令和7年9月24日(水曜日)10時~12時
対面・Web会議の併用
1.指導体制の確保・充実について(ヒアリング)
2.ヒアリングを踏まえた意見交換
3.その他
【佐藤座長】
皆さん、おはようございます。定刻になりましたので、ただいまから、外国人児童生徒等の教育の充実に関する有識者会議、第7回になりますけれども、開催いたします。
委員の皆様におかれましては、御多用のところ、お集まりいただきまして、誠にありがとうございます。
本日は、議題が二つあります。議題1においては、指導体制の確保・充実に関するヒアリングとして、吉田委員から散在地域における日本語指導が必要な児童生徒への指導・支援の取組について御発表いただき、次に、茨城県教育庁学校教育部義務教育課と高校教育課から、茨城県における外国人児童生徒等への支援体制の取組等について御発表いただきます。
議題2においては、ヒアリングを踏まえて、指導体制の確保・充実について、議論を深めていきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
また、議事に入る前に、事務局より、概算要求等について報告があるそうですので、お願いいたします。
【片桐調査官】
それでは、令和8年度概算要求及び「日本語教育の推進に関する施策を総合的かつ効果的に推進するための基本的な方針」について、説明をさせていただきます。資料は、参考資料3と参考資料4になります。
まず、参考資料3、令和8年度概算要求についてです。外国人児童生徒等への教育の充実について、令和8年度要求・要望額は19億6,500万円としており、増額要求をしております。外国人の子供の就学促進事業や、帰国・外国人児童生徒等に対するきめ細かな支援事業については、拡充をしています。また、新規事業としまして、外国人児童生徒等に対する指導及び支援体制の充実に関する調査研究を入れています。この事業では二つの内容を予定しており、一つは指導内容についてです。本有識者会議におきまして、委員の皆様から、外国人児童生徒等教育に初めて携わる教師を含め、全ての教師や支援員等が児童生徒の資質・能力を育成するための指導を体系的・専門的に実施し、多様性を強みにできる学校づくりを目指していけるよう、その考え方や、指導内容、方法等を含めた全体像を示す必要があるという御意見をいただきましたので、この事業におきまして、外国人児童生徒等への日本語指導の総合的・体系的なカリキュラムを検討し、デジタル技術や教材等の効果的な活用も含む、指導のガイドラインを作成することとしています。二つ目は、日本語指導補助者や母語支援員についてです。支援員の方々の役割や教員との連携の重要性について、この会議で御意見をいただきましたので、この事業におきましては、支援員の方々の従事している業務内容や研修等の実態を把握し、効果的な支援体制の構築や資質・能力の向上に向けた方策を検討し、手引を作成することとしています。各事業の詳細につきましては、2ページ以降に添付しています。
続きまして、参考資料4「日本語教育の推進に関する施策を総合的かつ効果的に推進するための基本的な方針」についてです。日本語教育を推進するために、令和元年に公布された「日本語教育の推進に関するに関する法律」の規定により、令和2年に「日本語教育の推進に関する施策を総合的かつ効果的に推進するための基本的な方針」が策定されました。この基本的な方針が9月5日に改定されましたので、その概要について説明させていただきます。
まず、日本語教育の推進の基本的な方針として、国は、日本語教育推進施策を総合的に策定・実施、必要な法制上・財政上の措置を講ずるとされています。日本語教育の推進の内容としましては、国内における日本語教育の機会の拡充に、児童生徒等に対する日本語教育も含まれています。具体的な施策としまして、日本語指導が必要な児童生徒に対する「特別の教育課程」の活用、日本語指導に必要な教員定数の安定的な確保、日本語指導補助者・母語支援員の活用、就学状況の把握・指針の策定等による就学機会の確保等とされていますので、引き続き、これらの推進に努めてまいります。
以上でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
【佐藤座長】
ありがとうございました。
それでは、議題1、指導体制の確保・充実について、吉田委員、茨城県教育庁学校教育部義務教育課と高校教育課から、御発表いただきます。
まず、吉田委員より、お願いいたします。
【吉田委員】
よろしくお願いいたします。
それでは、「散在地域における多文化多言語の子どもの教育支援」について、お話をさせていただきたいと思います。
〔スライド1〕タイトルにもありますように、この発表の中では「多文化多言語の子ども」という表現を使わせていただきます。理由については、お読みください。
〔スライド2〕散在地域には、散在地域だからこその困難が存在しています。子供たちがとても少ないので、学校や市町村単位では多文化多言語の子供の在籍が継続しません。このため、支援経験や資源が学校や市町村に蓄積されにくいということがあります。在籍がない市町村では、当然、そのための予算が確保されていません。そこに、ある日突然、多文化多言語の子どもが転入してくると、すぐに対応できないという状態が生じます。また、小さな自治体の中には、財政状況が厳しいところもあります。
教育行政に目を向けると、少数の指導主事が幅広い業務を担っている実態があります。短い年数で異動することも多く、そうした中で日本語教育の専門性を身につける余裕がなかなか持てないということがあります。そもそも、ほとんどの町や村の教育委員会には指導主事が配置されていません。こうした状況の中で、例えば、生活言語能力と教科学習言語能力の違い、来日時期の把握の重要性、母語の尊重など、支援する上で必要な知識が学校現場に十分浸透していません。教員定数は、現在、全国一律、「特別の教育課程」を受ける児童生徒数を基に都道府県単位で基礎定数が加算される仕組みで、子供18人に対し教師1人となっていますが、非常に広いエリアに子供が散在している地域では、それでは対応が困難です。公共交通機関が弱く、冬は雪に阻まれる地域もあります。拠点校をつくっても、子供は来られないですし、教員の巡回も容易ではありません。
それでは、民間の力はどうかというと、青森に来て感じたのは、地域のNPOの力はまだまだ弱いということです。人口減少という現実の中で、人手不足の問題も深刻です。そうした中で、日本語支援人材も不足し、高齢化の傾向も見られます。
〔スライド3〕それでは、散在地域で児童生徒はどのような状態にあるのか。青森、山形、佐賀、宮崎の各県の教育委員会の御協力を得て、実態調査を行いました。この調査の特徴は、生活言語能力はあっても、教科学習言語能力は十分でない子供を見逃さないように、両親または一方の親が外国出身の全ての子供を把握する方法を取っていることです。その上で、把握された子供について、子供を取り巻く環境、日本語能力、学習状況、支援の有無等を把握しました。また、加えて、学校現場の支援ニーズについても、尋ねています。
〔スライド4〕初めに、学校現場の支援ニーズです。ここから先のデータに共通することですが、調査実施に当たっては、調査項目や選択肢などについて、各県の教育委員会の御要望を踏まえて調整を行いました。そのため、調査項目や選択肢は完全には同じではないので、その点、御理解ください。
4県に共通して高い支援ニーズがあったのが、相談窓口、教員や支援員の配置、保護者面談時の通訳配置でした。一方、興味深いのは、特定の支援がある程度入っていると、その支援を求める声が高くなるという傾向があったことです。佐賀県では、対面でのアセスメントについて高い支援ニーズが確認されましたが、実は、佐賀県は4県の中で最もアセスメントを実施している県だということが分かっています。具体的に経験するからこそ、そうした支援の重要性が認識されると考えられます。
〔スライド5〕次に、子供の状況です。左が親の国籍、右が子供の国籍です。子供の国籍を見ると、「不明」とした割合が、どの県でも30%を超えています。
〔スライド6〕次に、子供の来日時期です。来日時期は、子供の言葉の発達を考える上で非常に重要な情報ですが、「不明」がかなり多くなっています。右は、子供の母語を尋ねた結果です。ただし、宮崎県は、要望を踏まえて、子供の話せる言語と家庭言語を聞いています。他の3県では日本語が母語という子供が過半数を占めていますが、中には家庭では日本語以外の言語を使っている子供がいる可能性もあります。
〔スライド7〕子供の日本語力についてです。まず、「書くこと」についてですが、スライドにある「ア」から「オ」の5段階で聞きました。小学1年生から中学3年生までの幅広い年齢が対象の調査なので、複数回答いただくようにして、高いレベルの回答で分類しています。この調査では、日本生まれの子供や、母語が日本語という子供も含まれていますので、当然、「オ」が多くなっているのですけれども、ここでは「エ」以下に注目してみてください。
青森県内では、この調査と併せて、アセスメントも実施しました。書くこと、読むこと、教科の学習状況について、一つでも「エ」があった17名を見ると、2人のみが旧DLAのステージで5、残りは個別的な支援が必要とされるステージ4以下に判定されました。つまり、「エ」以下に該当する子供は個別的な支援が必要な子供である可能性が高いと言えます。佐賀県を除いた3県は、本調査の「書くこと」で「エ」以下と判断された人数が、文部科学省の令和5年度日本語指導が必要な児童生徒の受入状況等に関する調査で日本語指導が必要と判断された人数を大きく上回っていました。
〔スライド8〕「読むこと」についても、「書くこと」と近い結果となりました。
〔スライド9〕そして、「教科の学習状況」ですが、「読むこと」、「書くこと」以上に、支援を要する「エ」以下の割合が高い傾向があります。特に中学生で、「教科の学習状況」に課題がある生徒の割合が高いと考えられます。今回の有識者会議では、日本語指導のレベルを超えて、思考・判断・表現を支える言葉の力、その発達をどう保障するかということが重要なテーマであると思いますが、「エ」に該当する思考したり判断したりすることが難しい子供たちの存在は、まさに私たちに課題を突きつけていると考えます。
〔スライド10〕次に、支援されている子供の割合です。4県の中では、佐賀県が比較的支援されている子供の割合が高くなっています。この調査では「ア」に近いほうが日本語レベルが低いので、より支援が必要だと考えられますが、興味深いことに、4県とも実際に支援を受けている割合は必ずしもそうなってはいません。理由としては、市町村による支援の格差や、転入当初は対応が後手に回って支援が入っていない可能性、適切なアセスメントがなされていない可能性などが考えられます。
〔スライド11〕各県の「週当たりの支援時間」です。県によってかなりの違いがあります。支援されている子供の割合が高かった佐賀県ですが、支援時間は、週1時間ないし2時間が多く、短くなっています。一方、青森県は支援時間が長い傾向にあります。もちろん、支援内容や質も大切ですので、長ければいいというものではありませんが、現在行われている支援時間については、かなりばらつきがある状態になっています。
