令和7年7月14日(月曜日)10時~12時
ZoomによるWeb会議
事務局:文部科学省 5F1会議室
(1)令和7年度全国学力・学習状況調査の結果公表(1)について
(2)令和8年度以降の全国学力・学習状況調査のCBT 化の方向性について
(3)令和9年度全国学力・学習状況調査の実施日程について
(4)各学校・自治体の主体的な分析の支援について
(5)その他
耳塚座長、石田委員、礒部委員、大津委員、川口委員、斉田委員、貞広委員、髙瀬委員、田村委員、垂見委員、土屋委員、寺尾委員、福沢委員、冨士原委員、益川委員、松谷委員
・資料1-1、1-2、1-3、2-1、2-2、2-3に基づき、事務局から報告があった。主な意見は以下の通り。
【事務局】
改めて、委員の皆様、また関係の皆様に、今回の取組について御尽力、御協力いただいたことに御礼を申し上げたい。今回の公表についてはかなり工夫をしており、チャレンジングと申し上げてもいいのかなと思うくらい、大分先を見ながらの取組になっているのと思っている。その背景として、まずはランキング化される可能性が高い公表の仕方の工夫という全国知事会からの要望があったということは事実だが、それよりも先にそもそも全国学力・学習状況調査をどう向上させるか、教育行政のパフォーマンスをどう向上させるか、という根本的な話があった。教育の質の向上という話が、国会でもよく議論になるが、その際よく答弁では、教育環境の充実、例えば教職員定数の充実や、GIGAスクールの話が出てくる。ただ一番大事なところは、やはり子供たちの学びの実態をしっかりと把握して、分析して、しっかりと現場にフィードバックとして返すということであり、これが一番大事な教育の質の向上策の原点かと思っている。今回いただいた様々な意見を踏まえながら、ここで歩みを止めることなく、さらに進めてまいりたい。引き続き先生方のお力添えを賜ること、そしてこれまでの取組に改めて御礼申し上げる。
【委員】
資料1ー1の3ページ、バンド別に正答数範囲を表示されているが、「中学校理科」はIRTスコアを5つのバンドに分割し、それ以外の教科は頻度で4つの区分に分けているということでよいか。
【事務局】
「中学校理科」はIRTバンドとして、スコアからこれを標準偏差の範囲で区切っていったもの。それ以外の教科については、正答数の多い順から並べて25%を超えたところで区切っていくという全国のデータで見た四分位と考えていただければと思う。
【委員】
「中学校理科」とそれ以外だと分け方の区分が違うので、見る人に誤解されないようにどこかで注意したほうが良いと思う。
【委員】
学校外での過ごし方のうち勉強時間や授業がよく分かるということについて、僅か5年余りでこれだけ減少傾向が見られるということは、かなり大きな変化かと思う。やはりこれは今後も注視して深掘りしていく必要がある。
【委員】
1点目、まず今年から公表を3段階に分けて、学校への返却が本日となったことについて本当にすごく前進したと感じる。夏休み前に子供たちに返却できるということは、学びを振り返る点で、とても重要かと思っている。
2点目、算数で分散が大きく正答率が低い子供たちの広がりが大きいという状況が、標準偏差から見ても、ばらつきがあると感じている。正答率の低い層への効果的な指導は考えていく必要がある。
【委員】
学校外での過ごし方のうち授業時間以外の勉強時間について、このスコアはかなり注目に値するべきところだと思っている。特に小学校、中学校ともに、年を追うごとに勉強時間が減ってきていることに関して、現場の先生方の実感も含めて多面的な調査、追加分析が必要になると思っている。
【委員】
今回、特に返却のスピード、タイミングが速くなった。夏休み前に返す学校も返さない学校もあるなかで、どのような形で返却され、活用されていったのかを、今後検証し、よりよいものに構築していただければと思う。
【委員】
特に夏休みに進路に向けて取り組む中学3年生だと、夏休み前に返却された全国学力・学習状況調査の結果が大いに生かせるのではないかなと期待をしている。学校外での過ごし方の結果については、やはり現場としても本当に深刻に受け止めていかなければいけない。現場では授業改善を進めているものの「授業の内容がよく分かる」と回答した児童生徒の増加がなかなか見込めていない、結果として出ていないことについて、課題が本当に多いと思った。
【委員】
各教科への興味・関心、理解度において「授業の内容がよく分かる」という質問に対して「よく当てはまる」と回答した割合が、小学校算数だと令和3年度の51.7%から令和7年度の41.9%まで、10ポイントも減っている。中学校数学を見ると、令和3年度から令和7年度までの期間で5ポイント減っている。これが何の影響なのかは、学習指導要領改訂の時期を迎えるに当たって、じっくり検討していただく必要がある。
【委員】
