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女性の多様なキャリアを支援するための懇談会

2003年7月14日 議事録
女性の多様なキャリアを支援するための懇談会(第12回)   議事要旨

女性の多様なキャリアを支援するための懇談会(第12回)   議事要旨

1  日  時     平成15年7月14日(月)   13:00〜15:30

2  場  所 虎ノ門パストラル   新館5階「オーク」

3  出席者
(委員)    丹羽座長、江上委員、河野委員、小林委員、篠塚委員、都河委員、神奈川県教育庁生涯学習文化財課金子課長、湯川課長代理(曽根委員代理)、吉本委員、渡辺委員
(発表者)    筑波大学鈴木企画調査室長
(文部科学省)    有本生涯学習政策局審議官、大木男女共同参画学習課長、八木男女共同参画学習課長補佐、根本女性政策調整官、工藤教科書調査官   他

   議事概要   (○:委員、●:発表者、△:文部科学省)
   神奈川県教育庁生涯学習文化財課   金子課長、筑波大学鈴木企画調査室長、河野委員より発表があった後、意見交換が行われた。

: 神奈川県の発表について、今回の調査は社会教育施設の利用者を対象としており、それをベースに施策を立てているが、県民全体のニーズとのマッチングができているのか。またネットワーク、コーディネータの新しい仕組みを担う人材がどれくらいそろっているのか、どうやってそのリソースを得ているのか。
   筑波大学の発表について、なぜ社会人大学院を立ち上げるときに東工大にマスタープランの策定を委託したのか。
: 調査結果が即県民の意識であるとは考えていない。委託ではなく、自前で行ったため、社会教育施設の利用者のみが対象となった。そもそも生涯学習に興味を持っている人の考え方であり、また昼間公民館に来ている人の割合が高くて、社会人の意識が反映されていないなど、限界は承知している。
   ネットワーク、コーディネートを担う人材については、公務員は個別の人材について知識がなく、マッチングについての責任も負えないという問題があり、データベースに指導者人材の登録をする段階で終わっている。本来「お見合い」の仲人ができればよいが、そこまではできていない。今後、データベースを工夫して、例えば、学校の総合的な学習で自分が教えられる内容を書いてもらうなどの情報を充実させる。一番大事なのは、face to face である。また、民間やNPOに運営をゆだねたり、研修などにより地域の人々を結びつけるNPOを育てていくことが考えられる。行政職員向け研修だけでなく、ボランティア育成など地域に開いた研修は既に始めている。
: 経営システム科学専攻を設けるとき、当初は学内の教員に頼んだが、筑波まで往復時間がかかり、無理であると断られた。そこで立ち往生してしまい、東工大にお願いし、我々の立てた基本構想に賛同してくれる教員を集めた。学部から上がってきた学生と一緒に教育するのではなく、職業を持った社会人への教育に特化させた。ビジネスの現場を知らない者と社会人では議論ができず、教員も学部教育の片手間で社会人教育をやるのではモティベーションが下がる。目的にあわせて教員を採ったのは大きなメリットで、ニーズが異なる社会人一人一人に合わせた教育ができる。個別対応ができることは重要である。また結果的には外部から専任教員を集められたことが、筑波大学の強さにつながったと考える。
: 懇談会ではキャリアとは何か議論をしてきたが、実際の仕事においては、専門の融合、境界領域が発達してきている。今MOT、技術経営大学院が流行している。ある大学のMOTの教材を事前にチェックしたことがあったが、企業の資料、パンフレットをまとめただけで、経営分析がなされていなかった。境界領域の仕事は成長しニーズも高いが、教育する側のリソース供給ができていない。
: 我々も専門の融合を打ち出したが、現実には教員は個別分野の専門家であり授業も分野ごととなってしまい、学生から苦情が出た。最初は学生のほうが融合すればよいと説明していたが、平成2年より、修士論文を3分野の教員がチームを組んで指導する複数指導教官制を取り入れて、学生の指導を通じて教員同士が異分野のテーマを議論し、融合していった。単に異分野の先生を集めただけでは、融合はできない。複数指導制が教官の意識を変え、大学を活性化した。
: 筑波大学大学院の女性割合はどうなっているのか。
: 平成14年までの14年間の平均で、カウンセリング専攻は約50%、リハビリテーション専攻は約60%、ビジネス科学研究科経営システム科学専攻は11〜12%、企業法学専攻は約20%である。
: 筑波大学で設立当初、ダブルメジャーを設けるなど議論はあったが、最終的に経営学の学位となった。専門職大学院で学位の名称が問題となっているが、プロフェッショナルな学位に限定した方向とするよう議論しているのか。

