今後の家庭教育支援の充実についての懇談会
2002/02/07今後の家庭教育支援の充実についての懇談会(第5回)議事要旨 |
今後の家庭教育支援の充実についての懇談会(第5回)議事要旨
1.日 時 | 平成14年2月7日(木)10:30〜13:00 |
2.場 所 | 霞山会館「まつ」(霞山ビル9階) |
3.出席者 | |
(委員) | 大日向座長,門川委員,北村委員,河野委員,坂本委員,嶋崎委員,福内委員,宮崎委員 |
(文部科学省) | 池坊大臣政務官,寺脇大臣官房審議官,名取主任社会教育官 他 |
4.議題 | ||
(1) | 審議のまとめについて | |
(2) | その他 | |
5.議事 | ||
・ | 事務局より本懇談会の議論のまとめ骨子素案について説明があった。 | |
<各委員からの意見> | ||
○ | 教育の原点は家庭教育という文章だが、「倫理観」の次に「社会性」を入れていただきたい。 | |
○ | 「教育の原点は家庭である。」というのはわかるが、「子どもを育てるのは家庭である。」という表現は、子どもを家庭の中だけではなくて、社会の中で育てていこうという方向性と少し異なる気がする。 | |
○ | 親の責任をかなり強調しているところと、社会の支援が重要と記述しているところがある。親の子育ての権利や責任は認めるが、基本的には社会全体でというコンセプトをもっと前に出すべきではないか。 | |
○ | 家庭というものはこういうものだからこういう支援をするのだという論法では、家庭の枠というものを外側から決めてしまう恐れがあるし、「我が家の価値観を作りましょう。」というと、一生懸命子育ての方向を探している家庭では、逆に追い込まれてしまうという懸念がある。家庭はこうなのでということには詳細に言及しないほうがよいのではないか。 | |
○ | 子どもというのは家庭の中で育っていくという大前提はこのまま置いておくべきではないか。社会の実態として、何でもかんでも学校にお願いをしてしまう傾向であったが、基本的にはやはり家庭があり、我が家流の子育て、我が家の価値観というような流れの方がよいような気がする。 | |
○ | 家庭教育は重要であるということと、地域社会のことや支援の方法などを書いていけばよいのではないか。 | |
○ | 教育の原点は家庭だということを育てる方に啓発したいという気持ちがあるが、シングルマザーや養護施設も1つの家庭として捉えている。 | |
○ | 親の責任、家庭の責任を強調することと、親をどう支援していくか、孤立させないかという面の両面が重要である。 | |
○ | 子どもを育てることについての家庭の責任を強く言い過ぎると、子育ての社会化、地域の中で子育てしていこうという機運に逆行しないか。 | |
○ | この骨子案が世の中に出ることによって、本当に親を支援することになるのか、親の首を絞めることになるのか、慎重に考えていかなくてはいけない。親の子育ての責任や権利について言及するが、それ以上に皆で支えていこうというような支援策を打ち出していかないといけない。 | |
○ | 「親世代にとって、子育てが非常に過酷な営みである。」という表現はいかがなものか。 | |
○ | 「乳幼児期の日々の子育てによって形成されることを共通認識にする。」という箇所があるが、こういうものにがんじがらめになっている人に会うことが多い。「だから3歳までは」とか、「5歳までは」といった考え方が形成されがちなので、表現に注意してほしい。 | |
○ | 「育児能力につながる体験の不足」の中に盛り込まれている「商業主義的な面が含まれている」という情報は、情報の収集力、問題の把握力といった能力に関係することで、親としてだけではなく、企業人として仕事をしていても同じである。親としてこれが足りないという表現がよいのか、20代、30代という世代としてそういう部分が足りないとするのかは大きい差なので、少し書き換えることを検討してみたらどうか。 | |
○ | 「手順を踏んだ子育て学習機会の整備」という表現も、支援する方から見ると、きめ細やかに年代によって支援する方がよいということになるが、受ける親の方は敏感になる。今の母親たちは、1歳6ヶ月、3歳はこうでなくちゃいけないといったものに非常に敏感なので、そんなに神経質にならなくてもよいということにも言及すべきである。 | |
○ | 親と書かずに世代と書くと子育て支援が非常に広がる。親だけではなく、子育て支援をしている保育者や、専門職の方など、皆で家庭を支えていこう、子どもが育つ場を支えていこうということにすれば、この懇談会のコンセプトはわかりやすくなるのではないか。 | |
○ | 少子高齢化ということを考えると、子育ては楽しいんだよという雰囲気の文章にした方がよいのではないか。また、共働き家庭への支援という部分はもっと厚くしてはどうか。 先日、PTAの母親達との話で、元気で働く意欲のある退職教師の先生方ともっとコミュニケーションが取れるような場所を作ってほしいという意見があった。上手に場づくりのサポートをしていく人が何人か必要というのは全くそのとおりだと思うので、行政等がそういった人たちのボランティア団体、NPO団体などを作るといったサポートをする取組も必要なのではないか。 |
