今後の幼児教育の教育課程、指導、評価等の在り方に関する有識者検討会 (第2回)議事録

1.日時

令和6年2月13日(火曜日)10 時 00 分~12時 00 分

2.場所

WEB開催(傍聴はYouTube Live上のみ)

3.議題

  1. 幼稚園教育要領、保育所保育指針、幼保連携型認定こども園教育・保育要領に基づく教育活動の実施状況、成果及び課題の検証について
  2. その他

4.議事録

【無藤座長】  それでは、定刻となりましたので、ただいまから今後の幼児教育の教育課程、指導、評価等の在り方に関する有識者検討委員会の第2回を開催いたします。本日は御多忙の中、御出席いただきまして、ありがとうございました。
 それでは、まず、本日の会議の資料等につきまして、事務局より御説明をお願いいたします。
【横田幼児教育企画官】  本会議は、Zoomを用いたウェブ会議方式にて開催をさせていただきます。ウェブ会議を円滑に行う観点から、大変恐れ入りますが、御発言時以外はマイクをミュートにしていただくようお願いいたします。カメラにつきましては、御発言時以外も含め、会議中はオンにしていただきますようお願いいたします。委員の皆様には御不便をおかけすることもあるかと存じますが、御理解のほどよろしくお願いいたします。
 また、本日は傍聴の御希望をいただいた報道関係者と一般の方向けに、本検討会の模様をYouTube Liveにて配信をしております。加えて、報道関係者の方々から撮影及び録音の申出を頂戴しており、これを許可しておりますので、あらかじめ御承知おきください。
 画面共有いたします。本日の会議資料については、議事次第にございますとおり、資料1から資料6まで、加えて、参考資料1から3となっております。よろしくお願いいたします。
【無藤座長】  それでは、早速、議題1に入りますけれども、本日は前回の第1回の本有識者検討委員会について、御了承いただきました主な論点というのが参考資料の1ですけれども、その1、幼稚園教育要領、保育所保育指針、幼保連携型認定こども園教育・保育要領に基づく教育活動の実施状況、成果及び課題の検証というところにつきましての意見交換をさらに進めたいと思います。
 本日は、4名の委員の方に発表をお願いしてございますけれども、幼児教育施設をお持ちの先生方であります。3要領・指針に基づく教育活動の実施状況、または成果、課題についての御発表をいただきます。
 まず、初めに、事務局より説明を行いまして、その後に4名の委員の方に御発表いただき、そして、さらに、その後、皆様方との意見交換を行いたいと思います。意見交換の時間がどのぐらい残せるか分かりませんけれども、できる限り、半分以上は無理かな、ある程度の時間を取りたいと思っておりますので、よろしくお願いいたします。
 それでは、事務局より資料の説明をお願いしたいと思います。
【横田幼児教育企画官】  まず、参考資料1を御覧いただければと思います。
 ただいま無藤座長からお話があったとおり、本日は前回の有識者検討会で御了承いただきました、こちらの論点のうち、1番の3要領・指針に基づく教育活動の実施状況と成果及び課題の検証について御審議をいただきたいと思います。具体的には4名の委員の先生方からの御発表などを踏まえまして、示された課題などについて、どのような対応策や支援策が考えられるのか、また、今後さらに期待されることなどについて、御意見を賜れれば幸いです。
 次に、参考資料2を御覧いただければと思います。前回の第1回におきましても、園での実践については、委員の先生方から多くの御意見をいただいたところです。詳細は資料の2ページから3ページを御覧いただければと思いますが、園の先生方が改訂の趣旨を踏まえて、創意工夫を凝らしつつ、教育課程や指導計画を作成し、実践に取り組んでいただいていることや、また、その過程においては、育みたい資質・能力や、幼児期の終わりまでに育ってほしい姿の理解や具体的な言語化、さらには活用方法などに課題があること、そしてさらに、コロナ、少子化などが与えた子供への影響や保育の在り方などについて御意見をいただきました。
 それでは、資料1を御覧いただければと思います。国では、園の先生方などの実践に御参考になるものとしては、このように要領や解説、指導資料を作成し、ホームページで公表しているところです。さらに、様々な研修や講演などの機会におきましても、御説明をさせていただいております。
 例えば、指導計画の作成については、このような資料などを用いまして、教育課程に基づいて指導計画を作成し、実際に保育を展開していく流れのイメージを御説明しています。左の図を御覧いただければと思います。教育課程の編成や指導計画の作成、幼児の活動の展開など、あらゆる場面におきまして、幼児期の終わりまでに育ってほしい姿を念頭に置きながら、上の3つに示しております幼児の姿や周囲の環境、教師の願いを踏まえて行うこと、そして、指導の過程を評価し、改善を図っていくことが大切であるとしています。
 右の図を御覧いただければと思います。各園におきましては、長期、短期の指導計画のそれぞれの特徴を踏まえて、実情に即して幾つかの期間の指導計画を組み合わせることが求められています。指導計画の作成に当たっては、幼児の発達に必要な体験を確保するため、見通しを持ちながら目の前の幼児の姿に沿って指導すること、つまり、計画性と柔軟性を併せ持った指導を行うことが大切であるとしています。
 長期の指導計画を作成する際には、その年の園における園の行事や園内外の自然環境、地域との関わりなどといった幼児の生活全般を見通しながら、時期ごとの幼児の姿を予想し、どのように育ってほしいかという教師の願いを踏まえて、ねらいや内容を設定することが求められます。
 また、短期の指導計画のほうでは、幼児一人一人の発達に必要な経験が得られるように、より具体的な指導内容や方法を考えて作成することが求められています。幼児は発達の過程や興味関心など、一人一人異なるため、短期の指導計画になるほど、幼児一人一人が環境にどのように関わって、どのような活動を見いだしていくか、また、その活動でどのような姿が予想され、経験を深めていくのかなどについて、教師が幼児の言動を理解して、その様子を基に具体的に計画していくことが大切であるとしています。
 また、それぞれの作成段階におけるポイントについてもお示しをしています。例えば資料の下のほうになりますが、保育の展開のところでは、実際の保育展開においては、幼児の心を揺り動かす環境が多種多様であることや、予想を超えて様々に展開することがあるため、その場合には、幼児が自ら発達に必要な経験が得られるように、環境を再構成することが必要であること、また、保育の振り返りを行うに当たっての視点などについてお示しをしているところです。
 最後に、育みたい資質・能力や、幼児期の終わりまでに育ってほしい姿について、要領や解説などでは、次のとおり示しているところです。便宜上、幼稚園教育要領で御説明させていただきますが、幼保連携型認定こども園教育・保育要領や保育所保育指針においても同様の趣旨の規定がなされているところです。
 まず、育みたい資質・能力については、育みたい資質・能力を踏まえつつ、教育目標を明確にして、教育課程を編成して教育を行うことが必要であると定められています。また、幼児期の終わりまでに育ってほしい姿については、教師が指導を行う際に考慮するものと定められておりまして、その際の留意事項としては、到達すべき目標でないことや個別に取り出されて指導されるものではないこと、全ての幼児に見られるものではないことや、3歳児、4歳児の時期から幼児が発達していく方向を意識して、それぞれの時期にふさわしい指導を積み重ねていくことが必要であることなどが示されています。
 また、幼児期の終わりまでに育ってほしい姿を踏まえて教育課程を編成することが定められておりまして、その際には、幼児期の終わりまでに育ってほしい姿を目標や目的としたり、教育課程や指導計画に位置づけたりするものではないということが示されております。
 最後に、小学校教育との接続に当たっては、幼児期の終わりまでに育ってほしい姿を共有するなど連携を図り、幼稚園教育と小学校教育との円滑な接続を図るよう努めることが定められておりまして、幼稚園と小学校の教師がともに幼児の成長を共有することを通して、幼児期から児童期への発達の流れを理解することが大切であること。そして、互いの幼児観や児童観について意見交換をしたり、保育参観や授業参観を通じて互いの良さや違いを実感したりすることが考えられることなどを示しているところでございます。
 事務局からの資料説明は以上となります。よろしくお願いいたします。
【無藤座長】  ありがとうございます。今、すみません、もたもたして、ともかく議事進行しながらやります。今、御説明いただきましたので、次に、4名の委員の皆様の御発表をお願いしたいと思います。尾上委員、高橋委員、鍋田委員、渡邉委員の順番で、お願いしたいと思います。
 それでは、尾上委員、よろしくお願いいたします。それで、非常に短いですが、5分ごととなっておりますので、よろしくお願いいたします。
【尾上委員】  全日本私立幼稚園連合会、尾上正史と申します。どうぞよろしくお願いいたします。
 貴重な時間ですので、早速、恐れ入りますが、文科省のほうで画面の操作をお願いしてよろしいですか。私、資料2だと思うんですけれども。
 タイトルはこのとおりでございまして、本日、そういった発表ということで、次のページをお願いいたします。
 今回、私が発表するということは、本有識者会議の1-2の幼児教育の特性等についてというところで触れていきたいと思っております。前回の改訂から5年が経過いたしまして、いろいろなことが現場のほうでは行われておるんですが、大きくこの2つを掲げました。
 コロナということによって、ふだんできるということができなくなってしまって、そういったことがどういう影響を受けたのかということで、特に行事において、ふだんの行事ができなくなってしまった。しかし、そのことによって本来行事の意味、何のために行事をやってきたのかという本質を問い直す機会だったと感じております。
 2点目が、私ども、公開保育、関係機関の幼児教育研究機構というのがございますが、公開保育を通じて、より幼児教育の質を向上するというイーセックという独自のシステムなど、あと、事前研修等もきっかけとなり、少しずつ保育者、教師主導から子供主体への保育へと変わろうとする動きが見えるようになったということが言えると思います。
 次のページ、お願いします。釈迦に説法で恐縮なんですが、黄色の囲みについて、いろいろな取組が会議の中であるんですが、今日、お披歴したいのは、年長、5歳児さんの11月、12月、いわゆる卒園前の集大成的な取組というか、それを御紹介させていただきたいと思います。
 毎年、この時期になって、お店屋さんごっこは年少、年中児の憧れのお店でございまして、年長児自身は、いよいよ自分の番となって、意気込みを持って何の店をするかということのクラスでの話合いが、スタートが行われます。
 次、お願いします。ここ、具体的に書いておりますけれども、1週間ほどかけて、1クラス1つお店を出すというような取組なんですが、グループ分けをして、ああでもないこうでもないと、やりたいことというようなこと、いろいろな意見を子供たちから発表して、保育者はそのことを、寄り添いながら可視化して、マッピングしていくというところでございます。このポイントは、やりたいことを話合い、みんなで協議をしてやりたい内容を決める、なぜその内容にしたかの理由を明確にすると、みんなで決めたことはきちんとやるということでございます。
 次のページをお願いします。チームに分かれていよいよ活動が開始いたしました。できたものや、また、困っている部分もクラスのみんなに伝えて、それぞれの取組を紹介して、みんなで相談をすることで、みんなでつくっているという気持ちが盛り上がってまいります。早くお店を開きたいという目標があるからこそ、どうやって進めていけばいいのか、自分たちで考えながら取り組んでいく姿と変わってまいります。