   事務局より資料6、資料7について説明した後、自由討議。
: 筑波大学大学院の卒業生が企業に戻った時、どのくらいキャリアアップがなされているのか知りたい。
: 学位については、工学と経営学の両方を出すことはできないので、平成元年の時点では経営学修士に絞った。企画側が工学で、経営学の先生に来ていただいていたので、そちらの意向を重視した。平成3年に学位の大綱化により専門分野を自由に作れることとなり、修士(経営学)、修士(経営システム科学)を出すこととした。
   専門職学位について、我々も専門職大学院になりたいと概算要求を出したが、応募人数が下がっていると指摘されて通らなかった。受験者を職位別に見ると、平均年齢は35歳で、ミドルのマネージャーが多い。現実の問題の中から自分で問題を発掘し、それをどういうふうに解決したいのか考える力を評価する。入社して2〜3年ほどの人は問題意識が十分高くなくて、高倍率をくぐりぬけるだけの回答を用意できないので、合格できない。この層への対応も必要と考える。それぞれの問題をアカデミックなレベルにまでバージョンアップして論文にまとめるのがミドル層だが、一般職にはそこまで要求しても無理である。専門職学位を設け、知識を与えて問題の見つけ方、分析手法を教育する大学院を作れば、この層も取り込めると考えており、そういう意味で専門職の学位も意味があると考える。夜間大学院はレベルが低いと言う声にこたえ、レベルを高くしたいという力が働いており、修士、博士の中間ぐらいを目指しているが、専門職学位はそれと違う発想が必要と思う。
   修了後のフォローについては、給料が増えたかどうかなどは調べていないが、在学中に転職する学生が多く割合は20%ほど、修了後2〜3年も含めれば40%ほどいる。転職は、必ずしも望ましいとは思わない。修了後、大学教員になる例も多く、これまでの1300人の修了者中100人ほどいる。実務センスとアカデミックセンスを併せ持ち、よい社会人大学院教員の供給源になっている。なお学生はほとんど自費できており、企業派遣は少ない。
: 問題解決の方法論を学ぶ大学院の修了者は、本人が行ってよかったと感じることができ、企業でも活躍できる。社内で教育を行うことは難しくなってきており、コア人材への選抜型教育に重点が移っている。広告費、交際費、教育研修費の「3K」は削減が進んでおり、今後は公費と時間だけ与えて自分で学ばせるという対応が増えるのではないか。
: 転職を前提として大学院に来てキャリアを伸ばすのは、それはそれで大切である。
   出産や育児など、ライフとキャリアがぶつかるという女性の経験の特性を、報告書の最初に書くことが必要。検討の視点の書き方として、出産などのキャリアブレイクは、単線型キャリアでは空白とされてしまうが、そうならないような手立てが必要で、学習支援などを用意することが必要という構成がよい。検討の視点では女性という視点がなくなってしまっているようだ。
   河野委員の発表について、キャリア開発の研修について、個人、企業、公的機関など、どこが費用を負担するのが望ましいと考えるか、提言のヒントとして補足してほしい。
: キャリア研修は人事部が主催し、その費用で行うのが基本だが、最近例えば金曜、土曜と行い、土曜は自分の時間で行い費用は会社という形態があり、また特定の「階層」のみ費用を負担する場合もある。またライフの研修については、組合主催、人事・組合協賛がある。大手企業では協賛である。ただ、ライフは個人の問題であることから、2000円〜15000円程度の個人負担を課すところもある。
   何年か前に文部科学省の外郭団体で、このような研修への費用負担をするところがあり、当社の担当が試みたが認められなかった。個人では金額が大きく、人事がやるべきものではなく、組合でも差別になってしまうと言う問題があり、できれば公的支援があればよいと思う。
   個別のキャリアアドバイスについては、1回目はたいてい会社か組合の負担で、2回目以降は個人が負担している。両立支援というテーマはスムーズな復帰が大前提であり、妊娠・出産中、仕事に役立つものを学び、意識とスキルを保てるようにアドバイスしている。
: 中小零細企業では、出産で辞職する人が多く、研修費用の負担も難しい女性が多い。熊本県の例のように、各地にセンターがあり、そこで両立支援という理念を持った研修が必要。ハード面では、女性の問題は公的に、地域に根ざしていく必要がある。
: 筑波大学の例は、当初構想したとおりに動かなかったのがおもしろい。大学ではもとの企業に戻ってキャリアアップすることを意図していたようだが、実際は転職している修了生が多い。また、かなりの学習者が教える側にまわっており、そのようなキャリアを築くことは意義がある。個人の側が自己のキャリアビジョンを持とうとする意識が重要である。何を支援できるかについて我々は議論してきたが、個人の側がどうすれば明瞭なキャリアビジョンを持てるようになるのか、意識を涵養するための事柄についても、報告書では触れるべきではないか。
   神奈川県の発表について、コーディネートが公務員だからできないといったが、これは公務員だけでなく誰にとっても難しい。コーディネートと個人のキャリアビジョンのぶつかり合い、出くわす場所について、きちんと書くことが重要と思う。また費用負担については企業から個人までありうるが、必要に応じて公費の助成、貸付も含めて考えなければならないと思う。
: 神奈川県の報告で、公的分野でのキャリアに関する情報は多くあるが、それが有効なメニューかどうかは疑問がある。大学や研究機関と連携して、効率的なメニューとすべき。
