デジタルな形態を含む教科書の発行・採択等の指針に関する検討会議・第4回議事録

1.日時

令和8年8月3日(月曜日)10時00分~12時00分

2.場所

文部科学省 15F特別会議室 ※対面・WEB会議の併用 (東京都千代田区霞が関3-2-2)

3.議題

  1. 児童生徒の発達段階について (1.委員からのヒアリング(野澤委員)、2.外部有識者ヒアリング(渡辺弥生 法政大学文学部教授))
  2. 健康への影響について(外部有識者ヒアリング(細田千尋 東北大学大学院情報科学研究科准教授、東北大学加齢医学研究所准教授、慶應義塾大学大学院システムデザイン・ マネジメント研究科教授))
  3. 学力等への効果・影響、諸外国の動向について
  4. 学習活動における「手書き」の重要性について

4.議事録

【堀田座長】  皆さん、おはようございます。定刻となりましたので、ただいまからデジタルな形態を含む教科書の発行・採択等の指針に関する検討会議の第4回を開催いたします。
 本日もまた御多忙の中、御出席いただきまして、ありがとうございます。
 本日は、工藤委員、松谷委員、弓倉委員の3名が御欠席、市川委員、内田委員、柴田委員、田邊委員、松下委員、山口委員がオンラインでの御出席、それ以外の委員の皆さんは対面で御出席をいただいてございます。
 それでは、事務局からの連絡事項等、よろしくお願いいたします。
【吉田教科書課課長補佐】  冒頭、すみません。8月1日より着任いたしました吉田と申します。これから事務局としてお世話になりますが、どうぞよろしくお願いいたします。
 それでは、本日の会議開催形式及び資料について御説明させていただきます。
 今回の会議は、前回同様、対面、オンラインを組み合わせたハイブリッド形式での開催です。また、前回同様、報道関係者と一般の方向けに会議の模様をユーチューブにて配信しておりますので、お含みおきください。
 ユーチューブ配信用の音声は、会議室中央の音響機器でまとめて集音してございますので、委員の皆様におかれましては、御発言時を含めて、お手元のタブレット端末のマイクはミュートのままにしていただきますようお願いいたします。カメラにつきましては、御発言時も含めて、会議中はオンにしていただくようお願いいたします。御理解のほど、よろしくお願いいたします。
 次に、資料の確認をさせていただきます。本日の資料でございますが、議事次第に記載のとおり、資料1から5、加えて参考資料が1から5となっております。委員の皆様には紙でもお配りしてございますが、お手元の端末でも御覧いただけます。御不明な点がございましたらお申しつけください。
 事務局からの事務的な御案内は以上でございます。
【堀田座長】  ありがとうございました。
 それでは、議題に入りますが、まず最初に、議題、本日は4つございまして、今提示されているとおりですけれども、1つ目が、児童生徒の発達段階についてということで、ヒアリングを行います。2つ目は、健康への影響ということで、こちらも有識者にお越しいただいてヒアリングをいただきます。3つ目が、学力等への効果・影響、諸外国の動向についてということで、4つ目が、学習活動における「手書き」の重要性について、これは確認的なことでございますけれども、それについて御検討いただきます。
 それでは、1つ目、議題1からまいります。児童生徒の発達段階についてということですが、私どものこの会議体の1つ前の中教審のデジタル教科書推進ワーキングの審議まとめにおいては、デジタルを取り入れる学年や教科について、第2回、第3回の会議で議論してきたような教科特性、そのほか児童生徒の発達段階等に応じて検討するということがそのワーキングで求められておりました。これを受けて、本検討会議の主な論点におきましても、論点の丸3として、児童生徒の発達段階との関係を掲げているところでございます。本日の会議の中でこれを検討していきたいということになります。
 本議題の検討に当たりましては、発達心理学及び保育学を御専門とされている野澤委員から、まず御発表いただきます。
 また、同じく発達心理学を御専門としていらっしゃる法政大学文学部の渡辺弥生教授をお招きしているところです。
 それでは、まず野澤委員から御発表をお願いいたします。よろしくお願いします。
【野澤委員】  よろしくお願いいたします。野澤と申します。
 私は、「デジタルと子どもの発達」ということで、発達心理学的な観点からの知見を御紹介したいと思います。
 続いてお願いします。
 義務教育期に保障すべき発達的基盤は非常にいろいろあると思いますけれども、まず、資質・能力の形成のために学習・学力の基盤となる力、そして、認知的・社会情動的、非認知などとも言われる力の形成というところがあるかなと思います。
 また、近年注目されている「主体的・対話的で深い学び」に向けては、身体的・直接的経験であるとか、他者との相互作用を保障していく必要があると思いますし、学習を支える関係的な基盤、人間関係の基盤といったところも非常に重要となってくるかと思います。
 そういったときに、デジタルがどういう意味を持ち得るかということは、非常に重要なこととして慎重に考えていく必要があると考えております。
 では、続いてお願いします。
 デジタルと子供の発達に関しては、本当に非常に多くの研究が積み重ねられてきているわけですけれども、実証的な知見として、大きく2つの流れがあるかなと思いますので、そちらを御紹介していきたいと思います。
 最もこの委員会において関係が深いかなと思いますのは、デジタルか紙かということが子供の「読み」の発達にどのように影響するかという観点です。
 もう1つは、デジタル使用、一般に「スクリーンタイム」などと言われますけれども、そういったところがいろいろな発達の側面にどのように影響するかという研究があります。
 では、続いてお願いします。
 まず1つ目のデジタルか紙かということが、「読み」の発達とか「読み」にどのように影響を与えるかという、そういった研究を御紹介していきます。
 次のページをお願いします。
 これまで多くの研究で、読解の得点が、スクリーンより印刷のほうが高いという研究は結構たくさんあるということが指摘されています。「スクリーン劣位効果」などと言われたりしております。
 要因としては以下の2点が指摘されておりまして、1つは、浅い処理仮説ということで、デジタル機器を頻繁に使用して、読者とテキストとの素早い相互作用が行われることによって、デジタルテキストが表層的に浅い処理になってしまうというような仮説が1つあるということです。
 もう1つは、認知負荷仮説というもので、機器を扱う際には、スクロールしたりとか、端末の操作であったりとか、様々なデジタル環境の処理が、あとは、ストーリーに関係のないような機能がいろいろついていたりするために、そこに認知資源を配分しなければならなくなってしまって、紙に比べると、読解に利用できるような認知資源が少なくなってしまうということがあるのではないかということが指摘されております。
 次のページをお願いします。
 ただ、最近、いろいろな研究をメタ分析したり、系統的なレビューをしたような研究を見てみますと、一貫してデジタルより印刷、プリント、紙のほうがよいという結果ではなくて、様々なほかの要因を考慮する必要性を示す結果が出されております。
 例えば、物語を理解したり、読解をするのか、語彙の獲得かによっても違うということであったり、様々なenhancementと言われるような拡張機能、いろいろな機能がどういうふうなもので、それをどう使うかということであったり、子供の特性との関係もあるであったり、学校や園で使うのか、家庭で使うのかという文脈であったりということが影響してくるような結果もあるということです。
 次のページをお願いします。
 物語理解か読解か、語彙かということでは、物語理解や読解では、どちらかというと、印刷、紙のほうがよいというような、メタ分析でもそういう結果が出ているということです。
 一方で、語彙を獲得するというか、言葉を覚えるという面では、デジタルのほうがよいというような研究も多いということです。
 続いて、次のページをお願いします。
 それから、付加機能、様々な付加機能があるんですけれども、物語理解や読解の場合に、物語の内容に何か焦点を当てるような機能、背景知識が出たり、追加説明が出たりする場合には、デジタルのほうがよいというような結果もあるということです。
 一方で、デジタルの辞書機能みたいなものは、物語理解にはあまり関係ないような認知資源を、さっきの認知負荷仮説にも整合するような結果かなと思うんですけれども、あまり関係のないようなことを使ってしまうと、悪影響の場合もある、紙のほうがよいということがあり得るということです。
 続いて、次のページをお願いします。
 あとは、子供の特性との関係ということで、デジタルの拡張機能が学習障害のあるお子さんなどに対して、よい効果を持ち得る、そういったお子さんに対して適した機能であれば、例えばですけれども、長い文章を読むことについて、学習障害のある高校生に対する読み上げ機能がよい効果があるということであったり、学習障害のある小学4年生の研究では、むしろストーリーに関わるアニメーションがあるということが読みを促すこともあり得るということで、デジタルならではの機能が、読みが難しいお子さんにとって、よい効果を持ち得るというような研究もあるということでした。
 一方で、学校か園か家庭かという文脈を考えてみますと、学校や園では、家庭よりもスクリーンがよくないといいますか、劣位効果が現れやすいというような結果もあるとのことです。
 続いて、研究例を御紹介したいと思います。
 特に、やはり読み始めの子供にとってデジタルがどうかというところは、この委員会でも焦点になっているかと思いますので、小学校1年生の研究を御紹介したいと思います。
 こちらは、コンピューター、タブレット画面か、紙、印刷のものかで、物語文と説明文、1年生なので非常にシンプルな文章です。
 理解度については、いずれも選択式なんですけれども、違う内容を入れているということです。トピックの理解、1つは、何についての物語ですかというシンプルな質問です。それから、字義的理解というふうに言っているのは、この主人公には何人兄弟がいますかみたいな、本当に事実を聞くもの、さらに、推論的理解、なぜこの主人公は不平を言っているのですかみたいな、ちょっと物語から推論が必要な、やや深い理解を必要とするような質問をしてみたということです。
 次のページをお願いします。
 そうすると、この小学校1年生は、デジタルは定期的に学校で利用していそうだということも書かれていたんですが、主題理解と字義的理解、シンプルな質問に対してはタブレットのほうが成績がよくて、推論的理解というのは、全体としてはあまり差がなかった。ただし、単語の読みがまだ十分でない子供に対しては、印刷のほうが成績がよいという結果だったということです。
 ですので、まだまだ読みのスキルが難しい子にとっては、やっぱりデジタルが認知負荷が高くなってしまうということなのかなというようにも思います。
 では、続いてお願いします。
 考察なんですけれども、紙とデジタルの差異ということで、最近の研究では、紙とデジタルのどちらが有効かというのは、様々な要因とか組合せによって異なるということなので、ケース・バイ・ケースということも書かれていたんですけれども、個々の状況を慎重に検討していく必要があるということかなと思います。
 また、認知負荷ということに関しましては、やはりデジタルメディアの認知負荷が高くなるようなストーリーと関係ないものを使うとか、そういったことは読みを妨げる、これはかなり一貫した結果が出ています。
 特に、先ほど御紹介したような単語を流暢に読むことが難しい段階では、やや深い処理をする場合には、紙のほうがよいというふうに示す結果もありまして、読みを形成する時期においては、特に読むことそのものへの認知負荷は高いので、デジタルを使用することによって、深い処理は妨げられる可能性もあるかなと思います。
 ですので、やはり認知負荷を増やすようなデジタルの使い方は避けること、また、読みの形成時期は、そこは特に慎重に進める必要があるのではないかと思います。
