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資料43

資料43   グローバル化時代に求められる高等教育の在り方について(答申)(抄)

平成12年11月22日
大学審議会


【3】 我が国の高等教育の国際的な通用性・共通性の向上と国際競争力の強化を図るための改革方策
 
1    グローバル化時代を担う人材の質の向上に向けた教育の充実
 
(3) 教育方法,履修指導の充実
(実体験の重視や職業観の涵養(かんよう))
   多様な文化や価値観を受容し,その中で自らの考え方を主張し,行動できる心豊かな人材を育てるためには,知識の修得だけでなく,多様な文化に触れたり,多様な価値観を持つ人々と交流を行ったりするなどの実体験を持つことが必要である。
   そのためには,各大学において,ボランティア活動等の社会貢献活動を授業に位置付けるなどの取組を進めるとともに,国内外でのフィールドワーク等の機会を充実することが必要である。理工系学部においては,ものづくり教育の重要性にかんがみ,実験・実習等に力点を置いた実践的な教育を充実する必要がある。
   また,学生が将来への目的意識を明確に持てるよう,職業観を涵養(かんよう)し,職業に関する知識・技能を身に付けさせ,自己の個性を理解した上で主体的に進路を選択できる能力・態度を育成する教育(キャリア教育)を,大学の教育課程全体の中に位置付けて実施していく必要がある。また,現実的な職業観を涵養(かんよう)するためのインターンシップについては,ある程度長期間にわたって実施する取組が必要である。

 
2    科学技術の革新と社会,経済の変化に対応した高度で多様な教育研究の展開
 
(2) 社会の要請にこたえた柔軟な教育の展開
(企業と大学との共同による教育プログラムの開発)
   専門職業人の養成に当たっては,大学における教育研究と社会における実践や実務との調和を保つ観点が重要であり,各大学は,地域社会や産業界との情報交換に努め,何が大学に求められているかを敏感に受け止めるとともに,学生に実践や実務に必要な能力を身に付けさせる観点から,企業と共同して教育プログラムの開発を推進することが必要である。

(3) 生涯学習ニーズへの対応
(社会人の学習環境の充実)
   大学における教育研究活動の成果を広く社会に開放し,生涯学習の振興に資することは,高等教育と社会との往復型の生涯学習を推進する上で重要なことであり,大学が果たすべき役割として明確に位置付けることが求められる。
   各大学においては,社会人が最新かつ高度の知識・技術を習得するために必要な教育を受けやすくするため,企業や社会の要請を十分考慮しつつ,インターネット等の情報通信技術を活用して,社会人が利用しやすい教育提供の形態を整備する必要がある。また,社会人に対して提供される学習機会の積極的な活用を促進するため,教育プログラムの内容を分かりやすく示すなど適切な情報提供に努めたり,社会人が必要とする教育プログラムを的確に選択できるよう社会人の履修相談に応ずる専門的なスタッフを設けたりするなど,社会人の学習支援体制を整える必要がある。
   あわせて,社会人の大学教育へのアクセスを拡大するため,社会人特別選抜の実施,科目等履修生制度の活用,夜間大学院の設置をより一層推進するとともに,放送大学の整備充実や同大学院の創設に向けた準備を進めていくことが必要である。
   なお,現在,通信制の大学院については,修士課程のみ開設が認められているが,社会人が利用しやすい高度な教育提供の形態を整備する観点から,今後,博士課程の開設について検討することが必要である。

  (単位累積加算制度の導入の検討)
   大学における単位の累積については,これまで,1)他の大学又は短期大学における授業科目の履修単位,2)大学以外の教育施設等における学修,3)入学前の既修得単位,等について,当該大学における授業科目の履修とみなして合わせて60単位までの単位を与えることができる制度や,短期大学や高等専門学校の卒業者等が大学等において更に一定の学修を行った場合には大学評価・学位授与機構が学士の学位を授与する制度を導入してきた。また,平成10年からは,科目等履修生として大学で一定の単位を修得した者がその大学に入学する場合には,修業年限の2分の1を上限として,しかるべき期間を在学期間に算入することができるようになったところである。
   このように大学における単位の累積については,卒業要件単位数のおおむね半分,あるいは在学期間の半分を限度として既に認められ,実施されている。
   こうした制度を更に進めた,いわゆる単位累積加算制度(複数の大学等で随時修得した単位を累積して加算し,一定の要件を満たした場合,大学卒業の資格を認定し,学士の学位を授与する制度)については,大学評価・学位授与機構において専門的な調査研究を行ってきたところであるが,これを国際的に通用するものとして整備するためには,なお検討を要するとされている。今後,学習者自身による主体的な学習設計を尊重しながらも,学位授与にふさわしい体系的な履修を確保する観点から,1)どのような専攻分野を学位の対象とするか,2)学位の基礎となる単位の体系的な修得をどのように確保するか,3)学位授与に至るまでの様々な段階で必要な履修指導をどのように行うか,など制度の基本となる部分や,4)単位累積加算制度に基づき学位授与を行う機関としてどのような機関が適当であり,5)学位授与を行う体制をどのように整備していくか,などの組織体制の在り方について,更に検討する必要がある。

  (パートタイム学生の受入れの検討)
   今後,我が国の大学が生涯学習機関として社会人の受入れを積極的に推進するに当たり,正規の学生としてパートタイム学生を受け入れられるようにすることには,大きな意義があると考えられる。
   パートタイム学生の受入れを具体的に推進するに当たっては,フルタイム学生の学修の在り方を明確にした上で,大学に在学することが可能な期間や,一年間あるいは一学期中に履修し修得することが可能な単位数の設定など,パートタイム学生の学修の在り方を検討することが必要である。また,パートタイム学生に提供する教育の質を確保するとともに,学生の学修上の便宜に配慮する観点から,収容定員,授業料等の在り方などについて,検討する必要がある。もとより,これは単に修学形態の区分であり,大学による効率的な教育提供を阻害したり,フルタイム学生とパートタイム学生とが共に学ぶことによって豊かな人間形成が図られるという長所を損なったりすることのないよう留意しなければならない。また,地域に密着して生涯学習機会を積極的に提供することが期待されている短期高等教育機関や,社会人の専門的な知識・技術の向上等に大きな役割を果たすことが期待される大学院においては,特に,パートタイム学生の受入れを検討する必要がある。

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