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今後の家庭教育支援の充実についての懇談会

2001/11/21
今後の家庭教育支援の充実についての懇談会(第3回)議事要旨

今後の家庭教育支援の充実についての懇談会(第3回)議事要旨

 

1.日   時    平成13年11月21日(水) 16:00〜17:30
       
2.場   所  霞山会館「たけ」(霞山ビル9階)
       
3.出席者    
   (委員) 河合座長,大下委員,河野委員,兒玉委員,坂本委員,嶋崎委員,福内委員,宮崎委員
   (文部科学省) 池坊大臣政務官,近藤生涯学習政策局長,寺脇大臣官房審議官,名取主任社会教育官 他
   (事例発表者) 石井氏(伊丹市教育委員会生涯学習部家庭教育推進担当主幹)林氏(伊丹市PTA連合会事務局長,伊丹市家庭教育推進連携支援委員会委員長)
4.議題
    (1) 学習機会の充実のための方策について
・子どもの発達段階に応じた学習内容の充実
・家庭教育に関する資料等(「家庭教育手帳」,「家庭教育ノート」,「家庭教育ビデオ」)を学習教材として活用するための方策
・参加を呼びかける方法 など
    (2) その他
 
5.議事
    ・事務局より配布資料について説明があった。
     
<事例発表について>
    ○     伊丹市教育委員会の石井氏より,伊丹市における家庭教育支援について配付資料に沿って説明があった。(概要は以下のとおり)
        伊丹市では,青少年問題の解決の上では家庭教育に最も根元的な問題があるという観点から,緊急的な課題として家庭教育問題に取り組むために,昨年10月に教育委員会の中に家庭教育推進班を設置した。家庭教育を進める上で大事なことは,子育て支援ということだけではなく,親の在り方,親の倫理観を問うことが求められていると判断し,家庭教育についての4つの柱を立てて,「3カ年プラン実践計画」という計画を作り,「伊丹の未来を担う人づくり・まちづくり」という視点に立って家庭教育支援を推進している。
       伊丹市における子育て支援としては,各種の制度に基づき,経済的な援助,問題を有する家庭に対する保護,子育てについての相談,子どもの成長段階に応じた子育て支援の学習会などの行政サービスが提供されているとともに,育児グループや子育てのネットワークも多く存在している。
       こうした中で家庭教育の充実を根本的に図るべきとの市民の熱い要望を受け,社会の変化,家族の変化,価値観の変化などにより構造的に発生してきている問題は行政サービスでは解決できないという考え方の下,家庭教育の大切さ,つまり教育の原点は家庭にあるという考え方を市民一人一人が自覚し,自分の問題として取り組んでいくための仕組みづくりが必要と考えた。
       そこで,市民運動として取り組むための中核になる「家庭教育推進連携支援委員会」という,実践に参画し,協働してもらう組織を多くの団体の協力を得て作っていった。
       また,「家庭教育推進ボランティア」という制度を発足させ,公募や推薦により,教員や,医師,カウンセラー,子育て経験のある主婦など70名程度の方に参加してもらっているとともに,市民全体への浸透を図るため,自治会やPTA,子ども会などの団体に「すこやか家庭」育成委託事業を委託し,各地域における拠点づくりをしている。
       さらに,「家庭教育井戸端会議」を市内10カ所に設け,地域における人と人とのつながりができるようなネットワークづくりを進めている。
       また,市民全体が共同で実践をしていく機会として,毎月第3日曜日を伊丹市「家庭の日」として設定し,市民ぐるみで実践したり,家庭教育市民フォーラム等の啓発事業を実施したりしている。 ・このほか,すべての小学校の体験入学の際に人形劇の手法を使いながら家庭教育学級を実施するとともに,公民館とタイアップして家庭教育講座を実施している。
       なかなか事業に参加してくれない親をどうするのかという問題があるが,そうした家庭に焦点化すると,特別な家庭を支援するものだといった理解をされる恐れがあるので,3カ年計画を進める中でアプローチしていきたいと考えている。
       子育て中の親はノウハウや人との触れ合いの場を求めており,まだ細かなニーズに応えられていないミスマッチの部分もあると感じているが,評価をしながら修正を加えて進めていきたいと考えている。
     
