児童生徒の自殺予防に関する調査研究協力者会議(令和5年度)(第2回) 議事要旨

1.日時

令和5年12月15日(金曜日)10時00分~12時00分

2.場所

Web開催

3.議題

  1. 自殺予防教育の更なる充実について
  2. 「ICTを活用した悩みや不安を抱えた児童生徒の早期把握・早 期支援」の取組について
  3. その他

4.出席者

委員

    新井委員,赤間委員,川井委員,窪田座長,阪中委員,津田委員,坪井委員,松本委員,宮田委員

文部科学省

 伊藤児童生徒課長

5.議事要旨

【座長】  おはようございます。本日もどうぞよろしくお願いいたします。
 それでは、早速、議題に入りたいと思います。議題の1、自殺予防教育の更なる充実についてです。
 まずは資料1及び参考資料2に基づいて、事務局から説明をしていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。
※事務局より資料1、参考資料2の説明があった。
 【座長】  御説明ありがとうございました。実践的な自殺予防教育のモデル作成に向けてということでの御意見をいただきたい論点について御説明いただきました。
 それでは、委員の先生方から、御意見、御提案があれば、どうぞよろしくお願いいたします。いかがでしょうか。
 では、委員、どうぞ。
【委員】  よろしくお願いいたします。
 今の事務局からの説明や前回の協議などを踏まえまして、いろいろ考えているところですが、私としては、下地づくりの教育活動に注目しております。もちろん、核となる教育活動等も全て重要ですが、私としては、下地づくりの教育活動に関して、触れさせていただければと思っております。
 資料1の北海道教育委員会の教職員アンケートの結果で、自殺予防教育を行っていない理由で、「行いたいが、具体的に何をすればよいか分からない」、「実施する時間を確保することができない」という回答の割合が多くなっておりますので、こうしたことを踏まえて、核となる授業以外に、日常的にいつでも下地づくりとして自殺予防教育を行うことができるし、行っていく必要があるということを、もう少し広く伝えていくことが必要と考えております。
 今、進められている不登校対策のCOCOLOプランには3つの大きな柱があり、その一つに、「学校の風土の見える化を通して、学校をみんなが安心して学べる場所にします」ということが大きな柱になっていますので、そうしたことも自殺予防教育において、核となる授業と併せて、もう一つの大きな柱として、安心して学べる学校づくりを位置付けることが大事であると思っております。その中で、具体的には、3つ考えており、授業に関わって2つ、教師の子どもとの対応で1つです。
 1つ目は、事務局から説明がありましたが、参考資料2の自殺予防につながる学習内容・活動に示されている、保健体育や特別の教科 道徳などの個別の内容・活動もありますが、それ以外に全ての授業に通用するような取組も生徒指導提要に書かれておりまして、心理的安全性に関わる点について、前回も話したことと重なりますが、授業において自己肯定感や自己有用感を育む授業の工夫が求められており、生徒指導提要には「失敗を恐れない、間違いやできないことが笑われない、むしろ、なぜそう思ったのかという児童生徒の考えについて児童生徒同士がお互いに関心を抱き合う授業づくり」が求められる、とあります。児童生徒の個性が尊重され、安全かつ安心して学習できるように配慮することが不可欠で、そうしたことが非常に重要な、全ての授業で必要な取組であり、これが自殺予防教育につながる心理的安全性を重視する授業であるということがはっきり分かるように示し、そういうことを行うことが自殺予防教育の取組の一つであることを先生方が意識できるように伝えていくことが必要であると思っております。これが1つ目で、心理的安全性を重視する授業ということです。
 2つ目が、援助希求的態度を育成する授業です。グループワークの重視についての説明がありましたが、グループワーク、協働的な学びが非常に効果があると思っております。生徒指導提要では、協働的な学びについて、道徳教育と総合的な学習の時間において書かれています。総合的な学習の時間においては、「容易に解決されないような複雑な問題」の探究は、「物事の本質を見極めようとする姿勢」につながること、「複雑な現代社会においては、いかなる問題についても、一人だけの力で何かを成し遂げることが困難な状況が見られることから、他者との協働が不可欠です。」「他者と協働的に課題に取り組むことにより、学習活動が発展したり、課題への意識が高まったり、自分とは異なる見方、考え方があることに気づくことで解決の糸口もつかみやすくなったりします。」とあります。総合的な学習の時間は全教科と関わるものですから、この視点を全教科にも生かすことが必要ではないか思っております。また、生徒指導提要で、高校の道徳教育において、「答えが一つではない課題に誠実に向き合い、それらを自分のこととして捉え、他者と協働しながら自分の答えを見いだしていく思考力、判断力、表現力等や、これらの基になる主体性をもって多様な人々と協働して学ぶ態度を身に付けることが目指されます」とあります。高校には道徳の教科はなく、学校の教育活動全体を通じて道徳教育を行うこととしていますので、今述べたことが全ての教科で対応することとして書かれていると理解できますが、生徒指導提要を御覧になって先生方が意識して、そのように実践しているかというと、必ずしもそうでないと思いますので、そういう考え方をはっきり打ち出していくことが必要だと思っております。
 援助希求的態度については、個々の児童生徒の心理的要因だけじゃなくて、日本人の文化的・社会的要因にも目を向けることも必要であると思います。少し話が広がってしまいますけれども、例えば、インドでは、人は迷惑をかけて生きるのだから、迷惑をかけられたら許しなさい、迷惑をかけてもいいんだよと教えられるそうです。どうしても日本は、人に迷惑をかけないようにしなさいという考え方が教師の発想の基本にあると思いますので、広い視点から、教師の価値観も見直していくことが必要であると思います。また、援助希求的態度というのは、なかなか簡単に出せないということを、イギリスのチャーリー・マッケジーが描いた『ぼく モグラ キツネ 馬』というベストセラーとなった絵本がありますが、話の中で大変勇敢な馬に、孤独な「ぼく」が、「いままでにあなたがいったなかでいちばんゆうかんなことばは?」と「ぼく」が尋ねると、「馬はこたえた。“たすけて”」という場面があります。「助けて」が最も勇敢な言葉である、つまりSOSを出すのには勇気が要るし、時にはプライドが邪魔する、そういうことも先生方に理解していただくことが必要と考えます。自殺希少地域の研究がありますが、自殺が他地域より少ない要因の中に、甘えたり弱音を吐いたりして援助希求を出すことが報告されています。また、適切に依存できるネットワークを築くことが自立へと踏み出す一歩であるという考え方もありますので、そうしたことを含めて援助希求的態度を育む授業が必要であると思っています。これが2つ目です。
 3つ目は、SOSを出したくなる人間関係をつくることです。自殺予防の手引きには、「担任教師による個別面談」として、「時間が許せば、困りごとの有無にかかわらず、短い時間であっても全員と話をする機会が持てることが望ましいと思われます。現時点で悩みや不安がない子供であっても、この段階で個別に話をしておくことで、危機に直面した際に気軽に相談できる素地を築くことになります。」と示されています。
