令和7年8月28日(木曜日)10時~12時
対面・Web会議の併用
1.指導体制の確保・充実について(ヒアリング)
2.ヒアリングを踏まえた意見交換
3.その他
【佐藤座長】
皆さん、おはようございます。定刻になりましたので、ただいまから外国人児童生徒等の教育の充実に関する有識者会議第6回を開催いたします。
委員の皆様におかれましては御多用のところお集まりいただき、誠にありがとうございます。
本日は議題が2つあり、議題1においては、指導体制の確保・充実に関するヒアリングとして、横溝委員から、横浜市における日本語指導が必要な児童生徒への指導・支援の取組について御発表いただき、公益財団法人横浜市国際交流協会のみなみ市民活動・多文化共生ラウンジから、主に横浜市教育委員会と連携した取組について御発表いただきます。
議題2においては、ヒアリングを踏まえて、今回、特に集住地域での指導体制の確保・充実について議論を深めていきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。
それでは、議題1、指導体制の確保・充実についてのヒアリングに移ります。最初に横溝委員、続けて公益財団法人横浜市国際交流協会のみなみ市民活動・多文化共生ラウンジの日下様と李様から御発表いただき、その後に質疑応答としたいと思います。
それでは、横溝委員よりお願いいたします。
【横溝委員】
皆様、おはようございます。横浜市教育委員会事務局の横溝です。今日は、横浜市における日本語指導が必要な児童生徒への指導・支援について、御報告させていただきます。よろしくお願いいたします。
横浜市は、昨日から学校が再開されているような状況で、みんな元気に登校ということと、それから、海外からの編入生も非常に増えているような状況ですので、また後ほど詳しく説明をさせていただきます。
まずは、横浜市の外国につながる児童生徒の状況について御説明をします。令和7年度市内小中義務教育学校に在籍する外国籍、外国につながる児童生徒は1万2,386人。そのうち日本語指導が必要な児童生徒は4,605人となりました。昨年度よりも約500名、日本語指導が必要な児童生徒が増えておりますし、一昨年度よりも約1,000人増加しているような状況になっております。
続いて、子供たちの、児童生徒の内訳になりますが、現在、市内の小中義務教育学校には113か国の子供たちが生活しており、60%が中国籍、中国につながる子供たちになります。近年、どの地域も同じような状況かもしれませんが、ベトナム、ネパールの子供たちが増えているような状況になっております。
外国につながる子供たちの現状です。横浜の場合と書きましたが、もしかしたら全国的に似通っているものかもしれません。子供たちは必ずしも日本に来たかったわけではなく、保護者の都合ということで、一緒に日本に来ている場合が多いです。中には、子供たちは、あした日本に行くよということで日本に来ている場合もありますし、すぐに本国に戻ると言われている子供たちも非常に多いです。
そして、横浜に来る子供たちは、まずは保護者が日本での基盤をつくり、その後に子供たちが呼び寄せられる。本国にいる間は祖父母と例えば10年ぐらい生活をしていて、急に日本に来るようなこともありますので、保護者との生活がうれしいなと思う子供たちもいれば、反面、思春期に差しかかった子供たちは、今から保護者と生活するというのが少し複雑な状況もあります。
そして、多くの子供たちは、直近までは本国でしっかり勉強してきているのに、日本語での学習は分からない状況になります。子供たちは本国では非常に活躍をしていた子供たちも多いですし、クラスの中心になっていた子供たちも多いんですが、やっぱり日本語での生活は非常に苦しく、前向きに学習に取り組めない子供たちも多いです。多くの子供たちが、日本を受け入れる気持ちが整っていなかったり、いつも意欲的に学べるわけではありませんので、まずは子供たちが安心して生活できる居場所を整えていく必要があるなというふうに感じております。
横浜市、そういった子供たちがたくさんいる中で、第4期横浜市教育振興基本計画、2022年度から2025年度になりますが、こちらで、本気で誰一人取り残さないということを実現するために教育を行っております。今年度、2025年がこの第4期振興基本計画の最終年となりますが、今まではどちらかというと、海外から来た子供たちはまずは日本語というところで、日本語指導中心だったようなところもありますが、今後は、一般学級でも彼らの強み・長所を引き出しながら、彼らのいいところを見つけて、多文化共生教育につなげていくということが重要ということで、先日行われました2025年度の横浜市教育課程一般学級における「誰一人取り残さない」教育部会で、一般学級でも彼らの長所・強みを引き出す教育を充実させていこうということで、委員会から発信をさせていただきました。多くの管理職、それから、学校の中で中心となる先生方がこの話を聞いてくださって、まさにそうだということで、振り返りにはそういったいい面がたくさん書かれていたように思っております。
ここからは、横浜市の体制についてお話をしたいと思います。横浜市の編入の仕組みとしましては、まずは区役所のほうに住民登録に行くことになります。その後、住民登録が終わりましたら、各学校に編入手続に行って、各学校で編入を進めていくという形になります。
これは資料を配付していませんが、私がいつも研修をするときは、こういった資料を使いながら、あした中国からの編入がありますが、学校としてどのような支援体制を整えることができますか、指導・支援ができることを皆さんで考えましょうということを行っております。
こちらが、横浜市の日本語支援に関わる子供たちへの支援体制の一覧になります。ここから少し皆さんと資料が違うかもしれませんが、このフローチャートを使っていったほうが分かりやすいので、こちらで説明をさせていただきます。
一番上、子供たちが各学校へ編入手続に来たと思ってください。その後、各学校から学校ガイダンスに御案内をするようになっております。学校ガイダンスは、市内に3か所ある日本語支援拠点施設ひまわり、これは後ほど説明をしますが、そちらで毎週火曜日に行っております。内容は、日本の学校生活についての説明、それから、プレクラスひまわりでどのような指導・支援をするか、そして、子供たちには、簡単な日本語と算数・数学のアセスメントを行っていきます。そして、必要に応じて下のプレクラスというところへ入級の手続を進めていきます。
もし時間に余力がありましたら、学校って書類を書く手続が非常に多いんですね。そういったものを、母語を使いながら書類書きの手伝い等もしながら、保護者も安心して日本の学校へ入学できるように支援を整えている状況になります。ちょうど昨日から夏休み期間中のガイダンスが始まりまして、非常に多くの保護者、それから児童生徒がガイダンスに来ているような状況になっております。
続いて、プレクラスひまわりについて説明をします。学校ガイダンスを経て、プレクラスひまわりというところに入級が決まりますと、こちらで指導を受けることになります。現在は市内に3か所、ひまわりが設置されております。中区にあるひまわり、こちらは単独で施設ひまわりとしてあります。それから、鶴見区、鶴見小学校内に鶴見ひまわり、そして、都筑区、都筑小学校内に都筑ひまわりがあります。通級期間は4週間、水・木・金はひまわりに通級、月・火は在籍校に登校です。4週間のうち、学校とひまわりを行き来する生活になっております。通級開始日も決まっており、来週から第4期のひまわりがスタートすることになっております。
そして、指導内容は、初期日本語指導、簡単な平仮名、そして学校で使用する簡単な日本語。教科指導、教科につながる簡単な日本語。そして、学校への適応指導、掃除・給食などを学びます。教科指導といっても、本当の教科の学習とは少し離れるんですが、例えば、体育では「前へならえ」とか、「集まって」とか、よく教室で使われる言葉、そして、算数・数学などであれば、数字の読み方だったり、答え方なんかを学んでいきます。
学校との連携では、通級中、卒級後に、ひまわりの職員が学校訪問をして、子供の様子だったり、担任の先生とお話をする時間をつくったり、通級2週目と終了時には、ひまわり連絡ということで、子供たちの学習の様子、生活の様子を書面にしてお渡しをしております。そして、日常で気になることがあれば、連絡等を取りながら、子供たちの情報を共有しています。
そして、ひまわりは、最初の入級のときに入級式、学校でいう入学式と、卒級式、卒業式のようなものがあって、そこには多くの管理職、そして担任、国際教室担当者がいつもセレモニーに来てくださっているような状況です。管理職なんかは、本当に日本語ができないところから編入手続に来て、4週間後に少しでも日本語をしゃべっている姿を見てもらいながら、あとは学校でということで引き継いでいるような状況です。
少しひまわりに来る子供たちの様子をお話ししますと、4週間でぺらぺら日本語ができるようになるわけではありません。本当に短い言葉をうまく組み合わせながらしゃべっているような状況です。
例えば、「ある」「ない」という言葉を最初に学習したりするんですけど、「おなか」とか「痛い」とかということを組み合わせながら、「先生、おなか痛い、ある」、ちょっと日本語の使い方としては違うんですけど、それでも十分、おなかが痛いんだなというのがよく分かると思います。そういうことを繰り返しながら、在籍校に戻っていきます。
通級期間が4週間というのが、少し他都市のそういった施設と比べると短いかなと思う方もいらっしゃるかもしれませんが、横浜市がこれを設置した最初のときに、彼らが活躍する場所は在籍校だと。このひまわりって、とても居心地がいいんですね。同じような境遇の子供たちもいますし、それから、子供たちの母語をしゃべれる職員もいたりしますので、ここが長くなり過ぎると、やっぱり在籍校へのスムーズな入学、それから、戻るということが難しくなるかもしれないということで、できるだけ指導・支援はコンパクトにして在籍校に帰すということをコンセプトにしながら、ひまわりを運営しております。1年にこれは8回、今繰り返しているような状況です。
プレクラスひまわりが終わりましたら、今度は横浜市日本語教室というところで子供たちは日本語を勉強する形になります。小学校の場合は、日本語講師を学校へ派遣し、指導・支援を行います。中学校は、市内に5か所ある集中教室に週2回通いながら、支援・指導を受ける形になっております。
通級回数に関しましては、配付した資料を御覧いただけたらと思います。国際教室があるなしで少し回数を変えながら、指導の充実を図っておるような状況です。
続いて、一番下にあります国際教室について説明をさせていただきます。こちらは学校に設置されている教室で、主に国際教室担当教員が日本語指導、教科指導、学校生活への適応指導を行っております。主な仕事としては、国際教室の環境づくり、児童生徒が安心して学べる環境を整えること、そして、児童生徒一人一人に応じた指導計画を作成しながら、日本語指導、教科指導を行っております。また、居場所を広げるための支援として、国際教室の中にいる子供たちのつながりを深めたり、それから、日本の子供たちもここにやってきますので、多文化共生の発信の場として使っているような状況です。
横浜市の特徴かもしれませんが、各学校の実態に合わせながら、この国際教室を運営しております。市内の学校では、初期日本語指導を行う子供たちが中心、編入学が多い学校もあれば、日本生まれ日本育ちの子供たちが多いような学校もありますので、教科指導中心、日本語指導中心、そんなところを各学校の実態に応じて支援をしているような状況です。
