令和7年2月14日(金曜日)15時~17時
ZoomによるWeb会議(公開)
事務局:文部科学省 15F1会議室
耳塚主査、足羽委員、磯部委員、大津委員、川口委員、貞広委員、佐藤委員、土屋委員、冨士原委員
【議事1】令和7年度以降の全国学力・学習状況調査の調査結果の取扱いについて
・資料2~4に基づき、事務局から報告があった。主な意見は以下のとおり。
・資料2、3に関する質疑
【委員】
・資料2-1において、全国学調の二本柱として「悉皆調査」「経年調査」が示されているが、本WGの議論の対象は、悉皆調査のみか。それとも両方か。
【事務局】
・今回のWGの議論の主眼は、毎年実施している悉皆調査での結果の提供や公表の在り方について検討をお願いしたいと考えている。
【委員】
・悉皆調査の目的は、資料2-1に示されているものか。
【事務局】
・その通りである。
【委員】
・資料2-2について、5段階のIRTバンドのもつ意味、500のスコアのもつ意味を、参加した児童生徒や保護者、学校現場で今後の指導に生かしていけるよう、明確に伝えていくことが重要。今日でなくてよいが、周知を工夫いただきたい。また、このことは公表の在り方にも連動してくるので、今後のCBT-IRT化を念頭に置きながら検討する必要があると考える。
【事務局】
・現在はIRTバンド等の意味についてもイメージとして示すにとどまっているが、本WGや他のWG等でも有識者の先生方からいただいた御知見も踏まえ、中学校理科の結果を返却する際には、どのように説明していけばよいのかブラッシュアップしていきたいと思っている。
【委員】
・質問調査の都道府県・指定都市別結果を5点平均にしたものを可視化したのは、視覚的に訴求力がある。某県教育委員の立場としても衝撃を持って受け止めた。この資料についての教育委員会などの反応はどうだったか伺いたい。
・実施概況の指標に対応する質問項目は、どのように決められているのか。例えば、主体的・対話的で深い学びの項目について取り上げるべきと考える。
【事務局】
・これまでも提供していたものではあるが視覚的に分かりやすい形にすることを通じて、学校現場の反応としても、初めて状況を確認したという声が多かった。結果チャートの提供を行うようになってからは、それなりの時間が経っているが、見せ方も含めて工夫・改善をしていかなければ、全体に浸透していくことは難しいということを改めて感じた。
・指標に対応する質問項目については、専門家会議において御審議いただくなど検討が重ねられてきた。ただ、質問項目は変更が重なっているため必ずしも継続性を持つものではなくなっている。その年度にどういう質問項目が含まれているのか丁寧に発信していくことが必要だと考えている。結果チャートの領域や設定する質問項目、見せ方等についても本WG等においても検討していきたいと考えている。
【委員】
・この調査の神髄は質問調査にあり、質問調査を教科調査と連動させて見ることに意味がある。しかし、従来のように実施概況に数値を一覧にして示すだけでは伝わらない。資料3-1中の実施概況(補助資料)のような示し方は、両者を連動させることの重要性を示すとっかかりになるのではないか。
【委員】
・資料2-2でIRTスコア、IRTバンドという2つのワードがでてきたが、スコアとバンドが混在していないか。
・令和7年度についてはこのような形で返却するが、令和8年度以降の返却の仕方についてはこのWGで検討していくということでよいのか。
【事務局】
・委員に御指摘いただいたとおり、資料2-2の5段階については、IRTバンド、500を標準とする表示方法は、IRTスコアという言い方に統一したい。
・IRTバンド、スコアの表示の仕方、発信の仕方については、本WG等で有識者の先生方から御意見を頂戴し、7月の公表に向けしっかりと精査していきたいと考えている。また、本WGで御議論いただいた内容は、令和7年度の返却、公表にも、適用できるところから取り入れていきたいと考えている。
【委員】
・資料2-2は12月24日担当者会議配付資料したとのこと。P.8に公開問題・非公開問題の提供データの違いについて説明があるが、このことについて結果を受け取る側の教育委員会などの反応はどうだったか。本日の議論につながるものがあれば提供してほしい。