先日、北海道新聞に、札幌南陵高校の校長先生のお話が紹介されていまして、校長室を、「なんでも相談室」にして、校長室の前に、昼休みや放課後に、「どうぞノックして入ってください」と貼紙をしているのですが、毎日、生徒が雑談をしに来るそうです。時には、彼氏の誕生日にどんなプレゼントしたらいいかみたいなど、いろいろなことを話しているそうです。校長先生は、「担任の先生以外にも相談できる大人がいた方がいいじゃないですか」、「何かあったときに話しかけてもらえるように日頃の対話を大切にし、生徒の変化に気付くアンテナを張り巡らせている」と話しています。ある目的の面談だけじゃなくて、いつでも話ができる雰囲気をつくること、進路面談という目的で呼んでも構わないと思いますが、そういう機会に気軽におしゃべりができる関係をつくることが、援助希求的態度の育成につながると考えます。3つ目は、SOSを出したくなる人間関係を、特に教師と子どもたちの間につくるということです。
 以上3点、お伝えさせていただきました。
【座長】  ありがとうございました。既にある教育活動であるとか、今回の生徒指導提要も含めて、新たなものというよりは、その辺りを体系化して、うまく周知することで、既にやっていらっしゃることについての理解も深まるし、取り組みやすくなるという、大変具体的で分かりやすいお話でした。ありがとうございました。
 それでは、ほかの委員の先生方、いかがでしょうか。
 今のお話は、ずっと出している、いわゆる自殺予防教育の全体像のピラミッドのところでいきますと、最後のお話なんかは、校内の安心・安全な環境づくりや相談体制ということでしょうし、それから、下地づくりの教育を、既存の生徒指導提要と関連づけてお話しいただいたもので、これまでの、私どもなど長く関わっている者からすると、これまでやってきたこととの整合性という点でも非常に分かりやすく整理されるかなと思いました。いかがでございますか。
 委員、どうぞ。
【委員】  おはようございます。
 そもそも論みたいな話なんですけど、委員にお聞きするのも、一ついいかなと思っていまして。
 というのは、来年度、この実践的な自殺予防教育のモデルの検討・作成というステップに踏み出そうというところの背景、理由なんですけれども、先ほど事務局から説明があったように、平成26年に子どもに伝えたい自殺予防のところで、自殺予防教育導入の手引きというのをつくり、そして、その後、先ほど事務局から説明あったように、各教科、例えば、保健体育、道徳、特別活動なんかで自殺予防教育につながる要素が入っていますよという、こういったものをつくり、また説明したりしてきたと。そして、さらに平成28年ですか、北海道での取組でのアンケートで、時間がないとか、具体的にどうやったらいいか分からないというような話も出てきているという中で、今回、もう一歩進んで、国としてモデルを示そうということの背景事情というのをどういうふうに整理しておくかということも、一つ重要かなと感じています。ですので、総括という言い方も変ですけれども、これまでやってきた取組の中で、言うなれば、ちょっとざっくり言ってしまうと、いろいろやってきたけれども、やはりまだ足らないところがある、もしくは現場に響かないところがある、現場でうまくワークしないところがあるというようなことを議論して深めて整理しておくことが必要なのかなと考えております。
 ですので、例えば、さっき委員と言ったのは、北海道でのこのアンケートで、時間がないとか、それから具体的に何をやっていいか分からないというのは、ここはもう少し解読していくとどういうことなのかなということを、もう少し見ることができれば教えてほしいんですけれども。今日、この今でなくても、機会改めてもいいので、少し現場。学校の現場では、どういうふうに止まってしまっているというか、試行錯誤しているというのかといったところを少し解読していただけると、私も少し理解できるかなというふうには思いました。
 以上です。ほとんど質問ですけれども、以上です。
【座長】  ありがとうございます。
【委員】  今、委員が総括する必要があるとおっしゃいましたが、できない理由はここに挙がっているわけです。何をしたらいいか分からない、それから時間がないと。しかしながら、できているところもあるわけです。例えば、座長が北九州でスクールカウンセラーと学校がうまく連携しながらやっている。あるいは委員が加古川で小学校5年生から中3まで取り組んでいる。あるいは、それ以前に北海道でも、北海道の保健局、教育委員会と一緒にパンフレットや動画を作ってやってきている。あるいはさいたま市でも全市を挙げてやっている。なぜやれているのかということも私は調べたほうがいいと思うんです。なぜできないのかということと同時に、やれているところがある。そこの成果がどうかということも検証しなければならないのだけれども、どうすればやれているのかということを示していくことが必要なのではないか。やれていないというところからだけスタートしていくと、進むべき方向が見えなくなってしまうような気がします。今言った、既にやれている3つのところを参考にすることが大切なのではないかと思います。
 私も、仙台市や兵庫県に多少なりとも関わって、うまくいっているかどうかは別にして、自殺予防教育を進めています。そのときに、取り組もうとする意欲を、教育委員会が強く持っているか、あるいは学校単体でいえば学校長が持っているが、あるいは教職員全員がやろうとする意識を共有してやっているかどうかが、成否を左右する。だから、意識喚起というか、取り組む意識というものが、どうやって生まれてくるのかというようなことも含めて、やれているところを少し調べて前へ進めていくという視点が必要かなと思いました。
 以上です。
【座長】  ありがとうございました。
 その点とも関連しますけど、委員、先ほどの委員の質問に関連したところで、少し簡単にお話しいただけるとうれしいです。
【委員】  今、委員からもお話ありましたが、この北海道教育委員会の調査が行われた時期に、私も北海道教育委員会におりましたが、自殺予防教育に一生懸命取り組んでいる学校がありますし、教育委員会として、いろいろ学校と連携し、大学の先生とも連携して取り組み始めている時期でした。そういう中で、こういうデータが明らかになり、非常にショックを受けましたが、できている学校もあることは間違いないので、委員がおっしゃったように、その辺りのところを、できない理由も含めながら、どういうふうにすればできるのかという視点で確認していかなければならないと考えます。できる方向につなげる要素を考えることが必要と思います。
【座長】  ありがとうございました。3点目についてはどうでしょうか。
【委員】  少し話が広がるかもしれませんが、先ほど触れたさっきの不登校対策COCOLOプランでは、「学校風土の見える化」について、「文部科学省において、学校の風土等を把握するためのツールを整理し、示すことを検討」していると示されているのですが、学校が安心・安全な場所であることが見えるようにしていく中に、不登校だけでなく、自殺予防教育の観点も入れて、安心して学べる授業が行われているのかということが、一緒に見えるようにするといいと考えます。学校を責めるわけではなくて、うまくいっている学校は、心理的安全性が高まっているということを、なぜできていないのかということを含めて、不登校対策とも連携させて見えるようにするといいと思っております。
【座長】  ありがとうございました。