 ポイントといたしましては、思考力の芽生えと豊かな感性と表現方法を学ぶということに重点を置いておりまして、困ったときにみんなに相談をする。毎日報告会を行い、進捗状況の共有を行う。話合いを集団の中でやり取りをすることが大切で、その中で、個を大切にすることが生まれるよう、保育者が導くことが重要であります。そのためにも保育者はファシリテーターとして、クラスの子供たちが分かるように説明をし、取りこぼしがないように配慮することが大切だと思っております。
 次、お願いします。よりよくしたいという思いが、こだわり、試行につながり、始まるということで、様々な素材、左下にありますけども、保育者が用意をし、本物のようにしたいという意欲がいろいろな子供たちの資質を育みます。右下にあるようなのが、いろいろな粘土を試行錯誤して、結果的に、これ、バンズというのはハンバーガーのパンの生地のことなんですが、かなり本物に近いようなものができたということで、試行錯誤を繰り返して本物にしていきたいと、失敗しても諦めないというのが育まれることだなと思っております。
 保育者は、ただの1人の教育者ではなくて、クラスの一員であるとともに、子供たちと同じメンバーの1人であるということでありまして、ここら辺に大変試行錯誤があって、なかなか思うようにいかないところなんですが、一番大事なことは、保育者もしかりなんですが、管理者、園長、主任がそれを温かく見守るということが一番大事だなと思っております。何か成果が上がっていないよねとか、もう期間がもうないよというようなことは決して言わないということです。
 次のページをお願いします。これは、焼き肉のお店をつくるんですが、とうもろこしというのがありまして、これをつくるんですが、次のページをお願いします。子供によって特性がありまして、非常に精巧に、より本物みたいにつくりたいという思いが強い子供もいますが、その反面、そういった子供は妥協をしないという特性があります。ひるがえって、B児、C児は期日までに間に合わせたいという思いが強くて、お店に出すのに、お肉の値段よりトウモロコシが高いというのはいかがなものかというような葛藤をして、全体的にできそうなことはしないという、要するに、それぞれ子供に性格があるということを言っておるんですが、結果として、これはどうなったかというと、すばらしい結果で、とうもろこしは、精巧なものを作って、みんなで共同して作りました。値段につきましては、何と肉とトウモロコシが同じ値段で販売したという、まさに子供ならではのすばらしい解決方法であったかと思っております。
 次、お願いします。こういった取組を、子供たち自ら、年長児の代表が小学校に出向いて、小学校校長先生に見に来てくださいということで御招待申し上げて、地域の小学校の校長先生、並びに教頭先生が、そういったお店屋さんの取組を、公開を御覧になっておる姿でございます。
 次のページをお願いします。これはもう少し時間を超えておりますが、読んでいただければと思っておりますが、保育者主導の保育から子供主体の保育に切り替えていく際には、本当に保育者自身も悩みがいっぱいあります。どういった働きかけでないといけないのかとか、どこまで声をかけたらいいのかとかいう葛藤があるんですが、そういったところをしっかりと、幼児の主体性を育むには保育者自ら、意図性とともに、保育者も主体をもって子供たちを理解し、環境や関わり方を考えて実践する、いわゆる共主体、あるいは共同エージェンシーという考え方も、そろそろ現場のほうに下ろしていかなくちゃいけない時期ではないかなと切実に感じております。
 また、資質・能力ベースと教授型の保育実践の二極化も課題でございます。当然、保護者による、特に私立学校でございますので、園の選択の自由は最も保障されるべきものでありますが、その上で、保護者の選択に資する幼児教育の啓発というのも必要じゃないかなと思っております。
 次のページお願いします。資質・能力や10の姿は、幼稚園の現場の保育者自身が、その力が乳幼児期から育まれているという実感を得て、小学校との接続に生かそうという視点がだんだん持てるようになってまいりました。
 また、架け橋委員会等でも議論が始まって、幼児期の遊びは学習と余暇という対立概念ではなくて、主体的・対話的で深い学びや、10の姿として現れていることが、小学校の先生方にも伝わり始めているという感触を持っております。小学校の先生方と我々、保育者との一つの共通言語が、10の姿などで共有化されているのではないかなと感じております。
 一方では、自治体による差とか校長先生の意識によって、正直言って、各学校区によって差があるのも事実でございます。そういった点で、小学校の先生方や、あるいは保護者の方への啓発というのも大変重要になってくるのではないかなと考えております。
 以上、雑駁で、稚拙でございましたが、私の意見発表とさせていただきます。御清聴ありがとうございました。
【無藤座長】  ありがとうございました。
 それでは、2番目ですけれども、高橋委員にお願いいたします。
【高橋委員】  では、お時間が短いので早口になってしまうかもしれませんが、よろしくお願いいたします。目黒区立みどりがおかこども園の高橋でございます。よろしくお願いいたします。
 私からは、論点のところで、幼児教育と小学校教育の接続について、その成果と課題、そして幼児教育の質を高めることについてお話ししたいと思います。
 まず、最初に、幼児教育と小学校教育の接続についてです。まず、成果から。国立幼稚園は幼保小接続を推進するハブとしての役割を果たせるように、地域と一体となって取り組んでいるところです。そのような中で、架け橋プログラムの推進によって、お互いの連携意識が加速、そして子供たちに育むべき3つの資質・能力や、幼児期の終わりまでに育ってほしい姿に対する意識の高まり、これによって様々な体験を通じて満足感や達成感を味わうことのできる実践を重視してきました。また、幼少連携に取り組んでいる実践を生かして、地域ぐるみの連携にも力を入れてきています。
 ただ、課題もあります。架け橋プログラムの認知不足、学校との共通理解の推進の機会の確保、幼稚園で培った学びの基礎の伝達の工夫、教育機関間の連携強化などが挙げられると思っています。特に、教育委員会との連携は、教育内容の改善や新たな試みが生まれる可能性がありますが、地方自治体によって教育委員会の関与に程度の差があることは課題と言えると思います。子供たちがスムーズに小学校へ移行できるよう、一貫性のある支援体系を構築することが課題ではないでしょうか。
 次に、0歳から18歳までの連続性の観点からお話しさせていただきます。卒園生からの報告ですが、幼稚園での教育が彼らの自己実現と充実した生活に貢献していると報告を受けることもあります。これは改訂された幼稚園教育要領に基づく資質・能力の育成が子供たちのウエルビーイングを向上させ、その結果として幸福感を高めていることを示しているなと思っています。これは成果と言えると思います。
 そして、教師と信頼関係の下で、自己表現や友達との遊びが子供たちの幸福感に直結して、思考力、判断力、表現力、そして社会性、知識・技能などの基礎を築きます。これらの基盤は、学童期においても、学びや探究への意欲、そして達成感、幸福感をさらに深めることにつながると思っています。教育の各段階をつなぐ質の高い教育は子供たちの心身の成長にとって不可欠だと思います。これを見据えて、公立では毎年全国の園で数多くの研究保育が行われて、講師の先生方に御指導を受けたり、保育の改善を図るとともに、幼稚園教育要領にのっとった公教育を実践して、公開保育などにより、そのノウハウを提供してきているところです。
 その過程において、特に若手教員からですけれども、課題が挙げられたのを載せさせていただいております。教育理解を理解し、適切に評価することが難しい、3つの資質・能力や幼児期の終わりまでに育ってほしい姿や5領域との関係性についての理解、具体的な姿と結びつきづらい。保育経験者による理解に差が出ることから研修や研究の機会の保障が大事。幼児教育の重要性を広く社会に理解してもらうための教育力の活用、社会に開かれた教育課程ということがよく分からない。乳幼児期からの教育の視点を持つことが大事などが挙げられています。
 次に、幼児教育の質を高める観点から2点、お話しさせていただきます。1つ目は環境を通して行う教育についてですが、先ほど横田企画官のほうからも御説明があったので割愛させていただきますけれども、公立幼稚園では、自治体の教育目標、国の動向もそうですけど、教育課程を編成して指導計画を作成しています。PDCAサイクルを適用して振り返り、省察も行います。そのとき、心情、意欲、態度を大事にして幼児の学びを深めることが最も重要だと思っています。また、先人の知恵や充実した保育の継承ができることも国公立の利点かなと思っています。
 そして、環境を多角的に捉えて、質の高い経験ができるよう教育の実践を行っています。記載いたしました環境については、そちらを御覧いただければと思っています。大きな捉えの環境です。これらの環境が個別にあるのではなく、相互に絡み合って、そして教師は、そこに意図的、計画的に環境を構成して、遊ぶ姿に応じて環境の再構成もしていきます。このときに、論点にもありますバランスが大事かなと。主体性と意図的なもののバランスを取ることが大事で、そのバランスは次期の発達段階、個々の個性によっても異なってくると思います。過度に指導を強調すると受動的な保育になりがちになりますし、逆に主体性のみを重視すると教育的価値が薄れる可能性もあります。教育要領の解釈によって多様な保育形態が生まれますし、また、創意工夫も生まれます。このような状況において、教育委員会の連携、専門的な知見と知識が得られて、教育の質を保つためにも大切な連携かなと思っております。
 環境による教育の充実について、資料には記載がないんですけど、成果を感じることがありました。幼稚園教育要領の改訂と、架け橋プログラムの推進、そして令和の日本型学校教育に関する答申を踏まえて、小学校教育の変化を感じ取ることが、この間できました。自立学習とか自己進度に合わせた学びとか自由に探求する学び、名称は様々だったんですけれども、まさしく環境による教育を参加してまいりました。個々の子供に最適な学びを提供して、同時に協働を促進して自立した学習者を育てるという観点でした。公立幼稚園では、長年、集団という観点から、遊びを通じて主体的で、対話的な深い学びを長年営んできました。この幼稚園で行われている日常が小学校でも日常として実現されていくと、幼児教育と小学校教育の段差は限りなく低いものになるのかなと考えて、参観してまいりました。これも成果かなと思っています。
 2つ目は、社会全体で幼児教育の質を高めるということです。ある地域では、幼児教育センターが中心となって、公立幼稚園の実績やノウハウを活用して、その実績の幼保小での課題に一緒に向き合っていくというシステムが構築されている地域があります。幼児教育センターが中心となって、国公立、私立の幼稚園、保育所が一体となって教育力を高めているという実践です。そして、小学校も巻き込んで、地域全体で子供たちの成長を支える環境を整えること、それが私たちにとっても非常に重要なのではないかなと思っています。
 また、教育センターが単に連携をコーディネートするのみではなく、教育の課題にともに取り組んで、子育て相談機能を持つことで、より多様な役割を果たすことが期待できると思っています。公立幼稚園はその人材輩出、教育力の活用にも貢献していきたいと考えています。
 以上でございます。雑駁ですみません。恐れ入ります。
【無藤座長】  ありがとうございました。
 それでは、3番目に、鍋田委員よりお願いいたします。
【鍋田委員】  それでは、私のほうからは保育所保育指針の改定後、保育の実践の場ではどのような変化があったかということについて、以下の3点について、お話しさせていただきます。