〔スライド12〕次に、誰が支援をしているかということです。4県共通して、日本語支援員の果たしている役割が大きいと言えます。ただし、佐賀県や宮崎県では、教員も一定の役割を果たしています。指導者に支援員が多い背景には、地理的な条件から拠点校への通学や巡回指導が難しいこと、そして、人件費の問題があると考えられます。支援員の役割の大きさを踏まえると、どのような人材が採用され、どのような研修が行われているのかが、極めて重要になってくると思います。今回の調査はそこまで踏み込めていませんが、これまでの情報収集では、一定の日本語教育の研修を受けた人材を採用している自治体もあれば、ハローワークで経験や資格に関係なく人材を募集している自治体もあるようです。入職後の研修についても、中心となるNPOが継続的に行っている場合もあれば、何もない場合もあります。
〔スライド13〕以上の調査結果を踏まえてまとめたのが、こちらの提言です。大切な点をまとめていますのでぜひお読みいただきたいのですが、時間がありませんので、後ほどお目通しいただければと思います。
〔スライド14〕この提言の六つ目については、その端緒となるよう、散在地域教育委員会会議を今年の2月に開催しました。北海道、青森、秋田、岩手、佐賀、宮崎の教育委員会が御参加くださいました。会議では、調査と、それを踏まえた提言を評価する声が多く、データを踏まえて自らの県の課題を考えたいとの発言も複数ありました。
〔スライド15〕こうした会議の実施については、今後も続けてほしい、データの後ろにある教育行政の取組を聞くことができる貴重な機会だという意見がありました。協議の中で特に話題になったことについては、お読みいただければと思います。
ここまでが、散在地域4県の調査に関する御報告となります。
〔スライド16〕次に、青森県における支援体制について、御報告します。もともと青森県内では、一部自治体を除き、「多文化多言語の子ども」の教育支援についての県単位の仕組みはなく、情報共有もされていませんでした。この実態に課題を感じた青森県の指導主事が2019年に「日本語指導が必要な外国人児童生徒担当教員等連絡協議会」を発足させたのが、県単位の取組の始まりでした。ここには、教育行政関係者、支援者、大学教員、県の国際交流協会などが集まり、情報交換が行われました。この連携を基に、弘前大学が2020年度から文部科学省委託事業「多文化共生に向けた日本語指導の充実に関する調査研究」に取り組み、県全体での支援の仕組みづくりが始まりました。教育学部内に多文化リソースルームを設置し、そこから支援員と多文化スーパーバイザーを県内の学校に派遣する取組を始めたのです。そして、文部科学省の委託事業は2022年度末に終わることが決まっていましたので、せっかくつくった仕組みを持続させるために、県内の関係機関と協議して、NPO法人ひろだい多文化リソースルームを設立し、2023年度からは、このNPOが教育委員会と関係機関のネットワークのハブとなって、支援を継続しています。なお、NPO法人ひろだい多文化リソースルームは、弘前大学と連携協定を結んでいます。大学は研究成果とスペースを提供し、NPOは大学に社会貢献と学生の学びの機会を提供するという、ウィン・ウィンの関係となっています。
〔スライド17〕青森県内の支援に関わる機関とそのネットワークについて、図にしたものがこちらです。ひろだい多文化リソースルームは、図の右側の県内各地の関係機関と連携しながら、教育委員会と協力して学校に多文化スーパーバイザー・支援員を派遣するほか、学校外での学習支援、居場所支援、キャリア支援も行っています。NPOとして、これまで派遣実績のある自治体は、右のとおりです。
〔スライド18〕ひろだい多文化リソースルームの支援の特徴を4点にまとめました。第1に、多文化スーパーバイザーを派遣するという点です。子供の日本語教育に詳しい大学教員などが多文化スーパーバイザーとなり、支援員に教材や指導方法を助言し、学校教員と支援員が参加するケース会議をマネジメントします。校内研修やアセスメントにも対応しています。
第2に、ケース会議を核とした、チーム学校としての支援体制の構築です。参加者は、管理職、担任、主任、教科担当教員など、学校関係者と、多文化スーパーバイザー、支援員となります。教育委員会の指導主事、さらには保護者も参加することがあります。この場で、個別の教育支援計画、個別の指導計画を作成します。その際、フェーズに応じた支援時間も考慮します。
第3に、独自様式による個別の教育支援計画と個別の指導計画の作成です。独自様式は、特別支援教育の様式を参照して開発しました。個別の教育支援計画は、支援の前提となる情報と長期目標、そのための配慮事項を共有するもの、個別の指導計画は、ケース会議ごとに子供の状況を共有し、支援の短期目標とその手だてを考えるものです。
第4に、母語・母文化の尊重や多文化共生の取組を推進することです。日本語指導だけでなく、ケース会議等を通じて多文化共生の学校づくりを支援します。必要に応じて、母語の通訳や母語アセスメント、可能であれば母語支援員を配置することもあります。
〔スライド19〕先ほど申し上げたフェーズに応じた支援時間については、こちらの資料をベースに、子供に合わせて検討します。年度内でも適切に変更していきます。
〔スライド20〕個別の教育支援計画の様式です。本名、国籍、来日時期、家庭での使用言語、保護者の日本語レベル、滞日予定、将来の進路希望、在留資格、母国での学習歴、生活の様子、本人・保護者の希望など、支援の前提となる基礎的情報を把握し、いつでも参照できるようにしています。その上で、長期的な目標と、そのための言語・文化的な配慮について、学校生活、日本語及び教科学習、母語・母文化尊重と多文化共生の三つの観点から考えます。そして、校内支援体制と関係機関の連携についても記載し、組織的な指導体制を確認していきます。右下は、アセスメントの内容を記入する欄です。
〔スライド21〕左側は個別の指導計画の様式です。ケース会議1回ごとに作成していきます。学校生活でうまくいっているところとつまずいているところを情報共有し、先ほどの三つの観点から、短期目標とそのための手だてを記載していきます。次のケース会議で評価を記載します。
右側は、日本語支援日報です。支援員が学校に入った日には必ず作成し、報告します。どのような支援を実施し、何に気づいたか、学校への連絡事項などを記載し、教育委員会、学校、多文化スーパーバイザー、一緒に入る支援員、多文化リソースルームに送信しています。
支援において、教員と支援員のコミュニケーションはとても大切です。そのコミュニケーションの手段として、学校現場での日常的な情報交換に加え、日報での報告、ケース会議での協議を重視しています。
〔スライド22〕左側の図は、受入れに対応する際の流れを示したものです。
冒頭で在籍のない市町村には予算もないという話をしました。そうした場合に対応するため、青森県教育委員会はAOMORI多文化共生推進事業を立ち上げました。右側の図になります。2025年度は、1人当たり72時間を県教育委員会が負担し、ひろだい多文化リソースルームが支援を開始します。この72時間をやっているうちに、市町村が予算を準備し、県の予算が終わった後も、今度は市町村の予算で支援が継続されるという仕組みです。
〔スライド23〕支援が始まるに当たって大切なのが、アセスメントです。文部科学省委託事業では、散在地域に合わせたオンライン・アセスメントマニュアルも開発しました。多文化リソースルームの支援では、そうした内容も組み込んでいます。
〔スライド24〕最近あった、つがる市の受入れ事例を紹介します。本当は詳しくお話ししたいところなのですが、時間がありませんので、後ほど、もし御質問があれば、お答えしたいと思います。こちらの資料を御覧ください。
〔スライド25〕こちらは、校内研修で必ず示している資料です。以前の会議でも提出させていただきました。支援員が来てくれると、学校としては、ほっとします。しかし、学習指導要領で求められている資質・能力、その基礎となる思考・判断・表現を支える言葉の力を伸ばし、年齢相応の認知的発達を支えるためには、日本語指導担当者以外の教員の役割が極めて大きいので、校内研修ではそのことをお伝えするようにしています。支援員などの日本語指導担当者は、サバイバル日本語から始め、弁別的言語能力の伸長を中心に担っていきますが、教科学習言語能力の伸長については、日本語指導担当者と教科指導の担当の教員が連携・協働して伸ばしていく必要があると考えています。そのためにそれぞれが具体的に何をするのかを図の楕円の中に書きましたので、御覧ください。また、これらを支える学校全体の環境づくりも重要です。この会議でも徳永委員が提起されていたストレングス・アプローチや、オチャンテ委員をはじめ、多くの方が触れていらっしゃる、母語・母文化尊重や多文化共生といった要素も大変重要だと思います。
〔スライド26〕私が担任や一般教科を担当する教員に注目するのは、TALISの調査結果が示す実態があるからです。グラフから明らかなように、日本では、生徒の文化的多様性に対応した実践ができると考えている教員の割合が極めて低くなっています。「多文化多言語の子ども」の力を伸ばすには、1の高い専門性を有した日本語指導担当者だけでなく、2の一般の教員の専門性を伸ばす必要があると考えます。多文化共生の学校づくりを担い、「多文化多言語の子ども」の教科での学びを支援できる専門性です。小島委員が強調されているのも、この点だと思います。
〔スライド27〕このほか、多文化リソースルームで行っている支援を紹介します。一つはキャリア支援です。外国につながる先輩とのキャリア交流会、高校進学ガイダンス、「多文化多言語の子ども」のキャリア支援研修会などです。
〔スライド28〕また、散在地域では、どんなに学校の受入れがよくても、子供たちは学校で日本語指導を受けているのは自分1人という状況に置かれがちです。そこで、多文化キッズキャンプや交流会を開催しています。
〔スライド29〕こうした様々な県内の取組を共有する青森県の連絡協議会では、昨年度から「多文化多言語の子ども」の声を聞くコーナーを常に設けるようにしています。どんな支援も、子供を真ん中に考えていくことが大切だと、皆で再確認しているところです。連絡協議会の場は、教員と支援員の研修の場でもあります。
〔スライド30〕私が支援人材の養成に向けて取り組んでいることについて、このスライドにまとめさせていただきました。NPOの支援員対象の研修、教育学部生を対象にした26単位の日本語教師養成プログラム、教職大学院の授業1科目、教職課程の必修授業の1コマ90分です。
大学での取組は、教員免許取得のための単位数が極めて多いこともあって、非常に厳しいと感じています。日本語教師養成プログラムは先ほどの専門性では1に該当しますが、外国語科や国語科などの免許取得希望者は必修単位との重なりから取れる可能性がありますが、他教科の希望者はなかなか難しいと思います。時間割的に不可能ということもあります。2の一般教員の専門性に関わるところは、教職課程の必修授業では何とか1コマ90分を担わせていただいているだけです。なお、日本語教師養成プログラムの必修5科目計10単位については教養教育に置いており、その一部を履修する学生は、日本語教育についてある程度学ぶことはできます。
〔スライド31〕以上を踏まえて、散在地域での支援体制構築の課題とヒントについて、3枚のスライドにまとめてみました。事務局作成の検討事項に対応して並べています。ヒントは緑色で示しました。なお、これまでの発表と重なる部分については、説明を割愛します。
まず、支援時間や内容の目安はなくてよいのかという点です。
次に、効果的な体制構築という点から散在地域の現状を踏まえたとき、支援員という選択肢は必要ではないかということです。ただし、そのためには、誰が支援員をスーパーバイズし、支援員の研修をどうしていくのかということが問われると思っています。
