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資料42

資料42    学習の成果を幅広く生かす
「生涯学習の成果を生かすための方策について」答申の主な内容
(平成11年6月   生涯学習審議会)


第1章   新しい社会の創造と生涯学習・その成果の活用

   

   誰もが生涯学習によって得た学習成果を活用して社会に積極的に参画することができる社会的システムの形成が必要である。
   そのためには、生涯学習行政の施策は、これまでの学習機会の提供に加え、今後は、生涯学習の成果の活用を如何に促進するかにも重点を置くことが必要である。

   個人が、学習成果を活用して社会で自己実現できるようにするため、

     1個人の学習成果を「個人のキャリア開発」に生かせるようにする。
【背景】
   日本型雇用形態の変化に伴い、勤労者個人の知識・技術・能力が問われるようになり、生涯にわたる職業生活設計が必要となり、自己啓発の意欲が増大している。
   女性については、職業を通じて社会的な自己実現を図ることに意義を認める人が増え、特に結婚・出産に伴う一時退職後の再就業への希望が強まっている。
   高齢者については、定年後も第2、第3の就職を希望したり、ボランティア活動など各種の社会活動への参加意欲も高まっている。

     2個人の学習成果を「ボランティア活動」に生かせるようにする。
【背景】
   阪神・淡路大震災などを契機に、日本人にボランティア・マインドが定着しつつあり、共同体社会への共感に立ち自主的にその営みに参加・貢献するという志向は、今後の日本社会にとってきわめて重要。
   若者や子どもたちに規範意識や道徳性が欠如しているとの指摘に応えるためには、大人や社会が、自分のためにではなく、人のため、皆のため、社会のために役立とうと努力することが必要。

     3個人の学習成果を「地域社会の発展」に生かせるようにする。
【背景】
   都市化や過疎化の進行など地縁的なコミュニティーとしての機能が衰退し、特に子どもを心優しくたくましく育てていくためには、地域ぐるみで子どもを健やかに育てるための地域活動が極めて重要。
   自然環境の保全、介護・福祉など現代的課題に対処するためには、住民の学習活動や、学習成果を生かしての地域活動参加が不可欠。


第2章   生涯学習の成果を「個人のキャリア開発」に生かす

(1)    学習機会を拡充する
  1高等教育機関による社会人のための学習機会を拡充する
   高等教育機関では、社会人特別選抜の実施、編入学など社会人の受入れをこれまで以上に積極的に進める。
   大学院修士課程1年制コースや長期在学コースの設置を提言した大学審議会答申を受け、速やかな制度改正を要望する。

  2新たな情報通信手段を活用した高等教育機関による学習機会を拡充する
【衛星通信等を活用した公開講座を拡充する】
   既に「教育情報衛星通信ネットワーク」を活用した公開講座(早稲田大学はじめ7大学)が実施されているが、大学院、大学、専門学校の公開講座が全国の公民館等でリアルタイムに受講できるようにすることが考えられる。
   また、公民館等で受講する者から一定の実費を徴収し、その経費により公開講座の運営、公民館活動の充実に寄与するシステムづくりの検討に着手する。
   今後は、大学等も全国の公民館や学校等に直接公開講座を送信していくことが望まれる。
   さらに、将来に向けて、現在整備が進められているSCS(スペース・コラボレーション・システム)と相互乗り入れができるようにすることも検討が望まれる。
   また、CATVを活用して、在宅の高齢者や女性も受講できるようにすることも検討が望まれる。
   さらに、多くの大学の参加により共同で公開講座を実施し、それをインターネットで流すような取り組みも期待したい。
   インターネットを活用して在宅で高度な教育をいつでも受けることができるような学習システムについても早急に研究を進めることが望まれる。
【情報通信を活用した大学院レベルの遠隔教育の実施】
   情報通信などを活用した通信制の大学院修士課程の設置の拡充が求められる。
   修士課程の開設・運営状況等を踏まえつつ、今後の課題として通信制の大学院博士課程の設置についての検討が望まれる。
   また、米国では、衛星通信ネットワークやインターネット等多様な情報通信技術を用いて授業を行ったり質問を受けたりして、通学しなくても卒業できるような大学院レベルの教育システム(バーチャル・ユニバーシティー)が行われており、このような状況を踏まえた検討が望まれる。
   さらに、今後マルチメディアを高度に利用した大学院教育の取り組みが望まれる。