 まず、幼児教育を行う場として位置づけられましたけれども、こちらについては、保育者のことを中心に述べさせていただきます。まず、保育者が保育の役割についてより深く考えるようになったと感じています。一つは、養護と教育を一体的に行うという意味についてです。また、保育所の教育についてはどう考えるか、何をすることが必要なのかと、保育の原点に立ち戻ってきたと考えます。遊びが学びであり、小学校以降の学びの芽生えだという理解が進んできているのではないかと思っています。
 次に、保育を変えていこうという意識の変化が見られています。1つ目のポチですけれども、子供を取り巻く社会の変化にも問題意識を持っておりまして、また、子供の権利擁護の意識の高まりもあるためか、子供の人権や人格を尊重し、弱く未熟な存在ではない、自ら成長する主体として関わっていくという理解に変わってきていると思います。2つ目のポチですけれども、これまでも実践してきましたが、育みたい資質・能力が、明確に整理されたことが大変意義深く、環境を構成する上でもとても大切にしているところです。
 3つ目のポチとしまして、意識や子供の理解が変化してきたことで、保育を変えたいという思いに今、あふれています。変わることに大きな不安はまだありますが、同時に、わくわくしているというのが現場の感覚です。
 このような変化の中での課題として、3つ挙げてみました。1つ目としましては、行事は子供の思いを大切にしたものにしていきたいのですが、まだまだ保育士主導になりがちであると感じています。そこでは、特に、子供主体と保育者の意図のバランスの葛藤が起こりやすいです。保育者の意図の中には、保護者にも喜んでもらいたいですとか、保育者の理想的な形にしたいというものが強く出てくると、子供の思いを大切にできたか、子供が主体の活動であったかと悩んでしまうことがあります。
 2つ目としまして、10の姿の小学校、保護者との共有も進めていかなければ、保護者にも喜んでもらいたいという意識が、保育を変えられない要因として残っていくのではないかと考えています。
 3つ目として、一人一人の育ちの背景や興味関心などを十分に考慮しながら、一方で、集団の中で身につけていくことにも充実させていきたいという課題について、日々悩む保育者が多いことを感じています。
 次に、一、二歳児保育の充実についてです。これについても2つ挙げてみました。養護的関わりの重要性を再認識してきています。1つ目として、育みたい資質・能力がしっかり育まれるためには、この時期に大人の関わりが重要であるということの再認識です。
 2つ目としまして、遊びの芽生えの読み取りと書きましたけれども、乳児にも心の動きや発見があり、そのこと自体に保育者が注目するようになってきたと考えます。例えばですけれども、登っては困るところに上ったり、せっかく咲きそうな花のつぼみを取ってしまったりということがこの時期あります。以前は、駄目と怒って子供が神妙にする態度を見ることで、しつけできたと思う保育者が多かったのかもしれませんが、今では、やってみたのとか、何が見えたとか、面白いものがあったねとか、子供の見ている世界を一緒に見て、応答的に関わりながら、情緒の安定も図り、発見したことや心の動きを読み取るようになってきたのではないかなと思っています。
 そして、幼児期に向けた生活の自立の準備をする段階だけではないという意識もしております。
 次に、こちらの課題として3つ挙げています。1つ目としまして、1歳児以降も、大人とのアタッチメントの形成についての視点を持つ必要があるのではないかと、子供の様子を見て感じることがあります。そして、2つ目としまして、子供の自我の芽生えとともに、保護者の子育ての悩みが増していく中では、その家庭ごとの悩みに寄り添うことや、適切な対応をする専門性が求められています。3つ目としまして、そのような中では個人差が大きくなり、対応の仕方が様々で、ここで難しさを感じているところがあります。
 最後に、保護者支援の理解と現状、課題についてお話しさせていただきます。こちらはもしかしたら今回の論点からずれるかもしれませんが、養護を一体的に行うというところでは欠かすことができないため入れさせていただきました。家庭環境の変化についての理解というところでは、現状の保護者の不安はどこから来るのか、何を解決すれば負担やストレスが改善するのか考えて、園ではこうやってみたよですとか、こういう見方もできるねと、さりげないヒントを伝えたりするところが保育者の高い専門性であると感じているところです。子供の最善の利益の保障という視点では、最もふさわしい生活の場として、保育所の特性を生かせると考えます。そして、不適切な養育などのセーフティーネットとしての期待は大きいと感じています。
 今回は3つの視点で述べさせていただきました。現場では本当に理解し実践できているのか、いまだに迷いながらではあります。しかし、改定前よりも、これでいいのか、方向性はこれで合っているのかなど、それぞれがより考えるようになったと考えます。そのことが徐々に実践に反映されてきており、子供が様々なことに探究心を持って、生き生きと取り組む様子があちこちで見られてきております。保育の本当の成果はすぐに見られるものではありませんが、小学校と子供の姿をしっかり共有することができれば、その先を安心して託すことができると考えています。
 以上で、ほんの一部でありますが、改定後の保育所での変化や課題についての報告を終わらせていただきます。ありがとうございました。
【渡邉委員】  すみません、無藤先生、渡邊のほうが進めてよろしいですか。大丈夫ですか。では、渡邉のほうから提案させていただきたいと思います。いいですか、無藤先生。
【無藤座長】  すみません、マイクが不具合で。どうぞ。
【渡邉委員】  申し訳ありません。私のほうからも、5分でどこまで話せるか分かりませんけど、話したいと思います。
 私は3要領・指針の改訂を受けてというところがすごくすごく考えさせられたところです。幼稚園教育要領だけではなくてというところでいくと、私は港北幼稚園と、ゆうゆうのもり幼保園と、幼稚園、幼保連携型認定こども園、両方の園長をしている関係で、子供というものを丸々受け止め考えて話したいと思っています。そのときに、子供が本当に成長していくことが面白いとか、子供たちが本当に学んでいくことが面白いというような、子供の持っている魅力というのが、どんどんこぢんまりしてきたと感じています。このような言い方がいいのかどうかわかりませんが、幼児期の終わりまでに育ってほしい姿というのが、もちろん10の姿はあるんですけど、その姿が、確かに10の姿は目標ではないんですけど、ただ、それがどんどん、どんどんこぢんまりとなってくるのは、社会全体が子供に対して、何か大事にされてないというか、そのことが大きいかなと感じています。
 乳幼児期に、特に幼児期に何を育てるべきかというのを改めて考えないと、様々な要因、例えば事故とか安全のこととか、それから保護者の意識とかいろいろなところの中で制約がでてくる。子供が育っていく、特に幼児期にきちんと育っていくこと、つまりは社会性が育ったりとか、非認知の話になると思うんですけど、そのような重要さを改めて社会に訴えていくということを考えていかないといけないのかなというのが、問題意識としてはすごく大きいです。
 今までの皆さんの発表にもあったように、幼児期、乳幼児期、子供主体を大事にした教育、保育に変わろうとしている流れは出てきました。だけど、その方向だけではないです。やはり様々な園があって、それも、本当に学校法人もあれば、社会福祉法人もあれば、企業主導型もあったり、いろいろな形態の施設がある中で、園児が減ってきたという現実に直面すると、昔から言われていることではあるのですが、園児獲得競争のために、100園あれば100通りの保育が、さらに過熱しかねない。それは子供を中心にというより、保護者中心だったりとか、園中心だったりというような保育になりかねない危険性が今はさらに強くなっていると思っています。
 そのときに、制度として、幼稚園は、例えば文科省、認定こども園と保育園はこども家庭庁とか、制度の違いがあり、そこの弊害も結構大きかったりするときに、もっと子供というのを丸ごと感じて考えるというような、そのような視点というのを考えていく必要性があると思っております。特に大きいのは、私立幼稚園、でも公立もそうだと思うんですけど園児の減少です。保育園も多分そのことが起こってはきているし、保育園でも駅前のほうが預けやすいというような傾向はもう横浜では出ています。
 そのときに、必ずしも3要領・指針を大事に教育とか保育を行っている、または行おうとしている園に保護者が子供を通わせようとするわけではありません。幼稚園教育要領の改訂等をずっと積み重ねてきて、要領・指針はすてきなものにはなってはいるんですけど、保護者には理解されていない実態があるのではないかなと思っております。
 それから、保護者のほうも早くから保育園に預けたいとか子育てをできるだけ外注してやらせることや、おけいこごとのようなところに行かせることが親の役目みたいな形で言われる方たちもいるかなと思っております。
 子供たちの現状としては、コロナ禍で子供たちの育ちに与えた影響は大きいと思います。ここに書いてありますけど、グレーゾーンというか、そもそも多分、子供の発達特性にはいろいろあり、できないことがあったり、自分では変えられないという資質のような難しさは、大人も含め誰でも持っていると思うんですけど、社会的な要因が重なってそれが際立ってくると、すぐに診断名をつけなければいけないみたいな形になってきます。本来は、もう少しきちんとした子供の社会があって、子供の生活があれば、そこまで診断名を求めるような、発達障害だという言い方ではなくて、どこにでもある子供の凸凹さで済んでしまうような子供たちが、ますます子供間の中で格差が大きくなって目立つようになり、不登校になったり、いじめにつながったりとか様々な問題が出てきているのではないかと感じています。、そうであるならば、もう1回原点に戻って、乳幼児教育、特に幼児教育の中で、やっぱり子供たちはどういうことを育てなきゃいけないか、改めて考えなきゃいけないだろうと思います。
 その際、100人の子供がいたら100通りの教育保育があっていい、一人一人の子供たちが自分らしさを発揮していいんだということがとても大事で、小学校に1人1台タブレットが配置されたんですけど、幼児期には子供が子供として豊かな環境の中で、自分のやりたいこととか自分がこういうことに興味があるんだとかということを夢中になって取り組んでいいというような、そんなような生活を保障していくというのが大事なんだろうと思っています。
 幼児教育の中で、みんなと一緒というのが過度に求められてしまうと、配慮が必要なお子さんもそうですし、多様な子供が共に育つという共生社会はなかなかできなくなってくるだろうなと思います。トラブルを嫌って親があまりけんかさせないために子供同士の関わりが十分できないとか、安全面だったりとか、衛生面だとかいろいろな制約があって、例えば、節分の豆を食べるのはやめたほうがいいとか、お餅つきはお餅がのどに詰まったら大変だからやめたほうがいいとか、そのこと自体は安全面で大事なことではあるんですけど、ただ、保護者の理解を得られない、保護者からの苦情を避けるということでやってはいけないことがどんどん増えてくるということが本当にいいんだろうかと感じています。また、そこに対応できる保育者は本当に育っているんだろうかという課題も抱えています。
 このような状況がある中で、3要領・指針に書いてあるからという理由だけで、行政が指導とか監査だけしていても現場はよくならないと思っています。現場に対して、「してはいけない」「守らなければいけない」ということばかりではなくて、こうやったら面白いとか、こういう保育だったらいいというような、そういうアドバイスとか、こういうふうにやれば安全だとかというような、保育が楽しくなるとか幼児教育が面白くなるような仕掛けというのをどうやってつくっていくかがとても大事だとも思っています。また、幼児教育・保育に活かせる研修の在り方も含めてすごく大事なことだろうとも思っております。
