令和7年3月11日(火曜日)15時~17時
ZoomによるWeb会議
事務局:文部科学省 5F4会議室
(1)令和7年度以降の全国学力・学習状況調査の調査結果の取扱いについて
(2)令和7年度調査の実施について
(3)その他
耳塚座長、大津委員、磯部委員、宇佐美委員、川口委員、佐々木委員、斉田委員、貞広委員、佐藤委員、垂見委員、土屋委員、中田委員、福沢委員、益川委員、松谷委員、 三浦委員、冨士原委員
【議事1】令和7年度以降の全国学力・学習状況調査の調査結果の取扱いについて
・資料1-1、1-2に基づき、事務局から報告があった。主な意見は以下のとおり。
【委員】
○ 資料1-2の質問調査の改善に示されている構成内マトリックスサンプリング法とは何か。
【事務局】
〇 PISAの生徒質問は、分野ごとに設定されており、その一部の分野の中で子供たちが全ての問いに答えるのではなく、ランダムに抽出され出題された数問に回答するといった手法がとられている。全国学力・学習状況調査の質問調査においてもCBTでの実施にともない、PISAで導入されている実施方法を取り入れることも可能であり、調査研究を進めているところである。
【委員】
○ 5段階のIRTバンドの意味のところだが、具体的な問題に関連付けると、問題のパラメータに依存してしまい、過度な意味付けがされてしまう可能性がある。令和7年度調査の受検者全体の上位○%など相対的な書き方にならざるをえないと思うが、IRTバンドの各段階がその教科の資質・能力がどの程度を示しているのかを簡単でもいいから書けないか。今後経年変化を見ていくことも見据えて検討してほしい。
【事務局】
〇 引き続き問題以外との関連をもった示し方も検討していきたいと思っている。
【委員】
○ IRTとは何かが、学校現場や教育委員会、報道関係者に十分に伝わっていないのではないか。そういう状況下で、シンプルな形で結果を伝えると、さらに点数競争になってしまうのではないかと懸念される。IRTとは何かを専門的な話も含めて、いろいろな形で伝えていくことが重要。
○ 長期欠席児童生徒、特別な教育的支援を必要とする児童生徒、外国人児童生徒等も調査対象とするなら、いろいろな児童生徒が点数競争に巻き込まれるという捉え方もされるおそれがある。それに耐えられるような説明ぶりを考えていかなければならないのではないか。
【座長】
○ この点は、事例とともに議論すべきと考えるが、いかがか。
【委員】
○ どういう結果の示し方をするかが重要。例えば、都道府県別の結果チャートの形を見る際の基準は、大きいか小さいかという基準だけではなく、様々な形、タイプがあることに着目することもできる。望ましい評価基準の方向が一本ではない示し方があるのではないか。
【事務局】
○ 結果チャートは様々な要素を組み合わせることができるという委員のご提案も踏まえたものになっている一方、要素の組合せ方は多様。様々な指標を質問調査からとることができる。学力との一定の相関が見られる質問項目もあれば、学力とは別に児童生徒の様々な側面を示すデータもある。そのあたりの仕分けを国の方でもした上で、示していくことが重要と考えている。
【委員】
○ IRTの説明があいまいなままだと、「この設問に課題が見られたから、この設問への対応のみすればよい」といったように、学校の取組を狭めてしまうおそれがある。
【委員】
○ IRTの説明を以前自身の自治体において行ったが、学校関係者にも分かりやすく評判もよかった。結果返却スケジュールが早くなるも、学校現場、教育委員会にとって非常に有難い。今後は、CBT・IRTを活用した結果の示し方について、保護者にも理解をしてもらうことが重要。データから複数の要素を組み合わせて、見ることも大切だと感じる。
【委員】
○ 本調査で示すIRTスコアは、調査全体の標準偏差が100という前提で算出するのか。
○ 散布図を示す場合は、散布が重複・集中している箇所が分かるように示すべき。
【事務局】
〇 IRTスコアは、一般的な標準化として標準偏差100という形での算定をすることを想定している。
【委員】
○ 公表スケジュールの提案について、学校現場からすると当初の発表が早まるのはありがたい。また、結果公表が何回かに分けて行われるのも、三者面談等で子供や保護者に伝え、そのあと分析をし、夏休み後の授業に生かしていくという流れが期待でき、よい提案だと思う。
【委員】
○ 本調査の経年変化をどのように示し、返却するかは難しい。資料1-2のP.4に、都道府県・指定都市別のIRTスコアを「10刻み」で示すことが考えられるとあるが、このような示し方だと、495から494に下がった場合も、504から485に下がった場合も一段階下がったという示し方になる。変化の大きさが異なるのに、同じ段階だけ上がった、下がったという示し方で、変化を適切に捉えられるのかということも含めて、スコアの示し方を検討する必要がある。また、経年変化は、小さい単位だと出やすく、都道府県別など大きい単位だと出にくくなることが想定される。経年変化を把握できるようになるのはまだ先だが、令和7年度の結果の示し方は、今後の経年変化の示し方も踏まえて考えていかねばならない。