        続いて,伊丹市PTA連合会事務局長,家庭教育推進連携支援委員会委員長の林氏による説明があった。(概要は以下のとおり)
       伊丹市家庭教育推進連携支援委員会は,中学校の教員や校長の代表など市内にある33団体の代表者で組織されており,その実践内容により,市民啓発部会,実践・交流部会,家庭教育学級の部会の3つの部会に分かれている。
       林氏が部会長になっている市民啓発部会では,これまでに市民フォーラムを2回実施している。1回目のフォーラムは,今年の1月に家庭教育をいかに進めるかについてのパネルディスカッションを行った。2回目のフォーラムは10月に,「ここがヘンだよ,家庭教育」というテーマで中学生の演劇クラブのコントも交え,会場の参加者とパネリストとの討論会のような形で行ったところ,会場からも大いに手が上がり,盛り上がった。
       「家庭の日」については,9月から毎月の第3日曜日を「だんらんホリデー」と名付け,市内各所に横断幕やのぼりを掲げたり,ビラを配ることで,市民への啓発を図っているとともに,こども文化科学館などの施設を無料開放してもらったところ,親子による利用も増えている。
     
<質疑応答及び意見交換>
       自発的にこういった活動に参加しない人たちが参加するように誘導するための仕組みは考えているのか。
     
       最初から,課題を抱えている家庭や,行政に頼らなくてはいけない一部の家庭に焦点をあててしまうと,カウンセリングや,困っている子どもや親に対する相談が家庭教育支援の中心と思われる恐れがあるので,それを避け,市民全体の運動として盛り上げるために,お年寄りも含め,家庭の問題はそれぞれ市民一人ひとりのテーマなんだという働きかけをしている。 具体的に何か自分でやらなくてはいけないという空気を作りながら,全体の気運を高め,その上で,課題を持っている家庭,参加しない家庭,無関心な家庭をその流れに引き込んでいくというのが基本路線である。ただし,就学前の子どもを持つすべての家庭を対象とした「草の根家庭教育学級」の実施など,できるところから参加しない親をターゲットとした取組もすすめている。
     
       「だんらんホリデー」という愛称はよいと思うが,市民を対象とする認知調査のようなものはしているのか。また,この事業全体を人づくり,まちづくりまで広げるということだが,教育現場や家庭だけではなくて,地域の産業界との連携なども具体的に考えているのか。
     
       「だんらんホリデー」という愛称は,子どものいる家庭にはある程度浸透しているが,子どものいない家庭などにはまだ浸透していないと思っている。 地域との連携については,例えば,お祭りなどの地域活動を「だんらんホリデー」に合わせて実施してもらうことなどを要望することを考えている。
     
       学校は地域に住んでいる人々全員の関心の対象になるべきであるが,子どもが小学校,中学校を卒業してしまうと,親も,子どもの教育は終わり自分も卒業したと感じてしまうので,学校に在籍している家庭の親しか関心を持たない。子どもが学校に行っている家庭も,学校を卒業した子どもを持つ家庭も,地域社会の一員として学校に関心を持ち続けていく仕組みが大事だと思うが,子どもの教育に直接的な関係のない団体などはどのようにして子どもとかかわっていってもらうようにするのかについての具体的な方策を教えてほしい。
     
       難しい問題であるが,青年会議所やライオンズクラブといった団体の代表の方に家庭教育推進連携支援委員会に参加していただいている。また,兵庫県では,中学生が1週間就労体験を行う「トライやるウイーク」や,小学校単位で3世代が交流できるスポーツクラブを作っていく「スポーツクラブ21」などの事業を実施しており,こうした場を上手に利用していけばよいのではないかと考えている。
     
       社会人の人材育成をする上で働くモラルの問題は大変重要だと思っており,親の倫理観からの切り口に大変共感した。
   親である人のための教育機会はあるようであるが,独身者や親になる直前の30代男女を対象とした親になるための教育という観点で,そういった人々に対して家庭教育に関する情報を提供しているのか。独身の方などにも「家庭教育だより」を見てほしいと思うが,配布方法と内容を教えてほしい。
     
       月2回発行の伊丹の広報紙に「だんらんホリデー」に関する記事や「家庭教育の風」というコラムを掲載し,全家庭に配布している。また,「だんらんホリデー」に関する情報を毎月,学校,幼稚園,保育所などを通じて保護者に配布している。子どものいない家庭への「だんらんホリデー」への参加についての働きかけの方法についてはまだ模索しているところであり,「家庭教育だより」は来年度の予算で要求したいと考えている。
     
       現在実施している事業の中で,家庭教育手帳,ノート,家庭教育ビデオを使った実績はあるのか。
     
       「家庭教育手帳」は母子健康手帳と一緒に健康福祉課で配布しており,「家庭教育ノート」は学校で新1年生に渡しているが,今年度から就学前の家庭教育学級の時に配布し,中身に少しずつ触れていけば,家庭教育についての意識づけができるのではないかと考えている。 また,家庭教育手帳の中のデータもよく使っている。
     