資料1-1の3ページと4ページに着目してみると、積み重ねが必要となる学力、とりわけ小学校算数と中学校数学については、低学力層のほうにテールが伸びている兆しがあるように見えて、懸念している。一方で、4ページを見ると、その差は都道府県間や教育委員会間や学校間というよりも、児童生徒の間で分散している。すなわちどの自治体でも、どの学校にも、学びに悩みを持っている子供たちがかなり存在していて、いかにそういう子供たちの下支えをするかが、全ての学校の課題であり、特定の市町村や特定の都道府県ではないとことが、改めてここで確認できる。やはり学校の本丸は授業。その「授業が分かる」と言っている子供たちが、たった5年の間にこれだけの差異が出てきたということは、丁寧な原因分析と、次にどのように授業づくりを行って下支えをしていくのかという視点が重要であることが、改めて示されている。
【委員】
全国学力・学習状況調査の結果を早く学校に返すことは非常にいいことだと考える。夏休みを通して教員がそれを分析し、2学期の授業を迎える意味でも、調査結果を早く出せることは良いと感じた。やはり「授業の内容がよく分かる」と回答した割合が減ってきているとことが心配である。しかし、児童生徒が質問調査において、今は「主体的・対話的で深い学び」の視点を意識した授業になったことにより、「先生の授業の説明が分かる」という項目における肯定的評価の回答数が少なくなったと感じているので、この点についてこれから分析をしていかなくてはいけない。
【委員】
「授業の内容がよく分かる」と回答する割合が減っているところは、やはり丁寧な分析が必要。
例えば現行の学習指導要領が実施されていくことで、「主体的・対話的で深い学び」の実践が増えていくと、子供たちも単にいろいろな事実を丸暗記すれば良いのではなく、深く学び、いろいろな概念について考えていかなければいけなくなった。そこで、子供たちの学習目標のレベルが上がり、その結果、「よく分かる」と回答する子供が減っていっている可能性もある。やはりそういう学習の実態を丁寧に見ていくことが大事かと思う。
【委員】
学校への結果の返却は、今年度から例年の時期を前倒しして行っている。何よりも児童生徒の学びへの調査結果の還元を重視した結果である。児童生徒の個人票も返却されているが、資料1-1の1ページの右下にあるように、7月中に個人票を児童生徒に返却する予定の学校はやや少ないという印象を受けた。調査結果が速やかに活用されることを期待する。その際に「中学校理科」で初めて採用されたIRTスコアを、どう生徒や保護者に説明するかも問われる課題。資料2-1・2-2・2-3に、IRTとは何か等について説明が準備されていたが、開発の途上にある説明であって、完成形ではないという印象を受ける。今後、この点についても本会議の委員の提案があれば、お寄せいただければと思う。
・資料3ー1、3-2に基づき、事務局からの報告があった。主な意見は以下の通り。
【委員】
資料3ー2の6ページ、3つ目の項目の2行目に、「4月24日(金)を予備日とする。後日実施は4月27日から5月上旬とし、学校外での実施も可能とする。」とある。また、その2つ下の丸の右のほうに「英語『聞くこと』、『読むこと」、『書くこと」の公開問題とその正答例等は4月24日に公表」とある。よって、4月24日の予備日に実施する学校と後日実施する学校は重なっているのか。また、後日実施をする学校は、正答例を見てからの実施になるのか。
【事務局】
今年度の経験も踏まえて、分散日程の実施期間の中で予定どおりに実施できなかった学校が、予備日を活用して実施できるようにしたい。そして、それを当日実施扱いできる「予備日」としての設定を考えているそのような前提に立ち、24日の英語の問題の公表は夕方以降で、予備日の実施終了後の公表を想定している。「話すこと」の問題と正答例は5月29日に公表で、「話すこと」の実施期間全体が終わった後にまとめて公表するという扱いにしたい。前回令和5年度の調査の際も同様であるが、「話すこと」の調査に際して、できるだけ問題が期間中に拡散しないように、学校にも適切な資料の扱いをお願いしていこうと考えている。
また、後日実施については、基本的に公開問題によって実施をするということで、全国の集計値からも除いた扱いになる。今年度の「中学校理科」の後日実施と同じ扱いということを踏襲している。
【委員】
「話すこと」、「書くこと」に関して、サンプル問題を出されるということだが、以前の「話すこと」調査の課題として、生徒が録音の仕方の習熟ができておらず、録音が完了していなかったことや、聞き直しができるのに確認しなかったというような事例があった。サンプル問題を出すときに、例えば「話すこと」に関しては、録音の仕方や確認の仕方も含めて、生徒に操作の仕方が習得できるようなパッケージを出されるといいのかなと感じた。「書くこと」もタイピング能力の高低で、英語ライティングの能力、得点そのものが左右されるという状況がある。私も大学生や高校生向けのCBTの実験をやると、感想でそのようなことをよく書かれる。タイピング能力の高低は抑えるべきポイントであるが、学校でライティングの対策をやろうとすると、英語を「書くこと」の対策になってしまうというジレンマもある。タイピングが習熟していないと、当日いきなり英語を入力して解答せよと言われても困ってしまうと思う。そのため、サンプル問題の出し方は工夫したほうがよいかと思う。
