令和7年8月1日(金曜日)13時30分~15時30分
ZoomによるWeb会議
事務局:文部科学省 5F1会議室
(1)令和7年度全国学力・学習状況調査の結果公表(2)について
(2)令和6年度経年変化分析調査・保護者に対する調査の結果について
(3)令和8年度以降の全国学力・学習状況調査のCBT化の方向性について
(4)その他
耳塚座長、礒部委員、大津委員、川口委員、斉田委員、貞広委員、田村委員、土屋委員、寺尾委員、中田委員、福沢委員、松谷委員、三浦委員
・資料1-1、1-2、1-3、2-1、2-2に基づき、事務局から報告があった。主な意見は以下の通り。
【事務局】
昨日、令和7年度全国学力・学習状況調査の全国データに基づく分析結果及び令和6年度経年変化分析調査・保護者に対する調査結果を公表したが、令和6年度経年変化分析調査の結果では、5教科のうち4教科でスコアの低下が見られたこと、家庭での勉強時間が減少していること、テレビゲーム・スマートフォンの使用時間が大きく増加していること、等が、本日の朝刊などでも大きく報道されている。この結果については、文部科学省としても重く受け止め、真摯に向き合って改善に取り組んでいく必要があると考えている。各教育委員会、各学校においても、しっかりこの結果を踏まえて取組を進めていただけるように、支援をしていくことが大事だと考えている。そのためには、今回得られたデータについて、さらに深掘りをして課題の要因について分析をしていくことが重要である。本日の会議は、今回の結果をどのように受け止め、どのように分析を進めていくべきか、委員の皆様から忌憚のない御意見をいただきたい。我々はそれを受け止めて、しっかり取り組んでいきたい。
【委員】
「主体的・対話的で深い学び」に取り組んでいるという子どもたちの評価が増えているというのは注目に値するところ。学校の授業が、「主体的・対話的で深い学び」の方向に動いていると思う。改めて今、幾つか問題を見てみると、全国学力・学習状況調査の問題が、従来のものとは違う角度からの提案性のあるものを出されていると思った。課題として3点ほどあると考える。
1点目は、全国学力・学習状況調査の場合には、前の年との点数を単純に比較できないのは、問題が違うからということで説明されてきたが、令和6年度経年変化分析調査の結果を併せて考えると、全体的に学力は、検討を要する状況になっているのではないか、という点である。今後、学力の状況の改善を進めていく必要がある状況であることが、令和7年度悉皆調査及び令和6年度経年変化分析調査両方から、明らかになっていると思う。その原因とまではいえないかもしれないが、全国学力・学習状況調査の問題を見ると、工夫された提案性のある出題が、子供たちにとっては新しい問われ方、自分が学習で経験したことのないような問われ方であるため、思うような反応になっていないのではと思う。同時に、新しい状況に対して十分対応する力まではついていないということもいえるのではないか。
2点目は、工夫した問題にしていくと、子供たちが処理する情報の量が増えることになるが、これだけ必要なのかという点である。小学校であれば40分、中学校であれば45分の時間の中で、少なくとも時間がなくて解けなかったという子供たちをつくらない調査にしないと、全国学力・学習状況調査の狙いとずれるのではないか。
3点目は、調査を授業に反映させていきたいという点である。例えば、小学校算数で分数の計算はできるが、示されたところを分数で表記できないことや、あるいは、中学校国語の推敲の問題で、実際に推敲はやっているが、推敲・修正をする理由をきちんと説明するところまでは至っていないこと、これらを改めて自覚化させるような学習を授業の中でやっていくという伝え方も必要ではないか。
【委員】
主体的な学びが徐々に浸透していると感じている。コロナの影響で学力が下がったというデータが出ているが、まだ課題解決能力を推進するような授業が、全国的に展開しきれていないのではないかと感じる。かなり進んでいる県は、そういった思考力についての問題の正答率・スコアが高く、逆にまだ思考力についての問題の正答率・スコアが低い県もある。将来、必要となってくる課題解決能力や、イノベーション力をはぐくむために、授業改革を徹底することを、課題としていけばよいのではないか。また、学習時間に関して、親もスマホをいじっている時間が多いということについても、これからデータを取り、学習時間がちゃんと確保されるような体制をつくるということが必要ではないかと考えている。教育にICTがかなり使われているオーストラリアに行き、情報端末の管理の仕方について見学をしたところ、オーストラリアでは、スマホについては規制をかけているということだった。小学生・中学生に対してはスマホ・テレビゲームについて、課題を持って規制するなど、日本も情報端末の管理について考えていくことが必要ではないか。