       地域の教育力の低下に対する具体の実践で参考になった。伊丹市の人口と世帯数はどれくらいか。私は10年間ほど父親を対象としたアウトドアスクールを実施したことがあり,その際に母子家庭の母親から参加させてほしいという要望があったが,一人暮らしの方などからの参加に関する意見はないのか。また,市の取り組みに対する感想をどう実感しているか。
     
       伊丹市の人口は19万強で,世帯数は約7万であるが,住宅地に近い,歴史の古い町なので,市民ぐるみで取り組みやすい環境にある。一人暮らしの方等の問題は特に聞いていないが,子どもを持たない家庭に対しては,「だんらんホリデー」は市民すべてが参加できる場であるという呼びかけをしており,自治会や各企業にも協力をお願いしている。民間企業や飲食店が「だんらんホリデー」の日は料金を安くするなどの取組をしたり,自治会や老人会,社会教育団体等がこの日にちなんで何か具体的なアクションをしてもらうことを期待している。
   実際,JCやロータリー,ライオンズクラブ,自治会,社会福祉協議会,子ども会,老人会などの団体の青少年問題に関する意識が高まっており,特に奉仕団体には青少年問題について今何かやらなくてはいけないという反応がある。また,子ども文化科学館やローラースケート場、運動公園などの無料開放で,参加する家族が非常に増えている。
     
       家庭教育をサポートするのは学校教育と地域教育である。我々親の世代は家庭教育で困ったことがあれば学校教育に振ってしまっていたが,伊丹市の言われるとおり,原点は,自分たちのことは自分たちでやる,地域のことは地域でやるということであり,地域教育に対するサポートのようなものをもっと充実させなくてはいけないと思う。
   現在,地域で子どもを守っていくという意識がだんだん薄れている。補導員は高齢者以外の方にお願いし,子どもの教育のサポートには地域の高齢者をもっとうまく活用するべきだと思うが,地域の高齢者をうまく活用する方法があれば教えてほしい。
     
       自治会は高齢者が中心になっている。元気なお年寄りが多いので,そのパワーを借りて,何かやっていかなくてはいけないと考えているところであり,「スポーツクラブ21」への参加なども働きかけている。
     
       「家庭教育井戸端会議」のPRや広報はどういう形を使っているのか。
     
       広報紙に毎回開催の記事を掲載してもらっている。また,チラシを作り,小学校・中学校・幼稚園・保育所を通じて各家庭に配布している。協力してもらっているのは子育ての体験をした年輩の人が多い。参加者は市内のどこの会場に行ってもよいようにしている。
     
       幼稚園や学校で子育て支援に関する取組をやっても,そこで終わってしまい,地域のネットワークに発展していかない悩みがある。伊丹市の場合,地域とつながって様々な取り組みをされているが,どのようにしたら地域とつながっていくのか教えてほしい。
     
       家庭教育支援を市民運動として広げていく際の切り口は学校,幼稚園,保育所だと考えた。13年度は,学校がPTAと連携して家庭教育のことを考えてもらうために,学校の中に家庭教育担当というセクションを作ってもらい,各学校の校長と家庭教育担当を集めて教育委員会の担当とディスカッションを行っているが,市民の関心が急速に高まったために,学校の方が取り残されてしまうのではないかという危惧を持っているのが実態である。
   また,各自治会がそれぞれの活動に関する来年度の年間方針を作る中で,家庭教育の問題と学校と家庭の連携の問題を重点事項の1つとして取り上げてもらうように働きかけている。
     
       「だんらんホリデー」のように月1回,地域を巻き込むことにより,全市挙げて企画するのはよいと思う。しかし,来年度から完全学校週5日制が導入され,月4回の土曜日に子どもたちが家庭や地域に帰ってくる際に「だんらんホリデー」のような企画をすることには少し違和感がある。本来,親子のふれあい,親子のだんらんをするのが目的であり,親子のコミュニケーションをうまく取れるような親をまず育てなくてはいけない。また,家庭教育の支援としては親育ての面と子育ての面との二面があると考えるが,その両面に渡っての方策というものはあるのか。
     
       「だんらんホリデー」の特定の事業に参加することだけが「だんらん」ではないので,家族皆で参加するものの選択肢の一つとして,機会があれば行ってくださいという趣旨で情報提供を行っていく考えである。    また,子育てと親育ての問題については,従来教育委員会で所管していた子育て支援事業は,去年機構改革によって作られた市民福祉部のこども室に移行したので,福祉関係の施策と教育委員会の所管する親育てとの連携をどう図っていくのかが今後の課題である。実際,公立の幼稚園に入れなかった子どもの共同保育の組織を生かし,保育を行わない日に井戸端会議で親育ての機会を持つといった連携の例もある。
     
