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今後の家庭教育支援の充実についての懇談会

2001/10/19

今後の家庭教育支援の充実についての懇談会(第2回)議事要旨

今後の家庭教育支援の充実についての懇談会(第2回)議事要旨

1.日時

平成13年10月19日(木)11:00〜12:30

2.場所

文部科学省別館(郵政事業庁庁舎)11階大会議室

3.出席者

(委員)

河合座長,大下委員,大日向委員,北村委員,
河野委員,兒玉委員,坂本委員,宮崎委員

(文部科学省)

池坊大臣政務官,近藤生涯学習政策局長,
名取主任社会教育官他

(事例発表者)

坂本委員,吉澤氏(新座子育てネットワーク)

4.議題

(1)地域における子育て支援の充実のための方策について

  • 子育てを支援する人材の養成の在り方
  • 親子で交流する事業への参加の呼びかけ方,場の作り方
  • 社会教育行政における子育てサークルに対する支援の充実のための方策

など

(2)その他

5.議事

  • 事務局より配布資料について説明があった。

<事例発表について>

  • 「新座子育てネットワーク」の取組について,坂本委員から,配付資料に沿って説明があった。(概要は以下のとおり)
    • 「新座子育てネットワーク」は,子育てサークルの卒業を目前に控えた母親たちが,サークル活動での体験と子育て環境に対する問題意識から,「子育てサークルサミット」の実施を提案し,そこで認識された共通課題から発足への合意が形成された。
    • 発足イベントは「子育てサロン」の原型となった「手遊び講習会」で,ネットワークへの登録はサークル単位ではなく個人登録が中心であった。
    • 経費面などで行政との協働を考えたところ,市民との協働の事業の実績のあった新座市教育委員会生涯学習課が支援を始め,文部科学省の「子育て支援ネットワークの充実」事業による助成を受けることになった。
    • 子育てサポーターの養成講座を終了してサポーターとして登録している人は50名弱で,このうち30名程度が実際に活動をしている。養成講座のプログラムは生涯学習課と協働で作ることにより,サポートする側の留意点のポイントを集約できた。
    • 「子育てサロン」は養成した子育てサポーターがチームで運営している。従来の親子学級等と違い,0歳から未就園児の子どもを持つ親を対象に,地域の中の親子の居場所,出会い,学び,情報交流の場として,公民館の一室で月1回開いており,予約の必要はなく,途中の退室も可能である。
    • 文部科学省で制作しているVTRや啓発資料が活用されているが,そうした資料はこうした場で現実とのギャップを埋める会話がなされることにより,現実の生活や子育ての中に咀嚼していくことが重要である。
    • 軽度の育児不安を抱えている親のための語りの場としての「お母さんのはぁとタイム」という事業を毎月1回保育付きで開設している。臨床心理士も黒子として参加し,ピアカウンセリング的に実施しているが,参加要望は多い。参加する親自身が課題を乗り越えていこうという意欲を持っているので,話し合いながら,学習という体験を通して問題を乗り越えるアプローチを提供できていると思う。
    • 「子育て情報誌」は市と共同で開設している講座で作成し,希望者に無料で配布しているが,「新座のバイブル」と呼ばれるほど重宝されている。これは,地域の子育て環境を自発的に見つめる機会になるとともに,情報支援のスキルを社会教育として提供するものともなっている。
    • 市民祭りで「お父さんのための子育て広場」を設け,父親に「妊婦体験シュミレーター」などを体験してもらったりしているが,こうした事業立案・展開の留意点は,子育ての当事者の視点で企画をすることと,活動の支援をする側とされる側との区別をなくし,子育てをしている人が参加することで社会に関わっているという経験を得ることができるようにして,プレッシャー要因を極力排除することである。
    • こうした活動は犠牲的精神でやる時代ではないので,楽しさと「エンパワーメント」を意識している。
    続いて,「新座子育てネットワーク」の吉澤氏による説明があった。
    (概要は以下のとおり)
    • 子育てサポーターとして活動し,ネットワークに参加することによって,自分自身も周りからサポートされていると感じることが多い。
    • 社会的に子連れで参加できる場はまだ非常に少ないが,ネットワークでの活動は子連れでも嫌な顔をされることがない上に,子どもも異年齢の子どもたちと接する良い体験ができる。
    • 子育てネットワークでは,サークルと異なり,母親としてではなく,個人として必要とされると感じられ,責任ややりがいがあり,社会性が高いと同時に,子どもの具合が悪い時などは代わりを頼めるといった気楽さがある。また,子育てが一段落したら,仕事に復帰したいと思っている母親にとってのよい助走期間になるのではないかと思っている。
    • サポーターをしていて,日本で子育て支援の大きなうねりが起こっていることを感じている。