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○ | 少子化対策という意味では、子どもを産んで子育ては楽しいというムードを伝えた方がよいと思われるかもしれないが、その前に悲惨な状況で子育てをしている人に社会が応援しているんだよという風を送る方が先ではないか。 子育てに関することで地域で何かをするということが、自分自身の社会性の復権につながり、エンパワーメントしていくということにつながったりするということを具体的にこの中に盛り込めると、非常に勇気づけることになるのではないか。学びを通して自分が育つといったところがもっと前面に出てくるとよい。 |
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○ | キャリア相談、キャリアアドバイスという事業の中で働いている男女の声を分析したが、今まで育児ノイローゼは出ていない。子どもを持っている人達については、子どもを持つことの意義の大きさや、2人目をいつ産めるのか、転勤駐在で別居になった時の子どもの養育・教育が心配などといった声が多い。つらいのは自分が眠れないとか、仕事が忙しいとか、昇格できなかったなどである。男性については、仕事が忙しくて子育てしたいけどできないと言うのが実情であり、ファミリーで子育てをするのだという意識がはっきり出ている。したがって、バランスをよくし、バリエーションを出した方がよい。 | |
○ | イメージしている家庭の多様性になるのだと思うが、共通して言えるのは、母親が軸に取り上げられていて、父親についての言及が少ないということである。また、一番遅れているのは企業の管理職ではないか。 | |
○ | 子育ては「苦楽(くるたの)しい」と言えるのではないか。 | |
○ | 今の若いマニュアル世代の人達にこういう情報を出す時は、概要論でまとめたものは受け付けられないので、具体策が必要である。例えば、学校の保護者会や学習会に是非参加してほしいのに参加してもらえないといった親にアプローチしていくことが必要であることはわかっていることだが、ではどういうふうにアプローチしたらよいのかという具体案がほしいというのが現場の生の声である。 | |
○ | 具体的にはどういう形でアウトプットすることになるのか。 | |
○ | いろいろな形を考えている。1つは3月20日に大勢の親御さんに集まっていただく家庭教育フェスタ2002である。報告書の形のものとともに、一般の方にも読みやすいようなものにすることを考えている。 | |
○ | 実際に子育てをしている年齢の人が対象になるということか。 | |
○ | そういった方々のほか、行政関係や経済団体などにも送って、支援をしていく行政関係者や、周囲の人間、企業関係者などにもきちんと届くようにし、社会へのメッセージというようなものにすることを考えたい。 | |
○ | 今こういう時代でこういうことが必要だという、ものの考え方の部分と、ついてはこういうことをしたらどうだというマニュアルの部分とに整理する必要がある。 | |
○ | マニュアルの部分は実際に活動している人が見ると役立つが、考え方の部分は、むしろ周囲の人間がよく知らなければいけないというところがあると思う。 | |
○ | 家庭教育とは基本的に何かということをまず出し、次に、現状の問題点、支援はどうあるべきかを出し、さらに具体的なマニュアルをつけるという形にしたい。 | |
○ | 企業も視野に入れるのであれば、現在の雇用環境、経済環境に全く触れないと、絵に描いた餅と思われるのではないか。企業も経営者も家庭教育の重要性ということはわかっているが、もう一歩踏み込んだものを読みたいと思っている。企業の厳しい実情を理解しないと受け入れられないのではないか。 | |
○ | 一般的に少子化の問題というのは、消費者が減って、生産者が減って、次は生産を支える上の世代が減ってという観点ばかりが目に付くが、本当に皆が苦しい時にこそ、着実にこういうことをしていくべきであるというくだりがあってもよいのではないか。 | |
○ | 「子育ての当事者に軸をおいて施策を進める」ということに関してだが、地域で家庭教育支援をすると、すでに子育てを通過し終わった人ばかりが集まって、実際に子育て中の方のリアリティが非常に薄れる。物事を決めたり考えていく過程に赤ちゃん連れのお母さん達を入れて、その人達の声を聞く場所を作るということを入れていただきたい。 「省内または関係機関にサポートセンターのようなセクションを設け、子育てネットワークの構築支援や各種事業を展開するための細やかな支援を提供すべきである」とあるが、地域の家庭教育担当者が子育て支援とクロスオーバーするような家庭教育支援のプログラムがわからないという現実があり、広報啓発だけをやっていたのでは全く追いつかない。21世紀の大きな課題だと思うので、これをきっかけに腰を据えて取り組むような体制づくりをしていただきたい。 |
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○ | 「子育て支援は親育て支援」の「親育て」と言われると、若い親御さんは抵抗を感じてしまうのではないか。 | |
○ | 若い母親が子育て支援の場に行ったら、年輩の人が今の若い人は全くだめだから教育し直してやると言って、めげてしまったという話を時々聞く。支援者側からすると、いろいろとわからなくて迷っている母親を育てていくことで、親も成長してもらうという意味で「親育て支援」という言葉を使うのだが、抵抗がある人もいるかもしれない。なぜその親が育っていけないのかということを考えると、親の人生を支援していくことで、最終的には親も育っていくのだというような、もう一段階前のコンセプトの注入も必要かなという気がした。 | |