また、令和7年度の公表資料ともリンクしてくる話だが、「中学校理科」のときにも、やはり実施がうまくいかなかった学校があり、その理由として、後日実施期間があることを知らなかったことや、ネットワーク面で学校のネットワークのサーバーが壊れてしまったことがあった。突然の故障は仕方ないところもあると思うが、後日実施への周知はより増強してもいいのかなと感じた。
【委員】
資料の3-2の4ページ、「特別な配慮が必要な児童生徒への対応」について、多様な障害をもつ児童生徒がいると思う。CBTになったことで、いろいろな改善がされるのではないかと期待されている方も多いと思う。ここに書かれている、拡大文字、ルビ振り、時間延長は、技術的にもチャレンジングな内容なので、積極的に多様な研究をお願いしたい。例えば、読字障害のある児童生徒に向けての音声読み上げなども継続的な研究をお願いしたい。
【事務局】
技術の進展に応じてさらなる活用がどのように可能かということも、毎年、CBTに関する試行・検証事業を実施していく予定。その中でも「特別な配慮が必要な児童生徒への対応」について計画的に研究を進めていく。
【委員】
資料3-2の6ページ、調査の日程などに関する部分で中学校の実施日は、あくまでもネットワークの負荷・負担に応じて分散させることか。6ページの下から2番目の丸に「各教育委員会・学校の都合を踏まえて」とあるが、このの「都合」というのは希望のことなのか。例えば「全国値の算出の対象となる4月24日実施校」とあるが、この算出校になりたいという学校と、なりたくないという学校とあるのか。学校によっては、算出校の対象になりたいというような、ネットワーク負荷とは関係ない要因で、希望日を出してくる可能性があるのではないかということ。全国学習・学力状況調査に関わる期間について、英語の「話すこと」に関して、5月29日まで可能になると、可能性として、学校が調査に関わる期間が長くなる。この調査に長期間関与し続けることが先生方を楽にするのか、むしろプレッシャーにするのか。日程を長期化することについては、後で現場のフォローアップをする必要があると考える。
【事務局】
資料3-1の3ページを見ると、全国集計の対象とそれ以外は、一定の日程で区切るという考え方。ただ全国集計の対象となる部分をどのように考えかは、指摘のように、まさに算出校になりたいか否かで選ぶのは、適切ではないと考える。
3ページの※2だが、前回令和5年度調査の実績だと、事前に専門家にも協力いただいて、日本の縮図となるような形で500校程度を選んで、当日集計校という形でお願いをさせていただく形で実施した。それ以外の9,000校余りについては、まさに学校の都合もあり、各学校の準備、対応が可能な日程を希望ベースで選んでいただくイメージ。したがって、当日校が500校かどうかはともかく、前回の抽出の考え方が今の時点では適切ではないかと思っていることから、引き続き検討を進めたい。
【委員】
CBTは同一校では1日で実施するということだが、「話すこと」についても、そのような取扱いでよいか。ネットワークの負荷もかなりかかるのではないか。
当日欠席した生徒は、別日に受験が可能なのか。先生方の負担は増えるかと思うが、本人が自分の学びの状況を把握したいという希望もあるかと思う。
【事務局】
「話すこと」の調査については、前回の令和5年度調査において、各学校1日でやり切っていただいた。大変規模の大きい学校では、この実施のオペレーションも非常に困難を抱える可能性もあるので、実際の現場の意見もさらに聞いた上で、最終的に考えてまいりたい。
欠席者については、後日実施ということになるが、後日実施の取扱いの詳細もさらに検討を重ねたい。
【委員】
ここ半世紀近くで、英語の授業が大きく変わってきたことを実感している。その意味で、令和8年度の「話すこと」の調査に向けて、このような形で考えて計画されていることについては、すごく期待している。しかし、英語の調査の実施にあたっては、CBT化の中でタイピングの技量が必要になることや、「話すこと」の調査でネットワークの環境の考慮が必要になる。実際にやってみて、機器的なトラブルなどに見舞われた際に、生徒自身が自分の力を出し切れていなかったときに、どのように対応していただけるのか。何人かだけは後日実施になるのか。その場で対応できるような環境を整えていただけるのか。「話すこと」の調査に関しては、現場としては心配だと思うところはある。