【委員】
中学校の数学の勉強は得意だというA層の中で勉強ができるが得意だとあまり思っていないという生徒の数は、女子の生徒のほうがすごく多い。理科と似たような傾向があるが、そこそこ点数が取れたり、学力があると判断できたりする子でも、自分は得意ではないと考えるのはなぜか。例えば手応えがないのか、数学や理科への有用感を感じていないのか、しっかり分析していく必要があるのではないか。
また、令和6年度保護者に対する調査の「学校生活が楽しければ、よい成績を取ることにこだわらないと考えますか」という質問項目についての分析に関して、中学に入ってから進路のことを考えていくと、とにかくよい成績を取ってほしいという保護者は一定程度いるように感じているので、よい成績を取ることにこだわる層とこだわらない層に二分されているように感じる。実際の調査の結果と、現場で感じることとの差異が微妙にあるのはなぜかを分析していく必要がある。
それから、文字式・証明を読んで理解できることと、数学で説明する活動、その正答率との関係について、読んで理解すること、数学で説明する活動を行っていることの両方に肯定的に回答したグループの正答率が、かなり高くなっている。証明問題は、子供たちは苦手で、証明を書くということは、すごく抵抗感があり、現場の数学の教員としても苦慮しているところがある。そこで実際に、理解させるために相手に説明する活動を取り入れてみる。分からない相手に教える活動を、もっと取り入れていくことが、読んで理解することを肯定的にとらえることにつながると思っている。
最後に、勉強時間について。不登校の問題とも絡めて、宿題を少し減らしたほうが良いという議論がある。家庭での学習時間の減少を見たときに、子供たちにどのように勉強する時間・機会を確保していくのか、自分から勉強するようにしていくのか、そういったことについて、真剣に考えていかないといけない。これだけの結果をみて、実際に現場で何をしていかなければいけないのか真摯に受け止めて、分析をして、自校でも何らかの手立てを打っていかないといけないのではないかと感じた。
【委員】
1点目、今回の全国学力・学習状況調査の問題に関して、探究的な学びを意識する現場においては、その問われ方が、かなり生活場面に置き換えられてきた。そういう意味で、私はすごく評価をしている。今日の分析を見せていただいて、本当に宝の山であり、ここから見えてくる課題を一つ一つ現場において支援し、改善していきたいと考える。その中で、先ほどから話題になったコロナの影響にいついて。最近学校で、リーダーになる子が非常に少なくなり、騒がしい教室にいると疲れてしまい体調を崩す子が増えてきた。また、周囲の自分に対する視線や反応に対して神経質な子や過敏な子、失敗や間違えることに対して異常に気にする子が増えてきた。今回の全国学力・学習状況調査を受けた子供たちが、小学校でリーダーとなり児童会活動等での活動や人とのつながりを経験する活動ができなかったからではないかと考える。
また、小学校で、例えば宿題を出した際に、担任がそれを評価して、本人に返していくことができにくかったのかと思う。
2点目、不登校について。今までは、不登校の要因として無気力・不安感というのが一番多かったが、昨年度から見てみると、生活のリズムの不調が非常に伸びてきている。その因果関係も含めて、少し分析・調査も必要だが、実感として増えてきていることが気になっている。
3点目、学ぶ時間、家庭での過ごし方について。タブレットや、スマホを見る時間が多い。それに関わって学習時間が少ない。ある中学校の取組で、タブレットやスマホを見る時間は言っても直らないので、画面に向かう時間を遊びより学びにという発想で、宿題が探究的な学びになるように工夫改善を図り各教科家庭学習においてもレポートをまとめたり授業をまとめたりしたものを端末上で提出するなどの工夫を行うようにしたところ、提出したものをより良いものにしていきたいという子どもからの感想もあり、分析や情報の収集、まとめ、表現等を工夫していくようになった。そのような学校と、そうでない学校の比較調査を、今後分析していきたい。
【委員】
