戻る


   3. 多様なキャリア社会構築に貢献する大学づくり

 
(1)    知的活動の中心拠点
   大学は、優れた教育研究成果や、豊富な教職員、施設等を有しており、社会の各分野で活躍できる優れた人材の養成・確保や人類の知的資産の継承と未来を拓く新しい知の創造等を通じて、社会の発展や文化創造へ積極的に貢献する高等教育の中核的機関として、様々な面において社会をリードする中心的な役割を果たしている。

(2)    地域社会への貢献の視点
   今後、大学の有する教育研究機能を一層社会に開かれたものとし、他の大学や企業、地域社会との連携を推進し、知的活動の中心的拠点として、社会経済の活性化、地域社会の発展に積極的に貢献することが重要である。
   具体的な方策としては、
企業や地域等と連携して教育プログラムの開発や講座の提供等を行うことにより、産業界をはじめとする社会のニーズに応える人材を育成する
共同研究の実施や寄附講座の受入れ、行政からの委託研究等、産学連携の推進を図る
地域社会の問題を取り入れた講義の実施等により、地域社会の課題解決を担う人材を育成する
こと等が挙げられる。

   社会人を含む様々な背景や学習ニーズを持ったあらゆる世代の人々を幅広く受け入れ、高度の専門的知識・能力等を身につけた人材を育成して再び世に送り出すことで、社会に教育研究成果を還元できる。また、大学自体にとっても組織の活性化や、社会の変化に対応した柔軟な変革の契機ともなり得る。

(3)    生涯学習機関としての大学の役割の再認識
1 付加価値の高い生涯学習の拠点としての重要性の再認識
   人々の大学に対する生涯学習ニーズも、個々の事情に応じて急速に多様化している。例えば、
高度で専門的な職業能力の向上を目指して大学院での高度な再学習を求めること(リカレント学習)
資格取得のための学習
一般教養を高めるために高度の教養講座を求めること
等、人によって様々である。

   これまでも、生涯学習機関としての大学の役割の重要性は指摘されてきているが、今後は、一層、大学と社会とを往復しながら職業能力等の成長を自ら図っていけるような社会への転換が求められる。
   こうしたことから、生涯学習機関としての大学の役割の重要性を再認識し、様々な教育機能を活用して、付加価値の高い学習の拠点としての機能を果たし、職業上必要な新しい知識、技術を獲得したり、実社会で身に付けた実践的な知識、経験を学問的に検証してさらに高めたいといったニーズに適切に対処する必要がある。
   具体的な方策としては
社会の期待に応える人材育成機能を果たしていく観点から、高度専門職業人養成に特化した専門職大学院を一層充実させること
社会人の再学習を目的とした講座や大学院コースを開設する等、様々な学習ニーズに対応した弾力的な取組みを行うこと
等が挙げられる。

   特に、自宅や職場から通学できる範囲に必ずしも希望する大学・大学院がないことや、職場環境によって通学可能な時間帯が限られること等、時間的、空間的制約等から、大学での高度な学習を希望しながら、その実現に困難を伴う人々も少なくないことから、一人一人のニーズに応じた時間的、空間的に一層弾力性のある学習機会の提供が求められる。
   そのため、例えば、平成10年には通信制大学院の修士課程が制度化され、さらに、平成14年には博士課程も認められることとなった。今後、以下のような方策により、多様な学習需要への対応をさらに進めることが必要である。
通信制大学院制度の一層の活用
サテライト・通信講座、講義のインターネット発信等の遠隔学習の充実
昼夜開講制の拡大
都心部へのキャンパス設置   等

   また、これまでの大学は、高校卒業後一定の年数の間継続して教育を受けて卒業するといういわゆる「入学・滞在型」が主流であったが、今後は地域のあらゆる人々に開かれた生涯学習機関としての役割も果たすことが必要である。
   現在、職業等に従事することにより日常的に様々な制約を抱えながら、学習を希望する人々が増えてきているものの、そうした人々が一定期間継続して学習機会を確保することは容易ではない状況にある。
   こうしたことを踏まえ、個人の事情に応じて柔軟に修業年限を超えて履修を行うことで学位等の取得が可能となる長期履修制度が、各大学において導入されつつあるが、今後はその一層の活用が求められる。
   さらに、他の大学又は短期大学において修得した単位を一定の範囲内で自大学の単位としてみなすことができるいわゆる単位互換制度や大学以外の教育施設における学修の単位認定を一層活用することにより、外部との一層の連携・交流を図ることが必要である。

   以上のような取組みを推進するほか、物理的に大学の講義や施設を様々な人々に開放したり、さらには、学内に生涯学習を推進する組織体制を整備したり、一層の充実を図る等の大学の教職員自身も発想の転換を図り、自らの知的資源をもって社会に貢献していく姿勢を積極的に訴えかけることが重要である。
   具体的な方策としては、
一人一人が自らの意欲により科目を選び、学習の幅を広げていけるように、様々なニーズに応じた多種多様な講座を用意する。特に、資格取得等のキャリア形成に通じる講座の充実を図る
サテライト・通信講座、講義のインターネット発信等の遠隔学習を充実する
高等学校等とも連携して、学問への興味関心を抱くきっかけとなったり、その喜びを理解してもらうような学習・体験活動の機会を提供する
インターンシップの導入や、学生のボランティア活動等地域社会に貢献する活動に積極的に取組む
等の役割を拡充することで、地域の生涯学習の拠点機関としての役割を果たすことが一層求められる。

   さらに、大学の教員は、大学内での教育研究活動を行うだけでなく、地域に根ざした生涯学習システムを運営するため、様々な専門家、関係機関、企業等をコーディネートしていく役割を担うことが期待される。

2 地域の生涯学習機関のネットワーク化
   地域では行政や民間団体により、様々な生涯学習の機会が提供されており、また、大学においても学位の取得や単位の修得を目的としない公開講座が開かれているが、現状ではそれらが別個に存在し、学習の成果の評価や活用が十分に行われていない。

   また、学習者の側から見ても、どの機関でどのような学習をして次の活動に繋げられるのかといった全体像が見えにくく、体系的なサービスの提供が求められている。

   今後は、大学自身が生涯学習機関としての役割を一層認識すると同時に、他大学や行政、高等学校、専門学校、民間カルチャースクール、NPO等、地域における生涯学習機会の提供者や地域活動グループと連携し、学習者の様々な学習ニーズに応えることが重要である。

   これによって、個別の大学が地域に貢献するだけにとどまらず、学習する地域全体のレベルアップという成果も期待できる。



ページの先頭へ