 ちょっと今のお話の関連で言うと、学校の環境づくり、それから下地づくりという部分は、自殺に限らず、不登校もそうですし、暴力行為とか、そういう不適応、いろいろなことに共通した土台部分です。いじめももちろんそうですね。そういう意味で、不登校対策のところで考えられていること、いじめ予防のところで考えられていることと、ここがまた別途にやるようなことのないようにというか、その辺りはぜひ事務局のほうで整理していただいて、協働的にやれる部分はということになります。
 さいたま市さんに伺いたいところではあるんですが、私もちょっと考えてきたこととして、自殺予防教育の構成要素とか具体的な内容を明示していくということと同時に、実施体制として、どうやっていけば、それがきちんとやれるのかという部分ですね。その部分についても同時に明らかにして示していかないと、プログラムだけが明示されたとしても、やっぱり一部の学校にとどまるというようなことがあるのではないかと考えてきていたこともございますので、改めて、その辺りの、どのようにしていくと、きちんと推進してできていくのかということについては、さいたま市さんを含め、北海道も含め、それから北九州市も含め、先ほど挙がっていたようなところのことについては整理して入れていく必要があるかなと考えています。
 この論点を、ここぐらいまでにさせていただけたらと思います。
 ほかに先ほどの事務局の御説明に関連して、御意見、御提案等ございましたら、いかが。今の点を一つの御提案として受け止めたいと思っています。
 委員、どうぞ。
【委員】  ありがとうございます。今のこととはまた違う視点というか、お話をさせていただきます。
 この間、私、教育委員会から頼まれて、教員の方への人権教育というようなところの講座を持たせていただくということがあるわけですけれども、そうしたときに、取組として、憲法の条文、あるいは子どもの権利条約の条文、そうした学校教育に関する部分のところを抽出して、参加している先生たちに、一つ一つ分担しながら読んでいただいたんです、声を出して。人権とか権利ということ、確かに社会科などでお話をなさっている先生たちなんだけれども、アンケートの中で、憲法の条文自体に触れたことがなかった。初めて声に出して読んだ。子どもの権利、生きる権利とか、成長・発達する権利も、意見表明権も、あるいは守られる、様々なことから守られる権利、そうしたことについても初めて目にしたし声に出して読んだという、そのアンケート結果がたくさん返ってきたんですね。子どもたちに人権ということを教えながら、教員たちが権利ということは何かとか、しっかり、本当は憲法にもあるし、国連文書にもあるのに、しかも比準されている文書であるにもかかわらず、きちんと中身が分かってらっしゃらなかったということがすごくあったし、そしてまた、そこで私たちの現場で人権とは何かということを、実際に虐待やいじめで苦しんでいる子どもたちの現場でつかんだ言葉としてお話をさせていただく。私がいつも言っていることで言うと、生まれてきてよかったって感じられるかどうか。あるいはひとりぼっちでないって思えるかどうか。それから自分の道は自分で選択していいと、選べるかどうかという、この3つの柱が人権ということなんですということをお話しすると、なるほどみたいな、そういう言葉で言ってもらえると、確かに子どもたちにも、自分たちが語れるかもしれないと、人権ということを。何か抽象的な理念として把握しているだけではなくて、本当に生きた言葉として、自分たちの現場で子どもたちに語れるようになりたいという、そういうお答えも随分いただいたんですね。今の、もちろん下地教育のところの一環だとは思うんですけれども、やはり人が人を大切にする、自分自身の人権を大切にし、人を大切にするという権利教育、人権教育、そうしたところとの結びつき、あるいはそれが教員たち自身が知っていただくことの大切さというのを、すごく思ったので、下地教育の一つとして、そこもぜひ視点として入れていただきたいなと思いました。
 それともう一つ、これも私たち弁護士会の取組なんですけれども、実際に現場で起きた事件について、毎年1作ずつ劇にして、子どもたちと弁護士が一緒に演じるという取組を、この30年間ぐらい続けてきているのですね。それをたくさんの方たちに見ていただくことで、子どもたちの苦しみを知ってもらうという取組をしてきているわけです。
 そうしたときの、もちろん見ていただく方に、それがどのような波及効果があるかというの、すごく大きいと思っているんですが、実際にこういう言葉で語るのではなくて、芝居にするという形で、舞台で見るということが、どれだけ人に働きかけるかというのは、これは私たちもやってきて驚いているんです。市民の方たちが受ける感覚をね。それと同じように、物語とか、あるいは劇、ロールプレイ、そうした形が与える。教材としての問題になるかもしれないんですけれども、与える感化力というのは大きいだろうと思っているんです。
 この劇をやっているときに、脚本を作り、あるいは弁護士がいろんな役を、例えば、大人たちも言うわけなんですが、そこで子どもたちの言葉に動揺する大人とか、傾聴するしかなくて、何も答えられなくなる大人とかという場面が出てくるんですが、それでいいんだと。その子どもたちに傾聴する、何も大人にも言えなくなるぐらいつらい状態になったとしても、子どもがその中で語ったことを聞いてもらえているという中で立ち上がっていくという場面なんかをつくっていくんですが、そういうことでいいんだというのが実感で芝居の中で分かるじゃないですか。それロールプレイになっていて、現実の場で子どもと出会ったときに、そういう場面、出ちゃうわけですよ。子どものすごい深刻な話聞くと、どうして答えていいか分からなくなる、逃げ出したくなる。ところが、いいんだ、そこにいるだけで、黙っておろおろしているだけで、子どもはそれで救われていくという、そういうロールプレイをしているために耐えていけるようになるという弁護士の教育にもなっているんですね。こういう物語とか芝居とかロールプレイとかというものが教材として持つ力って私は結構大きいと思っていて、先ほどのグループワークというのの中の教材というようなこともありましたけれども、講演とか、目に見える形とか、そういうだけじゃない、そういう、もう少し、違った分野かもしれないですけど、使っていただけたらなということを、ちょっと申し上げたいと思いました。
 以上です。
【座長】  ありがとうございます。とても視点が広がって、大変ありがたい意見でした。
 ほかに御意見いかがでしょうか。
 確かに映画とかそういうふうなもので、非常に短い時間で衝撃をもって多くの人にメッセージが伝わるということもございますね。
 委員、どうぞ。
【委員】  少し話がずれちゃうかもしれないんですけれども、自殺予防教育、授業の中だけが全てじゃないような気もしていて、いろんな休み時間とか、放課後とか、本人たちが向き合っていない時間帯に何となく流す情報というのも結構いいのかなと思っているんです。
 少し、ちょっと手前みそな話なんですけど、ちょっとシェアしちゃ駄目ですかね。
【座長】  どうぞ。画面共有とか。じゃ、事務局、お願いします。