1点目、中学校理科のことで、IRTの導入によって、IRTバンドごとにG-P分析図が描けるようになったことは、とても有用な結果や示唆をもたらしてくれると思う。特に新聞紙上でも「〇〇に課題」と、どの能力層に対しての課題なのかを明示せずに書いているところもあったりするが、できている子たちもいる。むしろ、この層に対してターゲットを絞ってアプローチすべきという意味合いにおいても、非常に重要な分析結果だと理解しており、どんどん解釈してほしい。特にIRTが中学校の理科に導入され、3年後、こういった理科にまつわる課題が共通尺度の上で比較したときに、どの程度解決されているのか、この分析にも目を向けていただきたい。基本悉皆調査のほうは、問題が違うので比較不可能という前提に立つが、中学校理科でのIRTの導入により、3年ごと比較可能になる道しるべはつけられた。今後、課題がどのように到達していったのかは、継続的に追っていただきたい。
2点目、経年変化分析調査について、モードエフェクトに関する分析結果が出ていた。今は令和3年度以前と比較可能にするためにPBTとの比較結果を示しているということだが、悉皆調査の結果と並べてみると、不整合というか、知見の競合も幾つかある。例えば、悉皆調査のほうでは、ICTをより使っていればいるほど、特に国語においては正答率が高いという、正の相関関係が0.2くらい見られている一方で、経年変化分析調査では、国語が低下しているという傾向も見て取れる。それは、PBTやCBTというモードの違いも関係しているかもしれない。CBTのほうを分析してみると、また違った平均値の様相が見えてくるかもしれない。これについては、さらに深掘りして、CBTではどうか、しっかり見ていただきたい。
3点目、モードエフェクトに関して資料2-1の10ページ、11ページを見ると、無解答率がCBTで高くなっている。PBTのほうでは、何か答えることができているのに対して、CBTでは操作の仕方が分からないのか、あるいは何を答えたらいいのか分からないのか、無解答率が高かった。これは全国学力・学習状況調査においてはゆゆしき問題だろうと考える。何か解答を得られることが大切なので、無解答を減らす工夫が必要だと思う。それに関連して、悉皆調査の中学校理科で、原子の化学変化をモデルにして入れるという問題があった。これは、かなり無解答率は低い。何かを解答欄に入力することはできたからだと思う。何を解答すればいいのか、少し検証の必要はあると思う。生物に関する問題でも、「全て選べ」という選択問題で、とりあえず全部選んでおくということはできる。それが、能力の識別に寄与しているかどうかは、また次の問題になってくるが、無解答を減らす工夫は、引き続きお願いしたい。
【委員】
1点目、技術的な面になるが、今回、経年変化分析調査でスコアが変わったという結果の報告があった。経年変化分析調査は抽出調査で行われているので、抽出調査の場合の変化の要因として、大きく2つあると思う。1つは、標本誤差。同じ対象を追いかけていないことによって結果が変わってしまったという要因。それから、実質的に変化があったという要因。今回はどの科目も、多くの科目で下がったという結果になっているので、恐らく最初のほうではなく、後者のほうで、実質的に少し変わったといえるかと思う。そういった変化をより詳細に捉えていくためには、今後の経年変化調査の抽出の方法として、これまでは、毎回抽出し直していたが、他の方法としてローテーションも考えられる。もちろん調査を受ける子供たちは変わるが、一部の学校に関しては、引き続き同じ学校を対象にして調査するというような、抽出の仕方に少し工夫があると、より詳細に経年変化について分析していけるのではないか。
また、資料2-1の9ページ目で、SESに応じてスコアの変化の大きさが違ったという報告があった。SESに関してどういったところで変化が大きいのかを踏まえ、どういった層化変数を用いて層化抽出するべきかについて、次回令和9年度に、層化変数の検討も改めて必要ではないか。併せて、モード効果があるということだが、今回は過去との比較ということで、PBTで比較したが、今後は悉皆調査もCBTに替えていくこととなる。ただ、CBTに替えた後に経年変化を見ていくとなると、かなりの時間が必要になってくるので、将来を見据えて、どのようにしてモードを変えていくかということについて、知恵が必要ではないか。次回令和9年度まで、待っていていいのかと感じた。