【事務局】
・12月の会議の時点では、あまり反応はいただけなかったが、その後の質問等では、P.6のIRTバンドをどういう風に理解すればよいかといった質問等を承っている。どのように説明するのが適切かも含めてこれから精査していく事項だと捉えている。
・資料4に関する質疑
【委員】
・資料4の2つ目の論点に関しては、学校現場に還元し、子供たちの学びの質をどう高めるかを踏まえると、公表・提供の主軸を「一人一人」に傾けるべきだと考えている。しかし、報道は違うところに着目しており、どのような力を身に付けたのか、どこが課題かに触れられず、数字だけが独り歩きしているのが現状である。正答率だけではなく、児童生徒の学習の成果や課題も、都道府県ごとに分析して公表していくことが必要ではないか。そのためには、従来の公表や結果提供の順序を変えることも考えられる。児童生徒に返したいデータ、学校現場に伝えたい成果・課題、これらを全国学調の調査問題につなげながらの公表にできないかと考えている。
【委員】
・指導改善の視点は様々だが、中教審の諮問などを見ると、学びの深さ、探究への姿勢、デジタル学習基盤などがキーワードなって集約されるのではないかと考えている。それらの状況が分かる結果公表になるとよいのではないか。
・結果の公表時期は6月中旬から末くらいになるとよい。このくらいの時期に返却されれば、個人面談で保護者に伝えたり、教員の研修にも活用したりできる。その際、結果をシンプルで分かりやすいワードで伝えることが重要。このことが、学校における働き方改革や教師の働き甲斐につながるのではないか。先ほど説明があった資料2-2のIRTの内容は、保護者には分からない。示された結果が教師に腹落ちするものになるとよい。その上で、示された結果をどう浸透させるかが校長の責務と思っている。
【事務局】
・ご指摘いただいた児童生徒に身に付いた力をどのように分かりやすく示していくのかについては、調査の結果として肝になる部分だと受け止めている。正答数・正答率という教科全体の状況のみならず、個別の設問や質問調査等にも着目した分析が必要だということは毎年度の結果活用をお願いする通知などではお示ししているところではあるが、結果の示し方、公表データの中にもそういった視点をしっかりと取り入れていくことが大事だと考える。また、目的に応じて全国のデータ、地域のデータなどお示しする順番というのも見直す余地があると考えている。
【委員】
・結果の取扱いについて検討する際には、内容面、深さ(複雑さ)の2つの視点があると考える。詳細な結果を多く出すより、「一言で言えばどのような結果だったのか」ということを示すことも求められているのではないか。結果チャートも、多すぎる質問項目の結果を分かりやすく示すことが当初の目的だったと捉えている。
【委員】
・今後CBT化されることを踏まえると、公開問題の全国的な結果は早い段階で示し、その後IRT分析など掘り下げた結果を示すなど、早い段階で示すもの、しっかり分析してから示すものというように2段階での公表・提供もありうるのではないか。このような段取りとすることで、1回目の公表時の反応も踏まえながら、2回目の提供もよりよいものにすることもできるかもしれない。
【委員】
・おそらく土屋委員と同様の葛藤だと思うが、本調査が果たすべき役割について葛藤がある。IRTに基づいて実施する場合、IRTスコアに測定誤差が発生する。誤差があるという複雑さを学校現場や保護者に正しくしっかり伝えるべきなのか、それとも分かりやすさを重視するのか。文部科学省はどちらを目指しているのか。
【委員】
・資料4-1に「提供データをどのように充実させるか」とあるが、これは誰にとっての充実なのか。国か、それとも教育委員会か、学校か。また、「充実」というのは量の問題か、それとも質の問題か。また、「より細やかに」というのも誰にとってか。学校現場の先生が、学習指導の改善に生かす際に、より細やかなものをもらってどう生かすのかがイメージできない。
・資料4-2「最近の意見・要望」に学校現場の意見が吸い上げられていない。学校がどういうものを求めているのかが、今の状況では分からない。