  3放送大学を一層整備する
   今後は、例えば准看護婦から看護婦へのキャリアアップのための授業科目を開設するなど、社会人のための再教育の機会提供の拡充が望まれる。
   さらに、放送大学においても大学院の実現への取組が期待される。その場合、高度な職業人養成や社会人再教育を主たる目的とするなど、社会的要請に対応した魅力ある大学院を目指すことが望まれる。

  4大学・高校における学校外での学修成果の認定を拡大する
【大学】
(専門学校における学修の認定を拡大する)
   現在では、ほとんど実績が無い専門学校の学修の単位認定を促進するため、
   一部大学関係者の誤った序列意識の改革を行う。
   学外での自主的な学習活動の成果と代替できるような授業科目を予めカリキュラム上明記する等の工夫を行う。
   個々の学生の学習実績に応じて迅速に単位認定する仕組みを工夫する。
   専門学校の学習成果の認定実績を大学の評価項目に加えることの検討が望まれる。
(ボランティア活動、インターンシップの認定を拡大する)
   例えば、ボランティア活動やインターンシップ等の学習成果を授業科目の中に位置づけるなど単位認定が促進されるよう、各大学における工夫が望まれる。
   ボランティア活動やインターンシップ等の学校外での活動の単位認定の状況についても評価項目に加えることの検討が望まれる。
【高等学校等】
   今後は、各都道府県等においてガイドラインを作成し、実社会での就業体験など生徒の学校外における活動の成果を単位として認めていくべきである。
   また、高等学校等に対し、中央教育審議会で提言された「学校評議員」を活用して、地域の住民が、上記の推進など柔軟で弾力的な教育が実現されるように具体的な意見を表明を行うことを求める。

(2)    学習に対する支援を充実する
  1職業に関する学習機会の情報収集・提供を行う
   第2章(5)のインターネット学習情報提供システムに個人のキャリア形成に必要な学習機会の情報や個人の職業能力に関する学習機会の情報等を盛り込み、インターネットを通じて全国の公民館や生涯学習センター等の社会教育施設で情報を引き出せるようにする。

  2勤労者に対する学習支援を拡充する
   今後一層、有給教育訓練休暇制度の導入の促進、休暇日数の増加など、労働者個人が行う自己啓発のための学習活動への企業の支援を拡充することが必要。
   また、「教育訓練給付制度」の活用が望まれる。

  3女性のキャリア開発のための条件整備を行う
   学習機会を提供する生涯学習センターや公民館等において、実際に学習できるように、託児室や子どもスペースの整備を進める。
   また、これらの施設でボランティアによる預かりサービスを受けられるようにする。

(3)    各種資格・検定等に係る学習支援を行う
  1専門学校卒業生の大学への編入学受入れを推進する
   専門学校卒業生の大学への編入学制度の定着のため、次のような方策を考慮した各大学における対応を望む。
   大学関係者が、当該編入学制度の趣旨・内容を十分に熟知し、学内規則等の整備を進めること
   大学関係者が、専門学校教育についての理解を深め専門学校教育の成果を適切に評価すること
   欠員が出た場合にのみ編入学を認めるのではなく、予め編入学定員枠を明確に設定すること

 
2 公開講座、ボランティア、インターンシップなども単位に認められるよう専修学校設置基準を改正する
   情報化の進展に対応し、多様な専修学校教育を幅広く展開できるように、専修学校設置基準の改正を早急に検討する。
   大学と同様、多様なメディアを高度に利用して教室等以外の場で授業を履修させることができるようにする。
   入学前における大学等の授業科目の履修、公開講座、公民館等の社会教育施設における学修、認定社会通信教育、技能審査、ボランティア、インターンシップ、外国の学校等における学修など専修学校以外の学修の成果を幅広く認められるようにする。