横浜市の国際教室についてです。設置条件は、日本語指導が必要な児童生徒が5名以上で教員を1人加配、必要に応じて教員を2人加配、学校によっては複数名加配されているような学校もあります。こちらは、横浜市の指標を使いながら配置をしているような状況です。
本年度、市内小中義務教育学校の278校に国際教室を設置しております。令和元年度からいきますと、約130校ぐらい増えているのが分かると思います。非常に増えているんですが、市内小中義務教育学校は約500校ありますので、やっと半分を超えたぐらいになっております。ただ、市内約500校には、最低1人以上は日本語指導が必要な児童生徒が在籍しているような状況になっております。
続いて、横浜市の国際教室担当教員の育成について簡単に紹介をさせていただきます。現在、担当教員は350名を超えているような状況で、毎年のことになりますが、担当教員の育成は大きな課題となっております。
幾つか講座を紹介させていただこうと思っています。一番上が初担当者悉皆研修ということで、日本語指導者養成講座、全7回を行っております。毎回120人程度が受講しております。
それから、少しレベルアップをして中級講座、これは全2回ですね。初担当者から受講可能ですけど、今年度130人ぐらいが受講をしてくださっています。
それから、昨年度新規設置をしました日本語指導者リーダー養成講座、こちらは国際教室を3年以上経験し、かつ、校長推薦を受けた先生方が、今年度は12名、参加をしてくださっています。学校内のリーダーとして、そして、地域のリーダーとして研究を進めていくということで、最後はポスター発表なんかをしながら、学んだこと、それから、今後の横浜市の指導・支援体制についての研究発表をしております。
それから、そのほかにも国際教室の授業公開であったり、横浜市には日本語支援アドバイザーという教員が3名いますので、その方々が月に1回程度、研修をオンラインで行っていたり、次年度国際教室を担当するという方が決まっていましたら、3月末になりますが、「はじめての国際教室」ということで、次こんなことをしたらいいですよ、4月までにこんな準備を進めていてくださいということで、研修を行っております。
このほかにも、管理職向け、それから一般教員向けの研修も行っております。各教員の各年代に応じた研修であったり、それから、特別支援教育コーディネーターの研修にも必ず外国につながる子供たちの理解研修ということを入れながら、全教員に向けて研修ができるようにしているような状況です。
横浜市の国際教室担当者の1年間の研修ということで、初担当の方々はこれぐらいの研修を受けて1年間を終えていくという形になります。4月最初に、これ、担当者会ですので、全員が集まって授業説明だったり、提出書類等の確認をしたり、情報交換をした後に、月1回程度、養成講座を受けながらレベルアップをしていく、いろいろなことを学んでいく形になって、最終的には、2月末に初担当者によるポスター発表をしながら、1年間の成果を発表していきます。
最初は非常に不安な様子で、私、日本語指導なんかしたこともありませんとか、外国語がしゃべれないんですということで不安な気持ちで研修をスタートするんですけど、7回目が終わる頃には本当にたくさんのことを学んで、また来年も国際担当をやりたいんだというような教員が年々増えているような状況かなというふうに思っております。
ここで、ある国際担当者の1日を簡単に紹介させていただこうと思います。この国際教室担当者は、それぞれの学校で校長から指名をされて担当になっていくような状況で、この担当者は、校内での校務分掌は人権担当というところに位置づけながら、国際教室の主任として活躍をされています。
児童登校前から担任と綿密な打合せ、特に小学校は日常的に時間割が変更になりますので、今日の時間割を確認したり、2時間目、Aさんの指導はできますかということで調整をしてスタートをします。
こちらは月曜日のある1日ですので、まずはここの学校は複数名先生がいますので、1週間の授業の打合せだったり、行事の確認、それから、児童の気になる様子なんかを確認して、2時間目以降、授業を進める形になっております。
1日のうちに、取り出し指導と入り込み指導をうまく組み合わせながら授業を行っていただいているのがよく分かるかなと思います。この学校は非常に多くの外国につながる子供たちがいますので、それぞれの日本語や生活の状況を組み合わせながら、取り出しにするか、入り込み指導にするか、それから、週何回授業をするかということを考えながら授業をしています。
6時間目には、1年生から3年生の希望者に宿題教室をしながら、子供たちの放課後の学びの場も設定していたり、ここには書いていないんですけど、子供たちが帰った後は、担任の先生と今日の振り返りだったり、あしたの連絡をしているような状況になっております。
この学校での日本語指導が必要な児童に関わる人々ですが、本当に様々な方々が関わってくださりながら、子供たちの支援に当たっていただいています。例えば、横浜市でやっています日本語教室の日本語講師の先生が週2回程度来てくれて、指導を受けていますので、その連携、そして、校内にはひまわりがありますので、そこの職員との連携、そして、外部支援者も多いです。この後説明をさせていただきます母語支援者とか、日本語専攻を取っている学生が入り込みや保護者の通訳への支援を行ってくれたり、地域でやっている学習支援者とも、そんなに多くはありませんが、子供たちの地域での学びの様子を情報交換する場なんかも持っているような状況です。
そして、フローチャートの最後になりますが、外部との連携について御説明をします。こちらは母語支援ボランティア活用事業というもので、横浜市教育委員会と市内にある国際交流ラウンジとが連携を取って、母語支援者を派遣していただく仕組みになっております。
初期適応・学習支援は、日本の学校に在籍2年未満の児童生徒に対して母語支援の母語のできるボランティアに入り込んでいただいて、例えば、中国語で、先生は今こんなことを言っているんですよと。生活面の不安があれば、母語支援者と連携を取りながら、子供たちが安心できる生活を整えております。
それから、初期適応・学習支援が終わった児童生徒に関しては、放課後や長期休業期間に学びができるように、引き続き母語支援者に来ていただけるような仕組みで、中期放課後等学習支援というものを行っております。実施回数に関しては、先ほどの日本語教室と一緒で、国際教室がある学校とない学校とで少し差をつけながら、支援の回数を決めています。
一番下、「学校でボランティアを見つける」と書かせていただいているんですが、主に学校の職員が連携しているラウンジに電話をして、中国語の支援者の派遣をお願いしますということで、うまくマッチングできれば、支援者を見つけて、支援に来ていただけるような状況になっております。
この後、詳しくは今日来ていただいている日下さんと李さんに報告をしていただこうと思います。
それでは、簡単ではありましたが、横浜市の説明は以上になります。
続いて、みなみ多文化共生ラウンジのほうから、日下館長と李さんに説明をしていただきたいと思っております。それでは、日下さん、李さん、よろしくお願いいたします。
【日下氏】
皆さん、おはようございます。みなみ市民活動・多文化共生ラウンジの日下と申します。本日はよろしくお願いいたします。
みなみラウンジは、横浜市の外郭団体である横浜市国際交流協会が受託しておりまして、2010年10月から現在に至るまで引き続き受託運営しております。
通称YOKEといいますが、YOKEは、外国人が暮らしやすく、社会参画しやすいまちづくりに向けて、多文化共生推進事業のほか、グローバル人材育成支援事業、そして、ラウンジ運営に該当する国際交流施設の管理運営事業、以上、3つの事業中心に取り組んでいます。
それでは、まず、私のほうから、横浜市南区に暮らす外国人の現状についてお話しさせていただきます。
次お願いします。横浜市には、18の区があります。今年の6月末現在で、南区の外国人数は、市内で3番目に多くなっています。割合でいいますと、2番目に多くなっています。なお、YOKEは、この上位3区となります中、南、鶴見、この3つの交流ラウンジを受託しております。
国籍別に見ますと、中国人が半数の51%を占めております。次いで韓国、フィリピンと続きますが、近年はやはりベトナムが増加傾向にありまして、本年度中に恐らくフィリピンとベトナムが逆転するのではないかと思われています。横浜市域では、既にベトナム人が第2位となっています。
過去20年間の外国人と日本人の人口推移を見ますと、御覧のように、総人口の減少を外国人が食い止めているのがよく分かります。
次に、南区の外国人の人口推移を御覧ください。2013年あたりから右肩上がりで増加していましたが、新型コロナウイルスの感染症拡大によって、2020年度に一旦減少に転じます。しかし、コロナウイルスが5類に移行してからは、御覧のとおり、スロープがさらに増して増加中です。
南区では、特に近年増加している国、ベトナム、ネパール――ネパールは家族滞在者が非常に多くなっていまして、結果、子供の転入も多くなっています。それに比例して、学校からラウンジへ初期支援や市民通訳ボランティアの要請も多くなっています。しかし、そもそも希少言語でありますので、その需要に支援が追いついていないのが実情です。結果的に、行政情報の翻訳もまたこの2言語が追いついておりません。
昨年度、みなみラウンジに寄せられた相談は御覧のとおりです。市内の他の12ラウンジも同様に、通訳・翻訳、そして日本語学習の相談が多くなっています。
こちらは、相談件数の上位10項目をグラフにしたものです。このデータから、言葉の壁、制度の壁、心の壁が今でも存在しているということが分かるかと思います。
以上、南区で暮らす外国人の現状でした。
続きまして、横浜市との連携事業であります母語支援活用事業について、コーディネーターの李から説明していただきます。
【李氏】
みなみラウンジ多文化コーディネーターの李と申します。引き続きよろしくお願いいたします。
まず、母語支援活用事業に関連する、みなみラウンジでの取組を2つ御紹介させていただきます。
まず1つ目は、多文化共生ボランティア登録・派遣制度です。この制度は、多文化共生に関心のある地域住民を対象に、ボランティア登録制度につなぎ、様々な活動への派遣を行っています。現在、32名が登録しており、定年の方、主婦の方が多くて、平均年齢はおよそ60歳になっています。35言語対応しております。
また、学校における母語支援だけではなく、日本語、外国語の学習サポート、母語文化の紹介、通訳・翻訳など、様々な支援活動を行っています。
去年の派遣件数は256件の実績があり、そのうち母語支援の件数は39件で、総件数の中の16%を占めています。多文化共生ボランティア活動は、地域における多文化共生を支える重要な基盤となっていることが分かります。
次、学校母語支援活用事業について、図で設営させていただきます。この図は、2022年度から2024年度の学校母語支援ボランティアの派遣実績表です。
まず、派遣されたボランティア人数は、2022年度は51名、2023年度42名、2024年度39名、年々減少傾向にあります。一方、支援を受けた生徒の数は増えています。2022年度93名、2023年度104名、2024年度100名に達しました。このことから、1人のボランティアが対応する生徒の人数が増えており、現場での負担が高まっていることが分かりました。
また、支援が行われた学校の数は毎年およそ30校前後になり、安定した支援が続いています。
対応言語は、多様な言語にわたっています。特に中国語、英語のニーズが毎年高く、継続的な支援が行われており、近年、ベトナム語、ネパール語、ベンガル語といったアジア系の言語支援も増加傾向にあります。