【事務局】
前回の令和5年度調査については、一部不具合が途中で生じた場合は、全部をやり直すか、諦めるかという対応になっていた子供たちの負担と調査の趣旨を考えて、より柔軟に一部やり直しができるようにすることも含めて、今さらに研究を進めているので、またどこかの段階でお示ししたい。
・資料4に基づき、事務局から報告があった。主な意見は以下の通り。
【委員】
令和9年度は初めてCBTを2教科以上でやる年になると思うが、国語や算数・数学は、これまでどおり同じ日にやるという設定か。負担かもしれないが、1科目ずつ分けるということも考えられるのか。
【事務局】
英語「話すこと」調査も、できる限り柔軟な日程の調整を考えたいと申し上げたが、同様に、令和9年度についても、国語、算数・数学、質問調査を一気にやるのは非常に窮屈。場合によっては端末の充電も考えるべき要素。 1日でやり切るという固定観念に囚われず、様々な方法を検討したい。
【委員】
全国ではいろいろな日程で学校の1学期が始まるかと思う。始業式を4月6日、7日、8日と後ろ倒しにする地区もあると聞いている。全国学力・学習状況調査の実施日程として、4月12日は学校としてはかなり早い日程で、まだ学校が立ち上がっていない、担任とも顔合わせをしたばかりのような日程だと感じる。4月12日、13日、14日あたりは、希望する学校が少なく後半の日程を希望する学校が多いと予想する。
・資料5に基づき、事務局およびデジタル庁からの報告があった。主な意見は以下の通り。
【委員】
素晴らしいプログラムの開発に感謝する。「授業が分からない」という児童生徒の数が多くなっているので「授業が分からない」ということと正答率あるいはIRTスコアの散布図を学校が見るときに、散布図の点をクリックすると、その点がどの児童生徒を表すかが分かれば、指導の改善にかなり効くと思う。全体的な分析も必要だと思うが、やはり個々の児童生徒の学習状況をみとることが大切。資料5の2ページの画面1で、横が理解度、縦が児童生徒数みたいな散布図どの児童生徒がどういう状態にあるのかがわかれば、やはり指導改善に近づけると思うので、そういった工夫を入れていただけるとありがたい
【委員】
省庁を超えた素晴らしい取組。教育委員会や学校にとっては、すごく活用しやすくなるのではないか。これは基本的に自分の学校だけを見られるのか。
【事務局】
実用化する際には、学校は自分の学校、教育委員会は所管の学校を見ることができることを念頭に置かねばならないと考える。
【委員】
海外だと、ほかの学校も見られるようになっている。日本の場合は、ほかの学校が見られてしまうと、いろいろ難しい問題も結構起きると思った。今は学校や教育委員会が使いやすいようにという視点だと思うが、全国のデータもこのような分析ツールで捉えていくのか。
【事務局】
まだ検討し切れていないが、国の状況もこの分析ツールのようにいろいろな方が触れられるようになれば、非常に便利になるだろうとは考えている。
【委員】
最初は学校や地方自治体が使うことができて素晴らしいと思ったが、聞けば聞くほど、国としても、こういうものがあると素晴らしいと思う。国と地方自治体とでは多分少し違うニーズがあると思うが、今後はかなり違った情報が必要になってくると思った。
また、学校等がこれを見る際に、質問調査の回答結果を1個ずつ見られることがよいと思った。各質問調査の回答結果が性別やSESによってどう違うのか、「授業の内容が分からない」と回答している層とそうでない層と、学力層との三重クロスで見ることも重要だと思う。このような分析ツールにあまり慣れていない方でも容易に見られるようにすることが重要かと思う。
【委員】
今後考えていただきたいのが、年度間の比較。「授業の内容が分からない」という児童生徒が増えているかどうかなども見られる形にしてほしい。そのためには、文部科学省側で同じような設問の設定を続けていくことを大事にしないといけない。
また、分析ツールを作ることでITリテラシーによらず誰でも図表を作成することは可能になっていくだろうが、図表を読み取る統計リテラシーは変わらず必要である。
教員を始めとする関係者の統計リテラシーあるいはデータ解釈リテラシーをどうやって高めていくか考えていかないといけない。
【委員】
本日紹介いただいたのは、デジタル庁が試行的に作成したもの。デジタル化の非常に大きな可能性とともに課題も見えてきた。どういう点をこれから詰めていかなければならないのかということも見えてきたように思う。教育委員会はともかく、学校現場にどのぐらい分析への関心や動機づけが育っているかという点については、一抹の不安も感じた。しかしながら、引き続きデジタル庁をはじめとする関係省庁と連携しながら、教育委員会や学校において主体的な分析や活用の支援に向けた取組が可能か、検討を続けていただきたい。
総合教育政策局参事官(調査企画担当)付学力調査室