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資料1

教育バウチャーに関する研究会における主な指摘・発言事項等(第3回研究会までの主なもの)

1.諸外国と我が国の状況等の比較・整理

【全体】

アメリカの経済的負担軽減等を目的した補助やイギリスで廃止になったバウチャーなどの特定層を対象としたものと、オランダやスウェーデンにおける全児童生徒数を考慮した補助金配分という、2つの異なる側面からバウチャーの定義が論じられており、バウチャーの定義ははっきりしていない。
イギリスやオランダなどの例は、単なる公費配分制度の仕組みの話であり、これをもってバウチャーとは言えないかもしれない。
チリ、ニュージーランドの例からすると、全国的なバウチャーの導入によって、高い確率でソーティング(階層化)が起こる可能性がある。
諸外国の例からすると、全国的なバウチャーの導入によって、教育成果が向上したという結果が出ているとはいえない。

【アメリカ】

アメリカで実施されているバウチャーは、低所得者等を救済する意味合いが強く、フリードマンの提唱していたような、全生徒を対象にしたバウチャーを通じて教育の活性化を図るなどといったものとは性格が異なる。
アメリカにおいても結局、バウチャーの全国的な導入には至らなかった。これは、政教分離に違反するのではないかという議論もあって、見送られた形だ。
我が国の教育制度や文化・社会的背景等はアメリカとは異なっており、バウチャー導入について同じようには考えることは難しい。

【イギリス、オランダ】

教会立の公営私立学校は元々国が作ったようなものなので、ほとんど公立と変わらない。
(イギリスにおいて)公営私立以外の私立には補助が無い代わりに、国の定めた教育課程に従う必要も無いし、入学者も選抜できることになっている。

【スウェーデン】

学校選択の方法は各コミューンにより様々。ナッカ市のようなシステムを採っているのは290あるコミューンのうち10コミューンほどである。

【チリ】

チリにおいては、バウチャー導入の結果、公立学校から私立学校に生徒が移行し、公立学校の規模が小さくなっていったにもかかわらず、実際に廃校まで至ったものはほとんど無かったようである。公立学校においては、在籍者がいる限りなかなか廃校にはできないということであろう。

2.バウチャーの趣旨・目的、定義・形態

元々、フリードマンが提唱していたバウチャーも理念的で曖昧なところが多かった。
昔からバウチャーの話がある割に、その経済的な効果等の研究はあまり進んでいない。
バウチャーはどこで、誰に対して実施するのかというコンテクストによって、かなり効果が変わってくる。
バウチャーの額を上げ過ぎると、私立学校が授業料を引き上げるといったモラルハザードが生じるかもしれない。

3.基本的考え方の整理

我が国に全国的なバウチャーを導入するというのは、少々乱暴な話ではないか。チリやニュージーランドの例もあり、あまり望ましい結果にならない可能性がある。
教育の分野においても、消費者の選択の自由が最大限尊重されるべきであるが、全国的に一定の教育水準を確保しなければいけないという義務教育の特殊性に対しては注意を払う必要がある。

義務教育のように、全ての人が受けなければならないような分野では、バウチャー導入の意義は少ないのではないか。職業訓練等、義務教育以外の対象者が不特定多数である分野であれば、バウチャーのメリットがあるかもしれない。
政策的な誘導の手段としてバウチャーを実施するのであれば、コストの半額以上の額のバウチャーを支給するなどしなければ効果は薄く、少額のバウチャーではあまり効果が無いかもしれない。しかし、不登校児童生徒などに対するバウチャーであれば、安い額のバウチャーであっても効果があるかもしれない。
競争ではなく、経済的負担軽減のための手当や不登校児童生徒やいわゆる落ちこぼれの生徒達に対するケアの手段としてバウチャーを検討することは意味があるのではないか。
認可されたフリースクールのようなものに、バウチャーを配るということを検討する余地はあるのではないか。

学校同士を競争させるのであれば、バウチャーはそれほど効果が期待できるわけは無いかもしれない。むしろ、裁量権の付与の方が重要なのではないか。
優秀な者とそうでない者の格差が広がっても国全体としてプラスになれば良いのか、それとも格差は少なくした方が良いのか、義務教育の意義をどう考えるか。

以上


平成17年11月29日教育バウチャーに関する研究会(第1回)資料

整理すべき論点

1. 諸外国と我が国の状況等の比較・整理
社会の実態・教育行財政制度等の相互比較・整理
諸外国におけるバウチャー制度の導入目的,効果,課題等の整理

2. バウチャーの趣旨・目的,定義・形態
狭義のバウチャー,広義のバウチャー
バウチャー制度の趣旨・目的

3. 基本的考え方の整理
我が国に教育バウチャーを導入する意義・目的
競争の促進・選択の拡大と教育水準の維持・公平性の確保

4. 我が国におけるバウチャー制度導入の具体的課題
学校段階別
対象施設・対象児童生徒等の範囲
バウチャーの財源
制度設計上の課題


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