<質疑応答及び意見交換>

  • 育児休業から復帰した後に,正社員としての責任を背負い,子育てをしながら続けるのは,やはり難しく辞める人が多い。こうした拘束のないネットワークがあると安心なのではないかと思うし,パソコンの利用などの経験は再就職したい人のソフトランディングとして大変有効ではないかと思う。
  • 働いている父親や共働きの夫婦,シングルマザーなどはサークルの中に入りづらいのではないか。フルタイムワーカーの子育ては視野に入っているのか。
  • 新座のネットワークでは再就職を意識して取り組んでいる人は多く,パソコンの勉強をしてホームページを担当している人もいる。既に障害児を持つお母さんたちの交流や,外国人の方向けのフェスティバルのチラシの作成などには取り組んでいるが,働いている人,父親,シングルの家庭の方などに対しては,市民祭りを土日に開催したり,ホームページを開設することなどによりアプローチしている。
  • 父親の出番を増やすにはどうしたらよいか。
  • 父親が休みである週末に行うのが大前提であり,話を聞いてもらうよりもバーベキューなどの作業をしてもらった方がよい。また,既に子育てをある程度した人よりも,パパビギナーを攻略していく方が早いと思っていて,若い父親になったばかりの人を仲間にしていくことに取り組んでいる。また,新座では学校の先生がおやじの会を作る動きもあるので,その動きと一緒に多角的に取り組みたい。
  • サークルも親のニーズに応えていると思うが,サークルとネットワークとでは供給されるサービスの質は違うのか。
  • 子育てサークルにはいろいろなものが出てきているが,2,3歳児の子ども自身が遊べたり,親子で遊んだりするようなものが中心である。どこかに帰属したいところとしてサークルはあるが,その集団の中だけでは息が詰まって,そこから逃れられる場所として,外縁的な集団であるネットワークもほしいというのが今の母親たちの傾向だと思う。子育てサロンなど,特に対象を制約しない場所は今の母親にとって居心地がよいように見える。また,今の母親は与えられることに慣れていて,サークルの自主的な運営が困難になっており,指導者が一人いて何かをするというのが非常に増えている。
  • ネットワークというのはよい考えだと思う。日本人はサークルを作ると,プレッシャーがかかって出られなくなったり,入り込んでしまったりするので,個人を単位として来たいときに来るというものになるよう,中心になる人が常に意識していることが重要。犠牲的精神でやらないという考えもすばらしい。また会員組織では3割程度出席者がいれば成功というのが常識で,50人中30人出席という歩留まりもすばらしい。
  • 子育てを孤独にしている母親は多い。子どもが幼稚園に入って,少し友達ができてほっとするし,放課後に園庭でいつまでもおしゃべりをするという状況があったので園庭開放を始めたが,子どもの卒園後はネットワークになっていかないというのが悩みである。地域でこうしたネットワークを作ったり,維持するコツはないのか。
  • 新座で取組を始めるときは仲間と一緒に先行している地域を訪問した。また,近隣の地域で刺激し合うことも効果があり,新座市の周辺の朝霞4市すべてにネットワークができた。地域の中で必要性を感じて,自分が何かできるんじゃないかと思っている人は必ずいるので,そこに刺激を与えて,行政がうまく支援することが重要。
  • ネットワークを通じて自然に,子どものしつけのことや自制心が必要だといったいろいろなことを学んでいくことはよいことだと思う。公園デビューといったことも今の母親には大きな問題と聞いているが,そういうところに行けないお母さんたちにネットワークに来てもらえるようにする工夫はあるのか。
  • サロンには公園デビューで失敗したという人も多数来るので,今までにない受け皿になると思っている。また,フェスティバルなどでは,流行歌やはやりの手遊び,テレビで放映しているものなど,今のお母さんたちが子どもと共有している中で面白いと思っているトレンドを外さないで提供したり,それをうまくPRすることが重要で,模範的な母親のための場だけではない多様な場を意識的に作っていくようにしている。