次に、日本語教育担当者だけではない、教科を指導する教員の役割の重要性についてです。そうした教員の専門性を高めるにはどうしたらいいかという課題があります。
次に、ICT教材の活用は重要ですが、母語で学んでいない内容は翻訳しても分からないということに留意が必要です。また、ツールが入ると、それに頼り過ぎる傾向が必ず生じます。実際、音声通訳機器が使えると、やさしい日本語で話せば分かるところも機器に頼るようなことが起こりがちです。また、オンライン遠隔授業は、かなりの工夫が必要だと思います。年齢にもよりますが、小学校低学年の子供にはあまり適さないと考えます。
〔スライド32〕次に、校内体制の整備についてです。散在地域の現状を考えると、支援の前提となる子供の基本情報と、校内体制・連携先などを記入する、個別の教育支援計画の作成が重要だと考えます。
次に、日本語指導担当教師の配置やキャリアパスですが、現状では、散在地域において専門性が生かされるような教員の配置は難しいと思います。将来的には、専門人材が巡回可能なエリアに1名配置できるような体制をつくり、異動においてもその専門性が考慮されることが望ましいと考えます。
次に、大学における教員養成と日本語教育の接合をどうしていくかです。先ほどからお話ししている1の専門性と2の専門性の二段構えの養成が、子供の資質・能力を伸ばすためには必要だと思います。
〔スライド33〕日本語指導補助者や母語支援員との連携ですが、支援員と学校教員の連携のためには、それを支えるスーパーバイザーのような人材と、ケース会議のような場が重要だと思います。また、管理職研修も重要です。支援員は散在地域に不可欠な存在ですが、養成・研修の在り方、身分や待遇の保障についても考えていく必要があると思います。
関係機関との連携という点では、散在地域では支援資源を蓄積する拠点をどうつくるかが極めて重要です。さらに、散在地域の教育行政が互いに学び合えるようなネットワークづくりも必要だと考えます。
最後に、事務局の整理には入っていませんが、予算の問題は極めて重要です。青森県は大変幸運なことに、立ち上げは文部科学省委託事業の予算で支えられました。支援の実際の体制や効果が目に見える形で確認できたことで、教育委員会も予算をつけやすくなったと言います。また、散在地域では、市町村に予算がないところで受入れが生じるという問題があります。県教育委員会などが市町村教育委員会を支援する仕組みづくりが重要だと考えます。
〔スライド34〕参考資料です。以上で、発表を終わらせていただきます。御清聴、ありがとうございました。
【佐藤座長】
吉田委員、ありがとうございました。調査結果や、吉田委員のこれまでの経験などを踏まえて、散在地域における体系的な指導・支援体制の構築について、御提案いただきました。
それでは、御意見は後ほど伺いますので、今の発表について御質問があれば、お受けしたいと思います。挙手、あるいは挙手ボタンでお願いします。いかがでしょうか。
高階委員、お願いいたします。
【高階委員】
高階です。発表、ありがとうございました。大阪府にも、散在地域というのはあるわけで、そこについて、今、大阪府でも色々と考えてくれています。多文化スーパーバイザーの話がありましたが、大阪府もこういう存在というのは必要だと思っているんですが、お伺いしたいのは、ここでいう多文化スーパーバイザーの資格の有無や、雇用形態、すなわちNPOのスタッフが多文化スーパーバイザーをされているのか、それとも県で雇用しているのか、その2点をお伺いできればと思います。
【吉田委員】
御質問、ありがとうございます。多文化スーパーバイザーは、現在、NPOから派遣するという形を取らせていただいています。所属はNPOになります。どんな人材かというと、大学の教員がほとんどです。常勤の者もいますし、非常勤もいます。私もスーパーバイザーの1人ですし、非常勤で多くの日本語教育の科目を弘前大学で担当している方にもスーパーバイザーをお願いしています。それから、連携している青森大学で日本語教育を担当されている先生、青森中央学院大学で日本語教育を担当されている先生、それから、大学教員ではないのですが、八戸エリアで、県内で最も早く子供の日本語教育支援を始められて、研修も多く積まれ経験も深い方を多文化スーパーバイザーとして、お一人、お願いしています。現在、5人ということになります。
多文化スーパーバイザーの謝金の体系は、自治体によって違いがありまして、今、整理している途中です。幾つかの市は年間6万円という形で受けています。これで、教材や指導方法などに関する支援員へのアドバイス、学校との連絡調整、学校で実施するケース会議のマネジメント、アセスメントの実施、校内研修講師など全部をカバーして、スーパーバイズを行っているので、もしかしたらちょっとお安いかもしれないのですけど、年間を通してそれをやるとようにしています。以前からの方式が残っている自治体では、学校を訪問した時だけ、1時間6,000円の謝金をいただく形になっています。実際には日常的に支援員を支えていますので、私たちとしては年間を通して支えるのに見合った謝金の形のほうがいいではないかと思っています。
以上でお答えになりますでしょうか。
【高階委員】
ありがとうございます。
【佐藤座長】
ありがとうございました。
それでは、横溝委員、どうぞ。
【横溝委員】
吉田委員、ありがとうございました。2点、質問をさせてください。
1点は、4県調査への質問項目の回答はどなたが行ったか、どんな立場の方が行ったかというのが分かれば、教えてください。というのは、相談窓口の必要性が非常に高いということなんですけど、誰が相談したいのかというのが分かれば、相談窓口をつくるヒントになるかなというふうに思っております。
それから、もう1点は、県教育委員会とNPOの連携が日常的にどのように行われているか。例えば、スーパーバイザーを派遣するときには、一度、学校から県教委へ連絡なのか、それとも、直接、NPOとの連携で十分なのかというところも教えていただけたらと思います。
【吉田委員】
御質問、ありがとうございます。まず、4県調査ですけれども、学校調査票と個人調査票を用意していました。学校の支援ニーズについて聞いたのは学校調査票で、この学校調査票の回答者の多くは教頭先生や教務主任だったと思います。個人調査票、子供一人一人についての調査票は、その子供の担任など、一番、子供のことを分かっている人に回答してもらいました。
もう一つの御質問で、NPOと学校との関係ということですけれども、教育委員会から連絡が入る場合と、学校から相談がある場合と、実は両方あります。連携しているという情報はある程度広がっていますので、青森県版のガイドブックを見て、直接、NPOに相談してこられるケースもあるからです。ただ、いずれにしても、県の予算を使う場合は県教委との連携も必要ですので、当然、行政のほうにも連絡は上がっていって、しばらくして、こちらもある程度情報を持っていたケースについて、県教委から正式にNPOの方に連絡が入ることもあります。また、県教委を介して情報が最初に入るケースもあります。
ちょっと大変だなと思うのは、散在地域の場合、先ほどお話ししたように、町や村になると教育委員会に指導主事がいません。そうした中で多文化多言語の子どもを受け入れるとなると、町や村の教育委員会としては「どうしよう」となって、まず相談するのは県教育委員会の出先機関の教育事務所になります。教育事務所から、今度は県教育委員会に上がるという、いくつも階層があるというような状態になるんですね。こうしたことを想定するととても重要なのが、教育事務所の指導主事です。青森県の場合は6地区に分かれて教育事務所があるんですが、先ほどお話しした連絡協議会などには、県教育委員会と御相談して、必ず教育事務所の指導主事の方々に来ていただくようにしています。先日、つがる市で初めて受入れがあったときも、つがる市の指導主事さんとNPOで、一番多くいろいろと御相談していきますが、初回のケース会議には、つがる市を管轄する西北教育事務所の指導主事さんにも来ていただいています。実際、西北地区の他の自治体で受入れがあった際に、市教委は何をしていて、NPOは何をしていて、どんなふうに動いているかというのを、教育事務所の指導主事さんに見ていただく必要があると思うからです。そういったようなことをきめ細かくやっていかないと、いくつもある階層に阻まれて情報がうまく流れなくなったりすると思うので、その辺は常に意識しながら、連絡を取って進めているところです。
以上です。
【横溝委員】
ありがとうございます。
【佐藤座長】
それでは、この後も発表ありますので、最後に、小島委員、お願いいたします。
【小島委員】
御発表いただきまして、ありがとうございます。私からは、三つお願いいたします。
一つは、散在地域の中での移動の困難さという話をされていらっしゃいました。青森に暮らしたことがないものですからアクセスの大変さというのはどれぐらい大変なのかというのが分からないので、先ほど吉田委員もスーパーアドバイザーになっているということだったんですけども、移動されるときのアクセスというんですか、移動の状況なんかを具体的に教えていただけたらと思いました。
二つ目は、ひろだい多文化リソースルームが物すごく大きな役割をされているんだなというのが、お話を伺っていて、とてもよく分かりました。ひろだい多文化リソースルーム以外に、NPOさんという、こうした子供たちの活動をされているような団体さんというのは青森県内にあるんでしょうかというところを教えていただけたらと思いました。さっき具体的な団体名が一つご紹介されておりましたけども、その団体さん以外に、あるのかどうかというところを教えてください。
三つ目は、キャンプのお話がありました。子供たちが一堂に集える場をつくっていらっしゃるというところ。青森だけじゃなくて、東北地域の方たちと連携されて実施されているようなスライドがちらっと見えたものですから、そうすることの意義ですとか、広域でやることの意義、また、参加した子供たちの声など、もし、御紹介いただけるようでしたら、教えていただけたらと思いました。
以上になります。お願いいたします。
【吉田委員】
御質問、ありがとうございます。
まず、1点目、移動の困難ですけれども、やはり冬場が特に大変です。県によって違うと思うのですが、青森県などはとても広くて、半島が二つあります。先ほどのスライドの支援対象の自治体に、むつ市が入っていましたが、むつ市に行くには、夏でも片道4時間、冬場はもっとかかります。私がスーパーバイザーでしたが、大変でした。もちろん、支援員さんは、週何回も行っていただきますから、近いところで手配します。しかし、どこにでも人材がいるわけではないので、東北町で支援員を探したときには、こんなことがありました。一番近いところで、隣の平内町には人材がいました。しかし、平内町にも支援する必要がある子供がいたのです。どうしようと考えて、結局、東北町には平内町の人に行ってもらい、平内町には青森市の人に行ってもらうという、玉突きみたいな支援員の配置をしたことがあります。平内町から東北町というのは、隣の町ですし、夏場は車で40分ぐらいで行けるのですが、冬になると道が凍ってしまうので、支援員さんは、運転がかなり危険で怖いとおっしゃって、躊躇されました。多くの場合、支援に入るときは1時間目から入っていただくことが多いのですが、その時は「2時間目からにしましょう、どうぞゆっくり行ってください」ということにして、学校にも時間割を調整していただいたことがあります。「ちょっと遠くから来るのでよろしくお願いします」ということで。やはり冬場は、除雪がうまくされないこともあるなど、移動がかなり困難な状況になります。
