デジタルな形態を含む教科書の発行・採択等の指針に関する検討会議・第5回議事録

1.日時

令和8年8月18日(火曜日)10時00分~12時00分

2.場所

文部科学省 3F1特別会議室 ※対面・WEB会議の併用 (東京都千代田区霞が関3-2-2)

3.議題

  1. 教科書の形態の在り方について(1.事務局からの報告、2.委員ヒアリング(中川座長代理))
  2. 障害等による学習上の困難の軽減について(外部有識者ヒアリング(近藤武夫 東京大学先端科学技術研究センター教授))
  3. 採択、発行等の負担軽減について
  4. 情報活用能力について

4.議事録

【堀田座長】  おはようございます。定刻となりましたので、ただいまからデジタルな形態を含む教科書の発行・採択等の指針に関する検討会議第5回を開催いたします。本日もまた御多忙の中御出席いただきまして、誠にありがとうございます。
 本日の出席者ですが、松下委員が御欠席、オンラインで、市川委員、内田委員、工藤委員、田邊委員、野澤委員、山口委員、弓倉委員が御出席、それ以外の委員の方々は対面で御出席いただいてございます。
 それでは、事務局から連絡事項をお願いいたします。
【吉田教科書課課長補佐】  それでは、初めに前回の会議以降、事務局に人事異動がございましたので、冒頭御紹介をさせていただければと思います。8月6日付で、初等中等教育局長に茂里毅が着任しております。
【茂里初等中等教育局長】  茂里でございます。よろしくお願いいたします。
【吉田教科書課課長補佐】  続いて、同じく8月6日付で大臣官房審議官(初等中等教育局担当)に黄地吉隆が着任しております。
【黄地審議官】  黄地でございます。よろしくお願いいたします。
【吉田教科書課課長補佐】  それでは、本日の会議開催形式及び資料について御説明をさせていただきます。今回の会議は前回同様、対面・オンラインを組み合わせたハイブリッド形式での開催です。また前回同様、報道関係者と一般の方向けに会議の模様をユーチューブにて配信をしておりますので御承知おきください。
 ユーチューブ配信用の音声は、会議室中央の音響機器でまとめて集音しておりますので、委員の皆様におかれましては、御発言時を含めて、お手元のタブレット端末のマイクはミュートのままにしていただきますよう、よろしくお願いいたします。机にも備付けのマイクがございますが、こちらもお使いにはならないようお願いいたします。カメラにつきましては、御発言時を含めて会議中はオンにしていただくようお願いいたします。御理解のほどよろしくお願いいたします。
 次に、資料の確認をさせていただきます。本日の資料でございますが、議事次第に記載のとおり、資料1から6、加えて参考資料が1から6となっております。委員の皆様には紙でもお配りをしておりますが、お手元の端末でも御覧いただけます。御不明な点がございましたらお申し付けいただければと思います。
 事務局からの案内は以上でございます。
【堀田座長】  ありがとうございます。それでは、議題に入りたいと思います。
 まずは議題1「教科書の形態の在り方について」となります。本検討会議では、これまで参考資料3、今提示されていますけれども、ここに主な論点があります。まず、マル2番に、紙やデジタルがそれぞれ効果的な学習場面を検討すると。マル3番に、児童生徒の発達段階のことを検討すると。ここを踏まえてマル1、教科書の形態の在り方についてですが、たくさんの方々に今まで御意見をいただきました。また、外部の有識者の御知見も御提供いただいたところでございます。
 今回は、事務局におきましてこれまでの御意見を一旦整理してございますので、まずは事務局から御説明をいただくことになります。また、それらを踏まえて、今度はハイブリッドな形態の教科書について中川座長代理から御提案をいただくということになっております。事務局の説明に続きまして中川座長代理に御発表いただき、その後に皆さんで意見交換ということになります。
 では、まず後藤課長、よろしくお願いいたします。
【後藤教科書課長】  失礼いたします。資料1に基づきまして御説明をさせていただきたいと思います。この後の中川先生からの意見発表や、その後の先生方の御議論を前提といたしまして、今までの議論を一旦整理させていただいたものでございます。
 まず、資料1の1ページ目でございますけれども、1ページ目にございますように、昨年9月の中教審の審議まとめの中でも、教科特性や児童生徒の発達段階等に応じて、デジタルを取り入れる学年とか教科の在り方について、その考え方、国が一定の指針を示す必要性について指摘がなされていたところでございました。これは確認でございます。
 2ページ目を御覧になっていただければと思いますが、先ほど堀田先生からも御紹介いただきましたように、この検討会議でも全部で10個の論点を御提示させていただきましたが、最初の3つのところで、論点1として、学校種、学年段階、教科の特性などに照らしながら、また採択権者の意向なども踏まえながら、教科書の形態の在り方についてどのように考えていくか。論点の2番目といたしまして、紙が効果的な学習場面、デジタルが効果的な学習場面についてどのように考えるのか。また、論点の3といたしまして、認知科学や発達心理学などの知見も踏まえながら、デジタルな形態を含む新たな教科書の関係をどのように考えていくのかという設定をさせていただきまして、これまで、特に第2回、第3回、第4回と、委員の先生方からの意見発表や議論、それから外部の有識者からの御意見もいただきながら議論を進めてきたところでございます。
 1枚おめくりいただきまして、3ページ目は、まず論点2に関わりましたけれども、紙・デジタルがそれぞれ効果的な学習場面について、これまで先生方の御議論の中でいろんな御指摘、御意見が出されております。それを一旦現時点のものとしてプロットしてみたというのが3ページ目から4ページ目にかけての資料でございます。したがって、ちょっとまだ濃淡があるという状況でございますけれども、そういう資料等をもって御参考にしていただければと思っております。
 少しだけ触れますと、教科共通のところだけでも見ますと、紙の活用が期待される学習場面として、やはり紙の一覧性とか俯瞰性を活用して全体を確認するような学習であるとか、また、4つ目のところに、書き込んだり、書き込んだ内容を基に復習したり、あるいは長文を読む、じっくり考えたり、手書きを通じて深く考えを深めたりする、そういう学習活動について紙の活用が期待されるんじゃないかという御意見。
 また一方で、デジタルの活用が期待される学習場面ということで、学習内容を動画とかシミュレーションで視覚的に確認する学習ですとか、また、課題解決に向けて情報収集を行って、試行錯誤して考えを形成する学習というようなことで御意見を頂戴しているところでございます。
 その下には、各教科ごとにも様々御意見を頂戴しておるところでございまして、時間の都合上、一つ一つの紹介は割愛いたしますが、これまでの議論で紙・デジタルの活用が期待される場面として出てきたものを整理させていただいております。
 2枚おめくりいただき、5ページ目でございます。論点の3番目のところとの関係でございますが、これは児童生徒の発達段階との関係というところでいただいた議論のポイントでございますけれども、先生方から出されました主な意見をまとめてみたのがこの資料に記載してあるものでございますけれども、特に認知処理能力が未発達な段階である小学校の低学年、あるいは中学年というようなところでは、紙の学習を基本として、紙媒体を通して、同じ経験を共有しながらという、そういうことを前提としつつ、また、一番下のところにありますが、高学年以降という形で、メタ認知が精緻化して、自律的な学びができるようになってくるという段階においては、デジタルの活用も効果的になってくるという部分があるのではないかという形で御意見をいただいているかと思います。
 6ページ目でございますけれども、6ページ目は論点1との関わりでございます。この検討会議の中で御紹介させていただきました採択権者の意向調査の結果のポイントを改めて掲載しております。全国の採択権者の意向調査の結果では、全学校種・全教科を通じて、ハイブリッドな形態の教科書を望む回答が最多であったということでありますが、ハイブリッドな形態の教科書の中でも、小学校の低学年や中学年では、ハイブリッドの中でも、ほぼ紙か紙のほうが多いもの、紙に比重を置いたような作り方を望むという回答が多い。一方で、小学校高学年あるいは中学校になると、デジタルの割合が半分以上のものを望む回答が多く見られる教科も出てくるという結果でございまして、また、小学校の低学年や中学年では、いずれの教科についても、全てがデジタルの教科書を望む回答の割合は少ないと。また一方で、小学校高学年以上になると、教科によっては全てがデジタルの教科書を望む回答が一定割合存在するという結果であったというところでございます。
 それを踏まえまして、7ページ目でございますけれども、これまでごく簡単にではございますが、これまでの会議の振り返りをさせていただきましたが、1ポツのところで記載をさせていただきましたように、今までの議論を振り返ると、紙・デジタルがそれぞれ効果的な学習場面については一概に論ずることはまだ難しいものの、教科特性により内容に濃淡がありそうだと。また、児童生徒の発達段階による認知処理能力の違いによって、デジタルをより効果的に活用できるか否かも異なり得るんじゃないだろうかと。また、各採択権者の意向というのも、そういった議論とも整合している結果のように見えるというところかなと考えております。
 ということで2ポツでございますが、論点ということで改めて整理をさせていただいたところでございますが、この検討会議でまさに御議論いただいておりますデジタルな形態を含む教科書が導入される2030年度を1つのターゲットにしておりますが、この制度導入、まず当面の扱いとして、形態ごとにどのような考え方を示していくかということでございますが、デジタルの取り入れ方という点でございますけれども、参考までに今日、教科書の種目が実はこんなに多岐にわたっているということで、12ページに小中高校の教科書の種目も掲載させていただいておりますけれども、こういった教科書に非常に多岐にわたる種目があるということを念頭に置きつつも、7ページ目に戻っていただきまして、全てがデジタルな教科書、あるいはハイブリッドな形態の教科書に関わって、デジタルの取り入れ方ということについて少し論点を設定させていただきました。
 まず、特に全てがデジタルな教科書については、発達段階ごとの認知処理能力の違いを踏まえて、対象学年を一定学年以上に限定することが考えられるのではないだろうかと。また、児童生徒がデジタルを効果的に活用し得る発達段階にあることを前提としつつ、デジタルの活用が期待される学習場面が特に多い教科については、教科書の全体をデジタルで一体的に作成することも考え得るのではないだろうかということを論点として示しております。
 また、ハイブリッドな形態の教科書についても、教科特性や発達段階に応じて、デジタルに比重を置いた構成が効果的な場合も想定される教科、学年と、それから逆に紙に比重を置いた構成が望ましいだろうと思われるような教科とか学年、それぞれが存在するのではないだろうかというところで論点提起をさせていただいたところでございます。
 また、米印のところに少し記載しておりますが、今回の制度、2030年の新たな教科書の導入をターゲットとしておりますが、その後も継続的な実証研究ということを、状況のフォローをきちっと文部科学省としてもしていくことが大切と思っておりまして、そういった検証は継続していく考えであるということを少し付記させていただいておりますのと、もう一つは、教科書のデジタルの取り入れ方、その形態についての議論との関係で、本日の後の議論でも出てきますが、アクセシビリティの観点は非常に重要でありますが、その観点については、学習上の困難の軽減という観点でのアクセシビリティの論点については別途、資料3のほうでまた改めて御説明、御議論いただきたいということで準備をさせていただいているところでございます。
 まずは、御説明は以上でございます。
【堀田座長】  ありがとうございました。この後、意見交換をいたしますけれども、それに向けて、具体的で明確な視点をいただいたかなと思います。特に論点2に書いてある2030年度、令和12年度を一応ターゲットにしているけれども、これ、当面の取扱いと書いてあるのは、このときに作られる教科書、これがファーストケースになります。そして、それを初めて学校現場が使っていくということになります。4年ほど経つと、また次のフェーズがやってくるわけですけれども、そのときそのときで適宜見直しができるような形で、まずはファーストケースのところのガイドライン、指針をつくろうというのが私どもが今議論していることでございますので、慎重さも残りつつ、どうあるべきかってあるべきだ論をしっかりと検討してきたというところでございます。