【委員】  これはもう10年以上前に出したものなんですけど、学校における自傷予防という、アメリカのマサチューセッツ州なんかでやっている、自傷する子どもたちに対する啓発用のビデオと教員用の動画、それぞれ15分ぐらいのがあるんですよね。友達が、もしも自分で自分の体を傷つけたら、見て見ぬふりせずに、声をかけてあげて、信頼できる大人につなげてあげようという、それを非常にポップな15分ぐらいのもので解説をしながらやるというDVDを、マサチューセッツなんかだと、休み時間に何となく流しているらしいんですよ。これは結構刷り込み効果としてはよくて、とにかく、子どもたちの援助希求能力を年1回の授業で高めるというのは、問題が深刻な人ほど無理だと思うんだけれども、ただ、こうやって休み時間なんかを活用することによって、子どもたちが自分たちの友達のピンチに気づく、それは結構早くなるんじゃないかなと思っています。
 ただ、1点、注意しなきゃいけないのは、これをやると、多分、相当に子どもたちの援助希求能力は高まってくるので、相談を、少なくとも子どもたちが問題を抱えている子たちを先生のところに連れてきてくれるようになるので、先生たちが追いつかなくなる可能性はあるかもしれなくて、先に多分、教職員のトレーニングのほうを優先しなければいけないという、そういう問題点はあるかもしれないけど、いずれにしても教育をする場は授業だけではないかもしれないというふうに思って、ちょっと意見させていただきました。
 あと、これはちょっとついでにということで、今回の予防教育からずれていってしまうかもしれないんだけど、僕自身は文科省のこの予防教育の委員会に出ていて、いつも思うのは、意外にハイリスクの子たちが、教室でいろんな問題出てくるハイリスクの子たちの支援ということに関して、あまり論じられていないなというふうに、実はずっと思っていて、僕は精神科の医師なので、いつも学校の先生から言われて見ていたりとか、10代の子たちを、また学校に戻そうとすると、学校から拒まれたりするのが、いつも体験しているんですね。もう絶対にリスカやODしないというふうに先生が保証できるなら登校再開でもいいです。でも、そういうふうにしているうちに、どんどんどんどん、その学習の機会とか学校時代がなくなっていって、家で困っているんですね。もちろん先生方の相当な苦労もあることも重々、ほかの生徒との兼ね合いもあるかもしれないけれども、一方で障害を抱えた子たちが、やっぱり合理的な配慮の下でいろんな経験をできるということも大事なので、これをどうやっていくのかという議論も、どこかのタイミングで、ぜひしてほしいという要望があって、その中でリスカとかオーバードーズを繰り返す子たちをどうやって学校で支えていって、どうやって外の機関と連携するのかという各論的な議論もやっぱり必要だと思っているし、今日も実はさっきNHKから取材の依頼とかがあったんですけど、小学生がオーバードーズで救急搬送されたという事件もあったりして、もう多分、教室の中には数人は必ずいるんですよね、そういう子たちが。学校に1人じゃなくて、教室に1人、2人というのは、もう当たり前の中で、その中で、例えば、学校にはどんな教育をしているのか。薬物乱用防止教育は、駄目、絶対みたいな、違法薬物に特化したものをやっているけど、もうそういう状態じゃなくて、10代の子たちの命を一番脅かしているのは、1回やっても、人生破滅しないことが明らかな薬物なんですよね。それを教室の中でどう取り上げていて、今、非行・犯罪予防の文脈で薬物の問題を取り組んできたけど、実は自殺予防の文脈で取り扱わなければいけない状況にも今なっていて、そういったことなんかも、この予防教育を考えている皆さんの中で視野に入っているのかどうかとかですね。そんなことも、ちょっと提言させていただければと思いました。
 以上です。
【座長】  ありがとうございました。
 今のことは、令和3年の審議のまとめの中でも、この辺り、十分ではないけど、触れてあった部分ではあると思うんですけれども、もう少し検討することが必要かなと思いました。ありがとうございます。
【委員】  大変参考になる御意見たくさん聞けてよかったです。
 さいたま市ができているのは何でだろうというところは、実は前回の会議に出席した後で、少し自分たちの活動を振り返ってみたときに、実は系統的に授業のパターンは、もう組まれていて、その授業自体は、そんなに50分間きつきつとか、45分間きつきつなんていうことはなくて、ロールプレイとか話合いを入れて、ましてや養護教諭さんとかスクールカウンセラーもTTで一緒にやれるぐらいの、あまり急ぐ感じのない授業になっているということが一ついいなというのがあって、さらに、ほぼほぼやっぱりパッケージになっていて、困ったら相談していいんだよということを学ぶ学年の授業をやると、同時に、相談する人って、こういう人がいるんだよということを教えるというようなところがパッケージになっていたり、先生たちも、こういうときにはこうするというのをゲートキーパーの研修とかでも積み重ねていったり、あともう一つ、保護者ですね。保護者に、こんなところに気づいたらみたいなプリントを、またその授業をやったときに配っているわけではなくて、多分、年度の初めの保護者会とかで配っているんですけど、相談先であるとか、「TALKの原則」であるとか、そういったところも保護者にも伝えてという、一つのパッケージになっているといいんだろうな、というのがいいことなんだろうなというふうに感じたところです。
 また、まだやっていない地区とか学校があるということで、これからやるとなると、なかなか○○教育で1個授業をとなると、少し抵抗感もあるんだろうなと思うので、ただやらなきゃいけないということはあるので、こういうパッケージの部分で、授業のやり方については、幾つかのケースを示して、各自治体とか学校で選んでやっていいよというようなスタイルの提案の仕方がいいのかなと思いました。
 私、自分の今までのさいたま市のやり方ばかり見てきているので、特別活動型が、すごくしっくりくるんですけど、今日、最初の冒頭の説明を聞いていて、保健体育型も、これもTTもできるし、実施時期も定まってくるし、いいなということも少し感じた次第です。
 以上でございます。
【座長】  ありがとうございます。改めて、その辺のお知恵を体系化していけるといいかなと思いました。
 委員、どうぞ。
【委員】  ありがとうございます。自殺予防教育の内容と文言についてですが、よろしいでしょうか。
 はじめの説明にもありましたように、資料1の2ページ平成26年の『子どもに伝えたい自殺予防』では、「自殺の深刻な実態を知る」とありますが、前回の第1回の協力者会議でもお話ししたように、自殺予防教育を広げるためには参考資料の1の4ページにあるように、「人生の様々な危機について考える」という内容にし、自殺という言葉を出さない表現のほうがいいと思っています。
委員からは、劇やロールプレイなど、実際に体験し声を出すことの大事さについて、ご指摘いただきました。『子どもに伝えたい自殺予防』の22ページにロールプレイが授業案の例として記載されています。「消えてしまいたい」と友だちに言われたときの4パターン(助言する、励ます、感情を理解する、黙ってそばにいる)が示されていて、私自身も自殺予防教育を実施する際、ロールプレイを一番の肝にしているのですけれども、そうして考えてきたことに意味があるということを再確認でき、勇気づけられました。ありがとうございました。
 それから、保護者のことですけれども、ある学校では、多くは来られないんですけれども、自殺予防教育の授業参観について知らせるチラシを出しています。そういう取り組みが、先生方だけでなく保護者にとっても、子どもたちが学び合っている姿を見ることで、自殺予防の理解を深めることにつながるのではないかと思っています。