支援内容としては、日本語の理解を助ける支援、学校の教科の学習支援、母語の通訳・翻訳、保護者との連携サポートなど、どの年でも一貫した内容で活動を続けられています。
このように支援のニーズが高まる中で、1人当たりの担当人数が増えているボランティアの役割は、ますます重要になっていることが分かります。
ここから実際の支援現場での具体的な事例を2つ御紹介させていただきます。
まず、1つ目は、ベトナムから来た小学3年生の女の子です。日本語は簡単な挨拶程度。授業中、ずっと緊張している様子で、先生の指示についてはあまり分からなくて、板書の内容をノートに写しますが、その内容の理解は全然分かりませんでした。
しかし、ベトナム語のボランティアさんがベトナム語で声をかけると、驚いた表情の後、すごく安心して笑顔を見せてくれました。また、ベトナム語による説明にうなずきながら理解を示してくれました。
事例2なんですけれども、中国から来た中学1年生の男の子でした。日本語を全く話せません。授業中、いつも困っている顔をしながら、周りの様子をずっと見ていました。時々、机の上に伏せってしまうこともあります。特に算数の文章題の内容について意味が全く分からず、ノートが白紙のままでした。
しかし、母語支援のボランティアさんが中国語で説明すると、問題の意味をすぐ理解していただいて、すらすらと算数の問題を解けるようになりました。
このような支援を通して、多くの生徒にポジティブな変化が見られました。具体的に言うと、日本語能力の向上、学習意欲の向上、また、社会的なつながりの増加でした。
具体的に、社会的なつながりの増加というのは、やっぱり母語支援を通じて、児童が授業の内容を理解してくれて、クラスメートとの会話も増えたり、グループ活動に積極的に参加できるようになったという変化が見られました。
また、母語支援の紹介をきっかけに、支援を受けた児童やその御家族の方々が地域の日本語教室に参加したり、地域で行われるイベントに参加することによって、地域のつながりも増えてきました。
また、周囲からの反応としては、学校の先生から、やはりクラス全体の雰囲気がよくなりました、授業の進行がスムーズになりました、保護者から、子供の学習意欲が向上した、自信がついた、学校に行くことが楽しくなったというような声が寄せられました。
次、取組2、母語支援ボランティア研修会の実施について紹介させていただきます。2023年、2年前のことなんですけれども、母語支援ボランティアを対象とした研修会を実施しました。当日は10言語21名の方々に御参加いただき、定員を超える大変活発な会となりました。
研修内容としては、多文化共生に関する基礎知識、また、実際の支援事例、また、ワークショップ形式による意見交換・課題共有などを行い、ボランティア同士や教育委員会、また、みなみラウンジスタッフとの交流の場ともなりました。
参加者からは、活動に関する疑問が解消された、今後も積極的に支援に参加したい、また、教育委員会の方、みなみラウンジのスタッフの方とお話が直接できて、今後の連携の可能性を感じたという意見、前向きな声も寄せられました。
この研修を通じて、対応スキルの向上、多文化共生への理解の深化、ボランティア同士のネットづくりが進んだことが大きな成果となっています。
これからみなみラウンジの立場から、母語支援活動事業について、良さ、また、課題と改善に向けた提案について、少し御紹介させていただきます。
まず、よさは、5つのポイントをまとめて説明いたします。学校の人手不足の解消です。学校の先生だけでは対応が難しい部分があります。例えば、外国につながる生徒と学校の先生とほかの生徒とのコミュニケーション、また、学校の生活のルールなどがよく分からない。また、外国人生徒の保護者とのやり取りが難しいという部分をボランティアが支えることで、現場の負担を軽減することができます。
2つ目、教育の質の向上です。母語支援により、言葉の壁を感じる子供たちが授業に参加できるようになり、学びの質が向上しています。
3つ目は、地域とのつながりの強化です。地域のボランティアが学校と関わることで、地域全体で子供を支える体制が生まれます。
4つ目、多文化・多言語への理解の促進です。異なる言語や文化への理解が学校、地域に広がり、多文化共生意識が高まることができます。
最後、ボランティア自身の成長です。やっぱりこの支援活動を通じて、自分の経験やスキルを生かして、新たな気づきややりがいを感じているボランティアさんが多くいらっしゃいます。
次は課題です。現場から様々な課題が見えてきました。まず、第1、支援ニーズの急増に対して、ボランティアの数が追いついていかないという状況であります。
また、母語支援ボランティアの支援の配置なんですけれども、本当に学校ごとに大きな差があります。必要とされる場面に十分に届いていないということもあります。
また、学校側とボランティアとの連携体制が十分と言えないんです。支援の目的や位置づけが共有されていないケースもよくあります。その結果、活動の内容が曖昧になり、ボランティア側の戸惑い、また、負担感増加につながることもあります。
さらに、ボランティアに対してフォロー体制が不十分で、継続的に関わってもらうことが難しいという課題もあります。
こうした課題に対して、以下のような提案をしたいと思っています。まず、初期支援における手厚い対応です。特に来日直後の子供たちに対して、言葉面で不安を軽減するサポートを充実させることだと思います。例えば、週に複数回、長期間でボランティア支援員を配置すること。
2番目、多言語支援の充実です。特にニーズの高い言語に対して、新しいボランティアの育成と確保を進めることです。例えば、ICTの活用とか、地域の連携などなどが挙げられます。
3番目、学校側との連携・役割の明確化です。支援の目的や内容、学校側とボランティアが共通理解を持てるように調節することがとても重要だと思います。
最後、ボランティア支援体制の整備です。定期的に研修会、情報交換会を開き、また、ボランティアの悩み、相談を受け入れてくれる窓口の設置、また、謝礼金、交通費などの支払い条件を見直すなどが挙げられます。
最後、本当に母語支援活動は、外国につながる子供たちに対して、自分らしく学び、地域の中で安心して過ごせるための大切な支えです。今後ともボランティアの方々と教育委員会の方々と関係者の方々と連携しながら、支援体制強化、また、多文化共生まちづくりに取り組んでいきたいと思います。
御清聴ありがとうございました。
【横溝委員】
日下さん、李さん、ありがとうございました。
地域で子供たちが支えてもらったり、そして、学校に入り込んでいただきながら子供たちの居場所づくり、安心感が整っているのは、本当にラウンジのおかげかなというふうに思っております。
たくさん課題も出していただきましたが、横浜市全体としても多くの支援をやっているように見えるんですけど、まだまだ子供たちの入国状況には追いついていない状況です。
そして、今まで必要に応じてそれぞれの事業を立ち上げてきたんですが、それぞれ一つ一つのつながりが少し不十分になってきている部分もありますので、大枠全体も横浜市としても見直していく必要がありますし、横浜のスケールメリットを生かした地域との連携に関しても、さらにラウンジと連携をしたり、それから、ボランティアの方々も気持ちよく子供たちに関わっていただけるような仕組みをさらに整えていけたらなというふうに思っております。
横浜市からの報告は以上になります。
【佐藤座長】
ありがとうございました。
それでは、横溝委員、それから横浜市国際交流協会様からの御発表につきまして、まず、御質問をいただきたいと思います。後ほどいろいろ御意見を、皆様からこの発表を踏まえていただければと思いますけど、まずは御質問があれば、どなたからでも結構ですので、どうぞお願いいたします。
それでは、高階委員、それから浜田委員が挙がっていますので、高階委員からまずお願いします。
【高階委員】
貴重な発表をありがとうございました。
私のほうから2つ質問があるんですが、まず、1つ目は、横浜市のほうで日本語指導講師を小学校に派遣しているという話がありましたけれども、これの日本語指導講師の雇用形態についてお伺いしたいと思います。
要はこれ、横浜市で雇用しているのかなと思うんですが、それが会計年度任用職員なのかとか、週何回雇用しているかとかといったあたりを教えていただきたいのが1点と、もう一つ、スライドでいうと12枚目のスライドで、国際教室について、日本語指導が必要な児童生徒が5名以上いれば教員1人加配、必要に応じて教員2人加配という話がありましたけど、この加配というのは、国のいわゆる日本語指導が必要な児童生徒が18人に対し1人加配というのがあると思うんです。それを活用しているという認識で合っているでしょうか。その2点、よろしくお願いします。
【佐藤座長】
横溝委員お願いできますか。
【横溝委員】
御質問ありがとうございました。まず、日本語講師に関しましては、横浜市の会計年度職員として本市が雇っている職員になります。それぞれ勤務形態は時間数で決まっていまして、15時間とか20時間以上という形で、それぞれの働き方に応じて指導・支援をしていただいているような状況になります。
それから、国際教室の加配教員になりますが、こちらは文科省のほうの18名に1人加配というところプラス、市費で足りない部分を補いながらやりくりをしているような状況で、もともと神奈川県のときの加配が今は市に移管になっていますので、横浜市でやっていますけど、その前は5名以上の外国籍に加配するということでやっていましたが、横浜市に移管されたときからは外国籍、日本籍に関わらず、日本語指導が必要な児童生徒が5名以上で教員1人加配ということになっております。よろしいでしょうか。
【高階委員】
ありがとうございます。
【佐藤座長】
よろしいですか。
加配は毎年予算措置されているんですか。
【横溝委員】
そうですね。予算措置されて、どんどん今増えているような状況です。
【佐藤座長】
ありがとうございます。
次、浜田委員お願いします。
【浜田副座長】
浜田です。ありがとうございます。お聞きしたいこといっぱいあるんですが、横溝委員に4点、それから、李さんに1点お伺いしたいと思います。
まず、横溝委員なんですが、1点目、国際教室で支援する対象の子供さんを、日本生まれも含めて、それぞれの現場で判断をされているというお話がありました。今、ゼロ歳児の外国人も非常に年々増えていますので、これから日本生まれ日本育ちの子供たちがきちんと学ぶ力があるかどうかというのを、きちんと入学時に見極めることがすごく大事になってくるんじゃないかなというふうに思っているんですが、現在、横浜市のほうでは、入学時のスクリーニングといいますか、全体に網をかけて、日本語力が十分かどうかというようなことをチェックするシステムがあるのかどうかということがまず1点目です。
それから、2点目、校内体制を整備するために、やはり管理職の先生ですとか、特別支援コーディネーターの先生にきちんと理解をしていただくということ、とても大事だというふうに思っておりまして、先ほどそういった研修にも横溝委員が参加されているということ、大変すばらしいと思いましたけれども、特に管理職の先生にどんなことを御理解いただいたり、お伝えするということが大事かとか、効果的かということがあったら教えていただきたいです。