 続いて、次のページをお願いします。
 あとは文脈です。学校とか園は、やはりスクリーン劣位効果が現れるということも示されているということで、今までの研究だけでこれが言えるか分からないんですけれども、私の個人的な意見でもあるんですけれども、学校というのは、すごく注意をいろいろなところに向けなければいけない、教科書であったり、先生であったり、ほかの子供であったり、また黒板もあるしということで、そういった環境なので、認知負荷とか、注意の配分に負荷が高いような、もともとそういう環境かなと思いますので、そういったところでは、デジタルが導入されるということがどういう意味を持つのかというのは、結構慎重に考える必要があるかなと思っております。
 2022年のPISAでも、OECDの平均で30%の生徒が、ほとんどまたは全ての数学の授業で自分のデジタル機器によって注意をそらされると回答しているそうです。また、ほかの生徒の利用に気を取られる生徒が25%、日本では、その割合は低くて、やはりかなり授業が構造化されているというところは、今のところはあるのかなと思うんですけれども、今後もやはりデジタル使用が注意散漫を生じないような工夫は必要かなと思います。
 では、次のページをお願いします。
 あと5分ほどなので、後半はちょっと急いでいきたいと思いますが、こちらです。これは補足的になるんですけれども、印刷媒体とデジタル媒体で読むという経験が子供にとっては異なるのではないかというような指摘もあります。なので、代替可能なものではないという注意は必要かなと思います。
 では、続いてお願いします。
 デジタル使用の発達への影響というところで、続きまして、こちらはちょっと急ぎ足でいきたいと思いますけれども、子供のインターネット利用の現状が調査されているんですけれども、こちらは微増してきているというようなところです。
 次のページをお願いします。
 ちょっと詳しく見る時間はないんですけれども、一番長いところで7時間以上というところなんですけれども、こういった長時間の利用は、年齢が上がるにつれて増えているという傾向は見えるかなと思います。
 続いて、次のページをお願いします。
 こういうスクリーンタイムの増加ということが、子供の学業にとってどのような影響があり得るかということで、こちらはPISAなので15歳時点ですけれども、直線的な影響ではないのではないかということが、ここからは読み取れるかなと思います。なので、2時間から4時間ぐらいをピークに山型になっている、なので、全然使わないことがいいかというと、それはまた分からないというところではあります。
 続いて、次のページをお願いします。
 ほかの研究を見てみましても、例えば、認知発達との関連を見てみても、ポジティブな影響もあり得ると、使い方などによってはポジティブな影響もあると。ただ、ある程度一貫しているのは、ある程度長時間になり過ぎるということが、いろいろな悪影響があり得るかもしれないというところかなと思います。「諸刃の剣」だというふうに、この研究では指摘されています。
 続いて、次のページをお願いします。
 社会情動的発達の関連に関しても、弱いながらも悪影響があり得るということで、スクリーンタイムが長くなっていくということが、それほど強いネガティブかというと、そうでもないかもしれないというところで、この辺りは、どれぐらい長いかということも先ほどのPISAの調査の結果からしても、そういったことも関係するのかなと思いますけれども、やはり長過ぎるスクリーンタイム使用は悪影響があり得るのではないかということは言えるのかなと思います。
 続いて、次のページをお願いします。
 もしデジタル使用が長いことが認知的な発達とか社会情動的発達を妨げるとしたら、そのメカニズムの1つとしては、置き換え仮説というものが言われています。スクリーンタイムが長いことが発達に有益な活動に費やす時間を奪ってしまうということが発達を妨げるという仮説です。
 続いて、お願いします。
 考察と実践的示唆としましては、デジタル使用と学業成績のPISAの調査の結果からすると、必ずしも絶対悪というわけではないかもしれないということで、使い方とか内容によっては、ポジティブもあるかもしれないんですけれども、時間の制限であったり、ほかの活動とのバランスを取るということは必要なことなのではないかと考えられます。
 また、デジタル使用と認知的・社会情動的発達も同様に、身体的・直接的な経験であったり、他者との対面での相互作用など、子供の発達にとって重要な経験がデジタル使用に置き換わってしまうことがないような配慮が必要ではないかなと思います。
 では、最後のページをお願いします。
 繰り返しになりますので簡単にしたいと思いますが、デジタル・紙が「読み」への影響にどのような影響を及ぼすかという研究からは、デジタルのよさを生かすためには、子供の特性や目的など個々の状況に応じた慎重な使い方が必要ではないか。
 また、認知負荷を増やすようなデジタルの使い方は避けることが必要だと思います。
 特に、読みのスキルの形成時期には、デジタルは慎重に使用することが必要だと考えられます。
 また、教室場面では、デジタル使用による注意散漫が生じないような教室とか学習のデザインが必要ではないかと思います。
 また、印刷媒体には、デジタルの読みとは違う経験となる可能性も考慮して、深い読みのスキルの発達を促すということは重要なことではないかと思われます。
 また、デジタル使用の発達への影響に関する研究からは、デジタル使用の際は、時間の制限とか、ほかの活動とのバランスを取るということ。
 身体的・直接的な経験、他者との相互作用など、子供の発達にとって本当に重要な経験が、デジタルを使い過ぎることによってなくなってしまうとか、置き換わってしまうということのないような配慮が必要ということが、これまでの研究の知見からは言えることではないかなと思います。
 以上となります。ありがとうございます。
【堀田座長】  ありがとうございました。大変貴重な研究成果の御披露、ありがとうございました。
 意見交換は、この後、渡辺教授から御発表いただいた後にまとめて行うこととなりますので、よろしくお願いします。
 では、渡辺先生、よろしくお願いします。
【渡辺教授】  渡辺です。よろしくお願いいたします。
 「発達段階からの視点」からお話しします。時間の関係で早口になると思いますが、この6つの柱でお話ししたいと思います。
 次のスライドをお願いいたします。
 まず、紙かデジタルかという方略、方法を考える際に、まず目標が何なのか、つまり、学習効果を高めるということは一体どういうことかということについて再確認しておく必要があるかと思います。
 「わかる」という目標だけではなく、「学びたい・ワクワクする」、そういうものを育む教科書を私は求めたいと思っておりまして、教科書は知識を伝える「器」であると同時に、子供同士や、子供と教師をつなぎ、学びへの意欲を引き出す大切な「存在」だと考えています。
 発達的特徴や一人一人の多様性を踏まえて、次の視点から検証する必要があるかと考えています。
 今までは理解や知識の定着につながったかというところがどうしても重視されていたかと思いますが、やはり「面白そう」であるとか「やってみたい」というワクワク感を引き出せるかが大切です。安心して「分からない」とか「間違えた」と言えるかとか、子供同士の会話や教え合いが生まれるか、「自分も参加できたと感じられるか」や、「新たな孤立や学習格差が生じていないか」といったようなことです。「何を学んだか」ももちろん重要ですけれども、「もっと学びたい」、「誰と、どのように学べたか」ということを学習目標として捉えてお話ししたいと思います。
 次のスライドをお願いします。
 現実に、今の教育目標に、「主体的に学び、他者と関わりながら、よりよく生きる力の育成」とあり、今お話ししたことと変わらないことが書かれていると思います。
 私自身は、現在、ソーシャル・エモーショナル・ラーニング(SEL)という、OECD並びに国内外で普及しているこの考え方が一番分かりやすいと思っており、よく引用することがあります。要は、お互いが感情を理解し調整し、前向きな目標を設定して、他者との共感を示し、対人関係を円滑に築き、責任ある意思決定を行うために必要な知識やスキルや態度を身につけ、実践するプロセスという定義です。ですから、SELは単なるプログラムではなく、教育としての在り方を示しています。
 次のスライドをお願いします。
 先ほどもお話に出ましたが、これと並行して、認知的スキルと非認知的スキルという分け方があります。今までの学びの成果が、どちらかといえば、スライド左の認知的スキルを重視した傾向になっていなかったかということです。いわゆる知識を獲得して、思考力や記憶力を伸ばし、短時間に問題解決をする、ということが勉強というふうに子供は思いがちです。それよりも、もちろんそうした認知的スキルは大事なのですが、それをいわゆる成果を出すためにも、スライド右の非認知的スキルと言われる社会情動的スキルを伸ばしていくことが大事だと今言われております。
 では、これは何かというと、目標のために情熱を持つとか、粘り強く考えるとか、あるいは、互いに敬意を持って、また、自己肯定感、自尊心を高めるということです。こうした力が備わってこそ学力が伸びると考えられております。
 次のスライドをお願いします。
 紙かデジタルかという白黒思考というよりは、むしろそれぞれの得意な機能を積極的に活用すべきではないかと私は考えます。
 先ほどもお話にありましたが、紙が向く機能として、文字や語彙の初期習得であるとか、読解のときの精読であるとか、コミットメントができるとか、ノートへ要約することによって記憶が定着する、いろいろなよさがあるかと思います。
 一方、デジタルが向く機能としては、反復練習ができる、すぐに「いいね」みたいに即時フィードバックができる。それから、紙では得られない音声だとか、表情だとか、しぐさだとか動的な資料を得ることができる。また、マルチタスクの統合であるとか、いろいろな探求の仕方ができます。読字困難をはじめ、いろいろな困難を抱える方が、アクセシビリティ機能を活用することで、それぞれにあった使い方ができるとよいのではないかと思います。
 次、お願いいたします。
 考える力の認知的な発達理論の1つの例ですけれども、小学校中学年以前は話し言葉が中心であったのが、小学校高学年になるにつれて、話す言葉とは別に書き言葉という世界が獲得できるようになります。それまでは具体的にヒトやモノやコトで考えていたのが、しだいに「友情」だとか、「愛」だとか、抽象的思考ができるようになります。自分の体を通して経験していたのが、小学校中学年からは、いろいろなドラマだとか、さまざまな他人の状況を観察して学習できるようになります。言語を覚える学習であったのが、言語を道具として、難しいことを考えることができるようになることが明らかにされています。
 次のスライドをお願いします。
 非認知的能力といいますか、社会情動的なスキルとしての「思いやり」の発達ですが、スライドの中のマル1の右に向かってマル2、マル3、マル4、マル5をご覧ください。幼児は自分のことで精いっぱいであることから、自己中心的な役割取得能力しか難しいのですが、小学生になりますと、近しい友達のいろいろな気持ちや考えを想像することができるようになります。小学校中学年以降になると、表面的な笑っているか泣いているから感情を推測するだけではなく、相手の心の奥を探ることができるようになります。小学校高学年になると、親しくない人間関係でも、他人の考えを想像することができるようになります。中学生以降になると、例えば、江戸時代など時代を遡ったり、あるいは、国内外で見知らぬ人についても情報があれば他人の考えを想像することができる力が獲得できるようになります。
 次のスライドをお願いします。
