要文化財の申請をする際に、博物館が登録だったら、提出書類が少なくて済むような制度がよい。

 厳格な審査基準を設けるべきであり、審査を通った博物館に対しては、国もしくは民間から支援を受けられるような体制を作るべき。

 登録博物館になれば職員が科研費をとれる、資料の貸し借りができるなどのメリットの付与が必要。

 登録制度で指定管理者としてなるべき対象について、行政が担保するようなシステムが考えられる。

 登録制度のメリットを学芸員や専門職員の拡充、手当、給与、人事等に反映させる。

 基準認定に応じて補助金を交付。

 ICOMでは、非営利、永続性を博物館の要件としており、株式会社立や個人立を登録の対象とする場合、これらの点が問題になる。
評価
 評価についてアメリカやイギリスではコンサルタントがいるが、日本ではいない。

 業界内の評価は制度がなくても事実上行われるので、制度は緩やかな方がよい。

 博物館相互による評価も可能である。複数館で行えば妥当な評価になる。

 米国では国が補助金を出して評価・指導している。
 博物館の実際の活動を評価して、そこにまる適マークを与えるのがよいのではないか。

 「博物館の望ましい姿」を参考にし、博物館側が自己評価していく形が必要。

 第3者機関の保証がなされれば、指定管理者制度の更新時には評価の指標になる。

 博物館の運営改善には、1博物館内における運営改善、2運営主体における運営構造改変、3博物館連合体からの改善、4国の法体系・博物館基準等の改善提案が必要ではないか。
税制
 博物館への寄贈は無税になるよう税制改正を行うべき

 サポーター制度を充実させたい。登録博物館に寄附をした場合は、節税の対象になるような特典があるといい。

 都道府県レベルまで資料の免税が認められるべきではないか。

 今後、博物館が多様な形態を持つようになることを考えれば、縦割りで税制を作るべきではなく、非営利の公益性のある法人に与えてはどうか。
 私立の場合、寄贈された刀剣を持ち込もうとして、税関で許可がおりずに、不便な思いをした。

 日本博物館協会で海外の税制について調査したことがある。
その他
 類似施設の扱いが課題(統計上のデータも含め)

 美術館は、近年、ギャラリー化しつつある。行政からの予算も常設展にはつかない状況。こういう状況を是正するための事項を、博物館法の中で組み込むことはできないか。
 博物館の水準を底上げしていくような目標を作成しなければならない

 国が指導性を発揮して、博物館事業を底上げできる目標としての望ましい基準を作成する時期なのではないか。

 独立行政法人化や指定管理者制度の導入によって、公立と私立との違いが無くなってきている。

 身障者への配慮が明らかに不足している。また、防災関係、地震についての記述も必要。

 博物館の運営改善において、例えば地方分権化を進めるとしても、地方公共団体に任せればいいという意味ではなく、博物館連合体、企業、財団法人、日博協などに、分権化、権限を委譲するなども考えられるのではないか。

 法律を定め、予算化するという従来の手法では博物館の振興がうまくいくとはいえなくなっている。現場で試行錯誤してベストプラクティスをみんなで共有して、それを目指していくという方法が有効になる。そのためには失敗した時のセーフティーネットを国は措置すべき。

博物館関係者等からの意見聴取結果(学芸員関係)

項目 法改正が必要なもの その他の参考意見
学芸員に求められる資質
 専門分野のマスターは取得して欲しい。

 博物館職員に対する倫理規定を博物館法にもその趣旨を含めるべき。

<資料の取り扱いに関する能力>
 各専門の資料について、学術的な扱い方ではなく、適切に資料を見せる、保存することができることが必要。

 展覧会や教育普及において幅広い人に分かりやすく見せる能力。

<幅広い専門性>
 幅広い専門的知識(文化政策、ミュージアムマネジメント等)の習得が必要。

<マネージメント能力>
 アカデミックなスキルと共に、博物館の経営的感覚が必要。

<コミュニケーション能力>
 博物館に「癒し」などのメンタルな部分を求める人が増えているが、こうした利用者とコミュニケートできる学芸員の育成が必要。

 学芸員の資質については、大学の問題と博物館の問題がある。JABEE(日本技術者教育認定制度)のような評価指標が必要では。大学の講義に関して各専門分野(考古学等)に偏る傾向があり、そのカリキュラムについてガイドラインが必要。ICOM(国際博物館会議)には、ICTOPというガイドラインがある。
 博物館職員に求められるのは、「資料(コレクション)」、「交流(コミュニケーション)」、「経営(マネージメント)」に関する資質・能力。

 博物館職員の職務は、1相互理解、2芸術文化によって、国の風格をあげる、3新事業の創設、4観光と交流
学芸員養成課程
 国家資格としての学芸員に必要なのは、「資料の取扱い」であるので、人文系、自然科学系の博物館資料の取扱いを分けて教えるべき。

 学芸員資格に求めることは、「資料」と「交流」に関する知識と技能と「経営」の知識。

 「情報発信能力」「コミュニケーション能力」などの専門的知識が必要なため、現行の養成課程では不十分

 エデュケーター的な要素の学芸員になりたい志望者が増加している。

 「博物館資料の取扱い」の前段階の実習が不十分である。

 学芸員課程の「博物館実習」の受入体制ができている大学が少ないため、身に付く「博物館実習」の養成となっていない。

 図書館司書と比較しても単位数が少ない。せめて同等にするべき。

 博物館実習の中身が博物館任せになっている。

 科目内容については、法体系、倫理的なこと、資料の取扱、博物館学(ジェネラルなもの)

