今後の家庭教育支援の充実についての懇談会
2002/05/15今後の家庭教育支援の充実についての懇談会(平成14年度 第2回)議事要旨 |
今後の家庭教育支援の充実についての懇談会
(平成14年度 第2回)議事要旨
1.日 時: | 平成14年5月15日(水)14:00〜16:00 | ||||||
2.場 所: | 文部科学省分館201・202特別会議室(旧国立教育会館) | ||||||
3.出席者: |
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4.議 題: | (1)徳永氏からのヒアリング (2)最終報告構成案の検討 (3)その他 |
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5.議 事: |
・ | 事務局より配布資料について説明があった。 |
<児童虐待の現状と課題についての発表について>
○ | 徳永家族問題相談室長の徳永雅子氏より,児童虐待の現状と課題について配付資料に沿って説明があった。(概要は以下のとおり)
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○ | 失業率と虐待数との相関関係はどうなのか。 |
○ | 失業率と虐待の発生との関係についての調査はない。しかしながら,失業,転職,収入減は虐待の発生要因の一つであり,リスクが高くなっていると考えている。 |
○ | 新生児訪問指導は第1子全員に行うということであるが,第2子以降はコスト的なことで実施できないのか,それとも他の理由で必要ないと考えられているのか。 |
○ | 新生児訪問指導は原則として第1子だが,第2子でも,妊娠や出産のときに何かトラブルがあったり,希望があれば行うことができる。しかし,コストの問題があり,予算がなくなったことを理由に第1子についても全員に対しては行わないという市町村もある。保健部門の予算が限られているので,希望者を募って,希望しない人は行わないという市町村もある。しかし,訪問を希望しない人は,虐待のリスクが高いため,希望しない人も第1子は全員訪問するという仕組みに変えないと,本当に訪問が必要な人にあたらないのではないかと思う。この辺は,もう少し予算面の充実などをして,研修や新生児訪問指導員の費用に充ててほしいと思う。 |
○ | 同じ悩みを持っている,同様な年令の子どもを育てている家庭が地域で横につながっていると,いろいろな家族,いろいろな親子関係があるということがわかって,夫婦関係や子どものことがわかるので,問題を抱えている家族をネットワークの中にどう組み込んでいくかということが非常に大事だと思う。グループセラピーやグループカウンセリングなどは非常に大事だと思うが,相談に訪れた家族をどのようにグループの中に入れていくのか。また,虐待と関係ない地域のコミュニティの中にそういう家族を入れて,一緒になってやっていくといった具体的な処方箋のようなものがあれば,お聞かせ願いたい。 |
○ | グループセラピーは,アルコール依存症の人たちが自助グループに出て自分の問題を語るなどして同じ仲間と出会うという形のグループミーティングに似ているものである。対象者は子どもが嫌いだとか,育てたくないとか,叩いてしまうといった悩みを既に抱えていて,健診や訪問などによって把握する。すぐにグループにつなぐことは難しく,しばらくは保健師が個別に相談を受けながら,母親の気持ちを聞いて,解きほぐしながら,母親が抱えている課題というのは何なのかということを一緒に考え,自分の抱えている問題に気づいたら,こういう問題で悩んでいる人はあなただけではなく,そういうグループでお話しする場がありますよということで,丁寧にかかわってグループセラピーにつないでいくことが重要である。 |
○ | 各保健所等では保健師の割り振りをどのようにしているのか。また,虐待はともすれば特殊な家庭での出来事というように考えがちだが,誰にでもありうることなのか,それとも,ある種の特異な部分に限定されていて,最近だんだん見えてきている途中というものなのか。 |
○ | 保健師の配属は自治体の判断によるものである。多くの自治体では高齢者対策に重点を置いているため,母子保健担当者としては若手のこれからという人が配属されており,人材が育っていないという現状にある。一方,母親たちはいろいろな知識を仕入れており,適切に対応していくためには,研修などによって保健師の人材育成をしていかなければならないと思う。 また,虐待は特別の家庭でのみ起こるのかという点については,高学歴で経済的にも豊かな家庭であっても虐待は起こり得るので,普通の家庭でも起こると思われる。ただし,発生要因としては,過去に親自身が何か課題を抱えている場合や,子どもと早期に分離されて愛着形成が行われていない場合や,産みたくなくて子どもを産んでしまったという場合がある。もう一つは家庭基盤の問題で,失業などの経済問題が大きい。ギャンブル,アルコールや薬物などの嗜癖問題が絡んでいたり,離婚の問題が起きていたり,DV(ドメスティックバイオレンス)があるなど家庭基盤が脆弱になっている。それに加えて,社会的な孤立で身近に相談する人や助けてくれる人がいないという人がいる。一般的に普通の家庭に起こっている問題の背景としては社会的孤立が非常に進んでいるということも考えられ,私達のちょっとした働きかけによって親はホッとすることもできる。 |