2点目は、スマホやテレビゲームの時間が増え、スマホやテレビゲームの時間が長いほど子供たちのウェルビーイングが低いという結果になっているという説明があった一方で、ウェルビーイング単独で見ると上昇しているという説明があり、逆の結果が出ている点である。その辺りのメカニズムについては、より深掘りした分析が必要である。
【委員】
今回の結果を拝見して、改めて強調したいのは、国語、算数・数学、理科、質問調査を通して、主体的・対話的で深い学びの重要性、読書、言語活動等、体験的学習の組合せ等の意義や重要性である。学力だけでなく、ウェルビーイングへの影響も読み取れたように思う。ドリルの繰り返しだけでは到達できない、現実世界と教科の固有の知識・技能等をつなぐ記号接地の営みが必要である。その橋渡しをするのが、豊かな体験と、教科固有の見方・考え方や、それをひも解く用語等を結びつける言語活動だと考える。古くは、デューイが体験の代替としての読書を批判したが、一方で同時に体験だけでは不十分で、体験を読書によって観念化することの重要性も解いている。加えてイギリスでは、oracyという概念の下、効果的な言語活動が体系化されており、特に英語を母語としない児童・生徒、SESの低い児童・生徒への効果が検証されてきた。日本でも平成20年度版学習指導要領から言語活動の充実が掲げられ、今日に至るまで継続的に強調されている。近年は、学校でICTの学習基盤が整理され、児童・生徒は、家庭でも画像や動画に長時間触れている。だからこそ、視覚的に分かることだけで満足せずに、意識的に言葉をしっかり使う授業が、一層重要になってきていると考える。家庭における子供たちへの期待や接し方、保護者や児童・生徒の長時間のスマホ使用等の影響も読み取れたところ。このようなデータを囲んで、学校と保護者が対話を重ね、相互の理解と協働を一層つくり上げていくこと、マスコミの皆様は既に行っていただいているところだが、社会全体に対して読書や言語活動の重要性を伝えていくことに、この結果を生かしていただければうれしい。今後、国立教育政策研究所から、問題の解説や指導改善の方法等が示されるかと思うが、その際、一問一答の改善での指導にとどまらず、学習において何が大切かという大きな論点と結びつけて進めていただきたい。現在、中央教育審議会教育課程企画特別部会で、次期学習指導要領に関する審議が進められているところだが、その中で、高校入試が変わらなければ中学校の授業が変わらず、こなす授業・網羅的な授業もまだまだ続いているというようなことも指摘されている。だからこそ、これまで同様、今後の入試改革の見本ともなるような、概念理解や思考力、判断力、表現力等をはかれる問題の作成に、全国学力・学習状況調査において引き続き御尽力いただきたいと願っている。
【委員】
個々の調査結果は予兆レベルなのかもしれないが、総合的に見て、残念ながら相当重く受け止めるべき状況であると考えている。ただこれは、こうした調査を行っているからこそ見えてきた危機的な状況でもあり、結果に過剰に悲観するのではなく、このデータを生かして踏みとどまる思考を持ちたいと思っている。とりわけ、どこに、誰が、なぜ学力定着に課題があるのかを、決して拙速にではなく、しっかりと分析をしていきたい。今回の課題状況の典型例は、算数・数学の状況がそれを示していると考えている。小学校の分数の問題や、中学校の比例式の問題の解答傾向を見ると、手続的な計算はトレーニングされているものの、数の概念や数学で求められている抽象的な記号表現の仕方が、具体的なイメージや生活と結びついていない。まさに記号接地ができていないということだと思うが、逆に言うと、下界の事例を抽象化できないことであり、算数・数学はお手上げということでもある。加えて、社会経済的背景による格差も広がっている。正直申し上げて、どうしてこうなったと思いたくなる状況でもある。ただ、こうした状況に拙速な過剰反応をして、詰め込み式の量の学びに揺り戻すのは適切ではないということも、本会議でも、ほかの委員の方もおっしゃっていて、これは強く確認したい。今回の調査結果分析を見ただけでも、主体的・対話的で深い学びも、子供たちが自分でいろんなことを説明するような授業も学力定着に非常に重要であり、子供たちに力があることも示されている。すなわち、現場の先生方の専門性に裏づけられた授業改善に如くはなしということでもあると思う。ここをしっかりと分析をして、現場に戻していっていただきたい。