 このような事をふまえて、紙かデジタルかに関わる発達段階を要点的にまとめます。認知的側面の発達としては、まず、注意の制御という点で考えますと、先ほどのお話にもありましたが、認知資源が限られています。注意の制御について考えると、意図的に注意を配分し、重要な情報に選択的に集中しながらも、不要な情報や干渉を抑制する認知的な機能のことを言います。これが、年齢が低い子供は、重要な情報と周辺の刺激を選び分ける力が未発達なので、あまりに周辺刺激のアニメーションとか、操作、通知、画面上の余白情報が多いと、それを分けて処理することが難しくなります。そのため、ワクワク楽しいデジタル教材が、必ずしも理解しやすい教材ではないことがあるということになります。
 ワーキングメモリについて考えてみます。これは、情報を一時的に頭の中に保持しながら、同時にその情報を処理し、操作する脳の働きのことを言いますが、思考したり、判断したり、実行したりする土台で、「脳の作業机」とも例えられます。デジタル教材がスクロールとか、タップとか、いろいろな複数情報の同時処理などが増えるコンテンツであれば、発達段階が低い子は、この負荷の影響を受けやすいと考えます。
 さらに、「メタ認知」という言葉がありますが、自分の思考や行動を客観的に把握し、制御する能力のことで、自分の思考について俯瞰的に見る力のことを言いますが、小学校中学年以前では、自分は今、この紙の教科書で理解できているかとか、デジタル教科書が理解できているかということを客観的に考える力がまだ未熟です。ですから、本人が読みやすいと感じる媒体と、実際に理解する媒体とが一致しない場合があるかと思います。
 次のスライドをお願いします。
 今度は、非認知的側面で考えてみます。「ソーシャルスキル」という言葉がありますが、相手の意図や感情を理解する、状況に応じて行動を選択する関係を維持するといった「対人文脈の中で学ぶことのできるスキル」を言います。紙を使った学習は、同じ対象を共有したり、同じ空間で読んだり考えたりしますし、互いの表情を見たり、視線を伴うという対面でのやり取りが自然に感じられ、安定した共同注意を喚起すると考えます。なので、小学生においては相手の反応を見ながら調整する力を考えると、紙媒体がよいところもあると思いますが、ただし、デジタルにもう既に慣れていて、多様な他者との接触が可能になるように活用すれば、人の心の仕組みや、より拡大した人間環境を理解させることもできるとは考えます。
 それから、「感情リテラシー」という言葉がありますが、自分や他人の感情を正しく理解し、それを適切に表現し、調整する能力のことを言います。紙の媒体は、感情リテラシーの土台となる深い読解を促し、登場人物の複雑な感情を自分のことのように疑似体験する力、1つの感情にじっくり向き合う時間が確保されるということがあります。ただし、デジタルは感情を「客観視・分析」するためのツールとして機能することができますし、自分の表情とか声を録音して感情を確認したり、ゲーム形式で他者の表情や声から感情を当てるなど、感情の語彙などを増やす教材としては効果的で、いろいろな活用の仕方があるかと思います。
 次のスライドをお願いします。
 ですから、デジタルの活用例としては、発達の足場かけとして機能することができるということや、個別化が可能であり、即時にフィードバックによる学習強化ができるとか、また、映像によって、より分かりやすく、楽しさや興味を与えるコンテンツを与える可能性は高いと思っています。
 次のスライドをお願いします。
 実際に私自身は、デジタル教材を使って学校の現場にいろいろと活用しておりますので、一例として、小学校4年生頃を対象にした授業をここでご紹介します。デジタル教材を見た後の子どもたちの活発な議論を御覧ください。
(動画上映)
【渡辺教授】  そうですね。デジタルの教材のコンテンツを見たのちに、それを基にして大変活発な議論をしているところです。
 次のスライドを御覧ください。
 これはソーシャル・エモーショナル・ラーニングのセルフマネジメントを教えるために自分たちが作った教材ですけれども、ちょっと御覧ください。
(動画上映)
【渡辺教授】  このような動画を活用することによって、読み物では、読解がなかなかイメージが膨らまない子に対しては、効果があるかと思います。例えば、先に説明しました思いやりの発達関係では、三者関係などについて想像することが難しい子どもでも、それぞれがどんな気持ちを抱いているかということが可能となり、その状況に自身をコミットしやすいコンテンツを与えることができます。
 さらにもう一つの動画をご紹介しますが、これは高校生対象の場合です。モデリング(モデルを見て学ぶこと)を活用して、よい例と悪い例を比較することができます。状況を客観的にみることによって、私たちの人間を理解するということに効果的です。
 それでは動画をお願いします。
(動画上映)
【渡辺教授】  これは不登校の生徒さんに、オンラインでソーシャルスキルを学んでいただく教材です。普段気づかないちょっとした自分の言葉であるとか、言い方に気づかせ、そうしたことによっても人間関係が変わるということを、簡単な短い動画で気づかせることができます。
 それでは、次のスライドを御覧ください。
 今年のつい最近に発表された研究では、幼児にデジタル絵本を見せたところ、登場人物に感情移入しやすくなりということが発表されているので、必ずしもデジタルが幼児や小学校では難しいというわけでもないのかなと思っています。
 次、お願いします。
 まとめに入りますが、発達の視点から、デジタルか紙かについて考えたときに、まず、小学校低学年は選択的注意が未熟であり、外的刺激に注意が引っ張られやすいと言えます。そういう難しさがある時期なので、「情報が固定されている」、「視線の移動が安定」、「余計な刺激が少ない」という利点を持つことが求められます。デジタルの得意な部分としては、音声や語彙を活用して、読みの楽しさやスキルを支援するためであれば使い得ると思います。あるいは、フィードバック機能を生かして個々の生徒に満足感を与えるということもできますし、先ほど野澤先生がおっしゃったように、対面のリアルな対話が求められるとは思います。
 小学校中学年は、低学年と区切りは難しいですが、メタ認知が獲得されるようになるのが特徴です。そういう意味では、「情報の切替えが容易」であったり、「探求や検索が可能」であるということからも、デジタルの活用を併用すると、例えば、複雑なことの理解につながる可能性で、算数の動的な理解、図形の変化とか、図形の回転・変形とか、グラフの変化などはデジタルが分かりやすい可能性があるかと思います。
 次のスライドをお願いします。
 小学校高学年になりますと、学習を見通しながら、自分の理解を振り返って複数の情報を結びつけて考えたり、いろいろな人の立場から物事を捉えたりできるようになるので、時間的な見通しを持てますし、複数の情報を関連づけられる、また、他者視点の理解が進むと考えられます。そこで、デジタルの活用として、例えば、高学年からの英語では、ネイティブのプロソディ(リズム、イントネーション、ストレスなど)とか、シラブル(発音のまとまり)の理解とか、理科の授業であれば、実技系の動画、道徳であれば、先ほどのドラマなど、デジタルの活用が効果的と考えられます。
 中高生の段階になりますと、もう自分で自律的な学び方ができ、批判的な思考が身につくようになっていれば、デジタルの活用が効果的になると考えられます。マルチタスクが可能になりますし、メタ認知による制御が発達できるので、デジタルの利点としての複数情報の統合とか、データ処理や比較、探求活動を組み入れることができると思います。
このように、いずれの教科でも、複雑な内容を他人から視点や多面的に考える動画などの教材を使うのは、理解が深まる可能性があります。ただし、この頃になると個人差もあり、自己制御が弱い場合は効果が期待できない可能性もあるかと思います。
最初に述べましたが、ソーシャル・エモーショナル・ラーニングの大切さなどを考え、ワクワク楽しく学んでいけることを目標とする教科書ということを基盤にして考えますと、紙でもデジタルでも工夫が必要ではあると考えます。目の前にいる生徒の様子を見て「退屈そう」、「分からない様子」、「ワクワクしていない」という状況に気づくことが求められます。そのためには、「今どんな気持ちで学んでいるか」、「分からないときに立て直せるか」、「人と共有しながら学べるか」の観点の配慮は、紙に対してもデジタルに対しても双方の場合に、常に大切だと考えております。
 ちょっと早口になりましたが、以上です。
【堀田座長】  ありがとうございました。
 こちらの音声にちょっとトラブルがありまして、皆さんに御迷惑をおかけしましたことをお詫びいたします。
 それでは、これから意見交換をしたいと思いますが、委員の皆さん、ぜひ御質問や、あるいは御感想等をいただければと思います。
 お二人の御発表、私は大変興味深く伺いましたし、これは子供たちの認知的リソースの配分の発達みたいなことと、紙かデジタルかみたいなことの有効性は大いに関係しているのだということがよく分かりました。
 あと、デジタルの用い方、機能等についても関係しているだろうということでございましたが、御意見のある方は、挙手ボタンをお願いします。時間は15分ほどしかありませんので、よろしくお願いします。
 市川委員からいきましょう。お願いします。
【市川委員】  市川です。ちょっと時間がないので早口で言います。
 野澤先生の発表において御提案になった紙とデジタルの差異について、子供の特性と個々の状況に応じた対応という視点は、大変重要な御指摘であると考えます。
 例の中に学習障害のある子供の事例がありましたけれども、読解力を支援する方策として、学習障害だけでなく、例えば想像性に課題がある自閉症のある子供についても、絵や写真等の視覚的支援の大切さを指摘されていると考えます。
 こうした特性は、障害のある子供のみならず、障害のない子供についても多様な得手、不得手があると思います。例えば、認知処理過程の得意、不得手について、文字を読んで内容を理解することが得意な子供もいるし、音声で聞いて理解することが得意な子供もいます。また、継次的処理や同時的処理、どちらが得意であるかという特性もあると思います。こうした特性は課題の内容にも大きく関係し、極めて多様になると思います。この点について、先生の御意見を伺えれば幸いです。
 また、デジタルはどうしても視覚的刺激になると思いますが、視覚的刺激の強さ、どうしても具体的になり過ぎるという課題についても御意見をいただければ幸いです。
 一方、子供の特性や得手、不得手は極めて多様であるという観点、これは渡辺先生の発表にも独自困難の支援、発達の在り方は個人差があるということがあったと思いましたが、こうした多様であるということをどこまで共通の教科書に反映させていくべきかについて、その範囲と程度について、私はこれが一番大きな課題になると思っているんですが、このことをどのように決めていったらいいのか、もしお考えがあれば教えていただければ幸いです。
 すみません。早口で申し訳ありません。
【堀田座長】  ありがとうございました。
 市川委員は、特別支援学校の日本の代表の先生でございまして、そういうお立場からの御意見でございました。
 ほかに御意見がございましたら、その後にまとめてと思いますが、委員の皆さん、いかがでしょうか。
 では、時間がもったいないですので、一旦、野澤委員と渡辺先生に一言ずつ、御回答あるいは御意見をいただければと思います。
 野澤先生、お願いします。
【野澤委員】  どうもありがとうございます。非常に大事な観点かなと思います。
 ただ、私が1点指摘したいこととしては、学校というところが共同で学ぶ場だというところは押さえておく必要があるかなと思います。なので、一人一人の子供たちの読みを支援するという観点は、デジタルで得意な部分があると思うんですけれども、一方で、みんなで注意をいろいろなところに配分することが必要な教室という場で、あまりにも、先ほどの視覚的刺激が大きくなるとかということもありましたけれども、それぞれが違う音声を出していくというようなところも、なかなか、いろいろな刺激が教室の中に充満してしまうというところもあるので、共同注意の文脈とか、共同の文脈をどうつくるかという観点からして、非常にシンプルに、まずは紙を基盤としながらというところは、特にやはり低学年の段階では必要なことかなと思います。