(4)    学習成果の多元的な評価を行う
  1学習の成果に対する企業等の評価の改善を進める
《1   評価の改善を図る》
   従業員が自ら学習し、一定の資格を取得した場合に、企業が一時的な奨励金を支給したり、配置転換や昇進・昇任に考慮するなど、企業による評価が一層高められるよう取組を進めることが期待される。
《2   学習成果に互換性を持たせるシステムを作る》
   【個々人の学習成果の記録づくりをしよう】
   我が国でも、生涯学習の成果を生かして、キャリア開発やボランティア活動、地域社会での活動を進めていくため、個々人が自らの評価に基づく学習の成果の記録である「生涯学習パスポート」を作成する。
   【学習成果の認証システムを構築する】
   様々な地域での学習成果を全国どこででも活用できるようにしたり、特定地域内での各種資格や社内での学習成果が広く社会全体で通用するようにするため、生涯学習センター等で分野ごとの学習成果を認証するようなシステムについて具体的な調査研究を進めることが望まれる。

(5)    学習した者と学習成果を求める者を結びつけるシステムを作る
 
   現在、全国津々浦々で地域の子どもの体験活動機会や家庭教育支援活動に関する情報の収集・提供、相談紹介を行う「子どもセンター」の設置が進められている。
   これを発展させ、それぞれの地域の学習者の生かしたい学習の成果を登録する「学習成果提供バンク」と学習成果を受け入れて実施しようとする事業内容等を登録する「学習成果募集バンク」を整備し、インターネットを通じて全国津々浦々でこれらの情報を検索・活用できるようにすることが望まれる。


第3章   学習成果を「ボランティア活動」に生かす

(1)    ボランティア活動についての自己評価を促進する
  1入学試験等における評価を促進する
   大学・高等学校の入学者選抜においては、例えば推薦入学におけるボランティア活動の積極的な評価を行うなど広くボランティア活動の経験を評価するよう求める。
   企業においても、例えばボランティア活動の経験を評価して採用する枠を設けるなど積極的な評価を望む。

  2ボランティア活動等を高校、大学の単位として認定することを促進する
   学生・生徒のボランティア活動に対する評価は教員が学生のボランティア活動の現場に居合わせていないために評価が難しいという課題を解消し、高等学校、大学においてボランティア活動の単位認定を促進するため、受入団体の協力を得ながら学生の活動そのものについて評価する方法などを研究する。

  3全国ボランティアバンクをネットワーク化する
   第2章(5)の学習情報提供システムにおいて、ボランティアの派遣や受入れ等の情報を提供している様々な分野のボランティア活動推進機関の情報も提供できるようにすることが望まれる。
   ボランティア活動に関する情報提供・相談窓口を開設し、電話やインターネット等による情報提供・相談事業を、全国的なネットワークシステムとして整備する方策を検討することが望まれる。
   国立婦人教育会館のデータベース(WINET)を活用し、ボランティアに関する情報についての窓口を整備する。


第4章   学習の成果を「地域社会の発展」に生かす

(1)    生涯学習による地域社会の活性化を推進する
  1学習成果を活用したまちづくりを推進する
   地域の住民がその地域の史跡を巡ったり、郷土の歴史を学び、史跡を訪れる観光客に歴史や由来を説明する取り組みを拡げ、子どもを連れて地域を巡ったり、子どもと一緒に学習したり、子どもに語り聞かせることなどの交流を行い、地域の住民の学習成果を生かしたまちづくりを進める。

  2「全国生涯学習市町村協議会」(仮称)を設置する
   生涯学習によるまちづくりを推進するために自治体間相互の連携推進、情報・人材交流を図ることを目的とした「全国生涯学習市町村協議会」(仮称)のような連絡、情報交流の場を設置する。

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