それから、3点目、日本語指導担当教員のキャリアパスということで、横浜市、本当に以前から、初任の先生からリーダー教員まで、段階的な研修を実施していらっしゃるということで、非常にすばらしいなというふうに思っているんですけれども、この先生方も恐らく教諭の先生方だと思うんですけれども、キャリアとして、日本語指導の専門家としてキャリアを積んでいくということなのか。つまり、例えば、学級担任というのはもちろんされた経験があってということだと思うんですけれども、そういった教員としての力量の幅を広げるとか、あるいは将来は管理職にというようなことも可能性の中に入れて、そのキャリアステップというのが考えられているのかというようなこと、それから、あと、例えば横浜国立大学なんかですと、日本語教育を専門にして学校教員になる人も出てきているというふうに伺っているんですけれども、そういった方が実際に横浜市ではどんな活躍をされているのかというようなこと、横浜国立大学に限らず、大学で日本語教育について専門的に学んだ方というのが、実際割合としてどれぐらいおられてというようなことがもし分かれば教えていただきたいです。
それから、4点目、横溝委員のご発表の最後ですけれども、地域との連携について、例えば、先ほど横浜市日本語教室の講師の先生が関わってくださっているとか、あるいはラウンジの学習支援者の方が関わってくださるということで、具体的に学校とどんな形で連携をされているのか。もちろん学校によって違うと思いますけれども、例えば、情報共有というのはどんなふうな形で、誰と誰がどんなふうにしているのかとか、少し教えていただければありがたいと思います。
それから、李さんについてです。母語支援員が非常に重要なお役目を果たしておられるということがとてもよく分かりました。
それで、先ほど一番最後のところに、やはり報酬の問題、お給料とか交通費が出るのかというところが問題だというような御指摘があって、本当にこれ、大事な問題だなというふうに思っているんですけど、実際に母語支援に関わっておられる方で、言い方が難しいんですが、きちんとそれで生活ができている方というのがおられるのかどうか。その辺りのところをちょっと、可能な範囲で構いませんので、教えていただければと思います。よろしくお願いいたします。
【佐藤座長】
まず、横溝委員からお願いします。
【横溝委員】
まず、入学時のスクリーニングですけど、入学前に就学時健診などに来ていただくんですが、そこは短い時間ですので、十分日本語指導が必要かどうかまでは見極められていないです。そういうシステムがきちんと整っている学校は少ないと思います。ただ、入学後に、やっぱり担任の先生と国際教室が連携しながら、日本語の指導・支援の必要を判断していくというような状況になっております。
横浜市の場合は、日本語指導が必要かどうかというところを、旧JSL評価参照枠の5未満ということで位置づけていて、そこで調査等をかけながら、各学校の日本語指導が必要な児童生徒を挙げていっているような状況になっております。
それから、管理職への研修になりますが、一つは、日本語支援授業ってどういうものがあるかということを管理職にしっかり知っていただくことを研修にしております。というのは、先ほどお伝えしたとおり、半分の学校が国際教室がありませんので、そこをしっかり管理職が知っておいていただくということ。それから、もう1点が、外国につながる子供たちの現状を知っていただくと同時に、現在どういう指導・支援が必要とされているか。そして、具体的なよりよい実践を紹介しながら、各学校の支援に当てていただいているような状況です。特に国際がない学校の取り出しの等の仕組みをどうしていくかも考えていただけるようにと思っております。
それから、教員の研修でキャリアを積んでどうなっていくかというところもありますが、一つは、横浜市の場合は、教職員としては全員同じ土台で採用をしていきます。そこに日本語支援担当とか、そういうフィルターはありませんので、まずは全員同じ位置として採用され、国際教室担当になるかならないかは、各学校の管理職に任されている部分がありますので、必ずしも日本語指導を学んできた学生が教員になったときに国際教室担当者になれるかどうかも分からないような状況です。
そして、今年国際教室だった担当者が次年度担任にということで、それを行き来していくということが、担当者の専門性の向上というところでは少し足りない部分もあるんですけど、今年1年学んだ先生が、担任でまたその子たちの活躍の場を見つけてくれるということは非常にいい部分かなというふうに思っております。
担当者のその後というと、もちろん国際担当を経験して管理職になる方もいらっしゃいますし、長年国際教室を続けていらっしゃる方もいるような状況です。大学でどれぐらい日本語教育を学んだかどうかまでは、ちょっと調査がし切れていない状況になります。
そして、地域との連携になりますが、例えば、主な窓口は、国際教室担当者がいる学校は国際教室担当者が窓口になります。国際教室等で支援者に来てもらって、Aさんの支援をしている方でしたら、Aさんの最近の状況を情報交換して、それを担任に伝えていくということになります。
ただ、国際教室がない学校は、非常に連携が不安定な部分があります。担任の先生も非常に忙しいので、我々、各ラウンジを回っていつもヒアリング等をしているんですけど、そこでボランティアの方が、いろいろな伝えたいことがあるんだけどうまく伝えられないことが多いという御意見をいただきます。
そのときは、先ほど浜田委員もおっしゃいましたが、特別支援教育コーディネーターが窓口になってくれていたり、それから副校長――横浜市では副校長ですけど、副校長は必ず職員室にいますので、何かお困りのことがあった場合は、必ずそこへ伝えて帰ってほしいということでお伝えをしているような状況になります。
以上です。よろしいですか。
【佐藤座長】
李さんお願いできますか。
【李氏】
御質問ありがとうございました。この母語支援制度なんですけれども、さっき横溝先生がおっしゃったとおり、国際教室がある学校は30回、国際教室のない学校は50回、1回2時間までというような支援時間になっています。
費用なんですけれども、1日2時間まで、交通費込み、2,000円の謝礼金が支払われています。さっきスライドの中でも説明させていただいたんですけれども、登録者の中に、定年の方、また主婦の方たちが多く登録しています。この方たちに主に母語支援をしていただいています。主婦の方たちは扶養内で働きたいので、母語支援の収入だけでは生活がとても立てられない状態になります。
みなみラウンジの派遣の現状としては、多くのボランティアさんは、多くても週2回、少ない場合は週1回、1回2時間まで学校に行っています。お金に計算すると、週4,000円から6,000円ぐらいの収入になります。このぐらいの謝礼金になりますので、生活が立てられない状態という現状であります。
また、ネパールから、ベトナムから来ている外国の方が最近増えてきて、この方たちは、ちゃんとした収入がないと、これからビザの更新、在留資格の更新も難しくなるので、仕事とボランティアをどっちにするかというと、やっぱり皆さん仕事をしに行きますので、この原因で、基礎研修としてのネパール語、ベトナム語の母語支援、人材は大変不足になっております。
【佐藤座長】
ありがとうございました。
続きまして、オチャンテ委員、小島委員、吉田委員の手が挙がっていますので、順にお願いします。
【オチャンテ委員】
ありがとうございます。まず、御発表ありがとうございました。横溝委員と、その後、みなみ市民活動の李さんに質問したいです。
まず、横溝委員のほうなんですけど、プレスクールひまわりは3か所に設置されているということで、子供たちがみんな参加しているんでしょうか。地域の子供たちがみんな、どこかの3か所のひまわり教室に参加しているかどうか。もし通えない子供たちがいた場合は、どんな支援が行われているのかということが少し気になりました。
というのは、私が関わっているところでは、市内に1か所しか設置されていなくて、小さい子供たちだと通えないという状況が生じています。その場合、現場の先生方のお話を聞くと、通っている子と通うことができなかった子供たちの間で、その後の日本語の学習に差が生じているという状況があると伺っています。そのため、現在どのようになっているのか気になっており、これが1つ目の質問になります。
あと、今回あまり出なかったかと思うんですけど、子供たちのキャリア支援についてどんな取組が行われているのかなと少し気になりました。もし高校の進学率とか中退率とかが分かれば、ぜひ教えていただけたらと思います。
コメントにはなるんですけど、御発表の最初に、子供たちの意思で来日しているわけではないという点について、本当に日本に来たくて来た、家族ともう一度再会したくて来た子供たちもいれば、来たくなかったという子供たちも中にはいます。実際、私も5年間、父親と離れ離れで生活して、日本に来てから、本当に一から関係性を構築していったような経験もあるんです。なかなか、やっぱりそういった子供たちについては、日本語の学習ということが今までフォーカスされてきたけれど、心のケアということは、いまだに十分にできていないところがあるのかなと思うので、これはすごく大事だと思います。特に初期段階の心のケアについては、先生方にも意識していただき、カウンセリングまでいかない場合でも、ワークショップや研修などを計画することが必要なのかなと、以前から強く思っていました。これはコメントになります。
みなみ市民活動センターの李さんのほう、先ほど浜田委員からも同じような質問がありました。やはり最初に、母語支援のボランティアっておっしゃっていたので、これ、完全なボランティアなのかと気にはなりました。今は交通費しか出ないということで、どのような方が参加しているのか、とても気になりました。例えば、私の場合、高校生のときに母語支援員が来ていましたが、その方は日本人の学生でした。それでもとてもよかったです。スペイン語の勉強をしている学生だったので、支援も受けられましたし、身近で年齢の近い先生だったので親しみもあり、多くを学ぶことができました。同じルーツを持つ支援者の役割も大事だと思うけれど、そうした学生を活用することも重要だと思います。
しかし、ボランティアだけに頼る形は、ほかの地域では難しくなってきているので、やはり生活できる程度の収入がないと自信を持って活動するのは難しいと思います。将来的にキャリアを積んでいけるような取組が必要だと感じました。質問というよりは、コメントになります。
以上です。
【佐藤座長】
それでは、横溝委員からまず質問ですので、李さんについては、コメントということですので、また後ほど皆さんで議論したいと思いますので、どうぞお願いします。
【横溝委員】
オチャンテ委員、ありがとうございました。ひまわり、市内3か所ということで、小学生の場合は、ひまわりに通級する場合は必ず保護者と一緒に通級という形になっていますので、必ずしも全員が通級できているとは限りません。
それから、9月のひまわり、第4期になりますが、既に1か所は定員オーバーということで、次の期に回ってもらうか、各学校で支援をしていただくかということ、そして、ほかの施設に行っていただくかということで、それぞれ選んでいただく形になります。
ただ、ひまわりに入れなくても、ここのフローチャートに出ています日本語教室の派遣事業、それから集中教室へは通えますので、ひまわりに行けなかったとしても、日本語の先生が来てくれて指導を受けられる場はあるような状況になっております。
以上、市内3か所4か所増やしていけば全員通えるかということは、そうではないこともありますので、今後、ひまわりの形だけじゃなく、違うような支援も考えていく必要があるんじゃないかなということを今検討しているような状況です。
それから、キャリア支援ということで、進学ガイダンスとは違う機関と連携しながら、高校進学ガイダンス等はやっておりますし、進学に向けてのキャリアについては、各学校でやっているような状況です。