 それとは別に、障害のあるお子さん向けに個別で読みの経験が所掌できるように、個別の機器でサポートするというところをうまくバランスを取っていくというところは非常に重要なのではないかなと個人的には思いますけれども、こういったところも調査研究も進めながら、どういったバランスがいいのかとか、どういった使い方がいいのかというところは、まだまだ調査研究が足りないところでもあるかなというふうには個人的には思っているところです。
【堀田座長】  よろしいですか。
【野澤委員】  はい。
【堀田座長】  ありがとうございます。
 では、渡辺先生。
【渡辺教授】  これは紙かデジタルかの問題だけではないかと思います。同じクラスに、例えば、先ほどの思いやりの発達段階や認知能力でも個人差があり、そうした状況で、子どもが優越感や劣等感を抱いているわけです。そのプロセスで、「自分はできないんだ」といった強い劣等感を抱かせないようにする工夫が必要です。子供同士が教え合ったり、「これ、文字を大きくしてこうやると見えやすいよ」といったように、子供同士が学び合う雰囲気にするといった、先生の工夫が求められます。デジタルのコンテンツが入ってきても、活用の仕方によって、多様な授業を展開する可能性は大きくなると思います。2択として区別してしまうのではなくて、うまく活用することによって、展開の可能性が実行できるかと思います。例えば、学習障害で読みの読解力は難しくても、視覚的な教材だったら理解は進むという生徒さんがいる場合には、個別に事前に特徴を把握しておくとか、アシスタントの先生の協力を得るとかができると良いかと思います。先生方に工夫や活用の幅を広げるためには、先生方への支援が必要になるとは思います。すでに多くの先生方が、さまざまな工夫をなされていることを存じ上げていますので、私は、比較的ポジティブに考えています。
【堀田座長】  御意見ありがとうございました。
 では、挙手いただいていますので、柴田委員、お願いいたします。
【柴田委員】  野澤先生、渡辺先生、ありがとうございます。大変勉強になりました。私、お二人に1件ずつ質問しようかなと思います。
 まず、野澤先生、デジタルの利用の時間が増えると、置き換え仮説として大事なことに時間を使うことができなくなる可能性、そういう指摘だったんですけれども、そこについて、実は、デジタルは非常にインタラクティブな機能があって、そして子供が、そのインタラクティブな機能に、要は即時反応的な行動に頼ってしまう、そういう可能性はありませんか。そして、そういう物事をじっくり考えられなくなるとか、そういう可能性などもないのかなと思って、そこのところを質問したいかなというふうに思います。
 あと、先に言ってしまいますね。
 渡辺先生のほう、ありがとうございます。デジタルをうまく利用すれば、感情を理解する可能性がありますという、それを裏づける科学的な根拠というか、もしくは、感情を理解するために、技術的にどんなサポートが必要かというところについて、具体的な研究があるのか、そして、デジタルなので、いろいろ発展の可能性は今後期待できると思うんです。ただし、今、現状を見据えた技術として、どういう発展の可能性を期待してそういうことを考えていらっしゃるのかなということをお伺いします。
 それから、デジタルを使ったコンテンツとして、幾つか例を提示していただきましたけれども、確かにデジタルコンテンツはそうなんですけれども、例えば、これ、必ずしも現状の1人1台端末である必要もないコンテンツであったのかなというふうに思います。デジタルコンテンツをみんなで大画面で見てということのほうが、むしろこの状況だったらみんなで話し合えてよかったのではないか、実際にそういう場面のビデオだったので、それが、要は、デジタルを活用し切れているかということと、それが1人1台端末である必要があるコンテンツだったのかなということを1つ思いました。
 ということで、お願いします。
【堀田座長】  それでは、髙瀬委員に質問への御回答をお願いいたします。
【髙瀬委員】  御説明ありがとうございました。
 お二人の先生から、私は小学校の立場で、やはり低中高学年の発達段階の違いを実際に感じていまして、実際にそういった内容をたくさん示唆いただいたかなというふうに思うんですけれども、認知的な負荷というようなところもあったのですが、教科書にデジタルな形態を含む内容は、低中高学年で、量的には、やはりだんだんと増えていくというような認識を私などは持つのですけれども、そういったところでよいのかどうかというところをお聞きしたいというのが1点です。
 もう1つ、野澤先生のほうのまとめで、デジタルと紙の影響というところで、2つ目の中黒に、「認知負荷を増やすようなデジタルの使い方は避けることが必要。特に読みのスキルの形成時期には」ということなのですけれども、この「読みのスキルの形成時期」というのは、どのような発達段階、低学年、中学年なのか、私などは低学年、中学年というふうな認識を持つのですけれども、そういった辺りを教えていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
【堀田座長】  ありがとうございました。
 ほかの委員の方は、特に何か御意見や何かありますでしょうか。
 では、この後、野澤委員と渡辺先生にお話を伺いまして、ここの審議はそこまでとさせていただきたいと思います。
 では、野澤委員、お願いします。
【野澤委員】  ありがとうございます。まず、置き換え仮説というところで、やはりこのインタラクションの質というものも、デジタルなのか、対面なのかによって変わってくると思いますので、全ての対面の相互作用をデジタルで置き換えるというのは非常に難しいと思います。
 ですので、やはり即時的にどんどんなってしまうというところは、特徴としては今までの話の中にもあったと思いますので、対面の相互作用というところが、完全にデジタルに置き換わってしまうことのないような時間配分の設定の仕方というのは非常に重要かなと、そういう意味では、やはり家庭の全ての生活時間をコントロールするということはできませんので、学校の時間の中でどうするかというところは非常に重要な文脈の議論になってくるかなと思っています。
 それから、低中高学年の違いというところでいいますと、どれぐらいの量のデジタルコンテンツが一番いい、最もベストなのかというところも、またこれも研究を進めていくべきところかなというふうに思いますけれども、量的にも質的にも、どのようなところはデジタルがいいのか、あるいは、どのようなところは本当に具体的な、例えば、植物を育てるというような具体的な経験のほうがいいのかというところも、もう少し精査していく必要があると思います。
 それから、読みのスキルということに関しては、低学年、中学年で修了するというものでもないのかなというのは個人的には思います。やはり先ほど渡辺先生の御指摘にもあったように、高学年になったらなったで、抽象的な理解というところが進んできますので、そういったところで、やはりどういう読みのスキルなのかというところの形成段階にあるというのは、小中高でそれぞれに形成段階のスキルがあるのではないかなと個人的には思います。ありがとうございます。
【堀田座長】  よろしいですか。
【野澤委員】  はい。
【堀田座長】  ありがとうございました。
 では、渡辺先生、お願いします。
【渡辺教授】  まず、質問の感情とかそういったものの理解について、デジタルのほうが効果があるかどうかということです。現実には、デジタルと紙の効果を同様の状況で実験的に比較した研究がないので断定できないです。ただし、今の時代、子供たちがSNSとか文字によるコミュニケーションのやり取りをしている場合が多いこと、小さいときからの遊びに、デジタル動画を見る時間が長いことから、身近な人の声を聞いたり、表情を見たり、しぐさを見たりというノンバーバルなコミュニケーションが減ってきたのではないかという危機感を書いてある論文は結構あります。
 私たち人間が、AIよりも秀でるところがあるとしたら、感情の部分ではないかと思っています。声や表情、しぐさを通してと相手の感情を知ることができることです。そこを考えると、その点をフォーカスしたデジタルのコンテンツは効果があるのではないかと思います。ここでは引用していませんがその点についての研究はあるかと思います。
 それから2番目のご質問についてです。今日御覧いただいた授業の風景は、まず大画面でデジタル動画を見た後のクラスの様子です。個々の持っているデジタルツール(タブレット)に感想を書き込んだりしています。データを分析して、すぐにクラスで共有できるので、ある表情に対して、30人中20人が悲しいと思ったとか、10人は苦しいと思った、といった情報をクラスで共有することができます。生徒同士でさまざまな違いがある事を学んだり、子供たちの理解や感じ方の個人差が分かるので、それを先生が適切に参考にすることによって、次の授業とか、その後の対応につなげていくというような効果があると思います。
 それから、髙瀬先生がおっしゃった質問が、自分のワーキングメモリが未熟で覚えきれていませんが、小学校、中学校、発達の違いというような……。
【髙瀬委員】  低中高学年で発達の違いがありますし、いろいろな刺激があると、なかなか難しいという点から、デジタルな形態を含む内容というのは、低中高学年と上がるに従って増えていくというような、そういったことでいいのかどうかという辺りです。
【渡辺教授】  私自身は、学年が上がるにつれて、単純に提示する物理的な時間の長さが長くできるとは思ってはいないです。要するに、コンテンツの内容といいますか、先ほどの機能をどういうふうに使うかどうかが大切だと思います。デジタルかどうかにかかわらず、学習のUDL(学びのユニバーサルデザイン)に関する研究では、どのような授業構成が学習効果を高めるかが検討されていますが、その中で、教師の説明が長すぎたり、「みんなで頑張ろう」といった働きかけが長時間続いたりすると、子どもたちはかえって「はいはい」という受け身の姿勢になりやすい、という知見が示されています。デジタルを活用するかどうかにかかわらず、説明部分を長くしすぎるよりも、子どもたちが授業の早い段階でコミットメントし、アクティブラーニングにスムーズに引き込まれていくことが重要なのではないかと思います。
 答えになっているかどうか分からないのですが。
【堀田座長】  ありがとうございました。
 私は、この分野をずっと研究してきましたけれども、心理学者の方々のお話を聞いて、なるほどと思うことがたくさんありました。今、学校の状況が見直されて、みんなで学ぶということの重要性は、改めてフォーカスされている一方で、一人一人にきちんと応じてこられたのかということに対する反省は非常に大きくありまして、次の学習指導要領に向けて、この両立をどうするかという話があります。
 しかも、この2つの活動は、必ずしもセパレートされているわけでもなくて、一人一人で学んだ後の共同だから意味があるとか、共同の中で一人一人が生きてくるみたいなところもあるとか、授業の仕方によるところも非常にあって、これは渡辺先生がおっしゃった部分かなと思います。
 そのときに、紙とデジタルがプレーンな状態でどちらが効果があるかみたいなこととは違う非常に複雑な中で効果の検証を求められる、そこが非常にこの分野は難しいところかなと思いますが、促進する使い方、活用の仕方というのは、やっぱりそれなりにあると思うし、一方で、それに頼り過ぎることのリスクみたいなことを、先ほども柴田委員から御指摘ありましたけれども、そういう部分もあるし、それが場合によっては置き換えてしまって、子供に望ましい体験を奪ってしまうのではないかということについても、かなり総合的にこれは検討して、私たちとしては指針を出していく必要があるんだなということが改めて確認できました。
 これまでも教科書の形態、紙とデジタルをどういう形態で配分するかみたいな話とか、それぞれが効果的な学習場面はどういうところがあるかとかということを検討してきました。これは論点1と論点2の話です。