【委員】
○ これまでは平均正答率だけが公表されていたような形だが、今後は、平均正答率に加えて箱ひげ図など分布が分かるデータを公表するということか。つまり、平均正答率が単純に比べられるような公表はしないということか。
【事務局】
○ 参考資料2-2の実施概況のように、平均正答率以外にも、四分位や質問調査の結果も都道府県・指定都市別に公表してきた。実施概況自体をなくすのではなく、実施概況を充実させる方向を考えている。分布が分かる図などを出す場合も、基礎データとして実施概況に掲載の数値は引き続き公表するべきと考える。ただ、実施概況をメイン資料と捉えるのは適切ではなく、様々な要素と正答率を組み合わせた資料をメインとして捉えていくべきと考えている。
【委員】
○ 現行の実施概況を引き続き公表すると、平均正答率に着目する人は残るのではないか。
【委員】
○ 「平均正答率」でよいか。スコアではなくてよいか。
【事務局】
○ PBT教科はすべてが公開問題なので、正答数、正答率を使う。中学校理科を皮切りとしたCBT実施教科は、IRTスコアがそれに代わると考えている。理科は3年に1回の実施なので、出題を様々工夫している一方、毎年度実施の国語、算数・数学は、理科と同じ問題構成とするとも限らない。100万人共通の公開問題が維持されれば、正答率に着目する意味も残るかもしれない。
【委員】
○ 資料1-2のP.4のように、結果公表に様々な工夫をしてもなお、都道府県別の平均正答率・スコアを比較する風潮が残るおそれがある。公教育の使命としては「下支えができているか」ということが重要だと考えている。下位4分の1の割合をいかに小さくするかが重要。例えば、OECDのPISA2022の結果を示した参考資料2-4のP.7のように、層別分布を強調するような公表の仕方は考えられないか。また、実施概況でも、見るべきポイントを強調するなどできないか。
【事務局】
○ 下位層の割合に注目するというのは重要と考えている。実施概況にIRTバンドの下位層の割合を掲載することも考えられるし、参考資料2-4のP.7のようなグラフを示すことも考えられる。下支えしていく取組を促せるような出し方を考えていきたい。
【委員】
○ 調査なので、基本的な統計数値を隠すのは適切でない。着目すべき点の強調、最終的には文章で示すことが重要ではないか。
【委員】
○ 新たな試みを加えていることは、CBTになるタイミングでもあり重要であるが、受け取る側が受け取るデータの量は増えるのか。結果の提供を少し早めるということだが、そこから学校ごとに分析を行っていくときに、ある程度、意図をもったデータの示し方をし、こういうことに着目してほしいといったメッセージを伝えることが必要だと思う。それを学校に伝えるなら、データの総量も重要。
【事務局】
○ 公表のタイミングを学校返却は前倒し、県別の結果については後ろ倒しとする案を示している。データの総量の変更に着目すると、第3回の公表で、P.4のデータについてさらに充実させ提供していくことになると考えている。
【委員】
○ 資料1-2のP.3に「男女差、SES等の分析に必要な質問調査項目の改善を検討」とあることを踏まえても、今回の改善の方向性では、機会均等の視点が強く出されていると考える。いろいろなデータ・資料を公表するのも手だが、「機会均等が重要」という視点を打ち出すことも重要。都道府県別のデータも、機会均等という点を強調して公表してもらえると、分かりやすいし、施策を考える上でも方向性がはっきりする。
【議事2】令7年度調査の実施について
・資料2-1~2-4に基づき、事務局から報告があった。主な意見は以下のとおり。
【委員】
○ 当日の質問対応の体制はどのようになっているのか。
【事務局】
〇 特に中学校に関しては、受託事業者において問い合わせに対応するコールセンターをすでに開設している。この中で、CBTに関する事項についても承っており、あがってきた重要な課題については迅速に判断して伝えるようにしていく体制をとっている。
【委員】
○ 中学校理科を受けているとき機器の不具合等で、当日実施できなかった場合の対応はいかがか。
○ トラブルが多いと学校の負担も大きい。そのような情報も集約してほしい。
【事務局】
〇 当日のトラブルの中で、更新すれば操作できる、ログインし直せば引き続きできるといったことであれば、当日の実施も可能である。機器の不具合等で受検の継続が全くできなかったということであれば、後日実施で改めて個別に受検してもらうことができる。後日実施については、4月中の実施であれば調査の結果は、当日実施と同じような形で結果の返却を行う。ただし、後日実施の調査の結果は、当日実施の集計の中には含まれないこととなる。
総合教育政策局参事官(調査企画担当)付学力調査室