 それでは、中川座長代理から御発表をいただくことになります。よろしくお願いいたします。
【茂里初等中等教育局長】  座長、中川先生の御発表の前に、一言御挨拶をさせていただいたんですけれども、お話しさせていただければと思います。私、初中局に戻ってきたのは5年ぶりでございまして、当時、2021年、デジタル教科書の話が最初に出たときに仕事を堀田先生と始めさせていただいたというのが御縁でございます。それから、いろんなことを堀田先生に教えていただきながら一生懸命デジタル教科書、何たるかという話をさせていただいたのをついこの間のように思い出しておりました。
 それからしばらく離れて、デジタル教科書の話は直接は担当してなかったんですが、今回の特別国会の法案審議の過程を大臣官房でずっとお世話してきたわけですけれども、その中でやっぱり思ったのは、デジタル教科書のこれからの発展のためには指針というものが全ての鍵を握るんだろうなということを感じました。法案の成立過程には大体3段階ありまして、1つは与党の審査過程です。自民党、維新の審査過程、そして次は野党への根回し、最後は国会での御審議、これら3段階を通じて、やはり一番最初から問題になったのはこの指針の話です。これは与党の審査から出てきた話です。
 もっと言うと、審査にかける以前からいろんなやり取りをしながら、これがないと駄目だと、どういったものをつくるんだという議論からまさに始まったわけでございます。最終的な3段階目の国会の審議の中でも、指針の重要性というのがほぼほぼ質問のポイントでした。そういった中で、これまで5回にわたって御議論いただいて、ここまで来たというのは本当にありがたいことだと思いますし、これからも御議論いただきながら、先生方のお力添えと御支援をいただきながら、文科省としても最初の指針ですので、未来の扉を開くためのいいものをつくり上げたいと思いますので、何とぞお力添えをいただければと思います。よろしくお願いいたします。
【堀田座長】  ありがとうございます。私どもも緊張感がちょっと増してきましたが、もちろんそのつもりでずっと頑張っております。よろしくお願いいたします。
 それでは、中川座長代理、よろしくお願いいたします。
【中川座長代理】  放送大学の中川です。本日はこれまでの議論を踏まえて、私のほうからハイブリッドの形態に関する提案に対して発表していきたいと思います。
 前回のこの会議の終わりに発言しましたように、文字・文章の記述・記録におきまして、紙に手書き、端末で入力という二項対立に陥らないことが重要に思います。その際、堀田座長は、子供が紙のノートを端末で撮影している例を出されましたし、私は端末画面本文にペンで書き込みの例を出しました。本日はこの左側の端末画面本文にペンで書き込みについて後半でお話をしたいと思います。いずれにしましても、このように子供たちは紙に手書き、端末で入力以外の様々な使い方を既に実際にしています。
 一方、本件の案件に関わる令和7年度のデジタル教科書の効果、影響の把握に資する大規模アンケート調査によりますと、小学校中高学年の教科別ではほとんどの教科で、現行のデジタル教科書を「いつも使う」グループが内容理解で「当てはまる」と回答した割合が最も高く、この傾向は中学校でも変わらず、特に国語はその傾向が顕著です。
 中学校では、全教科でデジタル教科書を「いつも使う」グループが、主体的な学びで「当てはまる」と回答した割合が最も高く、特にその傾向が国語では顕著です。同様に全教科でデジタル教科書を「いつも使う」グループが、探求的な学びで「当てはまる」と回答した割合が最も高く、こちらも特にその傾向が国語では顕著です。
 その国語科では、デジタル教科書で授業改善の効果を感じている教師のうち、最もデジタル教科書で可能になった授業展開と感じているのは、「本文を読みながら教科書内のキーワードやキーセンテンス、挿絵や図などに線を引いたり印を付けたりする活動」であると示しています。また、本日の事務局資料の資料1の3ページ目にも、国語科においてデジタルの活用が期待される学習場面として、複数色に色分けして線を引いたり書き込むなどして文章の構成を把握する学習が示されておりました。そこで、国語の説明文教材を例に、端末画面本文にペンでの書き込みの実際についてお示ししていきたいと思います。
 ちなみに、該当の学習指導要領の表記が、例えば小学校高学年では、「目的に応じて、文章の内容を的確に押さえて要旨をとらえたり、事実と感想、意見などの関係を押さえ、自分の考えを明確にしながら読んだりすること」であり、ここでは補足として、文章の内容を的確に押さえるためには、文書に書かれている話題、理由や根拠となっている内容、構成の仕方や巧みな叙述などについて注意することが大切。さらには、どのような感想や意見、判断や主張などを行い、自分の考えを論証したり読み手を説得したりしようとするのかなどについて、筆者の意図や思考を想定しながら文書全体の構成を把握し、自分の考えを明確にしていくことと示しています。このように、文書を正確に読むことと読者が主体的に意味を形成することを対立させず、根拠と対話によって両者を結びつける指導の重要性が明記されるようになり、この部分はデジタル教科書を活用することで効果的に進めることができるようになると言えます。その例を幾つか挙げます。
 これは小学校5年生、「固有種が教えてくれること」という説明文教材です。児童Aは、本文全体を概観した後に、キーワード、問いかけ、理由、例え、現状などの観点を自ら設定し、それらに基づいて内容を分類、整理しています。この書き込みは文章の構造を意識的に捉え直し、情報を網羅的に再編成しようとしたものであり、テキストベースの形成が行われていると考えられます。
 児童Bは、イギリスに固有種がいないのはなぜか、日本は世界の中で固有種の数は何位なのかといった問いを自ら書き加え、その答えを探る形で読み進めています。このような書き込みには、教材内容に対する疑問とそれに対する応答が繰り返されており、自分、教材との対話を通した意味生成の過程が見られます。
 そして児童Cは、図表資料と本文中の叙述とを線で結び、両者を対応づけながら読み進めています。図表に示された情報と本文の説明とを関連づけることで理解を深めており、統合の過程と捉えられます。児童Aは文章構造の整理を中心とした読み、児童Bは自問自答を通した生成的な読み、児童Cは図表と本文の関係づけを通した統合的な読みを行っていると言えます。
 これは小学校4年生、「アップとルーズで伝える」という説明文教材です。線、マーカーと枠、囲みを独立したレイヤーとして併用できる段落番号や、青、赤、青、赤の囲み枠が同一画面に存在しています。デジタルの場合、異なる意味体系を互いに干渉させずに同時表示できます。しかも、重ねる表示オンオフ機能で、これらのレイヤーを個別にオンオフして、今はマーカーだけ見る、今は枠だけ見ると切り替えられます。観点ごとの画面分離よりもさらに細かい同一画面内での記号系統の分離管理であり、紙では構造的に不可能です。
 同様の傾向は他の学年でも見られます。これは小学校1年生、「じどう車くらべ」という説明文教材です。デジタルでは観点別にマーキングを画面、レイヤーごとに分離し、オンオフ機能で切替えができます。これは同じテキストに対して複数の考えの軸を互いに干渉させずに独立に保存、呼び出せるという紙では構造的に不可能な機能です。
 小学校3年生、「ありの行列」という説明文教材です。紙の蛍光ペンは重ねて塗ると発色が濁り、また、塗る面積が増えるほど重要な箇所を目立たせるという本来の機能が失われます。そのため、紙では自然と、本当に大事なところだけに絞るという制約がかかります。一方デジタルは、半透明度、線幅、フォント等の分離表示が調整されているため、文章のほぼ全体を色分けしても判読性が保たれます。この結果、デジタルのマーキングは重要箇所を目立たせる機能から、文章を丸ごと意味のカテゴリーに分類し尽くす機能へと役割が変わります。大事そうなところに線を引くという主観的・感覚的な読みから、全ての文をどれかの分類に当てはめるという網羅的・分析的な読みへと思考様式を拡張できると考えます。
 ここからは、実際に国語デジタル教科書を活用してきている全国の教師の声として、端末画面本文にペンでの書き込みに関するコメントを紹介します。
 まずはマル1、「デジタル教科書の特性である書き込める教科書を最大限生かすことで、個別の考えを可視化し、他者と対話しながら読みを深めることが可能」に関するコメントです。
 子供にとって「ここが合っていそう」の曖昧な考えを残すことが大切だと思います。大抵の場合、教師はここに印をつけてほしいと思っていますが、児童はもちろんそんなことは分かっていません。作業していく中で仮マーキングをしていくのですが、1、取りあえず印をつける、2、読み返して確かめる、3、考える、4、言語化するという最初の手がかりになります。紙のみの教科書だと仮のマーキングは簡単に消せないし、抵抗があります。
 デジタル教科書の様々な機能を子供たちが使いこなすようになると、それまで授業に無気力だった子供たちが自分の考えを持つことができるようになり、友達と話合いを始めます。なぜ子供たちが授業に無気力であったか、彼らにやる気がないわけではなかったのです。彼らは「読む」ことや「書き写す」ことに多くのエネルギーを使っていたのです。結果として、私の子供への指示や補助発問で埋め尽くされていた教師主導の授業は、おのずと子供中心の授業へと変革していきました。デジタル教科書を活用することが、人間同士ならではの深い学びの時間を生み出すことにつながるのです。
 発表することに苦手意識のある児童であっても、本文への書き込みを画面上に残しておき、机上に置いて見て回ったり、大型提示装置に示したりすることで、自分の読みを学級に示すことができます。本人が言葉で十分に説明できなくても、どの語句に線を引いたのか、どの箇所に同じ色で結びつけたのかといった書き込みから、周囲の児童はその子の着眼点を知り、なぜここに着目したのだろうと考えを読み取ったり想像したりする時間を設けることができるのは、見せやすい、見やすいデジタルゆえだと考えます。
 つまり、対面での議論は、紙での場面だけでなく、デジタルでの本文の書き込みをするからこそ、そこから対面で議論が起こるということがあるということです。
 次に、マル2、「読みの困難を解決するための手段として、子ども自身が自分なりのやり方を選択して読むことが可能に」に関するコメントです。
 紙のみの教科書の場合、一度マーカーに引くと修正が難しく、子供は間違えたくないため書き込みに受動的になります。デジタルでは、引いては消し、また引き直すという試行錯誤が容易です。「事実」と「意見」の色分けや分類を何度も再検証できるため、受動的な作業から能動的な思考の試行錯誤へと変容します。
 要約や要旨をつかむような学習の際には、不透明色の白い色で文章を消しながら、精査・解釈していく機能は、紙のみの教科書では絶対にできません。教科書に修正ペンを使うなど、それこそ怒られてしまいます。例えば1文、あるいは部分的に塗り潰して見えなくさせることで、文章の組立てに欠かせない文なのか、事例や論拠の補強なのかといったことが分かりやすくなるかと思います。
 今までは教科書は見開き2ページの構成であり、同一ページ内での書き込みは容易でも、デジタル教科書のように一覧して線を引くことはしづらかったんだろうと思います。特に文章構成で、初めと終わりの対応関係を体系的に学ぶ小3・小4の子供たちにとって、「はじめ」と「おわり」を一度に線を引け、俯瞰できる総覧性は、紙のみの教科書にはないよさだと感じています。
 今のコメント、若干分かりにくさもあったので、少し補足をします。これは3・4年生ではありませんが、小学校2年生、「たんぽぽのちえ」という説明文教材です。デジタルでは複数のページの挿絵とマーキング済み本文を同一画面に並べて表示できるため、変化を追うという思考過程そのものを書き込みの配置によって可視化できるということです。
 最後に、3「教師が可視化された学習者の画面を見ることで指導計画を流動的に検討することが可能に」に関するコメントです。
 最初の計画では、筆者の主張が最初と最後に書かれている、これは双括型と言いますが、の構成になっているところまで進める計画であった。しかし、「主張に赤線を引く」という学習活動をした時点で、画面を確認したところ、前半・後半の主張のみに着目している学習者が多いことに気づいた。そこで、既習の教材文に戻って、再度主張の見つけ方を確認してから構成に進もうと判断した。このように、教師が可視化された学習者の画面を見ることで、指導計画を流動的に検討することが可能になる。
 国語科でデジタルというと、動画とか音声を使うというイメージがされやすいんですけれども、このように画面に書き込むことの使ったことのある経験のある教師は、学習効果を実感しているということを紹介してきました。