最後に、今回の保護者に対する調査において、特に経年変化分析調査の結果と連動して、保護者の方々の状況と学力との関係性が示されている。ただ、保護者の方々の在り方は、つとに私的領域の問題。データで示して、こうなっているということまでは示すことはできるが、文部科学省からの政策的な働きかけは難しいと思う。学校でできること、教室の中でできることは何かを探し出していくことが大事だと思うので、ここをぶれさせないということも大切。
【委員】
学校で何が改善できるのかを考えることが、この結果を活かしていくことにつながると思う。IRTが日本の学力テストにも導入されて、学力の経年変化が共通尺度上で比較可能となったことは、画期的である。経年変化分析調査の結果、令和3年度から令和6年度にかけて、国語と算数、英語で学力低下が見られた点は、真剣に受け止めなくてはいけない。原因についてこれから詳細に検討する必要があるが、資料1-1の63ページの「授業が分かりますか」という質問調査で、「分かる」と回答する割合が、令和3年度から令和7年度にかけて、どの教科でも、小学校、中学校ともに、低下していることがわかる。現行の学習指導要領が小学校で導入されたのは令和2年度、中学校では令和3年度である。
現行学習指導要領の実施時期に、悉皆調査の質問調査で「授業がよく分かりますか」という質問に肯定的に答える児童生徒が小・中のどの教科でも減少していることは、令和3年度から令和6年度にかけて学力が低下していることと関連があるのではないか。この2つの調査結果を合わせて、児童生徒にとって「分かる」授業をどのように実現していくかを、学校の先生方とともに考えていくことが、教育データ利活用の観点からとても大事だと考える。今回の結果から、家でゲームをする時間が少ない、スマホをいじる時間が少なければ、学力が高いというのも分かった。だが、授業外のことだけでなく、授業内でどのように「分かる」授業をして、授業が分かる児童生徒の割合を増やしていくために、どのように授業改善していくのかを考えることも、今回の経年変化分析調査結果を生かすことにつながると思う。知識・技能と思考・判断・表現について、学校でどのようにこの2つの資質・能力を育てようとしているのかについて、多くの分析はなされているが、結果が見えてこない。国が求めているような資質・能力を育てるために、実際の授業をどのように改善してどのように指導していったらよいのか、早急に検討し直す必要がある。
悉皆調査の中学校理科でIRTを導入して、5つのバンドごとにG-P分析がなされた。授業が分からないと回答している人が、どこができないのかをさらに分析すると、教室の中で分からない子を分かるようにするヒントが見えてくるだろう。併せて、SESが低い場合でも、学校でどのような授業をすると、SESにかかわらず学力が向上していくのかという、教室での指導に直接関わるような、分析研究や実践がなされることを望みたい。
【委員】
私は、学力調査は健康診断だと思っている。そういう点から見て今回の調査結果は、いい点が2つある。
1つは、やはり男女差が明らかになった点。もう1つは、IRTを使った経年変化分析調査で、学力低下が明らかになった点。どちらも悪い点ではないかと思うかもしれないが、やはりこれまでは出していなかったこと、あるいは、できなかったことがIRTでできるようになったという意味でいいことだと思う。健康診断で例えると、これまでは数字が悪かったのを言っていなかった、あるいは調べていなかったという状態なので、課題をきちんと出したという点が、すごくいいことだと思っている。一方で問題点は「なぜ」が、なかなか見えてこないこと。また健康診断に例えると、いままで血圧を測ってきていなかった人が、ようやく血圧を測るようになったが、今度は血圧が上がったといって焦っているという状態に見える。焦るのは分かるが、だからといって、例えば手術をしましょうというような方向に行ってしまうのは怖い。私は、精密検査というか、もうちょっと詳しく見ていく必要があると思う。ここで必要だと思うことが2つある。1つ目、経年変化分析調査は特にそうだが、見ている範囲が狭かったのではないか。仮に小3を調査対象にしていたら、もっと早い段階で学力の低下が分かったはず。小6、中3という二時点について、小6はちょっと遅過ぎるのではないかということがいえるかと思う。2つ目、前々から言われていることではあるが、やはり調査をパネル化して、同じ子供の変化を見ていくということを考えなければいけないのではないか。今のところ、勉強していない子の学力が低いというところで議論が止まっていて、勉強しなくなったから下がったといった分析ができない。