○ | 児童虐待防止法ができ,保護される子どもたちの数が大変多くなった影響で,児童養護施設は大変な状態にあり,児童福祉職員は寝る時間もないくらいに人手が足りない。これは民間の意見で変えることができると思う。児童虐待防止法もかなりの反対に遭ったが,マスコミがどんどん書いてくれたので,法律の成立を認めざるをえないような雰囲気になった。 こどもの日にあわせて「チャイルドライン」というのを実施したが,親からの電話相談というのがかなりあった。親がすごく悩みを持っている。その悩みをどこにぶつけたらよいのか分からない。悩んでいる親の姿,子どもの姿が目に見えていればよいが,親自身も引きこもって虐待をしてしまうという悪循環になっている。親を引きこもりから出していく場作りをすることも一つの課題だと思う。 |
○ | 子育てネットワークで,「お母さんのはぁとタイム」という,臨床心理士やグループカウンセリングを経験してきたスタッフが入り,母子分離で,グループで育児不安を話し合う比較的軽度な育児不安に対応する事業を行っているが,非常に効果を上げている。その評判を聞いて,地域の保健所でも同様の事業を同じメンバーでやり始めたところである。同じ方法のものを社会教育の分野と保健の領域で行った場合,参加者の意識も違ってくる。保育についても保健師が子どもの様子をつぶさに観察をしてしまう。今,グレーゾーンからブラックに変わっていく人を食い止める事業が一番求められているが,なかなか広がっていかない。専門家から見ると,民間の人がやるとどうも危なっかしく見えてしまうようなところもあるようで広げ方が難しいが,1地域でも多くの地域でやってほしいと思っているところであり,そのあたりの可能性をどのように感じているか。 |
○ | 母親が悩みを話せる場はいろんなところにあってよいし,できる人がそれをやればよいと思う。ぜひとも社会教育の分野でもそのようなグループミーティングをやっていただきたい。 ただし,保健師の役割意識が強く出るやり方は適当ではなく,あまりいろいろとチェックをせずに,トータルな子どもの成長を目指して,もう少しポジティブに見ていけばよいと思う。保健師はどうしても何か問題はないかというネガティブな見方をしてしまうので,そのあたりも変えていかなくてはならないと思う。 |
○ | できちゃった結婚で若年層が親になると,実家に依存する率が高くなって危うさがあるという話だが,もう少し詳しく説明してほしい。 |
○ | 自立という考え方が乏しいことと,経済的にも自立ができていないことから,自分の親の世代の干渉の下に子育てをしている。いろいろなサポートがあることはよいが,親としての危うさがあるため,外の社会とふれ合わせる必要があるのではないか。 <最終報告構成案の検討> ・事務局から最終報告構成案について説明があった。委員の主な意見は以下のとおり。 |
○ | 「今,何が問題になっているの?」というところに育児不安のデータを載せてほしい。育児不安が非常に大きくなっており,親を支援するための報告案なのだということがもう少し伝わるようにしてほしい。 |
○ | 不登校のデータを非行や暴力と同じレベルで並べることは適切ではないのではないか。 |
○ | マンガを使うなどしているが,まだ堅いと思う。家庭教育支援をしたいと思っている人と支援をしてほしいと思っている人の両方が読むことを想定した場合に,いきなり「家庭教育って?」という定義から入るのではなく,例えば,「あなたはひょっとして,子どもって親が育てるものだと思っていない?実はね,あなたが育てるの。」といったイントロで良いと思う。背景説明や理由というのは,今まで話し合ってきたことをもとにわかりやすくまとめた点は評価できるが,もう少し読ませる工夫として分割した方がよい。 4枚目の左上の「行政は」というのがあるが,行政のPRパンフレットのようなイメージがあるので,「中学生,高校生である君たちへ」という感じで,それぞれのターゲットごとに,ばらした方がわかりやすい。 また具体的な事例については,NPO事業サポートセンターが「子育て支援NPO設立&活動ハンドブック」というものを作成しているので改めて調べるよりそれらにつけ加えるなど省力化してはどうかと思う。 |
○ | 内容的に見ると,誰に読ませるかということがはっきりしていない。「家庭教育とは」から入るのではなくて,子育てに悩んでいる人を支えるということが大事であり,それを支える人には「あなたが主役である」ということで,親だけではなくて,地域の人,企業の人,みんなに読んでもらわなくてはならない。そうなると,書き出しの振り方にもう一工夫必要かと思う。 |