 さらに、ここまで国語の説明文で御説明してきましたが、ほかの教科でも、例えば算数の文章問題、あるいは社会科の歴史解説など、これらはそもそも説明文だと言えます。そう考えますと、説明文の読解ができていないというのは、国語だけの問題ではなく、文章の構造を理解する、主体的に意味を形成することの機会をしっかり確保すべきだと考えます。国語では特に、説明文といういわゆるジャンルがあるので、特に推奨していくべきとした次第です。
 以上のように、ハイブリッドの在り方を、紙の本文プラスQRに限定せず、端末画面に書き込める可能性を残すことが望ましいと私は考えます。御清聴ありがとうございました。
【堀田座長】  ありがとうございました。今、かなり具体的にお示しいただきました。国語の説明文を題材にしてお話しいただきましたが、それは各教科の様々な学習場面で同様の効果があり得るだろうというお話もいただきました。
 それでは、意見交換の時間をと思います。いつものように皆様には挙手ボタンを押していただいて、対面の方も挙手ボタンを押していただきたいと思います。オンラインの方も、ぜひ挙手ボタンを押していただいて御発言いただければと思います。都合15分ほどございますので、御意見をいただければと思います。いかがでしょうか。
 では、髙瀬委員から参りましょう。お願いいたします。
【髙瀬委員】  小学校の教科書に関しては、これまでも発達段階に考慮すること、また、教科の特性に応じて、紙とデジタルそれぞれのよさがありますので、それを効果的にできるものがよいのではないかというふうにお話をしてまいりました。また、これまでの調査結果や、有識者の方、また文部科学省の方の説明等もお聞きし、ここの論点にもありますように、全てがデジタルな教科書はどうなのかという点については、小学校におきましては、発達段階、低中高学年と上がるに従って抽象的な思考も高まってきますので、フルデジタルに関しては高学年以上とすることが望ましいと思います。調査でも、高学年以上ではフルデジタルというような要望も増えてきているかと思いますので、フルデジタルの教科書については高学年以上ということが望ましいのではないかと感じております。これが第1点です。
 また、今、国語の説明がございましたけれども、国語や社会といった教科ですとか、あと英語や図画工作科、音楽という実技教科などもあるのですけれども、フルデジタルにする場合は、特に英語などの実技系の教科に限定していったほうがよいかと感じております。これが第2点でございます。
 それから、ハイブリッドの形態の教科書ということですけれども、調査の結果ではハイブリッドを希望するのが8割以上ということで圧倒的に多かったので、そういった実態も考えますと、ハイブリッドが多く望まれているのかなと思います。ハイブリッドの場合も、やはり教科によってデジタルの部分が多いものとか紙の部分が多いもの、また、発達段階に応じて量については検討していく必要があると思います。特にハイブリッドになった場合は、英語は実技で発話をしたりコミュニケーションを取るということが主のものですので、英語などはハイブリッドになったとしてもデジタルの部分が多くなってくる、中心となってくるのではないかなと思います。
 また、高学年になるにしたがって、学力的な差というか、そういった違いも出てきますので、それぞれ個に応じた形で学びを子供たちが行っていくという上では、デジタルの効果的なところもあると思いますので、発達段階に応じてデジタルの部分が広がっていくような内容が小学校ではふさわしいのではないかと考えます。
 以上です。
【堀田座長】  ありがとうございました。大変具体的にお示しいただいたと思います。
 それでは、松谷委員、お願いします。
【松谷委員】  デジタルという教科書になって大きく変革したところは、指針がどういうふうにしていくかというところで、やはり主体的な学びというところが大きく、今までの教育内容と変わってきたところであるのではないかと思います。そういった意味で、主体的な学びをするためにデジタルの教科書が、課題解決型の学びが、今、中川先生からお示しいただいたような形が、一人一人が自分で物事を考えたり積極的に発言をしたりして、非常に大きな変革ができているのではないかと思っています。そういった意味で、中学年、高学年にはデジタルを使っていくのが私はいいのかなと感じています。
 低学年に関しては、基礎的な内容をしっかりと力をつけるために、発達段階的には紙をベースにして、そして中学年から教科によって変えていって、高学年にはデジタルに変えていくぐらいの考え方で、教育内容の大きな変革を、指針を変えない意味でも、デジタル教科書をもっと利用していったらいいのではないかと思っています。
 以上です。
【堀田座長】  ありがとうございます。今、学校現場の委員からの意見が続いておりますので、ちょっと順番を変えて申し訳ないんですが、工藤委員、内田委員に先に御発言いただいて、それから、ほかの委員の御発言をいただこうと思います。
 工藤委員、お願いいたします。
【工藤委員】  ありがとうございます。中学校現場の立場から申し上げさせていただければ、生徒の発達段階あるいは教科の特性、学習内容に応じて、紙とデジタルの両者を適切に組み合わせるハイブリッド型を基本とすることが望ましいのではないかとは考えております。現在中学校においても1人1台端末の環境が定着して、英語の音読や発音の練習、理科のシミュレーション、保健体育における動画の活用など、デジタルの強みを生かした学習が効果を上げているところがございます。
 一方で、国語の長文読解でありますとか、社会科における複数の資料の比較などにおいては、紙の一覧性あるいは書き込みやすさにも大きな価値があるところがございます。したがいまして、中学校では、デジタル活用を積極的に推進しつつも、教科の特性や学習場面に応じた紙の教科書を効果的に活用することが重要だと考えております。
 また、特に中学校英語などにおいては、デジタル部分に比重を置いてハイブリッドな教科書を作成することも十分に考えられるかなと思います。それによって、音声読み上げだけではなく、動画による対話の体験なども授業において活用しやすくなるのではないかと考えております。
 また、最後にフルデジタル、全てがデジタルの教科書につきましては、中学校段階において活用は有効であると考えますけれども、現時点では全てがデジタルの教科書を一律に推進することには慎重であるべきでないかと考えております。理由としましては、たくさんありますけれども、大きなものとしては、タブレット端末は教科書閲覧だけではなくて、協働学習あるいは思考共有ツールなど学習成果の発信等にも活用されているために、教科書機能に端末利用が集中することによって学習活動への影響を配慮、考慮する必要があるかなと考えているからでございます。
 私から以上でございます。
【堀田座長】  ありがとうございました。
 続いて内田委員、お願いいたします。
【内田委員】  ありがとうございます。高校の立場から申し上げます。今回、様々な形で、デジタル、ハイブリッド、それから紙が検討されることは、様々な生徒の特性や、あるいは学習状況に合わせて高校側が選択できるという面で非常に優位性のあることではないかなと思っております。特に生徒の特性につきましては、生徒個人で視覚優位であるとか、あるいは聴覚優位など、学習に当たって、それぞれ個人によって特性が異なる、それによって学習効果も異なるものと思っております。学校に在籍する生徒に合わせて高校ごとに教科書が採択されますので、それぞれ教科、科目の学習状況と併せて選択をしていくのが非常に適切ではないかなと思います。
 その上で、例えば、学習において情報デジタルからそのものを学ぶというプログラミングデータ活用などが学習対象の情報1であるとか情報2、あるいは、音声、動画、発音、リスニング、インタラクティブ教材との相性が極めて高い英語コミュニケーション、さらには音声やプレゼン、ライティング、AI、翻訳等の連携が可能な論理表現など、英語に関わる科目については、フルデジタルも学習によっては有効ではないかなと思っております。
 また、実技系教科につきましては、動画による効果的な学習もできることから、芸術科目あるいは専門科目としての工業や商業などの一部の科目についても、フルデジタルの可能性が広がるものと思っております。市場のデータや地図データ、衛星画像、統計、地図、動画などを活用できる地理科目についてもフルデジタルの可能性が広がるものと考えております。
 一方で、今回熊本で地震が起きたり災害時の対応については慎重に対応する必要があるかと思います。そういった場所でも、紙ベースの教材につきましては随時活用が可能ですけれども、デジタル教材については、場合によっては学習に支障が出る場合もあるかと思いますので、そういった配慮が行われるような対応を考えていく必要があるのではないかなと思っております。
 雑駁ではございますけれども、高校側の意見を述べさせていただきました。よろしくお願いいたします。
【堀田座長】  ありがとうございました。災害時については逆に、クラウドに残っているデータは端末を替えてでも呼び出せるという観点から、むしろデジタルのほうがよかったのではないかという、これは東日本大震災のときの例ですけれども、そういう例もあると聞いています。いずれにしても、子供たちの学びを止めないようにどうするかという話かと思いました。
 ではこの後、柴田委員、岡本委員、森委員、野澤委員の順番で、ここまでとさせていただきます。
 柴田委員、お願いいたします。
【柴田委員】  ありがとうございます。デジタル、非常に多機能でインタラクティブ性も備えていますし、いろんな機能的な発展も可能だし、うまく使いこなした場合、非常に大きな効果を発揮するだろうと私は思います。ただし、これをきちんとうまく使いこなせるのかということに私は少し疑問を持っています。すなわち現場の先生方もきちんと特性を理解して、状況に応じて使いこなせるのかということに少し疑問を持っています。
 本日、中川委員から御紹介いただいた、これはデジタルをうまく活用した例として、このすばらしい報告があったんだというふうに理解していますけれども、逆の側面というのはあり得ないのかなということで私、ちょっと質問させていただきたいと思います。
 例えば、デジタルにはいろんな機能があって、インタラクティブ性がありますから、そうしたら、機能的な側面でこれはどうやってやるの? とか、もしくは隣の人が色を変えている、これはどうやってやるの? 私もそうしたい、そういう機能に関する発話、こういうのが増えないのか。例えば絵本をホットスポットを提供すると、絵本の内容の発話よりも機能の発話に関することが親子の間で増えるなんて、そんな研究例なんかありますから、そういう例はないのかなと。
 それから、多様な表現が可能になります。そうしたら、その表現に凝ってしまうとか、そういう例はあり得ないのかなというようなことなんか、よろしかったら質問したいと思います。
【堀田座長】  分かりました。ほかにも質問が出るかもしれませんので、後ほど中川座長代理にお回ししたいと思います。
 岡本委員、お願いします。
【岡本委員】  ありがとうございます。教科書協会の岡本でございます。私からは、教科書の発行者の立場で手短に意見を述べたいと思います。中川先生、御発表、具体的で大変参考になりました。ハイブリッドな形態を含む教科書のデジタル部分、ここに必要な機能については、別に標準仕様等の検討会議というところで議論しておりますので、今回御発表いただいたマーカーの機能ですとか、そこに手書きの機能など、様々役立つような機能という具体例を御紹介いただいたと思いますので、本日の御発表を参考にしながら、さらに標準仕様等の検討会議で議論を深めていきたいと思います。
 以上です。ありがとうございました。
【堀田座長】  ありがとうございます。
 それでは、森委員、お願いいたします。
【森委員】  私は、教材発行者の立場から意見を申し上げます。現場の意向調査でもハイブリッドを望む声が多数ありますので、基本的には全てが紙、全てがデジタルを学年や教科によって振り分けるのではなく、全学年全教科でハイブリッドを基本とし、その中で紙とデジタルの比率や使い方を学習活動によって適した媒体を変えていく、そういう考えが望ましいのではないかと考えています。
 一方で、教科書の形態だけを切り出して、紙かデジタルかを決めることには少し違和感があります。実際の学習は教科書だけで完結するものではありません。教材やノート、端末、教師による指導、これらを組み合わせて成立をしているからです。したがって、教科書だけを、この教科は紙、この教科はデジタルと大きく切り分けるよりも、単元や学習場面に応じて、何を学ばせるためにどう使うのかという学習設計から考えることが大事だと思っています。中川先生も最後に、「ハイブリッド=紙の本文+QR」だけではないということを指し示していただきました。端末画面に書き込めるという可能性も残すべきだなと思いました。つまり、ハイブリッドは単なる「紙何%、デジタル何%」という配分論ではないと理解をしました。「デジタルな形態を含む教科書」は、今後様々な学び方を可能なものにするために、できれば柔軟に設計できる制度にしておくことが望ましいと考えております。