高校進学率に関しましても、横浜市の場合は、県立高校等にも通う子供たちも多いので、神奈川県の交流財団等で、市内、それから県内の中学生、外国につながる子供たちの進学率等は調査をしていただいているような状況になっております。
以上です。
【佐藤座長】
ありがとうございました。
それでは、小島委員、吉田委員と続けてお願いしますね。
【小島委員】
御発表いただきまして、ありがとうございます。
私は、横溝委員に2つ質問させてください。1つは、13ページにありました横浜市の国際教室担当等の育成のことです。すばらしい研修だなと思っているんですけれども、これらをコーディネート、いわゆる研修自体をコーディネートされていらっしゃるのは指導主事でよろしかったでしょうかという御確認と、併せて、横浜市の指導主事――横溝先生をはじめですけれども――という方はどういう方が指導主事にこれまでなっていらっしゃるのかというのを教えていただけますでしょうか。横溝委員のこれまでのバックグラウンドについても、もし差し支えなければ、教えていただければと思います。
2つ目が、横浜市内ですと、近隣には外国人学校、例えば中華学校ですとか、アジア系の学校等があるかなと思うんですけども、そうしたような子供たちは公立校との行き来というのはあるのか。また、そうした学校との連携というのは何か学校でされていらっしゃるのかということを、もし御存じでしたら、教えてください。
以上です。
【佐藤座長】
どうぞ。
【横溝委員】
ありがとうございます。担当者の育成、研修を主に担っているのは、私、日本語支援担当指導主事になります。市内に日本語支援担当主事は私1名しかいませんので、いろいろな研修をうまく調整しながら、それから、講師等の派遣も調整しながらやっているような状況になっております。
このポジションになる指導主事ですが、国際教室担当者が、今まで担当した方々が常になっているかというとそうではありません。僕の前の指導主事はそうでした。国際教育担当も経験された方が指導主事になりました。そして、私自身も、今までもともとは外国につながる子供たちが多い学校で初任者として採用され、その後、担任も含めていろいろな経験をさせていただき、国際教室担当者となって、それから、市内に3名いる横浜市日本語支援アドバイザーということで、各学校にアドバイスをしながらということを2年間経験した上で、今のポジションになって、3年目ということになっております。
それから、もう1点、外国人学校とのつながりですが、横浜には中華学院とか中華系の学校が幾つかあったりしますが、その近隣学校との子供たち同士、それから学校間の交流というのは行われております。
それから、そういった学校から市内に転入、編入する場合もあったりしますので、その場合も連携を取りながら、子供たちを育てていっているような状況になります。
以上です。
【佐藤座長】
ありがとうございました。
それでは、吉田委員お願いします。
【吉田委員】
よろしくお願いします。多くの方に質問していただいたので、私からはそれぞれ1点ずつお伺いしたいと思います。
まず、横溝委員にお伺いしたいと思います。お話、大変興味深く伺いました。後のコメントのところでもいろいろお話しさせていただきたいなと思っていますが、ひとつ、今の小島委員の御質問と関連することなのですけれども、横溝指導主事は、指導主事として日本語教育の支援の部分だけを担当されているのか、ほかの業務の御担当はないのかということと、横浜市全体で指導主事は何人いらっしゃるのかということを教えていただきたいなと思います。人数については大体で結構ですので、お教えください。
それから、みなみラウンジの李さん、本当にありがとうございます。母語支援、大変重要な部分だというふうに思いますが、散在地域では母語支援を担えるような人材がほとんどいないというのが実情としてあります。今はICTも非常に進歩してきていて、AI翻訳・通訳なども進歩してきているので、そういったものもかなり活用しながら支援をしているという実態があるのですが、とはいえ、やはり人が行くことの価値というのが必ずあるというふうに思います。その部分というのはどういうところなのかというところを、ぜひ教えていただきたいなと思いました。よろしくお願いいたします。
【佐藤座長】
どうぞ。
【横溝委員】
まず、1つが、私は現在、学校経営支援課という課に所属しておりますので、学校経営支援課の業務も担っているような状況です。ただ、日本語支援担当指導主事は1人で、幾つかの事業を抱えておりますので、中心は主に日本語支援事業についてやることができているような状況になっております。
それから、横浜市は、指導主事が150名以上はいるような状況です。
以上です。
【李氏】
やはり対面で支援するといいところ、という意味でよろしいですか。
【吉田委員】
そうですね。ICTやAIが普及しても、実際にそこに人がいるということ、機械ではなく人の支援がある、対面での母語支援があるということが求められる部分が必ず残るのではないか、と思うのです。どんなに機械が発達しても、人が行くことの価値があるという部分を教えてくださいという御質問でした。
【李氏】
まず、実はみなみラウンジでも、タブレットを使って通訳をしたことがあるんですけれども、やはり機械の冷たさ、よく分かりました。いろいろな話、機械と話をしている、人間ではないという相談者の意識、すごく思っています。だから、皆さん、できれば対面で人と直接話したいという希望が結構ありました。
もう一つなんですけれども、外国人に対して、対面でコミュニケーションが取りやすいんです。手振り身振りで何となく意味を理解してくれる。どうしてもしようがないときは、書いたりとかすることでもコミュニケーションが取れるんですけれども、対面じゃないと、電話がかけにくいという外国人の方もいらっしゃいます。何を言えばいいんですか、私の日本語上手じゃないから、話を理解してくれるかどうかすごく不安で、電話をかけない外国の方も結構いらっしゃいますので、だから、できれば、外国の方からの希望もそうなんですけれども、対面でやりたいんです。何となく例えば同じ国の方が対応してくれることだけでも、自分の国の人だなってすごく安心して、いろいろな話を話してくれるので、これは私、現場から感じたいいところなんですけれども。
以上です。
【佐藤座長】
ありがとうございました。
【横溝委員】
ちょっと補足させてもらってもいいですか。
【佐藤座長】
どうぞ。
【横溝委員】
先ほど吉田委員からありました対面のよさなんですが、この母語支援事業、子供たちは勉強を教えてもらうだけじゃなく、やっぱり心の安心につながるかなと思っています。校内で不安な気持ちでいつもいるときに、やっぱり自分の母国語でしゃべってくれる人が来たというのは、子供たちは非常に安心すると思いますし、つい先日聞いた話だと、やっぱりコミュニケーションが取れなくて、母語支援者が来たときに、本当に涙ながら今までの不安を語ったということも聞いておりますので、やっぱり校内でそういった母語をしゃべる人が来てくれることが安心につながりますし、ほかの子供たちにも、やっぱり母国語のよさだったり、文化のよさも伝えられるんじゃないかな、人が来ることのよさってそれじゃないかなというふうに感じております。
以上です。
【佐藤座長】
補足していただいてありがとうございました。
それでは、議題2、ヒアリングを踏まえた意見交換に移っていきたいと思います。
今日の発表ありがとうございました。指導体制について議論するに当たって、前回の会議で、事務局から指導体制の確保・充実に関する主な検討事項を示していただきました。皆さん、参考資料4としてお手持ちだと思いますが、指導体制の在り方、日本語指導担当教師の配置やキャリアパス、日本語指導補助者(登録日本語教員を含む)や母語支援員との連携、そして、関係機関との連携という柱を示していただきました。
今、横溝委員、それから横浜市国際交流協会からの発表からも随分いろいろなヒントが得られたように思います。今回は、集住地域の指導体制の確保・充実について議論を深めていけたらと思います。先ほどの議論も踏まえながら、あるいは新たな視点からでも結構でので、いろいろな御意見をいただければと思います。挙手ボタンにてお知らせいただけるか、あるいは挙手でも結構ですので、お願いできればと思いますが、いかがでしょうか。
いかがですか。先ほど吉田委員が何か後で発言したいとおっしゃっていましたので、どうぞ吉田委員からお願いできますか。
【吉田委員】
ありがとうございます。今日は他の委員の皆様も、たくさん心に温めているものがあると思うので、短くお話しさせていただきたいと思います。
ひとつ、横浜の取組で本当にすばらしいなと思った点をお伝えしたいと思います。集住地域においても、そして、もちろん散在地域においても、大切な基本的な姿勢が横浜市の取組に示されていたと思います。
それは指導体制についてです。何が素晴らしいかというと、「子供たちが活躍するのは在籍校なのだ」という姿勢がきちんと示されている制度設計です。それがとても大切なのだということを改めて思うと同時に、そこが伝わらないと、問題が起こってしまう恐れもあると思いました。もちろん初期指導は重要で、プレクラス的なひまわり教室の存在は非常に大切だと思いますし、そこでの指導そのものについていろいろと学ばせていただきたいと思うのですが、初期指導をひまわり教室でやっていますという部分だけを聞いた他の市町村が、「それでは、事前に学校から切り離して指導すればいいんですね、それが効率的だし、いい方法ですね」というように誤解してしまうと、違う方向に行ってしまう可能性があると思うのです。
実際に私が青森に来て、関係者からいろいろ情報収集する中で聞いた、ある市の事例なのですが、小学校と中学校に外国から子供たちが転入してきた際に、非常に文化が違うということで、学校の方が「日本語がある程度できるようになってから」、「日本の学校での振る舞いがちゃんとできるようになってから」でないと受け入れられないと主張して、かなり長い期間、市の教育センターで、ぽつんと2人だけ日本語指導や日本で生活するための教育を受けなければいけない状態に置かれてしまった事例がありました。
それは、形だけ見ると、事前にプレクラスをやってから学校に受入れるということで同じように見えますが、本質が全然違っていて、基本的には排除の論理になってしまっていたのではないかと思います。少なくとも、結果的には子供たちには排除と感じられただろうなと思うのです。
それに対して、ひまわり教室のとても大切なところは、週3回はひまわり教室に来るけれども、週2回は最初からちゃんと自分の在籍校に通って、クラスの中に参加して、「この子はうちの学校の子だよね、うちのクラスの子だよね」と、先生方も学校も認識しながら初期指導が行われている。そこがとても大切な部分なのではないかと思いました。これが、まず強くお伝えしたいことです。
ほかの集住地域でも、今後プレクラスは広まっていくと思うのですけれども、その部分をぜひ大切にしていただきたい。とても重要なポイントだと思いました。
それから、先ほど質問させていただきましたが、本当に、横溝委員のような日本語教育、日本語支援の担当の指導主事が経験を積まれ、専門性を持たれているというのは、本当に貴重なことだなと改めて感じさせていただきました。そして、全国の多くの自治体でそうなっているのか、という点が、実は大きな課題であると思いました。