 改めて、保護者が子供を愛おしいと感じてくれたりとか、子供がいることで生活が潤いがあるとかというように、理想論的に聞こえるかもしれませんけど、でも子供に関心を持ってもらえるような、まず、そういう関係をつくってもらうには、0、1、2の保育って物すごく大事だと思っています。これから社会が変わってきて、多分育休とか休業補償、テレワークというような制度がどんどん進んでくれば、保護者が働いている、働いていないに関わらず、子供と関わる時間というのが増えてくるはずです。そこで何を大事にするかというのを社会に訴えていく必要がありますし、それがケアという、教育か保育かという言葉の使い方にも詰まっているところもあるとも思っています。あなたのこと、一人一人のことを大事にすることを改めて考えてみる必要がありますし、このことは小学校でも本当に大事だろうと思っています。一人一人の子供のことに対する目線というのが幼児教育・保育の基本であるならば、ともに考えて、感じたり考えてくれるような保育者とか教師の存在というのがとても大事になるだろうとも思っております。
 その一方で、小学校が本当に大きく変わっていく中でこそ、多分幼児教育の重要さって見えてくるとも思っています。架け橋は、僕は本当に小学校教育が変わっていくためにも大事ですけど、幼児教育の重要性を社会に認めてもらうためにもすごく大きな意味を持っているかなと思ってはいます。
 最後に、各園が3要領・指針に示されている幼児教育を実際に実施していくって今もすごく難しいと思っているので、そこに本当に、共に考えてくれる、支えてくれる外部の人がいる、事が起こってから行政から指導が入るというよりは、もっと普段の教育・保育を一緒に考えてくれるような、そういう体制が地域だったり団体にあって、そこでお互いに教育・保育を高め合っていくような、そんな仕組みがあるといいと思っております。
 すみません、雑駁ですけど、以上になります。
【無藤座長】  4名の現場を扱っておられる委員の方から発表いただきました。
 それでは、4名の委員から御発表いただいた内容を踏まえて、その内容を踏まえて、残りの時間が70分ぐらいになりますか、意見交換と質疑応答を行いたいと思います。4名の御発表に対する質問とともに、関連するところで、それぞれの立場での知見、御意見をぜひお出しいただきたいと思いますけれど、委員の皆様、大勢いらっしゃるので、1回当たり、3分程度ということでの御発言をよろしくお願いいたします。
 御発言でありますけれども、挙手していただいて、していただいた順番で私のほうで指名させていただきますが、多分、全員発言していただけるとは思いますので、順次、よろしくお願いいたします。なお、私が挙手に気づかない場合には、事務局からプロンプトしてください。
 それと、尾上委員が11時半頃に退室と伺っておりますので、尾上委員の御発表についての御質問については、それまでに早めによろしくお願いいたします。
 それでは、委員の御意見を頂戴したいところですけれど、途中退席という方が、汐見委員と田中委員と伺っていますので、まず、汐見委員からよろしいですか。
【汐見委員】  どうも。ちょっと体の調子がよくなくて、病院に行かなきゃいけなくなって、すみません。
 今、御発表くださった報告にかなり、それぞれ共感して聞いていました。特に、最後に渡邉さんがおっしゃってくださったことに共感することが多かったんですよね。これも、国としてはとても難しいことだと思うんですが、教師主導型、保育者主導型から子供主体へというような流れをつくろうとして、そして、子供主体というようなことをずっとやってきたんですが、子供主体ということが、一種の方法論として理解される傾向って非常に強かったような気がするんですよね。こういうふうにやるのが子供主体だと。
 そうすると、そういうことを一生懸命やっている園の一つのやり方をモデルにしてとか何とかという形で、そのことによって何を育てていくのかということが、どこかで弱くなってしまっていたという印象を、私はかなり強く受けていたんです。方法は大事なんですけども、方法をお互いに守り合うという形になったときには、必ず硬い保育になっていってしまう、別の形で。
 私は、幼児期までに、子供は本当に簡単に評価できないよねと、あの子は。面白い子だよねというか、そういう子供をどれだけを生み出せるかと、簡単に言えば、そういう辺りが、僕は保育幼児教育の一つのミッションだと思っているんです。もともとは、保育とか教育というのは、人間を育てるというのは、そんなに早い時期からやってきたわけじゃないんですが、今はそれを早くからやることになる。早くからやるということが、結果として、子供を善意で型はめしていくということになりかねないおそれが常にあるわけですよね。
 先ほど、どなただったか、高橋さん、教師の教育的意図と子供の主体とのバランスみたいなのが大事だとおっしゃってくださったんですけれども、教育的意図というのを、例えば10の姿ということに限定してしまうと、そこから子供を見てしまうということになってしまいまして、どこかで子供を型にはめてしまうということが結果として起こりかねないと思っているんです。
 僕は今、保育者の教育的な意図とか保育的な意図というものを、もう一回吟味するということを職場で徹底してやってほしい。何のために子供主体ということを言われているのか、その理由をちゃんとみんなで議論してほしいと。そうだとすると、園によって、いろいろな、こういう子供が大事なんじゃないのとかって、そのように言えば言うほど、保育所はそういうようになっているのかどうかしらということが問われますよね。本当に訳の分からない難しい時代になっていくという中で、人間らしく生きるというのはどういうことかと、簡単に出てくる結論じゃないわけです。だから、そのことをずっと議論し続けるという姿勢がなかったら、子供に何を体験してもらったらいいのかという教育的な意図というのは、そう簡単には出てこない。でも、それをやり続けることなしに、子供主体、主体といったら、好きなことをさせたらいいんだという形になりかねないと僕は思うんです。
 ですから、先ほどの高橋委員のあれはとても大事で、だけども、最後に、高橋さんがおっしゃってくださったのは本当にそのとおりだと思っていまして、僕は保育は一生懸命、善意で、姑息な人間を育ててしまうということにならないようにということだけを願っているということです。
【無藤座長】  ありがとうございます。保育者の意図と子供の主体的な在り方の関係というか、両方必要だということは、ある意味で常識なんですけど、それを保育場面で具体的にどうしていくかというのが、簡単な方法論でこうすればいいという話、ノウハウの問題ではないという、一番、根源的なことを御指摘いただいたと思います。
 それでは、もうお一方、田中委員も早期に退室と伺いますので、どうぞ。
【田中委員】  失礼します。私のほうから、様々なお話を出していただいた中で印象的なのは、最初、尾上委員のほうからは、幼児の主体性と保育者の意図、バランス、そこら辺のあたりのお話、それから、鍋田委員の子供の思いを大切にした行事の在り方、ここら辺も共通するところかなと思いながら、お話を聞かせていただきました。
 高橋委員のほうからも、資質・能力とか5領域を幼児期の終わりまでに育ってほしい姿の関係性だとか、あるいは幼児期の終わりまでに育ってほしい姿をもっと具体的にあればというようなお話もあったかなと思います。
 あと、渡邉委員のほうからも、幼児期の終わりまでに育ってほしい姿のことからも、こぢんまりとしたみたいなお話もあって、考えさせられるようなお話をいただいたなと思います。
 幼児期の終わりまでに育ってほしい姿が示されたときから、全ての子供の姿を当然示しているわけではないということが明確に言われていましたし、幼児期の終わりまでに育ってほしい姿というものを、もっと具体にするのは現場のほうでぜひお願いしますというようなメッセージも文科省のほうからいただいていたなと思います。
 なので、自分たちも大事にしているのは、実際、自分たちの保育の中で、子供の学びってどういうものがあるのかということをしっかりと言語化していくということを最も大事にする、しているなと思います。そのことは、結果的に、幼児期の終わりまでに育ってほしい姿というものを明確にしていくとか、あるいは、幼児期に育みたい資質・能力を明確にしていくとか、そういった方向に、そんな積み重ねが向かっていくと信じて取り組んでいるなと思いながら、お話を聞かせていただきました。
 あと、資質・能力と5領域と、あるいは幼児期の終わりまでに育ってほしい姿の関係性だとか、そんなこともよく自分も、いろいろな園に関わらせていただく中で、話題に上がります。ここら辺が本当にすっきりするといいなというのはずっと思っているんですが、しっかりと説明はなされているので、これをしっかりと理解するということと、今後、より分かりやすくという方向性を探っていくということは、ぜひしていきたいことだなと思っています。
 最初に資料でお示しいただいたように、文科省から様々な資料が出されていますが、例えば、幼児理解に基づいた評価なんかでも、はっきりと、かつては同じことを同じ方法で、同時期にどの幼児にも指導しようとする傾向が見られましたとか、自分は「かつては」という言葉をうまく使いながら、こういう保育、まずいですよねという発信をかなり具体的にされているなということを思っています。
 あるいは、かつては、教師が望ましい活動を選択して幼児に与えることによって発達が促されるという考え方があったみたいな表現だとか、かなり踏み込んだ表現をされているなと思うようなところがあったりします。
 まさにこんなことが、活動を選択して幼児に与えたりとか、何かができるようになることに保育者の主体性が発揮されたりすると、幼児の主体性は育まれることはないな。逆に、今言われている資質・能力を育むということに向けて、保育者が主体性を発揮するということは、幾ら押し進めても幼児の主体性を育むことを阻害するということがないなというのを自分たちの取組でも実感しているところです。まさに幼児の主体性と教師の主体性、両方とも発揮されて、初めて教育というんだよということの説明をされているものが、すごく資質・能力という考え方が出てくることで分かりやすくなったなというふうに思いますので、この資質・能力がもっと明確になるという方向に進んでいくのが、いろんなことの解決に向かうんじゃないのかなということを思いながらお話を聞かせていただきました。
 以上です。ありがとうございました。
【無藤座長】  ありがとうございます。御指摘のように、幼児期の終わりまでに育ってほしい、いわゆる10の姿も、根幹は資質・能力の育ちというものをより具体化するためのものであるわけなので、資質・能力をどういうものとするか、これが要領、指針の場合には、小学校以上だとある程度成果というんですか、かっちりとした能力に行く至るというところが出てきますけれど、幼児期の場合にはかなりプロセスとして感じるとか、気づくとか、考えるとか、興味持つとかという形で、かなり考えてそういう形にしたわけですので、その辺がもう少し伝わりやすくなって、同時にほかのところとのつながりをもっと明確にできればいいというふうに考えております。ありがとうございました。
 それでは、これから後は御自由に挙手の順番にしたいと思いますので、どなたからでもお手を挙げていただきたいと思います。奈須委員、お願いします。
【奈須座長代理】  よろしくお願いします。
 3要領・指針の改訂によって子供中心の方向に進んでいるということは着実だと。ただ、そうなってきたからこそいろんな課題が出ているというふうに伺って、なるほどなと思っています。これは小学校もそうで、資質・能力とか、見方・変え方ということで、教科学力も高度化したわけです。なので、課題もまた高度化してきているということで、難しい問題はあるんですけど、それがいけないということではなくて、目指している高みが高まっているからこその難しさだということかなと思います。