 以上です。
【堀田座長】  ありがとうございました。
 野澤委員、お待たせしました。お願いいたします。
【野澤委員】  ありがとうございます。私も先ほどから出ている意見には賛成で、結局紙にしてもデジタルにしても、いかに使うか、授業や学習環境をどうデザインするかということに尽きるのかなと思います。
 その中で1点お伺いしたかったのは、先ほど中川座長代理が御紹介くださったようなバージョンというのはハイブリッドという形になるのか、デジタル、フルデジタルという形になるのか、それはどのような形になるのかというのがちょっと疑問に思いましたので、教えていただければと思います。
【堀田座長】  ありがとうございました。それでは、質問も出ましたが、中川座長代理、一旦お願いいたします。
【中川座長代理】  私は、今日の発表としては、ハイブリッドの形態に関する1つの選択肢としてお示しをしたということです。
 それから、先ほど慣れてないとどうなのかという御質問があったと思います。御指摘のとおりだと思いますが、端末そのものの慣れということはあると思うんですけど、これは実はデジタル教科書の活用に限ったことではないと私は思っています。実際に本日の私の発表の前半でお示ししましたように、よく使っていると効果の実感を持つことがあるというのはお示しをしたとおりなので、今後頻度も含めてどのように使われていくのか、その使われていく中で解消されることもあろうかとは思っています。
 それからもう一つ付け加えますと、いずれにしてもハイブリッドについては、発達段階や教科の特性ということはこれまでも議論されてきたことではありますけれども、今日の発表は、どのような学習内容、学習場面であるのかということの検討も必要だということをお示ししたという趣旨でございます。
 以上です。
【堀田座長】  ありがとうございました。というわけで、ここまでにしたいと思います。
 私もちょっとだけコメントしておくと、柴田委員がおっしゃった使い慣れまでの一種の逡巡といいましょうか、あるいは錯誤みたいなことは現場でも結構確認されるところでございまして、ただ全国学力・学習状況調査の結果を見ても、利用頻度が上がって子供たちが使い慣れると、学習への効果はどんどん出てくるというところもあるので、使い始めの時期の話と使い慣れていったときの話を、ある程度私たちは区別して見ていかないといけないのかなと思うところもあります。
 一方で、工藤委員もおっしゃいましたけれども、教科書の提示だけに端末を使っているわけではないというのはまさにそのとおりで、これは森委員も今おっしゃいましたが、だからといってデジタルだけで全部やっているわけでもないと。子供の学びとか授業とかいうものはかなり多様な情報の組合せ方でやられていまして、これは前回御発表にあったとおりですが、野澤委員の御発表にあったし、委員の方々以外の外部の有識者の御発表にもありましたけれども、やはりどのように使うかという、活用していい授業をするかという教師側のノウハウ、ここの蓄積が非常に重要になるだろうということは指針においてもちゃんと明示し、そこをどうやって集めて、先生方に、検証も含めてかもしれませんけれども、ノウハウを広げていくかということを一緒にやっていく必要があるんじゃないか。それもなしに、デジタルが何%みたいに決めてしまうことは拙速であるし、適切ではないだろうと私も思いました。
 ちょっと戻ってすいませんが、先ほど後藤課長が御説明された資料1の5ページに、論点3として発達段階との関係が書いてございます。中段ですかね、学校というのは協働で学ぶ場であり、対面で紙媒体を通して同じ体験を共有することも重要と書いてありまして、私、全くこのとおりだと思います。ただ、紙媒体じゃないと同じ体験を共有できないかというと、中川座長代理が今日お示しいただいたように、子供同士がそれぞれの学び方をお互い知り合うみたいなことは、むしろデジタルのほうがやりやすい部分もあります。だから、対面で同じ体験を共有するということは重要だけど、そこも紙だけに限らない部分というのもあるなと感じたところでございました。
 いろいろまだ議論は尽きないところもありますが……。
【柴田委員】  私の質問についてよろしいですか。
【堀田座長】  どうぞ。
【柴田委員】  慣れの問題ということでお答えいただいたかと思うんですけれども、私、慣れの問題というよりも、多機能性がもたらす注意の分散ですね。いろんな選択肢があると、それを考えてしまう。そして、いろいろ試したくなってしまう。そうするうちに本来の学びからそれてしまう可能性があるという、それは慣れの問題とは違うということ、できればその点について御議論いただければなというか、今日でなくてもいいですけど、取りあえずそういう意見だけ出させていただきます。
【堀田座長】  中川座長代理、何か御意見ありますか。
【中川座長代理】  おっしゃることはよく分かりますが、多分学習形態とか、あるいは、何を狙いにしてやっているのかというようなこととの合わせもあると思うし、それから学級の状態とか、そういういろんな複数の要因も絡んでいると思いますので、非常に重要な御指摘だと思いますけれども、使ったら散漫になるというだけではないかなとは思います。
【堀田座長】  それも含めて慣れるんだと思うんですけど、教師側もマネジメントに慣れるんだという部分もあると思いますけど、その御指摘は、ただ何もせず子供たちにぼんと多機能のものを与えると確かに起こることで、そのことを体験した学級では、そうなるから、まずはここからやってみようかみたいなことの指導言は教師から出てくるというのはよく観察されることでもあります。だから、それも教師の使いようのノウハウのところが非常に重要になりますねという話にうまく合わせて、その御指摘を残していけるようにしたいと思います。一旦ここまでで、すいません。どうもありがとうございました。
【柴田委員】  ありがとうございます。
【堀田座長】  というわけで、ハイブリッドな形態の教科書についてなかなか具体的なイメージが湧かないという声もあったところでございますけれども、今日その認識を明確にしていただくような御発表いただけたかなと思いますし、また、今の柴田委員の御指摘もそうですけれども、論点として非常に重要であり、それをどうやって回避しながらうまく活用していくのかというところについてのノウハウの蓄積がまたさらに重要であるというようなことを確認できたかと思います。これらを踏まえて、取りまとめに向けて、また事務局のほうで整理をいただくということにさせていただきたいと思います。ありがとうございました。
 それでは、ちょっと時間が押して申し訳ありません。議論2のほうに参りますが、「障害等による学習上の困難の軽減について」ということになります。このことは、非常に重要な論点として、次期学習指導要領の検討に当たって、「多様性の包摂」という文言の中で基本的な考え方としてこれは取り入れられていることでございまして、今私たちが議論している指針も、次の学習指導要領で、デジタルの部分を含む教科書が世の中に出ていくときの考え方としても非常に大事なこととして押さえたいところでございます。
 今日は、このことについて長年御研究されている第一人者である近藤武夫先生、東京大学先端科学技術研究センターの近藤先生をお招きしているところでございますので、まずは事務局から検討状況を簡単に御報告していただいた上で、近藤教授から御発表いただく、その後、皆さんで議論するということにさせていただきたいと思います。
 では、まず後藤課長、お願いいたします。
【後藤教科書課長】  できるだけ手短にと思います。資料3でございます。まず、1ページ目を御覧になっていただければと思います。
 現行のデジタル教科書では、閲覧するためのビューアに関する標準仕様書上で、アクセシビリティ機能の標準実装を求めるということをしております。具体的には1ページ目の左下に赤で書いておりますような拡大、ルビ振り、色反転、リフロー表示、音声読み上げなどを要件としているところでございます。
 2ページ目を御覧になっていただきますと、これまでの実証研究事業の中で、こういった機能について、障害の種類別に有用な機能の例を整理したり、あるいは教員のヒアリングということで有用性を確認してきたということでございます。時間の都合で省略しますが、色変更、拡大、あるいは音声読み上げ、ルビなどについて、発達障害があるような児童生徒の学びというところに対して、学校現場で非常に効果があったという教員の声も集まっているというものでございます。
 3ページ目を御覧になっていただければと思います。飛ばし飛ばしで恐縮ですが、今般の制度改正によるデジタルな形態を含む新たな教科書のうちのデジタル部分につきましては、年度内に標準仕様書を策定する予定にしておりまして、その中で、新たに教科書として、動画とか音声も教科書のコンテンツとして初めて今回入ってくるということになりますので、現行のデジタル教科書で求めていたアクセシビリティ機能みたいなことに加えまして、動画とか音声にも対応するということで、再生速度の調整機能であるとか字幕表示であるとか、そういった機能についても仕様に含めていくということも考えているところでございます。
 4ページ目を御覧になっていただければと思いますが、しかし一方で、デジタルな形態を含む新たな教科書、意向調査でもハイブリッド型が望まれているということがありましたが、例えばハイブリッド型の教科書というのは、紙の部分とデジタルの部分が組み合わさって1冊の教科書になっています。紙の部分のある教科書、紙の部分については、紙では学習上の困難があるという児童生徒も実際にいらっしゃいますので、そういった児童生徒に対しては、実は今回の法改正のときに、教科書バリアフリー法を併せて改正するという対応をしておりまして、これを受けまして、文科省としては、それぞれのデジタルな形態を含む教科書のうちハイブリッドな形態のものなどの検定を受けた通常の教科書について、同じ内容のフルデジタル版を教科書バリアフリー法に基づく教科用特定図書等の部類の中に改めて位置づけまして、これを選んで使っていただく、無償給与の対象とさせていただくという仕組みを取っていくことについて考えているところでございます。
 以上、大変簡単な説明で恐縮ですが、資料3についての説明でございます。
 以上でございます。
【堀田座長】  ありがとうございました。
 続きまして、近藤先生、よろしくお願いいたします。
【近藤教授】  どうも皆様、今日はこうした場をお与えくださいまして、ありがとうございます。東京大学の近藤と申します。よろしくお願いいたします。本日は私のほうからは、デジタル版の教科用特定図書の在り方について、短期と中期と長期に分けて、私のほうで考えてみたことを申し上げさせていただきます。全体を通じて、1つの主張として置いていることなんですけど、紙の教科書を否定してデジタルへ置き換える提案ということでは全くなくて、紙が適する場面ということはそのとおりなんですけれど、その場面においてもやはりアクセシビリティをどう保障するかという議論が必要だというお話になります。
 まず、全体の結論を先に申し上げます。短期的には、全ての発行者に新しいアクセシブルな専用システムを一から求めるということはかなり大変なことだと思いますので、今ある学習者用のデジタル教科書、これがあるものについては共通のアクセシビリティ要件を満たすかどうかというのを第三者的に評価して、使えるものは生かしていく。同時に、年度の当初から本人に届くような運用を整えていく。運用部分は非常に重要なところです。
 次に、中期としての提案は、ニーズの対応ができて共通の要件を満たすような市販製品がある場合は、これは第一義的に自治体がそちらのほうを購入して利用するような形が適切だと思います。併せてアクセシビリティを保障するための基盤としては、やはり共通の構造化データが非常に重要になってくるんです。EPUB Accessibility等を参照しつつ、アクセシビリティに必要な構造・意味情報を保持したデータだと思うんですけれども、こうした共通データをお届けいただきたい。それと、市販製品だけでは届かないニーズはやはり残ります。例えば点字の教科書をどうするかというのは特徴的な例ですけど、そうしたものは別形式で補完したりとか、もしくは共通基盤で、共通基盤というのは各社さんがデータだけ提出すれば使えるような共通基盤をイメージしているんですけど、そういったもので補完していくことが必要だろうと。
 それから、長期的なところがポイントだと思うんですけれども、後で述べますけれども、子供たちの中で困難があるということが発見されて、こうした代替的なものを使えるという申請ができた人というのは少なく、今の制度上ではやはり見落とされている状況が非常に多い可能性がある。こうした人たちだけではなくて、ニーズがある、読み上げ等が必要な児童生徒がいたとしたら、まず提供されている教科書に共通のアクセシビリティ機能があって、それを特に誰に申請しなくても試すことができるような状態を目指す、これを基本に置くというのが長期的には必要な状況だと思います。共通の軸として押さえておきたいのは、やはりコンテンツ側のデータです。コンテンツ側のデータのアクセシビリティ要件というのは整えていく必要があると思います。