【座長】  ありがとうございました。私も先日、小学校でやったんですけど、そのときはTTで、授業参観のときに行いました。そういうことをされているところも結構多いですよね。ありがとうございます。
 いかがでしょうか。そろそろ議題の2に行かせていただけたらと思いますけれども、よろしいでしょうか。
 それでは、議題の2、ICTを活用した悩みや不安を抱えた児童生徒の早期把握・早期支援の取組についてに移りたいと思います。
 資料2に基づいて、事務局からの説明をよろしくお願いいたします。
 ※事務局より資料2の説明があった。
【座長】  ありがとうございました。かなりいろいろなことがイメージできて、非常に有意義でした。
 それでは、この件についての御質問、御意見、御提案等ございましたら、どうぞ。
【委員】  
 単なる質問なんです。今、事務局から御説明のあったICTの聞き取り、教育委員会等の声のところなんですが、中身じゃなくて、ここで声をまとめていただいたのは、アプリをつくっている事業者の3つということで理解していいですか。教育委員会とか学校現場の声とは違うということですかね。
【事務局】  委員、ありがとうございます。事務局です。
 すみません。事業者というふうに書いてあって、分かりづらくて申し訳ないんですけれども、これは教育委員会も入っておりますし、アプリ事業者自身の声も両方入っております。
【委員】  なるほどです。これは、じゃあ、Aというアプリを使った、作った事業者、それから教育委員会、現場という意味ですか。それをアプリごとに整理しているということですか。
【事務局】  そうです。事業として委託しているので事業者という名前になっておりますけれども、実施主体が教育委員会で、そこにアプリ等の開発を再委託している場合ですとか、あるいは事業者自身が文科省の委託を受けて、どこかの教育委員会と連携しながらやっているという場合も両方入っております。
【委員】  なるほどですね。そうか。そうすると主語がちょっとずつ違うんですね。細かく見ていくと、マル1、マル2とか書いてあるけれども、主語は、誰々がこう言っている、誰々がこう感じているというときには、その主語がそれぞれ、解釈しながら読まないと、誰が言っているかというところがうまく酌み取れないですかね、そうしたら。
【事務局】  そうですね。いずれにせよ、事業者は教育委員会も入っておりますし、学校の声というところも入っております。また、アプリ事業者も入っておりますけれども、率直な声はいただいているかなとは思っています。
【委員】  分かりました。ありがとうございます。
【座長】  ありがとうございます。
 それでは、委員、どうぞ。
【委員】  ありがとうございます。今の同じA、B、Cの事業者のところを見ていて、質問が1つあって、これは日々の記録というような表現がありますけど、やっている学校とかというのは、毎日、子どもたちに入力をさせて、毎日、担任なり誰かが確認するという体制でやっているのが、今のやっている、この実態なのかということが質問です。
 もう一つは、仮にそうだったとすると、当然、C事業者のところにあるように、担任の先生がすぐ確認するための時間が確保できないというのは、まさにそのとおりだと思いますので、当然、見逃すことが出てきたりということが出てくると思うので、B事業者のところに書いてあるように、見逃したときの責任問題というような心配が起こることは当然かなというふうに感じています。
 それだと、うちの学校もそうですけれども、欠席や遅刻の連絡も、今、ICTを使って受ける形になっていますし、様々なことは、朝の段階なのか分かりませんけれども、把握をしなければいけない状況がありますので、担任なりクラスの様々な業務を取り扱う中で、ICTが入ってきたことによって負担増になっていることは間違いないなと思いますので、そこのところを解決していかないと、なかなか難しいかなというのを現場としては感じています。
 以上です。
【座長】  ありがとうございました。
【事務局】  委員、ありがとうございます。
 おっしゃるとおり、日々、毎日回答している場合と、あと定期的、あるいはこういうアプリを活用したほうがよいと学校が判断した場合に導入している場合と、両方ここには入っております。恐らくBの事業者は、日々というふうに書いてありますので、毎日少し、その日の気分などをアプリで回答しているというふうなことで、毎日やっていらっしゃると思います。
【座長】  ありがとうございました。
 ほかにいかがですか。昨日も私、スクールカウンセラーで数時間出向したんですけれども、職員室の一番前のところの大きなテレビに欠席連絡とか、何時頃出校しますとか、どういう理由でとか、だーっと学校全体の分が出ていてですね、というような感じで、確かにその辺りがかなりの学校でも進んでいるのかと思いますけれども。
 ほかにいかがでございますか。
 委員、どうぞ。
【委員】  児童生徒が自分の心の危機や状態を発信する回路を、私、たくさん用意しておくことは必要だなと思っているんです。これは端末ですから匿名性はなくなる。誰が打ってくるのかというのは分かる。一方で、SNSの相談体制、県レベルや市レベルでやっている。これは匿名性でやり取りができる。LINEのようなものを使って発信するのが得意な子もいれば、あるいは直接話をする方がいいという子もいる。だから、一つは、たくさん回路を用意しておくことが必要だろうというのが大前提です。
 その中で、ここに出ている先生の気持ちとか実態というのは、私もこのとおりだなと思うんです。要するに、お金のつき方がアプリの導入、システムの構築というところに中心が置かれている。そのような取組を進めることによって、間違いなく、見逃してはならないというプレッシャーもあり、教員の仕事が増える。仕事が増えるのだけれども、そこに人がつかない。だから、これ、担任が毎日見るということになったときの負担をどうするのか。別に見る人がいるのか。担任が見なくていいということではなくて、ダブルチェックしないと危ないだろうなと思うと、どうしても人が必要になる。導入してシステムができる。でも、それは今までの人員でやってくださいねということになっていくと、この書かれている手間、負担感の増加というのは、もうまさにそうだし、負担を感じながらやっているとしたら、ゆとりがない中で見逃しが起きたり、あるいはすぐに対応するということができない。物は入れた。でも、人はどうするのかという課題があるのではないかというのが一番強く感じているところです。
 それと、やはりリスクの高い子はなかなか発信しない。だからツールを用意して、できるだけ発信の回路は用意しておくのだけれども、それでも出せない子はいるし、捉えられない場合もあるんだということを共通理解しながらやっていかないと、何か導入して全部分かるという万能感みたいなのが変に広がると危ない気がするので、その辺についても目配りしていく必要があるかなと思っています。
 SOSの発信をキャッチするという意味でいうと、さっきのことと絡みますが、自殺予防教育を誰がやるのかということが重要になってくる。先生方が、自分たちが学んだり工夫しながら自殺予防教育をやっていくという中で受け止める力も出てくるだろう。ですから、受け止める力というのが、面と向かっての受け止める力だけではなくて、こういうICTを介しての受け止める力も必要になってくる。そうすると、先生たちの負担を増やさず、しかも受け止める力を上げていくということを、具体的にどう進めていけばいいのかということが大きな課題となってくる。人をどうするのかという視点が、お金の面も含めて必要なのだと痛感しています。
 