 先ほど来から出ている、子供の主体性と保育者の意図という話です。汐見先生がおっしゃったとおりで、そもそも何を目指すのか、どんな子供を目指すのかということ、それがまず大事ですけど、さらに、方法ということとして考えた場合に、私がずっと気になっているのはバランスという表現です。バランスというと、6割4割とか51対49とかいう話になって、2つの別なものをどうやって量的に整えて合意を得るかというふうに見られるんですけど、全くそういうことではないんだろうと思うわけです。これは小学校の授業で考えると、授業というのは活動、それから内容から成り立っていると思うんですけど、どんな活動がいいかというと、それは子供にとって楽しい活動とか意味を感じる活動がいいですよね。授業というのは必ずそうだと思うんです。砂をかむような活動をさせたから力がつくなんて話は絶対ないんですけど、学力低下の議論のときはそんな話もあったように思います。学力をつけるのが大事なんだから、子供に好きなことなんかさせている場合ではないとかいうむちゃなことを言う人がいて、子供が好きなことをしながら学力がつくのが一番いいんですよね。つまり、子供にとって意味のある活動をしつつ、教師から見ても価値のある内容が実現できるように、その両者の折り合いをつけるというんですか、だから、バランスでは私はないと思っていて、つまり、子供の都合と教師の都合が、子供は活動をしたいわけです。一方、教師はある内容や価値を実現したいわけですけど、その2つが、どうやれば折り合いがつくかというのが授業づくりであり保育なんじゃないかと思うんです。
 すると、子供の主体性と保育者の意図のバランスを取るというよりも、両者の折り合いがつくように指導計画を立てたり、子供の様子を見て次の一手をどう打つかということ、環境構成を練るという話なんじゃないのかと、まず思っています。このバランスという表現をどう考えるのか、2つの別なものがあるように思われては違うんじゃないかと思うんです。
 それからもう一つ、子供の主体性というときに、主体性というのがいきなり真空の中で無限に出てくるわけではないですよね。つまり、子供がしていることとか思いや願いも、環境との相互作用で生じてくるんだと思うわけです。つまり、僕らがどんな環境を整え、どんな声をかけ、働きかけをするかによって、子供が何をその場で願ったり、どういう行動が出るかということは変わってくるんじゃないかと思うんです。興味関心ということも、小学校以降よく言われますけど、子供の側から一方的に無限定に出ているわけではなくて、僕らがどんな環境を整え、どんな学校生活を準備するかによって子供が抱く興味関心もどんどん変わってくるんだと思うんです。だから、教師から、保育者から見た場合に、何かとても不都合なというか、あるいは修正すべき動きが出たというふうに見がちですけど、それもやはり僕らがつくっている子供の生活や環境との関係で出ているということなんじゃないのかと思っています。どうも、この主体性と意図、活動と内容と言ってもいいかもしれませんけど、について、少し大きく問い直す必要が、汐見先生がおっしゃった意味でもそうですし、もっと方法論的なことでもそうじゃないのかなという気がしています。
 戦前のことですけど、岡崎の附属小学校が、子供の思いに教師の願いをかけるという表現をしています。子供の思いと教師の願いが相互作用的なもので、まず子供の思いを見るんだけれども、そこで可能な教師の願いをかけ、そして教師のかけた願いによって、また子供の思いもダイナミックに変容していくと、そういう相互作用的なものとして見ていこうというのが、戦前、昭和の時代から、現場にはいろいろな知恵が出ていました。これは岡崎だけじゃなくて、奈良の学習法なんかにもそういった議論がたくさんあるし、もちろん保育の世界にも膨大にあると思うんです。もう一度そういう実践資産に学びながら、この辺りの用語や用語間の関係、概念的な関係というのを、小学校以降も本当にそうなんですけど、ちょっと整理していかないと、分かりやすさを優先するとかえって事実から遠ざかってしまう。今のような話は実は分かりにくいっちゃ分かりにくいんですけど、ある意味で正確を期していく、これは学問的というよりは、皆さんの実践の実感の中で正確を期していくということが大事かなと思いました。今日の御実践の中でも、本当に子供が専心しようと思うような、トウモロコシなんかそうですけど、そういう場づくりを先生がしてくださっているんだと思うんですよね。そして、報告いただいたような子供の動きが出た。そして、さらに先生がそこに願いをかけ意図を実現していくという。そういうものとして見ていくような議論が、次の段階に向けてまた大事かなと思って伺っていました。
 以上です。ありがとうございます。
【無藤座長】  ありがとうございます。今後の議論の基本的な方向を出していただいたと思います。子供の主体的な在り方と、保育者側の意図や保育者の主体性の、これを例えば50・50で分けましょうとか、あるいはある活動は保育者100%で別な子供の活動は子供100%、そういう話ではないよという、そこに折り合いというんでしょうか、子供と保育者の、あるいは子供たちと保育者の絡み合いみたいなのはあるわけだし、そもそも、特に園の環境というのはどんなところを取っても保育者の意図がある意味では染み通っているはずなんで、そこまで考えていく必要があるというふうに思っております。
 幼稚園教育要領などでは、解説は主体性という言葉を多分使っていますけど、本文では主体性というのはちょっと避けて、主体的な活動とか主体的に関わるということで、その意図は、子供の主体的な在り方が環境との関係で現れてくるということを表現したつもりだったわけで、ただ、それが十分伝わるかというとそうでもないので、その辺の検討をぜひ今後お願いしたいというふうに思います。
 さて、次の方はいかがでしょうか。すみません、挙手されていますか。お願いします。
【大豆生田委員】  大豆生田です。4人の御発表の先生、ありがとうございました。今、議論になっているような子供主体と、1つは大人との関係ということが4人の御発表の中で共通にあったかなというふうに思います。
 大きく子供の主体的な保育をすごく大事にしようとする動きの中で、今の御議論の中であったように、共通に皆さんから出てくるのがさっきのバランスの話、どこまで子供主体を認めるのかという話が物すごく多いということが、今、奈須先生御指摘のようにバランスの問題としてあるということを認識しています。同様に、汐見先生がおっしゃられたように、主体であるということ自体が目的になってしまっているというところが形骸化につながることだということも、本当にその課題も大きく感じています。
 そうした中で、今回、尾上先生、教主体のことを出してくださいました。私としては、この問題が子供主体であるということは、同時にその保育者も主体なんだというふうな関係性のところということが、実は現場の方はまずすごく、ひとつ腑に落ちるということがとても多いというふうな実感をしています。子供主体の保育がそこに大人の存在みたいなこと、主体性みたいなことをどう位置づけるのかということに対しての、大きな今過渡期なのかなというふうに感じています。そのときに、共に主体ということの中に、今、奈須先生おっしゃられたように、環境であるということがとても重要であり、共に主体であるということの主体は、子供と保育者だけではなくて、渡邉さんが指摘されたように、保護者のことであったりだとか、それからもしかすると、尾上先生のさっきのお店屋さんが地域も巻き込んでいるかもしれないし、その多様な主体の中で、あるいは多様な環境も含めて総合的になされている、とても対話的で創造的な学びのプロセスの中にあるんだということが、ただこの教主体という概念が、ともすると子供も主体だけど保育者も主体だよねということだけが独り歩きしていってしまう。今、汐見先生や奈須先生が御指摘くださったような課題ということが乗り越えられないのかなということを感じています。まさに、共に主体であるということは、個別性が大事にされるし共同性が大事にされるし、それは個別最適な学びと協働的な学びにも通ずるような視点でもあるし、(
音声途切れ)受けていくものなのだというふうなニュアンスが、どういうふうにこれが位置づけられるかということを、今日4人の先生のお話を聞きながら、私もそんなふうに感じていたところでした。

 以上です。感想です。
【無藤座長】  ありがとうございます。それぞれ、子供、大人の保育者の主体性というのがもう少し広げて考えるという、多くの関係者ということだけれど、それは単にそれぞれに主体があるという話ではなくて、一緒に対話しながら、つながりながら、関わりながらというそのプロセスで考えようという御指摘だと理解しました。ありがとうございます。
 では、次の委員。お願いします。
【秋田座長代理】  ありがとうございます。4人の先生方の御発表と、今までの先生方のお話を伺いながら、私自身は、渡邉先生が、この頃子供が小さくなっているという、そういう感覚というのを私も非常に持っているようなところがあって、何が一番乳幼児の教育の中で、保育の中で大事なんだろうということを考えたときに、環境を通しての教育という、その環境というものが、保育者が環境を構成するだけじゃなくて、子供が共同で構成、再構成をしながら、その遊びをさらに展開していくという、ここのところが極めて重要であり、エージェンシーという主体という概念が、人に主体的に関わるということではないんだというようなところを、保育者が知恵を絞って、環境を主体的に、こんなふうに当たり前を見直していったら、子供がこんなふうにわくわくし、もっと遊びが深まっていって、だからお互いのエージェンシーが、保育者もさらに面白いから子供よく見ようと思って、そこにさらに主体性が発揮されていくんだよねみたいな事例というものは、今もいろんな園であるというふうに私は思っています。
 そのときに重要なことというのは、それを通して資質・能力が育まれる、その資質・能力というものをあまりにも細かく否定し過ぎない。でも、未来に子供たちがこれからの社会を生き抜いていくためにとても大事だという、そういうメッセージをより強く、今を生きると同時に、それが未来に続くために何が大事かをお互いに考えようというような、発達の連続性という言葉で言ってしまえばかたいんですけれども、その部分というものを非常に重要視するということが、私は大事なんじゃないかと思います。
 エージェンシーという概念は、教育学的には最近論文も幾つか出たり、エージェンシーというのを、例えばOECDであったり、それから文部科学省が一般的に言うエージェンシーというのは、ある種、大人が、こういうのが生き生きしているとか主体的だという価値づけがなされているものをエージェンシーと呼びがちでありますが、これからの変動する社会の中で自らを解放し、自らが社会をつくっていく変革の主体となり得るということが本来のエージェンシーではないのかというようなことが、例えばパウロ・フレイレを聞いたり、いろいろ議論が、実はエージェンシーそのものも、保育者が思っているように子供が元気にはつらつと動いていたら主体的だわ、それのために私は見守り続けたり援助したからよかったんだわということなのか、やっぱりそうではなくて、私は、この子供たちが生涯ウエルビーイングで資質・能力を育んでいくために、この遊びや環境という形のあり様を考えていくんだという、そこのところを外せないこととしてやはり考えていく。