○ | 冒頭の部分は,メインコピーの言葉が決まれば自然と固まっていくのではないか。メインコピーの後に家庭教育って本来こうなんだけど,今何が問題になっているといった展開にしてはどうか。 |
○ | 「社会の宝としての子どもを育てることが必要」というのが最初にあるのがよい。家庭教育の説明については,「家庭教育」という言葉と「家庭学習」という言葉と混同している親世代が多くいるので,正確に入れてほしい。また,イメージキャラクターを決めて統一して作った方がよい。 |
○ | 中間報告を受けて,イラストを入れた新座版の中間報告を作った。自分たちの仲間や同じ子育てをしている人向けにアレンジして,なるべくわかりやすくまとめようとしたが大変難しかった。あらゆる層に同じように呼びかけるのではなく,ターゲットごとに呼びかけるページがあった方がよいと思う。 |
○ | 「社会の宝として子どもを育てる」というところは特に重要なので,次ページの頭から展開するような形にした方がよい。 「家庭では」,「企業等では」のあとに「地域」を入れた方がよい。また,「地域」のところには「学校」や「家庭」を入れ,行政がそれぞれに対してサポートしていくという形にしてはどうかと思う。 |
○ | どこに力点を置くかという意味での濃淡が足りない。また,子どもにかかわりたいと思っていてもかかわれない父親について触れることは大きいことではないか。 今は不況の時期かもしれないが,経済を復興させることと,20年後,50年後の次世代を育てていくこととには同じ重みがあると考える。次世代を育てることについて,みんなが一生懸命にそれぞれの役割を担っていくべきであり,家事も含めての家族の一員としてもっと過ごしたいと思っている人についても,もっと社会的支援や家族と過ごせるような仕組みを作っていくべきことを大胆に打ち出してもよいのではないか。 |
○ | この家庭教育支援の懇談会を立ち上げたとき,子どもにかかわりたいがかかわれないという人だけではなく,家庭教育に無関心な人たちにも問題提起をしたいという願いがあった。実際に子育てにかかわりながら,悩んでいる親に対するアドバイスとともに,今まで家庭教育に無関心だった人たちに対しても何か問題提起をしていただきたいと考えている。 中教審が新しい教養教育の在り方について答申を出したが,高校生の「必読書30冊」の選定などの具体的な提言があることは,新しい教養教育の在り方を身近なものにさせたと思う。今後の家庭教育に何が必要かということの中に,例えば,読み聞かせや食生活,早寝早起き,挨拶など,注目されていないが最も大切な具体的なものがあってもよいと思う。 |
○ | 今まで家庭教育に関心のなかった人まで含めて関心を持ってもらうようにするということは報告書を濃淡をつけてまとめるということにつながるのではないか。中間報告を出したときにある大学の副学長が「これまでのいろいろな子育て支援関係の報告の中で一番希望が持てる」と言ってくれた。これは,濃淡を付けて議論してまとめたことにより,どこを具体的に叩けばよいか見えてきているのだと思う。今まで子育てにかかわれなかった父親たちをどうやって揺さぶっていくかということも考慮に入れた濃淡を付けたビジュアルなものができたらよいのではないか。 |
○ | 「子育ての社会化」ということがキーワードである。社会化というのは父親,母親だけではなく,地域も企業もみんなが子育てにかかわる当事者であるということをきちんと出すことであり,それが「子どもは社会の宝」という言葉に象徴されていると思う。 また,家庭の中だけで父親をやっていても広がりや面白みがない。家庭の父親であると同時に地域の住民として父親同士が横でつながってグループでお互いに悩みなどを話し合う中で父親として目覚めていったり,市民としての意識が高まっていったりするのではないか。 |
○ | 子ども会といった家庭の外のネットワークには多数の人材がいるので,地域の中で知人が見つかることはリタイヤ後によい結果を生むということをうまく指摘できればと思う。また,一般的に企業というと,経営者,人事部門や組織としての企業を思い浮かべるが,この報告を組合の方にも参考にしてもらうことを考えると,企業という言葉の中に組合も入れた方がよいのではないか。 |
○ | 細かい文言の修正だが,「子育ての負担が親のみに」と書いてあるところを,「母親」のみにと強調してほしい。高度経済成長期から21世紀の少子高齢社会へ飛ぶ間に,バブル崩壊後子育てにかかわりたいけどかかわれない若い父親の出現というものを入れてほしい。また,次ページの「一人で頑張っている親」というのも,特殊な父子家庭を敢えて除き「母親」とした方がよい。「企業等では」においては,父親も含め親が子育てにもっとかかわれる環境づくりとすると,より明確になる。さらに,「職場環境をつくることが大事だね」とした方が濃淡が出ると思われる。 |
・事務局から,次回は5月29日(水)に開く旨の報告があり,閉会となった。 | |
(男女共同参画学習課家庭教育支援室) |
(生涯学習政策局男女共同参画学習課家庭教育支援室)