【座長】  ありがとうございました。令和3年度の審議のまとめにおいても、マンパワーをつぎ込むということがないと、自殺予防教育についても早期発見についても難しいし連携も難しいというところで、そこは私も非常に強く感じてきた課題だと思います。ありがとうございます。
 ほかにいかがでございますか。
 
【委員】  ありがとうございます。私も質問ということになっちゃうんですけれども、毎日、自分の気分を報告をさせられる子どもたちの負担感というのはどんなものなんでしょうか。私自身が、それ、毎日、今日は気分がいいか悪いかって報告しなきゃいけないと思ったら、すごく苦しいなという気もしていて。小学校の小さいくらいだったら何か言えるけど、高学年から中学生ぐらいになったら、そんなこと聞かれたくないよと思うんじゃないかなと思うんです。その辺の何か情報あれば教えていただきたいと思うんですけど。
【座長】  いかがでしょうか。先ほど事業者の声なんですけれども、そんな中から、子どもたちの声が少し上がっていたりするようなことってございませんでしたでしょうか。事務局、いかがですか。
【事務局】  事務局です。ここにはまだ書き切れていない部分はありますけれども、子どもたちの声というものも、過去の事業で取っていただいていたりするので、それはまた後ほど整理してお送りしたり、この会議でも参考として掲載させていただければと思います。
 少しだけ申し上げると、こういうもののほうが答えやすいという子もいますし、先生おっしゃるとおり、毎日回答するのは少し飽きてくるとか、毎日同じ回答でいいやとか、そういうふうに思ってしまう子もいらっしゃるだろうというふうには思います。
 以上です。
【座長】  ありがとうございました。
【委員】  よろしくお願いします。
 さいたま市、前回もお伝えしたように、いわゆるスクールダッシュボードという形で、子どもたちの学習の状況ですとか、健康とかの状況とか、いわゆる教育相談の状況とかも全部入力をしていて、例えば、A君の情報をみんなで見たいよねというときには、A君の全ての情報が1画面に集約されます。学級、学年、学校全体の状況もデータで示してくれるので、会議ごとにどう使うかということが、多分できると思うんですね。担任の先生は学級の状況だったり、教科の先生は教科の何組の教科の状況とかという形で選択して見ることができるようになるので、そういったところは、これから期待しています。
 それで、またさいたま市、いつもそうなんですけど、先にちょっとやるので、多分、いっぱい失敗というか、トライ・アンド・エラーを繰り返してやりますので、またこの会でも御報告できることがたくさんあるかと思います。ちなみに全校で1月から試行を始めますので、楽しみにと言うと変ですけど、待っていてください。
 ちなみに、この、いわゆる子どもたちの心の状況を確認していく作業ですけれども、今、話題に挙がりましたけれども、朝1回、みんなでログインして、そのときの自分の気持ちの状況とかを文章で入力することもやってもいいんですけど、4つぐらいの自分の今の気持ちを選択して、クリックするだけというような状況をつくってあります。例えば、授業後の振り返りですとか、帰りの会での振り返りとかということも、当初、予定はしていたんですけれども、それはかなりハードルが高い。使わせるほうもハードルが高いし、入れるほうもハードルが高いねということで、今、試行の段階で、まず朝1回、入れるようにしてみようねということでやろうとしています。
 ただ、生徒数10万5,000人ですので、それが一度に入力するとどうなるのかなというところもあるんですけれども、その入力されたものが、例えば、これはやっぱりルールが、今、一旦は決めてあるんですけど、例えば、3日間、非常に気持ちが落ち込んでいる状態のマークが続いた子は、そもそも先生が見ていて、元気がなさそうに見えていると思うけれども、このスクールダッシュボード上でもアラートを発するようにしてあります。
 また、いわゆる単語で「死にたい」ですとか、「生きていても仕方がない」であるとか、「自殺」とかということを文章で入力した場合にはアラートが発生するようになっています。
 ただ、このアラートも、その子が入力したら、すぐに鳴るかというと、そうではなくて、やっぱり大きい母体がありますので、2時間とか3時間、反映するのにかかるので、あくまでも補助的ということを言っておかなくちゃいけないということが一つと、試行を始めるに当たって、いよいよ考えなきゃいけなかったのが、夜、子どもたちが自分の1人1台端末を持ち帰って、家で何か相談したいことを書き始めると、これは一体どうなるんだろうということで、今は夜はある程度の時間のところで入力ができないように設定をせざるを得なくてしてしまうんですけど、それじゃあ、本当の子どもの援助希求に応えられないという課題と、あと24時間のSOSの電話の窓口に、そのままつながるようなシステムにならないのかとか、そういったところを今検討しているところです。
 ごめんなさい。以上です。
【座長】  ありがとうございます。研究結果に大変期待をして、お待ちします。よろしくお願いいたします。
【委員】  すみません。今、委員のお話を伺っていて、委員、教えてもらえたらと思うんですけれども、今ちょっとありましたけれども、不登校の子のスクールダッシュボードの使い方とか、不登校じゃないけれども、その日、お休みした子の状態をどうやって把握するのかという点について、どんなふうにお考えになっているんでしょうか。
【委員】  今のところ、欠席している子は特に、いわゆる病気等で欠席している子は、それを入力すること自体求めないようにしようということは言ってあります。ただ、不登校の子で、いわゆるおうちでオンライン学習とかやっている、オンライン授業を受けている子いますので、その子たちについては入力を求めるというよりも、声かけはするというような流れになっています。
 また一方で、不登校のお子さんをオンラインで支援する組織も、ちょうど私の部署にあるんですけど、持っていまして、今、300人ぐらいが登録してくれているので、そこはちょっと、多分そのダッシュボードとは、また別の部分で、こちらで一旦集約をして、そちら、情報提供するとか、そういったことが考えられるのかなと思っているところです。
【委員】  ありがとうございました。
