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はじめに

 ここ数年来、公共の文化施設は、官から民への大きな流れの中、市場原理の導入等により、博物館も含め改めてその在り方が問われている。このような変化に対応するために、日本博物館協会は、平成10年以来、わが国の博物館のあるべき姿を求めて検討を続け、博物館活動の基本理念として「対話と連携の博物館」、その具体的な行動指針として「博物館の望ましい姿」を発表してきた。そして、望ましい姿の実現を支援するために「手引き」を刊行し、ワークショップや意見交換会を行ってきた。
 しかし、変化に一層の拍車がかかっている。国立博物館への市場化テスト導入の検討、公立博物館での指定管理者制度の導入開始や市町村合併に伴う博物館の統廃合、そして私立博物館に関係する公益法人改革など、いずれも博物館活動の根幹にかかわる課題である。ここで今一度、博物館のあるべき姿を関係当事者が共有し、状況の変化に対応していくことが求められている。
 このような情勢に鑑み、日本博物館協会では、文部科学省の委託を受け、平成17年8月に、博物館長、学芸・庶務担当部課長、学芸中堅職員、学識経験者等よりなる調査研究委員会を発足させ、博物館経営・運営の指標(ベンチマーク)づくりについて検討を始めた。
 同委員会において、まず、静岡県立美術館の自己評価システムの事例、アメリカ博物館協会の評価事業に用いられている評価指標、英国博物館・図書館・文書館委員会の行っている博物館認定事業の基準、英国文化・メディア・スポーツ省が博物館に求めている業績指標、わが国の指定管理者制度導入の際に求められている経営指標等について調査を行った。
 これらを踏まえ、博物館の経営と運営について客観的に分析し、その能力を高める道具として活用できる指標のあり方について検討を進めた。その際、館種、設置形態、規模等の差異を超えて活用できる道具とするためには、画一的な指標とするよりは、各館の置かれている状況に応じて選択できるアラカルト的なものにするほうがより適切であろうということになった。他方、ともすれば揺らぎがちな博物館の存在意義をしっかり押さえておく必要性があり、これを上記の「博物館の望ましい姿」に求め、これを土台として、「設置」から「広報・市民参画・連携」の9つの条件にまとめた。この条件の各々について、今後求められる博物館への視点と点検項目の例を本報告書で示した。
 この視点と点検項目の例は、本文でも強調しているように、各館が自館の状況に応じて必要な項目を選択することを基本としており、全てを満たさなければならないものでないことに十分留意されたい。
 また、本報告書においては、指定管理者制度の導入を進めている北海道、大阪市、長崎県の担当者から報告いただいた、導入にあたっての基本的考え方、指定管理者の指定の基準と選定、締結する協定の内容について掲載している。指定管理者制度を博物館の特性に合わせて適用するようにする、各設置者による工夫の跡がみられ、参考としていただきたい。
 本調査研究は、博物館を通じて活用できる評価指標の拠り所となるものを作成しようとする初めての事業であり、今後参考となる統計数値の呈示や実践事例の積み重ねによってより汎用性の高い拠り所にしていく課題が残されている。
 本報告書の活用により、博物館の経営と運営の分析がより客観的に行われ、関係者間の共通認識が醸成され、博物館への理解が深まることを期待するものである。
 本調査研究に当たり多大のご尽力を賜った「博物館経営・運営の指標(ベンチマーク)づくり委員会(主査 東京都江戸東京博物館長 竹内 誠)」委員及びワーキング・グループの皆様に厚く御礼申しあげる。
 また、お忙しい中、本委員会に出席いただき説明をいただいた北海道、大阪市、長崎県の担当官に対しても心から感謝申しあげる。
 最後にではあるが、本調査研究にご支援、ご指導をいただいた文部科学省生涯学習政策局社会教育課の皆様に厚く感謝申しあげる。

平成18年3月
日本博物館協会

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