1. |
大学における男女共同参画推進のための姿勢と方針の明確な表明
大学の教官選考規定の中に,男女共同参画推進のために大学として果たすべき責任と方針を明文化すると共に,学長声明その他を通して学内外への周知を図り,その実現に向けた具体的方策の策定を促進するなど、大学全体としての取組が必要である。
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2. |
カリキュラムおよび研究におけるジェンダー学の拡大充実
(1) |
教育機関としての大学の役割に鑑み,国立大学のカリキュラムの中にジェンダー研究関連講座を積極的に増設すると共に,将来的には,ジェンダー研究学科の設置等も検討する。
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(2) |
ジェンダーの視点を取り入れて「知」の見直しを行い,新しい「知」の生産に資するように,ジェンダー研究を積極的に奨励する。
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3. |
大学における女性の雇用および教育関連の実情把握のための調査資料の整備
(1) |
教員等に関する統計調査は,職階別(教授,助教授,講師,助手,非常勤講師)および分野別に,男女別教員数と男女比率を示す必要がある。学生に関しては,学部,修士課程,博士課程別に,および分野別に,男女別学生数と男女比率を明らかにする。
女性の教員および学生が特に少ない分野,両者のギャップが特に大きい分野を注視し、年次比較によって毎年の改善の状況を把握する。
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(2) |
全国立大学の集計統計をとり,公私立大学との比較をすること,さらに,特に男女参画の面で先進的な諸国との国際比較をすることにより,日本の大学における男女平等推進の方向の策定の参考とする。
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(3) |
各大学内に,男女共同参画推進担当機関(例えば,男女共同参画推進委員会,男女平等委員会等)を設置し,統計的資料の整備,女性の教員・学生の少ない分野への進出を妨げている問題の多面的分析,調査結果の学内外への広報を行うと共に,積極的に改善策を策定し,実施状況を点検する。
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4. |
女性教員増加のための,教員公募システムの確立とポジティブ・アクションの 採用
(1) |
教員の公募システムの確立と情報の広範な流布
公募情報の広範な流布,公募情報へのアクセスの保障,および実質的公募システムの確立は,雇用機会平等の前提である。女性を排除したネットワークや人脈内に限定された募集情報の流通であってはならない。公募情報の周知は,大学が必要とする優秀な人材を広い候補者プールから採用するためにも重要である。
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現在,文部省「学術情報センター」によってインターネットでの公募情報提供活動が行われているが,いろいろな研究者層に到達するように,多数の流通経路が存在することが必要である。
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各大学はホームページに教官の公募情報を掲載する。
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学会誌,学会,その他の機会を積極的に利用する。
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(2) |
ポジティブ・アクションの採用
過去において,教員の採用,昇進に際して,女性研究者は後回しにされることが多くあったが,今でも,このような差別的人事がなくなったとは言いがたい。採用および昇進人事に当たって,男女構成のバランスを考慮したポジティブ・アクション(注)を取り入れ,女性教員の採用,昇進を積極的に推進することが望ましい。
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(3) |
達成目標とタイムテーブルの設定,達成の評価
ポジティブ・アクション実施のために,具体的な達成目標とタイムテーブルを設定することが必要である。将来の研究者の養成機関である博士課程における女性比率を基準にし,2010年までに国立大学の女性教員比率(助手・非常勤講師を含めず)を20%に引き上げることを達成目標として設定することが適切である。
各大学はそれぞれ,学内にポジティブ・アクション担当組織を置き,中期的,長期的目標および具体的取組策の策定の任に当たると共に,年度ごとの達成状況を明らかにする報告書を作成し,学内外に広報する。
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(4) |
女性教員数・比率の組織評価項目への組み入れる。
各大学の組織全体または学内の単位組織の評価(自己評価,外部評価)に当たっては,女性教員比率,過去からの変化,目標達成度,努力の程度等を評価項目として入れる。
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5. |
理工系,その他特に女性の少ない分野への女性の参画の推進
(1) |