先ほど指導主事の数を伺って、横浜市教委で150人以上とおっしゃってくださいましたけれども、全国の集住地域でも、必ずしも当該の教育委員会にそれだけの指導主事の数が確保されているとは言えない状況があると思います。集住していても人口規模としては小さく、市教育委員会の指導主事は全部で十何人、あるいは、少なければ1桁、ということも十分あり得ると思います。そういう中で日本語指導を担当する指導主事がどういうふうに動けるのだろうかということについては、やはり支援体制を考えていくときに、重要な課題だと思うのです。人はスーパーマンにはなれないと思うので。1桁の指導主事しかいない市町村になると、1人の指導主事が幅広い分野の多くの仕事をこなしていて、日本語指導というのはその中の本当に僅か10分の1、というようなことも十分あり得るわけです。そこを考えていかないと、全国で充実した指導体制を組むことは難しいのだろうと思ってお聞きしていました。指導体制を組む際の教育行政の人材の体制、これも大きな課題になるのではないかと感じています。
そして、母語支援についてですけれども、私も神奈川県にいたものですから、本当に横浜市ではボランティアの方々に教員としてお世話になりました。本当にありがたかったと思っています。
とはいえ、先ほどお話があったように、本当にボランティアなので、ボランティアでも働ける人ということになると、とても人材が限られるという問題があります。働かなければならない生活状況の中にいらっしゃる方が多い国については、通訳支援ボランティアが入らないという事態になってしまう、それが横浜でも起こっている現実なのだということを、今回学ばせていただきました。
母語支援に入る方々への待遇の問題、これも非常に大きな問題だろうと考えています。ここの部分も、ぜひ今後提言などにもきちんと盛り込んでいく必要があるのではないかということを感じました。
以上です。ありがとうございました。
【佐藤座長】
ありがとうございました。
それでは、小島委員どうぞお願いします。
【小島委員】
本日の3人の方、ありがとうございました。新たな気づきをいただいたと思っております。ありがとうございます。
私も吉田委員にかなり近い意見で、3点と思っております。1つが、在籍学級の大切さという点です。その点を横溝委員の話から改めて気づかされたところでございます。
私も集住地域にある学校との関わりが強く、特に東海地域にある学校との関わりが、かつて教育委員会に勤めたこともあり、強いんですけれども、先日も行った小学校でも1つのクラスの中に外国人の子たち、外国につながる子供たちが在籍級の半分以上を占めていました。こうした小学校が東海地域の中では珍しくないのが実際です。日本語指導が必要な子供たちとなると少しその数は減るものの、小学校、中学校の中で、日本語を母語にする子供たちよりも、そうした外国にルーツを持つ子供たちのほうが多いというのが日常的にあるようなのが実際です。
そうした状況であるため、取り出し授業を十分に確保できないために、在籍学級の先生は、そうした子供たちを含めて在籍学級全ての子供たちが理解できるような授業づくりが求められています。そのため、やはり先生方たちへの研修の在り方というところと、プラス、採用の在り方の2つが重要になると思っております。
研修という点を考えていくと、横溝委員がおっしゃられたような、横浜市のような体制というのはすごく理想であると思うんです。でも、それをするためには、先ほど吉田委員がおっしゃったように、指導主事の力量というものが物すごく問われてくると思うんですよね。
そうなったときに、やはりその指導主事が、横溝委員のような、こうした分野に長く携わり、また、御自身も学生時代に学ばれていらっしゃって、かつ、学生時代に外国につながる児童に対してボランティアもされていらっしゃったというような背景をお持ちの方が配属されたらよいのですが、そうした状態はほぼ少ないのが実情でもあります。日本語指導が必要な児童生徒数が多い東海地域であっても、毎年、指導主事が替わるというのは当たり前のようになっているのが実際です。
ですので、教育行政の在り方というのもすごく重要であると思うのと、併せて、教員採用の部分ですよね。というところをもう少し工夫できないのか、強く願うところです。
実際、今、東京外国語大学におりますと、多言語の言語を学び、活用できる力をもっている学生が私の周りは物すごく多いです。そうした学生たちがこうした外国につながる子どもが多くいる学校現場で働きたい、活躍したいと思うものの、実際、日本語指導が必要な児童生徒の指導に携わる方々の姿を見てしまうとボランティアでの雇用が多いために、教員を諦めてしまうような若者の姿が多々見受けられます。ですから、そうした若者たちが活躍できるような仕掛け、そして、日本語指導が必要な児童生徒を専門とする職業の募集についてフラッグを立ててもらうような採用というものがもう少しできていくことで、若者たちの夢というか、目標というものが少し変わっていくんじゃないのかなというふうに思ったところです。
最後ですが、先ほど母語支援員さんの在り方というところで、横浜の例をご紹介いただきました。私、東海地域にいますと、本当に母語支援員さんの重要性というのを、先ほど李コーディネーターがおっしゃられたとおりに思います。私も教育現場にいて、教育委員会にいたときにたくさんお世話になって、助けていただきました。
そうした方が東海地域の場合、すごくたくさんの方が雇用されているんですよね。活躍してくださる母語支援員さんたちがいらっしゃることによって学校を支えられているものの、この方々の身分は不安定であるために、どうしても生活があるものですから、あそこの工場で派遣会社で時給が100円多くなったとか、そんなような話が出てしまうと、ばーっと人が動いてしまうというのが実際でございます。皆さん、子育て中の方たちも多いのが母語支援員さんたちの、もちろんそういう方だけじゃないですけれども、生活者でいらっしゃるという視点がもう少しできるといいなと思います。
そうした母語支援員さんたちに、バックグラウンドを伺ってみると、それぞれの御出身国で教員免許を持っていらっしゃるですとか、教職、学んだんですとか、そんな方たちもいらっしゃったりするものですから、そうした方たちが活躍できるような仕組みがもっとできたらいいし、その方たち自身もキャリアが積めるような仕組みができていったらいいなというふうに思います。
以上になります。
【佐藤座長】
ありがとうございました。
それでは、バトラー委員お願いします。
【バトラー委員】
ありがとうございました。すごく勉強になりました。外国人の数はどんどん増えていくと思いますので、これからいろいろと学びたいと思っている地域の方々にとって、とても参考になるような情報が満載だったと思います。
私もアメリカで長い間ESLの子供たちを見てきていますので、その観点から3つほどコメントさせていただきたいなと思っています。
1つは、日本生まれの子供のことです。先ほど浜田委員のほうから、ゼロ歳時から日本、つまり日本生まれの子供たちが増えてきているというお話がありましたけれども、アメリカの場合も、ESLに在籍している子供たちの過半数、大半はアメリカ生まれというふうに言われております。中学校、高校生のESLに至っても大半がアメリカ生まれです。日本生まれの子供たちは、やはり日本語ゼロ状態で来た子供たちとはまたちょっと違ったニーズがあるというふうに考えられます。
ただ、難しいのは、日本生まれの子供たちの場合、話す力が強いということもありますし、日本の生活に慣れているということもありますので、彼らのニーズというのがなかなか見えにくい点です。それから、ニーズが非常に多様化しているというところの難しさもあると思います。日本語ゼロで学校に入ってきた場合は、日本語の上達度というのがはっきり目に見えるので、比較的分かりやすいのですが、恐らく数がこれから急速に増えていく日本生まれの子供たちは、やはり担任の先生や教科の先生が支援していかなければならない部分というのが非常に大きくなってくると思います。ですから、彼らのニーズを先生方がシェアできるようなシステムづくりと先生方への支援が必要になってくると思います。先を見据えた形の対策を考えていくことが絶対に必要だと思います。
2点目は、母語支援のことです。アメリカでもボランティアに頼るという傾向がありまして、ボランティアの地位であるとか、お給料の面であるとか、どうやってこうしたボランティアの人たちを支援していったらいいのかということは、長い間、議論されている大きな課題であります。
その一方で、一つ忘れてはいけないのは、友達の力とか、それから先輩の力とか、子供たちの横のつながりというのを有効活用していく方法の模索です。友達は特に心理的な部分での役割が大きいと思います。多様性を受け入れてくれる友達の存在は重要です。それから、ちょっと前に日本に来ている先輩のような友達は、母語支援だけでなく、いろいろな意味で学校生活に慣れるための橋渡しをしてくれるわけで、重要な存在です。また、先に日本に来た友達のほうも、ほかの友達に教えるという機会を持つことによって、自信をつけることにもつながります。担任の先生がその子供たちの言語を話していなくても、子供たちのネットワークというのを上手に使いながら彼らを支援していくということもできると思います。ぜひ子供たちの横のつながりの力を有効活用していくアイディアを先生方で共有する、または研修等でサポートすることが重要だと思います。
3つ目は、ちょっと今日は話題に出なかったんですが、私はアメリカの状況と日本の状況が一番違うなと思うのは、高校受験だと思っています。アメリカは高校受験がありませんので、少し長い目でいろいろ見ることができるんですが、日本の場合は高校受験というものがありますので、そこが大きなネックになっていく。いろいろな意味でやりたい支援ができなくなってしまうというようなケースもあるのではないかというふうに思います。
都道府県、地域によって高校受験のシステムが非常に違っていることも、エクイティーの問題と引っかかってくると私は常々思っています。これは簡単にできることではないかもしれませんが、受験のシステムを何らかの形でもっと均一化していく、分かりやすい形に整えていくことが大切だと思います。地域差をできるだけ減らしていくということが非常に重要なのではないかなと思います。 以上です。
【佐藤座長】
ありがとうございました。
それでは、徳永委員どうぞ。
【徳永委員】
ありがとうございます。横浜市の事例について、特に教育委員会が率先して教員の育成含めて組織的に支援体制をつくっていらっしゃるということで、様々なヒントをいただきました。また、横浜市の方針として、ストレングスアプローチを重視し、一般学級でも外国につながる生徒たちが活躍できるように、強みを引き出せるように強調している点も非常に重要だと思いました。ありがとうございました。
私からは、特に校内連携と学校外連携というところで幾つかお伝えしたいと思います。これまで様々な学校の先生たちと関わる中でよく聞いたのが、国際教室や日本語教室担当の先生が本当に孤軍奮闘し、一人で頑張っているということです。一部の熱心な教員に支えられる形で外国人生徒の教育が進んでいるということをよく聞いておりました。
そういった中で、やはり持続的な体制をどうつくれるのか。校務分掌に位置づけていくとか、管理職のリーダーシップとか、組織的な体制づくりの必要性があるということを報告書の中でも強調していただきたいと思いました。
今回、参考資料の中でも、関係機関との連携が効果的に機能するための必要な要素は何かと書かれてありました。以前、外国につながる生徒が在籍する高校の教員を対象とした調査に参加しましたが、そこで関係機関との連携が取れている学校の特徴について分析をしていくと、管理職のリーダーシップとつなぐ役割としてのコーディネーターの役割というのが重要だということが分かりました。
1つ目の管理職のリーダーシップについては、やはり管理職が多文化共生の学校づくりを目標やビジョンとして掲げていて、その中で委員会をつくったり、教員と丁寧に対話をしていったり、教員文化を醸成していくということを率先してやっていらっしゃると、大分違うことが分かりました。