 今日は論点3で、発達段階のこととの関係について御示唆いただいたということになりますので、これから事務局のほうで、それぞれ関係がある内容ではございますけれども、これらの中間的な整理を進めていただければと思います。
 それでは、議題2のほうにまいります。
 議題2は、健康への影響についてでございます。
 これは前回も取り上げております。前回は、医学とか学校保健の観点でお話をいただきました。今回は、脳科学を御専門とする東北大学大学院情報科学研究科・加齢医学研究所准教授、同時に慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科で教授をやっていらっしゃいます細田先生に、今日お越しいただいておりますので、お話をいただきたいと思います。
 では、細田先生、よろしくお願いします。
【細田教授】  細田です。どうぞよろしくお願いいたします。
 まず、スライドを1枚めくっていただけますと幸いです。
 大前提として、脳科学の立場からこういったことを考えるときに、2つほど前提があると思っています。
 1つ目ですけれども、既に子供を超えて成人、一生涯を通して脳は可塑的に変化する器官であるということです。つまり、身長みたいなものがある一定の年齢で止まる一方で、脳の構造、脳の機能というのは、一生涯を通して変容し得るものであるということが、これまでの研究から分かっているということになります。
 1つ社会的にこういったことが大きく取り沙汰されたこととして、例えば、社会とか、環境とか、教育というものに不平等さがあると、もともと違いがなかった脳に対して不平等さが原因で違いをつくってしまうみたいなことが示されているということになります。
 分かりやすく言うと、例えば、男女の不平等さが大きい国だと、脳の男女の違いが大きく出てくるというような研究があるというようなことになります。
 次のスライドをお願いいたします。
 2つ目です。これが教育の観点から非常に関わってくることだと思っております。
 右側の脳の絵を見ていただきたいのですが、実はこれ、脳の発達の状態を表しています。青にいけばいくほど脳が成熟しているということを示しているのですけれども、御覧いただけると分かるように、前頭葉と言われるところ、真ん中の部分、割れているところの赤い矢印の下だと上の部分になる、上段だと右側になるところですけれども、前頭葉が二十歳前後のところからやっと真っ青になってきていることが見えると思います。つまり、脳の前頭葉というのは、二十歳を超えてぐらいまで成熟する脳の中でも特異的な場所であるということです。
 この前頭葉が何をしているかと申し上げますと、先ほどからお話に出ているようなメタ認知ですとか、情動の調整、つまり、感情的になったところをブレーキをかけるとか、やるべきことをやるために何か欲求をコントロールするとか、そういったことは、これは全て前頭葉の働きになります。
 幼少期から学童期というのは、御覧いただいて明らかなように、前頭葉の発達が未発達である、こういったことからいろいろなことが未熟であるというような生物的な基盤がここにあるということになってまいります。
 デジタルか紙かといったときに、脳の観点からの話がしばし出るかと思いますが、こういった脳は変わる器官であるということと、ちょうど教育を受ける期間が前頭葉の発達期間、ダイナミクスがある期間だというところから、様々な懸念が出されているというところが現状かなというふうに私は考えております。
 ページをめくって、もう1つめくっていただけると幸いです。
 世界的に脳の観点から子供の発達を見た大規模な研究は、アメリカのNIHがやっているものが有名でございます。Adolescent Brain Cognitive Development Studyと言って、ABCD Studyというふうに私たちは略して呼ぶんですけれども、これが青少年、9歳から12歳の脳と認知的機能に関する最大の研究です。全体としては1万人ぐらいがいるのですけれども、脳まで入れると7,000人ぐらいにはなるのですが、大規模な研究成果になっています。
 これで何をやっているかというと、子供たちのスクリーンメディアの利用が脳の発達や社会的・行動的・学業的・健康的な成果にどのような影響をするのかということを大規模に追っているものになります。
 スライドをめくっていただけますと幸いです。
 この研究が取り沙汰されることが多いのですけれども、1つそれを理解するのに、先行して理解しておくべきことがございます。というのは、ここで使っているようなスクリーンメディア、スクリーンタイムと言われている時間は、全て娯楽使用が対象になっているところで、学業でどういうふうに使われているかということは、こういったデータの中には含まれていないということが1つ大きなポイントにはなってくるかと思います。
 また、娯楽使用といっても、様々な種類があることが、これも包括的に使われていて、個別的には見られていないということが1つ重要なポイントかなと思います。
 スライドを進めていただけると幸いです。
 主な結果なのですけれども、基本的に大きなポイントとしては、スクリーンメディアの利用と脳機能の関連というのは極めて小さいということが報告されています。これ、ポイントは「極めて小さい」という表現だと思っています。全くないわけではないので、表現の仕方だと思っております。ただ、値を見る限り、効果、関連はあるけれども、小さい効果であるということになります。
 次に、2番目が、スクリーンメディアの利用と認知機能とか行動の結果がどうかというものを見ると、有意な関係性はほとんどないということになっています。健康状態の10項目のうちにスクリーンタイムが予測に寄与したのは1項目、語彙のみで、この影響も非常に小さいということが分かっております。
 3番目です。特にここがポイントにはなってくるかと思うのですが、スクリーンメディアの利用と脳のネットワークの関連、多くの研究が相関関係を示しているものになります。つまり、そこに因果はない、因果は示されていないということです。因果がないということではなくて、既存の研究の中では、相関が多くて因果関係までは見られていないものが多いということになってくるかと思います。
 スライドを進めていただけますと幸いです。
 今のお話が脳の機能です。脳は絶えず活動しているので、それを脳の機能という言い方をするのですが、もう1つ、脳には構造特徴というものがございます。つまり、神経細胞が集まっている場所がどういうふうな形をしているかみたいな構造的な特徴というものも脳は捉えることができるのですけれども、この構造においても、スクリーンメディアと知能だったりとか攻撃性、多動性、抑鬱性、幾つかの指標と脳の構造にごく僅かな関連が見られているというのが正確な表現になるかと思います。効果量としては、0.1に満たないぐらいの効果量だということが論文上は明記されているというところになります。
 記憶などとその他の認知機能との関連が見られないというところも言われております。
 スライドを進めていただければ幸いです。
 結局、これらの論文、特に、今までお見せしたのは実は2019年までの資料がメインとなっております。これは、論文上できちんと明確に表現されていることになるのですけれども、スクリーンメディアが子供に及ぼす潜在的な影響についての懸念から、研究文献が増えているものの、デジタル技術の使用と発達の関連については科学的な合意に達していないということが書かれております。
 なので、一方で、論争の的となっていることに関しては、証拠が一定不足しているということと、あとは決定的ではないということがある一方で、多くのポリシーが科学的なコンセンサスをはるかに上回ってつくられているというようなことも論文上に記載されておりますので、この論文で、研究者の立場から、きちんと理解しておかなければいけないなと思っているのは、論文上にこれも記載されていることですが、責任のある専門家は、現在、文献に記載されている科学的な不確実性をきちんと強調するようにということがこの2019年の論文では明記されているというような状況になっております。
 スライドを進めていただけますと幸いです。
 一方で、今申し上げたように、これらを明記されている論文が2019年ということなので、その後どのようになっているのかというところを少しお示しできればと思います。
 比較的大きなインパクトがあるかなと思うのが、この2025年のABCからやはり出ている研究なのですけれども、スクリーンタイムとADHDの傾向とか、脳の関連性を、今度は相関ではなくて2年の縦断研究として追っているというものになります。対象になっているのは、6,000人から7,000人強の子供たちということになります。
 スライドをお願いいたします。
 これ、どういう結果が出ていたかといいますと、端的に申し上げると、スクリーンタイムとADHDの変化、あるいは脳の中の皮質下の体積というところがあるのですけれども、そこでスクリーンタイムが長いほどADHDの傾向が上がって、右被殻と言われる場所があるのですが、そこの体積が減少するというような結果が出ています。
 ただ、一応ここでも申し上げておきたいのが、青字で「β」と書いてあるところを見ていただくと、このβが効果量を表すのですけれども、これも、この効果量が0.1に満たないぐらいの効果量、ただ、有意ではあるというようなところです。
 スライドをお願いいたします。
 実際にそれ以外の研究でも、2025年などにスクリーンタイムの増加がメンタルヘルスの悪化を予測するというような研究結果も出ております。内在化問題とか、外在化問題、ストレス問題として、不安が増えるとか、攻撃性が増えるとか、集中が困難になるとかといったことも出ておりますが、同じく右の辺りを見ていただくと、これもβ、効果量を表す指標が非常に小さい値で出ているというところは、1つ注意が必要かなというところになっております。
 スライドをお願いいたします。
 これが3歳から5歳の幼児で、スクリーンタイムと認知機能、脳の発達の関連を調べたというものがございます。これは3歳から5歳ということもありまして、47名の結果でしかないということは御留意いただきたいと思います。
 スライドをお願いいたします。
 これの結果は、スクリーン使用が多い児童ほど言語処理が未発達なことが多いということと、言語処理と関連する白質と言われる脳の繊維があるのですけれども、そこの微細構造が低下しているということがここでは示されております。
 スライドをお願いいたします。
 これは、脳の研究の中で少し古い、今までの研究の結果のサマリーとしてですが、基本的に、多くがスクリーンタイムによる悪影響ということは主張しているということになります。ただし、その効果量というのは、かなり小さい、βが0.1以下であることが多いということで、これはメタ分析の結果としてもそうですし、それ以外の結果でも、それぞれ非常に小さい効果として出しているということになります。
 もう1つは、スクリーンタイムが、これらでお示ししたものは全て学習利用の目的ではなくて、娯楽利用で取ったデータであるということが重要かなというか、1つ押さえておくべき点かなというふうに思います。
 一旦ここまでのところのサマリーは以上になりまして、次です。先ほど映させていただいたものですが、ダイレクトにデジタルなのか紙なのかというような研究を脳からしているものもございます。
 こちらは、日記をつけたときの記憶として、デジタルよりも紙、手のほうがいいというような研究成果が示されていて、それに応じた脳の活動というものも示されているものになりますが、先ほどからABCDの結果の話をさせていただいていますが、近年、脳の研究というのは非常に再現性などで大きな問題を抱えておりまして、実は2024年の段階で、『Nature』に、データ規模としては2,000名ぐらいのMRIのデータで初めて再現性みたいなものが担保されるというふうなことが言われているということもございます。そうしますと、私の研究も含めてではあるのですが、これまで蓄積されてきているn数が少ない研究が、どこまで一般的に汎化する、一般化して考えていいものなのかという問題ももちろん含んでいるというところも気をつけながら研究は見ていく必要があるかなというところではございますが、こちらの研究もn数は16名になっているかなというところだと思います。