 次に、私の立場、一番最初に申し上げたことなんですけれども、紙かデジタルかという問いは私はあまり適当ではないと考えております。児童生徒によっては、紙が適する場面がございます。一方、読み上げや表示の調整がなければ、そもそも学習に参加することが難しいという児童生徒もいます。このことは、教室の中では対立はしないで常に存在しています。理想的には、個々人に合う媒体を選べるということが理想です。ただその前に、やはり子供たちがこれが自分に向いているのかどうかを試すことができるという環境が必要で、実際に教材の様々な機能を使ってみて初めて自分の読みの困難に気づくという生徒がいる、これも教室ではよく見られることです。論点では、紙かデジタルかということではなくて、制度が最初から二者択一を強いるような構造になっているということ、それをどう避けていくかがポイントになってくると思います。
 ここで申し上げたいことが、長期的にどのような教科書、教材に関するアクセシビリティ保障の議論が必要かということを申し上げている、その根拠になってくるところなんですけれども、文部科学省の令和4年の調査では、通常の学級の小中学生の3.5%に読むまたは書くに著しい困難を示す。この調査の母集団で換算すると、大体30.6万人、30万6,000人ぐらいという換算になるのかなと思います。ただ、ここには、書くことだけに困難のある児童生徒も含まれていますので、この公表値から読むことだけを分けるということはできないです。
 そこで、この3.5%全員を読み困難というふうに扱うと、かなり過大な見積りになってしまうので、それを避けるために、政策検討のためのシナリオとして仮置きとして2.5%を考えてみるのはどうかと。これは根拠があるわけではないんですけど、ちょっと低めに見積もってみようと。それでも22万人ぐらいの子供たちには、やはり読みのニーズがあるということが分かるわけですよね。つまり、22万人の読むことについてニーズのある児童生徒が小中学校の通常の学級にいるということが粗く推計されるわけです。
 しかし、令和8年度の音声教材の需要数という、これも文科省が行っている音声教材の需要数調査。音声教材というのはしゃべったり拡大をしたりいろんなことができる教材がもう既に学校に提供されているわけなんですけれども。この需要数調査は小中学校で行っているんですが、通常の学級ですと、音声教材の需要数、学校がこれぐらいの人数が必要だと思っているよという需要数は、小中学校合計で1万2,000人ぐらいなんです。つまり、先ほど仮置きで22万と推計しましたが、1万2,000人ぐらいしか学校から需要数が上がってきてない。これは母集団も定義も少し違うので、直接の関係があると言えるかどうか、ちょっと乱暴ですけれども、これだけ差があるということは知っておく必要があると思います。
 重要なのは、音声教材などは、まず申請ベースで提供されるものになりますので、申請前にそういった困難がある子供たちがどれくらいいるのかということを把握する制度で、この経路をどうつくるかということがすごく大事なんです。さらにそこで見つかった子供たち、把握したニーズに教材だったり、そこのサポート人員だったり、そこにかかる予算だったり、それをつくる経路をデザインしていくことが必要なんですが、通常の学級においては、この部分は十分とはかなり言いづらいような状況があります。
 米国にはチャイルドファインドといって、例えば成績がすごく低くなっているなと思ったら、この子、勉強が分からないんだなではなくて、その背景に何か読みのニーズがあるんじゃないのとか、そういうことを調べなければいけないという、それを学校に義務化するという制度があるんです。ところが日本においてはこうした、いわゆる学習障害的な読み困難のニーズが子供たちにあるかどうかを発見するような制度というのは、はっきり言うと制度的にはこうした仕組みが日本には整備されていない。ですので、気づかれた場合のみアクセシビリティ保障につながることができるというのが今の状況であります。ですので、見落とされているニーズのある児童生徒が相当数潜在的に存在すると言っていいと考えています。ですので、申請ができた子供たちだけに届く仕組みではやはり足りないと思っていて、長期的には、誰でもアクセシビリティ機能を試せるようなところを仮置きしておくということは非常に重要な指針かと思います。
 まず、具体的な短期、中期、長期の提案に入る前に、アクセシビリティの保障に関する必要な要素を3つに分けます。ここがなかなかふだん見えてこない、システムの裏側にあるものなので、重要なポイントとしてこの3つの観点を御紹介いたします。1つ目は、コンテンツです。これは教科書のデータと言われることもあるんですけれども、コンテンツの部分です。これは本文だったり見出しだったり読みの順番だったりルビだったり、あとは画像の代替説明、「ALT text」って言われたりするんですけど、あとは、各コンテンツが、これが目次なのか本文なのか脚注なのかというコンテンツの意味づけであるセマンティクスという情報を足しているんです。こういったものは、EPUB 3.3、EPUB Accessibility 1.1、WCAG等を参照して、こういったものを軸に要件を定めていく必要があると思います。
 これ、できるだけ発行者側の上流過程でやっておくということがすごく大事で、そこで構造化情報を最初から入れておくことができれば、後から下流に来た人がこの情報って一体何だったかなと言って意味情報を復元する、人間による作業を今行っている状態なんですけれども、これを減らしておくということができます。
 2つ目は閲覧環境、ビューアと言われたりするようなものです。これは読み上げとか表示の調整だったりキーボードの操作で全部にアクセスできるとか、そういったものです。例えばウェブベース、ブラウザベースのものであればWCAGの2.2という基準がございまして、これのLevel AAという水準があるんですけれども、こういったものを軸に確認していくのが今の一般的な状況になってきているかと思います。
 3つ目は配信と認証です。これは、学校側にどういうふうに学校のネットワークの中で、サーバーにアクセスしてデータを得ていくかとか、提供する上での出版社側のサーバーをどうしていくかみたいなお話です。この3つをしっかり分けながら議論していくということが必要で、そうなるとやっぱり、一部の出版社においてはこれら全部を一気に行うということが難しいところも出てくると思いますので、そうすると共通基盤として、いろんな出版社が乗り合いで使えるようなものって必要になってくるんじゃないかみたいなことが出てくるということです。
 ここで実際の動作を御覧いただきたいと思います。これは本当にモックアップで、私が仮につくってきたものです。皆さんに御覧いただくのは、後ろ側にデータとしてEPUB Accessibility 1.1を軸に構造化されたEPUBデータがあって、それをがアクセシビリティ機能を持つビューア上で動いている様子です。ビューアとしては、ブラウザ上で動く、WCAGの2.2のLevel AAを目標に設計した最低限のものを試作してみました。これは製品でもないですし、正式な適合評価を受けたような実装でもなくて、あくまでもイメージとして見ていただけると、この後の議論が分かりやすくなるかなと思いまして、つくってきました。
 見ていただきたいのは、EPUBデータ側では、EPUB Accessibility等の規格を参照して構造化され、本文の意味構造が保たれているということ。それから、そのデータを開いているビューア自体も、読み上げとかキーボード操作で操作ができるとか、あと目次とかページ番号とか見出しとか検索とかさまざまなアクセシビリティ機能を持っていること。そして、QRコードなど複数の入り口からそこに到達できるような形になっているということです。
 では、次のスライドでデモの動画を御覧ください。
(動画上映)
【近藤教授】  ここまでになるかなと思います。今のはあくまでもこういうイメージですよというのを何となく感じていただきたかったということで、あれが正しい回答だということではございません。あの裏に共通形式のEPUBデータがあるということと、それとは別にビューアがあって、そのデータを読み込んで表示できる環境があるというイメージを持っていただければと思います。さらにそれを実現しているウェブのブラウザベースでReadium(リーディアム)というオープンソース技術を用いて仮につくったんですけれども、それがサーバー上で動いているというイメージを持っていただければと思います。
 では次に、短期の目標についてお話をさせていただきます。まず、短期、中期、長期で考えていくというお話を申し上げましたが、短期の目標の1つ目というのは、新しい専用システムを全社に一律に求めないということが重要ではないかと考えています。2030年までに全ての発行者が別々のビューアと配信基盤、サーバー等も各社で準備してみたいなことになって、それを整備するという前提になってしまいますと、開発と運用の負担が重なりまして、既存の投資も生かしにくくなるところも出てくるのではないかと危惧しております。
 そこで、今ある学習者用のデジタル教科書、これは先ほど後藤課長から御説明がありましたように、一部の会社のものにはアクセシビリティの機能が備わったものがもう既にございますので、こうしたものが共通のアクセシビリティ要件を満たすかどうか、これを第三者的に評価を行って、実際に利用できるものは生かしていく、不足があれば、これはフィードバックを行って改善支援につなげていく。第三者の確認というのは、例えば出版社をルールで締めつけるというようなものではなくて、これは既存の各社の投資を生かしていただきながら、アクセシビリティ保障の社内蓄積にも貢献ができる、それをやった上で、ニーズのある児童生徒が実際に利用できるかどうかを確認するための仕組みとして位置づける、こういった形で行っていただければと思います。
 短期の2つ目は、これは機能的なものとかというよりも、本人、保護者の側から見た、冒頭に挙げたように、要望書というのをLD学会という学会のほうから、親の会とともに上げているんですけれども、その中でもかなり出てきたものです。ここは技術仕様とは少し毛色が違っています。例えば、デジタルな教材、アクセシブルな教材があったとしても、年度の当初に届かないとか、年度の途中から使い始めようと思っても使い始めにくいとか、申請の要件が重くてなかなか申請ができないとか、制度があるんだけれどもそれを知らないとか、そういうことでは支援になりませんので、これを改善していきたい。
 ここで5点挙げています。年度当初から使えること、年度途中でも始められること、診断書や手帳に過度に、手帳というのは障害者手帳のことですけど、そこに過度に依存せず、学校での把握や本人、保護者の申出も判断材料にできること、本人や家庭だけに申請責任を集中させずに、学校や教育委員会が制度につなぐことができること。それから、需要数だけではなくて、実利用数であったり途中追加数まで継続的に把握して改善につなげることです。よい教材を作るということと、必要な児童生徒がタイムリーに使い始められるかどうかというのは、これは全く別の課題になってきますので、両方を短期の要件として扱っていただきたいと思います。
 次は中期の課題になります。ここから中期なんですけれども、まず、それぞれの児童生徒のニーズに対応できて、共通要件を満たす市販製品がある場合は、第一義的には自治体がその製品を購入して利用する。こうすることによって、アクセシビリティへの企業の投資が製品の価値につながる経路を残していく、これは非常に重要だと思います。自社製品か共通基盤か、共通基盤の提案はしましたけれども、その二者択一にはしないほうがいいだろうと思います。その上で全ての発行者から、アクセシビリティの基盤となる共通の構造化データというのは点字の教科書を作る上でも必要で、そうした共通化データを提供していただきたいと思います。
 これは読み順だったり意味構造だったり原本のページ数だったり、図とラベルの対応だったり、下流で推定して設定し直すということは非常に難しい情報が上流にはあるんですね。この具体的な必須項目は今後の検討課題としたほうがいいと思うんですけれども、参考資料を作成しておりまして、これは事務局に提出しております。市販製品だけでは点字とか拡大とか、その他の様々な形式の音声教材までは当然カバーできませんので、その補完のための上流のデータとして、こういうアクセシブルなデータが共通に提供される、これは必要だと思います。図の代替的な説明みたいなものは、これは上流での作成、あと読み順とかもそうですね。こういったものを強く推奨して、製作費とか技術の支援を行っていく。出版社のほうで難しい場合は、共通ガイドに基づいて、下流での補完も可能にしていくということは両方必要かなと思っています。
