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政経塾では、熊本県立大学の先生方の協力を得て講座を行っているが、参加者から最終的に講座を資格として認めてほしいという意見はあったのか。 |
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学位授与機構の創設時は、全体的な生涯学習を評価することを視野に入れていたが、現時点では大学を基準として短大・専門学校その他を評価し、学位を授与することにとどまっている。より広い視野の評価機能を作ることを検討しているのか。たとえば、鹿沼市生涯学習大学のような学習機会なども、射程に入れていると解釈してよいか。 |
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学びが社会活動を発展させる有効な手段であるということだが、実際には、社会的な運動をきっかけにして勉強が始まるという逆のケースが多いと思うがどうだろうか。 |
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政経塾は3年目で、熊本大学、熊本県立大学、熊本学園大学の3大学が連携している。最初は単位制を検討したが、現状ではレポート提出、出席率で6割を達成した場合に、知事の修了証を出している。現在、最後まで行く受講生は47%である。修了者には、市町村の審議委員や講師の依頼が来たときに能力に応じて推薦する女性バンクへの登録を勧めている。また起業した修了者には、フォーラムの講演を行ってもらったりしている。 |
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学位授与機構はご指摘のように、大学を国民により開かれたものとするため、学士をとるバイパスとして実現した。生涯学習への幅広い活用は、学位授与検討部など、内部で研究しているところ。例えば具体的には、業界から美容師に学士を出せないか検討してほしいとの要望がある。専門学校・各種学校、鹿沼市の市民大学などの場合に、大学の単位をどうするかということも視野にいれて検討している。外国では、大学の生き残り競争が厳しく、育児に単位を与えている例もある。 |
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長崎では、市の教育委員会が開く講座に大学教員が行って、それを大学側が公開講座の一種として認め、単位を科目等履修生として与えている「3枚看板」の例もある。昭和女子大学では、エクステンションの講座で科目等履修生を認めており、「2枚看板」である。このように、一部には先進的な事例があるが、教育水準が保てるのかという議論もあり、教授会では水準を落とさないようかなり慎重に単位を認めるようである。当機構でも、間口を広げる一方、水準の維持は重要と考える。 |
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私が申し上げた学びは、教えるということであり、活動を始めて実績のある人たちが講師に呼ばれるような場合にアクセントをおいている。学ぶというより、学ぶ場を利用して自分たちの活動の場を広げ、活動の目的を達成している事例である。学習者にキャリアをつけるというより、すでに活動してキャリア形成の道をたどっている人が、さらに拍車をかけて次のステップへ行くということに重点を置いて考えている。 |
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我々は、中央大学主催、NPO主催の双方により、失業者対策として職業能力訓練の講座を組んだ。利用者は両者で異なり、大学主催講座は専門的知識を深めたい人が多く、生き方を変えるということではない。この講座の評判は、必ずしもよくなかった。NPO主催の講座は実践に徹し、仕事おこしや社会貢献、キャリアの像を示して、非常に好評だった。 |
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NPOの場合、教えることで新しいチャンスをつかむという意味合いがある。専門家が教えるだけでなく、教えるという場に関わることでキャリアをステップアップするというのが生涯学習社会では重要だと思う。 |
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レポートを書くために議論しているのだが、いろいろな情報をいただき、混乱している。生涯学習政策局のテリトリーにある機関のイベントにお金を出すのか、多少越権的によそと連携することも含むのかという、機関、組織、制度の面からアプローチしていると思う。まず、個人の多様なキャリアを先に書いて、そこへどういう支援がありうるか。そして、いろいろな支援策があるが、断面を切るとワンストップセンターが必要であり、縦断して切ると大学と地域の連携になるといった絵を最初に示さないと、要素が多すぎて議論がしにくいと思う。 |
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地域貢献特別事業は、国立大学の予算の補填措置であり、書いても仕方ないと思う。機関を支援するのではない。 |
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熊本県の政経塾は無料であるが、大学は無料でない。最終的に熊本県立大学の学生が、授業料を払わずにパレオで単位を受けるということはできないので、過渡的な事業としかいえない。なぜパレオが無料で県立大学がそうでないのか、議論が必要。若い人々や女性を支援するため、自治体のサービスとして事業を提供することについて、議論しなければならない。 |
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4つのセンターが一緒になってワンストップサービスを提供することは大切だが、その次に何か新しい事業が出てきたのか、教えていただきたい。 |
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3000円ほど資料代のみ徴収しているが、将来、きちんと料金をとることは考えている。単位認定ができなかったのも、50000円かそれ以上と、金額が高すぎるという問題があったためである。 |