 次に進めていただければ幸いです。
 これは先ほど野澤先生のほうからお話があったものと全く同じなので、説明は割愛させていただきますけれども、基本的には、多くの研究で紙の有意性が言われているのですが、こちらもやはり様々な状況、物語なのか説明なのかとか、同じ読解でも、いろいろなモダリティが変われば結果が変わってくるような、比較的フラジャイルな結果だというふうに私自身は見ているところになります。
 次に進んでいただけますと幸いです。
 なので、これも先ほどお話があったので割愛させていただきたいと思いますが、デジタルのほうが基本的に認知的な負荷が高くなる分、処理が浅くなってしまう傾向があるというところが多くの論文から示されているところかなというふうに思います。
 次に進んでいただけますと幸いです。
 一方で、脳波の研究ということもされていて、中学生の脳波の実験においては、紙での読解よりは深い意味を示すような脳波のパターンが観測されているというようなデータも一部出ているということは事実かと思います。
 進んでいただけますと幸いです。
 様々な文献を網羅的に見ていったときに、やはり小中学生、低年齢のときには、デジタル読書の頻度が高いほど読書力との負の相関を示すというようなことがある一方で、高学年あるいは大学生みたいなところになってくると、デジタルの影響がポジティブに出てくるというようなことが多くの研究をまとめたときに言えることかなというふうに思っております。
 進めていただけますと幸いです。
 実際に補足資料として後ろのほうにつけさせていただきましたけれども、デジタルの有意性が多く示されているものもございます。特に理系科目ですとか、科学といったところの中でも、特にこういったところでは大きなポジティブな影響が出ているというものも示されていますので、当然、内容によってデジタルが優位になってくるものも多く示されているというのが現状かなというふうに思っております。
 進めてください。
 今ざっと脳科学の研究を中心にレビューさせていただきましたけれども、今申し上げたことに関しては、冒頭も申し上げましたけれども、長期的な因果関係は不足しておりますということと、交絡因子がどこまで統制が取れているのかというところです。それはつまり、学習利用なのか娯楽利用なのかといった、そういったところが細かく詰められている結果ではないというところです。
 また、デバイスですとか内容がどんどん進化している中で、研究のほうが後追いになっているというところがございますので、なかなかその辺り、今これからやろうとしている教育、デジタル教科書みたいなものが、どういう影響を及ぼすのかというところに関しては、まだまだ見ていかなければいけないところはあるのかなと考えておりますというところで、以上になります。
【堀田座長】  ありがとうございました。
 それでは、御発表いただきましたので、意見交換の時間にしたいと思います。
 今回も、なるほどなと思うようなことがあったかと思います。委員の皆様で、御質問や御意見等について、また挙手をいただきまして御意見を出していただければと思いますが、いかがでしょうか。
 内田委員、お願いします。
【内田委員】  御説明ありがとうございました。健康面で非常に示唆に富んだ御説明、感謝申し上げます。
 脳に関する影響というところで、ちょっと気にかかっているのは、低学年ほど影響があるということで最後のほうに御説明をいただきましたけれども、研究に関しては、娯楽に対するスクリーンタイムを中心に調べているのでという前提があったかと思うんですけれども、東大等の研究では、ゲームを長時間やることによって前頭葉の血流が下がるというような報告があるというふうに記憶しております。学習で使用した場合に、こういった脳への血流であるとか、そういった研究があるのか、あるいは、どういったことが懸念されるのか、御存じでしたら、御紹介いただければと思います。よろしくお願いいたします。
【堀田座長】  細田先生、いいですか。
 お願いします。
【細田教授】  ありがとうございます。まず、ゲーム利用に関してなのですけれども、これ、実は非常に面白くて、補足資料の中にも一部入れさせていただいているのですが、実はゲーム利用は、脳にとってネガティブな影響だけではなくて、むしろポジティブな影響もかなり報告されているというのが実情です。なので、ゲームをしているとポジティブに脳が発達する、特定の領域の脳が発達するというような研究が出ているということもございますので、そういった意味では、一致を見ていないというところの1つの例になるかもしれませんというのが1つ目の回答です。
 もう1つですが、どのように悪い影響があるか、どのような影響があるかというところは、一概には現時点で申し上げられる悪い影響はないのではないかというふうに思っています。かといって、いいということもないのですけれども、悪いということを今申し上げる資料というかエビデンスはないということなのかなというふうに私自身は理解しております。
【堀田座長】  内田委員、よろしいですか。
【内田委員】  ありがとうございました。
【堀田座長】  これは細田先生の資料の中にもありましたけれども、明確なエビデンスはないんだけれども、多くの言説みたいなことで、何となくそういうことが心配だと、心配なので、科学的な根拠以上のセーフティネットを私たちは張ろうとしてしまって、それによって様々なガイドラインとか、そういうものができているという状況があるということかと思います。
 また、SNS等で、場合によっては負の影響を過剰に誘導している場合も時々ありますので、私たちは、これは特に学習場面での利活用でして、まして大事な学校教育の場の話としては、慎重に見極めて議論していく必要があるということですね。
 委員の皆さんが手を挙げるまで、僕は今、一生懸命しゃべっているわけですけれども、全国学力・学習状況調査の結果でも、学習の場面で能動的にICTを使っているということと、学力調査のスコアは正の相関をしていますね。
 一方で、家庭でSNS等で、これはGIGA端末ではなくて、むしろスマホとかですけれども、そういうものに在宅の時間に触れる時間が長いほど学力に対しては低いスコアだという、つまり負の相関をしていますね。なので、能動的に学習で使っているか、やや消費的にずっと家で使っているかみたいなことですね。
 先ほど、野澤先生の話の中で、学校というところはこういうところだという前提でみたいな話がありましたけれども、それがよい形で機能している、ICTの活用についても機能している部分はあろうかと思います。
 今、2人の先生が手を挙げていただきましたので、今から順番に御指名します。
 柴田委員、お願いします。
【柴田委員】  細田先生、大変どうもありがとうございます。
 今日の先生の話を踏まえると、影響は軽微だ、そして、きちんと科学的な観点から、これ、白黒つけるということは、まだ全然できないほど、エビデンスは欠けているというふうに解釈していいかと思うんですけれども、今日の話の中で、脳科学の観点から、きちんと根拠づけるためには2,000人のデータが必要だという話がありました。2,000人のデータを集めるということを考えると、しかもこれ、脳科学でというふうにやったら、かなり難しい話かな、現実には、科学的には非常に難しい。それまで結論はきちんと出ないと、科学的な観点からそういうふうな意見になるかと思います。
 そうしたら、では、2,000人の実験は一体誰が行うんだということを考えると、これはなかなか難しい。
 そして、結果が出たときには、恐らくこういう話にもなると思うんです。それは、ある特殊な状況であって、この状況はまた違うというようなことで、その手の実験が何個行われるんだというふうになったら、これはなかなか結論が出ない話になるのかなというふうに思います。
 こんなこともちょっと思いました。2,000人ということに対して、本日提示したデータ、例えば数十人であるとか、多くて数百人であるとか、非常に小さなことなのかもしれないけれども、小さなことでも実は軽微な違いが見られた、実はこれは大きな問題かもしれないというふうに考えられはしないでしょうかということを問題提起してみたいと思います。
 せっかくのありがたい話だったので、ちょっとその辺り、意見を伺えるかなというふうに思います。よろしくお願いします。
【堀田座長】  では、髙瀬委員、お願いします。
【髙瀬委員】  私は、14ページにあります乳幼児期、3歳から5歳の子供ということですけれども、スクリーンタイムが長いほど言語リテラシー能力が低下ということで、これも数が少ないので明確なことは難しいということなんですけれども、一応こういったデータもあるということは考慮しておく必要があるということと、今の御説明の中に、様々な悪影響等の主張があるけれども、効果量は小さいということで、影響としては小さいが、小さいながらもそういったことはあるということを踏まえた上で、特にスクリーンタイムが長くなり過ぎないですとか、そういったことは共通に認識していくことが必要と考えます。
 また、18ページにあります自己調整学習と読解行動ということで、紙のほうが深い理解、またデジタルのほうが浅い処理というようなことも、これも結果としては出ていますけれども、これも目的によって、デジタルでよい場合もありますよね。スクロールをしながらも広く知っていく、そういったことが目的ということもありますので、やはりこういった結果を基にしながらも、それぞれの特徴がありますので、そこをきちんと明示していく、そういった内容が必要ではないかと感じました。
 以上です。
【堀田座長】  ありがとうございました。
 では、細田先生、お願いします。
【細田教授】  ありがとうございます。前半のほうからお答えさせていただければと思います。
 人数は2,000人じゃないと駄目なのかというお話がございましたけれども、今現在では、そういうn数、被験者数の問題が、再現性という意味で重要視されているのですが、一方で、2,000を取らなくてもどうにか再現するデータになるのではないかというような研究が、今、オンゴーイングで世界的に進んでいるということは、1つ申し上げておきたいところだと思いますというところです。
 では、それはできないのではないか、現実的にできないのではないかという話がありますけれども、国内でも、例えば東北大は大きなデータを取っていたりとか、ABCDデータもこういう娯楽データにはなっていますけれども、データを取っているわけなので、そういったところでデジタル機器の利用を細分化して、これから検討していくということは、基盤ができているところだとやりやすいのではないかなと思いますし、それは研究者や皆さんのお力で、そういったところにアプローチできることが効果的なのではないかなというふうには思っているところになります。
 髙瀬委員のお話と、多分、後半は一緒だと思うのですが、小さくても効果としては重要なのではないかというと、これはもうまさにおっしゃるとおりだと思います。少ない人数で、この人たちはこういう結果が得られましたということが、じゃあ、日本全国どこでも同じことが起こるかどうかは分からないというところではあるのですけれども、少なくともこの人たちにおいては、こういう結果が見られたということは、1つの事実としてきちんと取り扱う必要があるのかなというふうには思っております。
【堀田座長】  ありがとうございました。
 岡本委員、お願いします。
【岡本委員】  教科書協会の岡本でございます。
 脳科学の観点から、非常に参考になるお話をいただきまして、ありがとうございました。
 私からは、この前の発達段階のお話の中と絡めて、先生が御存じであれば教えてもらいたいことが2つございまして、1つは、野澤先生の御発表の中で、印刷媒体とデジタル媒体で読むことは異なる体験である可能性が指摘されているというようなお話があったと思うんですけれども、こうしたことを脳科学の観点から、例えば、紙で読むのと、デジタル読むので、何か活性化される部位が違うのかどうかとか、そういうことが何か科学的に裏づけがあるのか、そういった御研究があるのかどうかということを、もし御存じであれば教えていただきたいというのが1つ。