2点目ですが、県内のほかのNPOで学校に入っているところは、八戸市立の小中学校に入っているNPO法人みちのく国際日本語教育センター(略称 MIJEC)の1団体になります。MIJECは、子供の支援だけでなく技能実習生など大人の方への日本語教育にも取り組まれていますが、子供の支援をメインで担当されている部門もあって、十人程度が活動されています。その中心が先ほど申し上げた明日山幸子さんという方で、県内で子供の支援経験が最も深い方です。明日山さんには、当法人の理事とスーパーバイザーをお引き受けいただいていて、強い連携関係にあります。MIJECによる八戸市の学校での支援は、最初は市民提案のような形で始まったというふうにお聞きしています。
三つ目のキャンプですけれども、広域で、岩手、秋田とも連携しています。御存じの方も多いかと思いますが、岩手、秋田も、散在地域で、支援体制がうまく構築されていないところもまだまだあります。北東北は全体に支援体制が立ち遅れていたところに、文科省事業が入って青森がぐっと進んだので、岩手県教育委員会から青森県教育委員会に御相談があったりしているとお聞きしています。岩手も秋田もとても広いところに子供が散在していますので、お互いに学び合えることが多いだろうと考えています。行政だけでなく、支援者同士も連携していこうということで、多文化キッズキャンプも連携して進めています。1県だけでイベントをやるのも大変ですし、協力し合って一緒にキャンプをやることで、支援者同士が交流し、学び合えるという効果もあります。キャンプには、支援員だけでなく国際交流協会の方もいらしてくださいますし、支援者同士の情報交換の場では、それぞれの地域の悩みが出されたり、こうやったらいいのではないかと支援についての具体的に語り合ったりしています。何より多文化多言語の子供たちがにぎやかに参加してくれて、非常に楽しい場になっています。
子供の声ということですが、実は昨年、先ほどの写真に大きく写っていた男の子にインタビューしたことがありました。連絡協議会で大人たちに声を伝えたいと思って、インタビュー動画を撮らせてもらったのです。そのインタビューで彼は、「自分の一番の友達は、キャンプで年に1回しか会わない八戸のあの子なんだ」と語ってくれたのです。「どうして?」と尋ねると、「やっぱり助け合いだよ」と答えてくれました。日本語が母語でない子供は、学校ではそれなりに楽しく過ごしていても、他の子供たちよりももうひとつ重い荷物を背負いながら、第二言語で頑張って勉強しています。日本語も学び、そして第二言語で教科も学ばなければならない、そういう大変さみたいなものを、何も言わなくても分かってもらえるということがあるのかなと思いました。彼は英語を話すのですが、キャンプの中では英語も使って交流していて、とてもリラックスして関係をつくっているように見えました。そういうことが本人にはとても大きいのだろうなと、インタビューをして改めて思いました。「年に1回しか会わないあの子が僕の一番の友達」というのには、正直少し驚いたところです。
以上です。ありがとうございました。
【佐藤座長】
ありがとうございました。
それでは、次に、茨城県教育庁学校教育部義務教育課の虻川指導主事、高校教育課の安藤指導主事より、御発表をお願いしたいと思います。よろしくお願いします。
【虻川指導主事】
皆様、こんにちは。茨城県教育庁学校教育部義務教育課の虻川幸平と申します。
【安藤指導主事】
同じく高校教育課の安藤と申します。どうぞよろしくお願いいたします。
【虻川指導主事】
このたびは、大変貴重な機会を与えていただき、ありがとうございます。本県の取組が、皆様がこれから検討していただく中のヒントになればと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。
それでは、我々のほうでお話しさせていただく、話のアウトラインです。大きく、この4点について、お話しさせていただきます。
まず、本県の現状について、お伝えいたします。こちらを御覧ください。2019年度から2024年度までの本県における外国人児童生徒数並びに日本語指導が必要な児童生徒数の推移です。いずれも2024年度が過去最高となっております。この5年間を見ましても、外国人児童生徒数は約1.55倍、日本語指導が必要な児童生徒数も1.42倍となっております。近年は、小中学校の外国人児童生徒数が増えるにつれて、高校の外国人児童生徒数も増加するというような傾向になっております。
続いて、こちらです。本県は地理的に、面積が大きく、平地であるため、居住可能地域が広いという特徴があります。右側の茨城県の地図を御覧ください。緑色が濃くなるにつれて、外国人児童生徒が多く在籍していることを示しています。地図の下側、いわゆる南側や、左側の県西地域は、外国人児童生徒数が多く在籍している、集住地域となっております。集住地域においてはさらなる増加が見られる一方、白いところの散在地域においても、少人数ではありますが、外国人児童生徒の在籍が増えております。県全体として、いわゆる空白地域がどんどん少なくなってきている。さらに、本県の特徴としましては、多国籍化による多言語化の傾向が見られます。
そこで、本県としましては、小中高を貫く、県の日本語習得支援体制を検討しております。こちらを御覧ください。本県の教育委員会では、校種を問わない、いわゆる外国人支援課等の専門の組織はございません。そのため、義務教育課や高校教育課等の担当が連携を取りながら、取り組んでいるところです。その中で系統的な指導を進めることの必要性を感じておりました。そこで、現在、小中高と学校種を貫く日本語指導が必要とされており、本県では、各学校段階での目標を設定し、系統性を持った指導をしていくことを目指しております。例えば、小学校段階では生活言語の習得を重点とする。中学校では生活言語と学習言語の習得。これは高校入試というところも踏まえてです。高校では自立に向けた日本語の習得。こちらは、大学進学や、さらには就職というところも踏まえてです。このように、学校間の連携に加え、地域の支援を充実させていくことも重要と考えており、県庁内でのほかの部署との連携も図っております。最終的には、外国人児童生徒が日常生活や社会生活に必要な日本語を習得し、将来、本県で自分の人生を自ら切り開くことのできるよう、支援しているところです。
続いて、指導体制の確保・充実について、お伝えいたします。まず、義務教育段階での支援・指導体制について、御説明いたします。主な手だては五つです。緑色が集住地域系への支援、黄色の部分が主に散在地域への支援というふうにしております。県としましては、集住、散在問わず、全県的の支援を進めているところです。
まず、手だて1です。日本語指導担当教員の配置ということで、日本語指導担当教員の積極的な配置をしております。現在、小学校等で99人、中学校等で30人、合計129人が日本語指導を担当しております。主な業務としましては、日本語指導が必要な児童生徒への日本語指導や学習指導、いわゆる取り出し指導です。または、在籍学級における入り込み指導。その他、所属校でのコーディネートであったり、年間指導計画等の作成に携わっております。
手だて2として、日本語支援員(母語支援員含む)の配置です。今年度、日本語支援員53名を主に集住地域の小中学校に配置しております。日本語支援員の中には、登録日本語教員の資格を持った方や、ポルトガル語などを話すことができる母語支援員の方も含まれております。主な業務としましては、日本語指導が必要な児童生徒へのいわゆる日本語指導、さらに、母語が話せることを生かした、児童生徒と教員間の通訳支援を行っております。日本語支援員の方々は、生活言語を中心に、日本語指導の初期段階から手厚い指導を実施しているところです。
続きまして、手だて3です。日本語指導担当者フォローアップ研修の実施です。これまで本県では、日本語指導担当者への支援が十分とは言えませんでした。そこで、今年度より、日本語指導担当者への年間を通じたフォローアップ研修を実施し、指導力の向上を図っています。対象は、日本語指導担当者や、先ほど話がありました支援員です。今年度は、初年度ということで、年間3回の研修を予定しております。1回目は6月に実施しました。行政説明やオリエンテーション、講義、ワークショップ等を行いました。2回目は10月~11月に実施予定です。県内5校で授業公開をしていただき、グループ協議、さらに指導助言という形で考えております。そして、第3回目は2月で、こちらは、年度の取りまとめ、グループ協議を考えております。6月に参加した先生方からの感想としまして、ほかの先生の実践を知ることや横のつながりをつくることができ、大変有意義であったということや、ほかの教科と同様に、日本語指導の専門性を高める研修はありがたいという、肯定的な意見をいただいたところです。
続いて、手だての4です。オンラインを活用した日本語指導です。これまでお話ししました日本語指導担当教員や支援員は、集住地域への支援です。県として、散在地域への支援としまして、筑波大学と連携した、オンラインを活用した日本語指導を実施しております。対象は小学校5年生から中学校3年生とし、学校やボランティア等の支援を受けていない、受けることができない児童生徒を対象とし、オンラインで実施しております。内容は話題や場面に応じた日本語の指導で、週2時間を基本とし、年間50時間程度です。そして、習熟の程度に応じて、少人数(3人程度)での実施ということになっております。
こちらを御覧ください。カリキュラム設計上ですが、子供たちの来日時期やルーツ、そして、日本語の習熟度は様々であるという、難しさがあります。そのため、カリキュラム設計では、緩やかに活動に参加できる、Can-doベースでのトピック・シラバスを活用しているところです。
こちらがシラバスの詳細になります。トピックごとに1週間2時間の実施をしており、縦軸がトピック(話題や場面)、横軸が、ユニット、日本語のレベルとなっております。こちらを事前に参加者や各学校に示しております。
具体的には、こちら見ていただきますと、例えば、「きょうしつ」というトピックであれば、週の1回目、前半で合意や基本文型の練習をし、週の2回目、後半でコミュニケーション活動や教科につながる学習を行います。オンライン授業の際は、受信側、子供の脇には主たる指導者として受信校の教員が必ず在席して、その場にいることになっております。そのため、活動の際では、ペアでの活動等を十分に実施することができます。例えば、A-8、職員室に行き、はさみを借りてくる、文房具を借りてくるという活動では、主たる指導者が支援をしたり、職員室に実際に一緒に行って、そのような場面、ロールプレーを実施することもできます。受信側に教員がいるという強みを生かして、活動を重視したカリキュラムを作成し、実施しているところです。
また、遠隔でも協力し合えるシステム設計は重要であります。このように、ダッシュボードを活用し、授業の管理、児童生徒の状況を大学側と学校で連携しているところです。
こちらのように、シラバスは事前に共有することで、子供も教師も見通しを持って学習したり、欠席連絡もウェブ上で実施できるようになっております。さらに、配信者からのコメントや、在籍校の先生から子供の様子も共有でき、ウェブ上で有効に活用できていると聞いております。
手だて5です。オンラインを活用した通訳・翻訳支援ということで、こちらは、県内のNPO法人に委託し、原則、オンラインでの対応としております。活用場面としましては、進路決定に向けた三者面談や、懇談会など、必要性の高いものを優先しているところです。
以上で、義務教育段階での支援を終わりにします。
【安藤指導主事】