 自社製品のアクセシビリティの工夫は、基準以上のものをつくっておられるところもございますので、これは各社の強みとして大いに異なっていてよいと思いますけれども、提供される共通データの提供時点の水準というのは、どっちから来たとしても特定の基準によるものとしていただきたいというのが提案です。
 もう一つ、中期で決めておきたいのが紙との併用の部分です。通常の学級では、読みの困難のある児童生徒がなんですけど、読めるところは紙で読んで、難しいところを音声とかデジタルで補って、周囲の児童生徒と同じページであったり問題番号であったりそういうものを共有するという使い方が想定されています。
 一方、現行の教科用特定図書の無償給与では、検定教科書に代えて使用するという、これはもう制度上そういう仕組みになっておりますので、同じ種類の検定教科書は原則として併給しないという整理になっております。ただ、とはいえ併用というものがありますので、併給が難しいのはよく存じておるんですけれども、実用的な実質的な併用をどう成立させるかということは想定しておく必要があると考えています。
 現在の紙の検定教科書と音声教材の併用を維持したり、デジタル版が単独で給付されて紙も必要な場合は、学校とか自治体とか、場合によっては保護者であるとか、それが別途調達したり一般販売での購入ができる、これを必要な時期に遅れなく行えるような手順を明確にしておく。さらに費用負担の在り方をどうするかみたいなことは難しい問題ですので、これらは別途制度設計が必要だと考えております。
 次に、長期のお話です。ここからが長期です。私は長期目標として、ここをぶらさずにぜひ置いていただきたいと思っている点になります。通常の学級では、読みの困難を組織的に見つけて制度につなぐ経路というのが十分とは言いにくい、これは申し上げたとおりです。そうある以上、アクセシビリティの機能等を既にニーズが発見されて申請できた人だけが使えるものにするという形に結果として制度的に限定していってしまうと、本来必要なのに、それを使うことの入り口に立てない児童生徒が残ってしまいます。そこで読み上げとか文字サイズとか行間とか色の変更、検索ナビゲーションとか、そうした共通に提供できるような機能は、診断や個別申請を要件とせずに、必要な児童生徒は誰でもまず試せる方向にしていく。使ってみて、必要性に気づく経路を教科書の制度の側で用意しておく、これが長期的、しばらく先に、大分先になるのかもしれないんですけれども、ここを堅持していくということが非常に重要だと思います。
 ただその場合も、点字だったり触図という手で触って読む図だったり、あとは非常に高度な図や表等の代替の説明などが不要になるわけではないので、こういう共通機能で足りない部分は個別支援として保障していくという、こういった形が必要になっていくのではないかと思います。
 次のスライドなんですけれども、これは中学校から高等学校に向けて、中等教育の問題を表したものになります。令和8年度の音声教材の需要数調査では、通常の学級で音声教材が必要と学校が判断した児童生徒は、小学校で1万147人、中学校でこれが1,878人に減ります。学年数が違うんですけれども、1学年平均でも、小学校では約1,700人程度、中学校ではこれが600人程度に減ります。読みの困難が中学校で減ると結論づけることはできないと思います。そして、高等学校は需要数調査の対象には入っておりませんので、別枠の参考として、主に高校用の教科書にも対応する主要な2つの音声教材の利用実績、これは令和6年のデータが出ておりますが、これは348人です。小学校から中学校にかけて需要数は大きく減っており、高校段階についても、把握できる利用実績は非常に小さい状況にあります。 この348人という数字は、高校用の教科書にも対応する主要な2つの音声教材の小中高等を含んだ全利用者数であり、高校全体の利用者数だけではないので、今後より詳しい調査が必要な状況ではありますが、そういった状況があると。
 同じ調査においても、学習面に著しい困難を示す割合は、先ほど挙げた同じ調査、文科省の調査ですけれども、学習面に著しい困難を示す割合は小6から中1にかけて大きく減ります。文科省の有識者会議では、支援計画等の引継ぎとか通級の設置状況とか、教科担任制による発見のしにくさが中学校で出てくることが関係し得ると述べているんですけれども、音声教材の需要数の減少を直接説明するものではないんですけれども、学校段階が上がる過程で把握の在り方が変わるということを示しているということだと思います。
 令和4年度の文科省の先ほどの調査では、同じ読むまたは書くの割合が、小中学校で3.5%だったのが高校で0.6%に減ります。これは参考1という添付資料には書いているんですけれども、米国の場合ですと、高校にかけて、例えば読み困難を主たる特性として持つことがある学習障害、SLD、Specific Learning Disabilityといいますけれども、それと個別の教育計画、IEPというんですが、これを持っていて、特別支援教育サービスを受けている生徒の比率は約6%程度なんです。日本では、教員回答では、高校の通常の学級で「読む又は書くに著しい困難」があるとされた生徒は全体の0.6%。もちろん、米国のSLDという行政上のカテゴリーと、日本の教員回答による「読む又は書くに著しい困難」は定義も把握方法も違いますので、単純比較はできません。ただ、数値の上では非常に大きな開きがあります。中等教育段階でニーズがどのように把握され、支援につながっているのかを考える上で、この格差は考慮しておく必要があると考えます。
 また、日本の場合は、高等学校には義務教育と同じ無償給与の仕組みもございませんので、義務教育で整える構造化データとか政策ノウハウを高校にどうつなげていくか、アクセシブルな教材を体系的に保障する財源の根拠をどの制度につなぐかというのは次の政策課題として残す必要があると考えております。
 最後にお願いを4点に絞っております。第1に、短期のところです。これは新しい専用システムを全社に一律に求めるということではなくて、既存製品を共通要件で第三者確認を行って、使えるものは活用していく。確認は、各社の改善の支援とセットにして、本人、保護者に着実に届くような、先ほどの第2の点、運用も整えるということを入れていただきたい。
 それから第2、中期です。個別のニーズに対応できて、共通の要件を満たす市販製品がある場合は、第一義的には自治体がそちらを購入して利用していく。併せて、これに並行する形で、全ての発行者からアクセシビリティの基盤となる共通の構造化データを得るような形ができるようにしておいて、市販製品では届かないニーズの場合は、共通の基盤だったり点字、拡大、音声などで補完をしていく。
 第3に長期です。これは申請できた人だけじゃなくて、必要な児童生徒がまず共通機能を試せるような方向を目標に据えておく。個別性の高い支援は別途確実に保障して、あとは高校の段階での把握、供給、財源の根拠なども政策課題として残しておいていただきたいと思います。
 第4に、全てに共通してになるんですけれども、データの要件です。先ほどのデモのビューアの背景にあったデータの部分です。このアクセシビリティに必要なデータ要件は一本化をしていただきたいと思います。とりわけ論理的な読みの順番と意味の構造を上流で保持しておいていただけるということ、これが非常に重要なポイントになりますので、これを検討の中心に据えていただきたいです。最初から完全な対応を求めるというと、皆さん、難しいということで終わってしまいますので、教科書向けにこれをどういうふうに実装していくかというガイドの部分だったり、あと検査手順の部分だったり、評価者をどういうふうに育てていくかとか、各社の技術支援をどういうふうに外側につくっていくかとか、こういったものを段階的に整えていくことが重要かなと思います。
 以上、2030年に現実的に間に合わせていくための策と、そのずっと先になるかもしれませんが、その先につながる選択肢を同時に残していただければ、アクセシビリティの保障ということでは本当に重要なポイントになってくると思いますので、よろしくお願いいたします。御清聴ありがとうございます。
 以上でございます。
【堀田座長】  ありがとうございました。大変具体的にまた、短期、中期、長期のフェーズ分けをしていただきながら御説明をいただきまして、ありがとうございました。この後、意見交換、少しですけれども、お時間ありますので、皆さんに挙手いただければと思います。
 挙手いただく間にちょっと私のほうでつなぎますが、今の近藤先生の御発言、御意見、御提示いただいたもののうち、特に短期のところは、できるだけこの指針の内容としてうまく組み込めればと思うところでございますし、また、中長期のところは可能なものは組み込むけれども、そうでない部分は、中長期的な課題としてしっかりと指針の中にも残していき、運用のされようによって生じる部分として、今後の検討課題としてちゃんと明記していけるようにしたいと思います。
 まず、市川委員、次に野澤委員に参ります。市川委員、お願いします。
【市川委員】  ありがとうございます。全国特別支援学校長会の市川でございます。文部科学省から御提案がありました資料の4ページにあります「New」と書かれているところですが、デジタル版教科用特定図書等について、これですが、現行でも視覚障害特別支援学校等を中心に、文字を大きくしたり色、白を反転させたりして使っているお子さんは多いものですから、これについては実施する方法で検討中と書いてありますが、ぜひ進めていただけるとありがたいなと思っていますので、よろしくお願いいたします。
 あと、近藤先生の御提案について質問と意見になりますが、アクセシビリティの問題というのは、どうしても障害とか困難ということから話が進みますが、得手不得手ということで考えられる部分もあると思います。字を読んで理解することが得意なお子さんもいるし、音声で読み上げたものを聞いて理解するのが得意なお子さんもいるということで、得手不得手という方で考えると、長期のほうにある発見、申請できた人から、必要な人がまず試せる共通機能というのは将来的には大切になっていくと思います。
 その中で、先生の御資料の中で、個別性の高い支援というのは別途であると。これは点字とか触図、視覚障害とかをイメージなさっていると思いますが、個別性が高くなく共通性が高いものというのは、やっぱり読み上げとか表示の調整等というのは非常に広い、私が言った得手不得手ということでは対象になる方が多いと理解すればよろしいでしょうか。近藤先生にその辺をお聞きできればと思っています。
 以上です。
【堀田座長】  後ほど回します。では、市川委員、野澤委員、岡本委員、森委員。今、市川委員が終わりましたので、あと3人、ここまでとさせていただきたいと思います。
 では、野澤委員、お願いいたします。
【野澤委員】  どうもありがとうございます。アクセシビリティがすごく重要だということが本当によく分かりました。この点について、やはりアクセシビリティの保障の重要性という視点は、指針の中にもまず盛り込むということはできないのかなという、盛り込む必要があるのではないかと思いました。やはり長期の課題としては挙げられていましたけれども、ニーズを取りこぼしていかないためには、先生方がこのことを認識しているということが非常に重要だと思いますので、その考え方であるとか、できれば教科書についても、先ほど近藤先生が見せていただいたようなデモみたいなものを先生方が見ることができる、それによって知るということをまず第1に、30年までにもできることとしてあるのではないかなと思いました。
 以上です。
【堀田座長】  ありがとうございます。
 岡本委員、お願いします。
【岡本委員】  教科書協会の岡本でございます。近藤先生、御発表ありがとうございます。現在の教科用特定図書の課題について、改めて整理することができました。ありがとうございます。
 先生、御発表の中で、教科用特定図書の在り方について、国際標準の規格になるようなアクセシビリティを短期的にそのまま今の教科書に当てはめるものではないというようなお話でしたので、そのような認識で少し安心しながら聞いておったところでございます。
 また、デモで見せていただきました様々な機能があったと思うんですけれども、その機能の多くは、今のデジタル教科書でも実装している機能が結構ありまして、同じような機能を御紹介いただけたと感じて拝見しておりました。
 発行者としては、国際標準の規格に合うかどうかというよりは、学習に困難がある子供たちに対して、どのような機能を実装して提供するのがよいかという観点でこれまで開発を続けてきたということもありまして、今お示しいただいたデモと、そういった意味では機能が非常に似ているので一安心しているところでございます。今後も、実際の使用において何が有効なのかというのを関係の方々といろいろ話しながら、検討、開発ができればいいなと思っております。