   河野委員の発表で、民間企業に勤めている場合、男女とも支援が受けられるとのことだが、企業と離れていても自費負担などによりキャリア支援が受けられるのかどうか知りたい。
   筑波大学において、現時点での最大の問題点は何か。
: キャリア開発研修で、女性向けのものについては21世紀職業財団で、キャリアアップセミナーという枠で、ソフトと実施マニュアルを弊社で提供している。個人で受講する場合は、無料である。「産休・育休も組み入れたライフ&キャリアプランセミナー」は、平成9年の人口問題審議会で折原課長が興味を持たれて、母親学級での提供はできるか質問いただき、また公民館等でセミナーを行うことを期待されると言われた。現状ではほとんど企業内で実施している。時々行政より声がかかると、弊社の職員が対応している。
: 産業界ではキャリアという概念は近年出たもの。技能のスキル、能力、役割の階層別研修などでキャリアアップ研修という名称が目立つ。セカンドキャリアの研修も80年代以降、活発化している。先進的企業、女性社員の多い企業では、育児休業法施行後、ライフビジョン研修等も実施している。年功賃金から成果主義へ移行し、個人のキャリアを自分で考えるという流れになっている。
   働く女性のうち研修機会があるのはわずかで、女性従業員のほとんどは100人以下の零細企業で働いており、地域や行政の役割は大きい。
   多様なキャリアを支援するところで女性を論じるのかという視座については、十分に議論がされておらず、慎重に議論を深める必要があると思う。
   キャリアについては、個人が多様な選択肢を持つことができ、自己決定、自己責任をとる能力開発、教育の場をいかにして行政、地域が保証するかという枠組みに立って議論すべき。キャリアを企業にゆだねるのではなく、個人の視点から捉えた定義づけで、提言をまとめたほうがよいと思う。
: 厚生労働省も文部科学省も、みな個人主導でキャリアを形成するという議論でよいのだろうか。雇用保険でカバーできない部分を含めるのが文部科学省のスタンスではないか。ただ、文部科学省に「財布」がないのが問題だが。
   河野委員のおっしゃるなかでキャリアは会社、ライフは組合など互助会で支援しているが、大手企業はその余裕があっても、中小企業では誰がそのような支援をできるのだろうか。個人主導ばかりでなく公的な支援についても、議論が必要ではないか。
: 個人の選択とは、費用のことを言っているのはない。
: しかし、「財布」とセットでないと議論はできない。
: ライフの研修について、互助会とおっしゃったが、いま福利厚生は様々な会社にアウトソーシングされていて、色々なメニューをサービスする中で、単にベビーシッターの提供のみなどではなく、ライフ&キャリアデザインセミナーを設け、ベビーシッターや保育園を選ぶ前に人生設計をしようとするコースを実施している。個人負担もあれば、会社がサービスの一環としているものもある。
: 私どもの大学院の女子学生の事例について、例えば銀行から修士課程に乖離、マーケティングの研究をして、会社からスピンアウトして銀行向けマーケティングのベンチャーを立ち上げた事例がある。その人は、社長を務めながら同時に改めて博士課程に入学し、さらに私立大学の経営学助教授になっている。
   また修士課程の間に妊娠・出産しつつも2年で修了した例、妻が入学したのを見て夫も入学した例や、国際線のスチュワーデスで、入学前から会計事務所に入っていたが、会計分野の研究者として経営学教授になった例もある。大手の洗剤メーカーで広報の現場にいたが、科学的アプローチでマーケティングを考え、論文を書き、子会社的ベンチャーに移り、今は私立大学の教授になっている例もある。
   女性は20代後半に、企業の中で自分の将来が不安になる時期だからか、入学してくる例が多い。私から女性への不満は、関心がマーケティングや教育、人事、ソフトウェア関係に偏り、研究テーマも「女性の〜」と、女性であることを強調しすぎていることである。女性だから、女性の問題だけを扱うという視点は好ましくない。
   公的な費用負担について、学生は十分お金は持っていて、むしろ時間がないことへの支援のほうが問題。彼らの収入であれば授業料は取り戻せる。また家庭や職場の理解も問題である。最初は必修科目が多かったが、忙しい人が多く、学生のニーズにあわせるため、今は必修をほとんどなくして選択必修としている。
   神奈川県の発表について、県というレベルの枠組みにどれほどの意味があるのかという疑問を感じた。我々の大学院には、首都圏全域や、さらに岐阜や秋田などから週末のみ通ってくる学生もいる。現職社会人にとっては、むしろ勤務先との関係が重要である。
: そうではなく、生涯学習には先生が関わる分野以外にもいろいろな枠組みが存在しており、自治体単位の枠組みもある。
: 相手が住民か、勤務者かで違ってくるのだろう。
   現在の問題点について、文部科学省では8人の教員への予算をもらっているが、振り替えによって18人の教員を確保し、個々人のニーズに応えている。これが国立大学法人化後は、運営費交付金が社会科学の扱いで5人分くらいとなって、個別対応ができなくなる。別のやり方が必要となるが、解決策は見つかっていない。大学教育としてペイさせるのは難しく、とくに私大では非常に困難というのがよくわかる。



(生涯学習政策局男女共同参画学習課)

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