 それから、この前が発達段階のお話でしたけれども、紙、デジタルの違いというよりも、学齢によって、先ほど前頭葉がかなり遅くまで未発達ということがあったと思いますが、学齢による、例えば知識の部分ですとか、それから情動の部分ですとか、例えば、知識の部分はかなり早めに成熟するけれども、情動的な部分は遅くなるとか、そういう学習内容における成熟の違いみたいなものがもし何かお分かりになっていることがあれば、教えていただきたいなと思います。
 その2点、もしお分かりになれば、教えていただけるとありがたいです。よろしくお願いします。
【堀田座長】  お願いします。
【細田教授】  ありがとうございます。先ほど一部スライドでもお見せしましたように、脳波などですと、紙媒体とデジタル媒体で見せたときの活動、波が違うみたいな話も出ていますし、MRI研究などでも幾つかございます。違いは示されています。
 その違いが何を意味するかというところになってくると、解釈はいろいろになってくるということと、あともう1点、先ほどスライドでお見せしたときにも書いたのですけれども、結局、紙媒体をベースに、紙に書いてある文字数と同じものをデジタルで書いて、それで比較をするということをやるんです。そうすると、デジタルのよさみたいなものを生かした形で比較ができているのかというと、そうではないところがあるというところは、1つ研究所の制約なのかなというふうに思いながら、私自身は論文を読んでいるというところになります。
 2点目が、情動とかの発達の違いがというところですが、もちろん現場で先生方が見られているように、個人差が非常に大きい部分になってくると思いますので、一概にこの情動は早いですよとかということを申し上げることは、少なくとも脳の発達の観点からはないのかなというふうには思っております。
【堀田座長】  ありがとうございました。
 大変貴重な御示唆を今回もいただいたわけでございますが、事務局のほうで、前回の件と合わせまして、この健康への影響について整理していただいておけばと思います。
 私としても、ちょっと感じたことを申し上げると、そもそも教室で担任していると、子供たち一人一人がいかに違うかということを僕らは知っているわけで、一方で、教科書は、何年生には全員この教科書をというふうに大体なるわけで、最初に市川委員がおっしゃったような、どこまでを共通の土台のところに持っていけるかみたいな話というのは、この会議の大事な審議内容なのかなと思う一方で、そんな教科書でどうやって個別最適な学びに近づけていくかということも、また時代的な教育課題ですので、この辺りをどういうふうに指針の中で誘導していくのかというのは非常に大事なことかなと思っております。
 では、続いて、議題3と議題4、これを一括して取り上げたいと思います。
 まず、議題3の学力等への効果・影響、諸外国の動向ということについては、中教審等でも多くの委員の先生方が関心を持って議論しているところでございますし、また、マスコミ等でも取り上げられているところでございますので、文部科学省で調査されていることも含めて御報告いただくということになります。
 また、議題4です。「手書き」の重要性、これはある意味、自明なんですけれども、これは今までも何度か、「手書き」が減るのではないかということが、特に手でしっかり書くみたいなことを教えなければいけない、特に学齢期の低いお子さんに対しての不安がやっぱり結構あるという、そういう社会背景から、このことについて改めて取り上げるということになります。
 それでは、後藤課長からお願いします。
【後藤教科書課長】  教科書課長の後藤です。
 それでは、資料4に基づきまして、まず学力等への効果・影響、それから諸外国の動向について御説明をいたします。
 まず、3ページ目を見ていただければと思いますが、文部科学省では、今回、法律改正をこの6月10日で可決成立をいただいたということがありましたが、今回の法改正に先立って、現行の教科書代替教材としてのデジタル教科書を活用した効果・影響の把握でありますとか、好事例の創出といった実証研究に取り組んでまいりました。
 このページでは、今年度の取組を紹介している資料になっておりますが、令和12年度のデジタルな形態を含む新たな教科書の小学校からの順次導入に向けまして、こうした実証研究は今後もさらに積み上げていくという予定にしているところでございます。その上で、これまでの実証研究での状況について御説明をしたいと思います。
 まず、4ページ目を見ていただければと思いますが、現行の教科書代替のデジタル教科書の活用頻度は年々上がってきているという状況にありまして、様々な教科で授業の中で現行のデジタル教科書を活用した指導場面が増えているという状況です。全体として見れば、半数以上の教師が半分以上の授業で活用しているという状況、4回に1回程度以上使用するというふうに見れば、約7割の教師が実際に授業で使っているという状況であるというところでございます。
 その中で、続きまして、5ページ目のように、現行の教科書代替のデジタル教科書の授業での使用歴が長い先生ほど使用頻度が高いというようなデータになっておりまして、使うことによって、利便性とか、あるいは効果を感じていただいて、それでまたさらに使っていく、そういう教師が多いという状況が推察できるかなというふうに考えております。
 続きまして、6ページ目は、児童生徒への効果・影響についてですけれども、これは大規模アンケート調査ということで、数字が出ておりますけれども、nが1万、2万というような規模で取っている児童生徒へのアンケートの結果ですけれども、その児童生徒の回答の中で、現行のデジタル教科書の授業の中での活用頻度が多い児童生徒ほど、このグラフでいくと、上にいけばいくほど使う頻度が高いという生徒の回答になっておりますが、その活用頻度が多い児童生徒ほど、「授業内容の理解」でありますとか、「主体的な学び」とか、「協働的な学び」、あるいは、その教科が好きといった、こういった指標が高くなるという結果、データが出ているというところでございます。
 このことは、7ページ目で資料を入れておりますけれども、次の7ページ目でお示ししております、これは全国学力・学習状況調査の結果分析の資料でございますけれども、つまり、この資料が表しているのは、正答率の高さと、授業内容の理解とか、あるいは主体的・対話的な学び、また、その教科の勉強が好きといった指標との間に一定の相関関係が見られるという分析になっているわけですけれども、こういったことと併せて考えますと、次の8ページ目を見ていただければと思いますが、整理してみた図になっているんですけれども、正答率の高さ、学力の向上ということへの1つの道筋として、先ほどの全国学力・学習状況調査の結果分析などから、授業内容の理解とか、あるいは主体的・対話的な学びとか、あるいは、その教科が好きといった要素が大切であるというふうに考えるとすれば、それをどう高めるかということが鍵になり得るという中で、それらの要素の向上のために、先ほど6ページにありましたようなデータを見ると、デジタル教科書の的確な活用が、それに資する1つの方策になってくると捉えることができるのではないかと考えられるかなというふうに見ているという資料でございます。
 このほか、9ページ目、それから続けて10ページ目もあるんですけれども、つくば市での事例でありますけれども、特に、現行の教科書代替のデジタル教科書、英語については、小5以上で100%全国にお配りしているということがありますが、特に英語に関して、英語のデジタル教科書の家庭学習などでの的確な使用が、音読課題ですとか、定期テストの成績の高さと結びつきが見られたり、また、10ページのほうは、英検IBAの正答率が高くなっているという実証結果を紹介しております。
 また、11ページ目は、韓国の小学生でのデータではありますが、デジタル教科書の活用が低学力層に対して学業成績や分かりやすく楽しいといった学習経験に及ぼす効果・影響が大きいといったデータも御紹介をさせていただいております。
 続きまして、すみません、ちょっと急ぎますが、12ページ目からは、紙媒体と電子媒体の記憶、理解度などの観点での先行研究の整理をしたものでございます。
 この点に関しましては、本日の会議の中でも先生方からの御発表の中にもありましたし、また、国会での法案審議の中でも度々議論のあったところでありますが、13ページの文部科学省の実証研究もあるんですけれども、その中で取ったデータなども含めて、結果はそれぞれの実証における被験者の違いといったようなところもありつつ、紙媒体が有意というものもありますし、デジタルが有意と出るものもありますし、一概に申し上げることは難しいという状況ではないかなというふうに事務局として捉えているところでございます。
 そうした中で、例えば14ページ目に入れております小学校国語での比較調査で、統計的な有意差はなかったものの、読解調査において、学年段階が低学年、中学年、高学年と上がるにつれて、紙媒体の点数の方が最初は高いんですけれども、それがデジタルが逆転したりだとか、そういうふうな現象も見られるというようなものもありましたので、御紹介をさせていただきました。
 15ページ目は、年代別で理解度と閲読時間について比較した先行研究の例もありましたので、掲載しています。年齢や媒体自体の性質よりも、使い慣れなどの利用者と媒体の関係性のほうが影響度が高いとの結論にこの研究ではなっていたというようなことでの紹介でございます。
 続きまして、駆け足で恐縮ですが、16ページ目以降では、諸外国の動向を各国や関係研究者から提供いただいた情報を基に事務局としてまとめた資料を入れさせていただいております。
 諸外国におきましては、17ページの一番上に書いておりますが、実は日本と同様の教科書の仕組みといいますか、教科書の使用義務であったり、あるいは教科書の検定といった制度がないという国が非常に多くて、一様に比較できるものではないのではないかなというふうに考えております。
 その上で、時間の都合上、一つ一つの国について、この場で詳細な説明は割愛いたしますけれども、韓国とか米国の多くの州のように、教科書へのデジタル活用を進める国がある一方で、印刷出版物である教科書の購入を補助する仕組みを近年導入いたしましたスウェーデンの例が度々報道などでも取り上げられますが、スウェーデンの政策動向については、より詳しくは18ページ目のほうに資料を入れております。この資料のとおりですけれども、デジタル化を推進した2010年代には、スウェーデンの国際学力調査の順位は、実は上昇しておりまして、OECDによります分析においても、近年のスウェーデンの政策転換については、生徒の年齢等に応じたデジタル活用のバランスを追求したものとされているというふうなことがあります。
 そしてまた、義務教育、高校段階でタブレット等の使用を廃止したという事実もありませんので、そういったことについても確認しておりまして、要は、バランスをまた取りにいっているというふうなところなのかなというふうに見ております。
 このほか、19ページから21ページにかけて順番に載せておりますが、まず19ページには、これはフィンランドですけれども、教科書、教材の扱いも含めて、フィンランドでは、各自治体に大きな権限が委ねられているという状況でありまして、デジタル化へのスタンスも自治体によって様々な状況になっているというのがフィンランドの状況であるということです。一番下にフィンランドの大臣のコメントも載せておりますが、バランスが大事だということを言及されております。
 次のページは、2020年のカリキュラム改定の時期にデジタル導入を推進した一方で、企業広告入りのデジタル教材などが学校で広く使われるといった状況なども発生したというふうなことも踏まえて、近年では、デジタル教材への補助を専門性の高いニッチなというか、小規模な分野とか特別支援などを対象にしてやっている、そういった学年段階なども踏まえながら、デジタルとアナログのバランス確保を重視している。すみません。これはノルウェーの事例ですけれども、掲載をさせていただいています。