また、学校外連携については、例えば、学校運営協議会の委員に、外国人生徒教育を専門とする研究者やNPOの専門家、あるいは、先ほど受験の話もありましたけれども、在留資格などと関係して法律の専門家を入れて、そういった外の人たちが学校の運営の中に関わっていける体制づくりを積極的にやっている学校というのは、学校内体制もしっかりしていきますし、支援が充実化していくということが調査でも分かっています。
一方で、管理職の理解とか支援があまりない学校は、先生たちが孤立化していき、個人的に何とか学校外の人を探しても、その先生が例えばほかの学校に異動されると、そこで支援が止まってしまうということもありますし、学校全体の取組にならないという課題がみられました。管理職の理解が得られないので、連携がなかなか難しいですという声もよく聞きましたので、多文化共生に理解のある管理職の配置とか、その研修、先ほど横浜市の事例にもありましたけれども、全ての管理職に外国人児童生徒教育についてきちんと伝え、どのように支援体制をつくっていけるのかをきちんと考えていくことを強調する必要があると思います。
2つ目のコーディネーターですけれども、学校に常駐するコーディネーターがいると、学校と学校外にある、例えば専門性を持つNPOですとか、あるいは、外国人集住地域ですと、外国人のキーパーソンとコーディネートがつながっていたりするので、学校と外国人コミュニティをつなぐことができます。自治体によっては、教育委員会がそういったコーディネーターにきちんと予算をつけて学校に派遣して、コーディネーターが学校内の連携を行って、学校外とつないでいくことを率先してやっていくことが重要です。先生方、本当に忙しいと思いますので、連携をするというのも、連絡調整などで手間がかかってしまい、負担になってしまうと思いますので、そういったつなぐ人材の育成をして、つなぐ人が学校に入ってやっていくということも、連携体制をつくる上では非常に重要だと思います。様々なステークホルダーをつなぐ専門性を持つ人を活用していくことが重要です。
最後に、先ほどメンタルケアとか、心のケアの重要性の話があったと思いますが、高校の調査の中でも、貧困とか、あるいは子供たちや保護者のメンタルヘルスの課題というのは多くの学校で聞かれました。そういった子供たちのニーズとか課題が複雑化する中で、福祉的な支援、ソーシャルワーカーとの連携ですとか、あるいは心理的支援、スクールカウンセラーとの連携というのは非常に重要になってくると思います。
ですので、日本語講師とか母語支援員だけでなく、スクールカウンセラーとか、ソーシャルワーカーなどの専門人材も入れた連携体制をどうつくっていけるのかという、もう少し広い視点から議論していく必要があると思いました。
私からは以上です。ありがとうございました。
【佐藤座長】
それでは、高階委員どうぞ。
【高階委員】
私のほうから2つお伝えしておきたいと思いますけど、1つは、今日の話でもあったと思うんですけど、そういう外国にルーツのある子どもたちに関わりたいと思っている先生というのは少なからずいるんですけど、やはりどうしても採用の段階でそういった学校に配属されるか分からないとかもありますし、どうしても教科で採用されますので、そういった担当の分掌につけるとは限らないということで、どうしても教諭になることをちゅうちょしてしまっている人が少なからず大阪府にもいるのが現状かなと思っています。
なので、これ、前回の場でも言ったかもしれないですけども、やっぱり登録日本語教員資格というのを、教諭でありながら取得しやすい仕組みというのが一つあれば、ありがたいかなというのを思います。それが1点目です。
もう一つは、これ、小島委員もおっしゃっていましたけど、いわゆる母語支援員、横浜市の発表でもありましたけれども、大阪府も結構似たような状況でして、なかなか母語支援だけでは生活が厳しいというのが現状としてあります。
でも、やはり今日の発表にもありましたように、大阪府もそうで、母語支援者の存在ってすごく大きいんですね。やっぱり母語を話せる人が週1回でも来てくれるだけで子供たちの表情は変わりますので、それだけで本当に心理的に安心できるという、本当に大きいところがありますので、なので、ここの財源、やっぱりそこの質を担保するためにも、雇用形態とか、そこは国だけじゃなくて、もちろん各自治体も努力しないといけないとは思うんですが、そこの雇用形態の改善ということも課題であり、今後議論していかなければいけないというところは押さえておく必要があるのかなというふうに感じました。
2点、以上でございます。
【佐藤座長】
ありがとうございました。
オチャンテ委員どうぞ。
【オチャンテ委員】
ありがとうございます。恐らく現場では、外国人が集住している地域などでは子供たちが非常に増えてはきている。多国籍で様々な課題を抱える子供たちがいる中で、日本語指導が十分に行われていないことが課題となっているのだと思います。 最近、ICTの活用するという視点、いろいろ話が出ているんですけど、やぱりオンラインやオンデマンドによる日本語指導の動画コンテンツを、例えば小学生向けとか、中学生向けなどの教材として充実・整備する必要もあるのではないかなと考えています。もちろん、現場の先生を完全に置き換えるのではなく、あくまで先生方をサポートするために活用するという視点が大切です。オンラインや動画だけに頼るのではなく、子供たちの数が増えている状況に応じて、現場の先生たちが手軽に利用できる短い動画コンテンツや、オンデマンドで活用できる教材を整備・開発することも重要なのではないかなと考えています。
例えば、5人、6人の子供を同時に見なければならない場面で、一人一人に十分な指導ができない場合、10分程度の動画を見ている間に別の子どもの指導を行うなどの活用も考えられます。こうした教材を手軽に、例えばプラットフォームに載せて、誰でも利用できるような形にしていく必要もあるのかなと思います。
母語支援員についても、必要に応じてオンラインによる支援体制を整えることが必要ではないかと思います。その際、やはり関係性が非常に重要になるため、関係性を築くためには、どこかで対面を取り入れることも大切です。例えば、最初は対面で会い、途中でもう一度は対面を挟み、その後はオンラインに切り替えるなど、毎週通うのが難しい場合でも、先生との交流を通して、こういう先生なんだと子供が分かるようにすることも必要なのではないかなと思ったりはしているんです。そのためにも、母語支援員が安定した生活が送れるよう、給与面などの整備も求められると思います。
先ほど出ましたが、子供たちが自分の強みに気づき、それを生かせるようになるためには、先生方の言葉かけや意識が非常に重要です。また、先ほどバトラー委員のコメントにもありましたが、やはり周りの子供たちやクラス全体による理解と受入れが欠かせないわけです。子供たちが所属している学級を自分の居場所として感じられるようにする、つまり、ここは自分の場所なんだと気づかせるような学級づくりが、非常に重要であると考えています。
先ほども述べましたが、やはり心理的な支援をもっと重点を置いていく必要なのではないかなと思います。先ほどの徳永委員のコメントにもありましたが、やはりみんなで連携していくことが大切です。現在、学校にはソーシャルワーカーやスクールカウンセラーなど、さまざまな専門職がおり、そうした人々を巻き込みながら子供たちを支援していく体制づくりが求められます。
しかし、そのためにも、子供たちがそうした背景や課題を抱えていることを、現場の先生に研修などを通してより伝えていく必要があるのではないかと思います。もちろん、日本に来てからだけでなく、日本に来る前にどのようなバックグラウンドがあったのかについても。先生方が理解できるような研修の機会を設けることが必要ではないかと考えています。
やはり未就学の子供たちは、そのまま小学校に入学すると、分からない、できないという状況がすぐ表れてしまうことがあります。もう少し早い段階で語彙力を増やすような活動ができないのかと、いつも感じていますが、実際には対応が遅れてしまうことが多いです。小学校3年生頃になって初めて、こんなこともできない、大変な状況になっていると気づくケースもあります。そうなる前に、幼小の接続、つまり幼稚園、保育園と小学校の接続の中で、日本語の学習や日本語に触れる機会についても併せて考えていく必要があるのではないかなと思います。
実際に今、現場の子供たちを見ていると、平仮名や漢字の書き順が正しくできていない子供が多く、漢字については、以前からも指摘されているように、文字として認識できていない様子が見られます。こうした点についても、本当にもっと早い段階から取り組む必要があるのではないかと強く感じており、懸念しています。
以上です。
【佐藤座長】
ありがとうございました。
それでは、浜田委員どうぞお願いします。
【浜田副座長】
浜田です。ありがとうございます。もう委員の先生がたくさん言ってくださったので、重複しますけれども、2点、お話しさせていただきたいと思います。
1点目は、先ほど管理職研修のことを質問させていただいたんですけれども、やはり管理職の先生方の問題がすごく大きいんじゃないかということを改めて感じております。今まで管理職の理解がなくてみたいな、割とふんわりした言い方で管理職の問題について議論されてきたんですけれども、今日の横溝委員のお話を聞きますと、やはり学校の中で、どの先生に日本語教室を担当してもらうか、国際教室を担当してもらうかと。そのことを通じてどうやって教員の力量をつけていくかというのは、やっぱり明らかに学校経営の問題ですし、それから、地域連携の問題にしましても、地域に対して学校をどう開いていくかということは、外国人の子供に限らず、今、全ての学校の経営課題であるというふうに思うんですね。
ですので、外国人に関わる部門だけではなくて、学校経営の経営力を高めるという観点からも、ぜひ管理職の皆さんの御理解ですとか、力量のアップということで働きかけをお願いしたいというふうに改めて思いました。
それから、2点目は、キャリア形成の問題です。これも何人かの委員、御発言ありまして、例えば、小島委員が指導される学生さんのように専門性の高い方が教員免許を取って、学校に関わってくださるということも必要ですし、それから、高階委員おっしゃったように、既に現職の先生方が登録日本語教員の資格を取って専門性を高めていただくということも大事なんですけれども、やはり横溝委員がお話しになったように、日本語指導をした人が次の年には担任を持ったり、あるいは、最終的には管理職になるというところまで含めて、人事が動いていくということが大事だというお話があって、私はそれがすごく大事なことなんじゃないかなというふうに改めて思いました。
それこそそういった方が将来的に行政に入ってくださるとか、管理職になるということが大事ですので、そういった形で、キャリア形成についても改めてこの検討事項にも入れていただきたいというふうに思いました。
以上です。
【佐藤座長】
ありがとうございました。それでは、野口委員どうぞ。
【野口委員】
大変貴重な御発表、ありがとうございました。
私から、特別支援と関連してお話しできたらと思っています。必要な人的資源を追加することはとても大事だと思います。一方で、皆さん御存じかもしれませんが、特別支援学級、特別支援学校に在籍する子どもの数が近年すごい勢いで増加しています。現在の特別支援教育のように、学びの場を分けることによってそこに人を配置する仕組みは、子どもたちの学びの場をどんどんわけてしまう可能性、共に過ごす機会がどんどん減ってしまう可能性があることを私たちは自覚しておかなければと思います。