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新しい事業としては、NWECからの財源を受けて行っている「パレアフェスタ2003」がある。チャレンジ支援で成功した人たちを土俵にあげて、館全体で取り組みたい。また、センターを使って、県民が何をしたいかサポーターを募集し、昨年は100名強に研修を行った。提案された項目は、主に企画、情報発信、託児事業、NPO・ボランティアの講師があり、今年度も新たに人を受け入れてやっていく。また、広報については、センター間で互いに関連するものは載せるよう、プロジェクトチームを作って取組んでいる。 |
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前年の受講者で、企業おこし、市会議員、農業委員など、スキルアップを図った人に、翌年の講師をしてもらっている。 |
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4つのセンターがコーディネートされて、例えば生涯学習センターで学んだことが仕事支援センターへ生かせるなどというのが、ヒントになると思う。大学でも単に教えるだけでなく、このセンターのように、仕事、地域貢献などへコーディネートができればよい。 |
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県民のみのサービスを提供する機能会社か、利益をあげて市場で生き残れる事業会社とみるかで、評価が違う。あるいは機能会社から事業会社への過渡期とするか、モデル例としては、どちらを考えているのだろうか。 |
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熊本県はおもしろい試みであるが、怖いのは、再就職などに役立ったかどうか、市場で成果を問われることである。評価を問われるという課題も考える必要がある。 |
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この懇談会で議論しているワンストップセンターは、内閣府のチャレンジ支援とリンクをとることを考えているか。 |
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内閣府は情報のワンストップサービス化に焦点をあて、どこからでもアクセスできることを目指している。我々としては、明確には内閣府を意識しておらず、学習相談、学習プログラム提供など、総合的な支援を行うワンストップセンターというイメージである。 |
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熊本県の講座は無料であるが、さらに講座を拡大する時はどうするのか。 |
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また熊本には大きい大学のエクステンションセンターがないから事業ができるという面もあるのではないか。 |
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講座の人数は30人くらいだが、制限はしているか。一人がいくつも講座をとってよいのか。 |
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30人といっても部屋には50人近く入れるので、最大限受け入れている。受講時は第1希望、第2希望を出してもらい、なるべく複数受講はせず、多くの方に門を開いている。ただし起業講座だけは、基礎・応用編の双方が必要なので、希望すれば2つとれる。本年度は、政経塾の出前講座を、熊本市から1時間半ほどかかり遠い人吉市で行っている。通信講座も開いているが、出前講座の要望が高かった。 |
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予算については、見直し、評価を常に行っており、県の事業すべてについて評価の報告の冊子をまとめている。また、社会人キャリアアップ事業と組んで行っている講座は、会社のトップが委員に入っている。お金を払ってでも来たい内容がないと、受講者が翌年来なくなるので、努力している。利用者のキャリアに生かす成果は出ている。 |
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前回、生涯学習を大学まるごと請け負うという仮説があり、私はそれについて議論が必要と申し上げたが、大学が生涯学習の核となる必要はない。熊本では、大学やエクステンションでなく、県が中心となっている。数年後には、NPOが中心となってコーディネートして、生涯学習に関して大学よりもいいものができる可能性がある。大学は一方的に教育を与えるだけだが、NPOであれば教える側に立てるなど色々可能性がある。さらに大学生がこのような講座をとって、単位をとってもよい。大学を生涯学習のコアとする可能性は、引っ込めてもよいと思う。 |
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熊本の事例はいろいろな示唆を与えてくれているが、継続的な県民サービスとして成立するには課題も多い。いまは講座の数が少ないが、学生がここで単位を積算できるようになれば問題もあるだろう。まだ、十分に成熟しているとはいえないと思う。 |
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無償の社会教育事業は、極端に言えば公共事業である。ある放送利用の公開講座の場合、事業を毎年見直すこととしたが、実際には国は費用がかかっても十数年続けている。朝5時の放送で、数少ないリピーターのみが無料で見ている。こういうサービスは市場にはなじまず、公的サービスとして提供すべきであり、大学にはできないことである。県にも無理であり、間にあるネットワークが何かやらなければならないと思うが、どういう展望があるか。 |
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我々のエクステンションセンターでは10回の連続講座で24,000円をとって、十分ペイしている。熊本では、費用をとるなら50,000円以上かかるというが、それを全部県が負担すると、公共投資事業になってしまい、今の形で継続的に行うには無理がかかっていると思う。 |