 最後に、中長期的な観点も通したデータ要件についてなんですけれども、上流側、発行者側での構造化データの作成というものについては、教科用特定図書の場合、教科書とは異なる価格設定がされておりますので、価格の中にそうした作成コストが当然盛り込まれてくるというのが必須条件になってくると思うんです。そうした場合でも、現在、多くの子供たちにとって分かりやすい形で、各社が創意工夫して作っている今の教科書のデータというものには、先生が今お話しされているような構造化データというのを持っている状態ではございませんので、それをまた、教科書の申請とは別の流れとして御用意するということになってくると、また、そのデータを作る期間ですとか費用というものが発生しますので、そうした発行者側の作業スケジュールなども今後、話合いの中でどういうふうに作っていけばいいのかというものを考えながら、現実的にできる部分と、それから先生がおっしゃった下流のところに任せるとか、共通の機関のところに任せる部分を少し区別しながら、長期的にそういったものをどう作り上げていくかという議論を継続的にお願いできればと思っております。
 以上です。ありがとうございます。
【堀田座長】  ありがとうございました。
 森委員、お願いします。
【森委員】  近藤先生ありがとうございました。子供たちに合った学びが選べるというところや、それをまた自分で試せる環境が大事だということ、大変共感をいたしました。その意味で共通基盤、これは非常に重要だなと思いまして、教材発行者の立場から申し上げますと、教科書だけではなく、多様な教材ともつながって、子供たちの学びを支える基盤になってほしいなと思いました。そのためには、特定の発行者のサービスに閉じない公共性や中立性のある共通基盤として整備していくことが必要ではないかと思った次第です。ありがとうございました。
【堀田座長】  ありがとうございました。それでは、近藤先生、何かまた御質問等ありましたので、よろしくお願いいたします。
【近藤教授】  ありがとうございます。まず、市川委員のおっしゃっておられた、得手不得手で考えて、長期的にはアクセシビリティの機能を備えておき、試せるようにしておくということはおっしゃるとおりだと思います。一方で、それと並行しておっしゃっておられた点字のものであったり、これはニーズとしてなくならないものになりますので、これをどう保障していくかは並行させておくという理解でよいかという御質問だったと思うんですけれども、これはそのとおりかと思いますので、点字のニーズは残り続けるかと思います。これもただアクセシブルなデータが存在すると、そういったものを作りやすいというところもありますので、この辺りはかなり技術的な話になってしまうんですけれども、この意味で並行させておくということは重要だということは御指摘のとおりかと思います。
 それから、野澤委員がおっしゃったことなんですけれども、「アクセシビリティ」という言葉自体を教員等含めて理解啓発をしていく必要がある、それらの機能等が存在して、それが何のためにあるのか、その背景、なぜそれがつくられてきて、それは子供たちが今どういう状況に実はあるのかということを啓発していく必要性があるんじゃないかという御指摘だったかと思いますけれども、これはおっしゃるとおりです。
 例えば、私が読みの困難なアセスメントを学校全体等にいきなり行うと、小学校5・6年の段階になっても、実は特殊音節がうまく読めてなかったみたいな子たちが多数出てくるみたいなことがあるんです。そういったことはなかなか、学年の学習指導要領に沿った授業を教員がしている中では、本当に初期、1・2年生の段階で見過ごされてきた困難さが残っている状況が分からなかったりする。それはなぜかというと、冒頭で申し上げましたように、発見の機能が整備されていないからなんです。
 そうすると、これらのものをカジュアルに試すことができて、例えば私がよく言うのが、読みの困難があるなんていうのは、アセスメントの仕組みがない今の日本の状態でどうするんだというのを学校の先生からよく御指摘いただくんですけど、できるかどうかは別としてちょっとやってみましょうかと言って、単元テストを代読、代筆で実施することがあります。そうすると、全然点数が取れてなかった子が、代読、代筆でやってあげると中にはその場で自分で読むよりも良い点数を取れたり、本人が苦しさを感じない形で実施できたりする子がいたりするわけなんです。これは診断ではありませんが、内容理解と読み書きの負荷を切り分ける手掛かりになります。こういったほかの形で教育の内容にアクセスするという選択肢が学校の中だとどうしても残せない場合があります。こういったことまで含めた理解啓発が必要かなというのは思っておりますので、野澤委員の御指摘は私は重要だと思いました。
 それから、岡本委員のおっしゃっておられたことはもうそのとおりです。これはもう現実解ですよね。現場の中で現実的にこれをどう実現していくかというのは、これが正しいからやっていくんだという、そういう理念に基づくようなことというよりも、現場でまず子供たちに届くようにしていく必要がありますし、お金がない中、無理やりやっていくみたいなことはなかなか難しいことですので、コスト負担を本当に実務的に考えていく、これは重要な御指摘だと思いますので、ぜひ御検討を続けていただきたいと思いました。
 森委員のおっしゃっておられた、共通基盤は教科書だけではなくて、教材においても共通して必要じゃないかという御指摘はもうおっしゃるとおりだと思います。さらに言うと、これは大学入学共通テストに至るまで、つまり能力の評価、あと選抜に至るところまで共通して必要なことであると考えております。今、大学入学共通テストの中でもアクセシビリティのことであったりというような議論はずっと進んでおりますので、そういったところとの連続性も考えて、教材、テスト、試験、選抜、そういったところまで考えてのことが必要かと思って私たちはやってきておりますが、まずは本日は、教科書の共通基盤というところで、これも共通のデータ基盤などが整っていると、あらゆるところにそれは応用可能ということになってきますので、その意味でもデータの共通化は、難しいことは多いんですけれども、避けては通れないことかと思っておりますので、何とぞその部分はお残しいただけたらありがたいです。
 以上です。
【堀田座長】  ありがとうございました。特に最後のデータの共通化と教科書発行者の本来の能力というか業務である質のよい教科書コンテンツを作るという、そこにできるだけ専念していただけるようなこと、そのための共通基盤の整備等、これは短期的にはすぐには難しい部分はありますけれども、中長期的には非常に重要な部分であるということをお示しいただきました。
 また加えて、「発見されていないお子さん」という言い方になりましたけれども、要は私たちが見逃してしまっている、あるいは人手の問題とかいろんなことで見過ごしてしまっているお子さんたちが学びやすいような環境をどうやって整えるかということに対して、教科書のデジタルの部分が一定の寄与が考えられるということですね。この辺りを含めて御指摘いただいたものと思いますので、これもまた指針にうまく組み込んでまいりたいと思います。近藤先生、本当にありがとうございました。
 今日は議題があと2つありまして、時間はもうすぐなくなります。というわけで、ちょっと巻きで大変恐縮ですが、議題3に参ります。参考資料3の主な論点、ここに9番で掲げられているんですけれども、提示できますかね。教科書の発行や採択等の各場面で、発行者や採択権者に過度な負担が生じないように留意点を明記するということを私たちは検討しております。これについて事務局のほうで、関係団体や各委員の御意見、今までいただいた意見を踏まえて整理いただいておりますので、これを御説明いただいた上で、皆さんからさらに追加する御意見がありましたらいただくというようにしたいと思います。
 では、後藤課長、よろしくお願いします。
【後藤教科書課長】  では、資料5でございますけれども、座長からお話がありました論点に関してでございます。何点かございますけれども、まず、今映しております2ページ目のところで行きますと、発行、採択の関係で行きますと、まず、これまでの御意見の中では、今回の制度改正によって、一番上の丸にありますように、教科書の形態として、大ざっぱに言えば紙なのかデジタルなのかハイブリッドなのかという3つの形態というイメージがなされるわけですけれども、それを1つの内容の教科書について、1つの同じ内容で3形態で作らなければいけないということなのか。であるとすると、発行者にとっての負担も非常に大きいという、こういった意見、あるいは採択する側としても大変だという御意見がありますが、それに対しては、一番下の矢印のところにありますけれども、少なくとも、国として同じ内容の教科書を3つの形態で制作するということを求める意図ではないんですということ、教科書発行者において、紙、デジタルそれぞれが効果的な学習場面などを踏まえて、適切だと思われる形態で教科書制作を行っていくという、そういうことだということを指針に明記をしていくことも必要ではないだろうかということで、2ページ目の資料のところは記載をさせていただいております。
 続きまして、3ページ目でございます。3ページ目の2番のところは、これは採択に係る負担ということで、二次元バーコード先のコンテンツについて、採択に当たっての調査研究の対象の範囲を区切ってほしいというか、明確にしないと採択の調査研究が大変だと、こういう御意見がよくございますが、これについては、実は検定調査審議会での議論ともリンクする部分でございますが、矢印にありますけれども、新たな教科書の制度では、教科書に掲載される二次元コード先のコンテンツも、今般新たにそれは教科書だということで扱ってまいりますので、検定の対象にします。同時にその内容は、教科書として必要なものに精選をされるということになりますということで、教科書採択の際にも、採択に当たっての調査研究の対象は教科書の部分に限定をしていただくということで、現行の教科書、二次元コードがついておりますけれども、採択の現場で実際には二次元コード先の部分も見てからという調査研究をされているというお話をよく我々もお伺いしておりますが、新しい制度への移行後は、そういったことはきちっと区別をして、教科書以外の部分というのを教科書であるかのように、一体として提供するという形にならない仕組みとするということが必要ではないかということを記載しております。ここは検定基準とも関わってくるのかなと思っております。
 3番目でございますけれども、3番目は2番とも似ているんですけれども、デジタルな部分の全体像を把握するのは困難だと、いろんな意見を掲載しておりますが、デジタルの部分というのが無限に広がっていってしまうんじゃないかというイメージで捉えられていて、そのことが作る側にとっても、あるいは採択する側にとっても負担になるという御指摘でございますが、ここについては、これもやっぱり検定調査審議会における検定基準に関する今後の議論ともリンクしますが、教科書の一部となる動画や音声などのデジタル部分については、教科書発行者の責任の下で作成、管理できる、学習指導要領に基づいて必要なものに限定をするということでございます。教科書発行者のほうできちっと管理できる範囲のリンクに限定をするという、そういう一定の枠組みの中で認める方向で今、検定基準も議論がなされているというところでございます。
 また、採択に当たっても、1冊の教科書のデジタル機能とかデジタルコンテンツについて一覧化したようなものを策定いただくことも併せて検討したいと思っておりまして、そういったことも、採択に当たっての参考資料として使っていただけるようなことも考えたい、そういったことも指針に書いていってはどうかということでございます。
 最後、4ページ目でございますけれども、採択に当たっての調査研究の相当な時間、労力がかかる、あるいは、今回のデジタル化に際して事務手続をもうちょっと簡略にできないだろうかということでございますが、これについても、繰り返しになりますが、教科書の一部となる動画や音声などのデジタル部分については、発行者の責任下で作成、管理できて、指導要領に基づいて不可欠なものというふうに絞り込んでいくということがまずあるということに加えまして、また、採択の調査研究については、無償措置法の10条に基づいて都道府県教委が教科書の研究をして、それを基に市町村教育委員会に対して指導、助言、援助ということで情報提供していくという仕組みがあるわけなんですけれども、そのほかに市町村教育委員会が共同で、共同採択地区でなくても、共同で近隣の市町村教育委員会で採択の調査研究をしているという事例もあったりしますので、こういったことをもっと広げる、横展開していくということを考えていくべきではないだろうか。