日本の国立大学では,工学系,理学系,農学・水産系が女性教員の比率が低い。これらの領域,その他女性教員が特に少ない分野(商船系,医・歯学系等)では,女性候補者を積極的に探し出し,適切なポジティブ・アクションを採用することにより,女性教員増加のための一層の努力を行う。
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(2) |
研究の質の審査において,これまで判断の客観性が当然に保障されているとみなされてきた理学や工学分野であっても,採用および昇進のための業績審査において性によるバイアスがないか,常に点検する。
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(3) |
女性が非常に少ない分野には,学部および大学院への女子学生の進学を積極的に奨励する対策を取る。
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6. |
非常勤講師の処遇および研究環境の改善
非常勤講師は,常勤者の代替の低賃金労働力として長年にわたって非常勤講師に据え置かれている例も多い。大学における非常勤講師問題は、近年,問題点の指摘と改善要求の声が高まっている。
(1) |
非常勤講師の処遇の改善が必要であることは言うまでもないが,特定校に数年にわたって非常勤講師として勤務し,事実上常勤化している場合,常勤の教員として採用することに一層の努力を向ける。
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(2) |
非常勤講師が専任になる機会の拡大を支援するために,研究環境の改善,教員との交流等を通したネットワークへの参加,研究上有益な情報へのアクセスの拡大のための配慮をする。
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(3) |
非常勤講師が常勤の教員との共同プロジェクトに参加できるよう積極的に配慮する。
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7. |
研究における男女共同参画の推進,女性研究者の研究環境の改善
(1) |
大学内あるいは複数の大学の連携によって行われる共同プロジェクトの実施に当たっては,女性研究者の参加を積極的に促進し,ポジティブ・アクションを採用して,バランスのとれた性別構成への配慮をする。
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(2) |
研究費の配分,国内外留学の機会と費用配分の面で女性研究者が不利にならないような配慮が必要である。
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(3) |
女性研究者の研究環境の整備改善等の方策や意志決定の場に,女性の参加を推進するため,各大学内の関連組織・ポスト(大学評議員,部局長等)における女性の割合を増加させる。
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(4) |
助手について、女性の場合は,助手に長年据え置かれたり,事務・雑用担当とされ,専任講師または助教授へのキャリア形成上有意義な期間となっていない場合も多い。若手女性研究者の成長が阻害されることのないよう,勤務内容,プロジェクトへの参加の機会と役割分担,研修の機会,研究発表の機会等の面で配慮が必要である。
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(5) |
諸手当の支給,宿舎入居,その他の処遇の面で,女性教職員に対し不利な扱いをしていないか点検し,差別的な慣行については撤廃する。
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8. |
不服申立制度の導入
雇用形態,評価,処遇等,雇用に関連する性的差別を受けた場合の不服申立制度(オンブズパーソン制度)を確立する。不服を受理し,調査,問題解決に当たる学内機関の設置を検討する。
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9. |
セクシュアル・ハラスメントの防止と問題への対処
(1) |
大学は,セクシュアル・ハラスメントのこのような著しい有害性を明確に認識し,啓発活動や研修の実施等による未然の防止策と,事件が発生した場合の迅速にして公正な解決を図るための体制整備を行い,セクシュアル・ハラスメントの生じない教育・研究環境を維持するための全学的取組みを推進する必要がある。
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(2) |
セクシュアル・ハラスメントに関する実態調査を定期的に実施することにより,実情を把握する必要がある。
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(3) |
大学が作成する「セクシュアル・ハラスメント防止ガイドライン」において、セクシュアル・ハラスメントの定義,相談,紛争処理と救済の組織と手続き,公正さの保障,プライバシーの保障,二次被害の防止,予防措置,啓発活動,研修,その他必要事項について,きめ細かく規定し,実効的な運用を図る必要がある。 |
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