替わりまして、続いて、高等学校における支援について、説明いたします。
本県においては、令和4年度より、現在の重点校2校で本格的な受入れ体制の構築が始まりました。まだ4年目という状況です。令和6年度より、支援校5校を加え、計7校で指導体制・支援体制を整えているところです。県としては、本県にある支援の資源の状況を踏まえた上で、連携先として、筑波大学――徳永先生にもお世話になっているところです。NPO法人、専門人材として日本語教師を派遣できる一般財団法人と連携をし、支援体制を整えてまいりました。
支援内容の具体については、次のページを御覧ください。支援体制は、主に5点あります。1点目は、NPOと連携し、外国人生徒支援コーディネーターを7校に配置し、通訳派遣や翻訳支援にとどまらず、保護者も含めて生徒の学校生活を総合的に支援できる体制を整えております。
2点目です。大学と連携をし、アセスメントテスト(DLA)の実施や、個別の支援計画作成への助言、そして、キャリア支援についてもサポートをしていただいております。
3点目です。日本語教師の資格を持つ専門人材を日本語指導支援員として各学校に派遣をし、日本語指導を教育課程内外で実施しているところです。
そのほか、習熟度別で各教科の少人数授業を実施するための教員の配置や、知事部局と連携をした、就職環境整備も進めているところです。
こちらは、指導体制についてまとめて、学校に示している資料になります。学校には当然、県からの支援以外にも、同級生や先輩、卒業生、生徒会など、様々な支援の資源があると思いますし、本県においてはBYODで1人1台端末を備えておりますので、ICTの活用についても、各学校において進めていただいているところです。また、7校の学校同士の連携、ノウハウの共有体制についても、重点校を中心に、例えばオンラインで情報交換会をするなど、定期的に進めているところです。こういった視点で学校が主体的に支援に向かえるような体制になればと考えております。
続いて、少し前に発表されたものですけども、令和8年度には、重点校・支援校を拡充し、10校体制とすることになりました。今後の外国人生徒の増加に対応できるように、支援体制を整えていくことになりました。特に、現在の集住地域での拡充と、散在地域であっても、地域の小中学校で外国人児童生徒が増えている、先ほどの資料で少し色が濃くなっている地域にも、先行して重点校を配置することになりました。そうすると、限られた支援の資源の中でどのように支援体制を構築するのかが鍵となりますので、現在、令和8年度に向け、調整を進めているところです。
そちらに向けて、こちらはあくまでも課内の説明で用いているイメージ図になりますが、高校における指導体制構築に当たっては、大きく三つの柱について検討をする必要があると考えております。その三つは、学校生活支援、日本語学習、高校の日々の各教科の授業で、そういったところをどうサポートしていくかといったことが重要であると思います。基本的には、その三つそれぞれに対して、学校の教員をしっかりと配置をし、位置づけをし、外部機関、支援者を入れて、強みを生かしながら連携していく必要があると考えております。また、全体的に、大学やNPOに助言をいただきながら、ICTも活用しつつ、学校が校内組織を構築し、教員研修の充実をしていくことによって、主体的に動けるようになっていくのかなというふうに考えております。また、ここには入れておりませんけども、母語・母文化教育の重要性については学校のほうからも声が上がっており、学校設定科目の設定を検討したり、また、今の状態でも、自分の強みを生かして、例えば弁論大会で活躍する生徒なども出てきているところです。そして、学校生活支援の柱の中にあるソーシャルワークについてもNPOと連携をしており、支援方法については、スクールソーシャルワーカーの研修においても、NPOの方を講師として、事案対応のノウハウなどを広めていく取組も始めたところです。こういったイメージ図の中で、教育行政の立場としましては、地域の実態に応じて予算の配分などを決めていく必要があるのかと考えております。また、中学校との接続の部分になりますけども、重点校2校においては、学校説明会において、中学生・保護者向けに通訳・翻訳支援を入れて、多言語化して説明会を実施しているところです。本県としては、指導体制の構築の歴史はまだ浅いですけども、引き続き、生徒が安心して志願できるよう高校側の受入れ体制を整えるとともに、外国人生徒も将来活躍できるよう、指導体制の充実を図っていけたらと考えております。
高校のほうは、以上になります。
【虻川指導主事】
続きまして、関係機関との連携について、お話しさせていただきます。これまでお話しさせていただきましたように、本県では、外国人児童生徒への支援を行う際、学校に加えて、NPO法人や大学等、地域のリソースと連携していくことは必須と考えております。地域の外国人コミュニティーの現状や動向に詳しい外部機関とは情報交換を密にするなど、連携を深めております。また、大学等とは、専門的な知見を持つ機関と連携し、質の向上を図っているところです。そのような連携を深めるために、毎年4月に、教育委員会、学校、大学、NPO、行政機関等が一堂に会する、帰国・外国人児童生徒連絡協議会を実施しております。協議会では、県の現状や事業の紹介、大学の先生から講義を受けるなどをしております。また、管理職の参加を基本としており、担当者だけでなく、学校としての支援体制の構築についてもお願いしているところです。
結びになります。今後の方向性です。本県としましては、児童生徒、学校にとって有意義なものであることや、関係機関、校種間の連携を深めていくことが重要だと考えております。それらを踏まえて、日本語指導、外国人支援の飛躍的拡充というところが、今後、目指していくところです。茨城県に在住している外国人児童生徒が将来も茨城で生活してもらえるように、また、茨城県が多くの外国人から選ばれるような、県づくり、人材づくりに努めているところです。
以上で、発表は終わります。ありがとうございました。
【佐藤座長】
ありがとうございました。
それでは、ただいまの茨城県教育庁の御発表につきまして、御質問ありましたら、お受けしたいと思います。どうぞ。
いかがですか。あれば、挙手ボタンでお願いいたします。
それでは、齋藤委員と浜田委員、お二人からお受けしたいと思います。齋藤委員、浜田委員の順にお願いします。
【齋藤委員】
齋藤です。大変参考になる御報告をありがとうございました。特に、大学や、NPO法人との連携を、県として主導しながら組織的に動かしていらっしゃるという点、参考になりました。青森の例もそうなんですけれども。県の示唆的だと思いました。
その上で御質問です。6ページに、小学校、中学校、高校の日本語教育指導のイメージ図がありまして、各校種間の関係をお示しくださっていますが、小学校の場合は生活言語が軸で、中学校になるとそこに学習言語が含まれるという構図になっています。小学校段階でも教科などの学習に参加する力を求められるとお考えだと思うのですが、小学校段階ではどのような形で教育サポートをされているのか、あるいは、しようとされているのかお伺いできると、今日、冒頭で御説明のあった、予算化されるガイドラインや総合的なカリキュラムの提案などにおいても、参考になるかと思いますので、教えていただければと思います。
もう1点、御質問させていただきたいのは、14ページにご提示くださっているオンラインのシラバスについてです。13ページでは、文型積み上げシラバスではなく、Can-doベースのトピック・シラバスでということで、子供たちの実態に即した行動主義的なアプローチでのカリキュラム提案をしてくださっていると思いました。オンラインでもそれは可能だということをお示しいただけたようで非常に心強く思うのですが、このシラバスでトピックを中心にした日常的な生活場面での日本語の力を高めることが軸になっているわけですが、オンラインの活動のほかに、学校のサポートとして何か取組があるのでしょうか。また、オンラインの日本語のトピックベースの基礎的な学習の後の指導のイメージがありましたらお知らせいただければと思います。
ほかにもいろいろ御質問させていただきたい点はあるのですが、この2点、お願いできればと思います。よろしくお願いします。
【佐藤座長】
お願いします。
【虻川指導主事】
齋藤先生、御質問ありがとうございます。まず、6ページに示させていただいた学校段階の目標ですが、これはあくまで分かりやすいものを出させていただいています。ですから、小学校であれば生活言語というふうに書かせていただいていますが、学習言語はやらなくていいというわけではございません。こちらは生活言語と書かせていただいていますが、学習言語も同様にというところは、必要と思っております。まず、重視すべきとして生活言語をしっかりと踏まえた上で、それぞれ、子供の実態であったりとか、来日時期等にもよるかと思いますので、基本的には小学校も含めて学習言語のほうも取り入れていきたいというところは、話をさせていただいているところです。
以上でよろしいでしょうか。
【佐藤座長】
もう一つありましたね。オンラインについてです。
【虻川指導主事】
もう一つは、13ページのところですかね。シラバスベースということで、こちらについては、基本的に、オンラインでの日本語指導の対象の児童生徒は、来日直後であったりとか、いわゆる日本語の初期指導の部分が必要な児童生徒が多いものですから、まずもって、オンライン上では、このような形で日本語の習得というところでやらせていただいております。ただ、先ほど先生からお話あったように、学習言語の習得、学習言語につなげるという部分は非常に重視すべき点だと思っておりますので、そちらについては、現時点でも、我々として、今後深めていかなきゃいけないところ、さらには、オンライン以外の、各学校の入り込み指導であったりとか、各学校で教員による学習言語につながる指導というのは、今後進めていかなければいけないところだと思っているところです。
【齋藤委員】
ありがとうございます。20年前になりますけれども、その頃にJSLカリキュラムの取組をしてくださっていた学校がありました。併合してしまったので今は違う学校名になっていらっしゃると思いますが。そうした事例などを蓄積されて継続的に展開しているのであろうと思い、御存じでしたらと思ってお尋ねしたところです。ありがとうございます。
【佐藤座長】
時間の関係がございますので、浜田委員と小島委員、簡潔にお願いできればありがたいです。よろしくお願いします。
【浜田副座長】
浜田です。失礼いたします。
齋藤委員と重ならないところで、散在地域においてオンラインを非常に有効に活用されているというお話だったんですけれども、小学校5年生以上ということで、妥当な判断かなと思う一方、小学校4年生以下の子供たちへの支援はどうされているかということを教えていただければと思います。
【虻川指導主事】
ありがとうございます。県としては、小学校1年生から小学校4年生について、オンラインでの支援は実施していないのが現状です。ですから、そちらについては、設置者である市町村の教育委員会等が、例えば、ボランティアの採用であったりとか、各学校で学校の中での支援ということを進めていただくよう、お願いしているところです。
【浜田副座長】
ありがとうございます。今日話してくださった以外に、各市町村でボランティアの配置などに努めておられるということですね。
【虻川指導主事】
おっしゃるとおりです。あくまで県としての取組をお話しさせていただきました。
【浜田副座長】
ありがとうございます。
【佐藤座長】
小島委員、お願いします。
【小島委員】