 そして、そこには専門家としての主体である保育者だからこそ、直接言葉で援助することもあるけれども、身体や非言語や物や環境を通して関わることによって、乳幼児の特性に応じた形にしていくんだというようなところを、改めて時間の在り方、例えば指導計画と言われる計画が持つ週案とか月案とか期案とか、そういうものと環境のあり様の関係をもう一度考えるとか、本来幼稚園教育要領は4時間5時間、それから保育所保育指針は8時間というような保育の中で考えられてきたはずが、今より長時間になっているときに、子供にとって、園で暮らす生活の中の時間がどうあることが最もウエルビーイングになり、どういうリズムをつくるということが子供たちの資質・能力を安心し居場所のある中で思いっ切り子供の可能性を広げていくことができるのかという、時間と空間の問題を、もう一度3要領の中で考える必要があるのではないかと思います。
 そうでない限り、今のこれからの現代的な保育の中で、子供が、もう保育者もコエージェンシー、子供だけではなく、大豆生田先生が言ってくださったように、保護者も地域の人にも共有できる参画を促していくための在り方を考えるのには、その時間の持ち方とか、ルーティンのリズムの在り方とか、もう一度そういうところのポイントを指針の中で考えてみるということが大事なのではないかと思います。
 カリキュラムの中に、これまでは内容や活動は問われてきたんですけれども、そこに必要な時間というものが保育の質、子供の経験の質を決めていきますので、この辺りについて、小学校以上でも、学習指導要領の中で、例えば今45分授業や標準授業時数の在り方や時間の質というものの問い直しを議論しているわけですけれども、保育の中でも、今子供が置かれている状況の中で、最善はどうあったらいいのかという議論をもう一度行うということが必要なのではないかと思います。
 また、それは1つの園だけでできることではなく、学び上手になっていくために、今日議論にも出ていました幼児教育センターであったり、それから公立の園であったり、国立大学の附属幼稚園というのが、従来のように、これがモデルですとか質が高いんですという、そういう発想ではなく、ネットワークのハブの役割を担っていく。例えば私は、新潟大附属で3自治体を巻き込んで、保育園もこども園も幼稚園も、みんな遊びというものの、こういうのは面白いという事例を動画でお互いに共有しながら、どこをどう見たら面白いのかをみんなで3年4年やってくると、自治体全体がこういうのは面白いねというふうに出てくるわけです。やっぱりそういうことが幼児教育センターやネットワークをつくって質を高めていくというような各園のカリキュラムと同時に、そういうネットワーク構造というものを考えていくことが必要ではないかと思います。
 少し長くなりましたが、以上です。
【無藤座長】  ありがとうございました。幾つか、それぞれ重要なことなんですけど、主体的な在り方、ESD概念、拡張する中で、変革的な主体というのは、幼児に照らして言えば、子供がその環境を保育者とともに再構成していくとか、遊びというものをそういう角度で考え直すということにつながっていって、恐らくそれが、資質・能力が未来に生きるものに変わっていく1つのポイントだと思うので、そこら辺はさらに議論をしたいと思います。また、その園にいる間の時間の長さの問題、長くなってきたり、それから保育所などでいえば、4、5歳のお昼寝をするということはかなり減ってきましたけれど、子供が活動する時間、逆に言えば増えたわけですが、そこら辺のめり張りをどうしていくか。別に時間割を小学校みたいに作ろうという話ではないので、その辺のリズム、めり張りを、子供主体を生かす中でどうするか、具体的に議論できたらいいと考えております。
 それでは、次の委員、お願いします。坂﨑委員ですか。
【坂﨑委員】  坂﨑です。おはようございます。
 今日の委員の皆様のお話を聞いて、同じ現場の人間として大変共感を持ちました。
 2つのお話をいたします。基本的には、今後の課題ということでお話をしたいと思います。
 1点目は、3歳未満のことです。鍋田先生の話した重要性と課題については、ほぼ同様の感覚を持ちました。今後、園に通っている子供たちの支援をどうしていくのかと同様に、誰でも通園制度等でも言われているような、保育所等でも未就園児への支援を含めたことを指針や要領でどうしていくのかは次の課題だなと、聞きながら感じていました。
 2点目は、渡邉先生のお話も大変面白く楽しく聞かせていただき、そのとおりだなと思いました。架け橋プログラムの期待という言葉が渡邉先生から出ました。私も同様です。今回の指針要領で3つの資質・能力が示されたことというのは、ある意味では子供の育ちもそうですが、考え方として、要約して、未就園児ですから、緩やかな感じでの接続は非常にすばらしいというふうに思っています。一方、小学校以降の各教科の3つの資質・能力との緩やかなつながり等を含め、そういうことがお互い分かるような接続の考え方というものが今後大切なのではないかというふうに思われました。
 この1点目と2点目を考えたときには、前回汐見先生からもあったように、3歳未満から3歳以降の保育をどのようにつなげていくのか、考えていくのかということも、今後の課題なのではないかと思っております。
 簡単でございますが、以上です。
【無藤座長】  ありがとうございます。1、2歳児から3歳児へのつながりの問題や、誰でも通園制度を使うか使わないかはともかく、主に家庭にいるお子さん、家庭の支援の問題、また資質・能力が小学校とどうつながっていくのかは、抽象的には書いてありますが、なかなか接続、架け橋の中で難しいところが出てきたと思います。ありがとうございました。
 では、次の委員、お願いします。では、今最初に手上げたのはどなたですか。岸野委員から、すみません、お願いします。
【岸野委員】  失礼します。今架け橋のことも出ましたので、私は小学校との接続に関わって、4名の先生方のお話を伺って感じたことを改めてお話しできたらなと思います。
 本当に園小でのよさとか違いを実感し理解し合うということが進められてきた成果を感じると同時に、これから一歩先の、また協働に向かっていくということが求められるということを改めて感じました。そのためには、3つのことが必要だというふうに思いました。
 1つは、今も報告の中にもありましたが、やはり保育を小学校の先生方や保護者に参観してもらう、見に来てもらう、そして、見に来てもらって終わりというのではなくて、やはり丁寧な対話、先ほども対話ということがありましたが、対話を通して見取りを共有していくことが大事だと思います。例えば、先ほどのような本物みたいなものを作るという遊びの場面を見たときに、本物みたいですごいと言って終わるのではなくて、やはり子供がその対象についてどんなことを感じ気づいてきたのか、どうなふうに試し工夫してきたのか、どう心が動き挑戦してきたのか、そういったプロセスを語り合う場をつくる、見て終わりではなくて、やはりそのプロセスを語り合う場をつくるということが、資質・能力の育ちを共有する上でやはり重要だなということを改めて感じました。
 そして同時に、そうやって見に来てくださると、学校では、そうは言っても時間が限られているから園みたいにはできないとか、家庭ではなかなか思い切ったことができないといったことが言われがちな現状もあるというふうに思います。それは、恐らく時間のことも、先ほど委員の先生がおっしゃいましたが、時間や材料の制約はさることながら、その前提になるような発想とか価値観に関わる問題でもあるのではないかなと思います。
 ですので、2つ目に、小学校の授業とか家庭で過ごす時間の中で、こうした幼児期の学び、子供たちの学びや育ちをどう生かしていけるのか、幼児教育における見方や考え方を織り交ぜながら対話を重ねていって一緒に考えていくということが大事だと思います。先ほど出ていたような、子供の思いと大人の願いをどう織りなしていっているのか、編んでいっているのかといったようなところを、対話の中に入れていければいいなということを改めて感じました。
 同時に、こうした対応が求められる一方で、コロナ禍に相互の参観の機会が失われて、また働き方改革の流れもあり、そもそも対話の機会の確保が難しいといったことも上がっていたように思います。コロナが落ち着いて、架け橋プログラムの動きの中で、いま一度体制を立て直すチャンスが今きているのではないかとも改めて感じました。
 そこで3つ目に、やはり園から参観の機会を呼びかけたり、あるいは園から足を運んで関係をつないだりして、あまりまだ園での子供の姿を見られていない、共有できていない方に対する、より積極的なアプローチが必要だとも思います。例えば先日伺った研修会では、小学校から参観に来られた先生が園庭でドッチボール、保育室で制作遊び、こま回しといろいろ遊びをしているのを見て、園では体育と図工と生活科が同時にやられているんですねというふうにおっしゃったという話を伺いました。子供の姿を見取るという以前に、どこをどう見たらいいか分からないと、非常に戸惑っていた。これは逆に言うと、保育者がどのように子供の育ちを考えて、願い、どうしてそういう環境構成になっているのか、というのを語ること、取りも直さず、それは指導計画のプロセスを保育所の側が見詰め直して言語化するということにつながってきて、保育の質の向上にもつながるのではないかなと思いました。
 また、逆に園から小学校に行った際も、積極的なアプローチが必要だというふうに感じています。見に行って語ることなく終わりになったりとか、集中してとても取り組んでじっくりやっていますねという表面的な行動だけではなくて、その授業の中で子供が何を考え、試し、協働しているのか、それが幼児期とどうつながっているのか、中身に立ち入って、小学校でもっとこういうこともできるんじゃないか、こんなこともやれるんじゃないかということを一緒に考えていくような、より協働していくアプローチということがこれから出ていくといいなというふうに思いました。
 以上です。
【無藤座長】  ありがとうございました。幼児教育側と小学校側の架け橋などで、いろいろ活動されている経験だと思うんですけれど、まずは、ともかく、保護者もですが、小学校側に保育を見てもらわなければならないんですが、いわゆる授業参観と同じですが、1時間見るとよく分かるということはどうもあまりないので、そこにどう対話の時間をつくっていくかなんですが、それも、すごいものをつくったねで終わっていてもしようがないので、なぜそこに至るプロセスがあったか。子供によっての違いも先ほどありましたけど、その辺りだと思うんです。その辺を一緒に考えるという場をどうやってお互いにつくっていくかという、そろそろそこに向かうべきだという御指摘だと思います。ありがとうございます。
 次は、河合委員から先に、河合委員、お願いします。
【河合委員】  ありがとうございます。4人の先生方、御発表ありがとうございました。
 今、ちょうど架け橋期のことが皆さんの話題にもなっていて、私も本当にそうだと思います。架け橋期を地域で考えていく、そしてそれを、形が大事なわけではないんですが、うちの地域で何を大事にするのかを示していくというところにとても期待が持てると改めて感じました。
 その中に、ぜひ高橋委員がおっしゃった、こんな小学校の実践が変わってきているという今回の要領、3法令指針と、もちろん小学校以降の学習指導要領で変わってきた共通のところで実践が変わっているその中身を盛り込みながら、こんなふうに今変わってきていて、今後がこうなっていく、だから私たちはこういうことを架け橋に大事にしますよということが発信されることは、とても大きなことだと思いました。それは、保育をする立場の方々にとっても勇気づけだったり方向性が明らかになる。そして、小学校以降の先生方にとっては、つなげていくのはこういうことでこっちの方向なんだということに確信を持って進めていただける。そしてさらに、保護者や地域の方が、なるほど、今教育保育、小学校以降も含めてこう変わっているんだということを、改めて1つの窓口から発信していくことが、理解を進めていくことにとてもつながっていくのではないかなという気持ちがして、今架け橋期のことを伺っていました。
 ここから2つお話をさせてください。私がちょうど今回の要領改訂のところに関わらせていただき、それを説明して歩かせていただいたという立場からお話をさせていただきます。