 また、実は都道府県レベルの教科書研究についても共同でやっていく可能性も考えていく必要があるんじゃないだろうかということを記載しております。また、現状を見たり伺ったりしておりますと、都道府県が行った教科書研究の選定資料を作るわけですけれども、そこの内容と重複した、もう一回市町村のほうで全く同じようなことをやり直すという実態もお伺いすることがありますので、その辺りについては、今回の指針であるとか、あるいは文部科学省の別途の通知であるとか、そういったことで、少し作業事務の効率化や簡略化を示していくことが考えられるんじゃないかということで記載をさせていただきまして、こういったことを御議論いただいております指針の中でも、考え方として示していければいいのかなということで事務局からの提案でございます。
 以上でございます。
【堀田座長】  ありがとうございました。また、この後もし御意見がありましたら皆さんの御意見を賜りたいと思いますが、発行や採択についてはこれまでも何度か議論してきましたし、こうやって整理もしていただいております。また、先ほど茂里局長がおっしゃったように、法改正がいろいろ大変な中行われたわけですけど、そしてこの指針が非常に重要であるという話になったわけですけれども、一方で、検討している会議体は私どもの会議体だけでなく、検定審とかいろんなところでいろんな形で動いているわけでして、これらをうまく指針の中にどう取り込んでいくかということも含めた御提案をいただいているのかなと思います。
 山口委員、田邊委員、御意見いただきましょう。山口委員、まずどうぞ。
【山口委員】  お世話になります。茨城県教育庁の山口でございます。今までの議論、ありがとうございました。私も先生方と意見が同じ部分もございますので、今回は行政の立場として、採択に関するものにつきまして御質問等をお願いしたいと思っております。よろしくお願いいたします。
 先ほど御説明がございました4ページになりますでしょうか、採択の部分になりますけれども、市町村の調査を十分にしなくても、県の調査で賄えるんじゃないかという御説明がございました。あるいは、他県との共同でというところもございまして、本県では12の採択地区がございまして、そこで、県で調査したものを基にしながら、再度12採択地区で調査をしているという実態がございますが、そういったことも今後軽減していく形になりますと、12採択地区のそれぞれの視点を県のほうでまずカバーをして、県のほうでさらに調査を進める負担が増えるような感もしております。本県、小中学校におきましては約5日間、調査を行っております。かつ人数は、教員と指導者合わせて約80名を招集して行っておりますので、そういった負担が少し増えてしまうのかなという点も考えたところでございます。
 あともう1点、採択は8月中ということで進めていると思いますけれども、これは変えずに進める方向かどうか、もし決まっておりましたら御説明をお願いできればと思います。
 以上でございます。
【堀田座長】  ありがとうございました。県の立場からお話しいただきました。
 次、田邊委員、お願いいたします。
【田邊委員】  これまで採択に際しては、全教科、全学年、すべての教科書を机上に置いて決定していくことを採択権者の重大な責務として取り組んできたところですけれども、新しい制度の下では、教科書が3形態ということが想定されるということで、当初は、大変な事態になると思っておりました。それは現在の高校で、1つの発行者が1つの教科でも複数の教科書を発行されているというような事態がすぐさま念頭に浮かんだものですから、これはとてつもない時間と労力を費やして選ばないといけないと想像し、それを大変危惧しておりました。
 この点について、さきほど言及があったように、3種類の形態を想定するということではあるものの、教科書の発行者は、それを3種類発行するのではなくて、1つを選択して教科書を製作されるという、そういう明示的な方針ということが確認されれば、ひとまず当初の不安感は解消されていきますので、ぜひともこの点を指針に明記していただきたいと思っております。
 論点2に関して、現行の教科書では二次元コードコンテンツとして扱われている音声や動画が新しいデジタル教科書へスライドしていって作られるということを想定しておりますけれども、ぜひともデジタル教科書にふさわしい内容として厳選されていく方向、これを作成の際に大事な方針として打ち出していただきたいと思っております。
 特にハイブリッドの場合には、これまでの紙の教科書で扱ってきた内容面での全体量を超えないような教科書作り、現行の紙の教科書プラス二次元コードコンテンツといった作りではなくて、紙とデジタルでそれぞれの相乗効果を発揮するようなバランスよく構成された、そういう教科書作りの方向性であることを大前提として、限られた授業時数で学習活動を行うということも念頭に置いた教科書作りをぜひとも確認していきたいということです。
 論点3のデジタルコンテンツについては、採択に際して、即座に内容を確認したり対比したりということが、紙の教科書と見比べてみた場合に非常に利便性が劣ります。こうした点をカバーするような手だてを講じることが必要不可欠ではないかと思っております。それぞれのデジタル教科書には、どんなデジタル機能が提供されているのか、どんな内容がどんな形で掲載されているのか、どんな紙の教科書との関連づけになっているのか、そうした少なくともコンテンツの内容について、それを把握できる可視化した資料、可視化されたリスト、こうしたものが何らかの形で別途備えられていることが採択の際には望まれると考えております。
 教科書発行者からも、共有されるフォーマット、どの教科書発行者もそこに書き込んで共通プラットフォームとなるような、採択に際して、特にデジタルコンテンツ内容を把握して、それを相互に比較して選ぶことができるようなしつらえを作ることができないかと思っております。
 論点4の採択の進め方に関しては、説明があったように、都道府県段階でも市町村段階でも所定の手順がありますが、それぞれの自治体で必ずしも一様ではないという実態がございます。小中学校に関しては、まず都道府県段階で選定審議会が置かれて、各教科の検定済み教科書について精査し概要をまとめる、そうしたステージが都道府県段階で行われます。でも、これは市町村が採択を進める際の参照情報として提示するということを基本としており、これをもって採択すべき教科書を絞り込むような手だてとすることには大変抑制的であるという実態がございます。都道府県からのアクションをふまえて採択権者である市町村では、次のステージとして、採択に向けた幾つかのステップを設けております。
 御説明にもありましたように、採択については、自治体単独採択と共同採択の2つの場合がありますけれども、いずれの場合でも、採択に関しては丁寧な審議を進めていくというスタンスを取っており、おおむね調査委員会、選定委員会、教育委員会会議といったステップを踏んで採択を決定する仕組みを取っております。採択する教科書を1つに絞り込む最終ステップの教育委員会会議では、会議日程についてインターバルを置きながら複数日、3日とか4日、そういった設定をして、どのステップでも相当の時間数と労力を費やして協議を重ね、決定に至っております。こうした現状に照らしてみて、新たな教科書制度については当初、現状の何倍もの時間がかかっていくような事態を大変危惧しておりましたけれども、新制度での1つの方向性として、教科書発行者は1教科について複数の教科書を製作するものではないこと、そしてハイブリッド教科書にあって単元や内容が適切に精選され、これまでの紙ベースの全体量を一律上回るようなことでないこと、こうした方針が定まっているのであれば、現状の進め方を基本とした対応を想定できるものと見込んでおります。
 採択の結果に関しては社会的関心が非常に高いものですから、説明責任を問われる場面が非常に多い現状があります。したがって、あまり採択をめぐっての簡略化の方向はなじまないものと判断しております。新たな教科書の登場を受けて、都道府県や市町村が共同で調査研究するアクションや共同で研修に取り組むような体制に目を向けていくこと、こうした試みは推奨されると考えておりますけれども、その一方で、1つの県内で全ての公立学校の全ての教科の教科書が1種類だけになりかねないような事態こうしたすり合わせの場をつくることに関しては回避すべきではないかと思っております。
 以上です。
【堀田座長】  ありがとうございました。
 それでは、高校の立場から、内田委員、お願いいたします。
【内田委員】  ありがとうございます。デジタル教科書の制度化は、高等学校の授業改善や生徒の学びの充実につながる大きな可能性を有しています。その一方で、学校現場にとっては、教科書が複雑化し、コンテンツの選択や操作に多くの時間を要することになれば、かえって教師の負担が増加することも懸念されます。また、高等学校においては、各学校の生徒の状況や指導の方針、目標により個別に採択をしております。したがって、今後の制度設計におきましては、まず1、教科書と教材の明確な区分、2、デジタルであることの教育的な必然性、3、コンテンツの量ではなく教育効果を重視すること、4、更新、訂正のルールとバージョン管理の明確化、5、学校、教師の負担を増加させないこと、こういったことを基本的な原則としていただきたいと考えております。
 デジタル教科書の導入は、教科書の情報量を増やすためのものではなく、生徒の理解を深め、探求的な学びを支え、教師の授業をより豊かなものにするためのものであるべきだと考えます。高等学校としてはこうした観点から、学校現場の実態を踏まえ、実効性のある制度の構築を期待しております。
 以上となります。よろしくお願いいたします。
【堀田座長】  ありがとうございました。幾つかの御意見が出ましたが、後藤課長、いかがでしょうか。
【後藤教科書課長】  ありがとうございます。まず、山口委員から御質問、御意見をいただきましたけれども、最後の4ページ目でお話をさせていただいた採択に係る調査研究の在り方についての話は、都道府県、市町村、総体として調査研究の事務というか、その量を増大させようという意図は全くありませんで、重複している部分もあるという話も聞きますので、その限りにおいて効率化したり、また、共同採択地区でない場合でも、市町村の間で共同で調査研究をしていくという形で、先ほどまさに山口委員からも御紹介いただきましたが、学校現場の先生にある程度関わっていただきながら調査研究をしていただくという、そういう業務が現にあるわけですが、その辺りの効率化を進められる部分がもう少しあるのではないかという、そういう趣旨の提案でございます。
 また、8月末という採択の時期の話もありました。これは御意見等を踏まえて今後、さらに都道府県、市町村での実務の状況、毎年度我々も調査をしてお伺いしているところですが、どのような工夫ができるかというところは引き続き検討していきたいと思います。採択だけでなく、実はその後の発行、供給というスケジュールとセットでスケジュールが組まれておりますので、その辺りのことも踏まえながらの検討が必要だろうと思っております。
 それから、そのほか、個別の御意見ということでありませんけれども、デジタルな部分を教科書、教材との関係でどのように整理していくか、あるいは教科書の中にどういった分量を認めていくのかということが、決まった時数の中でということの関係できちんと整理をしていっていただきたいという御意見をいただきました。まさにこれは、この指針について御検討いただいている検討会議の議論というのも横目に踏まえながら、検定調査審議会のほうで併せて先生方からいただいた視点をもって、具体的に検定基準という形でどのようにルール化していくか、枠組みをつくっていくかということで、並行して検討しているところでございまして、その辺りについても追ってまた検定調査審議会での検討状況についても共有させていただく場を設けさせていただきたいと思っておりますけれども、引き続き検定調査審議会とも連携しながら、いただいた御意見に沿えるような形で進められるように考えてまいりたいと思います。
 以上でございます。
【堀田座長】  ありがとうございました。この後、本当は議題4の話があったんですが、もうお時間が来ておりますので、これは次回送りにさせていただきます。浅原参事官には随分お待ちいただいて大変申し訳ございませんでした。
 それでは、閉会としたいと思いますが、事務局から事務連絡をお願いいたします。
【吉田教科書課課長補佐】  本日の議事録につきましては、委員の皆様に御確認をいただいた上で公開をさせていただきます。
 また、次回の会議でございますが、既に御案内させていただいたとおり、9月28日月曜日14時から16時に開催をさせていただきますので、御出席可能といただきました委員の皆様におかれましては、引き続き御予定の確保を何とぞよろしくお願いいたします。
【堀田座長】  ありがとうございました。多少時間が延びてしまってすみません。本日の会議はこれで閉会といたします。どうもありがとうございました。

―― 了 ――

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初等中等教育局教科書課