そういった観点で吉田委員やほかの委員もおっしゃっていたとおり、日本語指導はマジョリティーに合わせるための支援や指導ではないという共通理解やほかのみんなと同じように同じことができるようになったら通常の学級に移動をする、ということではなく、最初から通常の学級のメンバーであるということが、この体制整備をしていく上で、前提として強調しておくべきことだなと思います。
むしろ多様な子供がいることが、全体の学びの質向上につながるということを共通理解していくことが重要なのではないのかなと思います。
私が伴走している都内の学校でインクルーシブ教育に取り組んでいる通常の学級の先生がいらっしゃって、ネパールから転校生が2人来たそうです。もともとインクルーシブな学級づくりをされている中だったこともあり、子どもたちから「その子たち2人とも、絶対うちの学級に来たほうがいいよ」って声があがったそうです。「1人だけだったら絶対不安だから、2人一緒に来たほうがいいよ」と。2人も同じクラスに日本語がわからない子がいたら大変だから分けたほうがいいとか、そういう話になってもおかしくない。でも、そうじゃなくて、その子たちが2人一緒にうちのクラスに来るべきだって、子供たちからそういう言葉が上がってきたと。先生としては、二人の転入により、ほかの子たちも含めて学びの質が上がっているという実感を持たれているということも聞きました。
これは補足ですが、次期学習指導要領の改訂に当たっては、特別活動の位置づけとして、民主主義の担い手を育み、共生社会を実現する基盤を提供する領域として明確に位置づけていくのはどうかという案が今出ています。例えば学級活動について、学級内の多様性を前提に、共生社会の実現に向けた納得解を形成しようとすることの重要性というのが位置づけられていく方向性が提案されているところです。
そういった流れも踏まえた時、もう一つポイントとなってくるのが、縦割りを超えた連携のための研修や体制整備だと思っています。ここまで私もこの会議に参加させていただく中で、日本語指導が必要な子供たちに対する支援・指導と特別支援がかなり重なってくると思っています。土台となる部分については、一緒に研修をしていくというのがいいのではないでしょうか。例えば、通常級の担任の先生へ研修について、特別支援、日本語指導、不登校支援、などカテゴリー別に分けた研修を最初からするのではなくて、土台となる多様性理解やなぜインクルージョンが重要かという観点、通常の学級で多様な子どもがいることを前提にどのような学級づくりや授業づくりができるか、という点でのゼネラルスキルを横断的に学べる機会をつくっていくのがいいのではないでしょうか。
管理職に関しても同様かと思っています。カテゴリーごとに最初から分けて研修が増えていくとなると、先生たちの負担感につながったりすると思うので、そういう意味でも、重なる部分、例えば、多様性を前提とした学校経営や外部との連携の仕方など、一緒に今後研修していけるようにするのがいいのではないのかなと思います。
さらに特別支援教育コーディネーターと国際教室を担当されている先生も一緒に研修することも可能かと思います。横断的に多様性に関するゼネラルスキルと、各ニーズに特化したスペシャルスキル、さらにその上で障害×外国籍、不登校×外国籍などの複合的なニーズに対する高度なスキルみたいな形で整理をしていき、教職員がスキルアップしていけるような方向性を示していければいいのではないのかなというふうに思いました。
最後1点、皆さんおっしゃっていた母語支援員に対する雇用状態改善について、私も大きく賛同します。私も、小学校6年生で英語が全く分からない中、アメリカの現地の学校に行ったときに、ESLの先生が日本語でしゃべりかけてくれたのがめちゃくちゃうれしかったのを覚えています。その先生は「こんにちは」しか言えなかったんですけど、それだけでも物すごくうれしかったし、すごく心理的に安心したということがありますので、ぜひいろいろな自治体でそれが可能になるように、国としても自治体としても、安定した雇用というところを目指していけるといいのではないのかなと思います。
長くなりました。以上です。ありがとうございました。
【佐藤座長】
ありがとうございました。
齋藤委員からチャットでコメントが入っているんですが、事務局で紹介しますか。お願いできますか。
【片桐調査官】
事務局のほうから紹介させていただいてよろしいでしょうか。
【佐藤座長】
お願いします。
【片桐調査官】
齋藤委員から御意見をいただいておりますので、紹介させていただきます。
「文科省の作成しております手引でも示唆されていますが、県、市区町村、学校単位の体制及びその関係について、もう一度実態を捉えた上で検討が必要ではないかと思います。
また、学校内の組織体制づくりの問題と、地域支援活動との連携や、ネットワークの問題と、それぞれに議論する必要もあると思いました。
その上で、教育内容と体制との関係を念頭に置いた検討が必要ではないかと思われます。特に校内組織体制に関しては、学校の教育課題として明確に打ち出して、校内の校務分掌にも位置づけることが必要だと思いますが、その仕組みづくりには、取り出しの指導と入り込み指導、在籍学級での教育と日本語学級等での教育内容との連続性、また、日本語指導と他の教育活動との関連などが、学校内の組織の在り方をも規定するのではないかと思われます。
日本語指導担当教員の学校内での役割や母語支援員の方の関わり方に、より実効性や機能が発揮されるように、体制、組織を形成することが求められると思います。どのような教育を行うか、ゴールをどこに置くか、どのような資源、ツールを利用して教育を行うか等によって、担当者も、担当時間も、担当者間の組織化の仕方も異なるようになるでしょうが、改めて在籍学校全体の教育と取り出し等による指導と関連をつけていくのも問われると思います。さらに実践や経験の共有、蓄積のための体制づくりにも力を入れていくことを期待したいと思います。
学校間の横のつながりです。研修で参加する教員の専門性を高めるというのみならず、自治体として教育研究や教材を開発する仕組みも併せて検討が必要ではないかと思います。
最後に、集住地域と散在地域を別途検討するということですが、組織体制の違いがあったとしても、子供たちに提供すべき教育内容、質は、地域に関係なく保障する必要があると思われます。日本生まれで中学3年生まで必要に応じて支援を受けている児童生徒と、来日直後の数十時間の支援しか受けられない児童生徒が、集住か、散在かという地域間の格差によって生まれているという状況を解消することについて、どこまで踏み込んで今回の検討を行うのか。すぐの解決は難しいとしても、現場、自治体、地域の努力だけでは難しいと考えられ、国として制度、仕組みとしてどう整えていくのか。どうしてもこの点は問われるかと思います」。
以上でございます。
【佐藤座長】
ありがとうございました。
最後に、横溝委員いかがですか。今日、発表ありがとうございました。横浜市の事例も踏まえまして、今までの指導体制の確保・充実に関して何か御意見があれば、最後に承りたいと思いますが、いかがですか。
【横溝委員】
皆さん、本当にありがとうございました。最後の皆さんのコメントを聞きながら、改めて管理職への研修という部分を、もう少し厚みを持っていく必要があるのかなというふうに感じております。
それから、途中お話をしたんですが、特別支援教育コーディネーターの研修も、やっぱりこの先、国際が特にない学校は、その方々が窓口になっていくということも十分考え得るので、野口委員もありましたけど、そこを含めて外国、特別支援関係なく、大きな枠組みで研修しながら受入れ体制を整えていけたらというふうに思っております。
そして、最後になりますが、今日、ラウンジの日下館長と李さんが来てくださいましたが、母語支援の面では、子供たちへの指導・支援を非常に支えていただいている。しかし、その部分で、ボランティアというところでやっていただいているということもありますので、そこは横浜市教育委員会としてはもっともっと考えて、大切な存在だということでさらに連携に努めていきたいなというふうに常々思っていますので、また今後も検討していきたいと思っております。
以上です。ありがとうございました。
【佐藤座長】
ありがとうございました。
今日、横浜市の事例を横溝委員から御発表いただきました。集住地域ということでしたけれども、今まで個々のいろいろな支援体制については検討してきたと思うんですけれども、子供の学習とか発達の視点から、改めて支援体制の系統性や体系性というところについてかなり御示唆をいただいたと思います。最終的には在籍学級というところを視点に置きながら、一体どうやって系統的にこの子供たちの指導体制をつくっていくのかということについて、横浜市からいろいろな御示唆をいただいたんじゃないかなというふうに思いました。
校内体制については、皆さんから御意見がいろいろ出ていましたので、それを事務局で意見をまとめていただければと思います。浜田委員のご指摘にありましたけど、学校経営としての校内体制だけでいいのか、あるいは、違う柱が要るのかどうかも含めて議論を深ける必要があります。リーダーシップの問題は、校長、あるいは副校長など管理職のリーダーシップの内実について検討する必要があると思いました。
また、校内体制の整備の中で、徳永委員から出てきた日本語教育コーディネーターなどの配置、これも話としては出ているんですが、どういうふうにして財政的な措置を含め位置づけられるかということについて、少し議論が必要だと思いました。
それから、日本語指導担当教師の配置についても、皆さんからいろいろな意見をいただきましたので、事務局でまとめていただければと思います。横浜市のように、教員の数が限られている中で効果的な配置の在り方、一体どのようにして効果的な配置ができるかということを検討する必要があると思いました。
それから、母語支援員は、李さんの発表にもありましたように、大変重要であるということは我々重々承知しています。しかし、そのための財源をどのように確保していくのか。そのためには何が必要なのか、どういう議論が必要なのか、あるいは、どういうエビデンスが必要なのか、こうした点を議論する必要があります。ただ単なる必要性、重要性だけではなくて、そこも含めた議論が必要だと思いました。
最後、関係機関との連携についても皆さんからいろいろな意見が出てきましたので、皆さんの意見を次回までにまとめていただいて、改めて整理していければと思いました。
ただ、なかなか関係機関との連携がうまくいかないということもよく聞きますので、何が原因なのか。例えば、時間と労力が不足しているとか、情報が不足しているとか、それから、運営の不安、例えば個人情報の問題など、いろいろな問題を聞きますので、その辺の問題も併せて、この連携の在り方について今後議論をしていければと思います。
改めて、横溝委員、それから、みなみ市民活動・多文化共生ラウンジの日下様と李様、本当にありがとうございました。お礼を申し上げたいと思います。
ちょうど12時になってまいりますので、本日の議論はここまでとさせていただきたいと思います。この後、事務局のほうで今日の議論をまとめて、改めて皆さんに提案していきたいと思いますので、よろしくお願いしたいと思います。
事務局より連絡事項があれば、お願いいたします。
【片桐調査官】
皆様、今日も積極的な御意見をどうもありがとうございました。こちらのほうで整理させていただければと思います。
それでは、次回第7回の会議につきましては、9月24日水曜日の10時から12時を予定しております。引き続き指導体制の確保・充実について御議論いただきたいと思います。
以上でございます。
【佐藤座長】
それでは、本日の会議、これにて閉会いたします。どうも皆さんありがとうございました。
―― 了 ――
総合教育政策局国際教育課