 1つは、今日実践ということですので、園内でそれを進めていくということと、地域で進めていくということの大切さです。まず、この新しいことを考えるとき、資質・能力とか10の姿とか、新しい言葉で初め戸惑われて、先生方、いらっしゃいましたが、この5年で、うちの実践ではそれはどういうことなのかということを丁寧に見ながら、私たちの教育保育をどうしていくかというのをそれぞれの園の中で考え続けてこられたことがとても大切なことなんだなと改めて学びました。それは、誰かが正解を教えてくれるために分かろうとするのではなくて、子供との関係性の中で子供が育まれていくために私たちがどうするか。やっぱり1つのワードとか理念みたいなことをどうやってかみ砕いて自分の実践にするかというプロセスが、子供の発達や学びに大きく影響していく。つまり、実際に届いていくことなんだなということを改めて感じています。
 そのために、これは最後に質問したいんですが、いろいろ子供主体の保育に変わろうとしている実践が広がってきたというお話もありました。そのためにも、恐らく、様々な設置主体の、先生方はもちろんなんですけど、園長先生とか、その園を運営している先生方へのさらなる啓発ということも大切なことなのではないかなと思います。それが、さっきお話しさせていただいた、架け橋であるような、小学校以降もこう変わってきているんだという具体の関係性の中で伝えていくことがとても効果的ではないかなというふうに思いました。
 そして、あとはもう進んでこられているように、園内で自分の保育を開いて、それをみんなで考えていくこと、さらにそれをちょっと外の方にもちらっと開きつつ一歩広げていくことが、次のお話しした地域で充実していくということにつながるのではないかと思いました。
 そして、地域のこと、これで最後にいたします。改めて自治体の役割の大きさを感じます。今日の御発表や資料の中にも、様々温度差があるというのはまさにそのとおりだと思います。その中で、この論点はまた今後以降になると思うんですけれども、1つのテーマでみんなが集い合うようなきっかけをつくるということ、それがまず大事で、園の先生方はそんなことがあったら、ぜひ参加していくようなムーブメントを高めていくこと。そして、そこの中では、今ありました公立幼稚園などが行ってきた公開保育であったり、環境を通して行う教育のリアルな実践の積み重ねみたいなことを生かしながら、さっきハブというお話を秋田先生もおっしゃいましたが、ハブとして使える力を大いに活用しながら進めていただくことが大事かなと思います。
 今、国公立幼稚園ということをお話ししましたが、もちろん地域で熱心に幼児教育研究しているグループもあろうかと思いますので、そうした努力を資源がその地域にあるのかということをまず捉えた上で、いきなりみんなでどうぞというのはやっぱり自治体全部でやる必要があるんですが、それぞれが培ってきたものを上手に合体させていくというか、そういうような視点もこれから大切ですし、そういう資源があちこちにあるんだろうなというふうに思いました。奈須先生のお話にもありましたけれども、皆様のお話にあったとおり、エージェンシーの話もありました。私は、これは幼稚園教育要領の中に既に総則のところで、幼児とともによりよい教育環境を創造するよう努めるというふうに書かれているところに、そこの土台はあるように思います。
 ですから、これまで書かれてきたことをもう1回解説し直すというか、解釈し直してみんなのものにしていくような、そういうプロセスがこれから大切なのかなと思います。奈須先生のおっしゃった、子供の思いに教師の願いをかけるということも、今日冒頭の説明にありました指導計画の作成のところにも、そうした共通の部分もあるかと思いますので、もう1回今あるものを見直して、よりこれからの教育保育にぴったりくるような説明の仕方ということが大事かと思いました。
 長くなってすみません。最後に、もし時間があったら質問させてください。子供主体の保育を進めていこうとする園が増えてきたということに関連してですが、きっと1つの園だけで進めていくのはとても大変だと思うんです。そうした園が進めていくために支え合うような仕組みですとか、具体的にはどんなふうに変わろうとしているときに相談されたり何かを参照されたりしているのかについて、お時間があったらぜひ教えていただきたいと思います。
 以上です。ありがとうございます。
【無藤座長】  ありがとうございました。最後の、園が互いに支え合っていくという辺りは、次回以降の議論の中に取り上げられると思いますので、多分、十分検討したいと思います。趣旨の中心部分は、実践の具体的なところで要領指針を参考にしていただきながら、目の前の子供との関係の中で考えていくということがどこまで広がるか、また、その広がってきたときにそれを自治体なり地域なりとしてどう生かす仕組みにしていくかという辺りをかなり具体的な示唆だと思います。ありがとうございました。
 次は、古賀委員、お願いします。
【古賀委員】  よろしくお願いします。4人の先生方、興味深い御発表ありがとうございました。
 冒頭に、資料1で御提示いただきましたものと、本日の御発表を絡めて、これまでの先生方のお話とも重なるところがありますが、幾つか申し上げたいと思います。
 まず、資料1の3ページ目ですけれども、幼児を捉える視点の例というのがございます。本日のお話も踏まえてもう少し整理をすれば、非常に具体的な今の子供の姿理解と、家庭環境や家庭での経験などの背景的な情報も踏まえた、多少抽象化して長期的に捉え続ける育ち理解という理解が2つあるのではないかと思います。つまりは、左側の計画の作成のところの一番上に書かれている幼児の生活する姿から発達を捉えるというのは育ち理解のほうで、もう一つ保育の展開において重要な今の姿理解というのがあって、そこに子供の関心や実現したいと願っていることが表れてきます。つまり、幼児の生活する姿から現在の関心や実現したいことを捉えるということと、それを育ちという長期的な視野で位置づけて、10の姿や教育課程を念頭に置きつつねらいとか内容を考えること、この2つを折り合わせて、まさに奈須先生が折り合いというふうにおっしゃってくださいましたけれども、この2つを折り合わせて環境構成や援助を行っていく力量というのが保育実践には必要とされていると考えます。
 それから、先生の思いとか願いにつきましても、ここの表記のみですと、何となく個人的な思いとか、園で伝統的に引き継がれているものでも問題なさそうに一見見えてしまうんですけれども、重要なことは、乳幼児期の発達にふさわしい、その子の育ちにふさわしいものである必要があると思いますので、それが分かるような記載が重要になるかと思いました。また、これはちょっと細かい表記上のことですけれども、先生という呼び名、先を生きる先生という関係を現す呼称については、ちょっと気になったところです。子供という用語1つ取っても、園種によって漢字とか平仮名組み合わせて様々な用語が今使われており、こういった文章における取扱いがどんどん難しくなっていますけれども、この先生につきましては、学校教育法第22条において保育するということが使われておりますので、幼児教育・保育施設において保育をする専門家は、保育者としてはどうかと思います。
 それからもう1点、渡邉委員の御発表につきまして、行政のいわゆる指導ではなく、個々の園、教師、保育者が実現していく動きを応援する仕組みづくりについて、私も保育者が自立的に保育の質を高めていくことが最も重要だというふうに思っております。が、現在、多様な園や保育の実態がある中で、個々の園というよりは地域に着目する必要があるのではないかと思います。これまでもいろいろな先生がおっしゃってくださいましたけれども、私としては、園内研修と園外研修の間とか、自己評価と他者評価の間を持続可能なシステムとしてつくっていくという発想をしています。これまで多くの地域で幼児教育アドバイザーを退職園長が担ってこられていますけれども、地方によっては人口減少が進む中で人材確保が難しくもなってきています。持続可能なシステム構築を考えるとすれば、現役保育者のミドルリーダーが、園を超えて、地域の園内研修のファシリテーターとして他園の研修を支援しつつ、保育者としてのピア評価を行うといった相互主体評価の仕組みを推進していく必要があるのではないかと思います。
 そのためには、保育者自身がしっかりと保育実践を見合い、質を見取り、事実に基づいて語る力を持ち、資質向上への具体的な手だてを肯定的な見方を持って考え合うスキルを鍛えるという、そういった必要性もあります。ですので、ミドルリーダーの研修体制の構築や、資格免許に関わらず保育者の研修時間保障を行うということが必要ですけれども、こういった取組で身につく保育評価や保育構成の力量、対話のスキルは、自園の保育や保育者間の関係性、また地域全体の保育も、個々の園が内側に閉じるのではなく、学び合い高め合う共同体としての資質向上にもつながっていくと思います。地域のミドルリーダーを中心としたピア評価、相互主体評価と園内研修を組み合わせて行っていく、つまり、園内研修と園外研修の間、自己評価と他者評価の間を、ミドルリーダーを中心とした制度としてつくっていくという御提案をしたいと思います。
 以上です。
【無藤座長】  ありがとうございました。重要なポイントばっかりなんですけれども、最初のほうの全体の構想図というんでしょうか、説明図をもう少し選べるようにしていくということは検討していきたいと思います。
 それから、呼称の件はなかなか難しいわけですけど、法令的な定まりもあると思うんですが、可能な範囲では、保育する専門職と、の園にいる人ということになるんですか、をどう呼ぶかということとか、それから子供も漢字だったり平仮名だったり、子供だったり幼児だったり園児だったりと、それぞれのところで違うんですけど、整理できるものならそうしていただかないと、何を書くにも面倒くさくなるというのが正直なところであります。
 それから、自己評価、他者評価などに対して、地域の園同士の総合的な評価の在り方というのは、言うなれば、園の中の同僚性を園の間に広げるということだと思いますけれど、非常に重要な方向だと考えております。ありがとうございました。
 それでは、鈴木委員、お願いします。
【鈴木委員】  よろしくお願いします。鈴木です。4人の先生方、ありがとうございました。
 お話を伺って、2つのギャップというのがすごく私の中では浮かびました。
 1つは、やはり幼児教育施設と小学校との間のギャップです。架け橋が始まって本当にこれは、幼児教育施設にとってもとても大切だし、よかったというふうに常に思っているんですけれども、やはりどの先生方もおっしゃっていたように、小学校との関係というのはとてもとても難しく、ものすごい差があります。この中で、プロセス、岸野先生がおっしゃっていたように、このプロセスを見てもらうというのはとても重要だというふうに思いますし、プロセスを共有することで、子供の葛藤であったり、いざこざであったり、そういうことを含めて、集団の教育、集団的な教育の中で子供たちがどう育っていくか、個々がどう育っていくかということを改めて小学校の先生方にも御認識いただけたらというのを切に切に願っています。しゃぼん玉の教材を渡して吹いておしまいというのではなく、その保育の場では、どういうふうにしゃぼん玉というものが広がっていくのかというような、その活動の面白さみたいなのも共有していただけたらというふうに思っております。
 もう一つのギャップは、渡邉先生がおっしゃっていたように、保護者との幼児教育施設とのギャップです。保護者は、文部科学省の委託研究でもありますように、遊びをすごく大事だと思っています。大事だと思っているけど、遊びというものの遊び観が、私たちが考えている遊び観なのかというところもありまして、例えばドリル遊びみたいなのも遊びだと逆に思われている可能性もあるということで、この遊び観というのを問いかけていくことというのはすごく大事だというふうに思っています。同時に、その架け橋にまた期待をしているんですけれども、小学校が架け橋の中でどういう幼児教育が大切かというのを発信していただけると、ここもまた保護者の幼児教育観を変えていく1つの力にはなっていくかなというふうに思っています。