【事務局】
・各委員に御指摘いただいた部分は、現段階ではIRTに関して固まった説明をおろせていない状況が関係していると思う。ただその中で、誰のためにかというところは、学校現場の先生方、子供たちのためになる示し方というのを考えなければならないと思っている。まだ議論を深められていないが、IRTに関してはご指摘もあったように一定の誤差はあるが、5段階の学力層表示が今までより、より意味のある普遍的な形で結果の1つのデータとして返却できると考えている。IRTバンドを1つの目安として、国としてもバンドごとにどのような指導の改善を図っていけばよいのか、これまでよりさらに踏み込んだ指導改善の工夫を提示できる可能性があるのではないかと考えている。
・様々な分析の中から全てを提供していくのではなく、より伝えたいものをシンプルに伝える工夫も必要だというところを大事にし、これからの検討を進めていきたい。
【委員】
・IRTによって誤差がある数値が与えられるという指摘があったが、素点方式での正答数・正答率にも誤差があるはず。ただ、素点方式ではその誤差を評価できないので、単純な数値を出しているだけのこと。IRTの場合は、その誤差を評価できるだけのスタンダード、理論が示されているということを指摘しておきたい。
・全国一斉に国が本調査を実施することの意義は、細かい分析を各学校に委ねるのが困難な中で、国や教育委員会レベルで、学習指導要領が意図したものが浸透しているかを分析することにあるのではないか。
・また、全国一斉に本調査を実施する別の意義として、優れた教育方法を行っている学校や現場を発見するということもあるのではないか。令和5年度に横浜国立大学に委託された英語の調査研究の結果を見て、そのように思った。
【委員】
・PISAのカントリーノートのようなものを、国が作成して配付することは現実的に可能か。見通しを教えてほしい。
【事務局】
・資料4-3においてカントリーノートの事例としてOECDのレポートを使った。この水準のものを国として、都道府県・指定都市のものをしっかりと作っていくというのは、今以上に準備期間を要すると思う。ただ、返却の時期について、返せるものから返していくといった対応も考えられると思う。そのような中で、表で数字を羅列するという形以上に、それぞれの都道府県や指定都市に関して、結果として特徴的な部分や課題、質問調査も含めて分析したものを提供することは選択肢としてありうると考えている。実務も考えながら内容等についても検討していきたい。
【委員】
・国からは、全国の状況と、各都道府県の状況を国が分析したものを提供してほしい。各学校レベルで分析を行うのは難しい。鳥取県では、課題を県が分析・整理したものを学校現場に伝えている。国が県について分析したものがあれば、それに加えて県としての分析を加えて現場に届けられるので、本調査結果を還元すべき相手方により還元できるようになる。この調査の結果は、学校現場に還元すべきものであり、児童生徒にどのように力をつけさせるかに反映させていくべきものである。そこに力点をおいた分析が、調査全体の流れの中に位置づけられてもいいのではないか。
【事務局】
・学校現場に還元していくというところで、各県の研究や学校訪問を後押しできるような公表の仕方をしていきたいと思う。
【委員】
・本調査を悉皆で行う中で、文部科学省が何を大切にしたいのかを整理してほしい。カントリーノートを主眼とするなら、全員悉皆調査でやる必要はなくなる。全国知事会のアンケート結果の中には「悉皆で実施しているからこそ関心を持ってもらえる」という意見があった。国として何を優先するのか、分かりやすく伝えることが目的なのならカントリーノートという手法も考えられるが、それは「児童生徒一人一人のために」という目的とは相いれない。国において、何を重要視するのか順位付けすべき。あれもこれも本調査に求めてしまうと、結果として公表されるものは玉虫色になってしまう。
【委員】
・都道府県別の公表を整数値で示すこと、地域規模間の格差をどう評価するのかなどについて、次回までに整理してほしい。
【議事2】その他について
・資料5に基づき、事務局から説明があった。
総合教育政策局参事官(調査企画担当)付学力調査室