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パレアの在り方は非常にいいと思う。学び、活動し、教えるということがサークルになって進むのが生涯学習社会であり、それが1つの場所でできる。エクステンションでは大学教員が2〜3万の給料でやっていると思うが、県民カレッジの講師はよそから来てもらうのでこの金額では無理だろう。スパイラルを実現する場は、生涯学習とマッチしており、それと大学がうまく連携するとよい。パレアなどで大学の教授なしで講座を運営するのは難しいだろうし、大学は大学で値打ちがある。 |
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50,000円というのは大学の単位料で、予算はもっと少ない。NPOによる運営は将来検討しており、将来は館自体もNPOが運営できるのではないかと思う。今はNPOに対して事業企画書を出させ、高齢者や子育ての問題にも取組んでいるが、NPOも力をつけてきている。 |
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生涯学習も、公共投資として支援すべきである。大学の授業料を私的に払うことや、国立と私立で投入する税の格差、中高年の女性に投資がないことなど、論理構成が必要。 |
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自分は、講師として呼ばれる側だが、決められた時間だけ話して最後に質問を受けるだけという一方的なものになりがちである。実際は聞きたい人が多いのであり、最近は電子メールで質問を受けることもできるが、もっと受身でないシステムが必要であり、何かいい考えはないだろうか。 |
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フォーラムでは、団体がそれぞれのテーマでワークショップを開くとき、基調講演はいただくがその後は自分達の発表をするという形式をとっている。セミナーでは、子育てをする母親など、一人でこもっていると情報がないが、色々出かける人は情報を持っており、ロの字型に座り、仲間が仲間に答えを教えていく。県民カレッジでアンケートをとると、聞くだけにしてほしいという人もいるが、行動する人を作るために講座を分けて、主体的に関わるものが増えてきている。 |
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自治体の生涯学習の現場で、一番困っているのは成果の活用の場である。成果をシェアする場がなかなか見つからない。県や市町村で人材バンクも作っているが、ほとんど使われ図、やる気をなくしてしまう。人間は、フェイス・ツー・フェイス、口こみでないと信用できないため、ITのデータベースは活用できない。行政サイドがマッチングをすると、その人にお墨付きを与えることになるので、そこまでは責任が取れず二の足を踏んでしまう。 |
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「教える〜学ぶ」というスパイラルは、1つのいいやり方である。キーパーソンをグレードアップして社会的な仕組みにできれば、地域でどこでもできるようになるのではないか。何かイメージがあればご助言いただきたい。 |
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高校で、地域向けの講座を開いているケースがある。高校の先生が郷土史を教えたあとで、地域の古老や卒業生が出てくるなど、一種のティームティーチングの試みをしているが、大学でも教員と卒業生が組むなど、こういう取組みができないだろうか。 |
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キーパーソンは非常に大切であると思う。フリーターの問題など、物を考えずに世の中に出てしまう人が多いが、何か感化を与える出会いがあるかどうかが大きい。初等中等教育では先生の役割が大きい。フリーターの道に入ってしまった人は、なかなか学習の場に出てこない。在学中の若いうちから、感化させる仕組みができないだろうか。学校の先生だけでできなければ、職業人が教育の場に出て行くことなどをさらに進めてもよい。 |
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報告で申し上げたDさんは、県の地域づくりアドバイザーの資格で活躍している。離婚経験があり子育て中に悶々としていたことがあり、女性の視点でタウン誌を作っていた。農業委員を増やすなど、いろいろな活動をしている。資格認定があるとよいと、私も思う。 |
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相談を受けに来る人にとっては、自分を受け入れてくれる人がいるのが重要。企業でキャリアアドバイスをしていても、リピーターがスタッフの指名をしてくる。相談施設には、施設費と人件費がかかるので民間には非常に難しい。講師料はうまく割り振ってもいいと思うが、相談できる人や施設のスペースに要する費用は税でまかなうのがよいと思う。 |
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今後は、スタッフが利用者個人のニーズにこたえる体制を作り、また利用者の毎年変化するニーズに対応したソフトの開発を続けるなど、事業のマネジメントが求められるが、そこがうまくいけば、長く続けられると思う。 |
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大学評価・学位授与機構は、本来は学位授与機構としてできたものである。大学評価が先行している印象があるが、今も多数の人が学位を受けているのか。また、大学評価と学位授与は両方並行した仕組みになっているのか。 |
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学位授与は継続、発展している。大学評価は、将来的には学位授与と融合しうるが、今のところは2つをあわせた検討には至っていない。 |