 博物館活動に必要な実務能力の獲得には、就業した後で研修や経験を通して養成することが通例となっている。

 インターン的な技術習得が必要
 現在の学芸員養成は安易であるので、学芸員として就職できるように人数を絞るべき。学芸員養成と現場博物館とのギャップが大きい。

 学芸員の質の向上は重要であるが、大学の経営スタンスから見ると受講者が減ることになりマイナスである。
学芸員に対する研修
 一度実務についた専門職員が、その後も継続して専門能力を向上させたり、技能や資格を取得できる(キャリアアップ)体制を整える必要がある。
 長期間職員を研修に出すことができる館も少ない。(教育公務員特例法が適用されていない公立博物館の学芸員は研修に参加しづらい。)
学芸員資格の更新
 資格の更新制度が必要ではないか。博物館リカレント教育を大学院で対応したらどうか。

 社会状況や博物館活動の潮流の変化、技術の進展に対応するために、更新制度を設けるべき。
 教員資格制度の見直しの方向性も参考になるのではないか。

 日本造園学会のやっている資格制度が参考になるのではないか。

 更新のための審査基準を想定することが難しい。

 更新制度は現状では必要なく、研修制度の確立で十分。
学芸員資格の上級資格 資格の細分化
<上級学芸員>
 フランスの学芸員制度に則って、上級と一般の学芸員の枠を設ける必要がある。

 コミュニケーター、インタープリター等、職能論的な資格が求められる。

 資格を三層化し、「学芸員補」、「学芸員」、「上級学芸員」とする。

 キューレーター的、エデュケーター的、コンサベーター的な学芸員が県立博物館には必要。

 フランスでは、4段階に分けて学芸員の資格が設けられている。養成の人数は退職者などを計算に入れている。上の段階に進むには実務経験が必要とされている。

<細分化>
 ほ乳類・鳥類など各々の専門家がキューレータとして採用されるのが望ましい。
<上級学芸員>
 社会教育主事、学芸員及び司書の養成、研修等の改善方策について(平成8年4月24日 生涯学習審議会社会教育文化審議会報告)「学芸員の高度な専門性を評価する名称の付与制度について」

 誰がどのような基準に基づいて、上級学芸員の認定をするのか。

<細分化>
 採用のない今の状況では細分化して養成すると失敗する
学芸員の大学院レベルの養成
 博物館専門職員を養成するための専門職大学院「(仮称)学芸職大学院」を創設する。大学院修士レベルで資料分野あるいは博物館機能に関する専門性を獲得し、学芸職大学院で、博物館の専門職員としての教育を受けるようにすべき。

 自然史系の場合、資料に関する知識・技術については大学院修了レベルが必要

 学芸員の採用条件として、学芸員資格、大学院レベルの専門性と現場経験が必須。

 学芸員資格を取得する人と、採用される定員の間に圧倒的な乖離がある。

 県立クラスの博物館では修士卒の人材を求めており、学芸員については、大学院レベルでの養成が必要。

 博物館教育や来館者を対象とした研究も見られており、博物館学そのものについて大学院レベル以上の養成が必要。

 大学院レベルで、一般来館者への教育普及活動を行うような新しいタイプの学芸員を養成すべき。

 博物館専門職員を養成するための専門職大学院を創設する。大学院修士レベルで資料分野あるいは博物館機能に関する専門性を獲得し、博物館の専門職員としての教育を受けるようにすべき。

 博物館経営論、博物館資料論等、個別に専門的なものは、大学院課程の中に組み込むなどしてはどうか。

 幅広い文化的素養を、実際の職場に入ってから身につけていくのは時間的に困難。
<大学院レベルでの養成不要論>
 大学の学芸員課程で学芸員を育成するのは無理。大学での学芸員課程制度を変更しても意味がない。大学院レベルで学芸員の育成を図っても、現場の学芸員として即戦力になるような人材は育成できないのではないか。

 大学院に比重をおいた場合、学芸員資格のために大学院まで行き、結果、学芸員になれずに、時間を棒にふる人も出てくるのではないか。
その他
 博物館に学芸員を必置にするようにした方がよい。

 動物園の場合、学芸員資格については、取得せずに採用される人が非常に多い。

 学芸員などの人材が流動的でないことが問題。

 学芸員から大学の教官に引き抜かれていくことはあるが、逆はない。対等に人事交流ができるとよい。
 学芸員の労働市場を流動化することで、質の向上が図られる。そのためには専門家の労働市場を確保する必要性とセーフティーネットが必要。具体的なセーフティネットとしては、次のステップに進むための研修を設けるなど。学芸員は狭い領域を専門性として持っているので、社会のことを勉強する機会を設けてあげることが重要。魅力ある展示は社会の側の状況を踏まえてやらなければ良い物としてみてもらえない。

大学院で習得すべきこと
 
1 資料に関する知識・技術
 
 自然史系の場合、資料に関する知識・技術については大学院修了レベルが必要
 コンサベータ的な学芸員を大学院レベルで早急に養成し、県立の博物館に配置するべきと考える。
 博物館経営論とか、博物館資料論とか、個別に専門的なものは、大学院課程の中に組み込むなどしてはどうか。
2 博物館経営に関すること
 
 博物館経営に特化した大学院レベルの素養が必要
 博物館経営の専門的な教育機関・大学院大学の設置が必要
3 インターン等の実務研修、就職と直結したプログラム
 
 大学院レベルでの学芸員資格課程では、就職と直結した仕組みを作るべき。
 大学院で学ぶ際には、半年間や1年程度、現場でインターンシップをさせるなどの実務研修を義務づけてはどうか。
 大学院レベルで養成することについては、現場の情報が入ってくる人が教える授業でないと意味がない。
 学部での資格は社会における博物館理解者を作るため、大学院におけるトレーニングは就職と直結した仕組みづくりとプログラムづくりを行う。


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