       「だんらんホリデー」が市民すべてが一人でも参加できるものになっていることはよいと思う。家庭教育への支援の充実が求められている中で,犯罪を犯してしまった子どものような,親からの愛情が受けられない子どもたちに対しては社会が補完していかなくてはいけないと思う。
   また,普通の母親ではあるが,問題を抱え,なんとなく外に行くことを躊躇しているという人に様々な活動に参加してもらうようにするにはどうしたらよいのか伺いたい。
   さらに,父親のいない母親と子どもは,なんとなく肩身が狭く積極的に参加できなかったり,働いているので行きたくても行けないという実状もある。こうした親や子どもの受け皿というものはあるのか。
     
       家庭教育推進班としては,ご指摘のような家庭を対象にした施策は特に講じていない。問題を抱えている子どもについては,カウンセリング関係,いじめホットライン,補導関係での対応はあるが,他は福祉関係で対応している。
     
       学校教育と地域の教育と家庭教育が役割を分担してうまくバランスを取っていれば,家庭の負担もそれほど重いものにならない。地域社会,コミュニティが持っている教育力が疲弊して,衰えてきているため,子どもたちが地域社会の中でいろんなことを学びながら育っていくことができず,家庭の負担が大きくなっている。家庭教育支援とは,家庭の中での教育を支援すると同時に,地域社会の教育力を高めることによって,間接的に家庭教育を支援することになるという意味で,4つのプランがあって,人づくり,まちづくりに最後の焦点を置くというのはすばらしいと思う。
   地域活動に参加することによって自分も親として育っていくことができる。自分自身の生涯学習であるが,そういう地域でのネットワークができていくことによって,地域と家庭とが非常によい関係になってきて,子どもも大人も育つという感じになっていくのではないか。
     
       独身,共働き,別居など家庭の在り方が多様化しているので,どういうサービス,教育がよいということを一義的に示すことは非常に難しくなっている。その一方で,こうした草の根的な活動があるのであるが,まだ一般市民に家庭教育というネーミングそのものがうまく浸透していないのではないか。予算の問題もあると思うが,全国民向けの家庭教育についてのイメージ的なビデオ,テレビコマーシャル,政府広報の中で,親がそれぞれの立場で自立して考えていくことや,各地でいろいろな取組があるので,気軽に一人でも参加することを促すといった趣旨の映像的なメッセージを送る方が若い人には良いのではないかと思う。各地でできることからやってもらいながら,国の方でもそれがうまく進むように支援するためにマスコミを活用するという手段もあると思う。
     
       テレビを使うのは費用面で大変なことである。
     
       公共広告機構に頼むことも考えられる。
     
       今の30代,40代前半の方々は団塊の世代以上の人々と大きく異なり,アンチ啓蒙主義で,自分も人に説得しないかわりに,人から説得されたくもないという風潮がある。熱っぽく語れば昔の人は非常に納得してくれたが,今の人は共感はしてくれても理解はしてくれないと思う。
     
       子育てネットワークのサポーターたちから家庭教育に関する資料の活用について意見を聞いた。 家庭教育ビデオについては,「ゆっくりゆったり」のビデオの中に非常によいテーマがいくつかあり,自由やコミュニケーションといったテーマをいくつか拾い上げて,1回ビデオを見せたあと,そのテーマを遊びで体験するといった講座を作るなど,展開の仕方がいろいろ考えられるという話が出た。
   また,「頑張れ!お父さん」のビデオは父親に見せたいが,これを借りて家の中に置いておくと嫌味になるかもしれないので,父親の育児学級などで視聴してもらうとよいと思う。大胆な意見としては,駅の待ち合わせ場所にあるモニターなどで流してもらうと,出張で新幹線の時間待ちをしている父親などが視聴できるといったものもあり,こまめにチャンスを拾えば放映できるところがもっと沢山あるのではないかといった意見があった。
   家庭教育手帳は,内容はとてもよいし,実際に子育てサロンでもこれを虎の巻的に使って話をすることもある。家庭教育に関する講座などへの参加記録をつけるページがあるが,各地域仕様でもう少し具体的なものとして,シールを貼っていくとか,スタンプをつけていくなどとかしてはどうかということで,例えば,離乳食のメーカーやベビー関係のメーカーなどとタイアップし,スタンプがいっぱいになったら,町おこしのクーポンや金券などと引き替えるというのも若い親にはストレートに響いてくるとともに,家庭教育学級等への参加率も上がるのではないかという話も出た。
   また,各地域で子育て情報誌作りが次第に活発になってきているが,家庭教育手帳・ノートの内容を各地域の子育て情報誌に転用することをもっと積極的に提案していってはどうかと思う。
     
       次会日程は別途調整することとし,閉会となった。
     
           (男女共同参画学習課家庭教育支援室)

 

(生涯学習政策局男女共同参画学習課)

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