 最後、古賀先生が保育する専門職ということをおっしゃってくださったので、あえて最後に、ここは文部科学省にお願いしたいのだけれども、養成採用研修の再度の見直しをぜひお願いしたいというふうに思って終わりにしたいと思います。
 ありがとうございました。
【無藤座長】  ありがとうございます。そのギャップとして幼児教育側と小学校側、また対保護者ですけれど、いずれも理解は広がっていると思うんですが、成果というのとは違うんですけど、尾上先生から見せていただいたような写真で見せても、リアルなものをつくろうというふうになると、それはちょっとずれるので、そこに至ることが重要で、別にリアルにしてもいいしなくてもいいわけですから、そこら辺のところをどうしていくかの具体的な方法、やり方ですか、もっと模索する必要があると思います。
 最後の養成採用研修は、この委員会の枠を超える感じはあるんですけど、幼児教育課としてぜひ問題意識を持っていただければと思います。
 それでは、佐藤委員、お願いします。
【佐藤委員】  4名の先生方、委員の先生方、御発表のほうありがとうございました。今日は学ばせていただいた次第です。
 高橋委員のほうからの内容を聞かせていただいて、小学校においても、子供たちが子供を任せていくというか、子供信じていくというような授業の問いかけをすると、子供が最近生き生きとするなというのを実感しています。これが学びの本質だろうなというふうに思いながら、幼小接続の理解が深まってきているような部分でもあるのかなというふうに思いました。
 また、渡邉委員のほうからは、学ぶことが面白いと。成長するようになることは楽しいことだというようなお話も伺って、まさにそういう学びを小学校のほうでも実現していくことは本当に大切だなというふうに思いますし、そのように各小学校のほうも全力を挙げて取り組んでいるというところも私も感じているところです。
 今日、本日いろいろお話聞かせていただいて、園も小学校も、学習者主体の学びを進めていく、歩みを続けていくことはとても大事だなというふうに感じています。そんな中で、教員や保育者の学習観、指導観は大きなポイントかというふうに思いますし、そもそも私も含めてなんですが、学習者主体の学びというものを肌で経験しているということに乏しいようなイメージを持っています。子供たちに任せきれずついつい教えてしまったりとか、教えられることを待たせてしまうような指導になってしまうことに関しては、今大きな、そこに課題があるのかなというふうに思っています。
 園でも学校でもよい学びを展開していくということが、教員、保育者の使命でありますし、そのよい学びとは何かということは、要領や保育指針、そして学習指導要領も含めて、系統的にシンプルに記されて、同じ視点で認識できるようになっているというふうに私は認識しています。それらを基に、子供たちが教えられることを待っている授業ではなくて、学びは面白いんだ、楽しいんだというようなことを実感できるような授業を行っていく、幼稚園でも園でも学校でも行っていくということが、私は連携の根本になるんだなということを改めて実感をいたしました。折しも、カリキュラムマネジメントということの言葉が充実が求められてきていて、今、私の学校でも教科の枠をいろいろ超えながら、つながりながら、面白い学び、楽しい学び、意味のある学び、目的のある学びを充実させていこうというふうに取り組んできているところです。それをしっかりと進めていくことが、幼小接続、幼小だけじゃなくて幼小中の接続にもつながっていくんだなということで考えていると同時に、冒頭にも申し上げましたように、私たち自身が学習者主体の学びというものを、もっと体感をしていく。教員や保育者がそういった自分たち主体の学びはどういうものなのかということをしっかりとスキルアップして見つけていくということは本当に大事なことだなというふうに改めて感じています。
 以上です。
【無藤座長】  ありがとうございます。まさにそのような方向に小学校は変わりつつあるというか、現に変わってきたというところと、それを対保護者にも、また、幼児教育側にもぜひ発信していただく中で、架け橋が実りあるものになるなと改めて感じました。
 それでは、若山委員、お願いします。
【若山委員】  よろしくお願いします。若山です。4名の先生方の発表をお聞かせいただいてありがとうございました。
 私のほうは、今回の4名の先生方の発表をどういう視点で聞いていたかというと、これまでの教育要領等々、3要領指針の成果や課題という点から聞かせていただきました。幾つかちょっとお尋ねしたいこともあるんですが、もしも時間が許せばお答えいただければうれしいなと思います。
 尾上先生がおられなくなってしまいましたので、すみません。高橋先生にお尋ねしたいなと思ったのが、若い先生方の御意見をまとめられた資料の2ページ目のところにあるんですが、社会に開かれた教育課程というのが、今改訂のところでは結構大きなポイントだったかなと思います。そこの部分が、実際どうなのかが分かりにくいというふうにおっしゃられていて、これは、私が関わっている先生方も社会に開かれた教育課程はそもそも知らんみたいな先生もおられたりして、理解が難しいところなのかなというふうに思っています。
 今までの、特に地域との関わりとか保護者との関わり方というのを新たに見方を持っていくというか、そのぐらい考え方を変える必要があるようなところなのかなとも思っておりまして、この高橋委員がおっしゃられた、若い先生方が分かりにくいとおっしゃるのは、どうやっていけばいいのかという方法論が分からないということなのか、ほかの園でもそうされているけど、実際それを自園でどうやればいいのか分からないということなのか、教育要領等を社会に開かれた教科で理解するときに、読みづらくて分からないということなのか、どういうふうに分かりにくいのかなというのを知りたいな、お聞かせいただきたいなと思って聞いていました。
 続けていきます。すみません。鍋田委員の御発表の中で、1、2歳保育の充実というところも触れられて、これも指針等ではすごく大事な改訂ポイントだったかなと思っておりまして、私、1、2歳の保育の解説はすごくよく書かれている、上からみたいですみません、すごくよく分かりやすく書かれているし、大事なポイントがすごく抑えられて書かれているというふうに読んでいるんですが、この課題の中で、何となく領域のところについて、未満児保育の領域のところの育て方について課題は触れられていないんですけれど、今回のこの改訂を踏まえて、未満児の保育というのを指針や解説を踏まえてどう取り組んでいくのか、そこに課題感というのはなかったのかなということを疑問に思いながら聞いていました。
 最後、渡邉委員なんですが、小ぢんまりしてきた感があるというのが、私、結構びっくりして、あんまりそういう印象がなかったので、むしろすごく伸び伸び、個性が豊かな子供たちが増えてきているなという印象をすごく私は富山県では感じていたので、そうなのかというふうに思って拝聴しました。その中で、5領域というか、発達の側面は子供は多様だと思うんですが、どんな発達の側面において小ぢんまりしてきたという感じがあるのか、全体的にそういう実態があるのかという、子供を理解したらどういうふうに捉えていけばいいのか。どの発達の側面で特に小ぢんまりしてきているのかなというのがあれば教えていただきたいなと思って聞いていました。
 以上です。
【無藤座長】  ありがとうございます。お三人の委員の御質問、それぞれ時間がないので、一言ずつになっちゃうんですけれど、高橋委員からお願いします。さらに開かれた教育課程の辺りですね。
【高橋委員】  御質問ありがとうございます。先生がおっしゃられた全てのことに当てはまるかなというふうに思ってお聞きしておりました。
 若い先生ですので、そこまで考えられないよ、自分のことで精いっぱいだよというところもあるかもしれません。また、この表記、解説にも載っているんですけれども、具体性が少しないので、そこも厳しいところなのかなというふうに思っています。若い先生たち、教育要領すごく読んでいるんですけど、こういうところが分からない、難しい、この表現というところを、園内でも開かれたというところはすごく討論したところでございました。
 ありがとうございます。
【無藤座長】  ありがとうございます。鍋田委員、お願いします。1、2歳児の領域を含めた課題。
【鍋田委員】  ありがとうございます。ここの部分は、保育現場では0歳児は0歳児期として大事な部分があるし、1、2歳児期にもしっかり注目をして、この時期の養護の部分を充実させながら、子供の遊びのほうに目を向けてというところで、まだまだ個人差がたくさんあるところでは、各園で、今、目の前にいるこの子たちのためには何が必要かというところをしっかり捉えていこうというところはあるかと思います。
 課題については、もう少し私自身が考える必要があるので、ここですぐに答えがまとまらないのですが、そういった園の状況です。
【無藤座長】  ありがとうございます。では、渡邉委員、小ぢんまりとしたという辺りのことです。
【渡邉委員】  社会がよい子像を求め出しているという感じなのと、保育者が、多分、どこを見ているという言い方か分からないけど、保護者を見ているのか行政を見ているのか分からないですけど、子供たちの凸凹さを許容するだけの器が小さくなってきているような感じがしています。これは例えば監査1つにしても、結構細かいところ、3要領・指針の解説書にこう書いてあるでしょうみたいな形でやられてしまったりとか、保護者の方が安全にしてくださいと言われたら、それをこちらはすべて受けなければいけないという話になると、汐見先生が言っておられましたけど、子供は10の力があったら12の力を試したい、12のことができたら14の力を試したいという伸びようとする力を持っています。そのような伸びようとする力を押さえつけて、これで遊びなさいと言われたら子供はその中で遊んでいるし、その中でも一応育ってはいる。
 だけど、本来的にもっとやりたいことがあるということがどこまで本当に許されているような保育だろうかというと、コロナ禍では、結構禁止することが多かったというのもあったりするし、園もこのことに慣れてきたというところの中で、もう1回子供たちが本当にやりたいことはどんなことだというような議論や、子供たちが生活する場の豊かさを改めて考えておかないと、子供というのはどんどんどんどん小ぢんまりになっていくのかなという、その危機感を私は今感じていますということです。
 以上です。
【無藤座長】  ありがとうございました。まだまだ御意見あろうと思いますけれども、時間ですので、ここまでにさせてください。
 それぞれ発言時間がかなり短かったものですから、この場で御発言いただけない御意見がありましたら、メールその他で事務局にお寄せいただければと思います。
 それでは、最後に事務局より連絡をお願いいたします。
【横田幼児教育企画官】  次回の検討会は、資料6のとおり2月26日月曜日、15時から17時を予定しております。次回についても、無藤座長から御指名のあった委員の先生方からの御発表をお願いしたいと考えております。御発表をお願いする委員の皆様には、改めて事務局より御連絡をさせていただきますので、どうぞよろしくお願いいたします。
 また、4月以降の日程調整につきましても、この後、事務局より御連絡をさせていただきますので、どうぞよろしくお願いいたします。
【無藤座長】  ありがとうございました。ということで、しばらくは委員の御発表を順次お願いしていく予定であります。
 それでは、本日予定した議事は全てここで終了いたしましたので、閉会といたします。どうもありがとうございました。
 
―― 了 ――