【委員】  先ほど、ICTを使って子どもたちの声を聞くとか、場合によっては、今後、もしかすると、家に持ち帰って、夜の時間もなんていうふうな話を聞きながら、すげえ、恐ろしいなと思ったんですね。私自身が援助希求は大事だというふうに言いながら、ちょっとそれと矛盾することを言うようなんですけど、もしも自分が精神科医として担当する患者さんに、1人1個の端末を持って、いろんな時間に悩みとかが言えるとしたら、冗談じゃないというふうに思うというか、あっと言う間にプライベートの時間がなくなっていって、多分、僕はすぐにバーンアウトしちゃうと思うんですよね。
 また、いろんなメッセージを出したのに、それを取りこぼされたときの裏切られ感って結構大きいような気はするんですね。それによって、もっともっと深刻に援助希求が失われるような気がするんです。
 ただ、毎回、この文科省の会議に出るたびに、ICTを用いたというのが、もう何年も出てくるので、何としてでも、国はこれを進めたいみたいなんですが、みんな、その恐ろしさを気づいているんだろうかというのを、一応。でも、多分、これは流れとして押しとどめることができないように思うので、本当に人を潰さないようなシステムを工夫する必要があるなって、ちょっと感想ですが、思いました。
【座長】  ありがとうございます。これは人を増やしていただいたからといって、簡単に解決することではないと思いますけど、マンパワーの問題等も含めて、慎重に考える必要があるんじゃないかと思って見ているところです。
 ほかにいかがでございますか。
【委員】  皆さんが話されていることと重なることかもしれませんが、ICTでアセスするというか、測るものについては、もう文部科学省で紹介しているかもしれませんが、業者の宣伝となったら困るかもしれませんが、いろいろなものがあって、それぞれどんな特徴があって、どれくらいの時間や頻度、例えば、毎日実施することを想定しているのか、何問ぐらいの質問で、小学生、中学生、高校生のいずれを対象としているのかなどを紹介して、客観的に判断して選ぶことができるようにするといいと思っております。
 千葉大学の「子どものこころの発達教育研究センター」が文部科学省の委託事業を受けて千葉県立高校生を対象に「子どものストレスチェック」を実施しましたが、ホームページにも公開されていまして、35問ぐらいですから、それほど負担がなくて、結果はレーダーチャートで示されて、それをどう活用するかというYouTubeも公開しており、先生方が、ストレス対処法についてどう指導するかというアドバイスも得られるようになっています。やりっ放しではなくて、どういう指導につなげられるかということのアフターサービスと言ったらいいんでしょうか、そういうことも含めて使えるものであるのかどうかが分かり、それをいかに教員の校内研修につなげていくかということも含めて、選ぶことができるような工夫があったらいいと思っております。
 それから、ダッシュボードの話がありましたが、現在、校務DXのの推進によって非常に進められていますが、この進み方にはすごく差があると思います。私が教職大学院でこういう話をしても、残念ながら北海道の市町村では、さいたま市さんのようには、まだまだスクールダッシュボードが広がっていません。そういうものを進める上でも、何か新しいものができたというより、子どもたち一人一人を見るために、スクールダッシュボードが非常に効果があり、こんな事例もあって、子どもたちをよく見ることができて、先生方の負担も軽減されるということが分かるように進めていく、これは校務DXの担当で進めているのでしょうが、こういう生徒指導の観点からも、意味があるということを伝えていくことが大事なのではないかと思っています。
 あとはマンパワーの話を、皆さんもされていますけれども、本当にこれはこの会議だけの問題ではなく、1人で40人の子どもを見るのと、今、35人以下になっていきますけれども、本当に一人一人の子どもたちを見るためには、30人ならいいのか、25人ならいいのか。教員が学習指導と生徒指導の専門性を併せ持つという日本型学校教育の強みを生かした教育を行いましょうと言われる中、その強みを生かすためには、もう少し一人一人の子どもたち見ることができる人数の学級になったらいいということも考えております。
 以上です。
【座長】  ありがとうございました。
 ちょっと司会の立場から離れるんですけど、先ほどの心の発達研究所のアプリの例が出ましたけれども、あれは先生方にそういう対処方法についてのフィードバックが加わるということだと思うんですが、入力した子どもたち自身、自分の入れたことの結果がフィードバックされて、こういう対処方法が使えるよという、つまり自殺予防教育と、このICTにおけるチェックというものが別物と考えるよりは、それがせっかく入力してくれるんだから、それがつながるというような、そういう取組をしておられるところもちょっと聞いておりますので、そういうことも含めて、この件と自殺予防教育というのがうまく連動するという側面も重要かなと思っております。その辺も考えていけたらなと思います。
【委員】  どう言えばいいのかな。さっき委員がおっしゃったこととも少し関連したり、委員がおっしゃったこととも関連するのだけれども、全てが白日の下にさらされて、そして見えるようになるということで、いろいろな支援がやれるようになるだろうという思いはあるのだけれども、例えば部室が昔は学校の隅っこのほうにあって、そこで何となく先輩と話したり、仲間と教室では言えないような話をしながら、そこが居場所になっていたということもある。何かそれを全部ガラス張りにして、何しゃべっているのか、何やっているのか、みんな見えるようになっていくことで、かえって生きづらくなってしまう子が出てくるのではないかな、というようなことも考えてしまう。今進めているものと全く逆行するような感覚で申し訳ないのだけれども、そうやっていくことの危険性みたいなのを絶えず意識していくことが必要なのではないか。得るものもあるけれども、そこで失っていくものもあるということを、我々がきちんと理解しておかないと、これだけやった、大丈夫なはずだみたいなふうに思って、実は、もしかしたらやらなかったほうがよかったことをやってしまったり、変なところでうまくいっていたものがなくなってしまったりとか、とても難しいことだけれども、国の施策としてやっていくときに、何かそういう自覚みたいなのを持ちながら進めていくことのが、どこかで必要なのかなと、皆さんの話を伺いながら、感想的に思ったところです。何をどうすればということはないのですが、何かちょっとそういうことを感じたので、余計なことかもしれませんけれど、一言言わせていただきました。
 