私からは、1点だけ、お願いいたします。今日は日本語指導の指導体制のところが特化された御発表だったんですけども、もし御存じでしたら、就学の状況について少し教えていただけたらと思いました。といいますのも、文部科学省で毎年行われています就学状況調査なんですけども、そこの中で、茨城県さんの毎年の結果で、自治体が不就学と確認された数が増えていらっしゃるのと、併せて、その数の比率が全国の中でも大変高いものですから、その状況や背景をどんなふうに考えていらっしゃいますかというところですとか、また、就学が全く確認されてないというような子供たちの数も全国の中でも茨城さんは高いので、そこへのアプローチですとか支援体制、その他連携などは何かあるのかしらと思いまして、御存じでしたら教えてください。
【佐藤座長】
お願いします。
【虻川指導主事】
ありがとうございます。先生がおっしゃるように、就学状況についても、本県としては課題として上がっているところです。毎年、国の就学状況等調査の結果を踏まえて本県として実施している内容としましては、もちろん、全県の教育委員会を対象に、就学の受入れに向けての取組好事例であったりとか、あと、本県、独自に受入れの手引というのも作成させていただいて、昨年度、市町村教育委員会の方々には、話はしたところです。また、いわゆる不就学の可能性が多いという自治体については、個別に我々のほうで訪問させていただきながら、一緒に考えていきましょうということで支援を継続しているところです。
【小島委員】
ありがとうございました。
【佐藤座長】
茨城県のお二方の先生、虻川先生、安藤先生、ありがとうございました。
それでは、議題2のほうに移ります。ヒアリングを踏まえた意見交換ですけれども、私どもはヒアリングを基にこれから議論を積み上げていく必要がありますので、少しヒアリングに時間を取らせていただきました。第5回の会議で指導体制の確保・充実に関する主な検討事項を事務局から示していただいており、本日の資料としても、参考資料6とさせていただいております。この参考資料6で示されている検討事項について、今の吉田委員と茨城県教育庁からの発表を踏まえて、議論を深めていきたいと思います。ただ、残りが40分ほどしかございませんので、それぞれ簡潔に御意見をいただければと思います。挙手ボタンでお願いいたします。限られた時間ですので、どなたからでも結構ですが、いかがですか。
横溝委員、どうぞお願いします。
【横溝委員】
今日は散在地域の現状や指導体制を知るということで、研修等で様々な地域を回っていると、県単位で指導体制をつくるというのが非常に難しいという御意見をよく聞きます。その点でも青森県と茨城県の体制は非常に参考になったと思います。今後、体制づくりをするときに、国としても、もう少し前向きに、様々な面を検討していただけたらと思っています。文科省が行っているきめ細かな支援事業に関して、予算を国として補助していただけるのは大変ありがたいと感じていますが、きめ細かな事業では、ICT機器等の備品購入ができなかったのかなというふうに思っております。今日の報告のようなオンラインを実施する際に、そういったICT機器をそろえるような補助があれば、体制づくりとしても、もう少し前向きに各県が進められるのかなというふうに感じました。
それから、もう1点は、今日の会議でもありましたが、今後、経験ある指導主事が本件教育に関しては非常にポイントになるのかなというふうに、御意見がたくさんありました。今後、地域で担当する指導主事の研修を充実させていくことも非常に重要かなと思っています。その際に、文科省の外国人児童生徒等教育アドバイザー等を活用しながら、各県の指導主事への研修をさらに充実させていくということも、ぜひ検討していただけたらと思います。
以上です。
【佐藤座長】
ありがとうございます。
これは、事務局いかがですか。今、ICT、予算の執行状況の件だったと思いますけども、分かる範囲で結構です。
それから、外国人児童生徒等教育アドバイザーを活用する指導主事への研修の充実というようなことについて、御意見があれば御回答いただければと思いますが、いかがですか。
【片桐調査官】
御意見いただきまして、どうもありがとうございます。
まず、きめ細についてなんですが、おっしゃるとおり備品購入はできないというところになっているんですけども、補助金の関係は、私どもだけでは決めるのは難しくて、国としての考え方がございますので、ちょっと検討をさせていただければと思います。
もう一つ、経験ある指導主事への研修としまして、アドバイザーの活用というところを御提案いただいたんですけれども、現在、アドバイザーは、県とか市から依頼があってアドバイザーを派遣させていただいているところなんですが、今回、この有識者会議でたくさん御意見をいただきましたので、こういった内容を踏まえたものを、私たちのほうからの研修も今後検討させていただければと思います。
御意見、どうもありがとうございました。
【佐藤座長】
横溝委員、よろしいですか。
【横溝委員】
ありがとうございます。
【佐藤座長】
それでは、徳永委員、どうぞ。
【徳永委員】
ありがとうございます。青森県と茨城県のほうから、大変参考になるお話、ありがとうございました。
私からは、先ほど茨城県の教育委員会から報告がありましたけれども、高校と大学とNPOの連携の支援事業に関わっていますので、その点について、大学の視点から少し、情報共有、報告ができたらと思っております。
今、筑波大学のほうで日本語教育とキャリア支援という二本立てで、外国籍の生徒が多い高校と連携をしています。私は研究室所属の学生たちとキャリア支援のほうを担当していますが、高校からも、進路実現が難しい生徒が多い中で、大学と連携して、大学が持つ色々な資源を生かして支援をしたいということで、3年~4年ぐらい、連携をさせていただいています。ストレングス・アプローチによるキャリア支援、つまり、生徒が持つ強みを生かして、自己肯定感の向上とか、エンパワーメントを目指す支援に取り組んでいます。基本的には、月1回程度、学生たちと高校を訪問して、外国につながる大学生にゲストとして来てもらってロールモデルトークを実施したり、サマースクールの一環で、夏休みの間に生徒たちと地域のフィールドワークをして、それを基に発表・交流会をしたり、多言語・多文化のアイデンティティーを尊重するようなワークショップを実施したりしています。そういった中で、高校生たちが大学生との交流を通してモチベーションが高まっていったり、先生方とも対話を続けていますので、キャリア支援のワークショップでやっていることを授業の中で取り入れてくださったり、色々な変化が見られるようになってきたと思っています。大学生が持っている力も非常に大きいと思っていまして、高校生と斜めの関係をつくって対話することで、外国につながる生徒の声を聞いて、それを実践に生かしたり、生徒の声を学校の先生や学校に届けていくこともできているのではないかと思います。
大学生の学びや成長にもつながっており、先ほど吉田委員からも報告がありましたけれども、数年間関わる中で教職を取って、日本語教師の養成プログラムを修了して学校の先生になる学生とか、研究者の道を目指して博士課程に進学する学生などもいますので、今後、教員や支援者、研究者として外国につながる児童生徒の教育を担う次世代が育ってきていると思います。散在地域とは限らないと思いますが、連携による支援体制づくりで大学が果たす役割についてぜひ皆さんと考えていきたいと思います。先ほど吉田委員の報告からは、大学が大きな力を持っており、様々なことが教育委員会と連携してできると改めて感じましたけれども、様々な専門性を持つ研究者、また、学生たちの力もあると思いますので、地域貢献とか、教育・研究を連関させながら、外国につながる児童生徒の支援体制づくりをどう一緒につくっていけるのかということを、その難しさも含めて改めて議論できると良いと思います。
私自身も茨城県の高校と関わる中で、先ほど茨城県の教育委員会が率先して連携の仕組みをつくっていると意見がありましたが、本当にそれがとても大きいと思います。予算がついて、連携の仕組みがあるということです。また、先生たちが学校外のNPOとか大学と連携することに前向きで、対話を重ねてくださっていることだったり、管理職が非常に理解があったり、NPOのコーディネーターがいらっしゃって調整をしてくださったり、一つの先進的な連携のモデルになるのではないかと思います。ぜひ、こういった形で色々な県や市町村で行われている連携の先進事例を集めて、そういったモデルも含めて、どういう条件があると連携が深まるのかとか、連携がうまくいかないのかということをデータで示していけると良いと、今日の話を聞きながら、改めて思いました。
以上です。ありがとうございました。
【佐藤座長】
ありがとうございました。
大学との連携ということですけれども、大学の教員が個人的に一生懸命やってくれるというのはかなりあるんですが、大学全体としてどういうふうに関わっていくのか。
今日、佐古委員がおられます。佐古委員が大学全体の代表というわけではないですが、管理的な立場からお話しいただければありがたいんですけど、大学とどう連携していくのか、大学全体として、組織対組織の連携ということで、もし御意見があれば、一言お願いできればありがたいです。
【佐古委員】
ありがとうございます。今、佐藤先生がおっしゃったように、本学でも日本語の教育を専門にする研究者はおりますので、徳島県は散在地域ですけれども、日本語教育を専門にする大学教員が必要のある学校に出向きまして、研修であるとか、あるいは様々な支援を行っているということはあります。基本的に活動しているベースは日本語教育・日本文化分野の大学教員なんですけども、大学とその学校で連携を結びまして、その枠の中に位置づけまして展開するということをやっております。ただ、全学的にということなると、なかなかこれは難しくて、そこまではなかなかいかないかなというような実感を持っています。
先生、発言の機会をいただいたので、ついでによろしいですか。
【佐藤座長】
どうぞ。
【佐古委員】
今日、吉田先生と茨城県の話を聞きまして、いろいろ私も考えさせられるところがありました。一つは、吉田先生の話の中で「チーム学校」という言葉がありまして、散在地域ではどうしても、外国人の児童生徒の数が少ないということで、担当する先生の問題点に集約される傾向があると思うんですが、そうではなくて、学校としてどう取り組むかということへ視点を広げていくということで、多文化スーパーバイザーという形で学校に関わって、つまり、日本語の指導に限定するだけではなくて、そういう子供さんがいる教育の環境としてどうすればいいかということを考えていく仕組みで動かしているという点では、私は大変興味深く聞いておりました。
それから、そのことの関連で言うと、茨城県の教育委員会の方々の御発表の中にも、「学校が主体として」というお話が何回か出てきまして、恐らく、連携ということと共に、学校が主体的にそういう資源を使っていくといいますか、そういうものを教育の中に取り込んでいくような方向での在り方を考えていくということも必要じゃないかというふうに思いました。
二つ目なんですが、これは恐らく、ここ何回かの会議の中で出てきたことだと思うんですが、教員免許を取るということと、これは教育学部の学生にとって必要なことですけども、それにプラスアルファ、外国人児童生徒の指導に必要な知識やスキルを修得させる仕組みができないかというお話があったと思うんですが、私は、そのプラスアルファの部分について、具体的なイメージが出てこないんですけども、これについて、所定の教員免許を取る単位というものにプラスアルファして、外国人児童生徒の指導に一定の知識を持った教員を育てるということのときに、どのようなことが考えられるのかについて、もし吉田先生のほうでアイデアがありましたら、お聞きしたいと思いました。