それは同じ子の変化を見ていないからである。ここをきちんと分けられる設計にしなければいけないのではないか。男女の問題についても、たとえば義務教育が終わった後の進路を追跡する必要があると考える。理科に対して自信がある女子は、理系進学を目指すのかとか、そういったことをきちんと見ていく必要がある。女子に自信をつけてあげて果たしていいことが起こるのか、長期的に見ていかなければならない。今、申し上げたことは、いずれも工夫とお金が要ると思うが、できなくはないと思う。20年前に学力低下論争があったと思うが、あのときみたいに、基礎・基本が大事だと騒ぎ、揺り戻しのようになってしまうことは、意味のないことだと思う。同じことにならないために、日本の教育を前に進めるためにはどのようにしたらよいか、冷静な議論が必要。
【委員】
今回の調査結果に関しては、従前の調査結果の分析に加え、より多面的な分析を、文部科学省・国立政策研究所で加えていただいたことに感謝申し上げる。今回は、課題がたくさん出てきているが、一方でこの課題の中からは、充実・改善の切り込み口やきっかけもたくさん見いだすことができるのではないか。例えば、今回、「教科の学習が好きですか」「教科の学習は得意ですか」といった質問と、受検者の正答率・スコアの相関を見たときに、好きになりたい、得意になりたいと思っている児童生徒が、潜在的に多くいるはずだと思うが、その潜在的な意識を大切にした授業改善も、今回の結果の1つのアンサーとして考えられるのではないか。課題が網羅的に出てきて、その改善のきっかけがなかなか見いだせない可能性もあるので、この正答率・スコアが上がった・下がっただけではなく、この結果から見いだせる何か改善のきっかけとなる切り込み口が、今後、国立教育政策研究所をはじめ多くのところから出ることを期待している。また、課題に目が行きがちだが、喜ばしい結果もたくさんあるのではないか。1つは、「先生はよいところを見つけてくれる」「自分にはよいところがある」「幸せな気持ちになる」といった質問に関しては、コロナ禍で、子供たちも学校の先生方も大変な思いをした中、このような思いが向上していることは、取りも直さず、学校現場の先生方の御尽力の成果だと思う。課題として見えている部分もあるが、向上している部分にも目を向け、やはり学校現場の先生方の御尽力・御努力に関しても、文部科学省・国立教育政策研究所において発信していくことが大事になると思っている。
今回の質問調査の中で「読書が好き」と回答する児童生徒の割合の減少や読書時間の減少が出ているが、ある面、このような時代背景にあっても、読書が好き、読書の時間を確保しているといった児童生徒が、これだけ多くいるということも注目に値する。このような取組をしている児童生徒は、学校ごとに何か特徴があるかもしれない。それらを見つけ、さらにグッドモデルとして深掘りをしていくことで、課題と改善の方向性をセットにして、これからこの調査結果をよりよく生かす方向へと進むことを祈念する。
【委員】
今回、非常に広範で詳細な分析をしていただいたので、従来よりさらに分析のレベルが上がったと思う。
調査のスコアの比較可能性が、従来よりレベルが上がったことで、多くのことが言えるようになった。IRT等の技術的背景を導入することにより、異なる年度の調査の関係がつけられるようになった。従来は、調査問題をどのように作るか考える際に、重きが置かれていた側面は、どういった授業を今回のカリキュラムでやってほしいか、どういう授業に示し取り組んでもらいたいかということについてのメッセージ性が非常に強かったと思う。少なくとも全国レベルで大規模に学力調査をやる中で、比較可能なスコアを得ることの意味が非常に大きいことは、今回の結果を見ていただいて、多くの方に理解していただけたのではないか。そうすると、少なくともスコアが信頼しやすい、測定論的に安定した試験を作るのは、メッセージ性を強くするという問題の作り方と、かなり変わってくることがあるのではないか。現場の先生方の御意見とは必ずしも一致しないかもしれないが、要するに何ができればその問題に答えられて、何ができなければ答えられないかということについて、なるべくシンプルな構造を持つ設問のほうが、精度として、測定の仕掛けとしての調査としては性能がよくなる傾向がある。私からお願いしたいのは、特に作題するときにあまり中身を欲張り過ぎないで、シンプルな設問を作っていただきたい。特に経年変化分析調査のほうは問題が決まっているので、そういう視点を従来より重視していただきたい。それと絡めて、経年をCBTに移行させる際に、現在の状況だとCBTの問題の問い方について、安定してCBTの設問を作れるような配慮・計画をお願いしたい。