○ | ボーイスカウトなどの子育て支援の組織は大学生程度の年令の指導者が枯渇し、運営自体が非常に厳しくなり減っているので、新しい支援策を考える必要がある。 | |
○ | 母親達が自力で市区町村単位で子育てネットワークを作り始めているところは、大きな可能性があると思うので、それを応援していく体制というのを是非入れていただきたい。その中に行政が先走りせずバランスをとりながら、上手に市民と協働してつくっていく難しさのようなものがある。「子育てネットワーク」という言葉と「子育て支援ネットワーク」という言葉があり、行政から出てくるものには子育て「支援」という言葉が必ず入っている傾向にある。市民側が考えている子育てネットワークというものは子育てをしている家族をつなぐネットワークであり、この中に行政も地域の専門機関も入っているが、「子育て支援ネットワーク」というと行政の中の関係機関のネットワークに終わってしまうことがある。 | |
○ | 行政のネットワークと市民のネットワークと両方を書いた方がよいのではないか。厚生労働省が助成しているファミリーサポートセンターなどでは、連携によって人間関係ができている人もいる。 | |
○ | 地域のお母さん達がネットワークを作ろうとして行政に相談に行った際に、NPO的な団体を作った方が行政から支援をしやすいというようなことを言われていると聞いたことがある。これが事実であれば、NPO団体のような形でネットワークを作っていくべきだと書くべきではないか。 | |
○ | 子育てを支援している団体、保育グループなど、行政が安心して委託できるようなグループにNPO化の話をすることは非常に多いようであるが、今生まれ始めている市区町村単位の子育てネットワークにNPO化を要求してもクリアできるようなところはほとんどないのではないか。もっとも、ある程度歴史があって組織ができあがっているところの中には、一歩踏み込んで自分たちからそういうNPOなどの団体になっていこうとしているところもある。 | |
○ | 行政の側がNPO法人でなければ対応しないということはあってはならないことである。ただし、行政による委託や補助金のような形で税金の支出額が大きくなってきた時に、NPO法人の方が例えば議会で予算支出の承認を受けやすいというようなことがあるので、NPO法人化を勧めるということはあるかと思う。 NPO法人化については、行政の側も理解が浅く、窮屈と思われがちだが、緩やかなものである。国としても3月に全国の自治体などに集まっていただき、NPOに対する理解をさらに深めてもらうようにしている。 |
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○ | 私の所属している研究所において、30代から40代の父親にお聞きした「あなたはどういうことに幸せというのを実感しますか。」という項目の中では、家族や子どもがうまく育っているとか、家族がうまく過ごせているという項目が圧倒的に多いのに驚いた。物事を「ビジネスゾーン」と「ファミリーゾーン」の2極で考えるのではなく、「パーソナルゾーン」という第3のゾーンを作ると、皆結構ハッピーになれるのではないか。父親について、もっと家族と一緒に過ごせると家庭の教育力というものが自ずと高まっていくという意味で言及していただきたい。 | |
○ | ライフスタイルによって育児課題が全く違うことを認識した上で、サポートが必要と言うことは重要だと思う。 「家庭教育のためのワークシェアリング」という表現があるが、今、若い父親がもっと家庭というものを重視したいのに時間がないという現実の中では、とてもインパクトのある表現であると思う反面、各企業において簡単にできるものではないと思う。 |
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○ | 子育てを大人社会全体の問題として皆で考えないといけないが、その中では日本社会では企業の役割が大きいと思っている。 | |
○ | 今の中小企業の現状では、ワークシェアリングしなければならない状態に追い込まれているということもある。 | |
○ | 社会の構造の中で子育てをもう一度評価し直すという構造的な指摘をしないと、なかなか説得できない。家庭教育支援という場を借りてこれからの時代について言及するようなところがあると思うので、そういう味が出せたらよい。 | |
○ | この不況と、家庭、子育てをリンクさせるということは、男性や今働くことにほとんどの生活を奪われている人たちの生き方を変える大きなターニングポイントにもできるのではないか。 | |
○ | 子育ては苦しいことばかりではなく、楽しいのだというところにうまく落として到着できるのではないか。そうすれば、例えば幼稚園にお母さん先生だけでなく、父親も入ってもよいのではないか。 | |
○ | 今年の4月1日から完全学校週5日制になって、子どもたちができた時間に塾へ行って家庭の負担を増やすというよりは、地域の教育に戻すというような流れを入れていった方がよいのではないか。 | |
・ | 事務局から、次回は3月1日(金)に開催する旨の報告があり、閉会となった。 | |
(男女共同参画学習課家庭教育支援室) |
(生涯学習政策局男女共同参画学習課)