すみません、ついでに申し上げまして。
【佐藤座長】
ありがとうございました。
吉田委員、簡潔にお願いできますか。
【吉田委員】
ありがとうございます。一つ、私が可能性としてあるのではないかと思っていることをお話しします。大学で日本語教師養成のための26単位を取って、試験を受けて登録日本語教員の資格を取る人材というのは、二つの専門性ということでいうと、➀の専門性を身に付けて日本語指導教員になる人材ですよね。しかし、教師になる人が皆それをできるかというと、難しいでしょう。けれども、そうしたところまではいかなくても、ある程度の日本語教育の知識やスキルを持った人が現場に一定割合でいる状態をつくることはできるし、必要なことだと思います。先ほど申し上げたスライドで言うと、〔スライド30〕の支援人材養成に向けての一番下の行に少しだけ書かせていただきました。弘前大学では日本語教師養成プログラムを展開していますが、コアとなる必修科目については、教養教育科目に置いています。具体的には、「初めての日本語教育」、「多文化共生の社会と言語」といった科目で、5科目10単位あります。これらの科目で、初歩的な日本語教育の世界を知ったり、多文化共生の学校づくりのために何をしていたたらいいのか考えたりしています。この中の数科目は取るということは、決して難しくはありません。これは、今後、教職課程のカリキュラムがどう変わっていくかということと関連するのだと思いますが、全員ではなく、日本語教育に関心を持つ一定割合の学生が必ずこうした科目を履修していくようにできればいいのではないだろうかと思うのです。➁の専門性はそのような形で身に付けることができるのではないかということです。教科指導において、日本語を母語しない子供が学ぶということはどういうことなのか、教科を担当する先生方が入り口だけでもきちんと理解していることがとても大事だろうと思っています。一部の日本語指導担当教師になる人だけではなく、より多くの人が教員免許の必修科目に加えて、プラスアルファで日本語教育についてきちんと触れ、多文化共生について考えられる、そういうような仕組みがつくれたらいいのではないかと思っています。
【佐藤座長】
この点はちょっと突っ込んだ議論を1回する必要があると思います。これについては齋藤委員、浜田委員もいろいろ御意見があるに思いますけども、また時間を取って詰めていければと思います。
それでは、高階委員、小島委員、齋藤委員、浜田委員、工藤委員の手が挙がっていますが、時間が迫っていますので、それぞれ簡潔にお願いできればありがたいです。よろしくお願いします。
高階委員から、どうぞ。
【高階委員】
本日は少数・散在地域の支援というところがテーマだったと思いますが、大阪府も同じ課題があって、令和10年度から大阪わかば高校が拠点校になり、枠校8校が中心となって散在校を支援する方向で大阪府が打ち出しています。今日の発表を聞いていて、NPOとか大学との連携というのは非常に重要だということは皆さん共通認識があると思うんですが、学校現場の校長として思うのは、連携する上で一番重要なのは外部との連携をコーディネートする教員の存在で、この教員の力量を上げていかないと、下手すると外部への「丸投げ」ということにつながってしまうと思います。先ほど学校の主体性という話もありましたが、まさに学校が主体性を持って取り組んでいくということと、連携を円滑に進めるためには、校内のコーディネートをする教員の力量・育成というところがすごく大事だと思います。そこについては、前回、横浜市から研修の話もありましたが、学校の立場からすると、育成というのがすごく大事だなと、改めて感じたところです。
私のほうからは、以上となります。
【佐藤座長】
ありがとうございます。とても大事な指摘だと思います。ありがとうございました。
それでは、小島委員、どうぞ。
【小島委員】
ありがとうございました。私も、今、高階委員がおっしゃってくださったことを申し上げたかったので、一つはそのことです。
もう一つは、簡潔にということでしたので、校内で主体性をつくっていくために教員の存在というのが散在地域では物すごく重要であるということが、本日の発表でとても分かりました。青森の中で、各地域で、子供たちが、1人ずつかもしれないけども、その存在がいる。先ほどの調査結果を見てみても、そうした子供たちの存在に気づく先生がいてくれないと、その子たちに支援等も届かないという実態があるという状況を見てみると、やはり、繰り返しになってしまうんですけども、私は学習指導要領の中での配慮事項の記載というものが物すごく大きい意味を持ってくるんじゃないのかなというふうに思っております。これまでの総則だけではなく、それぞれの教科の中で具体的な記述が、先生方たちの一つ一つの学校の中でもできるサポートの一つにつながっていくんじゃないかなというふうに考えた次第です。
以上になります。
【佐藤座長】
ありがとうございました。
それでは、齋藤委員、どうぞ。
【齋藤委員】
ありがとうございます。母語支援員さんももちろん必要ですし、日本語指導の専門性を持つ人も必要。また、教科の専門性も必要。それから、学校を束ねるようなコーディネートの力を持っている人も必要。全部必要なわけです。けれども、その人たちを有機的に教育組織として動くような形で配置し、体制を整えるにはどうすべきなのかを判断して決定する上では、まずは、外国人の児童生徒等教育、あるいは、その中での日本語指導として、何をゴールとして、子供像としてどういうところを目指すのかということについて、一定程度、国としての指針を示すことが必要だと思います。それを実現するためにどう体制を整えていくかが決定できると思います。その順番が必要なのかなあと強く思いました。
吉田委員からは、日本語指導の時間と内容について一定の指標を示しているというお話がありました。また、茨城県さんからは、初期段階のオンラインの取り出し指導の限られた時間の中であれば、このシラバスで今チャレンジしているというお話がありました。いずれも、その自治体・地域の現実的な、時間的・予算的な制約の中で、できる範囲の精いっぱいをやるというような方向での体制づくり、シラバス提案になっています。そのこと自体は素晴らしいわけですが、それでは散在地域と集住地域の格差というのは埋まらないと思うのです。ですので、さきほどは、小島先生から指導要領にというお話もありましたが、今回、予算化されている「カリキュラムの総合的なもの」の提案で、どういうところまでを日本語指導であったり外国人児童生徒等教育として目指していくのかを明確に打ち出すということを、まずは期待したいです。
以上です。
【佐藤座長】
それを待たずに、この有識者会議でも今のような方向性をきちっと打ち出すことは大事だと思いますので、ぜひ、この後、議論を深めていければと思います。
それでは、浜田委員、お願いします。
【浜田副座長】
ありがとうございます。浜田です。今、齋藤委員がおっしゃってくださったことに続けて言いますと、そういった国のガイドラインを出していくというようなことは私も非常に重要だと思っているんですけれども、ともすると、発達の目安というんでしょうか、発達曲線のこれより遅れていると何か問題があるんじゃないかみたいな、そういうふうに見られないように、それこそ何回も話題になっていますが、外国人の子供たち、必ずしも自分の意思で日本に来たわけではなく、日本語を学ぶことに前向きになれない子供たちもいる中で、そういうことも総合的に見ていく必要があるということは皆さんに十分御理解いただいた上でそういうものも示していくということが大事かなというふうに思いました。
それから、今日、お話があった中で、吉田委員が、支援が入ると初めてそのことが役に立つということが分かるんだというのは、非常に印象的でした。私たちもいろんなところで何回も提案をさせていただいているんですが、それが普及していかないというのは、なるほどそういうことなんだなというふうに改めて思った次第なんですけれども、そちらの体制づくりのほうに向かって、具体的に線路を引くというんでしょうか、誘導していくということが今後重要なのではないかなというふうに思っています。今、話題になったガイドラインもそうですし、例えば、きめ細かな支援事業の中でも幾つか必須項目というのが挙げられていますけれども、実際に取り組まれている内容についての具体的な精査というのはまだあまりされていないかなというふうに思うんですね。ですので、例えば、連携ということについては、今日、お話に上がったような散在地域での連携、特に、県単位で体制が整わないところをバックアップしていくということが非常に重要であるという御提案が、吉田委員からも、茨城県教育委員会の御報告でもあったと思いますので、そういったことをきちんときめ細かな支援事業の予算を使ってやるんだということで線路を引いていくということが必要じゃないかなというふうに思いました。
それから、今回も、日本語支援員の方に非常に大きな役割を担っていただいている、前回も母語支援員の方がそうだというふうなことでしたけれども、やはり待遇改善というのが非常に重要だということを改めて感じています。登録日本語教員の活用ということで、登録日本語教員も待遇改善が必要ということで今取り組んでいるんですけれども、例えば、散在地域で登録日本語教員として待遇がよくなると、そちらのほうに人材が今後奪われていくというような懸念もなくはない。そうしますと、人材の奪い合いにならないように、地域全体で日本語教育を考えて、人材の養成というのを考えていく必要があると思いますし、もっと言いますと、学校で支援・指導に関わっている人たちの待遇改善ということをぜひとも、今後とも引き続き取り組んでいただきたいなあというふうに思いました。
以上です。
【佐藤座長】
ありがとうございました。
きめ細の報告書って、どうなっているんでしたっけ。今、浜田委員がおっしゃったような形で、より深く、分かりやすいような形が必要ですね。連携がうまくいっている例って、今日の青森もそうですし、茨城県もそうですが、かなりあると思いますが、報告書だけではなかなか読み取れない部分があるような気もします。一体、どうすればわかりやすくなるのか。ガイドラインなどもこれから誘導的なものにしていくという御提案だったと思いますけれども、この会議の場でも、どういうのがいいのか、どういう方向がいいのか議論が必要だと思います。きめ細事業にかなり予算をかけているわけですから、それの成果が、こういう形でいい方向に進んでいるという点が具体的に示せればとてもいいと思います。新規事業と同時に、これまでやってきたきめ細事業についての成果をどういうふうにして発信していくのか、皆さんの負担を過剰にする可能性もあるわけですけれども、どういうふうにしたらいいのか、改めて考えていく必要があると思った次第です。
工藤委員、お願いします。
【工藤委員】
工藤でございます。お時間いただき、ありがとうございます。本日、ヒアリング発表を聞かせていただく中で、中学校の立場でちょっとお話しさせていただければと思いました。