  • 男の場合,家に帰ってから子育ての学級に行って勉強するという気にはなかなかなれない。国立女性教育会館の子育てサークルの活動に関する調査によると,子育てサークルの9割が親同士のおしゃべりが主になっているとされているが,非常に象徴的である。地域だと,職業人を離れて一人のおやじになって,仕事を離れた,おしゃべりによる人とのつながりができてくる。日常的な雑談の中で,話し合いの中で気づいていくプロセスというのがあり,気づくことによって,本当に自分のものになっていく。
  • 新座市の子育てサポーター養成プログラムというのは,ニュージーランドのプレーセンターのような親育てのプログラムと考えてよいのか。
  • サポーターの養成プログラムは,ネットワークの活動を支えるボランティアの養成プログラムであり,親育てとは少し異なる。
  • 支援する人,される人という区別は極力つけないという活動方針だということだが,支援だけを受けたいといった人たちをどうやって取り込んでいるのか。
  • 実際は支援する人と支援される人に分かれてしまうので,子どもを連れて参加しているが支援の側に回れそうな人材を早いうちに取り込むようにしている。サロンなどで非常に上手に回りの世話をする人や,サポーターの手伝いをしてくれるような人などをサポーター候補として自然に仲間に入れていくように方向付けている。
  • 孫を育てる世代のような異世代の人との交流を取り入れているのか。
  • サポーターとしては小学校の低学年ぐらいの子どもを持つ母親とともに,50代ぐらいのプレおばあちゃん世代の人がたくさんいる。サポーター養成講座のプログラムでは,その人たちに今の子育ての困難さや母親を取り巻いている状況の質の違いを理解してもらうことにポイントを絞っている。講座では,プレおばあちゃんと同じ世代の育児ジャーナリスト,子育ての最前線の調査をしている若手の研究者の方に来ていただいたり,家庭児童相談員などに地域の子育ての実態を話してもらったりしている。また,導入プログラムとして,実習と称してサポーターとの交流をしてもらい,やってもらえそうなことを見ている。また,サロンなどの終了後には互いにアドバイスして,チームで質を維持しようとしている。
  • 専門家は,参加者がおしゃべりするときに話がしやすくなり,おしゃべりの質が少し変わってくるという存在だとよい。前へ出てきて指導する人は偽者で,縁の下で力を持つ人が専門家だと考えれば,専門家との協力体制がうまくいく。
  • 新座の「お母さんのはぁとタイム」でも苦い体験をしたが,見極めは難しいと思う。子育てサロンの中のグループトークはサポーターが対応しているが,カウンセリングの学習はできていない。
  • こうしてオーガナイズしてきた方々によるマニュアルを何らかの形でジェネラルなものにしていただきたい。こういう情報がもっと広がっていくことでいろいろな人の役に立つのではないか。
  • マニュアルにしたとしても,坂本さんのようにフルタイムで活躍する人がいないと回らないと思う。50代,60代,70代の夫婦も何か違う形態の支援ができるのではないかと思う。また,30代,40代の父親が子どもの不登校と転勤といったキャリアとライフの差し迫った問題を抱えているので,働いている父親が様々なネットワークを作っていくと面白いのではないか。こうした活動が行政とタイアップして全国展開していく本当の仕掛け作りを検討できたらすばらしいと思う。
  • 個々の子育てサークルの課題は自分の子どもであり,その周辺の地域とか他の子どもという視点は残念ながら非常に薄い。したがって,多少視野を広げたリーダー的な可能性を持った人たちを拾い上げて,ネットワークを作るといったことが必要ではないかと思う。
  • 困っているから何かにすがりたいというのをただサポートするだけではなく,個人個人の強さを育成するチャンスがあるとよい。
  • こうしたネットワーク活動のような方法は,だんだんと人が育っていくよい方法ではないか。
  • 情報がないと言って怒って来るといったマイナスのエネルギーをいかにプラスに変えるか,最初にキャッチした人がどう受け止めるかということが大切で,このことがサポーターの育成として重要な点だと思っている。
  • 次回日程は別途調整することとし,閉会となった。

(生涯学習政策局男女共同参画学習課)

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