【座長】  ありがとうございます。何か形ができてしまって、そういう周辺の懸念だとか、留意点とか、そういうこととは別に、形になったものだけがひとり歩きしてしまう危険というのは、あらゆることについてありますので、その辺りをどんなふうに共通認識つくっていくかということも非常に重要な課題だなと思いました。
【委員】  今、委員のお話は、とても自分もそんなことを感じていて、これも質問と同時に、今後考えていただけたらと思うんですが、子どもの声を聞くということも大事だと思うんですが、こういうことに取り組んでいったときに、保護者の方はどういうふうに受け止めているのかという声をちゃんとつかまないといけないんじゃないかなという気が、すごくしています。保護者の方が、こういう取組。さっきの全てがさらされるみたいなことを、どういうふうに受け止めていくのかということを把握していかなくちゃいけないんじゃないかなと思うんですけど、もしも、このA、B、Cとかの事業者のところで、そういう声があるんだったら教えていただけたらなと思うんですが、いかがでしょうか。
 【事務局】  事務局です。
 保護者の方への周知ということですけど、これ、やられているところとやられていないところがございます。やられているところは、例えば、定期的なお便りですとか、そういったところで、あらかじめこういうようなことを取り組むということで御案内をしているところもありますし、あくまで学校における生活アンケートですとか、そういうものの一環であるということで、特に保護者等には周知していないというふうなところもありました。
 私からは以上です。
【座長】  周知した上でというか、始まったモデル事業のところとかで、例えば、保護者から、そういうふうに見ていただいていて非常に安心であるという声が上がっているとか、それともそういう何か、よくあるのは、そういうことで家の問題が学校に漏れてしまうので、ちょっと困っているとか、何らかの形で保護者のフィードバックみたいなことがあれば聞きたいという御意見だったと思いますが、いかがですか。
【事務局】  すみません。そこまではこちらでは把握できていないです。
 以上です。
【座長】  さいたま等で、今までの先行実施で、何か保護者の声で拾っておられることございますか。
【委員】  私ちょっと、実はこのスクールダッシュボードを担当している部署じゃないので、別のところがやっているので、実はその1月からの試行に向けて、保護者の方に、つい先日、御案内が一斉に配られたというところまでは知っておりますし、今までも、ここ2年間ぐらい研究協力開発校みたいなのを幾つも置いてあって、そこからも保護者の声は届いていると思うので、過去でいただいた例と、声と、今その案内に対して届いている声がもしあるのであれば、ちょっとだけ私拾って、事務局のほうにお届けしておこうと思いますので、ちょっと待っててください。
【座長】  よろしくお願いいたします。ありがとうございました。
 保護者の方の中には、スクールカウンセラーに相談することも非常に嫌がる方とか、おられたりするわけでして、難しいお子さんの御家庭は特にですね。
 いかがですか。
 それでは、大変多様な視点から、様々な建設的な御意見をたくさんいただけたかと思います。ありがとうございました。事務局では、今回の先生方の御意見を踏まえて、より深めていただけたらと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。
 それでは、事務局にお返しいたします。よろしくお願いいたします。
【事務局】 本日は御多忙のところ、本会議に御参加いただきまして、また貴重な御意見をいただきまして、ありがとうございました。
 次回の日程につきましては、改めて事務局より御連絡させていただきます。何とぞよろしくお願いいたします。
【座長】  それでは、本日の会議は以上となります。どうもありがとうございました。今後ともよろしくお願いいたします。
 ―― 了 ――
 

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