中学校の場合、教育委員会から、この子が転入されますという連絡が来るのは、大体、午前中に来ることが多くて、その日の午後にすぐお見えになられる場合が多いです。場合によっては、明日から通いたいですというふうにお申出がありますので、中学校としては、その中で校内では支援体制を持つ、そこからつくり始めるという形になります。圧倒的に基礎情報が足りないというのが現状でございます。教育委員会からは、日本語ができませんということだったり、少し話せますということだったり、こういった情報しか来ませんので、本日、吉田委員の発表の中にあった個別の教育支援計画、これをつくっていくことは非常に大事だと思うんですけれども、私どもで言えば、生活言語も含めて、この子が何をどこまで学んできたかを全く分からない中で支援がスタートするような現状がございます。生活言語に関しても、様々、アセスメントがしたいというふうに思うんですが、今の状況で、午後、その子と面談する。保護者も面談する。保護者の方も日本語があまり話せないという場合もありますので、そういった意味では、現在、学校にはタブレットの配置がたくさんあるんですけれども、ICTの活用に関しては、アセスメントツールなんかも、そこにAIを組み込んだような形のものが提供されていれば、それを活用して、その子に合った支援がすぐ始められるということもあるかなと思って、聞かせていただいておりました。
また、そういった意味では、オンラインの部分については、区のほうには、基本的に教育委員会のほうで日本語指導の拠点校があって、そこに通室に行くんですけれども、かなりタイムラグの差が出ますので、本校では通訳ができる人材というのも週に1回来ることはありますが、ただ、多言語化なので、その子に応じた言語が全てそろっているわけでありませんから、もちろん翻訳機も使っているんですけれども、頼り過ぎないことは大事にしながら、その子が伝えたいことが伝えられないというのが一番いけないと思って何とか工夫しているところなんですが、そういった意味の足りないところをICTも補完してくれるとありがたいというふうに思ったりもしています。
併せて、今後、受入れ体制づくりのマニュアル等を示されるときには、我々、教科指導の専門性を高めなければいけないというのは本日も勉強させていただきましたので、そのポイントなんかもお示しいただくとありがたいというふうに思っております。
私からは、以上でございます。
【佐藤座長】
ありがとうございました。
それでは、野口委員、どうぞ。
【野口委員】
御発表、ありがとうございました。これまでの繰り返しになる部分もありますがお伝えします。9月19日に次期学習指導要領の論点整理案が出ました。方針の一つとして「多様性の包摂」が掲げられています。通常の教育において多様性の包摂という方針が掲げられたのは初めてのことだと思います。つまり、これまでの通常の教育に資源や支援を追加的に付け足すのみでなく、通常の教育そのものの土台に多様性の包摂を置いていくということです。先ほど吉田委員からも、教員養成について、教科を担当する先生たちが理解していくことが重要というご発言がありましたが、土台に多様性の包摂を置くということは、教員養成や教職員研修、組織の在り方にも大きく影響してくるかと思います。これまでもお伝えしてきたように、多層型支援の考え方、第1層支援として通常の学級の土台に、例えば社会モデルの考え方や多様性を前提とした授業づくりについて明示していかなければならないと思っています。先ほど小島委員からもご指摘のあった、学習指導要領の総則や教科の部分にどこまで入れていけるのかというところですよね。そこを明確にしていくということで、その上で、難しかったときに、様々な地域の実態に応じて、どういった支援を付け足していくのか。先ほど、ほかの委員からもあったように、地域ごとい今あるリソースを最大限に生かすモデルというのを幾つか示していくという形で整理をしていくのがいいのではないのかなあと思っています。
1点、散在地域のお話をお伺いしていて思ったことは特別支援教育の分野も散在地域においてはリソース不足だということです。そもそも教員不足なので、その中で資源を追加していくというのは理想的ではありますが、現実的に考えれば、結構厳しいこともいろいろあるんだろうなと思っています。そう考えたときに、これまでもこの有識者会議でもお伝えしてきたように、特別支援教育とも連携をして、共にやっていくということ、シェアできるものはシェアしていくということはとても重要だと思っています。この縦割りをどうなくしていけるか、そこのポイントが特別支援教育と日本語指導が必要な子供たちというところから始めていけると非常にいいのではないのかなと思います。具体的に言うと、来年度に関しては既に概算要求など出ているかと思うんですが、例えば、特別支援教育課と国際教育課で連携をして共にモデル事業をつくり、リソースをシェアしながら、多様性の包摂を土台にした教育をどうやってつくっていけるのかというのを一緒に検討していけるような、そういったことも視野に入れられるといいのかなと、お話を聞いていて思いました。
私からは、以上です。
【佐藤座長】
ありがとうございました。
今日、吉田委員は発表していただきましたけども、自分の発表も踏まえながら、今日は最後に、ヒント1、2、3と、それに沿って示していただきましたが、これは散在地域でしょうけれども、さらに付け加える点がありましたら、最後にどうぞ。
【吉田委員】
ありがとうございます。スライドの31~33で整理をさせていただきましたが、全国一律というところに限界を感じています。国の体制としては全国一律でなければ平等でないという感覚はあると思いますが、散在地域はそれでは対応し切れないという実態があるのです。資源の配分という点について、今の一律というところから少しでも変えていくということについて、今後どこかで検討していただけたらいいのではないかと思っています。
そして、ICTなのですが、いろいろ使っていくといいと、もちろん思っています。ただ、そうすると、先日も実際にあったのですが、指導員が頑張って指導して本人もやさしい日本語であれば理解できるのにもかかわらず、先生方は一生懸命、ポケトークを使って話してしまうのです。そこで、「先生、せっかく学んでいるので、やさしい日本語で積極的にやり取りをしてください。それがその子の力を引き出すことになります」とお伝えしました。そう言われてみて、「そうですね。なるほど。学んだことを実際に使う方がいいですね」というようなやり取りになりました。「なるほど」と言われるほど大したことを言っているわけではないのですが、実際にそういうことは起こりがちだなと感じています。NPO法人ひろだい多文化リソースルームも、県内には通訳人材が不足しているので、オンラインで通訳に入っていただくこともありますし、いろいろなICTツールも使っていますが、根底に教員の研修というものがないと、機器も使いこなせなかったり、逆に機器に頼り過ぎて日本語を伸ばしていくことにつながらないというようなことが起こりがちだと思っています。そこに気を付けながら、教員の理解を進めながらICTも利用していくことが大切だと思っています。
大学における養成については、また機会を設けて集中して議論するということですので、今日は置いておきたいと思いますが、最後に強調させていただきたいことは、予算についてです。実際の支援が見えて、「こういうふうにやれるんだ」ということがわかれば、そこに予算はついてくるということがあると思います。しかし、散在地域の状況として、それがなかなか見えないということがあります。そうすると、なかなか予算がついてきません。あるいは、本当に厳しい予算の自治体もあります。県の負担で72時間までは支援ができるけれども、その後、市町村の予算をつけられる当てがない。既存の事業を何かやめないと日本語支援は入れられない、予備費も何もないとお話しされる自治体があるのです。自治体も、教育委員会も、やりたい気持ちはあっても、自治体全体の予算が厳しく、中には、特別支援教育の支援員も今年は半減したとお話しされるような状況もあるのです。それぐらい予算がない。何かをやめなければ、日本語指導にお金がつけられない。そういう厳しさも地方の小さな自治体だとあるのだということです。それがひとつの現実です。
どの自治体に住むかで子供たちが支援を受けられる・受けられないが決まってしまうというのは、本当に悲しいことだと思います。帰国・外国人児童生徒等に対するきめ細かな支援事業では、3分の1の補助はつくわけですけれども、残りの3分の2を負担しようにも負担できないような状況があることも事実です。もう少し国が、全国の全ての子供たちに保障するのだという姿勢を見せていただけたら、と思っています。そして、支援を広げていくために、具体的な支援の姿が見えるように、特に立ち上げ期の支援を手厚くしていただけないかと、は強く思っています。
今日はありがとうございました。
【佐藤座長】
ありがとうございました。
私ども、この有識者会議では当然のことですけれども、外国人児童生徒等の教育に関して議論をしているわけですが、ただ、学校や教師にとってみると、ほかの課題も山積しているわけですね。カリキュラム・オーバーロードというような言葉も出てきていますし、あるいはワーク・オーバーロードといったような過剰労働の話もございますので、私たちが提案していくことが学校や教師にとってマイナスにならないように、前向きに示していく必要があります。そのためにも、吉田委員がおっしゃったような、財政的な支援が必要だということは言うまでもないと思います。また、野口委員がおっしゃっていただいたように、共通性と私どもが考えている個別性をどういうふうにして組み合わせていくのか、その共通性も併せて議論をする必要があるかなと思いました。
残り4分ほどありますが、どうしても最後に発言しておきたいという方がおられれば、お受けしたいと思いますが、いかがですか。
よろしいですか。
今日の体制のところですけれども、指導体制、そして、校内体制、それから、担当教師の配置、キャリアパス、指導補助者、母語指導員、関係機関との連携というところで、2回のヒアリングの中でいろんな観点で発表いただきましたので大変参考になりました。担当教員の配置の問題などは、国だけではなかなか難しい問題がありますが、少し議論を深めていく必要があると思います。
それでは、二、三分早いですけれども、本日の議論はこれまでとさせていただきます。皆様から様々な御意見や御提案をいただいて、どうもありがとうございます。本日いただいた御意見は、事務局のほうで整理していただきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いします。
事務局より、連絡事項がありますね。よろしくお願いします。
【片桐調査官】
皆様、本日もたくさんの御議論、どうもありがとうございました。前回、横浜市に御発表いただき、今回、吉田先生と茨城県教育庁様から御発表いただきまして、集住地域ならではの課題、散在地域ならではの課題、共通した課題と、様々な御意見をいただいたと思いますので、今後、こちらをまとめていきたいと思いますし、私ども国に対しても、きめ細での成果の活用ですとか、日本語指導としてどこまで目指すかといったところも必要だという御意見もいただきましたので、こちらの有識者会議を踏まえながら、私どもとしても検討をしてまいりたいと思います。
それでは、次回の会議の日程についてでございます。次回、第8回の会議は、11月10日、月曜日の10時から12時、第9回は、12月18日、木曜日の10時から12時を予定しております。どうぞよろしくお願いいたします。
【佐藤座長】
ありがとうございました。
吉田委員、それから、茨城県教育庁の虻川指導主事、安藤指導主事、今日はありがとうございました。お礼申し上げます。
それでは、次回は11月10日ということでございますので、また御参集いただければと思います。本日の会議、これで閉会させていただきます。今日は、ありがとうございました。
―― 了 ――
総合教育政策局国際教育課