【委員】
1つ目、結果公表の在り方について。ここまで3段階中の第2段階まで公表が行われている。加えて、二本柱のもう一つの柱である、経年変化分析調査の結果も公表された。今後、3段階目の都道府県指定都市別の公表がまだ残っているので、まだどうであったかをお伝えできる段階ではない。CBTやIRTの導入を最大限生かすという点についても、評価には時間がかかるであろう。調査結果の取扱い検討ワーキンググループは、改善の方向性として結果をつまびらかにすることを前提として、第1に、児童生徒の指導改善に生かすこと、第2に、学力のばらつきが大きな個人単位の分布に着目して、ばらつきを生み出す要因を明らかにすること、第3に、学力の下支えに活用できる分析を遵守することをポイントとして挙げていた。まだ改善の余地はあるかもしれないが、ワーキンググループの報告に沿った形で公表できているのではないか。一見、課題が多岐にわたっていて絞り切れていない印象があるかもしれないが、これまでの結果公表とは一段階レベルが違う公表になったのではないかと、私自身は考えている。事務局の御尽力には、感謝を申し上げたい。
2つ目、経年変化分析調査の結果について。悉皆調査の結果についても注目すべき点が幾つかあった。基本的なレベルの知識・技能に関する理解度に、ほころびが見えたこと。それから、学力と学習への構えについて、性差が初めて公表されたこと。これは、特に注目すべきであり、政策課題であると思った。今回の公表の中で、私が最も注目すべきと感じたのは、経年変化分析調査のほう。こちらで特に中学校数学を除いて、学力スコアの低下傾向が見られた。保護者に対する調査を含む経年変化分析調査は、全国学力・学習状況調査の二本柱の1つとはいえ、これまで学力スコアにさしたる変化がなかったこともあり、注目される存在とは決して言えなかった。むろん、変化がないことも重要な知見ではあるが、改めて、この調査の存在意義が確認されたように思う。問題は、なぜスコアが低下したのか。残念ながら、それを推測させるヒントは垣間見えるものの、仮説の域を超えるものではない。この仮説の中には、既にいずれも指摘されたことではあるが、学習時間の減少、知識・技能の定着に課題のある児童生徒の増加、保護者の学業への関心の低下、SESによる学力スコアの格差拡大、急激なデジタル環境の変化など、学習指導要領の改訂や、児童生徒の指導上、特に念頭に置かなければならないことが含まれているように見える。特にSESの分析については、何が学校で行われなければいけないのかについては、やはり層別の分析は不可欠であろう。また、デジタル環境の変化の影響についても、スマホやゲームに割く時間の多さ、量的な問題に加えて、情報に能動的に接することができているのか、それとも、垂れ流し的に受動的にこれを受け入れるだけなのかといった点が、非常に重要な違いを生み出しているように思われる。いずれも難しい問題ではあるが、今後の経過を見守りつつ、腰を据えて課題解決に取り組む、あるいは、必要な調査研究を行うべきだと思う。こういう課題自体が多岐にわたって見えてきたこと自体、評価したい点だと思っている。
・資料3ー1、3-2、3-3に基づき、事務局からの報告があった。主な意見は以下の通り。
【委員】
次回の経年変化分析調査でもPBTとCBTを行うことは、必要だと考える。今回はモードエフェクトが大きい。いきなりCBTに替えてしまうのは、経年変化分析調査の意義も損なうので、これは妥当な判断だと考える。予算的な問題があるということだが、何とか実施していただきたい。
【委員】
私も令和9年にCBTとPBTを併用して経年変化分析調査を実施することに賛成する。さらに、令和9年度以降も、もし作題の技術の成熟が難しかったり、児童生徒がPBTへの対応が難しかったりした場合、CBTに一本化するのか、PBTとCBTの二本でやるのか、その作戦を練るところも、しっかりやっていただきたい。
【委員】
今年の中学校理科に続いて、令和8年度には中学校英語が、令和9年度には、小中学校ともCBTへの全面的な移行が予定されている。学校における実施日程に大きな変更が生じることとなる。文部科学省においては、各学校において調査を円滑に実施できるような日程となるように、引き続き検討をお願いしたい。
総合教育政策局参事官(調査企画担当)付学力調査室