 また、次のページはシンガポールですけれども、中学校段階では、1人1台端末を配布している一方で、小学校段階では、当面1人1台端末は配布しないこととして、小学校ではデジタル学習は段階的に導入するという方針である。そういうシンガポールの状況をまとめた資料を添付しております。
 いずれの国、政府についても、現状は、今までの経験、経緯を経ながら、年齢段階なども踏まえて、デジタルとアナログの適切なバランスを確保していくという方針なのかなというふうに捉えているというところでございます。
 続きまして、資料5を御覧になっていただければと思います。
 資料5は「手書き」の重要性についてでございます。
 2ページ目にありますように、昨年9月の中教審の審議まとめにおきましても、実は、手を動かして書くことの重要性ということが、記憶や理解との関係でも、審議まとめの中でも指摘されているというところでございます。
 この点は、次の3ページ目にありますとおり、今般の法案の国会審議の中でも議論になっておりまして、文部科学大臣からも、国会審議の中で、これはもうデジタル一辺倒の学びを目指すということではなくて、例えば、学んだことを紙のノートにまとめるといった手を動かして書く活動は今後とも重要であると、大臣指針の中においても、書く活動や、これを学習活動の中で確保していく重要性についても示したいという旨の答弁がなされているところでございます。
 これに関連して、4ページ目では、これまでの実証研究の実践事例の中のものとして、例えば、4ページ目にあるのは、中学校社会の授業の中で、情報や資料を調べたり、意見発表の場面でデジタル活用をしつつも、その学んだ内容を整理していくという場面では、理解定着の観点から、板書内容を基に、生徒が各自のノートでまとめるといった活動をしているという例を紹介させていただいております。
 そのほか、5ページ目でも、中2の国語と小5の社会の授業の中でのデジタルを活用した情報収集や意見交換、ディスカッションの活動等、そうした活動を経て、考えをまとめたりする場面では、紙のノートも活用して手書きで整理していくといった実践事例を紹介させていただいております。
 教科書へのデジタル活用についての指針に合わせて盛り込んでいく要素として、議論の参考にしていただければ幸いでございます。
 私からの説明は以上でございます。
【堀田座長】  後藤課長、ありがとうございました。
 では、今の資料4と資料5につきまして、委員の皆様の御意見を賜りたいと思います。また、挙手ボタンを押していただいて意見表明をお願いしたいと思いますが、いかがでしょうか。
 市川委員、お願いします。
【市川委員】  市川でございます。ありがとうございます。
 先ほどの私が話したどこまで個に対応するかのことなんですが、今お話があったノルウェーにおける学習教材をめぐる状況の中で、デジタル、市場として成立しない分野について、特にこれ、特別な支援を必要とする生徒のためは、教材等で対応しているということがありましたので、これもすごく大切な視点かなと思いました。教科書と、またデジタル教材があるわけなので、個に応じた支援はデジタル教材で、みんなが使う教科書はみんな同じものということも1つの考え方なのかなと、すごくノルウェーの事例が参考になりました。
 以上です。
【堀田座長】  ありがとうございました。
 森委員、お願いします。
【森委員】  学校教材の発行者の立場で、感想と意見を申し上げたいと思います。会議時間もありますので、全体を総括してお話ししたいと思います。
 本日は、御発表、本当にありがとうございました。紙とデジタルの学習場面に応じて使い分けるという考え方、「手書き」の重要性など、私も今回、大変学ばせていただきました。
 特に今回のお話を伺って感じたのが、デジタルな形態を含む教科書は単に紙を置き換えるものではなく、音や映像を、そういった紙では表現できない学びを提供できるという新しい教科書の可能性を持っているということです。こうした価値は、発達段階にかかわらず重要ではないかと思った次第です。
 そういった意味では、デジタルか否かという考え方ではなくて、「デジタルな形態を含む教科書」というこの新しい概念を、これから私たちは成熟させていくことが必要になってくるのではないかと感じました。
 一方で、先ほどの発表でも手書きの重要性の報告もありましたとおり、子供に考えさせたり、書かせたり、思考を深めたりさせるような場面については、教科書だけではなく、教材やノートを含めた学習活動全体の中で設計していく視点も大変大切なのではないかと感じました。
 今回、教科書の内容の精選や、紙とデジタルの役割分担を検討する際には、教科書だけではなく、それを補完する教材との役割分担や連携についても、ぜひ議論をしていただければと思っております。
 子供の学びを豊かにするという共通の目的の中で、教科書と教材がそれぞれの役割を果たせるような指針になることを期待しております。
 以上でございます。
【堀田座長】  ありがとうございました。
 松下委員、お願いいたします。松下委員、どうぞ。
 松下委員は、今、実はチャットに感想もいただいていまして、PTAといいましょうか、そちらのお立場から、家庭の役割についてコメントをいただいています。特に自然体験とか、博物館や美術館へ出かけるとか、家庭内での団らんとか、こういうことをしっかりやるということとバランスを取るということが大事だというようなこと、あるいは、市川委員の御意見も踏まえると、この指針のまとめ方は難しさがあるなというようなことについて書いていただいておるところでございますが、松下委員、発表は難しいでしょうか。
 ということで、大変すみません。音声が入らないようですので、ここまでとさせていただいて、中川座長代理に御発言いただこうかと思います。よろしくお願いします。
【中川座長代理】  中川です。ありがとうございました。
 座長代理として、議題1から含めて、若干コメントを差し上げたいと思います。
 本日も、3名の方々から、とても貴重な御意見を伺えました。御提案の中で、個人的には、野澤委員が示された紙とデジタルのどちらが「読み」にとって有効かは、拡張機能の使い方、子供の特性などの要因、または、その組合せによって異なることが示されているという御指摘。また、渡辺先生が示されたデジタルに慣れ、多様な他者との接触が可能になるように活用すれば、人の心の仕組みや、より拡大した人間関係を理解させることができるという御指摘。さらに細田先生から、これまでの研究状況を俯瞰された御発表、大変興味深いと感じました。
 そして、資料5、学習活動における「手書き」の重要性についての、5ページ目の事務局からの資料の、国語、説明文の筆者の主張を考える場面で、思考を深める段階や対話の発表の際にタブレットを活用する。さらに、最終的な考えをまとめる際に紙のノートを用いると。それで、それぞれの利点を活用できるという御指摘があり、これは1つの例だとは思いますけれども、こうやってうまく双方を活用していく、生かしていくということが重要だと改めて思いました。
 GIGA端末が入ってからの五、六年ですか、全国の学校を回っていますと、授業の仕方がどのようなものなのか、端末の慣れがどの程度なのか、どの子に対してなのかということも学習効果に大きな影響を与えているということが実感としてあります。
 いずれにしても、大枠でばっさりと紙とデジタルはここと固定的に分けることは慎重に行うべきだと思います。
 最後に、「書く」あるいは「入力する」ことについてですけれども、紙で手書き、端末でキーボード入力という二項対立に陥ることなく、例えば、端末の画面の本文の図表の横に書き込むということも全国の学校でこれは多く行われています。このように様々なケースが考えられることも、ハイブリッドのイメージを固定しないで想定していく必要があることにつながると私は考えています。今後もこの点は、ぜひ議論していただきたく思っています。
 以上になります。ありがとうございました。
【堀田座長】  ありがとうございました。
 松下委員からは、チャットの話を発言したかったということが書いてございまして、後で議事録にうまく事務局のほうで反映していただければと思います。
【松下委員(※Web会議システムのチャット機能により御意見を頂戴した。)】
 本日も示唆に富むご研究のお話を拝聴できました。ありがとうございます。感想となります。マル1デジタルを併用した学校教育が進む中で、家庭の役割として、子どもたちの情動発達の面においても、学びの土壌の育成という面でも、実体験の大切さを認識し、家族の時間のありかたを考えていく必要があると感じました。家庭内での団らん、対話、また自然体験、博物館、美術館に出かけるなど、学びの芽になる体験を家族一緒にする、というようなことを推進することが大切かと思いました。(幼児期から)
マル2市川先生もおっしゃっていましたが、様々な立場での研究があるなか、指針をどうまとめていくのか、難しさがあると感じるとともに、保護者が結果だけを形として受け止めるのではなく、様々な視点を持ちながら、家庭学習も含めた子どもたちの新しい学びの形を認識していく必要を感じました。
【堀田座長】
 松下委員、ありがとうございました。
 今、中川座長代理からもおっしゃったように、デジタルのところに書き込むみたいなことも現場でよく行われていると。実際、紙のノートに書いたものを写真に撮ってクラウドで共有するみたいなことも行われていて、デジタルか紙かとか、手書きかキーボードかみたいな、こういう考え方も、現場を見ていると、何かもうそんなもの、とっくに乗り越えていて、しっかりいろいろ使い分けているなというふうに僕は思うこともあります。今の御意見ですね。つまり、これは授業の仕方とか、現場の先生の慣れとか、一人一人に応じる応じ方とか、そういうところに関係があるんだろうなということだと思いました。
 特に何か、もう御発言の挙手はございませんけれども、もしこれでよろしければ、今日のところはここまでとしますが、いかがでしょうか。
 では、そうしたいと思います。
 私ども、今、指針、ガイドラインをまとめようとしているわけですけれども、法改正がありましたので、新しい形になっていくわけです。デジタルと紙の両方を持ち合わせる教科書が新しく制度化されていくわけで、そのために私たちは何らかの指針を、学校現場のために、あるいは採択権者のために、あるいは教科書を作っていらっしゃる方々、あるいは教材を作っていらっしゃる方々の参考になるようにつくっていくわけですけれども、今の段階で何か決定的なガイドラインが見事にできるということもないんだと思います。現状の実態を踏まえて、今の段階ではこうすべきではないかというところが指針として出てきて、これを基に学校現場の利用が進んだときに、また指針はつくり変えていくと、そういうものだという前提で議論を進めて、取りまとめに向かっていきたいというふうに思っております。
 それでは、閉会の前に、事務局から事務連絡をお願いいたします。
【吉田教科書課課長補佐】  本日の議事録につきましては、委員の皆様に御確認いただいた上で、公開をさせていただきたいと思います。
 また、次回の会議につきましては、既に御案内のとおり、8月18日火曜日、10時から12時に開催させていただきますので、御出席可能と回答いただきました委員の皆様におかれましては、引き続き御予定の確保をお願いいたします。
【堀田座長】  ありがとうございました。
 本日は、こちらの音声トラブルの関係もありまして、オンラインで御参加の委員の皆様には大変御迷惑をおかけし、にもかかわらず、御意見を御意見をと僕が言いまして、大変申し訳ございませんでした。
 また、今日、発言がしにくかったもの、あるいは、資料4で、さらにこう思ったというようなものにつきましては、事務局に、なるべく早くではございますが、メールでいただければ、うまく組み込めるようにしたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
 それでは、今日の検討会議はここまでといたします。どうもありがとうございました。

―― 了 ――

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